【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、壁厚が小さい場合であっても経済性に優れた形で十分なせん断補強を行うことが可能な鉄筋コンクリート構造及びその構築方法を提供することを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄筋コンクリート構造は請求項1に記載したように、互いに背中合わせとなる2つの壁面のうち、一方の壁面から所定距離だけ後退した位置に第1の主筋を該壁面に沿って列状に立設される形でコンクリートに埋設するとともに、他方の壁面から所定距離だけ後退した位置に第2の主筋を該壁面に沿って列状に立設される形で前記コンクリートに埋設し、前記第1の主筋に交差する形で第1の配力筋を前記コンクリートに埋設するとともに、前記第2の主筋に交差する形で第2の配力筋を前記コンクリートに埋設した鉄筋コンクリート構造において、
前記第1の主筋及び前記第2の主筋のうち、互いに対向する第1の主筋及び第2の主筋が一体に取り囲まれるように螺旋状のせん断補強筋を前記コンクリートに埋設
してなり、該せん断補強筋は単一の螺旋軸回りに周回形成してあるとともに、その内側に埋設される主筋が前記互いに対向する第1の主筋及び第2の主筋のみであり、該互いに対向する第1の主筋及び第2の主筋はそれぞれ単一の鉄筋で構成してあるものである。
【0010】
また、本発明に係る鉄筋コンクリート構造は、前記互いに対向する第1の主筋及び前記第2の主筋のうち、それらが立設された列方向に沿って一つおきとなるように前記せん断補強筋を配置したものである。
【0011】
また、本発明に係る鉄筋コンクリート構造の構築方法は請求項3に記載したように、互いに背中合わせとなる2つの壁面位置のうち、一方の壁面位置から所定距離だけ後退した位置に第1の主筋を該壁面位置に沿って列状に立設するとともに、他方の壁面位置から所定距離だけ後退した位置に第2の主筋を該壁面位置に沿って列状に立設し、
前記第1の主筋及び前記第2の主筋のうち、互いに対向する第1の主筋及び第2の主筋が一体に取り囲まれるように前記2つの壁面位置の間に螺旋状のせん断補強筋を配置し、
第1の配力筋を前記第1の主筋に交差するように該主筋に連結するとともに、第2の配力筋を前記第2の主筋に交差するように該主筋に連結し、
前記2つの壁面位置の間にコンクリートを打設する鉄筋コンクリート構造の構築方法であって、
前記せん断補強筋は単一の螺旋軸回りに周回形成してあるとともに、その内側に埋設される主筋が前記互いに対向する第1の主筋及び第2の主筋のみであり、該互いに対向する第1の主筋及び第2の主筋はそれぞれ単一の鉄筋で構成してあるものである。
【0012】
本発明に係る鉄筋コンクリート構造においては、第1の主筋及び第2の主筋のうち、互いに対向する第1の主筋及び第2の主筋、換言すれば概ね同一の横断面上に位置する第1の主筋及び第2の主筋が一体に取り囲まれるように螺旋状のせん断補強筋をコンクリートに埋設してある。
【0013】
このようにすると、螺旋状をなすせん断補強筋のうち、第1の主筋から第2の主筋に向かう湾曲部分と第2の主筋から第1の主筋に向かう湾曲部分とがそれぞれ壁面直交方向に沿って概ね配置されるため、従来のせん断補強筋と同様の配置状況が実現されるとともに、上述の湾曲部分は、該湾曲部分を除く他の螺旋状部分がコンクリートに埋設されるので、せん断補強筋として必要な定着が十分に確保される。
【0014】
そのため、本発明のせん断補強筋は、末端部にフックが設けられた従来のせん断補強筋と少なくとも同等のせん断補強作用を発揮する。
【0015】
また、上述した2つの壁面の離間距離、すなわち壁厚が小さい場合でも、それに応じて螺旋径を小さくすれば容易に対応が可能であり、従来の一般的なせん断補強筋のように、壁厚が小さいことで設置が不可能になるおそれもない。
【0016】
さらには、配力筋が配置された高さ位置にしか取り付けることができなかった従来の一般的なせん断補強筋とは異なり、螺旋ピッチを適宜変更することで、高さ方向に沿ったせん断補強筋の配置間隔を自在に調整することが可能となる。
【0017】
加えて、鉄筋工事にあたっては、立設が完了した第1の主筋及び第2の主筋の上方から螺旋状のせん断補強筋を落とし込むようにして、あるいは第1の主筋及び第2の主筋の立設位置に螺旋状のせん断補強筋を予め畳んだ状態で仮置きし、主筋立設後、仮置きされていたせん断補強筋を上方に引き上げるようにして、それぞれ設置することが可能であり、一本一本取り付ける必要があった従来の一般的なせん断補強筋に比べ、施工能率が格段に向上する。
【0018】
螺旋状のせん断補強筋は、互いに対向する第1の主筋及び第2の主筋のうち、それらが立設された列方向に沿って順次配置するようにしてもかまわないが、螺旋ピッチを小さくして高さ方向に沿ったせん断補強筋の配置間隔を密にすることによりそれぞれの鉄筋量を増やすようにすれば、互いに対向する第1の主筋及び前記第2の主筋のうち、それらが立設された列方向に沿って一つおきとなるようにせん断補強筋を配置した構成を採用することが可能である。
【0019】
かかる構成によれば、せん断補強筋の配筋作業を大幅に省力化することができる。
【0020】
本発明に係る鉄筋コンクリート構造を構築するには、まず、互いに背中合わせとなる2つの壁面位置のうち、一方の壁面位置から所定距離だけ後退した位置に第1の主筋を該壁面位置に沿って列状に立設するとともに、他方の壁面位置から所定距離だけ後退した位置に第2の主筋を該壁面位置に沿って列状に立設する。
【0021】
次に、第1の主筋及び前記第2の主筋のうち、互いに対向する第1の主筋及び第2の主筋が一体に取り囲まれるように2つの壁面位置の間に螺旋状のせん断補強筋を配置する。
【0022】
次に、第1の配力筋を第1の主筋に交差するように該主筋に連結するとともに、第2の配力筋を第2の主筋に交差するように該主筋に連結する。
【0023】
最後に、2つの壁面位置に型枠を適宜立て込んだ後、それらの間にコンクリートを打設する。
【0024】
このようにすれば、螺旋状のせん断補強筋と配力筋とを互いに干渉させることなく配筋することが可能となる。