特許第6693729号(P6693729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成ホームズ株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社北浦工業の特許一覧

<>
  • 特許6693729-デッキ材固定構造 図000002
  • 特許6693729-デッキ材固定構造 図000003
  • 特許6693729-デッキ材固定構造 図000004
  • 特許6693729-デッキ材固定構造 図000005
  • 特許6693729-デッキ材固定構造 図000006
  • 特許6693729-デッキ材固定構造 図000007
  • 特許6693729-デッキ材固定構造 図000008
  • 特許6693729-デッキ材固定構造 図000009
  • 特許6693729-デッキ材固定構造 図000010
  • 特許6693729-デッキ材固定構造 図000011
  • 特許6693729-デッキ材固定構造 図000012
  • 特許6693729-デッキ材固定構造 図000013
  • 特許6693729-デッキ材固定構造 図000014
  • 特許6693729-デッキ材固定構造 図000015
  • 特許6693729-デッキ材固定構造 図000016
  • 特許6693729-デッキ材固定構造 図000017
  • 特許6693729-デッキ材固定構造 図000018
  • 特許6693729-デッキ材固定構造 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6693729
(24)【登録日】2020年4月20日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】デッキ材固定構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/02 20060101AFI20200427BHJP
【FI】
   E04F15/02 101G
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-225563(P2015-225563)
(22)【出願日】2015年11月18日
(65)【公開番号】特開2017-95865(P2017-95865A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000154853
【氏名又は名称】株式会社北浦工業
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】前川 敏晴
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−329607(JP,A)
【文献】 特公平06−076701(JP,B2)
【文献】 特開2004−197450(JP,A)
【文献】 米国特許第06128880(US,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1230336(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00−15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッキを構成するデッキ材を固定下地に着脱可能に固定するデッキ材固定構造であって、
前記デッキ材の裏面に設けられ、前記固定下地に係合する係合部材と、
前記係合部材が前記固定下地に係合する係合位置となったときに前記係合部材と前記固定下地との間に上方側または下方側から差し込まれて前記係合部材の係合位置から非係合位置へ向けた移動を阻止する移動阻止部を備えた固定具と、を有し、
前記固定下地が、底部と、該底部の両側縁に連なる一対の側部と、一対の前記側部の上端からそれぞれ内側に向けて延出する一対の折返し部と、を備えた断面略C字のレール形状に形成され、
前記係合部材が、前記デッキ材の裏面に固定される固定部と、前記デッキ材の裏面に該裏面に対して間隔を空け且つ平行に配置される板状の爪部と、前記固定部と前記爪部とを連ねる連結部と、を備え、前記爪部が一対の前記折返し部の間から前記固定下地の内部に挿入されて一方の前記折返し部にスライド式に係合することにより係合位置となり、
前記固定具が、凸型の前記移動阻止部と前記底部に垂直な方向に貫通するねじ孔とを備えて固定下地の内部に回り止めされた状態で配置される固定片と、前記ねじ孔に螺合する棒状ねじ部材とを有し、
