(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による分離方法を適用した分離装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る分離方法を適用した分離装置を示す構成図であり、本実施形態の分離装置は、細胞の細胞膜に含まれた有効成分を当該細胞膜から分離し得るものである。
【0014】
本実施形態の分離装置に用いるのに有効な細胞としては、例えば、大腸菌K−12株、酵母、枯草菌、乳酸菌、放線菌の他、動物細胞或いは植物細胞の宿主細胞株、活性汚泥菌等が挙げられる。また、細胞内部を覆う細胞膜に含まれている有効成分とは、例えば、細胞外タンパク、細胞外多糖、細胞外ポリマー等の成分を含むものである。
【0015】
図9に、有効成分の一例を具体的に示す。ここでは、有効成分M1として糖タンパクが、有効成分M2として糖脂質がそれぞれ示されている。有効成分としての糖タンパクM1は、タンパク質Dが細胞内部Sの表面内から伸びて細胞膜Vを貫通し当該細胞膜Vに保持されたような状態で(細胞膜Vに含まれたような状態で)細胞外部へと伸び、細胞外部の表面に糖Zが付着する構造を呈している。また、有効成分としての糖脂質M2は、脂質Eが細胞膜V中に存在し細胞膜Vに保持されたような状態(細胞膜Vに含まれたような状態)になっていると共に、当該脂質Eの端部から糖Zが伸びて細胞膜Vを貫通し細胞外部へと伸びる構造を呈している。なお、有効成分の他の例としては、有効成分全体が、細胞膜内に存在するものや、細胞膜近傍に存在するもの等、種々の構造が挙げられる。
【0016】
図1に示すように、分離装置100は、細胞Rを導入し、当該細胞Rから有効成分Mを分離する分離工程を実施するものである。
【0017】
分離装置100は、具体的には、細胞Rと溶媒(ここでは水)とを混合して定量供給する細胞供給部50と、細胞供給部50から定量供給される細胞Rを負圧吸引し、当該細胞Rの細胞膜から有効成分Mを分離するための分離ポンプYと、分離ポンプYから吐出された有効成分M、細胞膜から有効成分が分離された細胞N、細胞(細胞膜から有効成分が分離されていない細胞;初期状態の細胞)Rを分離ポンプYに循環供給する再循環機構部70等を備えて構成される。
【0018】
細胞供給部50は、貯留タンク51に貯留された細胞R及び溶媒を、設定流量で分離ポンプYの第1の供給部11に連続的に供給するように構成される。
【0019】
具体的には、細胞供給部50は、上記貯留タンク51と、貯留タンク51から細胞R及び溶媒(以降において溶媒に関しては記載を省略する)が送出される送出ポンプ52Pを介在させた供給管52と、貯留タンク51から供給管52に送出される細胞Rの流量を設定流量に調整する流量調整バルブ(図示せず)と、を備え、設定流量に調整された細胞Rが、第1の供給部11に供給される。
【0020】
ここで、貯留タンク51は、後述するように、排出路22から、キャビテーションによる気泡が導入されるように構成されている。このため、貯留タンク51には、空気(気体)Gの放出管51Gが接続される。また、貯留タンク51内には、タンク内を撹拌するための撹拌機構51Kが配設される。
【0021】
供給管52と第1の供給部11を接続する部材61は、
図2に示すように、その外側部分が、蓋部62により外側から蓋されると共に、その内周側の部分が、円筒状の第1の供給部11よりも小径に構成されて、第1の供給部11との間に環状のスリット63を形成すべく第1の供給部11に挿入状態で配設され、さらに、環状のスリット63に全周に亘って連通する状態で第1の供給部11の外周部に環状流路64を形成する環状流路形成部65を備えて構成される。そして、部材61には、供給管52が環状流路64に対して細胞Rを接線方向に供給するように接続される。
