(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の冷却装置では、貯蔵槽と断熱壁とが各別の部材として構成され、また、断熱壁は複数の側壁パネルから構成される。そして、貯蔵タンクが設置されることに際しては、貯蔵槽が有する外周面の周りに複数の側壁パネルを設置する作業と共に、貯蔵槽と断熱壁との間で所定の方向に冷却気体を流すために、貯蔵槽と複数の側壁パネルとの間に整流板を別途配置させる作業も求められる。そこで、内容物の温度を調整することが求められる貯蔵タンクにおいては、貯蔵タンクの設置に要する負荷を軽減させる構成が求められる。
【0005】
なお、上述した課題は、内容物が水処理液である水処理タンクに限らず、例えば、内容物が化学薬品である化学薬品タンク、内容物が水である貯水タンク、内容物が樹脂材料である材料サイロ、内容物が脱臭液である脱臭用タンクなどの各種の貯蔵タンクにおいて共通する。
本発明は、貯蔵タンクの設置に要する負荷を軽減させることを可能とする貯蔵タンク、および、貯蔵タンクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための貯蔵タンクは、樹脂製の周壁部と、前記周壁部の周方向に巻く螺旋状に延び、かつ、前記周壁部の外周面と一体である樹脂製の管状部であって、温度を調整するための媒体を前記管状部に沿って通すように構成された通路と、前記通路に前記媒体を導入する導入部と、前記通路に導入された前記媒体を前記通路から導出する導出部とを備える前記管状部とを備える。
【0007】
上記課題を解決するための貯蔵タンクの製造方法は、樹脂製の周壁部を形成することと、前記周壁部の周方向に巻く螺旋状に延びる樹脂製の管状体であって、温度を調整するための媒体を前記管状体に沿って通すように構成された通路が形成された前記管状体を前記周壁部の外周面に溶着し、それによって、前記周壁部の周方向に巻く螺旋状に延びる樹脂製の管状部を前記周壁部と一体の樹脂成型物とすることとを含む。
【0008】
上記構成によれば、周壁部と管状部とが一体の樹脂成型物であるため、これら周壁部と管状部とが別体である構成、すなわち、内容物を貯蔵する機能を有した部材と、その内容物の温度を調整する機能を有した部材とが別体である構成と比べ、貯蔵タンクを構成する部材の管理を含め、貯蔵タンクの設置に要する負荷を軽減することが可能である。
【0009】
上記貯蔵タンクにおいて、前記管状部は、前記通路を前記管状部内に区画する筒面であって前記螺旋状に延びる前記筒面を含み、前記筒面は、前記筒面外に向けて突き出る複数の山折部と、前記筒面内に向けて窪む複数の谷折部とを含み、前記山折部と前記谷折部とが前記筒面の延びる方向に交互に繰り返された蛇腹状を有してもよい。
【0010】
上記構成によれば、媒体が通る空間を区画する筒面が蛇腹状を有するため、筒面が単なる円筒面や矩形筒面である構成と比べ、管状部の単位長さあたりにおいて、筒面が有する面積を大きくすることが可能である。そして、管状部のなかに滞在する媒体と、筒面との接触する面積を大きくすることが可能であるから、管状部のなかに滞在する媒体と、貯蔵タンクの内容物との間での熱の授受、すなわち、管状部のなかに滞在する媒体による温度の調整が効果的に行われる。
【0011】
上記貯蔵タンクにおいて、前記管状部の延びる方向で前記山折部の繰り返される周期が繰り返し周期であり、前記筒面は、内側部分と、前記周壁部の径方向において前記内側部分よりも外側に位置する外側部分とを含む。そして、前記内側部分の前記繰り返し周期は、前記外側部分の前記繰り返し周期よりも短くてもよい。
【0012】
上記構成によれば、山折部と谷折部とが管状部の延びる方向に繰り返される蛇腹状を管状部が有すると共に、管状部が周壁部の外周に巻かれたように、貯蔵タンクが構成される。すなわち、貯蔵タンクを製造する方法の一例として、上記蛇腹状を有する管状部を周壁部の外周に巻くと共に、これらを一体に成型する方法を採用することが可能でもある。
【0013】
上記貯蔵タンクにおいて、前記周壁部と前記管状部とが一体の樹脂成型物であり、前記周壁部の径方向において前記樹脂成型物が有する厚みのうちで前記通路よりも外側の厚みは、前記通路よりも内側の厚みよりも大きい部分を含んでもよい。
【0014】
