(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レンズの一方の光学面を形成するための成形面R1を有する第1の成形型、及び、他方の光学面を形成するための成形面R2を有する第2の成形型の空間座標における位置及び姿勢を特定する位置及び姿勢決め工程と、
前記空間座標における位置及び姿勢に基づいて、前記第1の成形型及び前記第2の成形型の少なくとも一方を回転、及び/又は傾斜させ、前記第2の成形型の基準面に対する前記第1の成形型の基準面の回転角度、及び/又は傾斜角度を維持して、前記第1の成形型及び前記第2の成形型を保持する成形型保持工程と、
前記第1の成形型の成形面R1及び前記第2の成形型の成形面R2を対向して配置させ、前記第1の成形型及び前記第2の成形型の外周を固定してレンズ成形型を組み立てる組み立て工程とを備え、
前記位置及び姿勢決め工程において、前記第1の成形型及び前記第2の成形型は、前記第1の成形型及び前記第2の成形型を載置可能な形状及び構成を有する載置部と、前記第1の成形型及び前記第2の成形型の外周を把持して固定することができる把持部とを備える治具に設置して行う、レンズ成形型の製造方法。
前記成形型保持工程は、前記第1の成形型及び前記第2の成形型の少なくとも一方を回転させた後に、前記第2の成形型の前記基準面に対する前記第1の成形型の前記基準面の回転角度を維持して、前記第1の成形型及び前記第2の成形型のそれぞれを第1の成形型保持具及び第2の成形型保持具で保持する請求項1に記載のレンズ成形型の製造方法。
前記成形型保持工程は、前記第1の成形型及び前記第2の成形型の少なくとも一方を傾斜させた後に、前記第2の成形型の前記基準面に対する前記第1の成形型の前記基準面の傾斜角度を維持して、前記第1の成形型及び前記第2の成形型のそれぞれを第1の成形型保持具及び第2の成形型保持具で保持する請求項1に記載のレンズ成形型の製造方法。
前記成形型保持工程は、前記第1の成形型及び前記第2の成形型のそれぞれを第1の成形型保持具及び第2の成形型保持具で保持した後に、前記第1の成形型及び前記第2の成形型の少なくとも一方を回転させ、前記第2の成形型の基準面に対する前記第1の成形型の基準面の回転角度を維持して保持する請求項1に記載のレンズ成形型の製造方法。
前記成形型保持工程は、前記第1の成形型及び前記第2の成形型のそれぞれを第1の成形型保持具及び第2の成形型保持具で保持した後に、前記第1の成形型及び前記第2の成形型の少なくとも一方を傾斜させ、前記第2の成形型の基準面に対する前記第1の成形型の基準面の傾斜角度を維持して保持する請求項1に記載のレンズ成形型の製造方法。
前記成形型保持工程後において、前記第1の成形型及び前記第2の成形型の前記空間座標における位置を特定する位置決め工程をさらに備える請求項1〜5のいずれか1項に記載のレンズ成形型の製造方法。
前記成形型保持工程において、3本以上の支柱を有する前記第1の成形型保持具及び前記第2の成形型保持具が、前記支柱で前記第1の成形型及び前記第2の成形型の回転、及び/又は傾斜を維持する請求項2〜5のいずれか1項に記載のレンズ成形型の製造方法。
前記成形型保持工程において、前記第1の成形型保持具及び前記第2の成形型保持具のそれぞれの前記支柱を駆動させ、前記第1の成形型及び前記第2の成形型を傾斜させる請求項7に記載のレンズ成形型の製造方法。
前記組み立て工程において、前記第1の成形型及び前記第2の成形型の外周を固定する前記粘着テープの巻き初めの位置を任意に設定する請求項9に記載のレンズ成形型の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
[レンズ成形型の製造方法]
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法のフローチャートである。
本発明の第1の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法は、
図1に示すように、位置及び姿勢決め工程S101と、成形型保持工程S102と、組み立て工程S103とを備える。
以下に、各工程についての詳細を説明する。
【0014】
まず、各工程で用いる第1の成形型及び第2の成形型について説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法で用いる第1の成形型の模式的断面図である。第1の成形型11は、
図2に示すように、レンズの一方の光学面(凸面)を転写形成するための凹面状の成形面R
1を有する。第1の成形型11の空間座標における位置及び姿勢を特定するために、第1の成形型11の基準面F
1、基準軸A
1及び基準点O
1を基準として用いる。第1の成形型11の基準面F
1とは、第1の成形型11において、成形面R
1の外周111を含む面をいう。第1の成形型11の基準軸A
1とは、第1の成形型11の基準面F
1の法線であって、成形面R
1の幾何学中心を通る中心軸をいう。第1の成形型11の基準点O
1とは、基準面F
1において、基準軸A
1と交わる点をいう。
図3は、本発明の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法で用いる第2の成形型の模式的断面図である。第2の成形型12は、
図3に示すように、レンズの他方の光学面(凹面)を転写形成するための凸面状の成形面R
2を有する。第2の成形型12の空間座標における位置及び姿勢を特定するために、第2の成形型12の基準面F
2、基準軸A
2及び基準点O
2を用いる。第2の成形型12の基準面F
2とは、第2の成形型12において、成形面R
2と対向する面の外周121を含む面をいう。第2の成形型12の基準軸A
2とは、第2の成形型12の基準面F
