特許第6693672号(P6693672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6693672RF電力増幅および分配システム、プラズマ点火システム、ならびにそれらの動作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6693672
(24)【登録日】2020年4月20日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】RF電力増幅および分配システム、プラズマ点火システム、ならびにそれらの動作方法
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/20 20060101AFI20200427BHJP
   F02P 23/04 20060101ALI20200427BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20200427BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
   H03F3/20
   F02P23/04 B
   H03F3/68 220
   H05H1/24
【請求項の数】20
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-240217(P2014-240217)
(22)【出願日】2014年11月27日
(65)【公開番号】特開2015-109647(P2015-109647A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2017年11月8日
(31)【優先権主張番号】13306666.2
(32)【優先日】2013年12月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504199127
【氏名又は名称】エヌエックスピー ユーエスエイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NXP USA,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】リオネル モンジャン
(72)【発明者】
【氏名】ピエール マリー ジェイ ピール
(72)【発明者】
【氏名】マリオ エム ボカティウス
【審査官】 渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−078213(JP,A)
【文献】 特開昭62−282166(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/005201(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/021852(WO,A1)
【文献】 特開昭63−161703(JP,A)
【文献】 特開2012−175435(JP,A)
【文献】 特開2001−168789(JP,A)
【文献】 米国特許第07245257(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/20
H03F 3/68
F02P 23/04
H05H 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
N個の増幅器であって、Nは1よりも大きく、該N個の増幅器の各増幅器は、N個の位相シフト高周波(RF)信号のうちの1つを受信するように構成されており、該N個の増幅器は、前記N個の位相シフトRF信号を増幅して、N個の増幅位相シフトRF信号を生成するようにさらに構成されている、前記N個の増幅器と、
N個の入力ポートおよびN個の出力ポートを有する電力合成器ネットワークであって、前記N個の入力ポートの各々は前記N個の増幅器のうちの1つの出力に結合されており、該電力合成器ネットワークは、前記N個の増幅位相シフトRF信号を合成して、前記N個の出力ポートにおいてN個の出力RF信号を生成するように構成されており、前記N個の出力RF信号の相対電力レベルは、前記N個の増幅位相シフトRF信号間の位相差に応じて決まる、前記電力合成器ネットワークと、
前記電力合成器ネットワークの前記N個の出力ポートに結合されている最大N個の放射デバイスであって、該放射デバイスの各々は、内燃エンジンの最大N個のシリンダのうちの一つに結合されており、該放射デバイスの各々は、前記N個の出力RF信号のうちの1つの出力RF信号を受信するように構成されている、前記最大N個の放射デバイスと
を備える、システム。
【請求項2】
前記N個の増幅器の入力に結合されているN個の移相器をさらに備え、各移相器は、N個の入力RF信号のうちの1つを受信するように構成されており、前記N個の移相器は、前記N個の位相シフトRF信号を生成するために、前記N個の入力RF信号に所定の位相シフトを加えるようにさらに構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電力合成器ネットワークは、複数の所定の位相差セットが前記N個の増幅位相シフトRF信号間に存在するとき、前記N個の増幅位相シフトRF信号を合成して、前記N個の出力ポートのうちの第1の出力ポートにおいて相対的に高い電力レベルを有する1つの出力RF信号を生成し、残りのN−1個の出力ポートにおいて相対的に低い電力レベルを有するN−1個の出力RF信号を生成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記相対的に高い電力レベルは40dBmよりも大きく、前記相対的に低い電力レベルは40dBmよりも小さい、請求項に記載のシステム。
【請求項5】
Nは4に等しく、前記増幅器は第1の増幅位相シフト信号、第2の増幅位相シフト信号、第3の増幅位相シフト信号、および第4の増幅位相シフト信号を生成し、前記電力合成器ネットワークは、
前記第1の増幅位相シフト信号、前記第2の増幅位相シフト信号、前記第3の増幅位相シフト信号、および前記第4の増幅位相シフト信号をそれぞれ受信するように構成されている第1の入力ポート、第2の入力ポート、第3の入力ポート、および第4の入力ポートと、
それぞれ第1の出力RF信号、第2の出力RF信号、第3の出力RF信号、および第4の出力RF信号を出力するように構成されている第1の出力ポート、第2の出力ポート、第3の出力ポート、および第4の出力ポートと、
第1の入力および第2の入力ならびに第1の出力および第2の出力を有する第1の合成器であって、前記第1の入力および第2の入力は前記第1の入力ポートおよび第2の入力ポートに結合されており、該第1の合成器は、前記第1の増幅位相シフトRF信号および第2の増幅位相シフトRF信号を合成して、前記第1の出力および第2の出力において第1の中間RF信号および第2の中間RF信号を生成するように構成されている、前記第1の合成器と、
第3の入力および第4の入力ならびに第3の出力および第4の出力を有する第2の合成器であって、前記第3の入力および第4の入力は前記第3の入力ポートおよび第4の入力ポートに結合されており、該第2の合成器は、前記第3の増幅位相シフトRF信号および第4の増幅位相シフトRF信号を合成して、前記第3の出力および第4の出力において第3の中間RF信号および第4の中間RF信号を生成するように構成されている、前記第2の合成器と、
第5の入力および第6の入力ならびに第5の出力および第6の出力を有する第3の合成器であって、前記第5の入力は前記第1の合成器の前記第1の出力に結合されており、前記第6の入力は前記第2の合成器の前記第3の出力に結合されており、該第3の合成器は、前記第1の中間RF信号および第3の中間RF信号を合成して、前記第5の出力および第6の出力において前記第1の出力RF信号および第2の出力RF信号を生成するように構成されており、前記第5の出力および第6の出力はそれぞれ前記第1の出力ポートおよび第2の出力ポートに結合されている、前記第3の合成器と、
第7の入力および第8の入力ならびに第7の出力および第8の出力を有する第4の合成器であって、前記第7の入力は前記第1の合成器の前記第2の出力に結合されており、前記第8の入力は前記第2の合成器の前記第4の出力に結合されており、該第4の合成器は、前記第2の中間RF信号および第4の中間RF信号を合成して、前記第7の出力および第8の出力において前記第3の出力RF信号および第4の出力RF信号を生成するように構成されており、前記第7の出力および第8の出力はそれぞれ前記第3の出力ポートおよび第4の出力ポートに結合されている、前記第4の合成器と
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の合成器、前記第2の合成器、前記第3の合成器、および前記第4の合成器は90度合成器である、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の合成器、前記第2の合成器、前記第3の合成器、および前記第4の合成器は180度合成器である、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
1つの入力およびN個の出力を有する電力分割器であって、該電力分割器は、前記入力上で受信される入力RF信号を分割してN個の分割RF信号にし、前記N個の出力上で前記N個の分割RF信号を提供するように構成されている、前記電力分割器と、
前記電力分割器の前記N個の出力と前記N個の増幅器のN個の入力との間に結合されているN個の移相器であって、各移相器は、前記N個の分割RF信号のうちの1つを受信するように構成されており、該N個の移相器は、前記N個の位相シフトRF信号を生成するために、前記N個の分割RF信号に所定の位相シフトを加えるようにさらに構成されている、N個の移相器と
をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記放射デバイスの各々は、前記出力RF信号の電力レベルが十分に高いときにプラズマ放電を生成するように構成されている、前記最大N個の放射デバイスをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
インターフェース、および、前記N個の増幅器の入力に結合されているN個の移相器を含むモジュールであって、各移相器は、N個の入力RF信号のうちの1つを受信するように構成されており、前記N個の移相器は、前記N個の位相シフトRF信号を生成するために前記N個の入力RF信号に所定の位相シフトを加えるようにさらに構成されている、前記モジュールと、
最大N個のシリンダを有する内燃エンジンであって、前記放射デバイスのうちの1つの放射デバイスは前記シリンダの各々に結合されている、前記内燃エンジンと、
前記モジュールの前記インターフェースに制御信号を送るように構成されている制御ユニットであって、前記制御信号は、前記所定の位相シフトが、結果として、前記シリンダの動力工程中に各シリンダにおいて前記プラズマ放電を生成することになる所定のシーケンスに変更されるようにする、前記制御ユニットと
