特許第6693750号(P6693750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6693750抵抗器用のブラケット、ブラケット付き抵抗器、および、その製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6693750
(24)【登録日】2020年4月20日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】抵抗器用のブラケット、ブラケット付き抵抗器、および、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01C 1/012 20060101AFI20200427BHJP
   H01C 17/02 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
   H01C1/012
   H01C17/02
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-2661(P2016-2661)
(22)【出願日】2016年1月8日
(65)【公開番号】特開2017-123428(P2017-123428A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2018年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100108394
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 健一
(72)【発明者】
【氏名】荒川 浩
(72)【発明者】
【氏名】北原 正憲
【審査官】 上谷 奈那
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−154591(JP,U)
【文献】 特開平11−195861(JP,A)
【文献】 特開平02−268491(JP,A)
【文献】 特開平08−306514(JP,A)
【文献】 特開昭63−138676(JP,A)
【文献】 実開昭51−014752(JP,U)
【文献】 実開昭62−070487(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 1/012
H01C 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗素子をケース内に収納した抵抗器の外周に取り付ける抵抗器用のブラケットであって、
前記ケースの一面に沿う底面部と、前記底面部から立ち上がりケースの側面に沿い、前記ケースを弾性的に保持する側壁部と、を有し、
前記側壁部は、前記底面部から上方に向けて内側に傾斜する傾斜部と、前記傾斜部の先に外側に向けて広がる折り返し部を有し、
前記傾斜部の高さ方向の寸法は前記ケースの対向する側面の高さ方向の寸法よりも大きくなるように形成され、
前記傾斜部と前記折り返し部との間に形成される屈曲部に前記ケース上面の縁辺が当接することを特徴とする抵抗器用のブラケット。
【請求項2】
前記ブラケットの前記屈曲部は下端に前記ケース上面の縁辺が当接し、前記折り返し部は上から前記ケースを押さえつけることを特徴とする請求項1に記載の抵抗器用のブラケット。
【請求項3】
前記折り返し部先端の開口幅は、前記ケースの前記ブラケットへの挿入を許容する幅以上である請求項に記載の抵抗器用のブラケット。
【請求項4】
前記屈曲部は、前記側壁部の内面から内側に突出した形状である請求項に記載の抵抗器用のブラケット。
【請求項5】
前記側壁部は、前記傾斜部と前記ケースの側面との間に隙間を有する請求項1からまでのいずれか1項に記載の抵抗器用のブラケット。
【請求項6】
前記側壁部は、対向する双方がともに、前記底面部から上方に向けて内側に傾斜する傾斜部を有する請求項1からまでのいずれか1項に記載の抵抗器用のブラケット。
【請求項7】
抵抗素子をケース内に収納した抵抗器と、前記抵抗器の外周に取り付けられる抵抗器用のブラケットとを有し、
前記ブラケットは、前記ケースの一面に沿う底面部と、前記底面部から立ち上がり前記ケースの側面に沿い、前記ケースを弾性的に保持する側壁部と、により形成され、