2の法線であって、成形面R
2の幾何学中心を通る中心軸をいう。第2の成形型12の基準点O
2とは、基準面F
2において、基準軸A
2と交わる点をいう。
第1の成形型11及び第2の成形型12は、ガラス、樹脂及び金属等の材料により形成される。第1の成形型11及び第2の成形型12は、同一の材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
【0015】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法の模式的工程図である。以下に、
図1で示す本発明の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法について、
図4を参照しながら説明する。
【0016】
<位置及び姿勢決め工程S101>
位置及び姿勢決め工程S101は、レンズの一方の光学面を形成するための成形面R
1を有する第1の成形型11、及び、他方の光学面を形成するための成形面R
2を有する第2の成形型12の空間座標における位置及び姿勢を特定する。
【0017】
位置及び姿勢決め工程S101は、
図4のS101の工程図で示すように、第1の成形型11を第1の治具21に設置し、第2の成形型12を第2の治具22に設置して行う。
第1の治具21は、載置部211と、把持部212と、軸部213とを備える。第2の治具22は、載置部221と、把持部222と、軸部223とを備える。
載置部211,221は、第1の成形型11及び第2の成形型12を載置可能な形状及び構成を有しており、第1の成形型11及び第2の成形型12を載置することで、第1の成形型11及び第2の成形型12のそれぞれの基準面F
1,F
2を決定することができる。載置部211,221は、第1の成形型11及び第2の成形型12を載置した状態で、基準軸A
1及び基準軸A
2を回転軸として周方向に回転させることが可能な回転部(図示せず)が設けられていることが好ましい。
把持部212,222は、それぞれ第1の成形型11及び第2の成形型12の外周を把持して固定することができる。第1の治具21及び第2の治具22が把持部212,222を備えることで、第1の成形型11及び第2の成形型12の外周の位置を特定することができ、更に、第1の成形型11及び第2の成形型12をより安定して固定することができる。把持部212,222は、第1の治具21及び第2の治具22に備えられるエアシリンダ等の駆動部(図示せず)により駆動する。
軸部213,223は、載置部211,221及び把持部212,222で固定された第1の成形型11及び第2の成形型12をそれぞれ独立して第1の成形型保持具31及び第2の成形型保持具32に対して傾斜させることができる。
【0018】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法で用いる第2の治具22及び第2の成形型保持具32の側面模式図である。
図6は、本発明の第1の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法で用いる第2の治具22及び第2の成形型保持具32の上面模式図である。載置部221を備える第2の治具22について、
図5及び
図6を参照して説明する。第2の治具22の載置部221は、第2の成形型12を載置可能な形状であれば特に限定されず、以下で説明する開口部を有する。
第2の治具22の載置部221が有する開口部の大きさは、第2の成形型12を第2の成形型保持具32で下方から保持できるように、載置部221の下方から見て、第2の成形型保持具32よりも大きい。また、開口部の大きさは、第2の成形型12を載置するため第2の成形型12の径よりも小さい。さらに、第2の治具22の載置部221に有する開口部は、第2の成形型12を下方から保持した第2の成形型保持具32が第2の治具22と相対的に水平移動(
図6で示す矢印のC方向)を可能とするように、水平方向にも開口している。つまり、載置部221は、当該開口部を有することによって、例えば、略U字型の形状となる。
第2の治具22は、載置部221上に載置した第2の成形型12に対して、
図6で示す矢印のA方向に把持部222を移動させ、把持部222で第2の成形型12を把持する。第2の成形型保持具32は、載置部221の下方から開口部を通して第2の成形型12に向かって移動し、第2の成形型保持具32が第2の成形型12を下方から保持する。第2の治具22は、第2の成形型保持具32で下方から保持された第2の成形型12に対して、
図6で示す矢印のB方向に把持部222を第2の成形型の外周部から遠ざかる方向に移動させ、第2の成形型12を開放する。
第2の成形型保持具32は、第2の成形型12を保持した状態で水平方向に開口部を通して移動し、第2の成形型12を第2の治具22から離す。
【0019】
具体的な作業としては、第1の治具21で固定された第1の成形型11及び第2の治具22で固定された第2の成形型12の外径をそれぞれ計測し、第1の成形型11及び第2の成形型12の芯出し(センタリング)を行う。芯出しの結果は、第1の成形型11の基準点O
1及び第2の成形型12の基準点O
2をそれぞれ原点とする空間座標とし、第1の成形型11及び第2の成形型12の要部が空間座標に基づいた位置として決定される。ここで、成形面R
1及び成形面R
2において、累進レンズにおけるプリズム測定基準点、又は単焦点レンズにおける光学中心と略同一位置となる幾何学中心(眼鏡レンズの幾何学中心)を加えて空間座標に基づいた位置として決定することが好ましい。
第1の成形型11及び第2の成形型12は、それぞれ載置部211,221に載置されていることで、基準面F
1,F
2が決定し、第1の成形型11及び第2の成形型12の空間座標における姿勢が基準面F
1,F