上記構成によれば、通路よりも外側における樹脂の厚みが、通路よりも内側における樹脂の厚みよりも大きい部分において、通路のなかに滞在する媒体と、貯蔵タンクが設置された環境との間の熱の授受を抑えることが可能でもある。それゆえに、通路のなかに滞在する媒体と、貯蔵タンクに貯蔵される内容物との熱の授受を、通路のなかに滞在する媒体と、貯蔵タンクが設置された環境との間の熱の授受よりも高めることが可能でもある。また、例えば、通路のなかに滞在する媒体が冷却媒体であるときには、冷却媒体による水分の冷却によって貯蔵タンクの表面に結露が生じることを抑えることが可能でもある。
【0015】
上記貯蔵タンクにおいて、前記周壁部と前記管状部とが一体の樹脂成型物であり、前記周壁部の径方向において前記樹脂成型物が有する厚みのうちで前記通路よりも内側の厚みは、前記通路よりも外側の厚みよりも大きい部分を含んでもよい。
【0016】
上記構成によれば、通路よりも内側における樹脂の厚みが、通路よりも外側における樹脂の厚みよりも大きい部分において、通路のなかに滞在する媒体と、貯蔵タンクに貯蔵された内容物との間の過剰な熱の授受を抑えることが可能でもある。それゆえに、通路のなかに滞在する媒体と、貯蔵タンクに貯蔵される内容物との熱の授受を、通路のなかに滞在する媒体と、貯蔵タンクが設置された環境との間の熱の授受よりも低くすることが可能でもある。結果として、所望の温度範囲に一旦調整された内容物の温度をその範囲内に保つ機能を高めることが可能でもある。そして、例えば、内容物の温度が所望の温度範囲に一旦調整された後には、通路に滞在していた媒体を通路から抜くことが可能でもある。
【0017】
上記貯蔵タンクにおいて、前記管状部は、前記媒体である第1媒体を通す前記通路である第1通路と、前記導入部である第1導入部と、前記導出部である第1導出部
とを備える第1管状部である。また、上記貯蔵タンクは、前記周壁部の周方向に巻く螺旋状に延び、かつ、前記周壁部の外周面と一体である樹脂製の第2管状部であって、温度を調整するための第2媒体を前記第2管状部に沿って通すように構成された第2通路と、前記第2通路に前記第2媒体を導入する第2導入部と、前記第2通路に導入された前記第2媒体を前記第2通路から導出する第2導出部とを備える前記第2管状部をさらに備える。そして、上記貯蔵タンクにおいて、前記第2管状部は、前記第1管状部よりも下方、かつ、前記第1管状部の延長線上に位置してもよい。
【0018】
上記構成によれば、第2管状部が第1管状部の上方に位置するため、周壁部の内側に位置する内容物に対して、上下方向における温度の調整の自由度を高めることが可能にもなる。例えば、第1媒体の温度と第2媒体の温度とが同じである構成であれば、第2管状部が加わる分だけ、第1管状部よりも下方に位置する内容物に対し、それの温度を調整する能力を貯蔵タンクで高めることが可能である。また、第1媒体の有する熱伝導性や温度と、第2媒体の有する熱伝導性や温度とが互いに異なる構成であれば、上下方向における内容物の温度の差異に合わせた温度の調整が可能でもあり、あるいは、上下方向における内容物の温度に所望の勾配を与えることも可能である。
【0019】
上記貯蔵タンクにおいて、前記周壁部と前記管状部とが一体の樹脂成型物であり、前記樹脂成型物は、前記樹脂成型物を形成する樹脂よりも高い熱伝導性を有した無機フィラーを含んでもよい。
【0020】
上記構成によれば、貯蔵タンクに貯蔵された内容物と、その内容物の温度を調整するための媒体との間における熱の授受が高められるため、媒体による温度の調整においてその効率を高めることが可能でもある。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、貯蔵タンクの設置に要する負荷を軽減させることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、
図1から
図4を参照し、貯蔵タンク、および、貯蔵タンクの製造方法を実施するための1つの形態を説明する。なお、
図1では、貯蔵タンクの全体的な構成を説明する便宜上から、管状部を直線として簡略化している。
【0024】
図1が示すように、貯蔵タンクは、両端が閉塞された円筒状を有している。貯蔵タンクは、円筒状を有した樹脂製の周壁部11と、周壁部11の外周面に溶着された溶着部である樹脂製の管状部12とを備える。周壁部11と管状部12とは、一体の樹脂成型物である。管状部12は、周壁部11の周方向に巻き、かつ、周壁部11の下端から周壁部11の上端に向けて延びる螺旋状を有する。
【0025】