前記棒状ねじ部材の回転によって前記固定片が前記底部から離れる方向に移動して前記移動阻止部が前記爪部の後端に係合することにより、前記係合部材の係合位置から非係合位置へ向けた移動が阻止されることを特徴とするデッキ材固定構造。
【請求項2】
前記固定片が、隣り合う前記デッキ材の間に挟持される回り止め部をさらに備えることを特徴とする請求項に記載のデッキ材固定構造。
【請求項3】
デッキを構成するデッキ材を固定下地に着脱可能に固定するデッキ材固定構造であって、
前記デッキ材の裏面に設けられ、前記固定下地に係合する係合部材と、
前記係合部材が前記固定下地に係合する係合位置となったときに前記係合部材と前記固定下地との間に上方側または下方側から差し込まれて前記係合部材の係合位置から非係合位置へ向けた移動を阻止する移動阻止部を備えた固定具と、を有し、
前記固定下地が、底部と、該底部の両側縁に連なる一対の側部と、一対の前記側部の上端からそれぞれ内側に向けて延出する一対の折返し部と、を備えた断面略C字のレール形状に形成され、
前記係合部材が、前記デッキ材の裏面に固定される固定部と、前記デッキ材の裏面に該裏面に対して間隔を空け且つ平行に配置される板状の爪部と、前記固定部と前記爪部とを連ねる連結部と、を備え、前記爪部が一対の前記折返し部の間から前記固定下地の内部に挿入されて一方の前記折返し部にスライド式に係合することにより係合位置となり、
前記固定具が、前記デッキ材の側面に該側面に垂直な支軸によって回動自在に支持された板状部と、該板状部と一体に設けられた爪状の前記移動阻止部とを有し、
前記板状部を回動させて前記移動阻止部を前記係合部材と一方の前記折返し部との間に上方側から差し込むことにより、前記係合部材の係合位置から非係合位置へ向けた移動が阻止されることを特徴とするデッキ材固定構造。
【請求項4】
前記板状部に、該板状部に対して直角に曲がる摘み部を設けたことを特徴とする請求項に記載のデッキ材固定構造。
【請求項5】
前記板状部に、取っ手用孔を設けたことを特徴とする請求項3または4に記載のデッキ材固定構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキを構成するデッキ材を固定下地に固定するデッキ材固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅等の建物の屋外やベランダ等にデッキを設置することが行われている。このようなデッキは、根太等の固定下地の上に複数枚のデッキ材を並べて固定することにより構成されるのが一般的である。
【0003】
固定下地に対するデッキ材の固定構造としては、例えばボルト等の固定具を用いる構造が一般的であるが、デッキをベランダに設置した場合等においては、デッキの下に設けられるドレインの点検やメンテナンス等を行う必要があるため、デッキ材の一部を固定下地に対して着脱可能に固定する構造が採用されている。
【0004】
例えば特許文献1には、デッキ材(床板ユニット)に設けた台部材にロックバーをスライド自在に設け、このロックバーを固定下地(根太枠)の内側面に設けたロック孔に差し込むことにより、デッキ材を固定下地に対して着脱可能に固定するようにしたデッキ材固定構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−84225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のデッキでは、デッキ材に設けたロックバーを固定下地に設けたロック孔に差し込むことによりデッキ材を固定下地に対して着脱可能に固定するようにしているので、デッキ材を固定下地に固定する際に、ロックバーをロック孔に対して位置合わせする必要があるなど、その固定作業が煩雑であるという問題点があった。
【0007】
本発明は、このような点を解決することを課題とするものであり、その目的は、固定下地に対してデッキ材を容易に着脱可能に固定することができるデッキ材固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のデッキ材固定構造は、デッキを構成するデッキ材を固定下地に着脱可能に固定するデッキ材固定構造であって、前記デッキ材の裏面に設けられ、前記固定下地に係合する係合部材と、前記係合部材が前記固定下地に係合する係合位置となったときに前記係合部材と前記固定下地との間に上方側または下方側から差し込まれて前記係合部材の係合位置から非係合位置へ向けた移動を阻止する移動阻止部を備えた固定具と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明のデッキ材固定構造は、上記構成において、前記固定下地が、底部と、該底部の両側縁に連なる一対の側部と、一対の前記側部の上端からそれぞれ内側に向けて延出する一対の折返し部と、を備えた断面略C字のレール形状に形成され、前記係合部材が、前記デッキ材の裏面に固定される固定部と、前記デッキ材の裏面に該裏面に対して間隔を空け且つ平行に配置される板状の爪部と、前記固定部と前記爪部とを連ねる連結部と、を備え、前記爪部が一対の前記折返し部の間から前記固定下地の内部に挿入されて一方の前記折返し部にスライド式に係合することにより係合位置となることを特徴とする。
