【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様では、熱交換器が提供される。その熱交換器は、それ自体を通して低温流体を案内するように適合された低温導管であって、低温流体入口および低温流体出口を有する低温導管を備える。その熱交換器はさらに、それ自体を通して高温流体を案内するように適合された高温導管であって、高温流体入口および高温流体出口を有する高温導管を備える。低温流体と高温流体との間で熱交換するための熱交換要素が低温導管と高温導管との間に配置されている。その熱交換器はさらに、それ自体を通して流体を案内する少なくとも1つの別の導管を備える。その別の導管は流体入口および流体出口を有する。その別の導管は、熱交換要素のうちの前記それぞれの低温導管または高温導管と同じ面上で低温導管または高温導管の隣に配置されている。その別の導管は、互いにある距離の位置に配置され2つの分離要素間に空所(空洞、キャビティ(cavity))を形成する2つの分離要素を備えるセパレータによって、それぞれの低温導管または高温導管から分離されている。セパレータは、その別の導管と、熱交換要素の同じ面上に配置されたそれぞれの低温導管または高温導管との間の熱交換を制限するように、空所中へのもしくは空所内のまたはその両方の流体の流れを制限する。
【0006】
本発明による熱交換器では、いくつかの流体の流れ、好ましくは3以上の流れが1つの熱交換器に組み込まれている。それにより、別々の熱交換器を2つの流れそれぞれに製造し組み立てる必要がないので生産コストおよび製造コストが削減される。したがって、やはり、ハウジングは1つしか必要とせず、例えばそのハウジングはスチール製のエンベロープ(包み体、外被)でよい。それにより、さらに材料のコストおよび重量が削減される。さらに、やはり特に、いくつかの個々の構成要素がなく、本発明による熱交換器に組み込まれるそれらの個々の構成要素のうちの少なくとも一部の間に連結チューブが必要ないので、空間を削減することができる。好ましくは、別の導管は、熱交換要素の裏面上に高温導管が1つあり、2つの低温導管がセパレータによって分離されて互いに隣に配置されるような第2の低温導管であるが、本発明はそれに限定されない。その別の導管は、熱交換要素の裏面上に低温導管が1つのみあり2つの高温導管がセパレータによって分離され互いに隣に配置されるような高温導管でもよい。用途によっては、3つ以上の低温導管または3つ以上の高温導管が互いに隣に配置され、1つまたは複数の高温導管または低温導管が熱交換要素の裏面上にそれぞれ配置されてもよい。好ましくは、隣り合う導管内の流体は温度、集合状態、または化学組成のうちの少なくとも1つが異なる。しかし、以下で説明するように1つの流れがセパレータによって分離されて隣り合う導管中を流れる実施形態を実現することができる。
【0007】
分離要素間に空所を形成するセパレータを設けることによって、2つの流体の流れを
流体密封に分離できるだけでなく、熱交換要素の同じ面上の一方の流れから他方の流れへの熱伝達を最小限に抑えることもできる。2つの流体の流れの間に配置された単一のスペーサを使用する場合と比べると、10分の1までまたはそれを超える熱伝達の低減を実現することができる。さらに、隣り合う流体の流れの間の温度差が大きいことにより生じる熱交換要素中の物理的なストレスを低減することができる。隣り合う流体の流れの間で温度差が大きいと、短い距離で温度勾配が大きくなる場合がある。温度勾配が大きいことで生じる物理的なストレスは、特に熱交換要素が薄い場合に扱いが難しく、そのような薄い熱交換要素は、好ましくは、熱交換要素の低温側から熱交換要素の高温側への熱伝達を最大にするために使用される。
【0008】
セパレータの2つの分離要素間の距離は、2つの分離要素の全長に沿って空所を形成するために0mmよりも大きい。2つの分離要素間の距離は、変更することもでき、例えば熱交換器のサイズまたは熱交換器で使用される異なる流体の温度領域(temperature regime)に適合することもできる。しかし、好ましい実施形態では、2つの分離要素間の距離は、約5mmと約50mmの間の範囲、より好ましくは約10mmと約35mmの間の範囲、最も好ましくは約15mmと約30mmの間の範囲にあってよく、例えば25mmである。
【0009】