管状部12には、温度を調整する媒体を通す通路と、通路に媒体を導入する導入部13Bと、通路に導入された媒体を通路から導出する導出部13Aとが形成されている。管状部12に形成された通路は、管状部12のほぼ中心を通る空間であって、管状部12の外形と同じく、周壁部11の周方向に巻き、かつ、周壁部11の下端から周壁部11の上端に向けて延びる螺旋状を有する。
【0026】
管状部12に形成された導入部13Bは、管状部12に形成された通路の上端に位置し、管状部12に形成された導出部13Aは、管状部12に形成された通路の下端に位置する。導入部13Bおよび導出部13Aは、循環装置21に接続される。循環装置21は、例えば、媒体の一例である液体を管状部12に循環させるためのポンプであって、導入部13Bに向けて液体を導出すると共に、導出部13Aから液体が導入されるように構成されている。循環装置21が循環させる液体は、貯蔵タンクに貯蔵された内容物の温度を外気とは異なる温度に調整するための温度を有した液体である。
【0027】
なお、循環装置21は、例えば、ドレインタンクを備えると共に、管状部12に循環させた液体の全てを管状部12からドレインタンクに抜き取り、抜き取られた液体に代え、管状部12に形成された通路に媒体の一例である空気を封入するように構成されてもよい。空気が封入された管状部12は、液体が循環する管状部12よりも、貯蔵タンクに貯蔵された内容物とその外部との熱の伝導を抑え、それによって、貯蔵タンクが貯蔵する内容物の温度を保つ機能を有する。
【0028】
貯蔵タンクは、例えば、施設の屋上に設置される屋上設置型のタンク、地面に設置される地面設置型のタンク、地面に埋設される埋設型のタンク、室内に置かれる室内型のタンク、屋外に置かれる屋外型のタンクとして用いられる。貯蔵タンクの底部は、例えば、アンカーボルトなどが取り付けられるフランジを備え、貯蔵タンクが設置される設置面にそのフランジが固定される。
【0029】
貯蔵タンクを形成する樹脂として、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Polyester(FRP))が挙げられる。また、貯蔵タンクを形成する樹脂として、例えば、貯蔵タンクの耐候性を高めるためのカーボンブラックがこれらの樹脂に含まれる耐候性樹脂や、貯蔵タンクを構成する樹脂よりも高い熱伝導性を有した無機フィラーがこれらの樹脂に含まれる熱伝導性樹脂が挙げられる。
【0030】
貯蔵タンクに貯蔵される内容物として、例えば、次亜塩素酸ナトリウム溶液、アンモニア水、塩素水、塩酸、過酸化水素、クエン酸、水酸化ナトリウム、炭酸マグネシウム、塩水、ポリ塩化アルミニウムなとの液体、各種の樹脂の原材料である樹脂粒体などが挙げられる。
【0031】
貯蔵タンクの天面11Sには、円筒状を有した点検部14と、円筒状を有した天面ノズル15とが設けられ、また、天面11Sの周方向の全体を囲う手摺り16が固定されている。また、管状部12の外側には、作業者が天面11Sまで登るための梯子17が固定される。点検部14は、貯蔵タンクの内部を視認できるように構成された点検窓を備える。天面ノズル15は、貯蔵タンクの内部に内容物を充填できるように構成された貯蔵口を備える。貯蔵タンクで作業を行う作業者は、例えば、梯子17を通じて天面11Sまで登った後に、手摺り16に囲まれた作業空間のなかで、点検部14を用いた貯蔵タンク内の点検や、天面ノズル15を用いた内容物の貯蔵を行う。
【0032】
図2が示すように、管状部12は、周壁部11の外周面に沿って、かつ、上下方向に隙間を空けて巻かれている。管状部12の側断面におけるほぼ中心には、管状部12が延びる方向に沿って延びる通路12Pが形成されている。通路12Pは、管状部12の側断面においてほぼ円形を有する。なお、
図2においては、周壁部11と管状部12とを説明する便宜上から、周壁部11と管状部12とに別々のハッチングが付されているが、上述したように、管状部12は周壁部11に溶着された溶着部であって、周壁部11と管状部12とは一体の樹脂成型物である。
【0033】
管状部12に形成された通路12Pの内径である直径は、通路径Tpである。周壁部11の径方向において、上記樹脂成型物が有する厚み、すなわち、周壁部11と管状部12とが有する厚みの合計は、タンク肉厚Taである。タンク肉厚Taのなかで通路12Pよりも内側の厚みは、内側肉厚Tinである。タンク肉厚Taのなかで通路12Pよりも外側の厚みは、外側肉厚Toutである。
【0034】