【0022】
従って、細胞Rは、環状流路64に接線方向から供給され、環状流路64の内周側に形成される環状のスリット63を介して、切れ目のない中空円筒状の渦流の状態で第1の供給部11に供給され、分離ポンプYの第1の導入室13内に吸引導入される。
【0023】
分離ポンプYは、導入される細胞Rに、剪断力とキャビテーションとを作用させることにより、細胞膜から有効成分を分離するものである(詳しくは後述)。
【0024】
この分離ポンプYは、両端開口が前壁部2と後壁部3とで閉じられた円筒状の外周壁部4を備えたケーシング1を備え、そのケーシング1の内部に同心状で回転駆動自在に設けられたロータ5と、そのケーシング1の内部に同心状で前壁部2に固定配設された円筒状のステータ7と、ロータ5を回転駆動するポンプ駆動モータM3等を備えて構成される。
【0025】
図3及び
図4に示すように、ロータ5の径方向の外方側には、複数の回転翼6が、前壁部2側である前方側(
図2の左側)に突出し、且つ、周方向に等間隔で並ぶ状態でロータ5と一体的に設けられる。
【0026】
円筒状のステータ7には、
図2及び
図4に示すように、絞り流路となる複数の透孔7a、7bが周方向に夫々並べて備えられ、そのステータ7が、ロータ5の前方側(
図2の左側)で、且つ、回転翼6の径方向の内側に位置させて前壁部2に固定配設され、そのステータ7とケーシング1の外周壁部4との間に、排出室を兼ねた、回転翼6が周回する環状の翼室8が形成される。
【0027】
図2〜
図4に示すように、細胞Rを回転翼6の回転によりケーシング1の内部に吸引導入する第1の供給部11は、前壁部2の中心軸(ケーシング1の軸心)A3よりも外周側に偏移した位置に設けられる。
【0028】
図2及び
図4に示すように、ケーシング1の前壁部2の内面には環状溝10が形成され、環状溝10と連通する状態で第1の供給部11が設けられる。
図2及び
図3に示すように、有効成分M、有効成分が分離された細胞N、有効成分が分離されていない細胞Rを吐出する円筒状の吐出部12が、ケーシング1の円筒状の外周壁部4の周方向における1箇所に、その外周壁部4の接線方向に延びて翼室8に連通する状態で設けられる。なお、分離ポンプYでは、キャビテーションによる気泡が生じ、この気泡は、有効成分M、有効成分が分離された細胞N、有効成分が分離されていない細胞Rと共に、吐出部12に吐出される。
【0029】
図1、
図2及び
図8に示すように、吐出部12から吐出された有効成分M、有効成分が分離された細胞N、有効成分が分離されていない細胞R、キャビテーションによる気泡は、吐出路18を通して再循環機構部70に供給され、その再循環機構部70の分離部としての円筒状容器71にて気泡が分離された有効成分M、細胞N,Rを、ポンプ駆動モータM4により回転駆動される循環ポンプ16Pを介在させた循環流路16を介して、ケーシング1内に循環供給する第2の供給部17がケーシング1の前壁部2の中央部(軸心A3と同心状)に設けられている。
【0030】
また、
図2〜
図4に示すように、ステータ7の内周側を、前壁部2側の第1の導入室13とロータ5側の第2の導入室14とに区画する仕切板15が、ロータ5の前方側に当該ロータ5と一体回転する状態で設けられると共に、仕切板15の前壁部2側に回転翼の一種である掻出翼9が設けられる。掻出翼9は、同心状に、周方向において均等間隔で複数(
図6では4つ)備えられ、各掻出翼9がその先端部9Tを環状溝10内に進入した状態でロータ5と一体的に周回可能に配設される。
【0031】
第1の導入室13及び第2の導入室14は、ステータ7の複数の透孔7a、7bを介して翼室8と連通されるように構成され、第1の供給部11が第1の導入室13に連通し、第2の供給部17が第2の導入室14に連通するように構成される。