セパレータ全体は2つの分離要素間に空所を形成する2つの分離要素によって構築することができ、セパレータの一部分のみをこうした構成によって形成することもできる。したがって、セパレータのうちの空所を形成する部分は、セパレータ全体でもよく、セパレータの一部分のみでもよい。そのとき、セパレータの残りの部分は、好ましくは別の分離要素、例えば単一のスペーサによって形成することができる。2つの導管の間の境界の大部分がセパレータの空所形成部分によって形成されるとセパレータがより効率的になるが、セパレータの一部分のみが空所形成部分である場合はセパレータの利点が効果的になる。好ましくは、空所形成部分は、隣り合う2つの導管の間の境界の40から100パーセントを成し、より好ましくは、境界の少なくとも半分、例えば70から100パーセントを成す。
【0010】
本発明による熱交換器は、少数の構成要素のみを、好ましくは構造的に単純な構成要素を用いて製造することができる。設定が簡単であると、熱交換要素の表面全体を熱交換器の低温側から高温側の熱伝導のために使用することが可能になる。
【0011】
用語「高温流体(hot fluid)」および「低温流体(cool fluid)」は、本明細書では、熱交換器内で高温流体から低温流体への熱伝達を可能にする、気体、液体、またはその混合物でよい流体を説明するために用いられている。低温流体の温度は高温流体の温度よりも低い。高温流体と低温流体との温度差またはその温度範囲の差に関して基本的に制限はないが、一部の好ましい実施形態では、高温流体入口での「高温流体」の温度は、500と1000℃との間、例えば約800℃である。一部の好ましい実施形態では、低温流体の温度は、低温流体入口において周囲温度と十分の数℃との間であり、低温流体出口において約数百℃、例えば700℃である。気体を2つ用いる一部の好ましい実施形態では、一方の気体は出口温度が数百℃、例えば100〜300℃でよく、他方の気体は出口温度が数百℃、例えば500〜800℃でよい。したがって、2つの気体の温度差は、最大で数百℃、例えば300から500℃までの範囲にあってよい。液体が2つ用いられる一部の好ましい実施形態では、これらは、例えば温度差がほんの十分の数℃、例えば30から60℃でよい。好ましくは、2つの液体の温度は、一方の液体ではやはり十分の数℃、例えば15〜40℃でしかなく、第2の液体では50〜90℃である。
【0012】
用語「隣り合う導管(neighbouring conduits)」または「互いに隣に配置された導管(conduits arranged next to each other)」は、以下では、熱交換要素の同じ面上に互いに隣に配置された、セパレータによって分離された2以上の導管のために用いられている。それにより、隣り合う導管は、好ましくは熱交換要素と直接接触した状態で同じ平面にある。
【0013】
本発明による熱交換器の一態様によれば、セパレータは、それぞれの低温導管または高温導管から別の導管を
流体密封に分離し、少なくとも1つの分離要素が熱交換要素と
流体密封に連結されている。こうした流密の連結は、特に好ましいか、またはそれどころか、異なる流体が隣り合う導管を通して案内される場合、例えば流体の温度、集合状態、または化学組成が異なる場合に、必要とされることがある。
【0014】
2つの導管の間、すなわち別の導管と低温導管または高温導管のいずれかとの間で流密の連結を実現するためには、セパレータの一方の分離要素のみを分離要素の上側の長さ面および下側の長さ面(an upper and lower length side)上で、例えば溶接またはろう付けによって、
流体密封に熱交換要素と連結することで十分な場合がある。セパレータの第2の分離要素が熱交換要素に
流体密封に連結されていない場合は、その漏出部が、隣り合う導管中を流れる流体がその漏出部を通してセパレータの2つの分離要素間に形成された空所を出入りするのを助けるように働くことができる。空所と隣り合う導管の1つとの間のこうした流体連結は、圧力を補償するように働くが、空所と隣り合う導管との間の、または空所の内部かつ空所に沿って流体が多く交換されることは可能にしない。それにより、空所を通した熱伝導が最小限に維持されることが保証される。
【0015】
空所と一方の導管との間の圧力の補償のために、本発明による熱交換器の一部の好ましい実施形態では、セパレータに少なくとも1つの開口部が設けられる。それにより、セパレータによって別の導管から分離されるそれぞれの低温導管または高温導管と空所との間に流体連結が生じる。
【0016】
