特許第6693733号(P6693733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6693733
(24)【登録日】2020年4月20日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】仮設階段
(51)【国際特許分類】
   E06C 1/12 20060101AFI20200427BHJP
   E06C 7/18 20060101ALI20200427BHJP
   B61B 1/02 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
   E06C1/12
   E06C7/18
   B61B1/02
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-239160(P2015-239160)
(22)【出願日】2015年12月8日
(65)【公開番号】特開2017-106191(P2017-106191A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】591195189
【氏名又は名称】株式会社杉孝
(73)【特許権者】
【識別番号】393018130
【氏名又は名称】長谷川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094835
【弁理士】
【氏名又は名称】島添 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】杉山 信夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昌史
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲康
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−198000(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0036095(KR,A)
【文献】 特開2005−048381(JP,A)
【文献】 特開2008−002108(JP,A)
【文献】 特開平10−159288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06C 1/04−1/12,7/18
B61B 1/02
E04G 1/30
E04G 27/00
E04F 11/02−11/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の側桁と、該側桁によって支持された複数の踏み板とを有する可搬式仮設階段であって、
各側桁の上端部分に配置され、鉄道のプラットホームの縁部上面に支承されるとともに、踏み板上面の水平性を確保すべく前記縁部上面に着座する支承部と、
各側桁の下端部分に配置され、鉄道の軌道の上面に接地する脚部と、
少なくとも一方の側桁に配設された折り畳み可能な手摺り組立体とを有し、
各側桁に配置された前記支承部は、各側桁の上端部分に固定され且つプラットホームの側に実質的に水平に突出する水平杆と、各水平杆の下面に夫々配設された弾力的に変形可能な複数の着座部材とを有し、各水平杆の着座部材は、少なくとも一つの着座部材がプラットホームの上面に着座した状態を維持するように前記水平杆の軸線方向に間隔を隔てて配置されており
前記側桁は、水平面に対して35〜55度の範囲内の角度(θ)をなして傾斜するように前記プラットホームの縁部上面と前記軌道との間に架設され、前記踏み板は、前記水平杆と実質的に平行な踏み面を有し、前向き歩行で昇降可能な階段を前記プラットホームの縁部上面と前記軌道との間に形成することを特徴とする可搬式仮設階段。
【請求項2】
前記角度(θ)は、40〜50度の範囲内の角度に設定されることを特徴とする請求項1に記載の可搬式仮設階段。
【請求項3】
前記脚部は、前記側桁の軸芯方向に相対変位可能に該側桁に取付けられた伸縮杆部分と、前記軌道に対して接地する接地部分とを有し、該接地部分は、伸縮杆部分に枢動可能又は回動可能に連結されることを特徴とする請求項1又は2に記載の可搬式仮設階段。
【請求項4】
