(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0023】
<1.原盤の構成>
まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る原盤の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る原盤1を模式的に示した斜視図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る原盤1は、例えば、外周面に凹凸構造11が形成された基材10からなる。
【0025】
原盤1は、例えば、ロールツーロール(roll−to−roll)方式のナノインプリントに用いられる原盤である。ロールツーロール方式のナノインプリントでは、原盤1を回転させながら、原盤1の外周面を樹脂基材等に押圧することによって、外周面に形成された凹凸構造を樹脂基材等に転写することができる。すなわち、原盤1は、外周面に形成された凹凸構造を転写した転写物を効率良く大面積にて製造することができる。なお、原盤1によって凹凸構造が転写された転写物は、例えば、反射防止フィルムなどの光学体として使用することができる。
【0026】
基材10は、例えば、円筒または円柱形状の部材である。基材10の形状は、
図1で示すように内部に空洞を有する中空の円筒形状であってもよく、内部に空洞を有さない中実の円柱形状であってもよい。基材10の材料は、特に限定されず、溶融石英ガラスおよび合成石英ガラスなどの石英ガラス(SiO
2)、ステンレス鋼などの金属、ならびにステンレス鋼などの金属の外周面をSiO
2等で被覆したものなどを用いることができる。
【0027】
基材10の大きさは、特に限定されるものではないが、例えば、軸方向の長さは100mm以上であってもよく、外径は50mm以上300mm以下であってもよい。また、基材10が円筒形状である場合、円筒の厚みは2mm以上50mm以下であってもよい。
【0028】
凹凸構造11は、基材10の外周面に形成され、任意の凹凸を有する構造である。また、凹凸構造11が形成された領域は、複数の領域と、各領域の間に設けられた重畳領域とを含む。例えば、
図1に示すように、凹凸構造11が形成された領域は、第1領域12と、第2領域13と、第1領域12および第2領域13の間に設けられた重畳領域14とを含む。
【0029】
第1領域12は、第1の凹凸構造が形成された領域であり、第2領域13は、第2の凹凸構造が形成された領域である。第1の凹凸構造と、第2の凹凸構造とは、同一のパターン形状であってもよく、異なるパターン形状であってもよい。例えば、第1の凹凸構造、および第2の凹凸構造は、凹凸の平均周期が可視光帯域の波長以下(より具体的には、100nm以上350nm以下)である凹凸構造(いわゆる、モスアイ構造)であってもよい。また、第1の凹凸構造、および第2の凹凸構造がモスアイ構造である場合、凹部または凸部の平面配置は、四方格子であってもよく、六方格子であってもよく、ランダム配置であってもよい。
【0030】
重畳領域14は、第1の凹凸構造と、第2の凹凸構造とを重畳した重畳構造が形成された領域である。重畳領域14は、基材10の外周に沿って第1領域12と第2領域13との間に設けられる。
【0031】
重畳構造は、第1の凹凸構造と、第2の凹凸構造とを平面視した形状にて重畳した構造であってもよく、第1の凹凸構造と、第2の凹凸構造とを立体的に重畳した構造であってもよい。例えば、第1の凹凸構造、および第2の凹凸構造がフォトリソグラフィによって形成される場合、重畳領域14は、第1の凹凸構造を形成するための露光と、第2の凹凸構造を形成するための露光とが重畳して行われた多重露光領域であってもよい。
【0032】
また、原盤1の軸方向における重畳領域14の幅は、1μm以下であってもよい。重畳領域14の幅が1μm以下である場合、重畳領域14を目視で視認することが困難になるため、第1領域12と、第2領域13との繋ぎ目を視認しにくくすることができる。そのため、原盤1を用いて凹凸構造11を大面積に転写し、転写物を枚葉に切り分けた場合、枚葉物において重畳領域14が視認されにくいため、枚葉物ごとの品質のばらつきを小さくすることができる。
【0033】