【0032】
具体的には、第1の導入室13と翼室8とは、ステータ7における第1の導入室13に臨む部分に周方向に等間隔で配設された複数の第1の導入室側の透孔7aにて連通され、第2の導入室14と翼室8とは、ステータ7における第2の導入室14に臨む部分に周方向に等間隔で配設された複数の第2の導入室側の透孔7bにて連通される。
【0033】
次に、分離ポンプYの各部について説明する。
【0034】
図2に示すように、ロータ5は、その前面が概ね円錐台状に膨出する形状に構成されると共に、その外周側に、複数の回転翼6が前方に突出する状態で等間隔に並べて設けられる。なお、
図3では、周方向に等間隔に10個の回転翼6が配設されている。また、この回転翼6は、内周側から外周側に向かうに連れて、回転方向後方に傾斜するようにロータ5の外周側から内周側に突出形成されており、回転翼6の先端部の内径は、ステータ7の外径よりも若干大径に形成されている。
【0035】
このロータ5が、ケーシング1内においてケーシング1と同心状に位置する状態で、後壁部3を貫通してケーシング1内に挿入されたポンプ駆動モータM3の駆動軸19に連結されて、そのポンプ駆動モータM3により回転駆動される。
【0036】
そして、ロータ5が、その軸心方向視(
図2のIII-III方向視)において回転翼6の先端部が前側となる向きで回転駆動されることにより、回転翼6の回転方向の後側となる面(背面)6aに、所謂キャビテーション(局所沸騰)が発生するように構成される。
【0037】
図2、
図4〜
図7に示すように、仕切板15は、ステータ7の内径よりも僅かに小さい外径を有する概ね漏斗状に構成される。この漏斗状の仕切板15は、具体的には、その中央部に、頂部が円筒状に突出する筒状摺接部15aにて開口された漏斗状部15bを備えると共に、その漏斗状部15bの外周部に、前面及び後面共にケーシング1の軸心A3に直交する状態となる環状平板部15cを備える形状に構成される。
【0038】
そして、
図2及び
図3に示すように、仕切板15は、頂部の筒状摺接部15aがケーシング1の前壁部2側を向く姿勢で、周方向に等間隔を隔てた複数箇所(この実施形態では4箇所)に配設された間隔保持部材20(
図7参照)を介して、ロータ5の前面の取付部5a(
図4参照)に取り付けられる。
【0039】
図3及び
図7に示すように、仕切板15を複数箇所夫々で間隔保持部材20を介してロータ5に取り付ける際には、撹拌羽根21が、ケーシング1の後壁部3側に向く姿勢で仕切板15に一体的に組み付けられ、ロータ5が回転駆動されると、4枚の撹拌羽根21がロータ5と一体的に回転するように構成される。
【0040】
図2及び
図4に示すように、円筒状の第2の供給部17は、ケーシング1と同心状で、そのケーシング1の前壁部2の中心部に設けられている。この第2の供給部17には、循環流路16(
図1参照)の内径よりも小径で、仕切板15の筒状摺接部15aよりも小径となり流路面積が小さな絞り部14aが形成される。そして、ロータ5の回転翼6が回転することにより、吐出部12を介して、有効成分M、有効成分が分離された細胞N、有効成分が分離されていない細胞Rが吐出され、第2の供給部17の絞り部14aを介して、これらの有効成分M、細胞N,Rが導入されることになるため、分離ポンプY内は減圧される。
【0041】
図2〜
図4に示すように、第1の供給部11は、そのケーシング1内に開口する開口部(入口部)が、環状溝10における周方向の一部を内部に含む状態で、ケーシング1内に対する第2の供給部17の開口部の横側方に位置するように、前壁部2に設けられる。また、第1の供給部11は、平面視(
図1及び
図2の上下方向視)において軸心A2がケーシング1の軸心A3と平行となり、且つ、ケーシング1の軸心A3に直交する水平方向視(