前記仮設階段は、前記側桁に対する前記支承部の高さ位置を設定変更するための支承位置設定手段を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の可搬式仮設階段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬式仮設階段に関するものであり、より詳細には、鉄道のプラットホームと軌道(線路)との間に歩行可能な昇降通路を形成する可搬式仮設階段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
在来鉄道、高速鉄道、地下鉄、モノレール等の鉄道は、鉄道車両の走行路を形成する軌道と、車両への旅客の乗降や、貨物の荷積み・荷下し等のために各駅に設けられるプラットホームとを有する。軌道は、鉄道車両の走行を誘導するレール(軌条)、レールの間隔を保持するための枕木、枕木を支持し且つ車両重量を路盤に伝える道床等を含む。一般に、軌道は、プラットホームの下方に位置し、プラットホームは、軌道上方の上部床を鉄道内に形成しており、プラットホームと軌道との間には、1〜2m程度の比較的大きな段差(高低差)が形成される。
【0003】
一般に、鉄道においては、線路等の定期的な保守点検、線路等の改修工事、線路等の清掃、軌道上の落下物等の除去などの維持管理作業が適宜実施されるが、これらの作業は、終電後・始発前の深夜の時間帯に実行される。このような作業においては、作業者等は、プラットホームと軌道との間を比較的頻繁に昇降移動するが、このような昇降移動には、プラットホームの縁部に簡易に設置可能な可搬式梯子が使用される。この種の梯子は、常時は、駅舎内、或いは、駅の倉庫、保管庫等に適宜収納され、作業者等は、使用時に梯子をプラットホームの縁部まで持ち運び、梯子の脚部を軌道上に接地させるとともに、梯子の支柱頂部をプラットホームの縁部に支承させる。この結果、概ね鉛直方向の昇降路が、梯子によってプラットホームの縁部に形成される。
【0004】
このような保守管理用又は工事用の梯子は、鉄道の保守管理や工事等において計画的に使用される比較的堅固又は高剛性の構造のものである。他方、緊急時等に臨時に使用される比較的軽量且つ低高剛性の車両用梯子が、例えば、特許文献1及び2(特開2007-170098号及び特開2004-314788号)に記載されている。特許文献1及び2に記載された梯子は、鉄道車両の故障や、鉄道事故等によって駅間の線路に車両が緊急停車した際、車内の旅客、乗員等が軌道上に移動し又は避難するのに使用される可搬式梯子である。梯子は、その全体容積を小型化すべく、折畳み式又は伸縮式の構造を有し、常時は、比較的コンパクトな状態で車両内の適所に収納され又は配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-170098号公報
【特許文献2】特開2004-314788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、梯子を使用する作業者等は、人体の後方転倒等を防ぐために両手でしっかりと梯子の鉛直支柱を掴んだ状態で昇降する必要があり、日常的な前向き歩行姿勢で梯子を昇降することはできない。しかし、線路の保守点検、線路の改修工事、線路の清掃等の作業においては、作業者等は、多くの場合、保守点検工具、交換部品・部材、清掃用品等を携帯又は携行する。このため、片手に工具等を握持した不安定な姿勢で鉛直な梯子を昇降しなければならない状況が、比較的頻繁に生じる。
【0007】
また、作業者等は、軌道に背中を向けた姿勢で梯子を昇降するので、プラットホームから軌道上に降りる際、比較的不安定な姿勢で軌道上に着地しなければならない。しかし、軌道は、レール及び枕木を敷設した採石面等によって構成されており、作業者等は、必ずしも平坦な整地面に両足を着地し得るとは限らない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、プラットホームと軌道との間の段差部に階段式昇降路を形成し、プラットホーム及び軌道の間における作業者等の昇降移動を容易にするとともに、作業者等の昇降移動の安全性を向上する可搬式仮設階段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成すべく、左右の側桁と、該側桁によって支持された複数の踏み板とを有する可搬式仮設階段であって、
各側桁の上端部分に配置され、鉄道のプラットホームの縁部上面に支承されるとともに、踏み板上面の水平性を確保すべく前記縁部上面に着座する支承部と、