外側肉厚Toutは、内側肉厚Tinよりも大きい部分を有してもよい。外側肉厚Toutが内側肉厚Tinよりも大きい部分においては、外側肉厚Toutが内側肉厚Tin以下である部分よりも、通路12Pのなかに滞在する媒体と、貯蔵タンクが設置された環境との間の熱の授受を抑えることが可能となる。結果として、通路12Pのなかに滞在する媒体と、貯蔵タンクに貯蔵される内容物との熱の授受を、通路12Pのなかに滞在する媒体と、貯蔵タンクが設置された環境との間の熱の授受よりも高めることが可能である。それゆえに、例えば、通路12Pを循環する媒体の温度が、貯蔵タンクが設置された環境によって変わることを抑えることが可能となる。また、例えば、通路12Pのなかに滞在する媒体が冷却媒体であるときには、外気中の水分が冷却媒体によって冷却され、それによって、貯蔵タンクの表面に結露が生じることを抑えることが可能ともなる。
【0035】
また、外側肉厚Toutは、内側肉厚Tinよりも小さい部分を有してもよい。内側肉厚Tinが外側肉厚Toutよりも大きい部分においては、内側肉厚Tinが外側肉厚Tout以下である部分よりも、通路12Pのなかに滞在する媒体と、貯蔵タンクに貯蔵された内容物との間の熱の授受を抑えることが可能となる。結果として、通路12Pのなかに滞在する媒体と、貯蔵タンクに貯蔵される内容物との熱の授受を、通路12Pのなかに滞在する媒体と、貯蔵タンクが設置された環境との間の熱の授受よりも低くすることが可能である。それゆえに、例えば、所望の温度範囲に一旦調整された内容物の温度をその範囲内に保つ機能を高めることが可能となる。そして、例えば、内容物の温度が所望の温度範囲に一旦調整された後には、通路12Pに滞在していた媒体を通路から抜くことが可能ともなる。
【0036】
これら内側肉厚Tinと外側肉厚Toutとは、上述した熱の授受に加え、貯蔵タンクに求められる剛性に基づいて適宜設定される。例えば、貯蔵タンクが設置された環境の温度の変化が媒体に対して大きく作用する場合には、外側肉厚Toutが内側肉厚Tinよりも大きく、かつ、貯蔵タンクに求められる剛性が得られる範囲で、各肉厚が設定される。また、例えば、貯蔵タンクが設置された環境の水分濃度が低く、それによって、上述した結露のおそれが小さい場合には、外側肉厚Toutが内側肉厚Tinよりも小さく、かつ、貯蔵タンクに求められる剛性が得られる範囲で、各肉厚が設定される。
【0037】
貯蔵タンクが有する容積は、例えば、約20m
3以上約100m
3以下である。貯蔵タンクが有する高さと、貯蔵タンクが有するタンク肉厚Taとの関係は、貯蔵タンクを形成する樹脂、貯蔵タンクが有する全ての重量、貯蔵タンクが有する容積など、貯蔵タンクに求められる剛性に関わる各種のパラメータに基づいて適宜設計される。例えば、貯蔵タンクを形成する樹脂が高密度ポリエチレンであり、貯蔵タンクの内径が約3000mmであり、貯蔵タンクの高さが約3500mmであるとき、貯蔵タンクが有するタンク肉厚Taは32mmである。また、例えば、タンクの内径が約3000mmであり、タンクの高さが約5000mmであるとき、タンクが有するタンク肉厚Taは44mmである。また、例えば、タンクの内径が約3000mmであり、タンクの高さが約12500mmであるとき、タンクが有するタンク肉厚Taは114mmである。
【0038】
管状部12は、通路12Pを管状部12内に区画する筒面12Sであって、螺旋状に延びる筒面12Sを含む。筒面12Sは、例えば、管状部12が延びる方向に等しい断面積が連なる円筒面や矩形筒面であってもよいし、管状部12が延びる方向に互いに異なる断面積が繰り返される蛇腹状を有していてもよい。
図3は、蛇腹状を有した筒面12Sの一例を示す。
【0039】
図3が示すように、蛇腹状を有する筒面12Sは、筒面12S外に向けて突き出る複数の山折部12Mと、筒面12S内に向けて窪む複数の谷折部12Vとを含む。蛇腹状を有する筒面12Sでは、山折部12Mと谷折部12Vとが、筒面12Sの延びる方向に交互に繰り返される。筒面12Sが蛇腹状を有する構成であれば、筒面12Sが単なる円筒面や矩形筒面である構成と比べ、筒面12Sの単位長さあたりにおいて、筒面12Sが有する面積を大きくすることが可能である。そして、管状部12のなかに滞在する媒体と、筒面12Sとの接触する面積を大きくすることが可能であるから、管状部12のなかに滞在する媒体と、貯蔵タンクの内容物との間での熱の授受、すなわち、管状部12のなかに滞在する媒体による温度の調整が効果的に行われる。
【0040】