図1及び
図2の紙面表裏方向視)において、軸心A2がケーシング1の前壁部2に近づくほどケーシング1の軸心A3に近づく下向きの傾斜姿勢で、ケーシング1の前壁部2に設けられる。因みに、第1の供給部11の水平方向(
図1及び
図2の左右方向)に対する下向きの傾斜角度は、45°程度である。
【0042】
図2及び
図4に示すように、ステータ7は、ケーシング1の前壁部2の内面(ロータ5に対向する面)に取り付けられ、ケーシング1の前壁部2とステータ7とが一体となるように固定される。ステータ7において、第1の導入室13に臨む部分に配設された複数の第1の導入室側の透孔7aは、概略円形状に形成され、第1の導入室13の流路面積よりも複数の第1の導入室側の透孔7aの合計流路面積が小さくなるように設定される。また、第2の導入室14に臨む部分に配設された複数の第2の導入室側の透孔7bは、概略楕円形状に形成され、第2の導入室14の流路面積よりも複数の第2の導入室側の透孔7bの合計流路面積が小さくなるように設定される。そして、ロータ5の回転翼6が回転することにより、吐出部12を介して、有効成分M、有効成分が分離された細胞N、有効成分が分離されていない細胞Rが吐出され、第1の導入室13の第1の導入室側の透孔7aを介して、細胞Rが供給されると共に、第2の供給部17を介して、有効成分M、有効成分が分離された細胞N、有効成分が分離されていない細胞Rが導入されることになるため、分離ポンプY内は減圧される。
【0043】
図4〜
図7に示すように、各掻出翼9は棒状に形成され、ロータ5の径方向視(
図6の紙面表裏方向視)で、当該棒状の掻出翼9の先端側ほど前壁部2側に位置し、且つ、ロータ5の軸心方向視(
図5の紙面表裏方向視)で、当該棒状の掻出翼9の先端側ほどロータ5の径方向内方側に位置する傾斜姿勢で、当該棒状の掻出翼9の基端部9Bがロータ5と一体回転するように固定され、ロータ5が、その軸心方向視(
図5の紙面表裏方向視)において掻出翼9の先端が前側となる向き(
図2〜
図7において矢印にて示す向き)に回転駆動される。
【0044】
掻出翼9は、
図3〜
図6に示すように、仕切板15に固定される基端部9B、第1の導入室13に露呈する状態となる中間部9M、環状溝10に進入する状態となる先端部9Tを、基端から先端に向けて一連に備えた棒状に構成される。
【0045】
図3、
図4及び
図6に示すように、掻出翼9の基端部9Bは、概ね矩形板状に構成される。
図3、
図4〜
図6に示すように、掻出翼9の中間部9Mは、横断面形状が概ね三角形状になる概ね三角柱状に構成される(特に
図3参照)。そして、掻出翼9が上述の如き傾斜姿勢で設けられることにより、三角柱状の中間部9Mの三側面のうちのロータ5の回転方向前側を向く一側面9m(以下、「放散面」と記載する場合がある)は、ロータ5の回転方向前側に向けて傾斜する前下がり状で、しかも、ロータ5の径方向に対して径方向外方側に向く(以下、「斜め外向き」と記載する場合がある)ように構成される(特に
図4〜
図6参照)。
【0046】
つまり、棒状の掻出翼9が、上述の如き傾斜姿勢で設けられることにより、掻出翼9のうち第1の導入室13に露呈する中間部9Mが、環状溝10に進入する先端部9Tよりもロータ5の径方向外方に位置し、しかも、その中間部9Mの回転方向前側を向く放散面9mが、ロータ5の回転方向前側に向けて傾斜する前下がり状で、しかも、ロータ5の径方向に対して斜め外向きに傾斜している。これにより、掻出翼9の先端部9Tにより環状溝10から掻き出された細胞Rは、掻出翼9の中間部9Mの放散面9mにより、第1の導入室13内においてロータ5の径方向外方側に向けて流動するように案内される。
【0047】
図4〜
図6に示すように、掻出翼9の先端部9Tは、横断面形状が概ね矩形状になる概ね四角柱状であり、ロータ5の軸心方向視(