各側桁の下端部分に配置され、鉄道の軌道の上面に接地する脚部と、
少なくとも一方の側桁に配設された折り畳み可能な手摺り組立体とを有し、
各側桁に配置された前記支承部は、各側桁の上端部分に固定され且つプラットホームの側に実質的に水平に突出する水平杆と、各水平杆の下面に夫々配設された弾力的に変形可能な複数の着座部材とを有し、各水平杆の着座部材は、少なくとも一つの着座部材がプラットホームの上面に着座した状態を維持するように前記水平杆の軸線方向に間隔を隔てて配置されており
前記側桁は、水平面に対して35〜55度の範囲内の角度(θ)をなして傾斜するように前記プラットホームの縁部上面と前記軌道との間に架設され、前記踏み板は、前記水平杆と実質的に平行な踏み面を有し、前向き歩行で昇降可能な階段を前記プラットホームの縁部上面と前記軌道との間に形成することを特徴とする可搬式仮設階段を提供する。
【0010】
本発明の上記構成によれば、踏板は、前向き歩行姿勢で昇降可能な階段式昇降路をプラットホームと軌道との間に形成する。このため、プラットホームに降りる作業者等は、軌道を見ながら軌道上に着地することができる。しかも、作業者等は、片手で手摺りを掴んで階段を降りることができる。従って、本発明の可搬式仮設階段によれば、プラットホーム及び軌道の間における作業者等の昇降移動を容易にするとともに、作業者等の昇降移動の安全性を向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の可搬式仮設階段によれば、プラットホームと軌道との間の段差部に階段式昇降路を形成し、プラットホーム及び軌道の間における作業者等の昇降移動を容易にするとともに、作業者等の昇降移動の安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(A)は、本発明の好適な実施形態に係る可搬式仮設階段の構成を示す側面図であり、図1(B)は、伸縮杆(ロッド状部材又は棒状部材)の伸長寸法を短縮した状態を示す階段脚部の部分側面図であり、図1(C)は、階段脚部の接地部材を枢動又は回動させて側桁の傾斜角を変化させた状態を示す階段脚部の部分側面図である。
図2図2は、図1に示す仮設階段の正面図である。
図3図3は、手摺り組立体を折り畳んだ状態(格納位置)で示す仮設階段の側面図である。
図4図4(A)は、高低差が比較的小さいプラットホーム及び軌道の間に仮設階段を架設した状態を示す側面図であり、図4(B)及び図4(C)は、上面が傾斜した軌道に対して仮設階段を設置した状態を示す仮設階段の部分側面図である。
図5図5は、図3に示す格納位置の仮設階段を積み重ねた状態(保管状態)を示す側面図である。
図6図6は、仮設階段の支承部と、プラットホームの縁部上面との位置関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適な実施形態によれば、上記角度(θ)は、好ましくは、40〜50度の範囲内に設定される。このような構成によれば、手摺りを掴んだ作業者等の体重移動によって仮設階段が全体的に軌道側に転倒するのを更に確実に防止することができる。
【0014】
好ましくは、上記脚部は、上記側桁(桁材)の軸芯方向に相対変位可能に側桁に取付けられた伸縮杆部分と、軌道に対して接地する接地部分とを有し、接地部分は、伸縮杆部分に枢動可能又は回動可能に連結される。このような構成によれば、伸縮杆部分の伸縮により、プラットホームと軌道との高低差に相応して仮設階段を適切に設置することができる。また、接地部材の枢動又は回動により、脚部の接地面と側桁の軸芯とがなす角度を変化させることができるので、軌道面の傾斜等に相応して仮設階段を適切に設置することができる。
【0015】
更に好ましくは、上記仮設階段は、側桁に対する上記支承部の高さ位置を設定変更するための支承位置設定手段を有する。支承位置設定手段によって支承部の高さ位置を設定変更することにより、プラットホームと軌道との高低差に相応して仮設階段を適切に設置することができる。支承位置設定手段は、例えば、側桁の特定の高さ位置に配置された複数のボルト孔と、該ボルト孔に挿通され且つ支承部の水平杆を支持するボルト・ナット組立体とから構成される。
【実施例】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例に係る可搬式仮設階段について詳細に説明する。
【0017】