2に基づいて決定される。
【0020】
<成形型保持工程S102>
成形型保持工程S102は、位置及び姿勢決め工程S101で特定された空間座標における位置及び姿勢に基づいて、第1の成形型11及び第2の成形型12の少なくとも一方を回転、及び/又は傾斜させ、第2の成形型12の基準面F
2に対する第1の成形型11の基準面F
1の回転角度、及び/又は傾斜角度を維持して、第1の成形型11及び第2の成形型12を保持する。
【0021】
本実施形態において、成形型保持工程S102は、第1の成形型11及び第2の成形型12の少なくとも一方を回転、及び/又は傾斜させた後に、第2の成形型12の基準面F
2に対する第1の成形型11の基準面F
1の回転角度、及び/又は傾斜角度を維持して、第1の成形型11及び第2の成形型12のそれぞれを第1の成形型保持具31及び第2の成形型保持具32で保持する。
ここで、第1の成形型11及び第2の成形型12の「回転」とは、基準軸A
1及び基準軸A
2を回転軸として周方向に回す動きをいう。第1の成形型11及び第2の成形型12の「傾斜」とは、基準面F
1及び基準面F
2を傾ける動きをいう。
第1の成形型11及び第2の成形型12を回転させる方法としては、載置部211,221に設けられている回転部を駆動させることにより行う。第1の成形型11及び第2の成形型12を回転させることで、第2の成形型12の基準面F
2に対する第1の成形型11の基準面F
1の回転角度を特定のものにする。
第1の成形型11及び第2の成形型12を傾斜させる方法としては、軸部213,223を駆動させることにより行う。第1の成形型11及び第2の成形型12を傾斜させることで、第2の成形型12の基準面F
2に対する第1の成形型11の基準面F
1の傾斜角度を特定のものにする。
【0022】
図7は、本発明の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法で用いる第1の成形型保持具の模式図である。
図7を参照して、本実施形態において採用する第1の成形型保持具31及び第2の成形型保持具32について説明する。第1の成形型保持具31及び第2の成形型保持具32は、実質的に同じ構造及び機能を有するので、代表して第1の成形型保持具31について
図7を用いて説明する。第1の成形型保持具31は、支柱311と、吸着部312と、軸部313とを備える。第2の成形型保持具32は、支柱321と、吸着部322と、軸部323とを備える。
支柱311は、3本以上からなり、第1の成形型11とそれぞれの一端が接触し、それぞれの支柱311を駆動させることで、第1の成形型11の傾斜を制御することができる。また、支柱311は、傾斜させた第1の成形型11の傾斜角度を維持することができる。
吸着部312は、第1の成形型11を吸着する。吸着部312は、真空ポンプ及びエジェクタ等の真空発生装置(図示せず)に連結されており、第1の成形型11と密着した状態で吸着することにより、吸着部312内が負圧となり第1の成形型11を保持することができる。吸着部312は、第1の成形型11を保持することで、第1の成形型11の回転角度を維持することができる。
軸部313は、支柱311及び吸着部312によって、第1の成形型11の回転角度、及び/又は傾斜角度を維持しつつ、軸Cを回転中心として第1の成形型保持具31を回転させることができる。なお、軸Cは、基準軸A
1、基準軸A
2とは無関係である。
【0023】
成形型保持工程S102は、まず、
図4のS102(a)の工程図で示すように、第1の治具21を用いて、工程S101で特定された第1の成形型11の空間座標における位置及び姿勢の情報に応じて、第1の成形型11を傾斜させる。
図4の工程図では、一例として、第1の成形型11のみを傾斜させた形態として示したが、第1の成形型11及び第2の成形型12の両方を傾斜させてもよく、第2の成形型12のみを傾斜させてもよい。なお、第1の成形型11を更に回転させてもよく、第1の成形型11及び第2の成形型12の両方を回転させてもよく、第2の成形型12のみを回転させてもよい。
【0024】
次いで、
図4のS102(b)の工程図で示すように、第1の治具21、及び/又は第2の治具22によって保持されている第1の成形型11及び第2の成形型12に対して、第1の成形型保持具31及び第2の成形型保持具32を近づける。
【0025】
そして、
図4のS102(c)の工程図で示すように、第2の成形型12の基準面F
2に対する第1の成形型11の基準面F
1の回転角度、及び/又は傾斜角度を維持して、第1の成形型11及び第2の成形型12のそれぞれを第1の成形型保持具31及び第2の成形型保持具32で保持する。保持後、保持具32を回転させて、第2の成形型の回転角度を調整してもよい。なお、第2の成形型12の基準面F
2に対する第1の成形型11の基準面F
1の回転角度、及び/又は傾斜角度は、レンズ成形型の組み立て終了時まで維持される。
【0026】
次いで、成形型保持工程S102後において、第1の成形型11及び第2の成形型12の空間座標における位置を特定する位置決め工程をさらに備えることが好ましい。
位置決め工程は、
図4のS102(d)の工程図で示すように、第1の成形型保持具31及び第2の成形型保持具32で保持された第1の成形型11及び第2の成形型12において、レンズ成形型の組み立てに必要な寸法をそれぞれ測定装置41,42で測定する。レンズ成形型の組み立てに必要な第1の成形型11及び第2の成形型12の寸法としては、例えば、基準軸A
1における基準点O
1から成形面R
1までの距離、基準軸A
2における基準点O
2から成形面R
2までの距離、基準軸A
1における第1の成形型保持具31の吸着部312から成形面R
1までの距離、及び基準軸A
2における第2の成形型保持具32の吸着部322から成形面R