少なくとも1つの開口部は、好ましくは、セパレータの分離要素に配置されている。その少なくとも1つの開口部の設計は圧力の補償を可能にするように設計されている。セパレータを通した熱伝導を制限または抑制するために、空所に入る流体の流れがほとんどなくなることを可能にするか、または空所を通る流体の流れがほとんどないかもしくは全くなくなることを可能にする。開口部は、空所の一端の開放型の空所でもよい。
【0017】
本発明による熱交換器の他の態様によれば、セパレータは、空所中へのまたは空所内の流体の流れを制約するように適合された障害物を備える。空所中の流体の流れを制約するには、障害物を、例えばセパレータの壁部分に、好ましくは空所の一部分を形成する熱交換要素の壁部分に配置することができる。障害物は、邪魔されずに空所を流体の流れが出入りすることを妨げるように、セパレータ内の開口部内にまたはその近くに配置することもできる。好ましくは、障害物は、ランダムまたは規則的な配列の欠刻、窪み、溝、突起、または波形である。好ましくは、障害物は、熱交換器の壁と、例えば熱交換プレートと一体になっている。しかし、障害物は、セパレータ内に、好ましくは空所に配置された別個の部品、例えば金属シートなどのシート材料の例えば波形の細長片でもよい。
【0018】
空所またはセパレータ内の漏出部、開口部、障害物などにより、空所と隣り合う導管または熱交換器の出口との間の圧力の補償が可能になり、空所中の流れを制限または抑制することが可能になる。セパレータの2つの分離要素は、それらの要素と同様に、好ましくは、空所を通る流体の流れが存在しないように、または空所または空所の一部分を通る流体の流れが、隣り合う導管中の流体の流れよりも実質的に少なくなるように配置および寸法設定されている。好ましくは、空所中の流体の流速は、隣り合う導管中の、特に空所がそれと制限された流体連絡をする隣り合う導管中の流体の流速の、最高で5パーセント、より好ましくは、1から2パーセント未満である。
【0019】
本発明による熱交換器の別の態様によれば、別のセパレータが熱交換要素の反対側の面上に配置されている。好ましくは、この別のセパレータは、熱交換要素の反対側の面上に配置された低温導管または高温導管内のそれぞれ同一の流体の流れを分離する。好ましくは、こうした別のセパレータは、熱交換器内でセパレータと同じ位置に(同じ向きおよび位置であるが熱交換要素の反対側の面上に)配置されている。すなわち、好ましくは、セパレータおよび別のセパレータは、熱交換要素によってのみ分離されて互いに上方に配置されている。別のセパレータはセパレータと同一でよい。しかし、同一の流体が別のセパレータの隣り合う導管中を案内されるので、隣り合う導管中の2つの同一の流れの間のある一定の制限された流れの交換を可能にすることができるかまたはさらにそれが望まれることがある。したがって、別のセパレータは、流密ではないが、好ましくは隣り合う導管の間の流体の交換率を予め設定した状態で隣り合う導管を分離することができる。互いにある距離の位置に配置され熱交換要素の反対側の面上に配置された空所を形成する2つの分離要素を備える別のセパレータを設けることにより、熱交換器が機械的に支持される。これは、温度差が大きくしたがって要素の変形が大きい熱交換器では特に好ましい。しかし、別のセパレータが配置されること、特に、熱交換要素の反対側の面上でセパレータと同じ場所に配置されることにより、熱交換器の熱領域(heat regime)がさらに制御される。例えば全体が高温の面の反対の低温の面上に空所が1つあるよりも対向する2つの空所の温度差はより穏やかにすることができる。
【0020】
本発明による熱交換器の別の態様によれば、熱交換要素は、伸縮可能な構造、例えば熱膨張の際に熱交換要素の変形を可能にするように適合された波形構造を備える。加熱すると、伸縮可能な構造の材料が膨張し、したがって、その構造は、熱交換要素の材料が物理的なストレスを受けるかまたは破裂することなく伸縮する。冷却の際には、熱交換要素の伸縮可能な構造によってやはり熱収縮が吸収される。熱交換要素の伸縮可能な構造により、好ましくは、熱交換要素の、例えば熱伝導プレートの平面内の長手方向および/または横断方向の膨張および収縮が可能になる。好ましい実施形態では、伸縮可能な構造は、空所の側壁を形成し、好ましくは、熱交換要素のうちの空所の位置にある部分によって直接形成される。伸縮可能な構造が、空所中の流体の流れに影響を及ぼすように障害物として働くこともできる。
【0021】