をさらに備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
最大N個のシリンダを有する内燃エンジンのためのプラズマ点火システムであって、Nは1よりも大きく、該プラズマ点火システムは、
1つの入力およびN個の出力を有する電力分割器であって、該電力分割器は、前記入力上で受信される入力高周波(RF)信号を分割してN個の分割RF信号にし、前記N個の出力上で前記N個の分割RF信号を提供するように構成されている、前記電力分割器と、
各々が入力および出力を有するN個の移相器であって、各入力は前記電力分割器の前記N個の出力のうちの1つに結合されており、各移相器は、前記N個の分割RF信号のうちの1つを受信し、N個の位相シフトRF信号を生成するために、前記N個の分割RF信号に複数の所定の位相シフトのうちの1つを加えるように構成されている、前記N個の移相器と、
前記N個の移相器に結合されているN個の増幅器であって、該N個の増幅器は、前記N個の位相シフトRF信号を受信するように構成されており、該N個の増幅器は、前記N個の位相シフトRF信号を増幅して、N個の増幅位相シフトRF信号を生成するようにさらに構成されている、前記N個の増幅器と、
N個の入力ポートおよびN個の出力ポートを有する電力合成器ネットワークであって、前記N個の入力ポートの各々は前記N個の増幅器のうちの1つの出力に結合されており、該電力合成器ネットワークは、前記N個の増幅位相シフトRF信号を合成して、前記N個の出力ポートにおいてN個の出力RF信号を生成するように構成されており、前記N個の出力RF信号の相対電力レベルは、前記N個の増幅位相シフトRF信号間の位相差に応じて決まる、前記電力合成器ネットワークと、
最大N個の放射デバイスであって、該放射デバイスの各々は前記電力合成器ネットワークの前記N個の出力ポートのうちの1つに結合されており、該放射デバイスの各々は、前記N個の出力RF信号のうちの1つの出力RF信号を受信するように構成されており、前記放射デバイスの各々は、前記出力RF信号の電力レベルが十分に高いときにプラズマ放電を生成するように構成されている、前記最大N個の放射デバイスと
を備える、プラズマ点火システム。
【請求項12】
RF電力の周期パルスを含むRF信号を生成するように構成されているRF信号生成器と、
前記RF信号生成器と前記電力分割器との間に結合されている前置増幅器であって、該前置増幅器は、前記入力RF信号を生成するために、前記RF信号生成器からの前記RF信号を増幅するように構成されている、前記前置増幅器と
をさらに備える、請求項11に記載のプラズマ点火システム。
【請求項13】
前記複数の所定の位相シフトが、結果として、前記放射デバイスの各々によって前記プラズマ放電を生成することになる所定のシーケンスに変更されるようにするように構成されている制御ユニットをさらに備える、請求項11に記載のプラズマ点火システム。
【請求項14】
方法であって、
N個の位相シフト高周波(RF)信号を生成するためにN個の入力RF信号に所定の位相シフトを加える工程であって、Nは1よりも大きい、前記加える工程と、
N個の増幅位相シフトRF信号を生成するために前記位相シフトRF信号を増幅する工程と、
前記N個の増幅位相シフトRF信号を合成して、N個の出力ポートにおいてN個の出力RF信号を生成する工程であって、前記N個の出力RF信号の相対電力レベルは、前記N個の増幅位相シフトRF信号間の位相差に応じて決まる、前記合成する工程と、
内燃エンジンの最大N個のシリンダに結合されている最大N個の放射デバイスに前記出力RF信号を提供する工程と
を備える、方法。
【請求項15】
前記合成する工程は、90度合成器のネットワークを使用して前記N個の増幅位相シフトRF信号を合成する工程を備え、前記ネットワークの各90度合成器は第1の入力および第2の入力ならびに第1の出力および第2の出力を含み、各90度合成器が、互いに実質的に90度位相がずれている第1の増幅位相シフトRF信号および第2の増幅位相シフトRF信号を受信すると、各90度合成器は、前記第1の出力および第2の出力のうちの一方において、相対的に高い電力レベルを有する第1のRF信号を生成し、前記第1の出力および第2の出力のうちのもう一方において、相対的に低い電力レベルを有する第2のRF信号を生成する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記合成する工程は、180度合成器のネットワークを使用して前記N個の増幅位相シフトRF信号を合成する工程を備え、前記ネットワークの各180度合成器は第1の入力および第2の入力ならびに第1の出力および第2の出力を含み、各180度合成器が、互いに実質的に同相である第1の増幅位相シフトRF信号および第2の増幅位相シフトRF信号を受信すると、各180度合成器は、前記第1の出力において、相対的に高い電力レベルを有する第1のRF信号を生成し、前記第2の出力において、相対的に低い電力レベルを有する第2のRF信号を生成し、各180度合成器が、互いに実質的に180度位相がずれている前記第1の増幅位相シフトRF信号および第2の増幅位相シフトRF信号を受信すると、各180度合成器は、前記第2の出力において、前記相対的に高い電力レベルを有する前記第1のRF信号を生成し、前記第1の出力において、相対的に低い電力レベルを有する前記第2のRF信号を生成する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記放射デバイスが十分に高い電力レベルの出力RF信号を受信するときに、前記放射デバイスの各々によって、前記放射デバイスが結合されているシリンダ内にプラズマ放電を生成する工程をさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記シリンダのうちの、次に動力工程を実行することになるシリンダを判定する工程と、
結果として、前記N個の出力ポートのうちの第1の出力ポートにおいて相対的に高い電力レベルを有する1つの出力RF信号を生成することになり、残りのN−1個の出力ポートにおいて相対的に低い電力レベルを有するN−1個の出力RF信号を生成することになる前記所定の位相シフトの次のセットを決定する工程と、
前記加える工程の間に前記入力RF信号に前記所定の位相シフトの前記次のセットを加えるように、N個の移相器を制御する工程と
をさらに備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
制御する工程は、
前記移相器を含むモジュールに制御信号を送る工程であって、前記制御信号は、前記所定の位相シフトの前記次のセットを示す、前記送る工程と、
前記制御信号に基づいて前記位相シフトを調整する工程と
を備える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第1のRF信号を分割して前記N個の入力RF信号にする工程をさらに備える、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載する主題の実施形態は、概して、高周波(RF)電力分配システムに関し、より詳細には、RF電力を内燃エンジンの複数のシリンダに送達するためのRF電力分配システムを含むプラズマ点火システムに関する。
【背景技術】
【0002】
動力車の一般的な内燃エンジンは、複数のシリンダと、それらに関連付けられているピストンと、クランクシャフトと、燃料送達および排出システム(カムシャフトおよび関連付けられている弁を含む)と、点火システムとを含み、それらの組合せが、車両の主要トルク生成サブシステムを構成する。ピストンがシリンダ内に適切に係合されているとき、ピストンの上部、シリンダ側壁、および、シリンダの上に位置するシリンダヘッドによって燃焼室が画定される。エンジンの動作中、燃焼室の容積は、シリンダ内でピストンが直線的に運動することによって変化する。燃焼室の容積の変動が、最終的に、車両を推進するためのトルクに変換され得る。
【0003】
より具体的には、2ストロークおよび4ストロークの両方のエンジンにおいて、それぞれ、ピストン圧縮行程および動力工程の間に、燃焼室の容積は低減および増大する。圧縮行程の前(すなわち、吸気行程の間)に、カムシャフトが回転することによって吸気弁が開き、これによって、霧状の燃料が室内へ噴射されて、室内に燃料/空気混合物が生成されることが可能になる。圧縮行程の間、ピストンはシリンダヘッドに向かって(または「上死点」位置に向かって)押され、これによって、燃料/空気混合物が圧縮され、したがって、混合物の熱エネルギーが増大する。ピストンが上死点位置に達するとき、またはそれに近い時点において、点火プラグが燃焼室内に火花を生成する。火花は、圧縮された燃料/空気混合物に点火し、爆発力によって燃料/空気混合物を燃焼および膨張させる。膨張する力によってピストンの動力工程が開始し、その間、爆発する燃料がピストンをシリンダヘッドから外方に急速に動かす。後続の排気行程の間、カムシャフトが回転することによって排気弁が開き、したがって、燃焼室内の気体(たとえば、排出ガス)がシリンダを出ることが可能になる。
【0004】
各ピストンは、クランクシャフトに結合されているコネクティングロッドを有し、動力工程の間、コネクティングロッドはクランクシャフトに強い直線力をもたらし、クランクシャフトは直線力を回転力に変換する。クランクシャフトを回転したままにするために、各ピストンによってクランクシャフトにもたらされる直線力の位相が互いにずれるように、複数の室内の燃焼がタイミング調整される。より具体的には、点火システムのディストリビュータが使用されて、点火コイルから各点火プラグへと高電圧が、慎重にタイミング調整された正確な点火順でルーティングされる。クランクシャフトの回転力に関連付けられるトルクは最終的に車軸および車輪の回転に変換されることができ、したがって車両を推進することが可能になる。
【0005】
実際には、上述の燃焼過程は100%効率的ではない。たとえば、各燃焼サイクルの間、各動力工程後に一定量の未燃焼燃料が燃焼室内に残り、未燃焼燃料は排気行程の間に大気に排出される。燃焼サイクルの間に燃焼されないままになる燃料の量は、車両の燃焼効率に影響を与える。従って、エンジン開発者は、各燃焼サイクルの間に燃焼される各室内の燃料の割合を増大させるように、点火システムを改善する努力をしている。
【0006】
加えて、燃料/空気混合物を燃焼する結果として、様々な気体が生成されることになり、これらは車両の排気システムを通じて車両から排出される。たとえば、一般的な石油系燃料エンジンにおいて、排出ガスは、中でも、窒素酸化物(NO)、二酸化炭素(CO)、および一酸化炭素(CO)を含む。排出ガスのいくつかは、十分な量が存在するとき、人間および環境に対して有害であり得る。従って、エンジン開発者は、環境中に排出される、有害な可能性がある気体の量を低減するために燃料および点火システムを修正する努力もしている。
【0007】
以下の図面と併せて考察して詳細な説明および請求項を参照することで、より完全に本主題を理解することができる。これらの図面では全般にわたり同様の参照符号は類似の要素を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2592911号明細書