【0010】
本発明のデッキ材固定構造は、上記構成において、前記固定具が、凸型の前記移動阻止部と前記底部に垂直な方向に貫通するねじ孔とを備えて固定下地の内部に回り止めされた状態で配置される固定片と、前記ねじ孔に螺合する棒状ねじ部材とを有し、前記棒状ねじ部材の回転によって前記固定片が前記底部から離れる方向に移動して前記移動阻止部が前記爪部の後端に係合することにより、前記係合部材の係合位置から非係合位置へ向けた移動が阻止されることを特徴とする。
【0011】
本発明のデッキ材固定構造は、上記構成において、前記固定片が、隣り合う前記デッキ材の間に挟持される回り止め部をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
本発明のデッキ材固定構造は、上記構成において、前記固定具が、前記デッキ材の側面に該側面に垂直な支軸によって回動自在に支持された板状部と、該板状部と一体に設けられた爪状の前記移動阻止部とを有し、前記板状部を回動させて前記移動阻止部を前記係合部材と一方の前記折返し部との間に上方側から差し込むことにより、前記係合部材の係合位置から非係合位置へ向けた移動が阻止されることを特徴とする。
【0013】
本発明のデッキ材固定構造は、上記構成において、前記板状部に、該板状部に対して直角に曲がる摘み部を設けたことを特徴とする。
【0014】
本発明のデッキ材固定構造は、上記構成において、前記板状部に、取っ手用孔を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、固定下地に対してデッキ材を容易に着脱可能に固定することができるデッキ材固定構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るデッキ材固定構造を適用したデッキの平面図である。
図2図1におけるA−A線に沿う断面図である。
図3図1に示す標準パネルユニットの平面図である。
図4図1におけるB−B線に沿う断面図である。
図5】(a)、(b)は、それぞれデッキ材に設けた係合部材を固定下地に係合させる手順を示す説明図である。
図6図4に示す固定具の斜視図である。
図7】(a)〜(d)は、それぞれ図5に示す固定具を固定下地の所定位置に配置する手順を示す説明図である。
図8】(a)、(b)は、それぞれ固定具に設けられた移動阻止部を係合部材と固定下地との間に差し込む手順を示す説明図である。
図9図1に示す着脱パネルユニットの平面図である。
図10図9に示す固定具の詳細を示す説明図である。
図11図9におけるC−C線に沿う断面図である。
図12】(a)、(b)は、それぞれ固定具に設けられた移動阻止部を係合部材と固定下地との間に差し込む手順を示す説明図である。
図13図10に示す固定具の変形例を示す説明図である。
図14図6に示す固定具の変形例を示す説明図である。
図15】(a)、(b)は、それぞれ図6に示す固定具の作用を説明する説明図である。
図16】端部固定具の斜視図である。
図17】端部固定具の装着状態を示す断面図である。
図18図6に示す固定具の変形例であって、(a)はその断面図であり、(b)はその平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るデッキ材固定構造の実施形態について、図面を参照しながら詳細に例示説明する。なお、本明細書においては、「上方」とはデッキ材の裏面から表面に向けた方向を意味し、「下方」とはデッキ材の表面から裏面に向けた方向を意味するものとする。
【0018】
図1に示すデッキ1は、例えば鉄骨造の工業化住宅などの住宅等の建物に設けられたベランダに設置される。このデッキ1は、デッキ1を設置するベランダの大きさ(面積)に応じた複数枚のデッキ材2を、本発明に係るデッキ材固定構造によって根太等の固定下地3に着脱可能に固定することで構成されている。
【0019】
デッキ材2は長尺の板材である。デッキ材2としては、例えば、天然の木材や人工の木材を用いることができる。図2から解るように、本実施の形態では、デッキ材2として、並列配置されたアルミ合金製の矩形筒状の一対の芯材2aの周囲をウレタン等の樹脂材2bで被覆した構成のものを用いている。
【0020】