上述したように、本実施形態に係る原盤1は、基材10の外周に形成された凹凸構造11において、第1の凹凸構造が形成された第1領域12と、第2の凹凸構造が形成された第2領域13との繋ぎ目を視認しにくくすることができる。したがって、本実施形態によれば、より広い領域に凹凸構造11を形成した原盤1を作製することができるため、より大面積の転写物を製造することができる。
【0034】
なお、
図1では、原盤1において凹凸構造11が形成された領域が、第1の凹凸構造が形成された第1領域12と、第2の凹凸構造が形成された第2領域13と、を含む例を示したが、本発明は上記例示に限定されない。
【0035】
例えば、原盤1において凹凸構造11が形成された領域は、第1の凹凸構造が形成された第1領域と、第2の凹凸構造が形成された第2領域と、第3の凹凸構造が形成された第3領域とを含んでもよい。このような場合、第1領域と第2領域との間には、第1の凹凸構造と第2の凹凸構造とが重畳された構造が形成された重畳領域が設けられ、第2領域と第3領域との間には、第2の凹凸構造と第3の凹凸構造とが重畳された構造が形成された重畳領域が設けられる。すなわち、凹凸構造11が形成された領域は、複数の領域と、各領域の間に設けられた重畳領域とを含んでいればよく、複数の領域の数は特に限定されない。
【0036】
<2.原盤の製造方法>
続いて、
図2〜
図5を参照して、本実施形態に係る原盤1の製造方法について説明する。
図2は、本実施形態に係る原盤1の露光方法を示した模式図である。なお、
図2(A)は、露光開始時の原盤1の状態を示しており、
図2(B)は、露光中の原盤1の状態を示している。
【0037】
図2に示すように、本実施形態に係る原盤1の製造方法では、基材10への露光は、複数のレーザヘッドを備えた露光装置2によって行われる。
【0038】
例えば、露光装置2は、第1のレーザヘッド23と、第2のレーザヘッド24と、第1のレーザヘッド23および第2のレーザヘッド24が組み付けられたヘッドステージ22と、ヘッドステージ22を基材10の軸方向に移動させるスライダ21とを備える。なお、第1のレーザヘッド23と、第2のレーザヘッド24との組み付け位置は、逆であってもよいことは言うまでもない。
【0039】
また、基材10への露光は、例えば、ヘッドステージ22をスライダ21に沿って動かし、軸中心に回転する基材10に第1のレーザヘッド23、および第2のレーザヘッド24からレーザ光を照射することで行われる。これにより、基材10は、露光装置2によってスパイラル状に露光される。
【0040】
基材10は、上述したように、円筒または円柱形状の部材である。また、基材10の外周面には、露光によるパターン形成のため、レジスト層(図示せず)が成膜される。
【0041】
レジスト層は、ポジ型またはネガ型のいずれのレジストで形成されてもよい。また、レジスト層に用いられるレジストは、有機系レジストまたは無機系レジストのいずれであってもよい。有機系レジストとしては、例えば、ノボラック系レジスト、または化学増幅型レジストなどを用いることができる。また、無機系レジストとしては、例えば、タングステン、モリブデン、バナジウム、タンタル、鉄、ニッケル、銅、チタン、ルテニウム、銀、亜鉛、アルミニウム、タリウム、ホウ素、ゲルマニウム、ニオブ、ケイ素、ウラン、テルル、ビスマス、コバルト、クロム、スズ、ジルコニウム、およびマンガンなどの1種または2種以上の無機元素を含む金属酸化物を用いることができる。なお、詳しくは後述するが、レジスト層は、露光前後で反射率等の特性が変化するレジストで形成されることが好ましい。
【0042】
有機系レジストにてレジスト層を成膜する場合、スピンコーティング、スリットコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、またはスクリーン印刷等を用いることができる。また、無機系レジストにてレジスト層を成膜する場合、スパッタ法等を用いることができる。
【0043】
スライダ21は、ヘッドステージ22を基材10の軸方向に精密に移動させる。具体的には、スライダ21は、サーボ制御によって高い位置決め精度にて、第1のレーザヘッド23および第2のレーザヘッド24を組み付けたヘッドステージ22を基材10の軸方向に移動させる。これにより、露光装置2は、基材10の一方の端部から他方の端部へ高い位置精度にてレーザ光を照射することができる。スライダ21は、例えば、ナノメートル単位の位置決め精度を有する精密スライダであってもよい。