前記側壁部は、前記底面部から上方に向けて内側に傾斜する傾斜部と、前記傾斜部の先に外側に向けて広がる折り返し部を有し、
前記傾斜部の高さ方向の寸法は前記ケースの対向する側面の高さ方向の寸法よりも大きくなるように形成され、
前記傾斜部と前記折り返し部との間に形成される屈曲部に前記ケース上面の縁辺が当接することを特徴とする抵抗器。
【請求項8】
抵抗素子をケース内に収納した抵抗器に、抵抗器用のブラケットを外周から取り付けたブラケット付き抵抗器の製造方法であって、
金属板を加工して、前記ケースの一面に沿う底面部と、前記底面部から立ち上がり前記ケースの側面に沿い、前記ケースを弾性的に保持する側壁部と、を形成する工程であって、前記側壁部に、前記底面部から上方に向けて内側に傾斜し、高さ方向の寸法が前記ケースの対向する側面の高さ方向の寸法よりも大きくなるように形成された傾斜部と、前記傾斜部の先において外側に向けて広がる折り返し部とを形成する工程と、
前記抵抗器を、前記ブラケット内に前記折り返し部の先端から前記底面部が前記ケースの一面に接し前記傾斜部と前記折り返し部との間に形成される屈曲部が前記ケースの上端縁に当接する位置まで前記抵抗器を前記ブラケット内に押し込む工程と、
を有することを特徴とするブラケット付き抵抗器の製造方法。
【請求項9】
抵抗素子をケース内に収納した抵抗器に、抵抗器用のブラケットを外周から取り付けたブラケット付き抵抗器の製造方法であって、
金属板を加工して、前記ケースの一面に沿う底面部と、前記底面部から立ち上がり前記ケースの側面に沿う側壁部と、を形成する工程と、
前記ブラケット内に前記抵抗器を入れ、前記ケース内の底面に前記底面部を接した状態で、前記ケースの側面に沿うように配置された前記側壁部を外側から押しつけることにより、前記側壁部が前記ケースの上面の縁辺に当接することで折り曲げられる折り返し部を形成して、前記抵抗器と前記ブラケットとを固定する工程と、
を有することを特徴とするブラケット付き抵抗器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗器用のブラケット等に関する。
【背景技術】
【0002】
ケース内に抵抗体を収納した抵抗器は、例えば自動車のエンジンルーム内の回路基板に取り付けて用いる。その際には、回路基板へのネジ止めにより実装するために、ケースの下面と側面の一部を覆う取り付け金具(以下、「ブラケット」)を装着して固定する。
このような振動の激しい条件下において使用されるため、振動に対して確実に抵抗器を固定できるブラケットが求められている。
特許文献1には、抵抗体をセラミックケースに設けた凹部内に収納して絶縁材料で封止し、セラミックケースの外周に保護ケースを取り付けた抵抗器が記載されている。保護ケースは少なくともセラミックケースの上面を覆い、一方の側板部に形成された舌片状の弾発爪がセラミックケースの一方の側壁を押圧して他方の側壁を他方の側板部に押し付けて固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−162701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の保護ケース(ブラケット)は、ケースを確実に固着するために側板部の一部を舌片状に切欠いて弾発爪を形成する。
しかしながら、このような構造は、保護ケースの製造工程が増えるために望ましくなく、ケースへの装着がより簡単なブラケットが求められている。
また、保護ケースの4本の爪をセラミックケースの底面側に折り曲げることで固定すると、ケースの外寸のばらつきにより、爪の折り曲げによってケースが損傷するおそれがある。
本発明は、簡単な構造で安定した固定が可能な抵抗器用のブラケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によれば、抵抗素子をケース内に収納した抵抗器の外周に取り付ける抵抗器用のブラケットであって、前記ケースの一面に沿う底面部と、前記底面部から立ち上がり前記ケースの側面に沿う側壁部と、を有し、前記側壁部は、前記底面部から上方に向けて内側に傾斜する傾斜部を有することを特徴とする抵抗器用のブラケットが提供される。
【0006】
前記側壁部は、前記抵抗器を側面から弾性的に保持するクリップ形状としたことで、基板への取り付けを行うためのブラケットを簡単に装着できる。
前記側壁部は、前記傾斜部の先に外側に向けて広がる折り返し部を有することを特徴とする。