【特許文献2】国際公開第2012/161228号
【特許文献3】欧州特許出願公開第2621085号明細書
【特許文献4】米国特許第3934566号明細書
【特許文献5】国際公開第03/042533号
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】例示的な一実施形態に応じた、4気筒エンジンのためのプラズマ点火システムの簡略ブロック図。
図2】例示的な一実施形態に応じた、4気筒エンジンのための分配されるRF電力信号のタイミングを示すタイミング図。
図3】例示的な一実施形態に応じた、RF電力増幅および分配システムの概略図。
図4】例示的な一実施形態に応じた、RF電力増幅および分配システムを含むプラズマ点火システムを動作させる方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
下記の詳細な記載は本来説明のためのものに過ぎず、本主題の実施形態またはこのような実施形態の適用および使用を限定することを意図しない。本明細書で使用される「例示的な」および「例」という言葉は、「事例、具体例、または実例としての役割を果たすこと」を意味する。例示または例として本明細書に記載される一切の実施態様は、必ずしも他の実施態様よりも好適または有利であるとは解釈されない。さらに、上記技術分野、背景技術、または以下の詳細な説明で提示される、いかなる表示または暗示された理論によっても束縛されることは意図されていない。
【0011】
本発明の主題の実施形態は、プラズマ点火システム、関連するRF電力増幅および分配システム、ならびにそれらの動作方法を含む。下記により詳細に説明するように、そのようなシステムおよび方法は、結果として、点火コイルおよび点火プラグを利用する従来の内燃エンジンと比較すると、燃料効率の大幅な増大、および、環境中に排出される有害な可能性がある気体の量の低減をもたらすことができる。従来の内燃エンジンの点火システムと同様に、プラズマ点火システムは、ピストンおよびシリンダ構成によって画定される燃焼室内で気体燃料を燃焼させるように機能する。しかしながら、プラズマ点火システムにおいては、燃焼は、燃焼室内で相対的にエネルギーの低い火花を生成するのではなく、高エネルギープラズマを燃焼室へと放電することによって達成される。高エネルギープラズマ放電は、火花よりも効率的に燃料を燃焼させる。加えて、プラズマ放電は、従来の火花について可能であるよりも大幅に高い圧力を有する燃焼室内で生成することができる。従って、プラズマ点火システムは、従来の点火システムよりも高い出力の動作を可能にすることができる。
【0012】
図1は、例示的な一実施形態に応じた、プラズマ点火システム110および内燃エンジン150を含むトルク生成システム100の簡略ブロック図である。たとえば、トルク生成システム100は、動力車内に組み込まれてもよく、トルク生成システム100は、車両を推進するのに使用される主要なトルク発生源として機能してもよい。
【0013】
内燃エンジン150は、エンジン150が複数のシリンダ152〜155と、それらに関連付けられているピストン156〜159およびコネクティングロッド160〜163と、クランクシャフト164と、燃料吸気および排気弁(参照符号なし)を動作させるように構成されているカムシャフト(参照符号なし)を含む燃料送達および排出システム166とを含むという点において、従来の内燃エンジンと同様である。従来の内燃エンジンと同様に、チャンバ170は、内燃エンジン150内の各ピストン/シリンダ対によって画定され、チャンバ170の容積は、それぞれ、ピストンの圧縮行程および動力工程の間に低減および増大する。しかしながら、従来の内燃エンジンとは対照的に、図1の内燃エンジン150においては、プラズマ点火システム110の放射デバイス120〜123が、ピストンが上死点位置(たとえば、シリンダ153内のピストン157の位置)に達するとき、またはそれに近い時点において、チャンバ170内に高エネルギープラズマ放電を生成する。プラズマ放電は、チャンバ170内の圧縮燃料/空気混合物に点火し、それによって、燃料が爆発力によって燃焼および膨張する。膨張する力によってピストンの動力工程が開始し、その間、爆発する燃料がピストン156〜159をシリンダヘッドから外方に急速に動かす。ピストンのコネクティングロッド160〜163が強い直線力をクランクシャフト164にもたらし、それによって、直線力が回転力またはトルクに変換される。クランクシャフトの回転力に関連付けられるトルクは最終的に車軸および車輪の回転に変換されることができ、したがって、システム100がその中に組み込まれている車両を推進することが可能になる。
【0014】
これも従来の内燃エンジンの動作と同様に、クランクシャフト164を回転したままにするために、内燃エンジン150内の複数のチャンバ170内の燃焼は、各ピストン156〜159およびコネクティングロッド160〜163によってクランクシャフト164にもたらされる直線力の位相が互いにずれる(たとえば、4気筒4ストロークエンジンにおいては互いから約90度位相がずれる)ように、タイミング調整される。
【0015】
プラズマ点火システム110は、各チャンバ170内にプラズマ放電を生成するために、高電力RFエネルギーを各放射デバイス120〜123に提供するように構成されている。より具体的には、プラズマ点火システム110は、放射デバイス120〜123に提供される高電力RFエネルギーが、チャンバ170内で、位相がずれるようにタイミング調整されたプラズマ放電を達成し、従って連続的なクランクシャフトの回転を引き起こすようにタイミング調整されるように、構成されている。タイミング調整されたプラズマ放電を生成するために、プラズマ点火システム110は、RF信号生成器112と、前置増幅器114と、RF電力増幅および分配システム118と、放射デバイス120〜123とを含む。加えて、後述するように、プラズマ点火システム110は、方向性結合器116と、制御ユニット130とをも含む。
【0016】
RF信号生成器112は、RF信号140を生成するように構成されている。たとえば、RF信号140は、RF電力の周期パルスを含んでもよく、各パルスは、各シリンダ152〜155の動力工程の開始時、またはそれに近い時点において生成される。各パルスの継続時間は、各動力工程の継続時間よりも短くてもよい。たとえば、各パルスの継続時間は、各動力工程の継続時間の約10パーセント〜約50パーセントであってもよく、各パルスは、各動力工程の開始時にシリンダに到達するようにタイミング調整されてもよい。RF信号140内のRF電力は、様々な実施形態に応じて、約1.0メガヘルツ(MHz)〜約6.0ギガヘルツ(GHz)の範囲内の周波数(たとえば、約2.4GHz)において生成されてもよい。他の実施形態において、RF電力の周波数は、上記で与えられた範囲よりも高くてもよいし、または低くてもよい。
【0017】
RF信号生成器112の出力は、前置増幅器114の入力に結合されている。前置増幅器114は、様々な実施形態において、1段増幅器または多段増幅器であってもよい。基本的に、前置増幅器114は、放射デバイス120〜123によるプラズマ放電の生成を可能にするのに十分である電力レベルを有する増幅RF信号142を生成するために、RF信号生成器112によって生成されたRF信号140を受信および増幅する。たとえば、RF信号生成器112によって生成されるRF信号140は、ミリワット(mW)範囲内の電力レベルを有してもよく、前置増幅器114は、RF信号140を増幅して出力RF信号142を生成してもよい。たとえば、一実施形態において、前置増幅器114によって与えられる利得の量に応じて、前置増幅器114は、mW範囲(たとえば、1.0mW程度の低さ)から最大数百または数千ワット(W)(たとえば、約2.0キロワット(kW)まで、またはそれを超える)の電力レベルを有するRF信号142を生成してもよい。代替の実施形態において、RF信号生成器112および/または前置増幅器114によって生成されるRF信号140、142の電力レベルは、上記で与えられた範囲よりも高くてもよいし、または低くてもよい。代替の実施形態において、前置増幅器114は、プラズマ点火システム110から除外されてもよい。
【0018】
前置増幅器114を含む一実施形態においては、前置増幅器114の出力が、RF電力増幅および分配システム118の入力に結合されている。代替的に、前置増幅器114を含まない一実施形態においては、RF信号生成器112の出力が、RF電力増幅および分配システム118の入力に結合されている。いずれにせよ、RF電力増幅および分配システム118は、RF信号生成器112または前置増幅器114によって生成されるRF信号(RF信号140または142のいずれか)を受信し、様々なピストン/シリンダ対に関連付けられている放射デバイス120〜123にRF信号を分配するように構成されている。より具体的には、RF電力増幅および分配システム118は、放射デバイス120〜123に複数のパルスRF信号146〜149を提供するように構成されている。一実施形態に応じて、RF電力増幅および分配システム118は、放射デバイス120〜123と同じシリンダ152〜155に結合されているピストン156〜159が上死点にあるか、またはその付近にある(すなわち、動力工程の開始時またはそれに近い時点にある)ときまたはそれに近い時点において各放射デバイス120〜123に対するパルスRF信号146〜149を生成する。さらなる実施形態に応じて、相当の電力の1つのRF信号146〜149だけが、任意の所与の時点において、RF電力増幅および分配システム118によって放射デバイス120〜123に提供される。
【0019】
たとえば、図2は、例示的な一実施形態に応じた、4気筒エンジン(たとえば、図1のエンジン150)のための分配RF信号246、247、248、249の例示的なタイミングを示すタイミング図である。たとえば、分配RF信号246、247、248、249の各々は、RF電力増幅および分配システム118によって生成され、放射デバイス120〜123のうちの1つに提供されてもよい。より具体的には、図2は、第1の放射要素に供給されてもよい第1のパルスRF信号246(たとえば、放射要素120に供給される信号146)と、第2の放射要素に供給されてもよい第2のパルスRF信号247(たとえば、放射要素121に供給される信号147)と、第3の放射要素に供給されてもよい第3のパルスRF信号248(たとえば、放射要素122に供給される信号148)と、第4の放射要素に供給されてもよい第4のパルスRF信号249(たとえば、放射要素123に供給される信号149)とを示している。
【0020】