2までの距離等である。測定装置41,42は、例えば、接触型測定装置としてはマイクロゲージ及びダイヤルゲージ等が挙げられ、非接触型測定装置としてはレーザ変位計及び圧力計等が挙げられる。
位置決め工程は、測定した第1の成形型11及び第2の成形型12の寸法情報を参照し、位置及び姿勢決め工程S101で特定された空間座標における位置及び姿勢の情報を調整することで、レンズ成形型を組み立てる最終的な第1の成形型11及び第2の成形型12の空間座標における位置決めを行う。
【0027】
<組み立て工程S103>
組み立て工程S103は、第1の成形型11の成形面R
1及び第2の成形型12の成形面R
2を対向して配置させ、第1の成形型11及び第2の成形型12の外周を固定してレンズ成形型を組み立てる。
【0028】
具体的な作業としては、
図4のS103の工程図で示すように、第2の成形型12の基準面F
2に対する第1の成形型11の基準面F
1の回転角度、及び/又は傾斜角度を維持し、レンズの設計条件(例えば、レンズの中心厚、コバ厚)に基づいて、第1の成形型11及び第2の成形型12を所定の間隔で対向するように配置する。そして、第1の成形型11と第2の成形型12の相対的な回転角度、傾斜角度及び位置を保持した状態で、第1の成形型11の外周面及び第2の成形型12の外周面に、粘着テープ巻付装置130を用いて粘着テープ13が、その粘着剤層側を内側にして1周より少し多く巻き付けて貼り付けられている。第1の成形型11及び第2の成形型12の位置関係は、粘着テープ13によって固定される。
図8は、本発明の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法で製造した第1の成形型のみを傾斜させたレンズ成形型の模式図である。粘着テープ13によって固定されたレンズ成形型1は、
図8に示すように、第1の成形型11と第2の成形型12との間に、間隙14が設けられ、第1の成形型11の成形面R
1、第2の成形型12の成形面R
2、及び粘着テープ13の内面とで囲まれて閉塞したレンズ成形型1が形成される。粘着テープ13は、巻き初めの位置Sから1周より少し多く巻き付けて貼り付けられている。粘着テープを用いて外周を固定することで、第1の成形型11及び第2の成形型12の位置及び姿勢を維持しつつ、安価且つ簡便にレンズ成形型が形成できる。
図9は、本発明の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法で製造した第1の成形型及び第2の成形型を傾斜させたレンズ成形型1の模式図である。
図9に示す第1の成形型11及び第2の成形型12を共に傾斜させたレンズ成形型1は、得られるレンズの有効径を大きくすることができるという効果を奏する。
【0029】
粘着テープ13は、基材となるフィルムと粘着剤とから構成される帯状の樹脂製フィルムであり、一方の面に粘着剤層が形成されている。
基材は特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルを、フィルム状に加工することにより使用される。
粘着剤は、例えば、アクリル系、シリコン系等が好適に使用される。粘着剤は、レンズ原料液がレンズ成形型内に注入された際及び熱硬化時に、レンズ原料液中に溶解して、レンズに光学的欠損を発生させないように、レンズ原料液に対して耐性を有するものが好ましい。
なお、基材上には、基材及び粘着剤の密着性を改善させる目的で中間層を設けてもよい。
【0030】
組み立て工程S103において、第1の成形型11及び第2の成形型12の外周を固定する粘着テープ13の巻き初めの位置Sを任意に設定することが好ましい。レンズ原料液を注入する際は、粘着テープ13の巻き初めの位置Sの近傍から注入することになるため、第1の成形型11及び/又は第2の成形型12を傾斜させた後でも、レンズ原料液を注入可能な幅を有する位置を粘着テープ13の巻き初めの位置Sとして設定する。
【0031】
図4の工程図では、一例として、組み立て工程S103において粘着テープ13で第1の成形型11及び第2の成形型12の外周を固定する形態として示したが、粘着テープ13の代わりに、繰り返し使用可能な、ガスケットを用いて、第1の成形型11及び第2の成形型12の外周を固定する形態であってもよい。
ガスケットは、弾性を有する樹脂で構成される。ガスケットの材料としては、例えば、熱可塑性ポリウレタンエラストマー等を用いることができる。熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ソフトセグメント及びハードセグメントで構成される。ソフトセグメントは例えばポリメリックグリコールからなり、ハードセグメントは、例えば単分子鎖延長剤及びジイソシアネートからなる。なお、ポリメリックグリコール、単分子鎖延長剤及びジイソシアネートの種類及び量等は、ガスケットの形状及び成型するレンズの成型材料等によって適宜変更することができる。また、ガスケットの材料としては、その他、適度な弾性を有する材料であれば使用可能であり、例えば超低密度ポリエチレン、ポリオレフィンエラストマー等の材料を用いることもできる。
【0032】
<選択的工程>
第1の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法は、成形面R
1が累進面からなる場合、位置及び姿勢決め工程において、累進面を特定することが好ましい。
累進レンズのレンズ成形型1を製造する場合、第1の成形型11の成形面R
1は、累進面からなる。第1の成形型11及び第2の成形型12の空間座標における位置及び姿勢を特定するに当たって、累進面を特定しておく必要があるという観点から、位置及び姿勢決め工程S101で累進面を特定することが好ましい。