図5の紙面表裏方向視)において、四側面のうちのロータ5の径方向外方側に向く外向き側面9oが、環状溝10の内面における径方向内方側を向く内向き内面に沿い、且つ、四側面のうちのロータ5の径方向内方側に向く内向き側面9iが、環状溝10の内面における径方向外方側を向く外向き内面に沿う状態となる弧状に構成される。
【0048】
また、四角柱状の先端部9Tの四側面のうちの、ロータ5の回転方向前側を向く掻き出し面9fは、ロータ5の回転方向前側に向けて傾斜する前下がり状で、しかも、ロータ5の径方向に対して径方向外方側に向く(以下、「斜め外向き」と記載する場合がある)になるように構成される。
【0049】
これにより、掻出翼9の先端部9Tにより環状溝10から掻き出された細胞Rは、掻出翼9の先端部9Tの掻き出し面9fにより、ロータ5の径方向外方側に向けて第1の導入室13内に放出されることになる。さらに、掻出翼9の先端部9Tの先端面9tは、その先端部9Tが環状溝10に進入した状態で環状溝10の底面と平行になるように構成される。
【0050】
また、ロータ5が、その軸心方向視(
図5の紙面表裏方向視)において掻出翼9の先端が前側となる向きに回転駆動されると、掻出翼9の基端部9B、中間部9M、先端部9Tそれぞれに、回転方向の後側となる面(背面)9aが形成される。この背面9aには、掻出翼9が回転することにより、所謂キャビテーション(局所沸騰)が発生するように構成される。
【0051】
上述のような形状に構成された4個の掻出翼9が、上述の如き傾斜姿勢で、中心角で90°ずつ間隔を隔てて周方向に並べた形態で、夫々、基端部9Bを仕切板15の環状平板部15cに固定して設けられる。
【0052】
図2に示すように、掻出翼9が設けられた仕切板15が、間隔保持部材20によりロータ5の前面と間隔を隔てた状態でロータ5の前面の取付部5a(
図4参照)に取り付けられ、このロータ5は、仕切板15の筒状摺接部15aが第2の供給部17に摺接回転可能に進入した状態でケーシング1内に配設される。
【0053】
これにより、ロータ5の膨出状の前面と仕切板15の後面との間に、ケーシング1の前壁部2側ほど小径となる先細り状の第2の導入室14が形成され、第2の供給部17が仕切板15の筒状摺接部15aを介して第2の導入室14に連通するように構成される。また、ケーシング1の前壁部2と仕切板15の前面との間に、第1の供給部11に連通する環状の第1の導入室13が形成される。
【0054】
そして、ロータ5が回転駆動されると、筒状摺接部15aが第2の供給部17に摺接する状態で、仕切板15がロータ5と一体的に回転することになり、ロータ5及び仕切板15が回転する状態でも、第2の供給部17が仕切板15の筒状摺接部15aを介して第2の導入室14に連通する状態が維持されるように構成される。
【0055】
図1に示す再循環機構部70は、円筒状容器71内において比重によって、有効成分M、細胞N,Rと、キャビテーションによる気泡Gとに分離するものであり、これらの有効成分M、細胞N,Rを循環流路16に、気泡Gを排出路22にそれぞれ分離するように構成される。吐出路18及び循環流路16は、夫々、円筒状容器71の下部に接続され、排出路22は、円筒状容器71の上部に形成された排出部73から貯留タンク51に接続される。
【0056】
ここで、再循環機構部70は、
図8に示すように、吐出路18が接続される導入パイプ72を円筒状容器71の底面から内部に突出して配設し、円筒状容器71の上部に排出路22に接続される排出部73を備えると共に、下部に循環流路16に接続される循環部74を備え、導入パイプ72の吐出上端に、導入パイプ72から吐出される有効成分M、細胞N,Rの流れを旋回させる捩り板75を配設して構成される。これにより、循環流路16に循環供給される有効成分M、細胞N,Rから気泡を分離した状態で第2の導入室14内に供給することができる。