前述のように、様々な実施形態が4ストローク4気筒エンジン(たとえば、エンジン150)において示され得る。従って、各シリンダ152〜155について、各期間201〜204は、4工程サイクルの4つの工程のうちの1つ(たとえば、吸気、圧縮、動力、および排気工程のうちの1つ)に対応する。たとえば、図2に示すように、期間201の間、シリンダ152は圧縮行程を実行し、シリンダ153は動力工程を実行し、シリンダ154は吸気サイクルを実行し、シリンダ155は排気サイクルを実行する。同じく期間201の間、パルスRF信号247が、シリンダ153に関連付けられている放射要素121に供給される。パルスRF信号247は、放射要素121に、シリンダ153の燃焼室内にプラズマ放電を生成させ、従って、燃焼室内の圧縮燃料が点火され、シリンダ153に対する動力工程が生成される。同様に、後続の期間202、203、204の間、パルスRF信号246、248、249がそれぞれ、シリンダ152、154、および155に関連付けられている放射デバイス120、122、および123に供給される。その後、4工程サイクルがシリンダ152〜155の各々に対して繰り返される。
【0021】
再び図1を参照すると、方向性結合器116は、RF電力増幅および分配システム118に提供されるRF信号(たとえば、RF信号140または142)の順方向および反射電力を検出し、検出された順方向および反射電力レベルを示す信号180を生成するように構成されている。閉ループ制御が実装される実施形態に応じて、制御ユニット130は、電力レベル信号180を受信し、信号180に基づいて、RF電力増幅および分配システム118に制御信号182を提供する。下記により詳細に説明するように、制御信号182は、放射デバイス120〜123に提供されるパルスRF信号146〜149(たとえば、パルスRF信号246〜249)のタイミングおよび/または減衰に影響を与える。代替の実施形態において、プラズマ点火システム110は、開ループを操作してもよく、制御ユニット130は、方向性結合器116から電力レベル信号180を受信しなくてもよい(たとえば、方向性結合器116がシステム110から除外されてもよい)。そのような実施形態において、制御ユニット130は代わりに、パルスRF信号146〜149がRF電力増幅および分配システム118によって放射デバイス120〜123に提供されるべき正確なタイミングを制御ユニット130に指示するトリガ入力を(たとえば、クランクシャフト164からのフィードバック信号188を介して)受信してもよく、制御ユニット130はそれに応じて、RF電力増幅および分配システム118に制御信号182を提供してもよい。一実施形態に応じて、制御ユニット130はまた、RF信号生成器112および/または前置増幅器114に信号184、186を提供してもよく、それによって、RF信号生成器112および/または前置増幅器114は、RF信号140および/または増幅RF信号142の振幅を増大または低減する。
【0022】
上記で示したように、制御ユニット130はまた、エンジン150から、クランクシャフト164の角度位置を示す1つ以上のフィードバック信号188を受信してもよい。この情報は、各シリンダ152〜155内の各ピストン156〜159の位置、従って、各シリンダ152〜155に関する4工程サイクル内の状態を示す。制御ユニット130は、フィードバック信号を使用して、(たとえば、カムシャフトの角度回転を制御することによって)吸気および排気弁のタイミングを制御してもよい。
【0023】
上述のように、RF電力増幅および分配システム118は、RF信号(たとえば、RF信号140または142)を受信し、様々なピストン/シリンダ対に関連付けられている放射デバイス120〜123に増幅RF信号を分配する(すなわち、放射デバイス120〜123に複数のパルスRF信号146〜149を提供する)ように構成されている。様々な実施形態に応じて、RF電力増幅および分配システム118は、1つ以上の電力分割器と、複数の位相調整器と、複数の増幅器と、シリンダ152〜155に関連付けられている放射デバイス120〜123にタイミング調整されて提供される複数のパルスRF信号(たとえば、図2のパルスRF信号246〜249)をともに生成する電力合成器のネットワークとの組合せによって実装される。加えて、下記により詳細に説明するように、RF電力増幅および分配システム118の実施形態は、パルスRF信号の振幅に影響を与えるように制御することができる複数の減衰器を含んでもよい。
【0024】
図3は、例示的な一実施形態に応じた、RF電力増幅および分配システム300(たとえば、図1のRF電力増幅および分配システム118)の概略図である。RF電力増幅および分配システム300は、入力ポート302と、電力分割器310と、複数の可変移相器332、333、334、335と、複数の増幅器352、353、354、355と、電力合成器ネットワーク370と、複数の出力ポート390、391、392、393とを含む。各出力ポートは、適切な刺激信号(たとえば、図2のRF信号246〜249)が提供されるとプラズマ放電を生成するように構成されている放射デバイス396、397、398、399(たとえば、図1の放射デバイス120〜123)に結合されている。加えて、RF電力増幅および分配システム300は、複数の可変減衰器336、337、338、339を含んでもよい。
【0025】
入力ポート302は、電力分割器310の入力に結合されている。電力分割器310は、入力ポート302において受信される入力RF信号304(たとえば、図1の増幅RF信号142)の電力を分割して4つの出力RF信号322、323、324、325にするように構成されている。示されている実施形態において、電力分割器310は、第1の2方向分割器312を含み、2方向分割器は、入力RF信号304を、各々が入力信号304の電力レベルのおよそ半分の電力レベルを有する2つの中間RF信号320、321に分割する。加えて、電力分割器310は、第2の2方向分割器313および第3の2方向分割器314を含み、これらの各々は、中間RF信号320、321のうちの一方を受信および分割して出力RF信号322〜325のうちの2つから成るセットにするように構成されている。一実施形態に応じて、出力RF信号322〜325の各々は、対応する中間RF信号320、321の電力レベルのおよそ半分の電力レベルを有する。従って、各出力RF信号322〜325は、入力RF信号304の電力レベルのおよそ4分の1の電力レベルを有してもよい。代替の実施形態において、電力分割器310は、入力信号を分割して等しくない電力を有する複数の信号にするように構成されてもよい。加えて、他の代替の実施形態において、電力分割器310の3つの2方向分割器312〜314は、ウィルキンソン電力分配器を使用して、または単一の4方向分割器を使用して実装されてもよい。また他の代替の実施形態において、電力分割器310は、入力信号を分割して4つよりも多いまたは少ない出力信号にするように構成されてもよい。
【0026】
一実施形態に応じて、電力分割器310の各出力は、可変移相器332〜335の入力に結合されている。各移相器332〜335は、RF信号322〜325のうちの1つに位相シフトを加える。下記「90度合成器」実施形態と称する一実施形態に応じて、4つの移相器332〜335によって加えられる位相シフトは、電力合成器ネットワーク370の第1の合成器セット372、373に入力される各信号対が、互いに実質的に90度位相がずれるように加えられる。下記「180度合成器」実施形態と称する別の実施形態に応じて、4つの移相器332〜335によって加えられる位相シフトは、電力合成器ネットワーク370の第1の合成器セット372、373に入力される各信号対が、互いに実質的に同相であるか、または互いから実質的に180度離れるように加えられる。いずれの実施形態においても、移相器332〜335によって加えられる位相シフトは、増幅(増幅器352〜355による)および合成(電力合成器372〜375による)の後、RF電力の大部分が一度に1つの出力ポート390〜393に供給されることになるように選択される。より具体的には、位相シフトは、一実施形態に応じて、RF電力の大部分が、その動力工程を実行しているいずれのシリンダに結合されている出力ポート390〜393に提供されるように加えられる。
【0027】
RF電力の大部分を一度に1つの出力ポート390〜393に供給するために、可変移相器332〜335によって加えられる位相シフトは、一実施形態において、動的に調整可能である。たとえば、可変移相器332〜335は、モジュール330のような1つ以上のモジュールに含まれてもよい。一実施形態に応じて、モジュール330は、1つ以上の制御信号344(たとえば、図1の制御ユニット130からの制御信号182)を受信し、移相器332〜335に、制御信号344に基づいてRF信号322〜325に位相シフトを加えさせるように構成されている。より具体的には、モジュール330は、制御信号344を受信するためのデジタル入力を含んでもよい。デジタル入力は、データインターフェース(たとえば、シリアル周辺装置インターフェース(SPI)または集積回路間(I2C)インターフェースのようなシリアルインターフェース、図示せず)に結合されてもよい。モジュール330の論理(図示せず)が、制御信号344に基づいて各移相器332〜335によって加えられるべき位相シフトを決定してもよく、移相器332〜335に、制御信号344に応じて、RF信号322〜325に決定された位相シフトを加えさせてもよい。PINダイオード、スイッチアレイなどを使用して実装されるシステムを含む、上述のモジュール330とは異なって構成されている位相調整システムが、他の実施形態において使用されてもよい。
【0028】
加えて、一実施形態において、可変減衰器336〜339が各々、移相器332〜335によって生成された相対シフト信号のうちの1つを減衰してもよい。減衰は、たとえば、各位相シフト信号の増幅器352〜355による増幅の不均衡を補償するために加えられてもよい。可変減衰器336〜339は、可変移相器332〜335と同じモジュール330内に含まれてもよく、従って、可変減衰器336〜339によって加えられる減衰レベルは、制御信号344のうちの1つ以上に基づいて決定されてもよい。移相器332〜335は可変減衰器336〜339の前にあるように図示されているが、代替の実施形態では、移相器332〜335および減衰器336〜339は順序が逆になってもよい。代替の実施形態において、可変減衰器336〜339はシステムから除外されてもよい。
【0029】
移相器332〜335および/または減衰器336〜339(含まれる場合)は、増幅器モジュール350の部分を形成してもよい増幅器352〜355に結合されている。増幅器352〜355は、様々な実施形態において、1段増幅器または多段増幅器であってもよい。いずれにせよ、各増幅器352〜355は位相シフトされた(また、減衰されている可能性がある)信号340〜343のうちの1つを受信し、信号を増幅して位相シフト増幅信号360、361、362、363を生成する。一実施形態に応じて、増幅信号360〜363は、電力合成器ネットワーク370によって合成されると、放射要素396〜399によるプラズマ放電の生成を可能にするのに十分である電力レベルを有する。たとえば、一実施形態に応じて、各増幅器は、約200ワット(W)〜約500Wの範囲内の電力レベルを有する増幅信号360〜363を生成することが可能であってもよい。最終的に、後により詳細に説明するように、この結果として、約800W〜約2.0キロワット(kW)の範囲内の電力レベルを有する出力RF信号384、385、386、387が、出力ポート390〜393のうちの1つにおいてもたらされる。他の実施形態において、増幅器352〜355は、上記で与えられた範囲よりも大きいもしくは小さい電力レベルを有する位相シフト増幅信号360〜363を生成するように構成されてもよく、かつ/または出力RF信号384〜387の電力は、上記で与えられた範囲よりも大きくてもよいし、もしくは小さくてもよい。増幅器352〜355の各々は、約25デシベル(dB)〜約40dBの範囲内(たとえば、約30dB)の増幅をもたらすことが望ましいが、他の実施形態においては、増幅器352〜355は、より高いまたはより低いレベルの増幅をもたらしてもよい。