図1(A)及び図2は、本発明の好適な実施形態に係る可搬式仮設階段の構成を示す側面図及び正面図である。
【0018】
図1及び図2には、鉄道の軌道Tと、鉄道内の上部床を構成するプラットホームPとが示されている。プラットホームPの縁部と軌道Tとの間には、可搬式架設階段1(以下、「階段1」という。)が懸架される。プラットホームPと軌道Tとの高低差ΔHは、約1.2〜1.5m(例えば、1.3m)であり、階段1は、水平面に対して所定範囲内の傾斜角θをなして全体的に傾斜する。本例において、傾斜角θは、35〜55度の範囲内、好ましくは、40〜50度の範囲内の範囲内の角度(例えば、43度)に予め設定される。
【0019】
階段1は、左右一対の側桁2と、左右の側桁2によって支持された複数の踏み板(段板)3と、片側の側板2に取付けられた折り畳み可能な手摺り組立体4と、各側桁2の上端部に配置された支承部5と、各側板2の下端部に配置された脚部6とから構成される。本例において、傾斜角θは、水平面に対する側桁2の軸芯の角度である。側桁2、踏み板3、手摺り組立体4、支承部5及び脚部6の主要部は、アルミニウム合金製部材の加工品からなり、樹脂、ゴム等の可撓性弾性部材や、高剛性の鋼製部材又は鋼製部品等が、必要に応じて各部品の適所に配設される。支承部5は、プラットホームPの縁部上面に接地する。脚部6は、軌道Tを構成する左右のレール(軌条)Rの間に配置され、道床Qの採石面等に接地する。図2に示す如く、絶縁カバー(図示せず)を収納可能な頂部開口形容器7が、片側の側桁2に一体的に形成される。絶縁カバーは、作業者等をレールRから絶縁すべく、階段1近傍のレールRを被覆するためものである。
【0020】
踏み板3は、ボルト・ナット組立体31によって左右の側桁2に固定される。図1(A)の部分拡大図に示す如く、踏み板3は、概ね水平な踏み面30が形成されるように側桁2に固定される。本例において踏み面30は、側桁2に対して角度θをなす方向に配向される。
【0021】
手摺り組立体4は、側桁2に支持された複数の支柱40と、支柱40の上端部に連結された手摺り部材41と、手摺り組立体4を構造的に安定させる方杖部材42とから構成される。各支柱40の下端部は、枢軸43によって側桁2に枢動可能又は回動可能に連結される。手摺り部材41は、枢動連結具44によって支柱40の上端部に枢動可能又は回動可能に連結される。方杖部材42の一端は、枢軸45によって支柱40の中間高さ位置(下端部及び上端部の間の所定高さ)に枢動可能又は回動可能に連結される。方杖部材42の他端は、係止具46を有し、係止具46は、手摺り部材41の中央部に突設されたピン47に対して係脱可能に連結される。
【0022】
図3は、手摺り組立体4を折り畳んだ状態で示す階段1の側面図である。係止具46とピン47との係合を解くことにより、手摺り組立体4の構造的安定性を喪失させ、図3に示す如く、手摺り組立体4を折り畳むことができる。係止具46は、手摺り部材41上のピン48に対して係止され、手摺り組立体4は、図3に示す格納位置(折り畳んだ状態)に保持される。
【0023】
図1(A)の部分拡大図に示すように、支承部5は、水平杆50と、水平杆50の下面に取付けられた複数の着座部材51とから構成される。側桁2の上端部には、水平方向に間隔を隔てた複数のボルト孔53が穿設される。水平杆50は、ボルト孔53を貫通するボルト・ナット組立体52によって側桁2の上端部に堅固に固定され、側桁2からプラットホームP側に水平に突出する。弾性着座部材51は、樹脂又はゴム等の弾性部材からなり、プラットホームPの縁部上面に着座する。弾性着座部材51がプラットホームPの縁部上面に着座することにより、側桁2の傾斜角θは実質的に固定され、踏み面30の水平性が確保される。
【0024】
水平杆50は、ボルト・ナット組立体52の弛緩・解放によって側桁2から取り外すことができる。側桁2には、ボルト孔53と異なる高さ位置において水平杆50を側桁2に固定するためのボルト孔54が穿設される。
【0025】
図4(A)は、高低差ΔHよりも小さい高低差ΔH'のプラットホームPに対して階段1を架設した状態を示す側面図である。図4(A)には、最上段の踏み板3の近傍に位置するボルト孔54にボルト・ナット組立体52を挿通して水平杆50を固定した状態が示されている。高低差ΔH'が更に小さい場合には、最上段よりも更に下側の踏み板3の近傍に位置するボルト孔54に対して水平杆50を固定しても良い。
【0026】