【0044】
ヘッドステージ22は、第1のレーザヘッド23、および第2のレーザヘッド24を基材10の軸方向に所定の距離だけ離隔して組み付けるステージである。ヘッドステージ22の形状は、第1のレーザヘッド23、および第2のレーザヘッド24を組み付けることができれば、どのような形状であってもよい。
【0045】
ここで、第1のレーザヘッド23と、第2のレーザヘッド24との距離は、スライダ21が基材10の軸方向に移動可能な距離よりも小さいことが好ましい。このような場合、露光装置2は、第1のレーザヘッド23によって露光された第1領域12と、第2のレーザヘッド24によって露光された第2領域13とが重畳するように基材10を露光することができる。
【0046】
すなわち、露光装置2は、第1領域12と、第2領域13との間に未露光領域(すなわち、パターンが形成されない領域)が生じないように露光を行う。これは、パターンが形成されていない領域は、基材10の軸方向における幅がわずかであっても視認されやすいため、露光装置2は、パターンが形成されていない領域が生じないように露光することが好ましいためである。したがって、本実施形態に係る原盤1では、第1のレーザヘッド23によって露光された第1領域12と、第2のレーザヘッド24によって露光された第2領域13との間に、第1のレーザヘッド23、および第2のレーザヘッド24の各々によって多重露光された重畳領域が形成される。
【0047】
第1のレーザヘッド23、および第2のレーザヘッド24は、基材10の外周面へ照射されるレーザ光の光源、およびレーザ光を基材10の外周面へ導く各種光学系を含む。また、第1のレーザヘッド23、および第2のレーザヘッド24は、ヘッドステージ22に基材10に軸方向に所定の距離を離隔して組み付けられる。第1のレーザヘッド23、および第2のレーザヘッド24に含まれるレーザ光源は、レーザ光を発するものであればどのようなものでも使用可能であるが、例えば、固体レーザ光源または半導体レーザ光源などを使用することができる。また、第1のレーザヘッド23、および第2のレーザヘッド24から照射されるレーザ光の波長は、特に限定されないが、例えば、400nm〜500nmの青色光帯域の波長であってもよい。
【0048】
本実施形態に係る原盤1の製造に用いられる露光装置2は、2つのレーザ光源を用いて同時に基材10への露光を行うことができるため、スライダ21の移動量の2倍の長さの基材10の外周面の領域を露光することができる。したがって、露光装置2は、より長軸の基材10の外周面をより短時間で露光することができる。また、露光装置2は、ヘッドステージ22にさらにレーザヘッド(すなわち、第3、第4のレーザヘッド)を組み付けることにより、さらに長軸の基材10の外周面をさらに短時間で露光することも可能である。
【0049】
なお、露光された基材10は、有機溶媒、またはアルカリ溶液などによって現像され、露光されたパターンがレジスト層に形成されることで、原盤1が製造される。また、パターンが形成されたレジスト層をマスクにして、さらに基材10をエッチングすることで、露光されたパターンが基材10の表面に形成された原盤1を製造してもよい。
【0050】
続いて、
図3を参照して第1領域12と、第2領域13との間の重畳領域について説明する。
図3は、重畳領域の形成の様態を示した説明図である。なお、
図3において、X軸方向は、基材10の周方向であり、Y軸方向は、基材10の軸方向である。
【0051】
重畳領域は、第1のレーザヘッド23、および第2のレーザヘッド24の各々によって多重露光された領域である。具体的には、
図3に示すように、基材10は、軸方向にスパイラル状に露光されるため、スライダ21の移動に伴い、第1のレーザヘッド23による露光領域と、第2のレーザヘッド24による露光領域とが重なることになる。
【0052】
そのため、重畳領域14では、第1のレーザヘッド23からのレーザ光の照射によって形成された第1の潜像121に、さらに第2のレーザヘッド24からのレーザ光の照射によって第2の潜像131が重畳形成される。これにより、現像後、第1の潜像121のみが形成された領域が第1領域12となり、第2の潜像131のみが形成された領域が第2領域13となる。また、第1の潜像121と第2の潜像131とが重畳形成された領域が重畳領域14となる。