【0057】
分離装置100に備えられる制御部は、図示しないが、CPUや記憶部等を備えた公知の演算処理装置からなり、分離装置100を構成する分離ポンプY、細胞供給部50等の各機器の運転を制御可能に構成されている。特に、制御部は、回転翼6の周速度(ロータ5の回転数)を制御可能に構成され、第1の導入室13及び第2の導入室14内の圧力が所定の負圧状態となるように、回転翼6の周速度(ロータ5の回転数)を設定し、当該設定された周速度(ロータ5の回転数)で回転翼6を回転することで、少なくとも、ステータ7の第1の導入室側の透孔7a及び第2の導入室側の透孔7bを通過した直後の翼室8内の領域を、翼室8内の全周に亘って連続して、微細気泡(マイクロバブル)が多数発生した微細気泡領域(キャビテーション領域)として形成させることができるように構成されている。
【0058】
なお、第1の導入室13及び第2の導入室14内の圧力(本実施形態においては、第1の導入室13内の圧力)を測定するための圧力計80が設けられる(
図2参照)。
【0059】
次に、このように構成された分離装置100の動作について説明する。
【0060】
先ず、細胞供給部50において撹拌機構51Kにより貯留タンク51内を撹拌しながら当該貯留タンク51から細胞Rを供給すると共に、ポンプ駆動モータM3,M4を駆動する。すなわち、ロータ5を回転させ、分離ポンプYの運転を開始する。所定の運転時間が経過すると、分離ポンプY内が負圧状態となる。そして、分離ポンプYの負圧吸引力により、細胞Rが、部材61の環状のスリット63を通して切れ目のない中空円筒状の渦流の状態で第1の供給部11に供給され、環状溝10に導入される。
【0061】
ロータ5が回転駆動されて、そのロータ5と一体的に仕切板15が回転すると、その仕切板15に同心状に設けられた掻出翼9が、環状溝10に先端部9Tが進入した状態で周回する。
【0062】
これにより、
図2及び
図3において実線矢印にて示すように、第1の供給部11を流動して環状溝10に導入された細胞Rは、環状溝10に進入し周回する掻出翼9の先端部9Tにより掻き出され、その掻き出された細胞Rは、概略的には、第1の導入室13内を仕切板15における漏斗状部15bの前面と環状平板部15cの前面とに沿いながらロータ5の回転方向に流動し、さらに、ステータ7の第1の導入室側の透孔7aを通過して翼室8に流入し、その翼室8内をロータ5の回転方向に流動して、吐出部12から吐出される。
【0063】
環状溝10に導入された細胞Rは、掻出翼9の先端部9Tにより掻き出されるときに、剪断作用を受ける。この場合、掻出翼9の先端部9Tの外向き側面9oと内側の環状溝10の内向き内面との間、及び、掻出翼9の先端部9Tの内向き側面9iと内側の環状溝10の外向き内面との間において剪断作用が働く。同時に、掻出翼9の回転方向背面側の背面9aにおいては、掻出翼9が回転することにより、背面9aに沿ってキャビテーションが発生する。また、ステータ7の第1の導入室側の透孔7aを通過する際に、剪断作用が働く。
【0064】
すなわち、第1の導入室13内の細胞Rに掻出翼9により、剪断力を作用させると共にキャビテーションを発生させることができるため、掻き出される細胞Rは、掻出翼9及び第1の導入室側の透孔7aから剪断作用を受けて混合されると共に、掻出翼9の背面9aに沿って発生するキャビテーションによって気泡が生じ、この発生した泡の力によって、細胞膜に含まれる有効成分Mが細胞膜から分離される。すなわち、有効成分M、細胞膜から有効成分が分離された細胞N、細胞膜から有効成分が分離されなかった細胞(貯留タンク51の貯留時と変化ない細胞)Rに分けられる。
【0065】