累進面を有するレンズ成形型を製造する場合、第1の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法を用いれば、多くの種類の治具類を管理する必要がなく、治具類の管理が複雑にならない。
【0033】
第1の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法は、位置及び姿勢決め工程S101又は成形型保持工程S102において、第1の成形型11及び第2の成形型12の軸出しを行うことが好ましい。軸出しは、成形型の位置及び姿勢の基準となりえる軸を検出することを意味する。軸としては、光軸、幾何中心軸、プリズム基底方向、累進方向、乱視軸方向、又はこれに関連する軸等が挙げられる。
第1の成形型11に対して行う軸出しとしては、プリズムレンズを製造する場合、プリズム基底方向の軸出しが行われる。また、第1の成形型11に対して行う軸出しとしては、第1の成形型11の成形面R
1が累進面からなる場合、累進方向の軸出しが行われる。
第2の成形型12に対して行う軸出しとしては、乱視処方レンズを製造する場合、乱視軸方向の軸出しが行われる。
第1の成形型11及び第2の成形型12の軸出しは、例えば、レーザ等の光の反射検出、ケガキ線の段差検出、及びオートメンズメータ等による光学特性検出により検出した画像についての画像処理によって行われる。
【0034】
第1の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法によれば、第1の成形型11及び第2の成形型12の少なくとも一方を回転、及び/又は傾斜させ、第2の成形型12の基準面F
2に対する第1の成形型11の基準面F
1の回転角度、及び/又は傾斜角度を維持して、第1の成形型11及び第2の成形型12を保持することができるので、様々なレンズの注文内容に対応したレンズ成形型を製造することができる。
また、第1の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法によれば、注文内容に応じて、成形面R
1を有する第1の成形型11、及び、成形面R
2を有する第2の成形型12の空間座標における位置及び姿勢を特定してレンズ成形型を製造することができるので、レンズブランクの非仕上げ面側を厚めに形成する必要がなくなり、レンズ原料液の利用率を向上させることができる。
【0035】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法は、第1の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法と比して、成形型保持工程S102が異なる。その他については実質的に同様であるので記載を省略する。
【0036】
図10は、本発明の第2の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法の模式的工程図である。以下に、本発明の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法について、
図10を参照しながら説明する。
【0037】
<成形型保持工程S102>
成形型保持工程S102は、第1の成形型11及び第2の成形型12のそれぞれを第1の成形型保持具31及び第2の成形型保持具32で保持した後に、位置及び姿勢決め工程S101で特定された空間座標における位置及び姿勢に基づいて、第1の成形型11及び第2の成形型12の少なくとも一方を回転、及び/又は傾斜させ、第2の成形型12の基準面F
2に対する第1の成形型11の基準面F
1の回転角度、及び/又は傾斜角度を維持して保持する。
【0038】
成形型保持工程S102は、まず、
図10のS102(a)の工程図で示すように、第1の治具21及び第2の治具22によって保持されている第1の成形型11及び第2の成形型12を、第1の成形型保持具31及び第2の成形型保持具32により保持する。このとき、第1の治具21及び第2の治具22は、回転、及び/又は傾斜させていない状態である。
【0039】
次いで、
図10のS102(b)の工程図で示すように、
図10のS102(a)で保持していた第1の治具21及び第2の治具22から、第1の成形型11及び第2の成形型12を離す。
【0040】
次いで、
図10のS102(b)及び(c)の工程図で示すように、第1の成形型保持具31及び第2の成形型保持具32を用いて、特定された第1の成形型11及び第2の成形型12の空間座標における位置及び姿勢に応じて、第1の成形型11を回転、及び/又は傾斜させ、第2の成形型12の基準面F
2に対する第1の成形型11の基準面F
1の回転角度、及び/又は傾斜角度を維持して保持する。なお、第2の成形型12の基準面F
2に対する第1の成形型11の基準面F
1の回転角度、及び/又は傾斜角度は、レンズ成形型の組み立て終了時まで維持される。
図10の工程図では、一例として、第1の成形型11のみを傾斜させた形態として示したが、第1の成形型11及び第2の成形型12の両方を傾斜させてもよく、第2の成形型12のみを傾斜させてもよい。なお、
図10の工程図では、一例として、第1の成形型11及び第2の成形型12の両方を回転させた形態として示したが、第1の成形型11及び第2の成形型12のいずれか一方のみを回転させてもよい。
第1の成形型11及び第2の成形型12を傾斜させる方法としては、第1の成形型保持具31及び第2の成形型保持具32のそれぞれの支柱312,322を駆動させ、第1の成形型11及び第2の成形型12を所望の傾斜角度にすることができる。
【0041】
次いで、成形型保持工程S102後において、第1の成形型11及び第2の成形型12の空間座標における位置を特定する位置決め工程をさらに備えることが好ましい。位置決め工程は、第1の実施形態と実質的に同様であるので記載を省略する。