【0030】
電力合成器ネットワーク370は、適切な位相を有する増幅RF信号360〜363が提供されると、高電力RF信号を一度に出力ポート390〜393のうちの1つにおいて生成するように構成され、ともに結合されている複数の電力合成器372〜375を含む。一実施形態に応じて、第1の電力合成器セット372、373は増幅器352〜355に結合されており、第2の電力合成器セット374、375は出力ポート390〜393を介して放射要素396〜399に結合されている。電力合成器372〜375および放射要素396〜399のインピーダンスが大幅に不整合であるとき、インピーダンス整合要素(図示せず)が、第2の電力合成器セット374、375と放射要素396〜399との間に含まれてもよい。
【0031】
90度合成器実施形態において、各電力合成器372〜375は、ハイブリッド直交合成器のような、90度合成器である。従って、各合成器372〜375は、第1の入力ポート(一般的に「入力ポート」と称される)と、第2の入力ポート(一般的に「分離ポート」と称される)と、第1の出力ポート(一般的に「転送ポート」と称される)と、第2の出力ポート(一般的に「結合ポート」と称される)とを含む。第1の入力ポートおよび第2の入力ポートの各々は入力RF信号を受信し、入力RF信号が互いに実質的に90度位相がずれているとき、入力RF信号は出力ポートのうちの一方において加わり、出力ポートの他方において相殺する。
【0032】
逆に、180度合成器実施形態において、各電力合成器372〜375は、ハイブリッドリング結合器のような、180度合成器である。90度合成器実施形態と同様に、180度合成器実施形態において、各合成器372〜375は第1の入力ポートと、第2の入力ポートと、第1の出力ポートと、第2の出力ポートとを含む。第1の入力ポートおよび第2の入力ポートの各々は、入力RF信号を受信する。入力RF信号が互いに実質的に同相であるとき、入力RF信号は第1の出力ポート(一般的に「シグマ」ポートと称される)において加わり、第2の出力ポート(一般的に「デルタ」ポートと称される)において相殺する。逆に、入力RF信号が互いに実質的に180度位相がずれているとき、入力RF信号は第2の出力ポート(またはデルタポート)において加わり、第1の出力ポート(またはシグマポート)において相殺する。
【0033】
図3の実施形態において、電力合成器ネットワーク370は4つの電力合成器372〜375を含み、これは第1の電力合成器セット372、373と、第2の電力合成器セット374、375とを含む。第1の電力合成器372は、それぞれ増幅器352および353の出力に結合されている2つの入力ポートを有する。第2の電力合成器373は、それぞれ増幅器354および355の出力に結合されている2つの入力ポートを有する。第1の電力合成器372の第1の出力は、第3の電力合成器374の第1の入力に結合されており、第1の電力合成器372の第2の出力は、第4の電力合成器375の第1の入力に結合されている。第2の電力合成器373の第1の出力は、第3の電力合成器374の第2の入力に結合されており、第2の電力合成器373の第2の出力は、第4の電力合成器375の第2の入力に結合されている。第3の電力合成器374および第4の電力合成器375の第1の出力および第2の出力は各々、出力ポート390〜393のうちの1つに結合されている。
【0034】
90度合成器実施形態において、移相器332〜335によってRF信号322〜325に加えられる位相シフトは、第1の電力合成器372の入力に提供される第1の増幅RF信号対360、361が、互いに約90度位相がずれ、第2の電力合成器373の入力に提供される第2の増幅RF信号対362、363も、互いに約90度位相がずれるように選択される。これによって、第1の電力合成器372および第2の電力合成器373の各々が、他方の出力ポートにおいては相対的に低いまたは無視できる振幅の信号を提供しながら、一方の出力ポートにおいて増幅RF信号360〜363の電力レベルの約2倍の相対的に高い電力レベルを有する中間RF信号380、381、382、383を生成することになる。いずれの出力ポートが相対的に高電力のRF信号を生成するかは、いずれの入力RF信号360〜363の位相が進んでいるか、および、いずれの入力RF信号360〜363の位相が遅れているかに応じて決まる。一実施形態に応じて、位相シフトは移相器332〜335によって、a)中間RF信号380および382が互いに約90度位相がずれていて相対的に高い電力レベルを同時に有し、中間RF信号381および383が相対的に低い電力レベルを有する、またはb)中間RF信号380および382が相対的に低い電力レベルを有し、中間RF信号381および383が互いに約90度位相がずれていて相対的に高い電力レベルを有する、のいずれかになるように加えられる。
【0035】
第1の中間RF信号対380、382は第3の電力合成器374の入力に提供され、第2の中間RF信号対381、383は第4の電力合成器375の入力に提供される。相対的に高い電力レベルを有する位相のずれた中間RF信号の対380〜383を受信する電力合成器374または375は、他方の出力ポートにおいては相対的に低いまたは無視できる振幅の信号を提供しながら、一方の出力ポートにおいては中間RF信号380〜383の電力レベルの約2倍(または、増幅RF信号340〜343の電力レベルの約4倍)のさらに高い電力レベルを有する出力RF信号384〜387を生成する。ここでも、いずれの出力ポートが相対的に高電力のRF信号を生成するかは、いずれの入力中間RF信号380〜383の位相が進んでいるか、および、いずれの入力中間RF信号380〜383の位相が遅れているかに応じて決まる。一実施形態に応じて、位相シフトは移相器332〜335によって、出力RF信号384〜387のうちのただ1つが、任意の所与の期間中に相対的に高い電力レベルを有し、他の出力RF信号384〜387の各々がその期間中に相対的に低いまたは無視できる電力レベルを有するように加えられる。たとえば、相対的に高い電力レベルを有する出力RF信号384〜387は、約5dB〜約15dBの範囲内の(すなわち、0dBよりも大きい)電力レベルを有してもよく、一方で、相対的に低い電力レベルを有する出力RF信号384〜387は、約−300dB〜約−500dBの範囲内の(すなわち、−100dBよりも小さい)電力レベルを有してもよい。相対的に高い電力レベルおよび相対的に低い電力レベルの大きさおよび/または大きさの差は、他の実施形態において、上記で与えられた範囲と異なってもよい。
【0036】
180度合成器実施形態において、移相器332〜335によってRF信号322〜325に加えられる位相シフトは、第1の電力合成器372の入力に提供される第1の増幅RF信号対360、361が、互いに約180度位相がずれ、第2の電力合成器373の入力に提供される第2の増幅RF信号対362、363も、互いに約180度位相がずれるように選択される。これによって、第1の電力合成器372および第2の電力合成器373の各々が、他方の出力ポートにおいては相対的に低いまたは無視できる振幅の信号を提供しながら、一方の出力ポートにおいて増幅RF信号360〜363の電力レベルの約2倍の相対的に高い電力レベルを有する中間RF信号380、381、382、383を生成することになる。いずれの出力ポートが相対的に高電力のRF信号を生成するかは、いずれの入力RF信号360〜363の位相が進んでいるか、および、いずれの入力RF信号360〜363の位相が遅れているかに応じて決まる。一実施形態に応じて、位相シフトは移相器332〜335によって、a)中間RF信号380および382が互いに約180度位相がずれていて相対的に高い電力レベルを同時に有し、中間RF信号381および383が相対的に低い電力レベルを有する、またはb)中間RF信号380および382が相対的に低い電力レベルを有し、中間RF信号381および383が互いに約180度位相がずれていて相対的に高い電力レベルを有する、のいずれかになるように加えられる。
【0037】
第1の中間RF信号対380、382は第3の電力合成器374の入力に提供され、第2の中間RF信号対381、383は第4の電力合成器375の入力に提供される。相対的に高い電力レベルを有する位相のずれた中間RF信号の対380〜383を受信する電力合成器374または375は、他方の出力ポートにおいては相対的に低いまたは無視できる振幅の信号を提供しながら、一方の出力ポートにおいては中間RF信号380〜383の電力レベルの約2倍(または、増幅RF信号340〜343の電力レベルの約4倍)のさらに高い電力レベルを有する出力RF信号384〜387を生成する。ここでも、いずれの出力ポートが相対的に高電力のRF信号を生成するかは、いずれの入力中間RF信号380〜383の位相が進んでいるか、および、いずれの入力中間RF信号380〜383の位相が遅れているかに応じて決まる。一実施形態に応じて、位相シフトは移相器332〜335によって、出力RF信号384〜387のうちのただ1つが、任意の所与の期間中に相対的に高い電力レベルを有し、他の出力RF信号384〜387の各々がその期間中に相対的に低いまたは無視できる電力レベルを有するように加えられる。たとえば、相対的に高い電力レベルを有する出力RF信号384〜387は、約50dBm〜約65dBmの範囲内の電力レベルを有してもよく、一方で、相対的に低い電力レベルを有する出力RF信号384〜387は、約0dBm〜約40dBmの範囲内の電力レベルを有してもよい。相対的に高い電力レベルおよび相対的に低い電力レベルの大きさおよび/または大きさの差は、他の実施形態において、上記で与えられた範囲と異なってもよい。本明細書における記載に基づいて、他の実施形態において、中間RF信号380〜383は異なる構成で移相器374、375に結合されてもよく、出力RF信号384〜387のうちの1つに対する電力の操作の実質的に同じ結果が、異なる位相シフトを使用して異なる構成において達成されてもよいことを当業者は理解しよう。
【0038】
