特許第6693690号(P6693690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6693690
(24)【登録日】2020年4月20日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 9/00 20060101AFI20200427BHJP
   F28F 3/00 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
   F28D9/00
   F28F3/00 311
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-28758(P2014-28758)
(22)【出願日】2014年2月18日
(65)【公開番号】特開2014-159945(P2014-159945A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2017年2月16日
【審判番号】不服2018-16916(P2018-16916/J1)
【審判請求日】2018年12月20日
(31)【優先権主張番号】13155768.8
(32)【優先日】2013年2月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515150597
【氏名又は名称】ボーサル エミッション コントロール システムズ エヌベー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141025
【弁理士】
【氏名又は名称】阿久津 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】イベス ド ヴォス
(72)【発明者】
【氏名】フレディ ウォランツ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン‐ポール ヒューバート ヤンセンス
【合議体】
【審判長】 松下 聡
【審判官】 平城 俊雅
【審判官】 紀本 孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−133607(JP,A)
【文献】 特開2006−220319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 9/00
F28F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器において、
低温導管(2、3)であって、前記低温導管を通して低温流体(20、30)を案内するように適合され、低温流体入口(21、31)および低温流体出口(22、32)を有する、低温導管と、
高温導管(4)であって、前記高温導管を通して高温流体(40)を案内するように適合され、高温流体入口(41)および高温流体出口(42)を有する、高温導管と、
前記低温導管(2、3)および前記高温導管(4)の間に配置された熱交換要素(1)であって、前記低温流体および前記高温流体の間の熱交換のためにある、熱交換要素とを備え、前記熱交換器が、前記高温流体入口で500と1000℃と間の範囲にある温度を有する高温流体を共に用いられ、前記熱交換器がさらに、
少なくとも1つの別の導管(3、2)であって、前記別の導管が、当該別の導管を通して流体(30、20)を案内し、前記別の導管が流体入口(31、21)および流体出口(32、22)を有する、別の導管を備え、前記別の導管が、前記熱交換要素(1)のうちの前記それぞれの低温導管または高温導管と同じ面上で前記低温導管(2、3)または前記高温導管(4)の隣に配置され、前記別の導管が、互いに対してある距離の位置に配置され2つの分離要素(51、52)間に空所(53)を形成する2つの分離要素(51、52)を備えるセパレータ(5)によって、前記それぞれの低温導管または高温導管から分離されており、前記セパレータが、前記熱交換要素(1)の同じ面に配置された前記別の導管(3、2)と前記それぞれの低温導管または高温導管との間の熱交換を制限するように、前記空所(53)中へのまたは前記空所(53)内の流体の流れを制限し、前記セパレータ(5)内に少なくとも1つの開口部が設けられて、前記空所(53)と、前記それぞれの低温導管または高温導管(2、3、4)との間を流体連結し、前記それぞれの低温導管または高温導管が、前記セパレータ(5)によって前記別の導管(3、2)から分離される、熱交換器。
【請求項2】
前記セパレータ(5)が、前記それぞれの低温導管または高温導管(2、3、4)から前記別の導管(3、2)を流体密封に分離し、1つの分離要素(51、52)が前記熱交換要素(1)に流体密封に連結される、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記セパレータ(5)が、前記空所(53)中へのまたは前記空所(53)内の流体の流れを制約するように適合された障害物(14)を備える、請求項1から2のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記熱交換要素(1)が、熱膨張の際に前記熱交換要素(1)の変形を可能にするように適合された伸縮可能な構造(14)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記伸縮可能な構造(14)が前記空所(53)の側壁を形成する、請求項4に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記セパレータ(5)がさらに、別の分離要素(54)を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記別の導管(3)が、互いに平行に配置され前記セパレータ(5)によって互いから分離された第1の導管部分(301)および第2の導管部分(303)を含み、流体が、前記第1の導管部分(301)を一方向に流れ、前記第2の導管部分(303)を前記第1の導管部分(301)の前記一方向に反対の方向に流れることが可能であり、ポート部分(302)が、前記別の導管(3)の前記第1の導管部分(301)と第2の導管部分(301、303)との間に配置される、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記熱交換要素(1)が、前記低温導管(2、3)、前記高温導管(4)、または前記別の導管(3、2)内に導管内の流れを変える構造(15)を備え、前記低温導管、前記高温導管、または前記別の導管(2、3、4)の下側の長さ面の前記構造(15)が、前記低温導管、前記高温導管、または前記別の導管(2、3、4)の上側の長さ面の前記構造(15)の形状、サイズ、および配置のうちの少なくとも1つが異なる、請求項1から7のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記熱交換要素が熱伝導プレート(1)である、請求項1から8のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項10】