本発明による熱交換器の他の態様では、セパレータはさらに、別の分離要素を備える。それぞれの隣り合う低温導管または高温導管から別の導管を分離するために、セパレータは、別の分離要素、例えば単一のスペーサなどを備えることができる。別の分離要素が、好ましくは、隣り合う導管の入口または出口を分離するように配置されている。構造的に単純な配置では、セパレータの空所形成部分は、熱交換要素の一端から熱交換要素の長さの一部分、例えば少なくともその半分に沿って延在する。別の分離要素は、セパレータのこうした空所形成部分に本質的に垂直に、熱交換要素の側方の1辺まで延在し、したがって、セパレータによって一方の導管が他方の導管から完全に分離されるが、分離の一部だけはセパレータの空所形成部分の影響を受ける。
【0022】
セパレータが熱伝導性要素の全長に沿って延在する本発明による熱交換器の実施形態では、好ましくは、空所をその間に形成する2つの分離要素も熱伝導性要素の全長に沿って延在する。
【0023】
セパレータが導管内の流れ偏向体(フローデビエータ(flow deviator))として働くこともできる。したがって、隣り合う2つの導管に関する、特に導管自体に関する構造の種類を倍増させることができる。それにより、例えば熱伝達の観点から、流体の選択および最適化を含む本発明による熱交換器の高温側および低温側の配置のさらに多くの組み合わせを、本発明による熱交換器の応用形態と同様に実現することができる。
【0024】
一例として、並流および向流の配置で高温の流れが単一方向のものは、1つの低温導管に関してのみ実現することができる。
【0025】
したがって、本発明による熱交換器の別の態様によれば、別の導管は、互いに平行に配置されセパレータによって互いから分離された第1の導管部分および第2の導管部分を備える。それにより、流体は、第1の導管部分を一方向に流れ、第2の導管部分を第1の導管部分の一方向に反対の方向に流れることが可能になる。導管ポート部分が、別の導管の前記第1の導管部分と第2の導管部分との間に配置されている。
【0026】
その別の導管では、流体は、向流方向に第1の導管部分および第2の導管部分を流れる。熱交換要素の裏面上の高温の流れの方向が平行(低温導管中の別の流体の流れの方向に平行)であると仮定されるときは、別の導管は、熱交換の用途に関して、第1および第2の導管部分に並流および向流の配置を含む。高温流体と組み合わせると、これは、本発明による熱交換器に組み込まれ導管ポート部分によって連結される2つの個々の熱交換器(第1の導管部分による1つの熱交換器および第2の導管部分による第2の熱交換器)と見なすことができる。したがって、基本的な配置では、2つの熱交換器が本発明による熱交換器に組み込まれるだけでなく、3つの熱交換器も組み込まれ、それにより、そのうち2つが内部ポートによって連結される。こうした配置により、多数の応用形態および変更形態が可能になり、これは、必要とするスペースが非常に小さく製造コストおよび材料コストが低くなる。
【0027】
言うまでもなく、別の導管が低温導管もしくは高温導管である場合またはセパレータが同一の隣り合う流れの間の別のセパレータである場合に、同じことを適用することができる。
【0028】
本発明による熱交換器の別の態様によれば、熱交換要素は輪郭構造を備える。低温導管、高温導管、または別の導管の下側の長さ面の輪郭構造は、低温導管、高温導管、または別の導管の上側の長さ面の輪郭構造と、形状、サイズ、および配置のうちの少なくとも1つが異なる。
【0029】
輪郭(外形)構造は、流体の流れに乱流を引き起こして、流れの動力学に影響を及ぼし、好ましくは、熱交換器の高温側と低温側との間の熱交換を助けるために用いることができる。輪郭構造は、好ましくは、熱交換要素の表面積を増大させる。輪郭構造は、それぞれの導管の壁の表面構造または壁の一部でよい。輪郭構造は輪郭が作製された壁でもよい。輪郭構造の例は、表面上の凹み、欠刻(刻み目)、フィン、もしくは溝、またはスタンピング(型押)した波様または「V字」模様である。
【0030】
本発明による熱交換器の一部の好ましい実施形態では、熱交換要素は熱伝導プレートであり、本発明による一部の好ましい実施形態では、熱交換器は積層型熱交換器として構築される。プレート熱交換器は、熱伝達に利用できる表面積が大きいので非常に有効である。プレート構成の製造は、便利であり、多重スタック(積み重ね体)として簡単に拡張することができる。特に複数のスタックの場合は、スタックの機械的安定性のためにスタックの各プレート間にセパレータを設けることができる。