図1(A)に示すように、側桁2には、階段1の不使用時に水平杆50を格納位置に保持するためのボルト孔55が更に穿設される。図3に破線で示す如く、水平杆50は、ボルト孔55に挿通したボルト・ナット組立体52によって側桁2と平行に配向され、側桁2に保持される。このような状態では、水平杆50は、側桁2の幅寸法の範囲内に納まるように配置される。
【0027】
図5は、図3に示す格納位置の階段1を積み重ねた状態を示す側面図である。
【0028】
図3に示す如く、手摺り組立体4を折り畳み、ボルト孔55によって水平杆50を保持した格納位置の階段1は、図5に示す如く、上下に積み重ねることができる。側桁2の上端部及び下端部には、階段1の積み重ねを可能にするスペーサ9が一体的に形成される。このような構成によれば、図5に示すように多数の階段1を駅の倉庫、保管庫等にコンパクトに収納し得るので、実用的に極めて有利である。また、このようなコンパクトな収納形態の階段1は、その移送時にも極めて有利である。
【0029】
次に、図1図3及び図4を参照して脚部6の構成について更に説明する。図1(A)の部分拡大図に示すように、脚部6は、側桁2の下端部に固定された保持具60と、保持具60によって側桁2に連結された伸縮杆61と、伸縮杆61の先端部(下端部)に連結された接地部材62とから構成される。伸縮杆61は、例えば、補強用の金属製芯材を内装した角形の金属製管材からなる。保持具60を貫通する螺子又はボルト等の係留具65が、伸縮杆61の螺子孔63に螺入し、伸縮杆61を側桁2に同軸状且つ一体的に連結する。伸縮杆61には、多数の螺子孔63が等間隔に穿設されており、保持具60には、複数の係留具65が螺子孔63と同一の間隔に配設される。係留具65と螺子孔63との相対位置は、プラットホームPと軌道Tとの高低差ΔHに相応して適切に設定される。
【0030】
図3に示す如く、伸縮杆61及び側桁2の全長は、伸縮杆61の伸縮位置に相応して、長さL1〜L2の範囲内で設定変更することができ、係留具65は、伸縮杆61の伸縮位置に相応する螺子孔63に螺入され且つ締付けられる。例えば、プラットホームP及び軌道Tの高低差ΔHが比較的小さい場合、図1(B)に示す如く、伸縮杆61の伸長寸法を短縮し、階段1を高低差ΔHに適応させることができる。長さL1及びL2の差、即ち、伸縮杆61の伸長可能寸法ΔLは、例えば、300〜400mm程度の値に設定される。
【0031】
図1(A)に示す如く、接地部材62は、伸縮杆61の端部を貫通するボルト・ナット組立体64によって伸縮杆61に連結される。ボルト・ナット組立体64の軸部は、接地部材62の枢動可能又は回動可能に支承する。接地部材62は、樹脂又はゴム等の弾性部材からなり、道床Qの採石面等に接地する。所望により、接地部材62の枢動又は回動を利用して、側桁2の傾斜角θを図1(C)に示すように角度θ'に変化させることも可能である。但し、この角度変化は、踏み面30の水平性又は歩行感を大きく損なうことがない範囲のものである。
【0032】
また、比較的大きくカーブした多くの軌道では、道床Qの上面は、図4(B)及び図4(C)に示すように傾斜する。このような軌道においても、接地部材62の枢動によって側桁2の傾斜角θを維持することができる。
【0033】
次に、上記階段1の使用方法について説明する。
【0034】
階段1は、手摺り組立体4を折り畳み、ボルト孔55によって水平杆50を格納位置に保持し、更には、伸縮杆61を引き込んだ状態で、図5に示す如く積み重ねられ、駅の倉庫等に保管される。使用において、作業者等は、この状態の階段1をプラットホームPの使用部位に持ち運び、プラットホームP上で手摺り組立体4を起立させるとともに、高低差Hに相応するように水平杆50を側桁2に固定し且つ伸縮杆61の伸縮位置を設定し、しかる後、図1及び図4に示す如く、接地部材62を道床Qの採石面等に接地させるとともに、支承部5の着座部材51をプラットホームPの縁部上面に着座させる。
【0035】
これらの作業は、プラットホームP上の作業者等によって実施することができるので、作業者等は、予め軌道T上に降りることなく、階段1をプラットホームPに設置することができる。これは、作業の効率、迅速性及び安全性等を考慮すると、極めて有利である。なお、最終的な階段1の微調整等は、必要に応じて、階段1をプラットホームPに設置した後に実施すれば良い。
【0036】
図6は、支承部5と、プラットホームPの縁部上面との位置関係を示す断面図である。