前記折り返し部先端の開口幅は、前記ケースの前記ブラケットへの挿入を許容する幅以上である。
前記傾斜部と前記折り返し部との間に形成される屈曲部に、前記ケース上面の縁辺が当接することで、垂直方向の固定が強固となる。
前記屈曲部は、前記側壁部の内面から内側に突出した形状であると良い。
前記側壁部は、前記傾斜部と前記ケースの側面との間に隙間を有するようにすると良い。
前記側壁部は、対向する双方がともに、前記底面部から上方に向けて内側に傾斜する傾斜部を有するようにすると良い。傾斜部を有する対向する両側の側壁部により、クリップ形状となる。
【0007】
また、本発明は、抵抗素子をケース内に収納した抵抗器と、前記抵抗器の外周に取り付けられる抵抗器用のブラケットとを有し、前記ブラケットは、前記ケースの一面に沿う底面部と、前記底面部から立ち上がり前記ケースの側面に沿う側壁部と、により形成され、前記側壁部は、前記底面部から上方に向けて内側に傾斜する傾斜部を有することを特徴とする抵抗器である。
【0008】
また、本発明は、抵抗素子をケース内に収納した抵抗器に、抵抗器用のブラケットを外周から取り付けたブラケット付き抵抗器の製造方法であって、金属板を加工して、前記ケースの一面に沿う底面部と、前記底面部から立ち上がり前記ケースの側面に沿う側壁部と、を形成する工程であって、前記側壁部に、前記底面部から上方に向けて内側に傾斜する傾斜部と、前記傾斜部の先において外側に向けて広がる折り返し部とを形成する工程と、前記抵抗器を、前記ブラケット内に前記折り返し部の先端から前記底面部が前記ケースの一面に接し前記傾斜部と前記折り返し部との間に形成される屈曲部が前記ケースの上端縁に当接する位置まで前記抵抗器を前記ブラケット内に押し込む工程と、を有することを特徴とするブラケット付き抵抗器の製造方法である。
【0009】
また、本発明は、抵抗素子をケース内に収納した抵抗器に、抵抗器用のブラケットを外周から取り付けたブラケット付き抵抗器の製造方法であって、金属板を加工して、前記ケースの一面に沿う底面部と、前記底面部から立ち上がり前記ケースの側面に沿う側壁部と、を形成する工程と、前記ブラケット内に前記抵抗器を入れ、前記ケースの底面に前記底面部を接した状態で、前記ケースの側面に沿うように配置された前記側壁部を外側から押しつけることにより、前記側壁部が前記ケースの上面の縁辺に当接することで折り曲げられる折り返し部を形成して、前記抵抗器と前記ブラケットとを固定する工程と、を有することを特徴とするブラケット付き抵抗器の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回路基板等に抵抗器を取り付ける際に、簡単な構造で安定した固定が可能となるブラケットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施の形態による、抵抗器を回路基板等に取り付けるための取り付け金具であるブラケットの一構成例を示す斜視図である。
図2図1に示すブラケットにより固定される抵抗器の一構成例を示す斜視図である。
図3】ブラケットを形成するための金属板を示す図である。
図4図4(a)は、ブラケットにより抵抗器を固定したブラケット付き抵抗器の一構成例を示す側面図である。図4(b)は、図4(a)のA方向から見た側面図である。
図5図5(a)は、ブラケットにより抵抗器を固定したブラケット付き抵抗器の一構成例を示す平面図である。図5(b)は、ブラケットにより抵抗器を固定したブラケット付き抵抗器の別の構成例を示す側面図である。
図6】ブラケットにケースを有する抵抗器を嵌め込む工程例を示す図である。
図7】本発明の第2の実施の形態による抵抗器を回路基板等に取り付けるための取り付け金具であるブラケットの一構成例を示す側面図である。
図8図7(c)のB−B’線に沿った断面図である。封止材料は省略している。
図9】本発明の第3の実施の形態による抵抗器を回路基板等に取り付けるための取り付け金具であるブラケットによる抵抗器の固定構造の一構成例を示す側面図である。
図10図10(a)は、本発明の第4の実施の形態による抵抗器を回路基板等に取り付けるための取り付け金具であるブラケットによる抵抗器の固定構造の一構成例を示す側面図である。図10(b)は、図10(a)の構造をC方向から見た側面図である。
図11図11(a)、(b)は、本発明の第5の実施の形態による抵抗器を回路基板等に取り付けるための取り付け金具であるブラケットによる抵抗器の固定構造の一構成例を示す側面図および平面図である。