複数の熱伝導プレート(1)および複数のセパレータ(5)を備え、熱伝導プレート(1)とセパレータ(5)とが交互に配置されて、低温導管および高温導管(2、3、4)が熱伝導プレート(1)間に形成され前記セパレータ(5)の隣に別の導管(3、2)が形成され、低温流体入口(21、31)が低温流体入口コレクタ(213、313)と一体化され、低温流体出口(22、32)が低温流体出口コレクタ(223、323)と一体化され、高温流体入口(41)が高温流体入口コレクタ(413)と一体化され、高温流体出口(42)が高温流体出口コレクタ(423)と一体化され、別の流体入口(31、21)が別の入口コレクタ(313、213)と一体化され、別の流体出口(32、22)が別の出口コレクタ(323、223)と一体化される、請求項9に記載の熱交換器。
【請求項11】
異なる2つの熱伝導プレート(1)が交互に配置されており、隣接する熱伝導プレート(1)間に配置された分離要素(51、52、54、55)が全て、I字形またはL字形である、請求項10に記載の熱交換器。
【請求項12】
低温流体と高温流体と少なくとも1つの別の流体との間で熱交換する方法であって、
低温流体の流れ(20、30)と高温流体の流れ(40)との間に、熱交換要素(1)を配置するステップであって、前記高温流体の温度は、高温流体入口で、500と1000℃との間の範囲にある、熱交換要素(1)を配置するステップと、
別の流体の流れ(30、20)を前記低温流体の流れ(20、30)の隣または前記高温流体の流れ(40)の隣で案内するステップであって、前記別の流体の流れ(30、20)が、前記熱交換要素(1)のうちの前記それぞれの低温流体の流れ(20、30)または高温流体の流れ(40)と同じ面に沿って案内される、案内するステップと、
互いに対してある距離の位置に配置され2つの分離要素(51、52)間に空所(53)を形成する2つの分離要素(51、52)を備えるセパレータ(5)によって、前記別の流体の流れを前記それぞれの低温流体の流れまたは高温流体の流れから分離するステップと、
前記セパレータ(5)の前記空所(53)への流体の流れを許容するステップと、
前記空所中へのまたは前記空所内の流体の動きを制限することによって前記セパレータ(5)を通した熱伝導を制限するステップと
を含む方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの別の流体は温度または集合状態のうちの少なくとも1つが前記低温流体または前記高温流体とは異なる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
別のセパレータを前記熱交換要素(1)の反対側の面上に配置するステップをさらに含む、請求項12または13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱交換器の分野に関する。本発明は特に多流熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの低温流体が1つの高温流体によって加熱される熱交換器モジュールがある。一方の低温流体は他方の低温流体ほど加熱されず高温流体のうちのすでに冷却された側に配置され、他方の低温流体は高温流体の高温の入口側に配置される。これらの熱交換器モジュールは、2つの低温流体を加熱するように適合されているが、高温流体からの熱回収には最適ではない。
【0003】
排出または吐出される2つの流体を高温で供給する、既知の用途、例えば燃料電池の動作がある。こうした流体に貯蔵される熱は、流体をそれぞれ熱交換器に案内することによってさらに使用するために利用できる。一部の熱交換器はコストがかかり空間を必要とする以外にも、こうした排出された流体の温度が様々であることが多く、そのことは熱交換プロセスを最適化するときに考慮に入れるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、現在の技術の欠点を考慮に入れた熱交換器が必要である。特に、重量が軽く場所を取らず生産コストの削減を可能にする熱交換器が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様では、熱交換器が提供される。その熱交換器は、それ自体を通して低温流体を案内するように適合された低温導管であって、低温流体入口および低温流体出口を有する低温導管を備える。その熱交換器はさらに、それ自体を通して高温流体を案内するように適合された高温導管であって、高温流体入口および高温流体出口を有する高温導管を備える。低温流体と高温流体との間で熱交換するための熱交換要素が低温導管と高温導管との間に配置されている。その熱交換器はさらに、それ自体を通して流体を案内する少なくとも1つの別の導管を備える。その別の導管は流体入口および流体出口を有する。その別の導管は、熱交換要素のうちの前記それぞれの低温導管または高温導管と同じ面上で低温導管または高温導管の隣に配置されている。その別の導管は、互いにある距離の位置に配置され2つの分離要素間に空所(空洞、キャビティ(cavity))を形成する2つの分離要素を備えるセパレータによって、それぞれの低温導管または高温導管から分離されている。セパレータは、その別の導管と、熱交換要素の同じ面上に配置されたそれぞれの低温導管または高温導管との間の熱交換を制限するように、空所中へのもしくは空所内のまたはその両方の流体の流れを制限する。
【0006】