吐出部12から吐出された有効成分M、細胞N,Rは、吐出路18を通して再循環機構部70に供給され、再循環機構部70において、有効成分M、細胞N,Rから気泡Gが分離されて、有効成分M、細胞N,Rは、ポンプ駆動モータM4により回転駆動される循環ポンプ16Pを介在させた循環流路16を介して、再び分離ポンプYの第2の供給部17に供給され、一方、分離された気泡Gは排出路22を通して貯留タンク51に供給される。
【0066】
細胞Rは、第2の供給部17の絞り部14aを介して流量が制限された状態で第2の導入室14内に導入される。その第2の導入室14内においては、回転する複数の撹拌羽根21により剪断作用を受け、さらに、第2の導入室側の透孔7bの通過の際にも剪断作用を受ける。この際には、第2の導入室側の透孔7bを介して流量が制限された状態で翼室8に導入される。そして、翼室8内において、高速で回転する回転翼6により剪断作用を受ける。
【0067】
ここで、制御部は、回転翼6の周速度(ロータ5の回転数)を制御可能に構成され、第1の導入室13及び第2の導入室14内の圧力が所定の負圧状態となるように、回転翼6の周速度(ロータ5の回転数)を設定し、当該設定された周速度(ロータ5の回転数)で回転翼6を回転することで、少なくとも、ステータ7の第1の導入室側の透孔7a及び第2の導入室側の透孔7bを通過した直後の翼室8内の領域を、翼室8内の全周に亘って連続して、微細気泡(マイクロバブル)が多数発生した微細気泡領域(キャビテーション領域)として形成させることができる。
【0068】
これによって、翼室8内の全周に亘って、細胞Rに微細気泡が作用し、さらに、その発生した微細気泡が翼室8において加圧され消滅する際の衝撃力が細胞Rに作用することになる。
【0069】
すなわち、回転翼6により、細胞Rに剪断力を作用させると共にキャビテーションを発生させることができ、回転翼6の背面6aに沿って発生するキャビテーションによって生じる泡の力によって、細胞膜に含まれる有効成分Mが細胞膜から分離される。
【0070】
この状態で、分離ポンプYの運転を所定時間継続し、貯留タンク51、供給管52、分離ポンプY、吐出路18、再循環機構部70、循環流路16によって、細胞Rに対する剪断力とキャビテーションの作用を続行する。
【0071】
ここで、分離ポンプYを運転しているときに、第1の導入室13及び第2の導入室14内の圧力が、−0.01〜−0.10MPa、好ましくは、−0.03〜−0.09MPa、より好ましくは、−0.04〜−0.08MPaの範囲の負圧状態となるように、分離ポンプYの回転翼6の周速度(ロータ5の回転数)を、6〜80m/s、好ましくは、15〜50m/sに設定するようにしている。これにより、前述したキャビテーションが発生し、細胞膜に含まれる有効成分Mを細胞膜から分離できる。
【0072】
その後、所定時間経過したら、ポンプ駆動モータM3,M4の駆動を停止すると共に、撹拌機構51Kの撹拌を停止し、分離装置100の運転を停止する。
【0073】
このように、本実施形態によれば、剪断力及びキャビテーションの発生部である掻出翼9及び回転翼6を備え、細胞Rに対して、剪断力及びキャビテーションを作用させるようにしているため、剪断力及びキャビテーションにより発生した泡の力(マイルドな力)によって、細胞膜に含まれる有効成分Mを当該細胞膜から分離できる。
【0074】
また、本実施形態によれば、細胞を再利用することもできる。
【0075】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、有効成分は、上記実施形態で挙げたものに限定されるものではなく、本発明の分離装置及び分離方法により、細胞膜から分離できる成分であれば良い。
【実施例】
【0076】