図12】本発明の第6の実施の形態による抵抗器を回路基板等に取り付けるための取り付け金具であるブラケットによる抵抗器の固定構造の一構成例を示す側面図であり、図4(b)に対応する図である。
図13図13(a)は、本発明の第7の実施の形態による抵抗器を回路基板等に取り付けるための取り付け金具であるブラケットによる抵抗器の固定構造の一構成例を示す側面図であり、図4(b)に対応する図である。図13(b)は、折り返し部が、複数回折り返したジグザグ形状を有する図である。
図14】本発明の第8の実施の形態によるブラケット付き抵抗器の製造工程の一例を示すフローチャート図である。
図15】ブラケットの製造工程の一例を示すフローチャート図である。
図16】ブラケットの製造工程の一例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態による、抵抗器を回路基板等に取り付けるための取り付け金具であるブラケットの一構成例を示す斜視図である。図2は、図1に示すブラケットにより固定される抵抗器の一構成例を示す斜視図である。図4図5(a)は、ブラケットにより抵抗器を固定したブラケット付き抵抗器の一構成例を示す側面図および平面図である。
【0013】
図2に示すように、抵抗器31は、大まかには、抵抗体本体32と、例えば上面に開口43を有するケース33とからなる。ケース33は、例えばセラミックス等の絶縁体からなる直方体形状の筺体であり、その四方を囲むように形成された側面35と底面39とを有している。そして、ケース33には、抵抗素子(抵抗体本体)32を収納する凹部が形成されている。ここで、凹部を形成している開口した面を上面(開口部43)、上面に対向する面(後述するブラケットの底面部に接する面)を下面(底面)という。ケース33の材料としては、セラミックス製のケースのほか、樹脂製のケースを用いることもできる。ケース33の上面には開口部43と縁辺45とが形成されている。
【0014】
抵抗体本体32は、例えば円柱状絶縁体の外周に抵抗線を巻き付け、両端に金属製のキャップを嵌合した巻線抵抗素子や、円柱状絶縁体の外周に抵抗皮膜を被覆し、両端に金属製のキャップを嵌合した皮膜抵抗素子等を使用することができる。抵抗体32をケース33内に収納し、シリコン等の絶縁材料により封止している。
抵抗器31は、例えば、一面に開口部43を有する箱型のケース33内に抵抗体本体(抵抗素子)32を収納し、ケース33内に絶縁材(図示せず)を充填することで、端子板37の一部を開口部43からケース33の上方に突出させた状態で埋設するようになっている。
【0015】
図1図4および図5(a)に示すように、ブラケット1は、例えば、薄肉の金属板の底面部3と、底面部3から立ち上がる側壁部5a、5b、7a〜7dと、例えば底面部3側から延びて、回路基板等に取り付けるための取り付け孔13a、13bを有する取り付け部11a、11bとを有する。なお、本発明の実施の形態においては取り付け部を2箇所形成しているが、取り付け部は1箇所でも良い。すなわち、取り付け部の数や位置は限定されない。
【0016】
側壁部5a、5b、7a〜7dは、図2に示すケース33の対向する側面の高さ方向の寸法よりも、側壁部5a、5b、7a〜7dの高さ方向の寸法の方が大きくなるように形成されている。側壁部5a、5b、7a〜7dのうち少なくとも一の側壁部は、内側に傾斜した、例えば、側壁部5bに対する傾斜部5b−1、側壁部7cに対する7c−1と、外側に広がる(傾斜した)折り返し部5b−3、7c−3を有する。図4(a)、図5(b)の構成例では、側壁部5aも同様の構成を有する。折り返し部は、傾斜部(内側に傾斜する)と傾斜方向が異なる第2の傾斜部(外側に傾斜する)と呼ぶこともできる。
金属板としては、例えば、冷間圧延鋼板(SPCC、SPCE等)、ステンレス板などを用いることができる。
【0017】
傾斜部5b−1、7c−1と折り返し部5b−3、7c−3とは、例えば金属板を折り曲げて形成されており、この折り曲げ部分である屈曲部5b−2、7c−2がケース上面に当接することによりケースを固定する。
すべての側壁部が傾斜部等を有していても良く、一部の側壁部のみが、傾斜部等を有しても良い。
【0018】