本発明による熱交換器では、いくつかの流体の流れ、好ましくは3以上の流れが1つの熱交換器に組み込まれている。それにより、別々の熱交換器を2つの流れそれぞれに製造し組み立てる必要がないので生産コストおよび製造コストが削減される。したがって、やはり、ハウジングは1つしか必要とせず、例えばそのハウジングはスチール製のエンベロープ(包み体、外被)でよい。それにより、さらに材料のコストおよび重量が削減される。さらに、やはり特に、いくつかの個々の構成要素がなく、本発明による熱交換器に組み込まれるそれらの個々の構成要素のうちの少なくとも一部の間に連結チューブが必要ないので、空間を削減することができる。好ましくは、別の導管は、熱交換要素の裏面上に高温導管が1つあり、2つの低温導管がセパレータによって分離されて互いに隣に配置されるような第2の低温導管であるが、本発明はそれに限定されない。その別の導管は、熱交換要素の裏面上に低温導管が1つのみあり2つの高温導管がセパレータによって分離され互いに隣に配置されるような高温導管でもよい。用途によっては、3つ以上の低温導管または3つ以上の高温導管が互いに隣に配置され、1つまたは複数の高温導管または低温導管が熱交換要素の裏面上にそれぞれ配置されてもよい。好ましくは、隣り合う導管内の流体は温度、集合状態、または化学組成のうちの少なくとも1つが異なる。しかし、以下で説明するように1つの流れがセパレータによって分離されて隣り合う導管中を流れる実施形態を実現することができる。
【0007】
分離要素間に空所を形成するセパレータを設けることによって、2つの流体の流れを流体密封に分離できるだけでなく、熱交換要素の同じ面上の一方の流れから他方の流れへの熱伝達を最小限に抑えることもできる。2つの流体の流れの間に配置された単一のスペーサを使用する場合と比べると、10分の1までまたはそれを超える熱伝達の低減を実現することができる。さらに、隣り合う流体の流れの間の温度差が大きいことにより生じる熱交換要素中の物理的なストレスを低減することができる。隣り合う流体の流れの間で温度差が大きいと、短い距離で温度勾配が大きくなる場合がある。温度勾配が大きいことで生じる物理的なストレスは、特に熱交換要素が薄い場合に扱いが難しく、そのような薄い熱交換要素は、好ましくは、熱交換要素の低温側から熱交換要素の高温側への熱伝達を最大にするために使用される。
【0008】
セパレータの2つの分離要素間の距離は、2つの分離要素の全長に沿って空所を形成するために0mmよりも大きい。2つの分離要素間の距離は、変更することもでき、例えば熱交換器のサイズまたは熱交換器で使用される異なる流体の温度領域(temperature regime)に適合することもできる。しかし、好ましい実施形態では、2つの分離要素間の距離は、約5mmと約50mmの間の範囲、より好ましくは約10mmと約35mmの間の範囲、最も好ましくは約15mmと約30mmの間の範囲にあってよく、例えば25mmである。
【0009】
セパレータ全体は2つの分離要素間に空所を形成する2つの分離要素によって構築することができ、セパレータの一部分のみをこうした構成によって形成することもできる。したがって、セパレータのうちの空所を形成する部分は、セパレータ全体でもよく、セパレータの一部分のみでもよい。そのとき、セパレータの残りの部分は、好ましくは別の分離要素、例えば単一のスペーサによって形成することができる。2つの導管の間の境界の大部分がセパレータの空所形成部分によって形成されるとセパレータがより効率的になるが、セパレータの一部分のみが空所形成部分である場合はセパレータの利点が効果的になる。好ましくは、空所形成部分は、隣り合う2つの導管の間の境界の40から100パーセントを成し、より好ましくは、境界の少なくとも半分、例えば70から100パーセントを成す。
【0010】
本発明による熱交換器は、少数の構成要素のみを、好ましくは構造的に単純な構成要素を用いて製造することができる。設定が簡単であると、熱交換要素の表面全体を熱交換器の低温側から高温側の熱伝導のために使用することが可能になる。
【0011】
用語「高温流体(hot fluid)」および「低温流体(cool fluid)」は、本明細書では、熱交換器内で高温流体から低温流体への熱伝達を可能にする、気体、液体、またはその混合物でよい流体を説明するために用いられている。低温流体の温度は高温流体の温度よりも低い。高温流体と低温流体との温度差またはその温度範囲の差に関して基本的に制限はないが、一部の好ましい実施形態では、高温流体入口での「高温流体」の温度は、500と1000℃との間、例えば約800℃である。一部の好ましい実施形態では、低温流体の温度は、低温流体入口において周囲温度と十分の数℃との間であり、低温流体出口において約数百℃、例えば700℃である。気体を2つ用いる一部の好ましい実施形態では、一方の気体は出口温度が数百℃、例えば100〜300℃でよく、他方の気体は出口温度が数百℃、例えば500〜800℃でよい。したがって、2つの気体の温度差は、最大で数百℃、例えば300から500℃までの範囲にあってよい。液体が2つ用いられる一部の好ましい実施形態では、これらは、例えば温度差がほんの十分の数℃、例えば30から60℃でよい。好ましくは、2つの液体の温度は、一方の液体ではやはり十分の数℃、例えば15〜40℃でしかなく、第2の液体では50〜90℃である。
【0012】
用語「隣り合う導管(neighbouring conduits)」または「互いに隣に配置された導管(conduits arranged next to each other)」は、以下では、熱交換要素の同じ面上に互いに隣に配置された、セパレータによって分離された2以上の導管のために用いられている。それにより、隣り合う導管は、好ましくは熱交換要素と直接接触した状態で同じ平面にある。
【0013】
本発明による熱交換器の一態様によれば、セパレータは、それぞれの低温導管または高温導管から別の導管を流体密封に分離し、少なくとも1つの分離要素が熱交換要素と流体密封に連結されている。こうした流密の連結は、特に好ましいか、またはそれどころか、異なる流体が隣り合う導管を通して案内される場合、例えば流体の温度、集合状態、または化学組成が異なる場合に、必要とされることがある。
【0014】