【0053】
ここで、露光装置2は、第1の潜像121が形成された領域に、第2のレーザヘッド24からのレーザ光の照射が行われ、重畳領域14が形成された場合、露光を終了し、スライダ21を停止させる。
【0054】
例えば、露光装置2は、第1のレーザヘッド23と、第2のレーザヘッド24との組み付け距離に基づいて、第1のレーザヘッド23によってレーザ光が照射されたと想定される位置にスライダ21が達した場合に、露光を終了し、スライダ21を停止させてもよい。具体的には、第1のレーザヘッド23と、第2のレーザヘッド24との基材10の軸方向における距離が260mmである場合、露光装置2は、基材10の軸方向に260mmの距離分、露光した場合に、露光を終了し、スライダ21を停止させてもよい。
【0055】
ただし、第1のレーザヘッド23と、第2のレーザヘッド24との基材10の軸方向における距離は、それぞれのレーザヘッド23、24の組み付け精度によって誤差を含む。また、スライダ21、およびヘッドステージ22などの熱膨張により、第1のレーザヘッド23と、第2のレーザヘッド24との基材10の軸方向における距離は、露光中に変動する可能性がある。したがって、上記のようにスライダ21等の移動距離に基づいて露光を終了させた場合、重畳領域14の基材10の軸方向における幅を視認されない程度に小さくすることは困難である。
【0056】
そのため、露光装置2は、第2のレーザヘッド24からレーザ光が照射される位置に潜像が形成されているか否かを判断し、該判断に基づいて、露光の停止を判断することが好ましい。
【0057】
具体的には、露光装置2は、基材10の外周面からの反射光の変化に基づいて、第2のレーザヘッド24からレーザ光が照射される位置に、潜像が形成されているか否かを判断してもよい。例えば、露光されることで反射率が変化するレジストにてレジスト層を形成した場合、露光後のレジスト層からの反射光の強度は、未露光のレジスト層からの反射光の強度に対して変化することになる。そのため、露光装置2は、基材10の外周面からの反射光の強度等の変化を検出することにより、基材10の外周面のレジスト層に潜像が形成されているか否かを判断することができる。
【0058】
また、露光装置2は、反射光の強度の変化ではなく、反射光の非点収差の変動幅を検出することにより、基材10の外周面のレジスト層に潜像が形成されているか否かを判断してもよい。露光されることで膨張するレジストにてレジスト層を形成した場合、露光後のレジスト層の表面は平坦性が低下することになる。そのため、露光装置2は、基材10の外周面とのフォーカスのずれ(すなわち、非点収差)の変動量を検出することにより、基材10の外周面のレジスト層に潜像が形成されているか否かを判断することができる。
【0059】
潜像が形成されているか否かの判断に用いられる反射光は、第2のレーザヘッド24から照射したレーザ光の反射光であってもよく、レーザ光のフォーカスを制御するために、別途、照射している光の反射光であってもよい。ただし、フォーカス制御用の光の照射位置は、第2のレーザヘッド24から照射されたレーザ光の照射位置と異なるため、第2のレーザヘッド24から照射したレーザ光の反射光を用いて、レジスト層に潜像が形成されているか否かを判断することが好ましい。
【0060】
例えば、露光されることで反射率が低下する金属酸化物をレジスト層に用いる場合、露光装置2は、レジスト層からの反射光の強度が閾値以下となったか否かに基づいて、基材10の外周面のレジスト層に潜像が形成されているか否かを判断してもよい。なお、閾値は、反射されるレーザ光の強度、金属酸化物の種類、および潜像のパターン密度によって、適宜設定することが可能である。
【0061】
また、露光装置2は、上記の基材10からの反射光の変化が基材10の外周一周分以上にわたって検出された場合に、露光を停止することが好ましい。これは、露光装置2は、基材10をスパイラル状に露光しているため、一部領域で第1の潜像121と第2の潜像131とが重畳形成されたとしても、基材10の外周の他の領域(例えば、基材10の外周の反対側の領域)では、第1の潜像121と第2の潜像131とが重畳形成されているとは限らないためである。そのため、露光装置2は、基材10の外周一周分以上にわたって反射光が変化した場合に、露光を停止させることが好ましい。また、基材10の外周に存在する欠陥等による誤検出を回避するためにも、基材10の外周一周分以上にわたって反射光が変化した場合に、露光を停止させることが好ましい。