ブラケット1は、例えば金属板をプレス加工して形成することができる。図3は、ブラケット1を形成するための金属板2を示している。図3(a)に示す平板状の金属板2を破線L1に沿って加工により切り落とし、図3(b)に示すような形状に加工する。この際、取り付け孔13a、13bも形成することができる。図3(b)に示す形状に加工した後、プレス加工などにより、破線L2に沿って折り曲げることで、側壁部5a、5b、7a〜7dのいずれか一を、例えば図4(a)、(b)に示すように折り曲げる。
これにより、図1図4等に示すようなブラケット1を形成することができる。
【0019】
図1等に示すように、ブラケット1は、例えば側壁部5a−底面部3−側壁部5b等のように対向する側壁部間において略コの字状に折り曲げられたクリップ形状を有している。そして、その内部にケースを収容するケース収容部15を形成する。
【0020】
図4(a)に示すように、例えば側壁部5b−1とケース33の側面の間に隙間51を設ける。これにより、傾斜部5b−1の傾きが大きくなるため、バネ性が増す。また、隙間51をもたせることで、回路基板上に部品を実装した時に、周囲の電子部品への温度上昇による熱的影響を抑えることができる。
図4(b)に示すように、側壁部7c、7dにも同様に隙間を設けている。折り返し部7c−3は、傾斜部7c−1の内側への傾斜によって狭くなった開口を広くして、ケース33の挿入を容易にする。先端の開口幅は、例えば、ケースの幅よりも広くすることが好ましい。これにより、傾斜部が存在しても、ケース33のブラケット1への挿入を許容することができる。折り返し部7c−3は、さらに、ケース33をブラケット1内に収容した場合に、上からケースを保持する機能を併せ持つ。他方側の側壁部も同様である。
【0021】
図6は、ブラケット1にケース33を有する抵抗器31を嵌め込む工程例を示す図である。
抵抗素子を内部に収納した端子板37付きのケース33を、図1に示す加工済みのブラケット1の対向する側壁部(向かい合う折り返し部の間)、例えば、図6(a)では側壁部7c、7d間の隙間(ケース収容部15)に向けて、先端に向けて幅を広げた折り返し部7d−3間にケース33を挿入し、上部から側壁部7c、7dの先端部に当接させながら押し付けると、図6(b)に示すようにブラケット1の側壁部7c、7dがバネ性をもって広がり、図6(c)に示すように、ケース33をブラケット1内に収容する。ケース33の側面が屈曲部7d−2を越えると、側壁部7c、7d間の間隔が弾性的に狭くなり、ケース33側面を側壁部7c、7d間が両側から弾性的に挟持する。
【0022】
このように、ブラケット1の側壁部7c、7dに弾性をもたせることにより、ブラケット1に単にケース33の底面を押しつけ続けることでブラケット1内にケース33を固定することができる。
従って、ブラケット1のケース33への装着と固定が同一工程にて簡単にできるとともに、装着後にはケース33のブラケット1内での水平方向への移動が制限され、ケース33にブラケット1を強固に安定して固定することができる。従って、組み立ての自動化が容易である。
さらに、抵抗器31をエンジンルーム内などに取り付けた場合における振動等の衝撃によるケース33の脱落を防止することができる。また、ブラケット1の側壁部7c、7dがある程度まで広がるため、ブラケット1をケース33に装着する際にケース33の外寸のばらつきをある程度、許容することができる。
【0023】
図6(d)に示すように、ブラケット1の底面部3にケース33の底面39があたると、それ以上はケース33を押し込めなくなる。このとき、側壁部7c、7dの傾斜部7c−1、7d−1と折り返し部7c−3、7d−3の境界である屈曲部7c−2、7d−2にケース33の上面の縁辺が当接するように、ブラケット1の加工寸法を決めている。
【0024】
図6の例では、ブラケット1の側壁部7c、7dは、内側に傾斜した傾斜部7c−1、7d−1と、外側に向けて広がる折り返し部7c−3、7d−3とを有する。そして、傾斜部7c−1、7d−1と折り返し部7c−3、7d−3の境界にあたる折り曲げ部分である屈曲部7c−2、7d−2が形成される。ケース33にブラケット1を装着すると、屈曲部7c−2、7d−2がケース上面の縁辺45に当接するようになっている。これにより、上記のケース33とブラケット1との水平方向の移動を制限できるのみならず、垂直方向の移動も制限することができるため、ケース33をブラケット1に確実に固定することができる。
【0025】