図1に示すように、デッキ材2は、例えば2枚一組とした標準パネルユニットPU1に構成することができる。また、一部のデッキ材2は、2枚一組とした着脱パネルユニットPU2に構成することができる。標準パネルユニットPU1及び着脱パネルユニットPU2は、何れも、固定下地3に対して着脱可能に固定されるが、着脱パネルユニットPU2は標準パネルユニットPU1に比べて固定下地3からの着脱がさらに容易な構成とされている。着脱パネルユニットPU2は、例えばデッキ1の下にドレインが設けられている部位など、点検やメンテナンス等を行うためにデッキ材2の一部を取り外す必要がある部位に設けられる。
【0021】
図3に示すように、標準パネルユニットPU1を構成する2枚のデッキ材2は、所定の間隔を空けて並べて配置され、その裏面に2枚のデッキ材2に掛け渡して固定された一対の係合部材10によって互いに連結されている。係合部材10は、それぞれデッキ材2の長手方向の一方側と他方側とに、その長手方向端部から所定の間隔を空けて配置され、例えばビス等の締結部材11を用いてそれぞれのデッキ材2に固定されている。
【0022】
なお、本実施の形態においては、係合部材10を用いて2枚のデッキ材2を連結して標準パネルユニットPU1に構成するようにしているが、係合部材10とは別の他の連結部材等を用いて2枚のデッキ材2を連結して標準パネルユニットPU1を構成するようにしてもよい。この場合、標準パネルユニットPU1の裏面には連結部材とは別に係合部材10が固定されることになる。
【0023】
なお、標準パネルユニットPU1を構成するデッキ材2の枚数及び係合部材10の本数等は、上記に限らず、デッキ1の面積やデッキ材2の長さ等に応じて任意に設定することができる。
【0024】
標準パネルユニットPU1は、例えば工場等で予め組み立てられたものとしてもよい。この場合、デッキ1の施工現場においては、標準パネルユニットPU1を固定下地3に固定するだけの簡単な作業でデッキ1を容易に構築することができる。
【0025】
係合部材10は、固定下地3に係合してデッキ材2つまり標準パネルユニットPU1を固定下地3に固定するものである。図4に示すように、本実施の形態においては、係合部材10は、長尺の鋼板等の薄板材を折り曲げることにより、平板状の固定部10aと、当該固定部10aに平行に段差状にずれた平板状の爪部10bと、固定部10aと爪部10bとを連ねる連結部10cとを備えた横断面略Z形となる長尺板状に形成されている。一対の係合部材10は、それぞれ爪部10bを長手方向の一方側に向けた姿勢で固定部10aにおいてデッキ材2の裏面に上記した締結部材11(図2図3参照)を用いて固定されている。爪部10bはデッキ材2の裏面に対して所定の間隔を空けるとともに当該裏面に平行に配置されている。
【0026】
ベランダ等のデッキ1の設置場所には、図1に示すように、2本の固定下地3が間隔を空けて互いに平行に配置される。標準パネルユニットPU1は、これらの固定下地3の上に配置され、係合部材10が固定下地3に係合することによって固定下地3に着脱可能に固定され、当該固定下地3によって支持される。図2から解るように、固定下地3は、例えば鋼製等の束12によってベランダの床面に支持される構成とすることができる。
【0027】
固定下地3は、それぞれ断面略C字の長尺のレール形状に形成されている。より具体的には、図4に示すように、固定下地3は、長尺の鋼板を略C字形状に折り曲げることにより、底部3a、底部3aの両側縁に連なる一対の側部3b、及び一対の側部3bの上端からそれぞれ内側に向けて延出する一対の折返し部3cによって構成されている。固定下地3は、一対の折返し部3cが上方を向くように設置されている。一対の折返し部3cの間に形成される隙間Sは固定下地3の長手方向に沿って延びており、その幅寸法は、係合部材10の固定部10aの側の一端から爪部10bの側の他端までの幅寸法よりも広くなっている。また、一対の折返し部3cは、その厚みが係合部材10の爪部10bとデッキ材2の裏面との間隔よりも僅かに薄くなっているとともに、側部3bからの延出長さが爪部10bの固定部10aからの突出長さよりも広くなっている。
【0028】
標準パネルユニットPU1は、それぞれの係合部材10の爪部10bを固定下地3の一方の折返し部3cにスライド式に係合させることにより固定下地3に固定される。
【0029】
より具体的には、標準パネルユニットPU1を固定下地3の一対の折返し部3cの上面に配置する際に、図5(a)に示すように、係合部材10の爪部10bを固定下地3の一対の折返し部3cの間の隙間Sから固定下地3の内部に挿入する。このとき、一対の係合部材10の間隔は一対の固定下地3の間隔と一致しているので、一対の係合部材10は、それぞれ対応する固定下地3の内部に挿入される。