90度合成器または180度合成器実施形態のいずれにおいても、相対的に電力レベルの高いRF信号384〜387が提供される出力ポート390〜393は、対応する放射デバイス396〜399によってプラズマ放電を生成することが所望される出力ポートに対応する。上述したように、プラズマ放電は、一度に1つだけの放射デバイス396〜399によって生成され、プラズマ放電を生成するタイミングは、放射デバイス396〜399に関連付けられているシリンダの動力工程の開始時またはそれに近い時点であるように制御される。図2も参照して、RF信号246が放射要素396に提供される信号を表し、RF信号247は、放射デバイス397に提供される信号を表し、RF信号248は、放射デバイス398に提供される信号を表し、RF信号249は、放射デバイス399に提供される信号を表すと仮定する。
【0039】
90度合成器実施形態に対応する下記表1は、RF電力増幅および分配システム300が一度に1つの放射デバイス396〜399に相対的に高電力の出力RF信号384〜387を提供するために、移相器332〜335の各々によって加えられてもよい位相シフトの一例を与える。より具体的には、各列は放射デバイス396〜399(「RD」)のうちの1つに対応し、各行は移相器332〜335(「PS」)のうちの1つに対応する。各列内の位相シフト値(度単位)は、RF電力増幅および分配システム300が、その列に対応する放射デバイス396〜399(すなわち、動力工程を実行しているシリンダに関連付けられている放射デバイス396〜399)に相対的に高電力の出力RF信号(たとえば、出力RF信号384〜387のうちの1つ)を提供するために対応する移相器332〜335の各々に同時に加えられてもよい位相シフトの例を示す。
【0040】
【表1】
表1の各列内に表されている位相差の組合せは、所定の位相差の例を表し、これらの組合せは、増幅位相シフトRF信号(たとえば、図3の増幅位相シフトRF信号360〜363)間に存在するとき、電力合成器ネットワーク(たとえば、図3の電力合成器ネットワーク370)に、増幅位相シフトRF信号を合成させて、相対的に高い電力レベルを有する1つの出力RF信号(たとえば、図3の出力RF信号384〜387のうちの1つ)を生成し、相対的に低い電力レベルを有する残りの出力RF信号(たとえば、図3の出力RF信号384〜387のうちの残りの3つ)を生成させる。特定の例示的な位相シフトが上記表1において提供されており、それらの例示的な位相シフトが下記で論じられているが、他の実施形態において、指定されている値から(たとえば、±15度だけ)変化した位相シフトが代替的に使用されてもよいことは留意されたい。加えて、各例示的な位相シフト値は90度の倍数であるが、代替の実施形態は、90度の倍数にいくらかのずれを加算または減算したものである位相シフトを実装してもよい。たとえば、表1の第1の列(期間202に対応する)を参照すると、0度、90度、90度、および180度の例示的な位相シフトは、45度のずれを含む位相シフト(すなわち、45度、135度、135度、および225度の位相シフト)に置き換えられてもよい。無論、他の実施形態において、45度以外のずれも使用されてもよい。
【0041】
たとえば、表1が示すように、放射要素396に関連付けられているシリンダの動力工程中(たとえば、図2の期間202の間)、移相器332はRF信号322に0度の位相シフトを加え、移相器333はRF信号323に90度の位相シフトを加え、移相器334はRF信号324に90度の位相シフトを加え、移相器335はRF信号325に180度の位相シフトを加える。これによって、電力合成器ネットワーク370が増幅RF信号360〜363のすべてを、出力RF信号384のみが相対的に高い電力レベルを有し、一方で他の3つの出力RF信号385〜387は相対的に低いまたは無視できる電力レベルを有するように合成することになることを保証する位相関係で、増幅RF信号360〜363が電力合成器ネットワーク370に到来するようになる。
【0042】
同様に、放射要素397に関連付けられているシリンダの動力工程中(たとえば、図2の期間201の間)、移相器332はRF信号322に0度の位相シフトを加え、移相器333はRF信号323に90度の位相シフトを加え、移相器334はRF信号324に−90度の位相シフトを加え、移相器335はRF信号325に0度の位相シフトを加える。これによって、電力合成器ネットワーク370が増幅RF信号360〜363のすべてを、出力RF信号385のみが相対的に高い電力レベルを有し、一方で他の3つの出力RF信号384、386、および387は相対的に低いまたは無視できる電力レベルを有するように合成することになることを保証する位相関係で、増幅RF信号360〜363が電力合成器ネットワーク370に到来するようになる。
【0043】
同様に、放射要素398に関連付けられているシリンダの動力工程中(たとえば、図2の期間203の間)、移相器332はRF信号322に180度の位相シフトを加え、移相器333はRF信号323に90度の位相シフトを加え、移相器334はRF信号324に−90度の位相シフトを加え、移相器335はRF信号325に180度の位相シフトを加える。これによって、電力合成器ネットワーク370が増幅RF信号360〜363のすべてを、出力RF信号386のみが相対的に高い電力レベルを有し、一方で他の3つの出力RF信号384、385、および387は相対的に低いまたは無視できる電力レベルを有するように合成することになることを保証する位相関係で、増幅RF信号360〜363が電力合成器ネットワーク370に到来するようになる。
【0044】
最後に、放射要素399に関連付けられているシリンダの動力工程中(たとえば、図2の期間204の間)、移相器332はRF信号322に0度の位相シフトを加え、移相器333はRF信号323に−90度の位相シフトを加え、移相器334はRF信号324に−90度の位相シフトを加え、移相器335はRF信号325に180度の位相シフトを加える。これによって、電力合成器ネットワーク370が増幅RF信号360〜363のすべてを、出力RF信号387のみが相対的に高い電力レベルを有し、一方で他の3つの出力RF信号384、385、および386は相対的に低いまたは無視できる電力レベルを有するように合成することになることを保証する位相関係で、増幅RF信号360〜363が電力合成器ネットワーク370に到来するようになる。
【0045】
180度合成器実施形態に対応する下記表2は、RF電力増幅および分配システム300が一度に1つの放射デバイス396〜399に相対的に高電力の出力RF信号384〜387を提供するために、移相器332〜335の各々によって加えられてもよい位相シフトの一例を与える。ここでも、各列は放射デバイス396〜399のうちの1つに対応し、各行は移相器332〜335のうちの1つに対応する。各列内の位相シフト値(度単位)は、RF電力増幅および分配システム300が、その列に対応する放射デバイス396〜399(すなわち、動力工程を実行しているシリンダに関連付けられている放射デバイス396〜399)に相対的に高電力の出力RF信号(たとえば、出力RF信号384〜387のうちの1つ)を提供するために対応する移相器332〜335の各々に同時に加えられてもよい位相シフトの例を示す。
【0046】
【表2】
表2の各列内に表されている位相差の組合せは、所定の位相差の例を表し、これらは、増幅位相シフトRF信号(たとえば、図3の増幅位相シフトRF信号360〜363)間に存在するとき、電力合成器ネットワーク(たとえば、図3の電力合成器ネットワーク370)に、増幅位相シフトRF信号を合成させて、相対的に高い電力レベルを有する1つの出力RF信号(たとえば、図3の出力RF信号384〜387のうちの1つ)を生成し、相対的に低い電力レベルを有する残りの出力RF信号(たとえば、図3の出力RF信号384〜387のうちの残りの3つ)を生成させる。特定の例示的な位相シフトが上記表2において提供されており、それらの例示的な位相シフトが下記で論じられているが、他の実施形態において、指定されている値から(たとえば、±15度だけ)変化した位相シフトが代替的に使用されてもよいことは留意されたい。加えて、各例示的な位相シフト値は180度の倍数であるが、代替の実施形態は、180度の倍数にいくらかのずれを加算または減算したものである位相シフトを実装してもよい。たとえば、表1の第2の列(期間201に対応する)を参照すると、0度、0度、180度、および180度の例示的な位相シフトは、45度のずれを含む位相シフト(すなわち、45度、45度、225度、および225度の位相シフト)に置き換えられてもよい。無論、他の実施形態において、45度以外のずれも使用されてもよい。
【0047】
たとえば、表2が示すように、放射要素396に関連付けられているシリンダの動力工程中(たとえば、図2の期間202の間)、移相器332はRF信号322に0度の位相シフトを加え、移相器333はRF信号323に0度の位相シフトを加え、移相器334はRF信号324に0度の位相シフトを加え、移相器335はRF信号325に0度の位相シフトを加える。言い換えれば、両方の増幅RF入力信号対360、361および362、363は、第1の電力合成器セット372、373に入力されるときは互いに実質的に同相である。これによって、電力合成器ネットワーク370が増幅RF信号360〜363のすべてを、出力RF信号384のみが相対的に高い電力レベルを有し、一方で他の3つの出力RF信号385〜387は相対的に低いまたは無視できる電力レベルを有するように合成することになることを保証する位相関係で、増幅RF信号360〜363が電力合成器ネットワーク370に到来するようになる。
【0048】
同様に、放射要素397に関連付けられているシリンダの動力工程中(たとえば、図2の期間201の間)、移相器332はRF信号322に0度の位相シフトを加え、移相器333はRF信号323に0度の位相シフトを加え、移相器334はRF信号324に180度の位相シフトを加え、移相器335はRF信号325に180度の位相シフトを加える。言い換えれば、両方の増幅RF入力信号対360、361および362、363は、第1の電力合成器セット372、373に入力されるときは互いに実質的に同相であるが、これらの対は互いに実質的に180度位相がずれている。これによって、電力合成器ネットワーク370が増幅RF信号360〜363のすべてを、出力RF信号385のみが相対的に高い電力レベルを有し、一方で他の3つの出力RF信号384、386、および387は相対的に低いまたは無視できる電力レベルを有するように合成することになることを保証する位相関係で、増幅RF信号360〜363が電力合成器ネットワーク370に到来するようになる。
【0049】
同様に、放射要素398に関連付けられているシリンダの動力工程中(たとえば、図2の期間203の間)、移相器332はRF信号322に0度の位相シフトを加え、移相器333はRF信号323に180度の位相シフトを加え、移相器334はRF信号324に180度の位相シフトを加え、移相器335はRF信号325に0度の位相シフトを加える。言い換えれば、両方の増幅RF入力信号対360、361および362、363は、第1の電力合成器セット372、373に入力されるときは互いに実質的に180度位相がずれている。これによって、電力合成器ネットワーク370が増幅RF信号360〜363のすべてを、出力RF信号386のみが相対的に高い電力レベルを有し、一方で他の3つの出力RF信号384、385、および387は相対的に低いまたは無視できる電力レベルを有するように合成することになることを保証する位相関係で、増幅RF信号360〜363が電力合成器ネットワーク370に到来するようになる。