2つの導管の間、すなわち別の導管と低温導管または高温導管のいずれかとの間で流密の連結を実現するためには、セパレータの一方の分離要素のみを分離要素の上側の長さ面および下側の長さ面(an upper and lower length side)上で、例えば溶接またはろう付けによって、流体密封に熱交換要素と連結することで十分な場合がある。セパレータの第2の分離要素が熱交換要素に流体密封に連結されていない場合は、その漏出部が、隣り合う導管中を流れる流体がその漏出部を通してセパレータの2つの分離要素間に形成された空所を出入りするのを助けるように働くことができる。空所と隣り合う導管の1つとの間のこうした流体連結は、圧力を補償するように働くが、空所と隣り合う導管との間の、または空所の内部かつ空所に沿って流体が多く交換されることは可能にしない。それにより、空所を通した熱伝導が最小限に維持されることが保証される。
【0015】
空所と一方の導管との間の圧力の補償のために、本発明による熱交換器の一部の好ましい実施形態では、セパレータに少なくとも1つの開口部が設けられる。それにより、セパレータによって別の導管から分離されるそれぞれの低温導管または高温導管と空所との間に流体連結が生じる。
【0016】
少なくとも1つの開口部は、好ましくは、セパレータの分離要素に配置されている。その少なくとも1つの開口部の設計は圧力の補償を可能にするように設計されている。セパレータを通した熱伝導を制限または抑制するために、空所に入る流体の流れがほとんどなくなることを可能にするか、または空所を通る流体の流れがほとんどないかもしくは全くなくなることを可能にする。開口部は、空所の一端の開放型の空所でもよい。
【0017】
本発明による熱交換器の他の態様によれば、セパレータは、空所中へのまたは空所内の流体の流れを制約するように適合された障害物を備える。空所中の流体の流れを制約するには、障害物を、例えばセパレータの壁部分に、好ましくは空所の一部分を形成する熱交換要素の壁部分に配置することができる。障害物は、邪魔されずに空所を流体の流れが出入りすることを妨げるように、セパレータ内の開口部内にまたはその近くに配置することもできる。好ましくは、障害物は、ランダムまたは規則的な配列の欠刻、窪み、溝、突起、または波形である。好ましくは、障害物は、熱交換器の壁と、例えば熱交換プレートと一体になっている。しかし、障害物は、セパレータ内に、好ましくは空所に配置された別個の部品、例えば金属シートなどのシート材料の例えば波形の細長片でもよい。
【0018】
空所またはセパレータ内の漏出部、開口部、障害物などにより、空所と隣り合う導管または熱交換器の出口との間の圧力の補償が可能になり、空所中の流れを制限または抑制することが可能になる。セパレータの2つの分離要素は、それらの要素と同様に、好ましくは、空所を通る流体の流れが存在しないように、または空所または空所の一部分を通る流体の流れが、隣り合う導管中の流体の流れよりも実質的に少なくなるように配置および寸法設定されている。好ましくは、空所中の流体の流速は、隣り合う導管中の、特に空所がそれと制限された流体連絡をする隣り合う導管中の流体の流速の、最高で5パーセント、より好ましくは、1から2パーセント未満である。
【0019】
本発明による熱交換器の別の態様によれば、別のセパレータが熱交換要素の反対側の面上に配置されている。好ましくは、この別のセパレータは、熱交換要素の反対側の面上に配置された低温導管または高温導管内のそれぞれ同一の流体の流れを分離する。好ましくは、こうした別のセパレータは、熱交換器内でセパレータと同じ位置に(同じ向きおよび位置であるが熱交換要素の反対側の面上に)配置されている。すなわち、好ましくは、セパレータおよび別のセパレータは、熱交換要素によってのみ分離されて互いに上方に配置されている。別のセパレータはセパレータと同一でよい。しかし、同一の流体が別のセパレータの隣り合う導管中を案内されるので、隣り合う導管中の2つの同一の流れの間のある一定の制限された流れの交換を可能にすることができるかまたはさらにそれが望まれることがある。したがって、別のセパレータは、流密ではないが、好ましくは隣り合う導管の間の流体の交換率を予め設定した状態で隣り合う導管を分離することができる。互いにある距離の位置に配置され熱交換要素の反対側の面上に配置された空所を形成する2つの分離要素を備える別のセパレータを設けることにより、熱交換器が機械的に支持される。これは、温度差が大きくしたがって要素の変形が大きい熱交換器では特に好ましい。しかし、別のセパレータが配置されること、特に、熱交換要素の反対側の面上でセパレータと同じ場所に配置されることにより、熱交換器の熱領域(heat regime)がさらに制御される。例えば全体が高温の面の反対の低温の面上に空所が1つあるよりも対向する2つの空所の温度差はより穏やかにすることができる。
【0020】
本発明による熱交換器の別の態様によれば、熱交換要素は、伸縮可能な構造、例えば熱膨張の際に熱交換要素の変形を可能にするように適合された波形構造を備える。加熱すると、伸縮可能な構造の材料が膨張し、したがって、その構造は、熱交換要素の材料が物理的なストレスを受けるかまたは破裂することなく伸縮する。冷却の際には、熱交換要素の伸縮可能な構造によってやはり熱収縮が吸収される。熱交換要素の伸縮可能な構造により、好ましくは、熱交換要素の、例えば熱伝導プレートの平面内の長手方向および/または横断方向の膨張および収縮が可能になる。好ましい実施形態では、伸縮可能な構造は、空所の側壁を形成し、好ましくは、熱交換要素のうちの空所の位置にある部分によって直接形成される。伸縮可能な構造が、空所中の流体の流れに影響を及ぼすように障害物として働くこともできる。
【0021】
本発明による熱交換器の他の態様では、セパレータはさらに、別の分離要素を備える。それぞれの隣り合う低温導管または高温導管から別の導管を分離するために、セパレータは、別の分離要素、例えば単一のスペーサなどを備えることができる。別の分離要素が、好ましくは、隣り合う導管の入口または出口を分離するように配置されている。構造的に単純な配置では、セパレータの空所形成部分は、熱交換要素の一端から熱交換要素の長さの一部分、例えば少なくともその半分に沿って延在する。別の分離要素は、セパレータのこうした空所形成部分に本質的に垂直に、熱交換要素の側方の1辺まで延在し、したがって、セパレータによって一方の導管が他方の導管から完全に分離されるが、分離の一部だけはセパレータの空所形成部分の影響を受ける。
【0022】
セパレータが熱伝導性要素の全長に沿って延在する本発明による熱交換器の実施形態では、好ましくは、空所をその間に形成する2つの分離要素も熱伝導性要素の全長に沿って延在する。