【0030】
次に、この状態から標準パネルユニットPU1を長手方向に向けて押し、図5(b)に示すように、係合部材10の爪部10bを固定下地3の一方の折返し部3cにスライド式に係合させる。連結部10cが折返し部3cの端部に当接するまで爪部10bを折返し部3cに係合させると係合部材10は係合位置となる。このように、爪部10bを折返し部3cにスライド式に係合させて係合部材10を係合位置とすることにより、爪部10bと標準パネルユニットPU1の裏面との間に折返し部3cを挟持して、係合部材10つまり標準パネルユニットPU1を固定下地3に固定することができる。
【0031】
一方、標準パネルユニットPU1を長手方向に向けて上記とは反対側に押して係合部材10を図5(b)に示す係合位置から図5(a)に示す非係合位置にまで移動させることにより、爪部10bと折返し部3cとの係合を解除させて係合部材10つまり標準パネルユニットPU1を固定下地3から取り外し可能な状態とすることができる。
【0032】
図4に示すように、係合部材10を係合位置に保持して標準パネルユニットPU1が固定下地3から外れることを防止するために、固定下地3の内部には固定具20が設けられている。
【0033】
図6に示すように、固定具20は、固定片21と棒状ねじ部材22とを有している。例えば合成樹脂製とされる固定片21は、略小判形の板状に形成された本体部21aの両側部にそれぞれ下方に向けて突出する脚部21bを一体に備えるとともに本体部21aの上面に上方に向けて段差状に突出する凸部21cを一体に備えている。本実施の形態では、本体部21aと凸部21cとで凸型の移動阻止部23が構成される。
【0034】
固定片21の幅寸法Wは、固定下地3の一対の側部3bの内面の間隔と同等ないし僅かに小さくなっている。また、固定片21の奥行き寸法Dは、固定下地3の隙間Sの開口幅よりも小さくなっている。
【0035】
固定片21の軸心には、この固定片21を固定下地3の内部に配置したときに、当該固定下地3の底部3aに垂直となる方向に固定片21を貫通するねじ孔21dが設けられている。
【0036】
棒状ねじ部材22は、外周面に雄ねじを備えた軸部22aと、軸部22aの下端に一体に形成された軸部22aよりも大径のヘッド部22bとを有し、軸部22aにおいて固定片21のねじ孔21dに螺合している。軸部22aの先端面には、棒状ねじ部材22を回転させるための工具が嵌め込まれる凹部22cが形成されている。当該工具としては、例えば六角レンチを用いることができる。この場合、凹部22cは六角形に形成される。なお、棒状ねじ部材22を回転させるための工具としては、例えばプラスドライバーやマイナスドライバーなどの六角レンチ以外の他の工具を用いることができ、これに合わせて凹部22cの形状も種々変更可能である。
【0037】
固定片21の凸部21cの上面には、一対の回り止め部21eが一体に設けられている。これらの回り止め部21eは、それぞれ略正方形状に形成されており、棒状ねじ部材22を挟んだ両側において凸部21cの上面から上方に向けて突出している。これらの回り止め部21eは、隣り合うデッキ材2の間に設けられる隙間に対応した厚みに形成されている。これらの回り止め部21eを隣り合うデッキ材2の間に挟持させることにより、固定下地3の内部において固定片21を当該固定下地3に対して回り止めすることができる。
【0038】
図4に示すように、係合部材10が係合位置となって標準パネルユニットPU1が固定下地3に固定された状態となったときに、固定片21の凸部21cを係合部材10の爪部10bの後端に下方側から係合させることにより、固定片21(移動阻止部23)によって係合部材10の係合位置から非係合位置への移動を阻止することができる。すなわち、爪部10bの後端と、当該後端に対向する固定下地3の側部3bとの間に凸部21cと本体部21aとから成る移動阻止部23が下方側から差し込まれることにより、爪部10bが凸部21cと本体部21aとによって側部3bに支持されて係合部材10が係合位置に保持されることになる。このように、固定具20によって係合部材10を係合位置に保持することにより、標準パネルユニットPU1を固定下地3に固定された状態に保持することができる。
【0039】
次に、固定具20によって係合部材10を係合位置に保持させる手順について説明する。なお、以下では、隣り合う2つの標準パネルユニットPU1の係合部材10を同時に係合位置に保持する場合を示す。
【0040】
まず、図7(a)に示すように、1つ目の標準パネルユニットPU1の係合部材10を固定下地3に係合させた状態において、固定片21を固定下地3の隙間Sの延在方向に沿った縦向きとして固定具20を隙間Sから固定下地3の内部に挿入する。固定片21の奥行き寸法Dは隙間Sの開口幅よりも小さくされているので、隙間Sを通して固定具20を固定下地3の任意の位置から当該固定下地3の内部に容易に挿入することができる。