蛇腹状を有する筒面12Sでは、管状部12の延びる方向において、山折部12Mの繰り返される周期が繰り返し周期12Cである。筒面12Sは、内側部分12inと、周壁部11の径方向において内側部分12inよりも外側に位置する外側部分12outとを含む。内側部分12inの繰り返し周期12Cは、外側部分12outの繰り返し周期12C以上であってもよいし、外側部分12outの繰り返し周期12Cよりも短くてもよい。
【0041】
内側部分12inの繰り返し周期12Cが、外側部分12outの繰り返し周期12Cよりも短い構成であれば、内側部分12inの山折部12Mと、外側部分12outの山折部12Mとを互いに対向させ、かつ、内側部分12inの谷折部12Vと、外側部分12outの谷折部12Vとを互いに対向させることが可能である。言い換えれば、蛇腹状の筒面12Sを有した管状体が、周壁部11の外周に巻かれたように、管状部12を構成することが可能である。そして、貯蔵タンクを製造する方法の一例としては、蛇腹状の筒面12Sを有する管状体を周壁部11の外周面に巻き、巻かれた管状体が周壁部11に溶着されることによって、周壁部11と管状部12とを一体に成型する方法を採用することが可能でもある。
【0042】
図4が示すように、上述した貯蔵タンクを製造する方法の一例では、樹脂製の周壁部11を形成すること、および、周壁部11の周方向に巻く螺旋状に延びる樹脂製の管状体12Tを周壁部11の外周面11Tに溶着することを含む。周壁部11の外周面11Tに巻かれる管状体12Tは、巻かれる方向に連続する1本であってもよいし、巻かれる方向に接続された複数本であってもよい。なお、周壁部11の外周面11Tに管状体12Tが巻かれる方法であれば、螺旋状を有した管状部12を1本の管状体12Tによって形成することが容易でもある。
【0043】
周壁部11を形成する工程では、例えば、周壁部11を形成するための樹脂の押し出し成型によって周壁部11が形成される。管状体12Tを外周面11Tに巻き付ける工程では、温度を調整する媒体を通すための上記通路12Pが予め形成された管状体12Tが用いられる。そして、管状体12Tが周壁部11の外周面11Tに溶着されることによって、上記管状部12と周壁部11とが一体の樹脂成型物として製造される。
【0044】
導入部13Bや導出部13Aは、例えば、管状体12Tの先端や管状体12Tの基端に切り欠きなどが形成されると共に、外部の通路と接続することを可能に構成された接続部が切り欠きに取り付けられることによって形成される。
【0045】
なお、管状体12Tが巻かれる工程では、周壁部11が延びる方向において互いに隣り合う管状部12の間隔が、例えば、周壁部11の外周面11Tに管状体12Tが巻かれる速度の変更によって変えられる。また、周壁部11の外周面11Tにおいて管状部12が占める範囲は、例えば、周壁部11の外周面11Tにおいて管状体12Tの巻かれる範囲の変更によって適宜変えられる。また、内側肉厚Tinや外側肉厚Toutは、周壁部11が有する肉厚の変更や管状体12Tが有する肉厚の変更によって適宜変えられる。
【0046】
以上、上記実施形態によれば以下に列記する効果が得られる。
(1)周壁部11と管状部12とが別体である構成、すなわち、内容物を貯蔵する機能を有した部材と、その内容物の温度を調整する機能を有した部材とが別体である構成と比べ、貯蔵タンクを構成する部材の管理を含め、貯蔵タンクの設置に要する負荷を軽減することが可能である。
【0047】
(2)筒面12Sが蛇腹状を有する構成であれば、管状部12のなかに滞在する媒体と、筒面12Sとの接触する面積を大きくすることが可能である。それゆえに、管状部12のなかに滞在する媒体と、貯蔵タンクの内容物との間での熱の授受、すなわち、管状部12のなかに滞在する媒体による温度の調整が効果的に行われる。
【0048】
(3)また、貯蔵タンクを製造する方法の一例として、蛇腹状の筒面12Sを有する管状部12が周壁部11の外周面11Tに巻かれ、これら周壁部11と管状部12とを一体に成型する方法を採用することが可能でもある。そして、周壁部11の外周面11Tに巻かれる管状体12Tが蛇腹状の筒面12Sを有するため、管状体12Tを曲げることに要する負荷を抑えることが可能でもある。
【0049】
(4)外側肉厚Toutが内側肉厚Tinよりも大きい部分を含む貯蔵タンクの構成であれば、通路のなかに滞在する媒体と、貯蔵タンクが設置された環境との間の熱の授受を抑えることが可能でもある。
【0050】