以下、上記効果を確認すべく、本発明者らが実施した実施例及び比較例について述べる。
【0077】
(実施例1)
細胞の試料として、活性汚泥(菌体細胞)を用いた。分離装置としては
図1に示したものと同様な構成のものを用いた。具体的には、粉体吸引連続溶解分散装置として用いられるジェットペースタ(登録商標;JP-SS、日本スピンドル製造、Japan)を用いた。分離ポンプの回転数は1800rpmとし、運転時間は10min、60minの2通りとした。上記活性汚泥800mlを貯留タンクに投入した。なお、運転中は6.2°Cの冷却水で分離ポンプを冷却し温度上昇を抑えるようにした。
【0078】
(実施例2)
分離ポンプの回転数を3600rpmとした以外は、実施例1と同様とした。
【0079】
(実施例3)
分離ポンプの回転数を7200rpmとした以外は、実施例1と同様とした。
【0080】
表1に、実施例1〜3における圧力と処理液の温度を示す。圧力は、前述したキャビテーションが発生する負圧であり、回転数が高くなるほど大きくなる。処理液の温度も、回転数が高くなるほど高くなった。また、回転数が同じ場合は、運転時間を長くしても、温度は殆ど変化しなかった。また、ジェットペースタの運転では然程温度は上がらなかった。
【0081】
【表1】
【0082】
(比較例1)
60°Cのウォーターバスに、活性汚泥500mlの入った1Lガラス瓶を60min間浸漬した。
【0083】
(比較例2)
活性汚泥500mlに対し、5N NaOHを添加してpH=11に調整し、マグネチックスターラー300rpmで60min間撹拌した。
【0084】
(比較例3)
活性汚泥に対して何ら処理を行わなかった。
【0085】
(評価)
実施例1〜3及び比較例1〜3の各々に対してAdvantec No.5Cを用い、ろ過によりろ液を得た。評価には、HACH社製のDR2000(リアクター分解法)を用いた。有機物濃度は、化学的酸素要求量(CODCr)で評価した。
【0086】
また、顕微鏡による観察を行った。比較例1、2においては、細胞が破壊されているのが確認され、実施例1〜3、比較例3においては、細胞内部は然程破壊されていないのが確認された。
【0087】
測定したろ液CODCr濃度(有機物濃度)、全CODCr濃度を評価と共に表2に示す。なお、全CODCr濃度は、ろ液及びろ液以外のCODCr濃度の合算値である。また、評価の○印は良を、△印は可を、×印は不可をそれぞれ表している。
【0088】
【表2】
【0089】
実施例1〜3及び比較例1〜3において、全CODCr濃度(全有機物濃度)は殆ど同じ値であった。すなわち、細胞が有する有機物濃度はぼ同じであった。また、比較例1、2においては、ろ液CODCr濃度が極端に高くなっている。上述したように、比較例1、2においては、細胞が破壊されているのが顕微鏡により確認されていることから、有効成分の他に細胞内液が多量に漏出し、ろ液CODCr濃度が桁違いに高くなったと考えられる。
【0090】
一方、実施例1〜3においては、ろ液CODCr濃度が比較例3より高くなっており、回転数に応じて徐々に高くなっているが、比較例1、2ほど桁違いには高くなっていない。上述したように、実施例1〜3においては、細胞内部は破壊されていないのが顕微鏡により確認されていることから、細胞内液は漏出せず、細胞膜に含まれる有効成分のみが分離され、比較例3より高いろ液CODCr濃度として測定されたものと考えられる。また、回転数を上げれば、細胞膜に含まれる有効成分が、より多く分離されると考えられる。
【0091】
すなわち、実施例1〜3によれば、細胞内部を破壊することなく、細胞膜に含まれる有効成分が分離されたと考えられる。なお、機械的分離装置である例えば高圧ホモジナイザー等を用いて有効成分を細胞膜から分離しようとした場合には、細胞が破壊されてしまうことになる。