【0042】
本発明の第2の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法でも、第1の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法と同様の効果を得ることができる。
また、本発明の第2の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法は、第1の治具21及び第2の治具22が第1の成形型11及び第2の成形型12を回転、及び/又は傾斜させることを要しないので、第1の治具21及び第2の治具22を回転、及び/又は傾斜させる回転部及び軸部213,223が不要であり、第1の治具21及び第2の治具22を簡略化することができる。
【0043】
[レンズ成形型形成システム]
図11は、レンズ成形型形成装置を含むレンズ成形型形成システムの構成図である。本発明の実施の形態に係るレンズ成形型形成システム50は、
図11に示すように、発注元からのオンラインでの注文に応じて眼鏡レンズを製造する眼鏡レンズ供給システムの一部を構成しており、発注元の例として眼鏡店60を、レンズ製造元の例としてレンズメーカの工場80を示している。眼鏡店60と工場80とは通信媒体51を介して接続されており、通信媒体51としては、例えば、インターネット、公衆通信回線、専用回線等を利用することができ、途中に中継局を設けるようにしてもよい。
なお、以下、発注元が眼鏡店60の場合で説明するが、これに限定されず、例えば眼科医院、個人、レンズメーカの営業所等であってもよい。また、発注元は一つに限られず、通信媒体51を介して多数の発注元がレンズ製造元に接続可能になっている。
【0044】
眼鏡店60には、注文用端末61と、眼鏡フレームの形状(リム枠の内周形状及び玉形となるレンズの外周形状)を測定するフレーム形状測定装置62が設置されている。注文用端末61は、通信媒体51を介して工場80側に接続するための通信手段を有し、レンズを注文するために必要な情報が送受信可能になっている。
【0045】
工場80には、注文用端末61からの注文を受注する処理と、その受注内容に基づいてレンズの製造に必要なデータを作成する処理とを行うとともに、それらデータを記憶するコンピュータである工場サーバ90と、受注内容及び作成されたデータ等に基づいてレンズ成形型を形成するレンズ成形型形成装置100とを有している。
【0046】
工場サーバ90は、処理部91と記憶部92とを有している。工場サーバ90は、眼鏡店60からレンズの注文を受け付けると、受注処理部911、設計データ処理部912により、受注データ921及び設計データ922を作成する。
処理部91は、注文用端末61からの注文を受注し受注データ921として記憶する受注処理部911と、この受注データ921に基づいて眼鏡レンズの形状を計算し設計データ922として記憶する設計データ処理部912と、これら受注データ921及び設計データ922に基づいて各種製造工程における装置の制御データや加工条件を作成し加工データ923として記憶する加工データ作成部913とを有する。
記憶部92は、受注データ921、設計データ922、及び、加工データ923の他に、処理部91での処理に必要な、レンズ情報924、フレーム情報925、第1及び第2の成形型の情報である成形型情報926等も記憶されている。
【0047】
設計データ処理部912は、アンカットレンズのレンズ形状とそのレンズ上に想定される玉形加工後のレンズ形状を計算する機能を有する。また、設計データ処理部912は、受注したレンズが累進レンズの場合には、アンカットプリズムシニングを施したレンズ形状を設計する機能と、玉形プリズムシニングを施したレンズ形状を設計する機能とを有している。そして、それぞれのレンズ形状におけるレンズ前面及び後面の形状情報、その前後面の配置に関する情報、レンズ上に想定される玉形形状情報、プリズム測定基準点位置情報、プリズム屈折力等が設計データ922に記憶される。なお、受注データに処方プリズムが指定されていない場合、プリズム屈折力は、アンカットプリズムシニング及びその基底方向(垂直)、並びに、玉形プリズムシニング及びその基底方向(垂直)となる。
【0048】
加工データ処理部913は、受注したレンズが累進レンズの場合に、設計データ922に記憶されているアンカットプリズムシニングを施した場合のプリズム屈折力(処方プリズムを有さない場合はアンカットプリズムシニング)と玉形プリズムシニングを施した場合のプリズム屈折力(処方プリズムを有さない場合は玉形プリズムシニング)に基づいて、第2の成形型の基準面に対する第1の成形型の基準面の傾斜角度を算定する機能を有する。また、これら算出された傾斜角度を含む設計データ922、成形型情報926に基づいて使用する第1の成形型11及び第2の成形型12が選定される。また、処方プリズムが指定されている場合には、第2の成形型の基準面F
2に対する第1の成形型の基準面F
1の回転角度も決定される。また、第1の成形型11及び第2の成形型12の保持間隔である成形型保持間隔が算出される。算出された傾斜角度、回転角度及び成形型保持間隔、並びに、使用するツール(第1の成形型11、第2の成形型12)等は、加工データ923に記憶される。
【0049】
ここで、受注データ921としては、例えば、眼鏡レンズ情報、眼鏡フレーム情報、処方値、レイアウト情報などがある。レンズ情報924としては、レンズ材質、屈折率、レンズ前後面の光学設計の種類、レンズ外径、レンズ中心厚、コバ厚、偏心、ベースカーブ、累進帯長、インセット量、ヤゲン加工の種類、染色カラー、コーティングの種類、プリズムシニングの種類(アンカットプリズムシニング、玉形プリズムシニング)などがある。フレーム情報925としては、例えば、製品識別名、フレームサイズ、素材、フレームカーブ、玉形形状、フレームトレーサによって測定されたフレーム形状及びレンズ形状等がある。処方値としては、例えば、球面屈折力、乱視屈折力、乱視軸、処方プリズム、加入屈折力等がある。レイアウト情報としては、例えば、瞳孔間距離、近用瞳孔間距離、アイポイント位置等がある。