(5)内側肉厚Tinが外側肉厚Toutよりも大きい部分を含む貯蔵タンクの構成であれば、通路のなかに滞在する媒体と、貯蔵タンクに貯蔵された内容物との間の過剰な熱の授受を抑えることが可能でもある。
【0051】
(6)樹脂成型物を形成する樹脂よりも高い熱伝導性を有した無機フィラーが樹脂成型物を形成する材料に含まれるため、内容物と、内容物の温度を調整するための媒体との間における熱の授受が高められる。それゆえに、媒体による内容物の温度の調整においてその効率を高めることが可能でもある。
【0052】
なお、上記実施形態は以下のように変更して実施することができる。
[管状部]
[第1変形例]
・周壁部11の外周面に位置する管状部12の数は、1本に限らず、例えば、上下方向において複数でもよい。2つの管状部12を有する貯蔵タンクの一例を
図5に示す。
【0053】
図5が示すように、周壁部11の外周面には、その外周面のうちで上半分に位置する第1管状部12Aと、その外周面のうちで下半分に位置する第2管状部12Bとが溶着されている。第2管状部12Bは、第1管状部12Aに追従する螺旋の延長線上に位置している。
【0054】
第1管状部12Aには、上記管状部12と同様に、第1媒体を通す通路である第1通路と、第1通路の基端に接続された第1導入部13B1と、第1通路の先端に接続された第1導出部13A1とが形成されている。第1導入部13B1および第1導出部13A1は、第1循環装置21Aに接続される。第1循環装置21Aは、例えば、第1媒体の一例である第1液体を第1管状部12Aに循環させるためのポンプであって、第1導入部13B1に向けて第1液体を導出すると共に、第1導出部13A1から第1液体が導入されるように構成されている。
【0055】
第1循環装置21Aが循環させる第1液体は、例えば、貯蔵タンクに貯蔵された内容物の温度を外気とは異なる温度に調整するための温度を有した液体であり、特に、貯蔵タンクの上半分に位置する内容物の温度の調整に適した液体である。
【0056】
第2管状部12Bには、上記管状部12と同様に、第2媒体を通す通路である第2通路と、第2通路の基端に接続された第2導入部13B2と、第2通路の先端に接続された第2導出部13A2とが形成されている。第2導入部13B2および第2導出部13A2は、第2循環装置21Bに接続される。第2循環装置21Bは、例えば、第2媒体の一例である第2液体を第2管状部12Bに循環させるためのポンプであって、第2導入部13B2に向けて第2液体を導出すると共に、第2導出部13A2から第2液体が導入されるように構成されている。
【0057】
第2循環装置21Bが循環させる第2液体は、例えば、貯蔵タンクに貯蔵された内容物の温度を外気とは異なる温度に調整するための温度を有した液体であり、特に、貯蔵タンクの下半分に位置する内容物の温度の調整に適した液体である。
【0058】
上述した貯蔵タンクを製造する方法では、樹脂製の周壁部11を形成すること、周壁部11の周方向に巻く螺旋状に延びる樹脂製の管状体12Tを周壁部11の外周面11Tに溶着すること、さらに溶着された管状体12Tのうちで上下方向の中間となる部位に切り欠き12STを形成することを含む。管状体12Tに切り欠き12STを形成する工程によって、1つの管状体12Tが第1管状部12Aと第2管状部12Bとに分割され、かつ、第1導入部13B1と第2導出部13A2とが形成される。
【0059】
貯蔵タンクに貯蔵された内容物のうちで貯蔵タンクの上半分に位置する内容物の温度は、貯蔵タンクの下半分に位置する内容物の温度よりも高くなりやすい。この際に、第1循環装置21Aの循環させる第1液体の温度は、第2循環装置21Bの循環させる第2液体の温度よりも低いことが好ましく、また、第1循環装置21Aの循環させる第1液体の流速は、第2循環装置21Bの循環させる第2液体の流速よりも高いことが好ましい。
【0060】
上記第1変形例によれば、以下に列挙する効果がさらに得られる。
(7)上下方向に並ぶ2つの管状部12を有する構成であって、かつ、温度を調整する形態を管状部12ごとに変える制御部を備えた構成であれば、貯蔵タンクに貯蔵された内容物の温度の分布が上下方向で均一になるように、制御部が温調形態を変えることによって、内容物の温度を調整することが可能である。ひいては、周壁部11の内側に位置する内容物に対して、内容物の上下方向における温度の調整の自由度を高めることが可能にもなる。
【0061】