【0062】
また、基材10の軸方向における重畳領域14の幅は、基材10の軸方向における第2のレーザヘッド24から照射されたレーザ光の照射間隔の5倍以下とすることが好ましく、2倍以下とすることがより好ましい。具体的には、露光装置2は、一周ごとに所定の間隔(トラックピッチともいう)を取りながら基材10をスパイラル状に露光している。このとき、第2の潜像131が第1の潜像121に重畳形成される重畳領域14は、第2のレーザヘッド24による露光の五周分以下とすることが好ましく、二周分以下とすることがより好ましい。これによれば、基材10の軸方向における重畳領域14の幅が小さくなることで、重畳領域14の視認性を低下させることができるため、第1領域12と、第2領域13との繋ぎ目を視認しにくくすることができる。
【0063】
続いて、本実施形態に係る原盤1を露光するレーザヘッドの光学系について説明する。
図4および
図5は、第1および第2のレーザヘッド23、24の光学系を説明する説明図である。
【0064】
まず、
図4を参照して、第1および第2のレーザヘッド23、24の光学系の一例について説明する。
図4で示す光学系200Aは、スライダ21の移動位置によって、露光の終了を判断する場合の光学系である。また、
図4で示す光学系200Aは、各レーザヘッド23、24に備えられる。ただし、露光するパターンが同じ場合、制御機構310は、レーザヘッド同士にて共有されても構わない。
【0065】
図4に示すように、光学系200Aは、レーザ光源201と、第1ミラー202と、フォトダイオード(PhotoDiode:PD)203と、集光レンズ204と、電気光学偏向素子(Electro Optic Deflector:EOD)206と、コリメータレンズ205と、第2ミラー207と、ビームエキスパンダ(Beam expander:BEX)208と、対物レンズ209と、を備える。また、レーザ光源201は、制御機構310によって制御され、レーザ光源201から発振されたレーザ光210は、スピンドルモータ301によって回転するターンテーブル302上に載置された基材10に照射される。
【0066】
レーザ光源201は、基材10の外周面に成膜されたレジスト層を露光するためのレーザ光210を発振する光源であり、例えば、400nm〜500nmの青色光帯域の波長のレーザ光を発する半導体レーザである。レーザ光源201から出射されたレーザ光210は、平行ビームのまま直進し、第1ミラー202で反射される。また、第1ミラー202にて反射されたレーザ光210は、集光レンズ204によって電気光学偏向素子206に集光された後、コリメータレンズ205によって、再度、平行ビーム化される。平行ビーム化されたレーザ光210は、第2ミラー207によって反射され、ビームエキスパンダ208に水平に導かれる。
【0067】
第1ミラー202は、偏光ビームスプリッタで構成され、偏光成分の一方を反射させ、偏光成分の他方を透過させる機能を有する。第1ミラー202を透過した偏光成分は、フォトダイオード203によって光電変換され、光電変換された受光信号は、レーザ光源201に入力される。これにより、レーザ光源201は、入力された受光信号によるフィードバックに基づいてレーザ光210の変調を行うことができる。
【0068】
電気光学偏向素子206は、レーザ光210の照射位置をナノメートル程度の距離で制御することが可能な素子である。露光装置2は、電気光学偏向素子206により、基材10に照射されるレーザ光210の照射位置を微調整することが可能である。
【0069】
ビームエキスパンダ208は、第2ミラー207によって導かれたレーザ光210を所望のビーム形状に整形し、対物レンズ209を介して、レーザ光210を基材10の外周面に成膜されたレジスト層に照射する。
【0070】
ここで、ターンテーブル302により基材10を回転させながら、レーザ光210を基材10の軸方向に移動させ、レジスト層へレーザ光210を間欠的に照射することでレジスト層への露光が行われる。なお、レーザ光210の移動は、上述したように、スライダ21を矢印R方向へ移動することによって行われる。
【0071】