【0050】
レンズ成形型形成装置100は、治具110、成形型保持具120、粘着テープ巻付装置130、及びこれらを制御するコンピュータである制御装置140を有している。
治具110は、上述した第1の治具21及び第2の治具22を備える。成形型保持具120は、上述した第1の成形型保持具31及び第2の成形型保持具32を備える。
【0051】
テープ巻付装置130は、図示はしないが、粘着テープのロールをレンズ成形型の回転軸と平行な軸で回転可能に保持するテープ保持部と、粘着テープロールから粘着テープを引き出し、その引き出された先端の粘着面を第1の成形型11及び第2の成形型12の外周に貼り付けるテープ貼付機構部と、粘着テープを巻き付けた後にテープを切るテープカット機構部とを備える。
【0052】
制御装置140は、工場サーバ90にネットワークを介して接続されており、工場サーバ90の記憶部92に記憶された受注データ921、設計データ922、加工データ923等をデータ受信可能になっている。そして、制御装置140は、治具110の回転駆動手段及び移動駆動手段、成形型保持具120の支柱駆動手段、吸着部駆動手段及び軸部駆動手段、並びにテープ巻付装置130のテープ貼付機構部駆動手段及びテープカット機構部駆動手段等を制御する制御部を備える。制御装置140としては、コンピュータ、プログラマブルコントローラ、それらの組み合わせ等を用いることができる。
【0053】
[眼鏡レンズの製造方法]
図12は、本発明の実施の形態に係る眼鏡レンズの製造方法のフローチャートである。本発明の実施の形態に係る眼鏡レンズの製造方法は、
図12に示すように、位置及び姿勢決め工程S101と、成形型保持工程S102と、組み立て工程S103とを備える上述したレンズ成形型の製造方法により組み立てられたレンズ成形型内にモノマー組成物を含むレンズ原料液を充填する充填工程S104と、充填されたレンズ原料液を重合硬化させてレンズを成形する硬化工程S105とを備える。
【0054】
S101からS103までのレンズ成形型の製造方法については上述したので、ここでの説明を省略する。
S101からS103までの工程により組み立てられた眼鏡レンズのレンズ成形型1は、充填工程S104に移行する。
【0055】
<充填工程S104>
充填工程S104において、組み立て工程S103で組み立てられたレンズ成形型1の粘着テープ13を一部剥がして間隙14と外部とをつなぐ注入口を形成する。そして、この注入口から、プラスチックレンズの原料液を間隙14へ注入する。レンズ原料液が間隙14を満たし、注入口まで達したところで注入を停止し、注入口に再び粘着テープ13を貼り直す。
【0056】
本発明で用いるレンズ原料液を構成するモノマー組成物は特に限定されないが、モノマー組成物としては、例えば、ポリチオウレタン樹脂を含む組成物が挙げられる。ポリチオウレタン樹脂としては、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物との組み合わせ、あるいはビス(β−エピチオプロピル)スルフィド及びビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド等のエピチオ基含有化合物などが挙げられる。上記ポリイソシアネート化合物としては、1,3-ジイソシアナトメチル−シクロヘキサン及びキシレンジイソシアネートなどが挙げられる。上記ポリチオール化合物としては、ペンタエリスリトールテトラキス−(2−メルカプトアセテート)、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、メルカプトメチル−ジチア−オクタンジチオール及びビス(メルカプトメチル)−トリチアウンデカン−ジチオール等が挙げられる。
本発明で用いるモノマー組成物には、通常プラスチックレンズの製造に用いる公知の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
添加剤としては、例えば、吸光特性を改良するための、紫外線吸収剤、色素及び顔料等の色材、耐候性を改良するための、酸化防止剤及び着色防止剤等、成形加工性を改良するための離型剤等を挙げることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系及びサリチル酸系等の紫外線吸収剤が挙げられる。
色材としては、例えば、アントラキノン系及びアゾ系等の色材が挙げられる。
酸化防止剤又は着色防止剤としては、例えば、モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系、硫黄系及びリン系等の酸化防止剤又は着色防止剤が挙げられる。
離型剤としては、例えば、フッ素界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、酸性リン酸エステル及び高級脂肪酸等が挙げられる。
【0057】
<硬化工程S105>
次いで、硬化工程S105において、モノマー組成物を充填したレンズ成形型1を重合炉に投入し、所定の温度に加熱して原料のモノマーを重合させる。
重合終了後、レンズ成形型1を重合炉から取り出し、室温まで冷却した後、粘着テープ13、第1の成形型11、第2の成形型12を取り外し、成形されたプリズムレンズを取り出す。
【0058】