【0023】
セパレータが導管内の流れ偏向体(フローデビエータ(flow deviator))として働くこともできる。したがって、隣り合う2つの導管に関する、特に導管自体に関する構造の種類を倍増させることができる。それにより、例えば熱伝達の観点から、流体の選択および最適化を含む本発明による熱交換器の高温側および低温側の配置のさらに多くの組み合わせを、本発明による熱交換器の応用形態と同様に実現することができる。
【0024】
一例として、並流および向流の配置で高温の流れが単一方向のものは、1つの低温導管に関してのみ実現することができる。
【0025】
したがって、本発明による熱交換器の別の態様によれば、別の導管は、互いに平行に配置されセパレータによって互いから分離された第1の導管部分および第2の導管部分を備える。それにより、流体は、第1の導管部分を一方向に流れ、第2の導管部分を第1の導管部分の一方向に反対の方向に流れることが可能になる。導管ポート部分が、別の導管の前記第1の導管部分と第2の導管部分との間に配置されている。
【0026】
その別の導管では、流体は、向流方向に第1の導管部分および第2の導管部分を流れる。熱交換要素の裏面上の高温の流れの方向が平行(低温導管中の別の流体の流れの方向に平行)であると仮定されるときは、別の導管は、熱交換の用途に関して、第1および第2の導管部分に並流および向流の配置を含む。高温流体と組み合わせると、これは、本発明による熱交換器に組み込まれ導管ポート部分によって連結される2つの個々の熱交換器(第1の導管部分による1つの熱交換器および第2の導管部分による第2の熱交換器)と見なすことができる。したがって、基本的な配置では、2つの熱交換器が本発明による熱交換器に組み込まれるだけでなく、3つの熱交換器も組み込まれ、それにより、そのうち2つが内部ポートによって連結される。こうした配置により、多数の応用形態および変更形態が可能になり、これは、必要とするスペースが非常に小さく製造コストおよび材料コストが低くなる。
【0027】
言うまでもなく、別の導管が低温導管もしくは高温導管である場合またはセパレータが同一の隣り合う流れの間の別のセパレータである場合に、同じことを適用することができる。
【0028】
本発明による熱交換器の別の態様によれば、熱交換要素は輪郭構造を備える。低温導管、高温導管、または別の導管の下側の長さ面の輪郭構造は、低温導管、高温導管、または別の導管の上側の長さ面の輪郭構造と、形状、サイズ、および配置のうちの少なくとも1つが異なる。
【0029】
輪郭(外形)構造は、流体の流れに乱流を引き起こして、流れの動力学に影響を及ぼし、好ましくは、熱交換器の高温側と低温側との間の熱交換を助けるために用いることができる。輪郭構造は、好ましくは、熱交換要素の表面積を増大させる。輪郭構造は、それぞれの導管の壁の表面構造または壁の一部でよい。輪郭構造は輪郭が作製された壁でもよい。輪郭構造の例は、表面上の凹み、欠刻(刻み目)、フィン、もしくは溝、またはスタンピング(型押)した波様または「V字」模様である。
【0030】
本発明による熱交換器の一部の好ましい実施形態では、熱交換要素は熱伝導プレートであり、本発明による一部の好ましい実施形態では、熱交換器は積層型熱交換器として構築される。プレート熱交換器は、熱伝達に利用できる表面積が大きいので非常に有効である。プレート構成の製造は、便利であり、多重スタック(積み重ね体)として簡単に拡張することができる。特に複数のスタックの場合は、スタックの機械的安定性のためにスタックの各プレート間にセパレータを設けることができる。
【0031】
本発明による熱交換器の一態様によれば、複数の熱交換要素、好ましくは熱伝導プレートおよび複数のセパレータが交互に配置されて、熱伝導プレート間にそれぞれの複数の低温導管および高温導管が形成され、セパレータの隣にそれぞれの複数の別の導管が形成される。積層型熱交換器では、好ましくは、低温流体入口は低温流体入口コレクタ(集合体)と一体化され、低温流体出口は低温流体出口コレクタと一体化され、高温流体入口は高温流体入口コレクタと一体化され、高温流体出口は高温流体出口コレクタと一体化され、別の流体入口は別の入口コレクタと一体化され、別の流体出口は別の出口コレクタと一体化される。好ましくは、全ての入口がそれぞれ1つの入口コレクタと一体化され、全ての出口がそれぞれ1つの出口コレクタと一体化される。それにより、その配置は積層型多流熱交換器を形成する。コレクタを設けることによって、複数の導管に1つの供給部および1つの排出部のみを必要とすることができる。一変更形態では、熱交換器の全ての層が、異なる2つの流れを互いから分離するかまたは同一の流れを2以上の流れに分離するセパレータ(または別のセパレータ)を備える。別の変更形態では、別の導管からの低温/高温導管など、異なる流れのみをセパレータによって分離するように、他の全ての熱伝導プレート間にセパレータが配置されている。
【0032】
本発明による熱交換器のプレートの配置により、熱交換器を簡単に拡張して積層型の平行に配置された熱交換器を形成することが可能になる。それにより、熱交換プレートは、セパレータおよびスペーサによって互いから離間して互いの隣に積層される。
【0033】
本発明による熱交換器をコスト効率よく製造できるが、こうしたコスト効率の良さは、本発明による積層型熱交換器を製造する場合にさらによく認識できる。熱伝導プレートの2つの面(正面および裏面)上の導管の配置に適合された同一の、または好ましくは2つのタイプの熱伝導プレートは、交互に積層することができる。さらに同じほんの数タイプの別の分離要素を使用することができる。本発明による熱交換器または複数の熱交換器を組み合わせる積層型には、エンベロープは1つしか必要とされない。装置が単一の構成要素として製造されるときは、別々の熱交換器を連結するための組み立てコストは必要ない。
【0034】