【0041】
次に、図7(b)に示すように、固定具20を固定下地3の内部で90度回転させて横向きの配置とする。このとき、固定片21の本体部21aは小判形状に形成されているので、一対の側部3bの間隔と同等の幅寸法Wを有する固定片21を固定下地3の内部で容易に回転させることができる。
【0042】
次に、図7(c)に示すように、横向きとされた固定具20を固定下地3に沿って移動させ、回り止め部21eを標準パネルユニットPU1の側面に当接させる。これにより、固定片21の一部が係合部材10の下方に配置される。
【0043】
次に、2つ目の標準パネルユニットPU1を、その係合部材10を固定下地3に係合させた状態において固定下地3に沿って他方の標準パネルユニットPU1の側に向けて移動させ、図7(d)に示すように、一対の標準パネルユニットPU1の側面の間で回り止め部21eを挟持した状態とする。回り止め部21eが一対の標準パネルユニットPU1の側面の間に挟持されることにより、固定具20は固定下地3の内部で回り止めされた状態となる。なお、回り止め部21eを挟み込むことにより、隣り合う標準パネルユニットPU1の間隔は所定の間隔に設定されることになる。
【0044】
次に、この状態において、図8(a)に示すように、隣り合う標準パネルユニットPU1の間に露出する棒状ねじ部材22の凹部22cに工具(不図示)を嵌合させ、棒状ねじ部材22を締め込み方向に回転させる。棒状ねじ部材22が回転すると、回り止めされている固定片21はねじの作用により底部3aから離れる方向つまり上方に向けて移動し、図8(b)に示すように、その凸部21cが係合部材10の爪部10bの後端に下方側から係合する。これにより、上記のように、爪部10bの後端と側部3bとの間に凸部21cと本体部21aとから成る移動阻止部23が下方側から差し込まれた状態となって、係合部材10の係合位置から非係合位置へ向けた移動が阻止され、係合部材10は固定具20によって係合位置に保持される。これにより、係合部材10の固定下地3からの外れが防止され、標準パネルユニットPU1は固定下地3に確実に固定される。
【0045】
このように、係合部材10を固定下地3に係合させた状態で当該係合部材10の下方に固定具20を配置し、棒状ねじ部材22を工具等によって回転させるだけの簡単な作業で、標準パネルユニットPU1を確実に固定下地3に固定することができる。また、標準パネルユニットPU1を固定下地3から取り外す際には、棒状ねじ部材22を緩め方向に回転させることにより、固定具20による係合部材10の保持を解除することができるので、当該取り外しの作業も容易に行うことができる。したがって、このデッキ材固定構造によれば、固定下地3に対してデッキ材2つまり標準パネルユニットPU1を容易に着脱することができる。
【0046】
上記のように、デッキ1の一部は着脱パネルユニットPU2により構成されている。図9に示すように、着脱パネルユニットPU2は、基本的に標準パネルユニットPU1と同様の構成を有しており、2枚のデッキ材2を係合部材10によって互いに連結した構成となっている。
【0047】
なお、着脱パネルユニットPU2の大きさは、メンテナンス等が必要な面積等に応じて任意に設定することができる。また、着脱パネルユニットPU2を構成するデッキ材2の枚数及び係合部材10の本数等も任意に設定可能である。
【0048】
着脱パネルユニットPU2は、標準パネルユニットPU1と同様、係合部材10を固定下地3に係合させて当該固定下地3に着脱自在に固定されるが、着脱パネルユニットPU2は、その着脱作業をより容易にするために、固定具30によって係合部材10を係合位置に保持させる構成となっている。この固定具30は、着脱パネルユニットPU2を構成する一対のデッキ材2の間に設けられている。
【0049】
図10に示すように、固定具30は、板状部30aを有している。板状部は、例えば鋼板等により形成されており、その一端側において一方のデッキ材2の側面に当該側面に垂直に配置された支軸31によって回動自在に支持されている。支軸31は、デッキ材2にねじ込み等によって固定されるボルトで構成することができる。図11に示すように、支軸31は、ヘッド部31aが一対のデッキ材2の間に配置されることにより、デッキ材2からの離脱が確実に防止される。
【0050】
図10に示すように、板状部30aには爪状の移動阻止部30bが一体に設けられている。この移動阻止部30bは、板状部30aが一対のデッキ材2の間に配置された状態において係合部材10の固定部10aに隣接した部分において下向きに突出するように、当該板状部30aの一方の側辺の先端側部分に設けられている。