また、露光装置は、レーザ光210による照射位置を四方格子状や六方格子状などの2次元パターンにするための制御機構310を備える。制御機構310は、フォーマッタ311と、ドライバ312とを備え、レーザ光210の照射を制御する。ドライバ312は、フォーマッタが生成した制御信号に基づいてレーザ光源201の出力を制御する。また、ドライバ312は、2次元パターンがトラックごとに同期するように、1トラックごとにフォーマッタ311からの制御信号と、スピンドルモータ301のサーボ信号とを同期させている。これにより、基材10のレジスト層へのレーザ光210の照射が制御される。
【0072】
図4に示す光学系を含むレーザヘッドを備える露光装置は、スライダ21の移動位置が他のレーザヘッドによって露光された領域に達した場合に、ドライバ312によってレーザ光源201からのレーザ光210の出力を停止させる。これにより、露光装置は、第1の潜像121と、第2の潜像131とが重畳形成された重畳領域14を含む原盤1を製造することができる。
【0073】
続いて、
図5を参照して、第1および第2のレーザヘッド23、24の光学系の他の例について説明する。
図5で示す光学系200Bは、基材10の外周面からの反射光の変化に基づいて、露光の終了を判断する場合の光学系である。また、
図5で示す光学系200Bは、各レーザヘッド23、24に備えられる。ただし、露光するパターンが同じ場合、制御機構310は、レーザヘッド同士にて共有されても構わない。
【0074】
図5に示すように、光学系200Bは、レーザ光源201と、第1ミラー202と、フォトダイオード203と、集光レンズ204と、電気光学偏向素子206と、コリメータレンズ205と、制御機構310と、第2ミラー207と、ビームエキスパンダ(Beam expander:BEX)208と、対物レンズ209と、偏光変換素子222と、偏光ビームスプリッタ(Polarizing Beam Splitter:PBS)221と、フォトダイオード(Photodiode:PD)223とを備える。また、レーザ光源201は、制御機構310によって制御され、レーザ光源201から発振されたレーザ光210は、スピンドルモータ301によって回転するターンテーブル302上に載置された基材10に照射される。
【0075】
ここで、レーザ光源201、第1ミラー202、フォトダイオード203、集光レンズ204、電気光学偏向素子206、コリメータレンズ205、第2ミラー207、制御機構310、スピンドルモータ301、およびターンテーブル302については、
図4で説明した構成と実質的に同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0076】
偏光変換素子222は、偏光の位相を90°回転させる1/4波長板で構成され、偏光ビームスプリッタ221と組み合わせることで、基材10からの反射光のみをフォトダイオード223に導く。具体的には、基材10に照射されるレーザ光210に対して、基材10から反射されたレーザ光210は、偏光変換素子222を2回通り抜けることで180°の位相差を有するようになる。該位相差を利用することで、偏光ビームスプリッタ221は、基材10へ照射されるレーザ光210を透過させ、基材10から反射したレーザ光210をフォトダイオード223に導くことができる。
【0077】
基材10から反射したレーザ光210は、フォトダイオード223によって光電変換され、光電変換された受光信号は、ドライバ312に入力される。ドライバ312は、光電変換された受光信号の強度等を検出し、基材10の外周一周分以上にわたって受光信号の強度等が変化した場合、レーザ光源201からのレーザ光210の出力を停止させる。これにより、露光装置は、第1の潜像121と、第2の潜像131とが重畳形成された重畳領域14を含む原盤1を製造することができる。
【0078】
図4および
図5にて説明した光学系を備えるレーザヘッドによって、外周面にレジスト層が形成された基材10を露光し、露光した基材10を現像することで、露光されたパターンがレジスト層に形成された原盤1を製造することができる。また、パターンが形成されたレジスト層をマスクにして、さらに基材10をエッチングすることで、基材10の表面に露光されたパターンが形成された原盤1を製造してもよい。
【0079】
<3.原盤の使用例>
次に、