【0050】
最後に、放射要素399に関連付けられているシリンダの動力工程中(たとえば、図2の期間204の間)、移相器332はRF信号322に0度の位相シフトを加え、移相器333はRF信号323に180度の位相シフトを加え、移相器334はRF信号324に180度の位相シフトを加え、移相器335はRF信号325に0度の位相シフトを加える。言い換えれば、再び、両方の増幅RF入力信号対360、361および362、363は、第1の電力合成器セット372、373に入力されるときは互いに実質的に180度位相がずれている。これによって、電力合成器ネットワーク370が増幅RF信号360〜363のすべてを、出力RF信号387のみが相対的に高い電力レベルを有し、一方で他の3つの出力RF信号384、385、および386は相対的に低いまたは無視できる電力レベルを有するように合成することになることを保証する位相関係で、増幅RF信号360〜363が電力合成器ネットワーク370に到来するようになる。
【0051】
本明細書における記載に基づいて、上記表1および表2に与えられた例示的な位相シフトは限定であるようには意図されていないことを、当業者は理解しよう。電力合成器372〜375のいずれかに入力される信号の位相シフトが実質的に90度位相がずれている(90度合成器実施形態の場合)か、または位相シフトが実質的同相であるかもしくは実質的に180度位相がずれている(180度合成器実施形態の場合)限り、電力合成器ネットワーク370は実質的に同じように機能することになる(すなわち、一度に相対的に高い電力レベルを有する1つの出力RF信号384〜387を提供する)。たとえば、移相器332〜335によって加えられる位相シフトは、90度または180の倍数である必要はない。代わりに、位相シフトの各々は90度または180の倍数からずれていてもよい。そのような代替の実施形態は、本発明の主題の範囲内に含まれるように意図されている。
【0052】
加えて、本明細書における記載に基づいて、図示および記載されている実施形態を、4つ(たとえば、4つの出力ポート390〜393)よりも多いまたは少ない出力ポートを有するシステムに適用するために容易に変更することができることも、当業者は理解しよう。従って、たとえば、RF電力増幅および分配システムの実施形態は、3気筒、6気筒、8気筒、または12気筒内燃エンジンのためのプラズマ点火システムに使用されるように構成されてもよい。3気筒実施形態において、たとえば、出力ポートのうちの1つ(たとえば、出力ポート390〜393のうちの1つ)は、プラズマ放電を生成するように構成されている放射デバイスに結合される代わりに、50オーム(または他のインピーダンス)の負荷によって終端されてもよい。加えて、4つよりも多いシリンダを含む実施形態において、RF電力増幅および分配システムは、任意の整数N個の移相/増幅経路を含むよう変更されてもよく、電力合成器ネットワーク370は、一度にN個の出力ポートのうちの1つのみにおいて単一の相対的に高電力のRF信号を生成するために移相/増幅経路によって生成されるN個のRF信号を合成するように適切に変更されてもよい。そのような代替の実施形態は、本発明の主題の範囲内に含まれるように意図されている。
【0053】
RF電力増幅および分配システム300の様々な構成要素およびモジュールは、様々なタイプの半導体技術を使用して、様々な集積レベルにおいてともに組み込まれてもよい。たとえば、高集積システムにおいて、電力分割器310、移相器332〜335、減衰器336〜339(および/またはモジュール330)、増幅器352〜355、ならびに電力合成器ネットワーク370は、プリント回路基板(PCB)に取り付けられてもよい単一の個別のパッケージまたは単一のモジュールにともに集積されてもよい。代替的に、これらの構成要素のサブセットが個別のパッケージにともに集積されてもよく、かつ/またはPCBレベルにおいて組み込まれてもよい。たとえば、電力分割器310および/または電力合成器ネットワーク370は、PCBレベルにおいて容易に組み込むことができ、移相器332〜335、減衰器336〜339、および増幅器352〜355は、1つ以上の個別のパッケージ内に含まれてもよい。さらに、移相器332〜335、減衰器336〜339、および増幅器352〜355は、シリコン、ガリウムヒ素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、または他の半導体基板の任意の組合せの上に実装されてもよい。代替的に、これらの構成要素のいくつかは個別の構成要素として実装されてもよい。特定の実施形態に応じて、増幅器352〜355は、横方向拡散金属酸化膜半導体(LDMOS)トランジスタを含むが、他のタイプのトランジスタも使用されてもよい。
【0054】
図4は、例示的な一実施形態に応じた、RF電力増幅および分配システム(たとえば、図1図3のRF電力増幅および分配システム118、300)を含むプラズマ点火システム(たとえば、図1のプラズマ点火システム110)を動作させる方法のフローチャートである。一実施形態に応じて、方法は、少なくとも2つの並行プロセスを含み、第1のプロセスはブロック402〜406に反映されており、第2のプロセスはブロック410〜420に反映されている。これらのプロセスは順次論じるが、それらはシステムが定常状態で動作しているときは並列に実行されることになり、プロセスはプラズマ点火システムの動作中に繰り返し実行されもすることは理解されたい。
【0055】
一実施形態に応じて、下記「位相シフト設定プロセス」と称する第1のプロセス(すなわち、ブロック402〜406)は、放射デバイスに結合されているシリンダの動力工程の開始時に高電力RF信号が適切な放射デバイス(たとえば、図3の放射デバイス396〜399のうちの1つ)に提供されることを保証するように、複数の移相器(たとえば、図3の移相器332〜335)の位相シフトを決定および設定することを含む。下記「RF信号増幅および分配プロセス」と称する第2のプロセス(すなわち、ブロック410〜420)は、高電力RF信号を一度に1つの出力ポートに分配するために、入力RF信号(たとえば、図1図3のRF信号142、304)を受信および処理することを含む。
【0056】
最初にブロック402を参照すると、位相シフト設定プロセスは、動力工程を実行していることになる次のシリンダ(たとえば、図1のシリンダ152〜155のうちの1つ)を検出または判定することを含む。この判定は、たとえば、各シリンダの現在の工程、従って、次に動力工程を実行する事になるシリンダ(すなわち、現在は圧縮行程を実行しているシリンダ)を示す状態図をステップスルーすることができる制御ユニット(たとえば、図1の制御ユニット130)によって行われてもよい。代替的に、この判定は、クランクシャフトの角度位置を検知すること、および、角度位置を、次に動力工程を実行することになるシリンダを示す情報と相関付けることによって行われてもよい。いずれのシリンダが次に動力工程を実行する事になるかを判定する他の方法も実施されてもよい。
【0057】
ブロック404において、システムの移相器(たとえば、図3の移相器332〜335)によって加えられるべき位相シフトが(たとえば、図1の制御ユニット130によって)決定される。より具体的には、システムの電力合成器(たとえば、図3の電力合成器ネットワーク370)に、複数の位相シフトRF信号(たとえば、図3のRF信号360〜363)をともに合成させて、次に動力工程を実行することになるシリンダに結合されている放射デバイス(たとえば、図3の放射デバイス396〜399のうちの1つ)に結合されている出力ポート(たとえば、図3の出力ポート390〜393)において合成信号が加わるように、位相シフトが決定される。たとえば、この決定は、記憶されている位相シフトの表(たとえば、90度または180度合成器実施形態のいずれが実装されるかに応じて、上記表1または2のうちの一方)からシリンダに対する位相シフト値にアクセスすることによって行われてもよい。代替的に、この決定は、何らかの他の様式で行われてもよい。
【0058】
ブロック406において、シリンダの動力工程の開始時またはその前に、移相器(たとえば、図3の移相器332〜335)は、ブロック404において決定された位相シフトを入力RF信号に(たとえば、図3のRF信号322〜325に)加えるように、制御される。たとえば、移相器が、移相器のデジタル制御を促進するモジュール(たとえば、図3のモジュール330)の一部を形成するとき、位相シフトを示すモジュールに制御信号(たとえば、図1図3の制御信号182、344)が提供されてもよい。その後、今度はモジュールの論理が、決定された位相シフトを加えるように各移相器を制御してもよい。ブロック402〜406を実行することによって、RF電力増幅および分配システムは、各シリンダの動力工程中に各シリンダの放射デバイスに対する相対的に高電力のRF信号を生成するように動的に構成されてもよい。
【0059】
ここでブロック410を参照すると、RF信号増幅および分配プロセスは、入力RF信号(たとえば、図1図3のRF信号142、304)を(たとえば、図3の入力ポート302において)受信および(たとえば、図3の電力分配器310によって)分割することを含む。この結果として、一実施形態において、実質的に電力が等しくてもよい複数のRF信号(たとえば、図3のRF信号322〜325)が生成される。
【0060】
ブロック412において、移相器(たとえば、図3の移相器332〜335)が複数のRF信号の各々に位相シフトを加え、ここで、位相シフトは、ブロック404および406において決定および確立された位相シフトに対応する。0度位相シフトを加えることは、それらの用語が本明細書において使用される場合は、なお位相シフトであると考えられる。前述のように、一実施形態において、複数のRF信号のいくらかまたはすべてはまた、(たとえば、図3の減衰器336〜339を使用して)減衰されてもよい。いずれにせよ、位相シフトが加えられる結果として、複数の位相シフトRF信号(たとえば、図3のRF信号340〜343)が生成される。
【0061】
ブロック414において、複数の増幅位相シフトRF信号(たとえば、図3のRF信号360〜363)を生成するために、複数の位相シフトRF信号が(たとえば、図3の増幅器352〜355によって)増幅される。前述のように、増幅は1つ以上の段で実行されてもよく、増幅器の各々は、約25dB〜約40dBの範囲内の増幅をもたらしてもよいが、増幅器は、他の実施形態において、より高いまたはより低いレベルの増幅をもたらしてもよい。
【0062】