本発明による熱交換器の他の態様によれば、積層型熱交換器では、異なる2種類の熱伝導プレートが交互に配置されており、最も好ましくは、隣接する熱伝導プレート間に配置された分離要素は全てI字形またはL字形である。こうした構成は、製造時および生産時にコストに関して非常に効率的である。熱伝導プレートが、1つの工程段階、例えばスタンピングまたは切り取りによって、伸縮可能な構造および/または輪郭構造を備えることができる。I字形およびL字形の分離要素の製造は、例えば、対応する分離要素をシート材料、例えば金属シートまたはセラミックプレートから切り取り、次いでその分離要素を熱伝導プレートに取り付けることによって、浪費することなくまたはほとんど浪費することなく材料を節約して行うことができる。しかし、熱伝導プレートのスタンピングまたは切り取りを行う前に、分離要素を熱伝導プレートに設けることができる。これは、例えば、分離要素が好ましくは熱伝導性の材料シートに例えばレーザ溶接によって連続的に取り付けられるテーラードブランクの形で実現することができる。
【0035】
隣接する熱伝導プレートは、好ましくは、構造、つまり伸縮可能な構造、輪郭構造、またはその両方の配置および形態に関して異なる。これは、導管(通常は隣接する熱伝導プレートの壁部分)の下面と上面が好ましくは異なる構造を備えることから生じる。好ましくは、こうした構造は、隣接する2つの熱伝導プレートが一緒にプレス加工されるときに互いに面する構造がその中に落下できないように配置されている。例えば、下からの圧力が流体の流れによって導管内に生じるときは、薄い熱伝導プレートまたは熱交換要素は、互いに対してプレス加工することができ、導管を部分的または完全に閉鎖することができる。輪郭構造によれる導管の閉鎖は、例えば、輪郭構造を突起および溝が互いに厳密に面しないように配置することによって防止することができる。例えば、波形は、傾斜した角度で配置することができ、導管の上に搭載された状態で構成された1つのプレートの波形パターンの傾斜角度は、正とすることができ、導管の下に搭載された状態で構成された隣接するプレートの波形パターンの傾斜角度は、負とすることができ、例えばプラス/マイナス20から45度である。
【0036】
矩形の熱伝導プレートでは、導管は、好ましくは、やはり角度を形成しないようにまたは90度だけ形成するように配置されている。それにより、伝導プレートの全ての縁部をI字形またはL字形の分離要素によって閉じることができ、伝導性プレートのより中心に近い領域に配置されたセパレータを、I字形または場合によってはL字形の分離要素によってのみ形成することもできる。個々の分離要素は、連結する、好ましくは流体密封に連結するために、接触領域で溶接またはろう付けすることができる。
【0037】
本発明の別の態様によれば、低温流体と高温流体と少なくとも1つの別の流体との間で熱交換するための方法が提供されている。その方法は、熱交換要素を低温流体の流れと高温流体の流れとの間に配置するステップを含む。その方法はさらに、低温流体の流れの隣または高温流体の流れの隣で別の流体の流れを案内するステップであって、別の流体の流れが、熱交換要素のうちの前記それぞれの低温流体の流れまたは高温流体の流れと同じ面に沿って案内される、案内するステップを含む。その方法はさらに、別の流体の流れとそれぞれの低温流体または高温流体の流れとの間に空所を配置することによって、別の流体の流れをそれぞれの低温流体の流れまたは高温流体の流れから好ましくは流体密封に分離するステップと、空所中へのまたは空所内の流体の動きを制限することによってセパレータを通して熱伝導を制限するステップとを含む。
【0038】
この方法の態様の利点を熱交換器の態様と共にすでに検討しており、繰り返さない。
【0039】
本発明による方法の別の態様によれば、少なくとも1つの別の流体は、低温流体または高温流体と、温度または集合状態のうちの少なくとも1つが異なる。好ましくは、液体および気体の流体は、本発明による熱交換器または方法において、異なる導管内で同時に使用される。好ましくは、隣り合う導管内で、すなわち高温導管または低温導管内のいずれかで使用される液体または気体は温度が異なる。本発明による熱交換器および方法は、数百℃まで例えば500℃までの温度差など、隣り合う流体の流れの温度差が大きい場合に特に適している。
【0040】
本発明による方法では、別の流体またはそれぞれの低温流体もしくは高温流体は、空所に入ることができるが、空所中の流体の流れの動きは制限されており、好ましくは、空所中に入りそこを通る流体の流れもセパレータおよび空所の配置に応じて制限されている。
【0041】
本発明による方法の別の態様によれば、その方法は、別のセパレータを熱交換要素の反対側の面上に配置するステップを含む。
【0042】
本発明による装置および方法は、好ましくは、1つまたは複数の燃料電池、好ましくは固体酸化物燃料電池(SOFC)などの燃料電池と組み合わせて使用される。SOFC燃料電池は、通常、予熱された流入する2つのガス状流体を必要とし、2つの高温ガス出口を設け、それは熱再生のために冷却することができる。しかし、これら高温の流れと加温される低温の流れとの間の温度差が大きい。単なる一例として、高温のカソードガスは、SOFCを約950℃で出、ガス−ガス熱交換器によって150から250℃まで冷却することができる。そのガスはさらに、ガス/水熱交換器によって冷却されて余熱が回収される。そこで、水は、約5から10℃だけ、約20から25〜30℃まで加熱される。これは、2つのガス流、SOFCからの空気および高温のガスの出口、ならびに1つの液体の流れ(低温の水)を用いて本発明による熱交換器に組み込むことができる。低温水と高温ガスその間の温度差が大きいことで生じる物理的な高いストレスは、本願で説明するようなセパレータの特定の構築物によって扱うことができる。SOFCと組み合わせた熱交換器のこうした例では、それぞれの第1および第2の「低温」導管内で同じ面上で水および空気を案内することができる。次いで、熱伝導プレートの裏面上で1つの高温導管中で熱交換器の全長に沿って高温ガスを案内することができる。水は、高温のガスのすでに冷却した領域上に直交流(cross flow)の配置に案内することができ、空気は、2つの側方の辺上で熱交換器に導入しそこから排出することができるが、好ましくは、高温ガスに対して本質的に向流方向に案内される。したがって、空気は、十分の数℃、例えば50℃から数百℃、例えば700〜750℃まで加熱することができ、高温のガスは約900℃から約50〜80℃まで冷却される。
【0043】
以下では、添付の図面によって本発明による装置のいくつかの実施形態が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】2つの流体の流れを同じ平面内で平行に案内する熱交換器の図を示す。
図2】1つの高温の流れおよび2つの低温の流れを有する、コレクタを含む向流の配置の熱交換器の略図である。