図6を参照して、上記にて説明した原盤1の使用例について説明する。本実施形態に係る原盤1は、例えば、ロールツーロール方式のナノインプリントに用いられる原盤である。本実施形態に係る原盤1は、
図6を参照して転写装置を用いることで、原盤1の外周面に形成された凹凸構造11を転写した転写物を連続的に製造することができる。
図6は、本実施形態に係る原盤1を用いて転写物を製造する転写装置を説明する説明図である。
【0080】
図6に示すように、転写装置は、原盤1と、基材供給ロール51と、巻取ロール52と、ガイドロール53、54と、ニップロール55と、剥離ロール56と、塗布装置57と、光源58とを備える。
【0081】
基材供給ロール51は、シート形態のシート基材61がロール状に巻かれたロールであり、巻取ロール52は、凹凸構造11を転写した樹脂層が積層されたシート基材61を巻き取るロールである。また、ガイドロール53、54は、シート形態のシート基材61を搬送するロールである。ニップロール55は、樹脂層が積層されたシート基材61を原盤1に押圧するロールであり、剥離ロール56は、凹凸構造11を樹脂層に転写した後、樹脂層が積層されたシート基材61を原盤1から剥離するロールである。
【0082】
塗布装置57は、コーターなどの塗布手段を備え、光硬化樹脂組成物をシート基材61に塗布し、樹脂層を形成する。塗布装置57は、例えば、グラビアコーター、ワイヤーバーコーター、またはダイコーターなどであってもよい。また、光源58は、光硬化樹脂組成物を硬化可能な波長の光を発する光源であり、例えば、紫外線ランプなどであってもよい。
【0083】
なお、光硬化性樹脂組成物は、所定の波長の光が照射されることによって硬化する樹脂である。具体的には、光硬化性樹脂組成物は、アクリル樹脂アクリレート、エポキシアクリレートなどの紫外線硬化樹脂であってもよい。また、光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、開始剤、フィラー、機能性添加剤、溶剤、無機材料、顔料、帯電防止剤、または増感色素などを含んでもよい。
【0084】
転写装置では、まず、基材供給ロール51からガイドロール53を介して、シート基材61が連続的に送出される。送出されたシート基材61に対して、塗布装置57により光硬化樹脂組成物が塗布され、シート基材61に樹脂層が積層される。また、樹脂層が積層されたシート基材61は、ニップロール55によって原盤1に押圧される。これにより、原盤1の外周面に形成された凹凸構造11が樹脂層に転写される。凹凸構造11が転写された樹脂層は、光源58からの光の照射により硬化される。続いて、硬化した樹脂層が積層されたシート基材61は、剥離ロール56により原盤1から剥離され、ガイドロール54を介して巻取ロール52に送出され、巻き取られる。
【0085】
このような転写装置によれば、本実施形態に係る原盤1の外周面に形成された凹凸構造11が転写された転写物を連続的に製造することが可能である。
【実施例】
【0086】
以下では、実施例および比較例を参照しながら、本実施形態に係る原盤について、さらに具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本実施形態に係る原盤、および原盤の製造方法の実施可能性および効果を示すための一条件例であり、本発明に係る原盤、および原盤の製造方法が以下の実施例に限定されるものではない。
【0087】
(実施例1)
4.5mm厚、直径150mm、軸方向の長さ550mmの円筒形状の石英ガラス製基材の外周面にスパッタ法によって金属酸化物からなるレジスト層を膜厚60nmにて成膜した。
【0088】
続いて、2つのレーザヘッドを基材の軸方向に250mm離隔して組み付けたスライダを備える露光装置を用いて熱リソグラフィを行い、レジスト層に潜像を形成した。レーザ光の光源には、それぞれ波長405nmのレーザ光を発する青色半導体レーザを用いた。また、レーザヘッドは、それぞれ別途のレーザ光を用いて、非点収差法によるオートフォーカス制御を施した。
【0089】
露光するパターン形状としては、ドットを千鳥状に配列した六方格子配列を用いた。ドットの基材の周方向のピッチは、230nmとし、基材の軸方向のピッチは160nmとした。基材を900rpmで回転させ、レーザ光源を組み付けたスライドを基材の軸方向に2.4μm/秒にて走査しながら36時間露光したところ、基材の軸方向に約500mmの領域にわたって露光を行うことができた。