(8)例えば、第1媒体の温度と第2媒体の温度とが同じである構成であれば、第2管状部12Bが加わる分だけ、内容物の温度を調整する能力を貯蔵タンクで高めることが可能である。また、第1媒体の有する熱伝導性や温度と、第2媒体の有する熱伝導性や温度とが互いに異なる構成であれば、上下方向における内容物の温度の差異に合わせた温度の調整が可能でもあり、あるいは、上下方向における内容物の温度に意図的に勾配を与えることも可能である。
【0062】
(9)なお、周壁部11の外周面に位置する管状部12の数が3つ以上であれば、管状部12の数が増す分だけ、貯蔵タンクに貯蔵された内容物の温度の調整を、上下方向において細かく行うことが可能でもある。
【0063】
(10)また、1つの管状体12Tに切り欠き12STを形成することによって、2つの管状部12が形成されるため、2つの管状部12を備える貯蔵タンクの製造が容易でもある。なお、こうした効果は、2つ以上の切り欠き12STを形成することによって製造される貯蔵タンク、すなわち、3つ以上の管状部12を備える貯蔵タンクにおいても得られる。
【0064】
[第2変形例]
・周壁部11の外周面に位置する管状部12が複数であって、上下方向においては、互いに異なる管状部12の配置が1巻きごとに交互に繰り返されてもよい。すなわち、互いに異なる複数の管状部12が上下方向において1巻きごとに重なる多重の螺旋状を有してもよい。このような複数の管状部12が多重の螺旋状を有する貯蔵タンクの製造に際しては、例えば、複数本の管状体12Tが周壁部11の外周面11Tに1回転ずつ巻かれる方法を採用することが可能である。
【0065】
上記第2変形例によれば、以下に列挙する効果がさらに得られる。
(11)複数の管状部12が多重の螺旋状を有し、かつ、温度を調整する形態が管状部12ごとに変えられる構成であれば、上下方向において所定の高さ範囲に位置する内容物に対し、内容物の温度を多段階で調整することが可能である。
【0066】
例えば、2つの管状部12が上下方向で1巻きずつ重ねられた螺旋状を有する構成であれば、一方の管状部12のみで内容物の温度を調整する形態と、両方の管状部12で内容物の温度を調整する形態と、両方の管状部12から媒体が抜き取られた状態とを切り替える制御部によって、各々の状態で内容物の温度を調整することが可能である。ひいては、周壁部11の内側に位置する内容物に対し、調整によって到達するべき温度の自由度や、その温度に到達するまでの時間の自由度を高めることが可能にもなる。
【0067】
[第3変形例]
・周壁部11の外周部に位置する管状部12が、周壁部11の径方向において重なるように周壁部11に巻かれた管構造体から構成されてもよい。すなわち、周壁部11の径方向において重ねられた管構造体が、径方向において多重の螺旋状を有してもよい。このように、管状部12が多重の螺旋状を有する貯蔵タンクの製造に際しては、例えば、複数本の管状体12Tが径方向に重ねられた状態で周壁部11の外周面11Tに巻かれる方法を採用することが可能である。
【0068】
上記第3変形例によれば、以下に列挙する効果がさらに得られる。
(12)管状部12が多重の管構造体から構成される螺旋状を有し、かつ、温度を調整する形態を管構造体ごとに変える制御部を備える構成であれば、上下方向において所定の高さ範囲に位置する内容物に対し、管状部12の有する熱容量を多段に変えることが可能である。
【0069】
例えば、2つの管構造体が径方向に重ねられた螺旋状を有する構成であれば、一方の管構造体のみで内容物の温度を調整する形態と、両方の管構造体で内容物の温度を調整する形態と、両方の管構造体から媒体が抜き取られた状態とに、制御部が温調状態を切り替えることによって、内容物の温度を調整することが可能である。
【0070】
そして、管状部12の導入部における媒体の温度と、管状部12の導出部における媒体の温度との差が大きく、かつ、上下方向において均一な温度が求められるとき、言い換えれば、管状部12のなかに滞在する媒体に高い熱容量が求められる調整の形態では、両方の管構造体で媒体が循環する形態が採用される。これに対し、管状部12のなかに滞在する媒体に高い熱容量が求められない温度調整の形態では、一方の管構造体で媒体が循環する、あるいは、両方の管構造体から媒体が抜き取られる形態が採用される。
【0071】
・なお、貯蔵タンクは、上記実施形態、第1変形例、第2変形例、および、第3変形例から構成される群から選択される2以上の構成の組み合わせであってもよい。
【0072】
[他の変形例]
・