【0031】
本発明による熱交換器の一態様によれば、複数の熱交換要素、好ましくは熱伝導プレートおよび複数のセパレータが交互に配置されて、熱伝導プレート間にそれぞれの複数の低温導管および高温導管が形成され、セパレータの隣にそれぞれの複数の別の導管が形成される。積層型熱交換器では、好ましくは、低温流体入口は低温流体入口コレクタ(集合体)と一体化され、低温流体出口は低温流体出口コレクタと一体化され、高温流体入口は高温流体入口コレクタと一体化され、高温流体出口は高温流体出口コレクタと一体化され、別の流体入口は別の入口コレクタと一体化され、別の流体出口は別の出口コレクタと一体化される。好ましくは、全ての入口がそれぞれ1つの入口コレクタと一体化され、全ての出口がそれぞれ1つの出口コレクタと一体化される。それにより、その配置は積層型多流熱交換器を形成する。コレクタを設けることによって、複数の導管に1つの供給部および1つの排出部のみを必要とすることができる。一変更形態では、熱交換器の全ての層が、異なる2つの流れを互いから分離するかまたは同一の流れを2以上の流れに分離するセパレータ(または別のセパレータ)を備える。別の変更形態では、別の導管からの低温/高温導管など、異なる流れのみをセパレータによって分離するように、他の全ての熱伝導プレート間にセパレータが配置されている。
【0032】
本発明による熱交換器のプレートの配置により、熱交換器を簡単に拡張して積層型の平行に配置された熱交換器を形成することが可能になる。それにより、熱交換プレートは、セパレータおよびスペーサによって互いから離間して互いの隣に積層される。
【0033】
本発明による熱交換器をコスト効率よく製造できるが、こうしたコスト効率の良さは、本発明による積層型熱交換器を製造する場合にさらによく認識できる。熱伝導プレートの2つの面(正面および裏面)上の導管の配置に適合された同一の、または好ましくは2つのタイプの熱伝導プレートは、交互に積層することができる。さらに同じほんの数タイプの別の分離要素を使用することができる。本発明による熱交換器または複数の熱交換器を組み合わせる積層型には、エンベロープは1つしか必要とされない。装置が単一の構成要素として製造されるときは、別々の熱交換器を連結するための組み立てコストは必要ない。
【0034】
本発明による熱交換器の他の態様によれば、積層型熱交換器では、異なる2種類の熱伝導プレートが交互に配置されており、最も好ましくは、隣接する熱伝導プレート間に配置された分離要素は全てI字形またはL字形である。こうした構成は、製造時および生産時にコストに関して非常に効率的である。熱伝導プレートが、1つの工程段階、例えばスタンピングまたは切り取りによって、伸縮可能な構造および/または輪郭構造を備えることができる。I字形およびL字形の分離要素の製造は、例えば、対応する分離要素をシート材料、例えば金属シートまたはセラミックプレートから切り取り、次いでその分離要素を熱伝導プレートに取り付けることによって、浪費することなくまたはほとんど浪費することなく材料を節約して行うことができる。しかし、熱伝導プレートのスタンピングまたは切り取りを行う前に、分離要素を熱伝導プレートに設けることができる。これは、例えば、分離要素が好ましくは熱伝導性の材料シートに例えばレーザ溶接によって連続的に取り付けられるテーラードブランクの形で実現することができる。
【0035】
隣接する熱伝導プレートは、好ましくは、構造、つまり伸縮可能な構造、輪郭構造、またはその両方の配置および形態に関して異なる。これは、導管(通常は隣接する熱伝導プレートの壁部分)の下面と上面が好ましくは異なる構造を備えることから生じる。好ましくは、こうした構造は、隣接する2つの熱伝導プレートが一緒にプレス加工されるときに互いに面する構造がその中に落下できないように配置されている。例えば、下からの圧力が流体の流れによって導管内に生じるときは、薄い熱伝導プレートまたは熱交換要素は、互いに対してプレス加工することができ、導管を部分的または完全に閉鎖することができる。輪郭構造によれる導管の閉鎖は、例えば、輪郭構造を突起および溝が互いに厳密に面しないように配置することによって防止することができる。例えば、波形は、傾斜した角度で配置することができ、導管の上に搭載された状態で構成された1つのプレートの波形パターンの傾斜角度は、正とすることができ、導管の下に搭載された状態で構成された隣接するプレートの波形パターンの傾斜角度は、負とすることができ、例えばプラス/マイナス20から45度である。