【0051】
図9図11に示すように、板状部30aには摘み部30cが一体に設けられている。摘み部30cは、板状部30aの移動阻止部30bが設けられるのと反対側の側辺に当該板状部30aに対して直角に曲げて形成されており、板状部30aが一対のデッキ材2の間に配置された状態において、デッキ材2の上面に設けられた凹み部32に配置されるようになっている。つまり、板状部30aが一対のデッキ材2の間に配置された状態においては、摘み部30cは凹み部32に配置され、固定具30は着脱パネルユニットPU2の上面から突出することがない。これにより、デッキ1を歩行する住人等が固定具30に引っ掛かることが防止される。
【0052】
さらに、図10に示すように、板状部30aには取っ手用孔30dが設けられている。取っ手用孔30dが設けられることにより、着脱パネルユニットPU2を固定下地3から取り外した後、当該着脱パネルユニットPU2を持ち運ぶ際に、当該取っ手用孔30dに指を引っ掛けて固定具30を取っ手として用いることができる。
【0053】
係合部材10が係合位置となって着脱パネルユニットPU2が固定下地3に固定された状態となったときに、板状部30aを回動させて固定具30の移動阻止部30bを係合部材10の爪部10bの後端と当該後端に対向する折返し部3cとの間に上方側から差し込むことができる。これにより、係合部材10の係合位置から非係合位置への移動を移動阻止部30bによって阻止することができる。
【0054】
固定具30によって係合部材10を係合位置に保持させる手順についてより具体的に説明すると、まず、図12(a)に示すように、板状部30aを着脱パネルユニットPU2の上方側に引き上げた状態とする。このとき、板状部30aに一体に設けられた摘み部30cがデッキ材2の上面に当たることにより、板状部30aはデッキ材2の上面から突出する手で操作し易い位置に保持されることになる。次に、係合部材10の爪部10bを固定下地3の折返し部3cにスライド式に係合させ、爪部10bが折返し部3cに係合した状態つまり係合部材10が係合位置となった状態において、図12(b)に示すように、板状部30aを回動させる。これにより、爪部10bの後端と折返し部3cとの間に移動阻止部30bが上方側から差し込まれ、係合部材10の係合位置から非係合位置への移動が移動阻止部30bによって阻止される。したがって、係合部材10が固定具30によって係合位置に保持され、着脱パネルユニットPU2は固定下地3に固定された状態に確実に保持される。
【0055】
このように、係合部材10を固定下地3に係合させた状態で、板状部30aを回動させるだけの簡単な作業で、着脱パネルユニットPU2を確実に固定下地3に固定することができる。また、着脱パネルユニットPU2を固定下地3から取り外す際には、摘み部30cを掴んで板状部30aを上方に引き上げることにより、固定具30による係合部材10の保持を解除することができるので、当該取り外しの作業も容易に行うことができる。したがって、このデッキ材固定構造によれば、固定下地3に対してデッキ材2つまり着脱パネルユニットPU2をより容易に着脱することができる。
【0056】
図13に変形例として示すように、固定具30は、板状部30aに摘み部30cを設けない構成とすることができる。この場合、デッキ材2の側面にストッパ33を設け、板状部30aを着脱パネルユニットPU2の上方側に引き上げたときに、板状部30aがストッパ33に当接する構成とすることにより、当該板状部30aをデッキ材2の上面から突出する手で操作し易い位置に保持することができる。図13に示す場合では、取っ手用孔30dは、板状部30aの一辺に開放され、その開口端の一部が鉤状部30eに形成されている。このような構成とすることにより、摘み部30cに替えて鉤状部30eに指を掛けることで、板状部30aを容易に引き上げることが可能となる。
【0057】
図1に示すように、標準パネルユニットPU1と着脱パネルユニットPU2とが隣接して配置される部分には、標準パネルユニットPU1に設けられる係合部材10に対してはその移動を阻止し、着脱パネルユニットPU2に設けられる係合部材10に対してはその移動を許容する構成の固定具40が用いられる。
【0058】
図14に示すように、固定具40は、基本的には図6に示す固定具20と同一の構成を有するが、凸部21cが本体部21aのねじ孔21dに対して奥行き方向の一方側にのみ設けられる点で固定具20と相違している。
【0059】