上述のように、レンズ成形型1を構成し、このレンズ成形型1を使用してレンズを注型重合法により成形することにより、様々な処方が施された、アンカットレンズ(玉形加工前のフィニッシュトレンズ)としての眼鏡レンズを製造することができる。また、レンズ前面に累進面を有するアンカットレンズとしての累進屈折力レンズも製造することができる。
このように製造された眼鏡レンズは、受注内容に応じてレンズの表裏面に各種表面処理(コーティング)が施され、その後、所望の玉形に玉形加工され、眼鏡フレームに取り付けられて眼鏡となる。
【0059】
[眼鏡レンズ]
図13は、本発明の実施の形態に係る眼鏡レンズの一例である眼鏡レンズ(プリズムレンズ)の模式的断面図である。眼鏡レンズの製造方法により製造された眼鏡レンズ2は、
図13に示すように、一端コバ厚D
tと他端コバ厚D
bが異なっているレンズである。
図13に示す眼鏡レンズ2の例では、一端コバ厚D
tが他端コバ厚D
bより薄くなっている。
眼鏡レンズ2は、レンズ凸面2Aと、レンズ凹面2Bとを有し、レンズ凸面2A、凹面2Bの周りには、コバ面2Cが形成されている。レンズ凸面2Aは、累進面を有してもよい。レンズ凹面2Bは、球面、非球面、累進面、トロイダル面、又は非トロイダルレンズとすることができる。
【0060】
眼鏡レンズ2のレンズ凸面2A及びレンズ凹面2Bは、レンズ成形型1を使用してレンズを注型重合法により成形することにより、切削加工で形成するよりも平滑にすることができる。
眼鏡レンズ2のレンズ凸面2A及びレンズ凹面2BにおけるJIS B0601:2001の算術平均粗さRaが1.0μm以下であることが好ましく、0.9μm以下であることがより好ましく、0.8μm以下であることがさらに好ましい。眼鏡レンズ2のレンズ凸面2A及びレンズ凹面2Bの算術平均粗さRaが上記範囲であることによって、レンズ表面での散乱を減少させることができ、レンズの透明度を良好にすることができる。
【0061】
眼鏡レンズ2の材料は、可視光透過性の材料であることを要し、屈折率が1.50以上2.00以下であることが好ましく、1.52以上1.90以下であることがより好ましく、1.54以上1.80以下であることがさらに好ましい。屈折率が上記範囲に該当する材料としては、例えば、アクリル樹脂、チオウレタン樹脂、及びチオエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0062】
最後に、本発明の第1及び第2の実施の形態について図等を用いて総括する。
第1の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法は、
図1〜6に示すように、
レンズの一方の光学面を形成するための成形面R
1を有する第1の成形型11、及び、他方の光学面を形成するための成形面R
2を有する第2の成形型12の空間座標における位置及び姿勢を特定する位置及び姿勢決め工程S101と、
空間座標における位置及び姿勢に基づいて、第1の成形型11及び第2の成形型12の少なくとも一方を回転、及び/又は傾斜させ、第2の成形型12の基準面F
2に対する第1の成形型11の基準面F
1の回転角度、及び/又は傾斜角度を維持して、第1の成形型11及び第2の成形型12を保持する成形型保持工程S102と、
第1の成形型11の成形面R
1及び第2の成形型12の成形面R
2を対向して配置させ、第1の成形型11及び第2の成形型12の外周を固定してレンズ成形型1を組み立てる組み立て工程S103とを備える。
第1の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法における成形型保持工程S102は、
図4に示すように、第1の成形型11及び第2の成形型12の少なくとも一方を回転、及び/又は傾斜させた後に、第2の成形型12の基準面F
2に対する第1の成形型11の基準面F
1の回転角度、及び/又は傾斜角度を維持して、第1の成形型11及び第2の成形型12のそれぞれを第1の成形型保持具31及び第2の成形型保持具32で保持する。
第2の実施の形態に係るレンズ成形型の製造方法における成形型保持工程S102は、
図10に示すように、第1の成形型11及び第2の成形型12のそれぞれを第1の成形型保持具31及び第2の成形型保持具32で保持した後に、第1の成形型11及び第2の成形型12の少なくとも一方を回転、及び/又は傾斜させ、第2の成形型12の基準面F
2に対する第1の成形型11の基準面F
1の回転角度、及び/又は傾斜角度を維持して保持する。
また、
図11を参照して、レンズ成形型形成システム50について総括する。レンズ成形型形成システム50に関して、例えば、下記の〔1〕又は〔2〕の実施の形態が挙げられる。
〔1〕注文用端末61からの注文を受注する処理と、その受注内容に基づいてレンズの製造に必要なデータを作成する処理とを行うとともに、それらデータを記憶するサーバ90と、受注内容及び作成されたデータ等に基づいてレンズ成形型を形成するレンズ成形型形成装置100とを備える、レンズ成形型形成システム50。
〔2〕サーバ90と、レンズ成形型形成装置100とを備え、
前記サーバ(90)が、注文用端末61からの注文を受注する処理部911、その受注内容に基づいてレンズの製造に必要なデータを作成する処理部(
図11中で、設計データ処理部912及び設計データ処理部912)及び、成形型情報926が記憶された記憶部92を有し、
前記レンズ型成型装置100が、治具110、成形型保持具120、テープ巻付装置130、及びこれらを制御する制御装置140を有し、且つ、前記サーバ90にネットワークを介して接続されており、サーバ90からレンズの製造に必要なデータを受信可能である、レンズ成形型形成システム50。
【0063】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。