【0090】
さらに、露光済みの基材をTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)の2.38質量%水溶液を用いて現像し、露光した部分のレジスト層を溶解させることで、外周面に露光パターンが形成された原盤を製造した。
【0091】
なお、露光は、露光するレーザ光の反射光の強度が閾値以下となったことを検出することで自動的に停止させた。具体的には、反射光の強度が基材の外周2周分にわたって閾値以下となった場合、レーザ光の出力を停止させた。なお、レジスト層の未露光部からの反射光の強度が340mVであり、露光済み部からの反射光の強度が270mVであるため、閾値は、300mVに設定した。
【0092】
(実施例2)
4.5mm厚、直径150mm、軸方向の長さ800mmの円筒形状の石英ガラス製基材を用い、3つのレーザヘッドを基材の軸方向に250mmずつ離隔して組み付けたスライダを備える露光装置を用いて熱リソグラフィを行った以外は、実施例1と同様にして原盤を製造した。なお、実施例2では、36時間にて基材の軸方向に約750mmの領域にわたって露光を行うことができた。
【0093】
(実施例3)
レーザヘッドを組み付けたスライダの位置座標が250mmに達したことを検出することで露光を自動的に停止させたこと以外は、実施例1と同様にして原盤を製造した。なお、実施例2では、36時間にて基材の軸方向に約500mmの領域にわたって露光を行うことができた。
【0094】
(比較例1)
1つのレーザヘッドを組み付けたスライダを備える露光装置を用いて熱リソグラフィを行った以外は、実施例1と同様にして原盤を製造した。なお、比較例1では、36時間にて基材の軸方向に約250mmの領域にわたって露光を行うことができた。
【0095】
(原盤の評価)
実施例1〜3、比較例1にて製造した原盤において、原盤の外周面の凹凸構造を転写物に転写し、重複領域の基材の軸方向の幅を光学顕微鏡によって測定した。さらに、重複領域の視認性を目視によって評価した。その結果を表1に示す。なお、「−」は、重複領域が存在しない場合、および評価できない場合を表す。また、「A」は、重複領域が視認できなかったことを表し、「B」は、重複領域が視認できたことを表す。
【0096】
【表1】
【0097】
表1に示すように、実施例1〜3は、比較例1に対して、同じ露光時間で、より広い領域にパターン形成することができることがわかる。また、重複領域が存在する場合でも、実施例1および2は、実施例3に対して、重複領域の幅を小さくすることができ、かつ目視にて視認されないことがわかる。
【0098】
また、実施例1に係る原盤を用いて製造した転写物の重複領域を走査型電子顕微鏡(Scanning Electoron Microscope:SEM)にて観察し、拡大倍率3万倍、または6万倍にて撮像した画像を
図7に示す。
図7の(A)は、転写物の重複領域を拡大倍率3万倍にて撮像したSEM画像であり、
図7の(B)は、転写物の重複領域を拡大倍率6万倍にて撮像したSEM画像である。また、
図7の画像に正対した場合の縦方向が基材の軸方向であり、横方向が基材の周方向である。
【0099】
図7の(A)を参照すると、画像の中央部に重複領域が存在するものの、重複領域を挟んで画像の上下に存在する第1領域、および第2領域とほぼ見分けがつかない程度とすることができることがわかる。また、
図7の(B)を参照すると、多重露光されているため、第1領域、および第2領域よりもパターンが大きくなっている重複領域の幅は、ほぼ300nm程度であることがわかる。すなわち、実施例1に係る原盤の重複領域は、基材の軸方向の幅が1μm以下であり、かつ基材の軸方向における露光ピッチの2倍以下であることがわかる。
【0100】
以上説明したように、本発明の一実施形態によれば、より広い領域に凹凸構造が形成され、かつ凹凸構造のパターン間の繋ぎ目である重複領域が視認しにくい原盤を提供することができる。したがって、本発明の一実施形態によれば、より高い量産性を有する原盤、および該原盤の製造方法を提供することができる。また、本実施系に係る原盤の転写物の量産性も向上させることが可能である。
【0101】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。