このような構成の固定具40を用いることにより、図15(a)、(b)に示すように、標準パネルユニットPU1に設けられる係合部材10の爪部10bの後端に凸部21cを係合させて標準パネルユニットPU1を固定状態に保持しつつ、着脱パネルユニットPU2に設けられる係合部材10の爪部10bの後端には凸部21cを係合させずに着脱可能な状態とすることができる。これにより、着脱パネルユニットPU2を、固定具30のみによって固定下地3に対する着脱を切り替え可能な構成とすることができる。
【0060】
デッキ1の端に標準パネルユニットPU1が配置される場合には、当該標準パネルユニットPU1の係合部材10に対して、図16に示すような固定金物50を係合させて当該係合部材10の係合位置から非係合位置への移動を阻止する構成とすることができる。図17に示すように、この固定金物50は、固定下地3の端部から差し込まれ、その本体部50aが固定下地3の一対の側部3bの間に挟持されるとともに板状の係止部50bが爪部10bの後端に係合することによって、係合部材10の係合位置から非係合位置への移動を阻止することができる。なお、デッキ1の端に設けられる標準パネルユニットPU1の係合部材10を係合位置から非係合位置へ移動することを阻止する構成としては、上記の固定金物50を用いた構成に限らず、種々の構成を採用することができる。
【0061】
図18図6に示す固定具の変形例であって、(a)はその断面図であり、(b)はその平面図である。図6に示す固定具20は、その固定片21が合成樹脂製とされているが、図18に示すように、固定片21を金属製とした構成とすることもできる。
【0062】
この変形例においては、固定片21は、爪部10bの後端と側部3bとの間隔と同等の幅を有する板状に形成され、当該固定片21の全体が爪部10bの後端と側部3bとの間に差し込まれる移動阻止部に構成されている。
【0063】
また、棒状ねじ部材22のヘッド部22bと固定片21との間には断面略S字形状のバネ鋼60が装着されている。このバネ鋼60は、2つの支持片60a、60bを備え、これらの支持片60a、60bによって固定片21を挟持している。バネ鋼60は弾性変形した状態で挿入されて固定下地3の内部にその対角線に沿って配置され、その両端部が固定下地3の内面に弾性的に当接している。これにより、固定具20つまり固定片21が固定下地3の内部で当該固定下地3の長手方向に向けて容易にずれないようにされている。したがって、バネ鋼60によって固定片21を固定下地3の内部の所定位置に保持することができるので、標準パネルユニットPU1を固定下地3に対して着脱する際に、固定具20が位置ずれすることを防止して、当該着脱作業を容易に行うことができる。
【0064】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0065】
例えば、前記実施の形態においては、棒状ねじ部材22の回転や支軸31を中心とした板状部30aの回動によって係合部材10と固定下地3との間に上方側または下方側から移動阻止部を差し込むようにしているが、移動阻止部を係合部材10と固定下地3との間に上方側または下方側から差し込む構成は、種々変更可能である。
【0066】
また、固定片21の凸部21cないし移動阻止部23は、係合部材10と固定下地3との間に上方側または下方側から差し込まれて係合部材10の係合位置から非係合位置への移動を阻止することができるものであれば、その形状は種々変更可能である。
【0067】
さらに、デッキ材2を固定下地3に係合させる係合部材10の形状も種々変更可能である。
【0068】
さらに、固定下地3の形状も、係合部材10の形状に合わせて種々変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、住宅等の建物の屋外やベランダ等にデッキを設置する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 デッキ
2 デッキ材
2a 芯材
2b 樹脂材
3 固定下地
3a 底部
3b 側部
3c 折返し部
10 係合部材
10a 固定部
10b 爪部
10c 連結部
11 締結部材
12 束
20 固定具
21 固定片
21a 本体部
21b 脚部
21c 凸部
21d ねじ孔
21e 回り止め部
22 棒状ねじ部材
22a 軸部
22b ヘッド部
22c 凹部
23 移動阻止部
30 固定具
30a 板状部
30b 移動阻止部
30c 摘み部
30d 取っ手用孔
30e 鉤状部
31 支軸
31a ヘッド部
32 凹み部
33 ストッパ
40 固定具
50 固定金物
50a 本体部
50b 係止部
60 バネ鋼
60a 支持片
60b 支持片
PU1 標準パネルユニット
PU2 着脱パネルユニット
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18