【0036】
矩形の熱伝導プレートでは、導管は、好ましくは、やはり角度を形成しないようにまたは90度だけ形成するように配置されている。それにより、伝導プレートの全ての縁部をI字形またはL字形の分離要素によって閉じることができ、伝導性プレートのより中心に近い領域に配置されたセパレータを、I字形または場合によってはL字形の分離要素によってのみ形成することもできる。個々の分離要素は、連結する、好ましくは
流体密封に連結するために、接触領域で溶接またはろう付けすることができる。
【0037】
本発明の別の態様によれば、低温流体と高温流体と少なくとも1つの別の流体との間で熱交換するための方法が提供されている。その方法は、熱交換要素を低温流体の流れと高温流体の流れとの間に配置するステップを含む。その方法はさらに、低温流体の流れの隣または高温流体の流れの隣で別の流体の流れを案内するステップであって、別の流体の流れが、熱交換要素のうちの前記それぞれの低温流体の流れまたは高温流体の流れと同じ面に沿って案内される、案内するステップを含む。その方法はさらに、別の流体の流れとそれぞれの低温流体または高温流体の流れとの間に空所を配置することによって、別の流体の流れをそれぞれの低温流体の流れまたは高温流体の流れから好ましくは
流体密封に分離するステップと、空所中へのまたは空所内の流体の動きを制限することによってセパレータを通して熱伝導を制限するステップとを含む。
【0038】
この方法の態様の利点を熱交換器の態様と共にすでに検討しており、繰り返さない。
【0039】
本発明による方法の別の態様によれば、少なくとも1つの別の流体は、低温流体または高温流体と、温度または集合状態のうちの少なくとも1つが異なる。好ましくは、液体および気体の流体は、本発明による熱交換器または方法において、異なる導管内で同時に使用される。好ましくは、隣り合う導管内で、すなわち高温導管または低温導管内のいずれかで使用される液体または気体は温度が異なる。本発明による熱交換器および方法は、数百℃まで例えば500℃までの温度差など、隣り合う流体の流れの温度差が大きい場合に特に適している。
【0040】
本発明による方法では、別の流体またはそれぞれの低温流体もしくは高温流体は、空所に入ることができるが、空所中の流体の流れの動きは制限されており、好ましくは、空所中に入りそこを通る流体の流れもセパレータおよび空所の配置に応じて制限されている。
【0041】
本発明による方法の別の態様によれば、その方法は、別のセパレータを熱交換要素の反対側の面上に配置するステップを含む。
【0042】
本発明による装置および方法は、好ましくは、1つまたは複数の燃料電池、好ましくは固体酸化物燃料電池(SOFC)などの燃料電池と組み合わせて使用される。SOFC燃料電池は、通常、予熱された流入する2つのガス状流体を必要とし、2つの高温ガス出口を設け、それは熱再生のために冷却することができる。しかし、これら高温の流れと加温される低温の流れとの間の温度差が大きい。単なる一例として、高温のカソードガスは、SOFCを約950℃で出、ガス−ガス熱交換器によって150から250℃まで冷却することができる。そのガスはさらに、ガス/水熱交換器によって冷却されて余熱が回収される。そこで、水は、約5から10℃だけ、約20から25〜30℃まで加熱される。これは、2つのガス流、SOFCからの空気および高温のガスの出口、ならびに1つの液体の流れ(低温の水)を用いて本発明による熱交換器に組み込むことができる。低温水と高温ガスその間の温度差が大きいことで生じる物理的な高いストレスは、本願で説明するようなセパレータの特定の構築物によって扱うことができる。SOFCと組み合わせた熱交換器のこうした例では、それぞれの第1および第2の「低温」導管内で同じ面上で水および空気を案内することができる。次いで、熱伝導プレートの裏面上で1つの高温導管中で熱交換器の全長に沿って高温ガスを案内することができる。水は、高温のガスのすでに冷却した領域上に直交流(cross flow)の配置に案内することができ、空気は、2つの側方の辺上で熱交換器に導入しそこから排出することができるが、好ましくは、高温ガスに対して本質的に向流方向に案内される。したがって、空気は、十分の数℃、例えば50℃から数百℃、例えば700〜750℃まで加熱することができ、高温のガスは約900℃から約50〜80℃まで冷却される。
【0043】
以下では、添付の図面によって本発明による装置のいくつかの実施形態が示されている。