【0037】
図6(A)に示す如く、左右の側桁2に夫々設けられた各水平杆50は、水平杆50の軸線方向に間隔を隔てて配置された少なくとも2つの着座部材51を有する。階段1が所定の傾斜角θで傾斜する場合、2つの着座部材51は、階段1の重量によって均等に圧縮変形した状態でプラットホームPの縁部上面に着座する。しかしながら、プラットホームPの上面の傾斜、勾配又は不陸等や、接地部材62の接地位置の相違等により、プラットホームPの上面に対する階段1の傾斜角度が所定の傾斜角θと相違することがある。
【0038】
図6(B)及び図6(C)に示す如く、プラットホームPの上面に対する階段1の傾斜角度θ1、θ2が所定の傾斜角θと若干相違する場合には、一方の着座部材51が比較的大きく圧縮変形する。このため、2つの着座部材51は、プラットホームPに対する支承部5の着座状態を維持する。他方、図6(D)及び図6(E)に示す如く、プラットホームPの上面に対する階段1の傾斜角度θ3、θ4が所定の傾斜角θと大きく相違する場合、一方の着座部材51がプラットホームPから離間する。しかし、他方の着座部材51が大きく圧縮変形し、プラットホームPに対する支承部5の着座状態を維持する。
【0039】
即ち、各々の水平杆50は、その軸線方向に間隔を隔てて配置された複数の着座部材51を有し、着座部材51の弾力的な変形により全着座部材51がプラットホームPの上面に着座し、或いは、一部の着座部材51がプラットホームPに上面から離間するが、少なくとも一つの着座部材51がプラットホームPに着座した状態を維持することにより、実際の階段1の傾斜角度θ1〜θ4と、所定の傾斜角θとの相違を補償する。
【0040】
図1及び図4には、階段1をプラットホームPに設置した状態が示されている。作業者等は、図1及び図4に示す如く前向き歩行で階段1を昇降し得る。このため、作業者等は、昇降時に工具等を携行した状態であっても、プラットホームP及び軌道Tの間を比較的容易に昇降することができる。しかも、作業者等は、手摺り部材41を手指で掴んだ状態で階段1を昇降歩行し得るので、作業者等の昇降動作の安全性は、かなり向上する。
【0041】
なお、使用後の階段1は、プラットホームP上の作業者等によって、プラットホームP上に持ち上げられる。手摺り組立体4は、格納位置(図3)に折り畳まれ、階段1は、図5に示す如く、積み重ねられ、嵩張ることなくコンパトクトに倉庫、保管庫等に収納される。
【0042】
以上、本発明の好適な実施形態及び実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
【0043】
例えば、本発明の仮設階段は、深夜等に実施される保守・点検作業の際に使用し得るばかりでなく、鉄道の運行中にプラットホームから軌道上に落下した落下物等を回収するための昇降手段としても有効に使用し得る。
【0044】
また、上記実施例では、階段構成要素(側桁、踏み板、手摺り組立体等)の主要部は、アルミニウム合金製部材の加工品からなるものとして説明したが、他の合金製部品や、鋼製部品、或いは、樹脂製部品によって階段構成要素を製作しても良い。
【0045】
更に、上記実施例では、仮設階段の片側のみに手摺り組立体を配設したが、仮設階段の両側に手摺り組立体を配設することも可能である。
【0046】
また、上記実施例においては、支承部は、ボルト・ナット組立体によって取外し可能に側桁に固定されるが、階段の不使用時に格納位置に移動するように支承部を可動式に構成しても良い。
【0047】
更には、階段構成要素の形状、各部構造及び寸法等は、仮設階段の形状及び寸法等に相応して適宜設計変更し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、鉄道のプラットホームと軌道(線路)との間に歩行可能な昇降通路を形成する可搬式仮設階段に適用される。本発明の可搬式仮設階段によれば、鉄道内の上部床を構成するプラットホームと軌道との間の段差部に階段式昇降路を形成し、プラットホーム及び軌道の間における作業者等の昇降移動を容易にするとともに、作業者等の昇降移動の安全性を向上することができるので、実用的に極めて有利である。
【符号の説明】
【0049】
1 可搬式仮設階段
2 側桁
3 踏み板
4 手摺り組立体
5 支承部
6 脚部
7 頂部開口形容器
P プラットホーム
T 軌道
R レール(軌条)
Q 道床
ΔH、ΔH' 高低差
θ 傾斜角
図1
図2
図3
図4
図5
図6