図6が示すように、周壁部11の外周面11Tにおいて、上下方向で互いに隣り合う管状部12の間に隙間が形成されず、上下方向で互いに隣り合う管状部12が接合されてもよい。こうした管状部12の構成によれば、周壁部11の外周面11Tにおいて、単位面積当たりに占める管状部12の大きさを大きくすることが可能である。
【0073】
・
図7が示すように、管状部12における通路12Pの位置は、周壁部11の径方向において内側に偏ってもよい。こうした管状部12の構成によれば、内側肉厚Tinと外側肉厚Toutとの差を通路12Pの位置によって小さくすることが可能である。
【0074】
・
図8が示すように、貯蔵タンクにおいては、管状部12における径方向の外側に、樹脂製の外周壁部22がさらに備えられてもよい。外周壁部22は管状部12に溶着され、周壁部11の周方向の全体にわたり管状部12を囲う。こうした貯蔵タンクの構成によれば、貯蔵タンクが設置された環境と、管状部12との間の熱の授受が抑えられるため、貯蔵タンクに貯蔵された内容物の温度に対し、管状部12による温度の調整が効果的に行われ、かつ、調整された内容物の温度を保つことも効果的に行われる。
【0075】
・
図9が示すように、貯蔵タンクにおいては、上下方向で互いに隣り合う管状部12が接合され、かつ、管状部12における径方向の外側に、樹脂製の外周壁部22がさらに備えられてもよい。こうした構成であれば、
図7で説明された構成から得られる効果、および、
図8で説明された構成から得られる効果の両方を得ることが可能ともなる。
【0076】
・貯蔵タンクにおいて、導入部13Bは管状部12の下端に位置し、かつ、導出部13Aは管状部12の上端に位置してもよい。また、第1導入部13B1は第1管状部12Aの下端に位置し、かつ、第1導出部13A1は第1管状部12Aの上端に位置してもよい。さらに、第2導入部13B2は第2管状部12Bの下端に位置し、かつ、第2導出部13A2は第2管状部12Bの上端に位置してもよい。
【0077】
[貯蔵タンク]
・貯蔵タンクは、内容物の一例である粒体を貯蔵タンクの内部へ投入するためのホッパを別途天面11Sに備えていてもよい。
・貯蔵タンクは、周壁部11の内側に円筒状の内周壁部がさらに備えられた二重管構造を有してもよい。
【0078】
・
図10が示すように、貯蔵タンクは、天面11Sから上方に延びる円筒状の上側周壁部25が備えられた多段管構造を有してもよい。この際に、上側周壁部25の外周面には、他の管状部12が溶着されてもよく、あるいは、上側周壁部25の外周面には、管状部12が溶着されていなくてもよい。
・周壁部11と管状部12とは、互いに異なる樹脂から形成され、互いに異なる樹脂による二色成形によって一体となる樹脂成形体であってもよい。
【0079】
・周壁部11は、内容物に対する各種の処理を行う配管が周壁部11の内部に備えられる構成であってもよい。また、周壁部11は、内容物の温度を調整するための温度調整部が周壁部11の内部に備えられる構成であってもよい。なお、周壁部11の内部に温度調整部が備えられる構成では、温度調整部の占める体積分だけ、内容物の容積が小さくなる。それゆえに、内容物の容積が大きくなる観点では、内容物の温度を調整する機能を管状部12のみが担い、上述した温度調整部が省略されることが好ましい。
【0080】
・内側肉厚Tinと外側肉厚Toutとは、管状部12の全てにおいて互いに等しくてもよい。また、内側肉厚Tinが外側肉厚Toutよりも大きい部分と、内側肉厚Tinが外側肉厚Toutよりも小さい部分とが、貯蔵タンクの全体において混在していてもよい。
【0081】
・管状部12に形成された通路に媒体を導入する導入部は、管状部12の下端以外、例えば、管状部12の上端、管状部12の上端および下端、さらには、管状部12における上端と下端との中間に位置してもよい。管状部12の上端に導入部が位置する構成では、管状部12の下端に導出部が位置する。また、管状部12の上端および下端に導入部が位置する構成であれば、管状部12における上端と下端との中間に導出部が位置する。また、管状部12における上端と下端との中間に導入部が位置する構成では、管状部12の上端と下端とに導出部が位置する。なお、管状部12の下端に導入部が位置する構成であれば、管状部12に形成された通路内の気泡が、その通路内に媒体を導入する際に排出することが容易である。
・循環装置21、第1循環装置21A、および、第2循環装置21Bが循環させる媒体は、液体に限らず、気体であってもよく、さらに、液体と気体とを切り替えるように構成されてもよい。