図3】流れの偏向を含む熱交換器の図である。
図4】線I−Iに沿った(空所に沿った)断面図および線II−IIに沿った(空所に垂直に熱伝導プレートを横切る)断面図を含む、本発明による熱交換器の熱伝導プレートの部分概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1に、平行に互いの隣を流れる第1の流体20および第2の流体30のための第1の導管2および第2の導管3を有するプレート熱交換器の内部の図が示されている。例えば薄い金属板などの熱伝導材料から作製された熱伝導プレート1が、その上に配置されたセパレータ5を備える。セパレータ5は、2つのスペーサ55と同様に、熱伝導プレート1の全長に沿って配置されている。セパレータは、好ましくは流体密封に、第1の導管2と第2の導管3とを互いから分離する。熱伝導プレート1の側方の辺に対するセパレータ5の位置に従って、導管2、3の幅を画定することができる。2つのスペーサ55は、熱伝導プレート1の2つの側方の辺に沿って、縁部に沿って、配置されて、それら側方の辺に沿って、好ましくは流体密封に、第1の導管2および第2の導管3を閉じている。セパレータ5は、互いにある距離の位置に配置された、2つの分離要素51、52、例えばスペーサを備える。2つの分離要素51と52との間には空所53が形成されている。空所53は、図1に示すように2つの導管2、3の上流端または下流端に関して、一端または両端で開放されていてよい。したがって、空所内の流体の圧力の補償を可能にするために流体が空所53を出入りすることができるが、空所を通る流体の流れは、少なくともその限られた寸法のせいで制限されており、したがって、第1の導管2と第2の導管3との間の熱交換は小さくなる。空所53は、その上流端または下流端の一方または両方で閉鎖されていてもよい。そのときは、好ましくは、分離要素51、52の一方は少なくとも1つの開口部を含み、例えば、分離要素の幅に沿った1つまたは複数の溝として含むか、または熱伝導プレート1との前記分離要素の流密でない連結によって開放型の通路の形で含む。こうした開口部により、各分離要素の溝を通る空所53と、隣接する第1または第2の隣り合う導管2、3との間の流体の交換を少なくすることが可能である。開放型の空所の端部または空所と導管との間の開口部の設計は、圧力の調節を可能にするが好ましくは空所53を通る流体の流れがないかまたは少なくなるように設計されている。やはり、空所53の内部の設計は、空所中の流体の流れを減少させるように適合されてよい。これは、例えば、流体の流れを妨げるように欠刻、窪み、または機械式の障害物を設けることによって行うことができる。熱伝導プレート1の裏面(図面の背面)上の1つ、2つ、またはそれよりも多くの流体の流れを、互いに対してまたは図1に示す熱伝導プレート1の正面の2つの流れ20、30に対して、並流、向流、または直交流の配置に配置することができる。熱伝導プレート1の裏面上の2つまたはそれよりも多くの流れを分離要素によって分離することもできる。好ましくは、こうした分離要素は、熱伝導プレート1に対して同じ位置に配置されている。第1、第2、および場合によってはそれよりも多くの隣り合う導管は、好ましくは異なる流体の流れに対して使用されるが、熱伝導プレートの背面上の1つもしくは2つ、またはそれよりも多くの導管は、好ましくは同じ流体の流れに対して使用される。
【0046】
図2は、矩形の熱伝導プレート1を有する熱交換器の概略透視図である。(図面に対して)熱伝導プレート1の正面(または上面)上には、第1の低温導管2および第2の低温導管3が、セパレータ5によって分離された状態で互いに隣に配置されている(簡単にするために単一の線によってのみ示す)。第1の低温流体20が、熱交換プレート1の側方の一方の辺に配置された第1の低温流体入口21において第1の低温導管2に入る。第2の低温流体30が、熱伝導プレート1の側方の同じ辺に配置された第2の低温流体入口31において第2の低温導管3に入る。第2の低温流体入口31は、熱交換プレート1の下流端の近くに、以下で説明する高温流体の流れに対して下流に配置される。低温の両方の流れは、平行に、隣り合う並流の配置で各導管2、3を通って熱伝導プレート1の長さに沿って流れる。第2の低温流体30の場合は、流体は、熱伝導プレートの全長に沿って流れ、熱伝導プレート1の反対側の側方の辺にある第2の低温流体出口32において第2の低温導管3を出る。第1の低温流体20の場合は、前記低温流体20は、熱伝導プレート1の長さの一部分にのみ沿って流れ、熱伝導プレート1のうちの第1の低温導管入口21と同じ側方の辺に配置された第1の低温導管出口22において第1の低温導管2を出る。2つの低温導管2、3の面積(幅掛ける長さ)は、セパレータ5およびスペーサの面積を抜いた熱伝導プレートの全面積になる。熱伝導プレート1の裏面または反対側の面上では、低温流体の流れ20、30に対して向流の方向に高温導管4中を高温流体40が流れる。高温導管4は、熱交換プレート1の全長および全幅にわたって延在し、熱交換器の下流端に配置された高温導管入口41において高温導管に入り、上流端に配置された高温導管出口42において高温導管を出る。
【0047】
第1の低温導管2は、第2の低温導管2よりも長さが短いだけでなく、幅も小さい。長さおよび幅を変更することによって、導管中の流体の滞留時間、流体が高温流体との熱交換を受ける時間、さらに流体が曝されることになる特定の温度領域の位置(location)を、選択および変更することができる。多流熱交換器の導管に用いられる流体の種類、例えば気体もしくは液体またはその両方を考慮に入れて、質量流、熱交換、背圧などを、熱交換器の必要な使用にように適合させることができる。
【0048】
全ての入口21、31、41および出口22、32、42はそれぞれ入口コレクタ213、313、413および出口コレクタ223、323、423を備える。コレクタでは、入口または出口それぞれ1つにつき1つのみのコレクタに、積層型熱交換器の各入口および各出口が「集められ」ている。それにより、積層型熱交換器には、流体を熱交換器に供給しそこから排出するために導管1つにつき1つの供給部および1つの排出部のみ設けなければならない。
【0049】