ブロック416において、複数の増幅位相シフトRF信号がRF電力合成器ネットワーク(たとえば、図3のRF電力合成器ネットワーク370)に提供される。RF電力合成器ネットワークは、複数の出力ポート(たとえば、図3の出力ポート390〜393)において、増幅位相シフトRF信号を合成して、複数の出力RF信号(たとえば、図1図3の出力RF信号146〜149、384〜387)を生成する。RF電力合成器ネットワークが適切な移相関係を有する増幅位相シフトRF信号を受信したとき、RF電力合成器ネットワークは、残りの出力RF信号が相対的に低い電力レベル(たとえば、プラズマ放電を生成するのに十分でない電力レベル)を有する一方で、相対的に高い電力レベル(たとえば、プラズマ放電を生成するのに十分な電力レベル)を有する1つの出力RF信号を生成する。
【0063】
ブロック418において、出力RF信号が、シリンダ(たとえば、図1のシリンダ152〜155)に結合されている放射デバイス(たとえば、図1図3の放射デバイス120〜123、390〜393)に提供される。出力RF信号の電力が十分に高いとき、RF信号は放射デバイスに、シリンダの燃焼室内でプラズマ放電を生成させ、従ってそのシリンダの動力工程が開始する。逆に、出力RF信号の電力が十分に高くないとき、そのRF信号を受信する放射デバイスはプラズマ放電を生成しない。上述の方法を使用して、RFプラズマ点火システムは、システムのRF電力合成器ネットワークに提供されるRF信号の位相を動的に調整することによって、各シリンダのそれぞれの動力工程中にシリンダの各々においてプラズマ放電を生成することができる。
【0064】
図1図4は、4工程サイクルのうちの動力工程中に4つのシリンダの各々においてプラズマ放電を生成するように構成されている4気筒エンジンおよびプラズマ点火システムを示し、それに対応しているが、様々な実施形態は、4つよりも多いまたは少ないシリンダを有するエンジン、および、奇数個のシリンダを有するエンジンにも適用するように変更されてもよいことは理解されたい。より詳細には、実施形態は、N個のシリンダを有するエンジンに適用するように一般化されてもよく、Nは任意の妥当な整数である。従って、RF増幅および分配システムの実施形態は、入力RF信号を分割してN個のRF信号にする分割器と、N個の位相シフトRF信号を生成するためにN個のRF信号に位相シフトを適用するように構成されているN個の移相器と、N個の増幅位相シフトRF信号を生成するためにN個の位相シフトRF信号を増幅するように構成されているN個の増幅器と、N個の入力ポートおよびN個の出力ポートを含む電力合成器とを含むように一般化されてもよく、電力合成器は、N個の増幅位相シフトRF信号間の位相差に基づいて、N個の増幅位相シフトRF信号を合成してN個の出力ポートに向けて方向付けるように構成されている。
【0065】
加えて、様々な実施形態は、2ストロークおよび4ストロークの両方のエンジンに使用されてもよいことは理解されたい。さらに、様々な実施形態は動力車において実装されてもよいが、実施形態は、いくつか追加の例を挙げると、発電機、造園用機器(たとえば、芝刈り機、草刈機、送風機)、重機(たとえば、トラクタ、クレーンなど)、列車、航空機、および水上船を含む他の化石燃料動力システムにおいても実装されてもよい。加えて、様々な実施形態は、分配される高電力RF信号が所望される他のタイプのシステムにおいて実装されてもよい。たとえば、実施形態は、2つだけ例を挙げると、複数のアンテナ通信システム(たとえば、多入力多出力(MIMO)システムおよび/もしくはブロードキャストシステム)、ならびに/または、対象物を加熱する目的でRFエネルギーを生成する複数の放射要素を有する電子レンジにおいて実装されてもよい。いくつかの代替の実施形態において、入力RF信号は、情報が通信されることを可能にするように設計されており、かつ/または何らかの他の有利な効果を与えるいくつかの変調技法のいずれかを使用して変調されてもよい。
【0066】
システムの一実施形態は、N個の増幅器と、電力合成器ネットワークとを含む。N個の増幅器の各増幅器は、N個の位相シフトRF信号のうちの1つを受信するように構成されており、N個の増幅器は、N個の位相シフトRF信号を増幅して、N個の増幅位相シフトRF信号を生成するようにさらに構成されている。電力合成器ネットワークは、N個の入力ポートおよびN個の出力ポートを有する。N個の入力ポートの各々はN個の増幅器のうちの1つの出力に結合されており、電力合成器ネットワークは、N個の増幅位相シフトRF信号を合成して、N個の出力ポートにおいてN個の出力RF信号を生成するように構成されている。N個の出力RF信号の相対電力レベルは、N個の増幅位相シフトRF信号間の位相差に応じて決まる。
【0067】
最大N個のシリンダを有する内燃エンジンのためのプラズマ点火システムの一実施形態は、電力分割器と、N個の移相器と、N個の増幅器と、電力合成器ネットワークと、最大N個の放射デバイスとを含む。電力分割器は、1つの入力およびN個の出力を有し、電力分割器は、入力上で受信される入力RF信号を分割してN個の分割RF信号にし、N個の出力上でN個の分割RF信号を提供するように構成されている。N個の移相器の各々は入力および出力を有し、各入力は電力分割器のN個の出力のうちの1つに結合されており、各移相器は、N個の分割RF信号のうちの1つを受信し、N個の位相シフトRF信号を生成するために、N個の分割RF信号に複数の所定の位相シフトのうちの1つを加えるように構成されている。N個の増幅器はN個の移相器に結合されており、N個の増幅器は、N個の位相シフトRF信号を受信し、N個の位相シフトRF信号を増幅して、N個の増幅位相シフトRF信号を生成するように構成されている。電力合成器ネットワークはN個の入力ポートおよびN個の出力ポートを有し、N個の入力ポートの各々はN個の増幅器のうちの1つの出力に結合されており、電力合成器ネットワークは、N個の増幅位相シフトRF信号を合成して、N個の出力ポートにおいてN個の出力RF信号を生成するように構成されている。N個の出力RF信号の相対電力レベルは、N個の増幅位相シフトRF信号間の位相差に応じて決まる。放射デバイスの各々は電力合成器ネットワークのN個の出力ポートのうちの1つに結合されており、放射デバイスの各々は、N個の出力RF信号のうちの1つの出力RF信号を受信し、出力RF信号の電力レベルが十分に高いときにプラズマ放電を生成するように構成されている。
【0068】
方法の一実施形態は、N個の位相シフトRF信号を生成するためにN個の入力RF信号に所定の位相シフトを加える工程と、位相シフトRF信号を増幅して、N個の増幅位相シフトRF信号を生成する工程と、N個の増幅位相シフトRF信号を合成して、N個の出力ポートにおいてN個の出力RF信号を生成する工程とを含む。N個の出力RF信号の相対電力レベルは、N個の増幅位相シフトRF信号間の位相差に応じて決まる。
【0069】
さらなる実施形態に応じて、合成する工程は、90度合成器のネットワークを使用してN個の増幅位相シフトRF信号を合成する工程を含み、ネットワークの各90度合成器は第1の入力および第2の入力ならびに第1の出力および第2の出力を含み、各90度合成器が、互いに実質的に90度位相がずれている第1の増幅位相シフトRF信号および第2の増幅位相シフトRF信号を受信すると、各90度合成器は、第1の出力および第2の出力のうちの一方において、相対的に高い電力レベルを有する第1のRF信号を生成し、第1の出力および第2の出力のうちのもう一方において、相対的に低い電力レベルを有する第2のRF信号をも生成する。
【0070】
別のさらなる実施形態に応じて、合成する工程は、180度合成器のネットワークを使用してN個の増幅位相シフトRF信号を合成する工程を含み、ネットワークの各180度合成器は第1の入力および第2の入力ならびに第1の出力および第2の出力を含み、各180度合成器が、互いに実質的に同相である第1の増幅位相シフトRF信号および第2の増幅位相シフトRF信号を受信すると、各180度合成器は、第1の出力において、相対的に高い電力レベルを有する第1のRF信号を生成し、第2の出力において、相対的に低い電力レベルを有する第2のRF信号を生成し、各180度合成器が、互いに実質的に180度位相がずれている第1の増幅位相シフトRF信号および第2の増幅位相シフトRF信号を受信すると、各180度合成器は、第2の出力において、相対的に高い電力レベルを有する第1のRF信号を生成し、第1の出力において、相対的に低い電力レベルを有する第2のRF信号を生成する。
【0071】
別のさらなる実施形態に応じて、方法は、内燃エンジンの最大N個のシリンダに結合されている最大N個の放射デバイスに出力RF信号を提供する工程をも含む。方法は、シリンダのうちの、次に動力工程を実行することになるシリンダを判定する工程と、結果として、N個の出力ポートのうちの第1の出力ポートにおいて相対的に高い電力レベルを有する1つの出力RF信号を生成することになり、残りのN−1個の出力ポートにおいて相対的に低い電力レベルを有するN−1個の出力RF信号を生成することになる次の所定の位相シフトセットを決定する工程と、加える工程の間に入力RF信号に次の所定の位相シフトセットを加えるように、N個の移相器を制御する工程とをさらに含んでもよい。
【0072】
本記載および特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」、「第4」などの用語は、要素間で区別するために使用され、必ずしも特定の構造的な、連続する、または経時的な順序を説明するためのものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であることを理解されたい。さらに、「備える(comprise)」、「含む(include)」、「有する(have)」といった用語およびそれらの任意の変化形は非排他的な包含をカバーするように意図され、それによって、要素のリストを含む回路、プロセス、方法、製品、または装置が必ずしもそれらの要素に限定されず、明示的に列挙されていない、またはこのような回路、プロセス、方法、製品、または装置に内在する他の要素を含むことができる。本明細書において使用される場合、「結合される(coupled)」という用語は、電気的または非電気的な様式で直接的または間接的に接続されるものとして定義される。
【0073】
本発明の主題の原理が特定のシステム、装置、および方法に関連して上記で説明されてきたが、この説明は例示のみを目的として為されており、本発明の主題の範囲に対する限定としてではないことは明瞭に理解されたい。本明細書において述べられ図面内に示されたさまざまな機能または処理ブロックは、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアまたはそれらの任意の組合せにおいて実装されることができる。さらに、本明細書において採用されている表現または専門用語は説明を目的としており、限定ではない。
【0074】
特定の実施形態の上記の記載は、他者が、現在の知識を適用することによって、一般的な概念から逸脱することなくさまざまな用途のためにそれを容易に改変および/または適合することができるだけ十分に本発明の主題の一般的性質を公開している。従って、このような適合および改変は開示されている実施形態の均等物の意図および範囲内にある。本発明の主題は、すべてのこのような代替形態、改変形態、均等物、および変形形態を、添付の特許請求の範囲の技術思想および広い範囲内に入るものとして包含する。
図1
図2
図3
図4