図2のセパレータ5は、熱交換プレート1の長さに沿って延在する長手方向の区分51と、熱交換プレート1を横切って延在する横断方向の区分52とを備える。好ましくは、セパレータ5の長手方向の区分51のみが空所を有する。しかし、空所は、例えば別個の空所として設計されて、さらにセパレータ5の横断方向の区分52に沿って延在してもよく、区分52にのみ沿って延在してもよい。
【0050】
高温導管4は1つしか設けなくてもよく、例えばセパレータによって分割してもよい。こうしたセパレータは、例えば、長手方向の区分51に沿ってのみ配置することができるが、熱伝導プレート1の反対側の面上に配置される。
【0051】
図3では、セパレータ5は、分離するだけでなく、好ましくは、断熱および物理的なストレスの補償も行い、第2の流れ30のフローデビエータとして働く。セパレータ5は、熱伝導プレート1の互いに反対側の2つの側方の辺10、11に平行に配置されている。セパレータ5は、熱伝導プレート1の(図面に対して)下側の辺12から上側の辺13まで延在するが、プレート1の全長に沿って延在はしていない。セパレータ5は、側方の辺10に近接して配置されており、それにより、熱伝導プレート1の平面がより小さい部分とより大きい部分に不完全に分離される。セパレータ5の分離要素51と52との間の空所53は、その上端で第2の導管3に対して開放されており、そのため、第2の流体30が空所の前記開放端を通して空所53を出入りすることができる。
【0052】
流体入口21、31は両方とも側方の辺10に配置されている。第1の流体20は、第1の導管2に入り、上方向に(プレート1の下側縁部12全体に沿って配置された)スペーサ55とセパレータ5との間を移動し、同じ側方の辺10に配置されているが第1の入口21からある程度の距離だけ離れた第1の出口22において第1の導管2を出る。第1の入口21と出口22との間の距離は、第1の導管2を側方の辺10に対して閉じる側方のスペーサ55の長さと一致する。第2の流体30は、側方の辺10において第2の導管3に入り、次いで、セパレータ5によって(プレート1の上側縁部13に向かって)上方向に流れるように強制される。セパレータ5の上端と熱伝導プレート1の上側縁部13との間の導管ポート部分302では、第2の流れ30が、セパレータ5の周りを通るように強制され、下方向に、反対側の側方の辺11のうちの熱伝導プレート1の下側縁部12の隣に配置された第2の出口32に移動する。この実施形態では、第2の流れ30自体が上方向の導管部分301と下方向の導管部分303とに向流方向を含む。これら2つの流れの部分301、303は、熱伝導プレート1の裏面上の高温流体と(または低温流体とそれぞれ)組み合わせて、個別の2つの熱交換器と見なすことができるが、本発明による熱交換器と組み合わせ、導管ポート部分302によって連結することができる。導管ポート部分302は、上方向の導管部分301と下方向の導管部分303との間または第2の流れのそれぞれ上方向の部分と下方向の部分との間のポートとして機能する。単純な構成、すなわち1つの流体導管のみが熱伝導プレート1の裏面上に配置された構成、つまり3つの熱交換器を、本発明による1つの熱交換器に組み合わせることができる。言うまでもなく、こうした構成により、非常に小さい空間および少ないコストしか必要としない多数の応用例および変更形態が可能になる。
【0053】
第1の入口21と第2の入口31とは、2つの分離要素51、52に対して垂直に延在する単一のスペーサ54によって分離されている。入口21、31の領域内の第1の流れ20と第2の流れ30との間で断熱性を向上させる場合は、単一のスペーサ54は空所を有するセパレータ5として設計することもできる。
【0054】
図4では、熱伝導プレート1の一部分ならびに空所に沿った断面(I−I)および空所に垂直の断面(II−II)が示されている。プレート1は、好ましくはスタンピングによるいくつかの構造14、15を備える。好ましくは、構造は全て、1つの工程段階でプレートにされる。熱伝導プレート1のうちの空所の面を形成する部分が、例えば空所に沿って規則的に配置された個々の欠刻または突起によって、ハーモニカ状態に形成され、このように構築された空所は蛇腹14として働く。こうした蛇腹部分14により、熱伝導プレート1の材料を壊すことなく、プレート1の加熱および冷却の際のプレート1のこの部分の膨張および収縮が可能になる。熱伝導プレート1のうちの流体導管の側壁を形成する部分は、輪郭15、例えば欠刻(きざぎざ、刻み目)、溝、または輪郭として適した他の構造を備える。図4の波形15の通常の配置は、好ましくは30度だけ、垂直軸または水平軸(長さまたは幅)から傾いている。流体の流れは、好ましくは、主にまたは完全に、プレート1の長さまたは幅に平行に流れるので、波形15は、導管内の流体の流れを変えるように働く。導管部分の輪郭は、好ましくは、隣り合う導管に関してまたは低温導管もしくは高温導管に関しては同一ではなく、好ましくは、熱伝導プレート1の正面16(上側)と裏面17(下側)上で同一ではない。このように、導管内の流れは上側の流れと下側の流れとで同じ構造が見られず、これは流れの特徴に影響を及ぼすことができる。図4では、それらの波形は規則的に配置されている。それらも、他の構造と同様に、不規則に配置してもよく、不規則な配置を形成してもよい。
【0055】
図面に示すいくつかの実施形態を参照しながら本発明を説明してきた。しかし、多くの変更形態、修正形態、または変形形態が本発明の範囲から逸脱することなく可能であることが当業者には明らかである。単なる一例として、低温流体および高温流体の通路の配置は、熱交換プロセスに最適にされてもよく、所望の熱交換率に適合してもよく、個々の導管中の質量流もしくは圧力降下に適合してもよく、使用する流体に適合してもよく、または低温の流れの導管の配置を高温導管に応用してもよい。さらに、セパレータの配置および特定の特性は、異なる流体の流れを分離するために使用する図面に示す例に限定されないが、例えば、同一の流体の流れを分離するために使用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 熱交換要素
2 低温導管、少なくとも1つの別の導管
3 低温導管、少なくとも1つの別の導管
4 高温導管
5 セパレータ
20 流体、低温流体
21 低温流体入口
22 低温流体出口
30 流体、低温流体
31 低温流体入口
32 低温流体出口
40 高温流体
41 高温流体入口
42 高温流体出口
51 分離要素
52 分離要素
53 空所
図1
図2
図3
図4