また、ブラケット1はケース33を弾性的に保持する構造であるため、振動や温度変化等があっても、それらに起因する寸法の変化を吸収することができ、ブラケット1によるケース33の保持をより確実なものとすることができる。
【0026】
以上に説明したように、本発明の第1の実施の形態によれば、ケースへのブラケットの装着が簡単になるとともに、ブラケットを強固に安定してケースに固定することができる。また、ブラケット装着の際のケースの外寸のばらつきを許容できるという利点がある。
尚、ブラケットの底面部は、ケースの底面に沿う形状を例にして説明したが、ケースの側面に沿う形状でも良く、ケースの形状と端子板の配置に応じて、ブラケットの配置、形状を変更しても良い。
【0027】
例えば、図5(b)は、図5(a)とは異なり、ブラケット1の底面部3をケース33の一側面に沿うように配置した構成例を示す側面図である。図5(b)の配置例では、ブラケット1の側面から、ケース33の開口部43aとケース上面の縁辺45aとが見えている。このように、利用する目的や形態により、ブラケット1の取り付け後の、ブラケット1とケース33およびその端子板37との位置関係を適宜変更することができる。
【0028】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図7は、本発明の第2の実施の形態による抵抗器を回路基板等に取り付けるための取り付け金具であるブラケットの一構成例を示す側面図である。図8は、図7(c)のB−B’線に沿った断面図である。
【0029】
図7図8に示す構造では、図7(a)に示すように、傾斜部等が形成される前のブラケット1の底面部3から直立する側壁部5bを、図7(b)に示すようにケース33の側面に、外側から強く押しつけることにより、図7(c)に示すように、屈曲部5b−2が形成されるとともに、例えば、内側に突出した突出部5b−4を形成することもできる。この突出部5b−4は、屈曲部5b−2を形成する際に、さらに内側に押すことで、ケース33の上面の縁辺45に屈曲部5b−2が当たり続けることで形成される。従って、縁辺45に対して自己整合的に突出部5d−4を形成することができるため、加工工程が簡単になる。なお、突出部5d−4は、図3(b)の形状に金属板を加工する段階で、屈曲部5b−2にあたる箇所を破線L2に沿って外側から強く押し込むことによっても形成することができる。
また、固定後は、図8のように突出部7d−4が縁辺45に当接した状態が保持されるため、ブラケット1内でのケース33の垂直方向への移動を制限する。
【0030】
以上に説明したように、本発明の第2の実施の形態によれば、ブラケットの装着が簡単になるとともに、突出部を形成することにより、垂直方向にも、より一層強固に安定してケースをブラケットに固定することができる。
【0031】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図9は、本発明の第3の実施の形態による抵抗器を回路基板等に取り付けるための取り付け金具であるブラケットによる抵抗器の固定構造の一構成例を示す側面図である。
図9は、図7(c)と基本的には同様の構成を有している。異なる点は、図9に示す構造では、傾斜部5b−1に続く突出部5b−5を、傾斜部5b−1とは別部材により形成した点である。ここでは、突出部5b−5を側壁部(傾斜部)5b−1の先端部に別部材を固着により形成した例を示す。突出部5b−5の材料も、冷間圧延鋼板(SPCC、SPCE等)、ステンレス板などを用いることができる。この例では、ブラケット1の材料と突出部の材料を同じ材料としても良く、別の材料としても良い。
本実施の形態においても、突出部を形成することにより、垂直方向にも、より一層強固に安定してケースをブラケットに固定することができる。さらに、突出部を別部材により形成することで、突出部を折り曲げて形成するよりも突出部の形状をより自由に設計することができる。
【0032】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
図10(a)は、本発明の第4の実施の形態による抵抗器を回路基板等に取り付けるための取り付け金具であるブラケットによる抵抗器の固定構造の一構成例を示す側面図である。図10(b)は、図10(a)の構造をC方向から見た側面図である。
本実施の形態によるブラケット1は、取り付け部11c、11dを、ケース33の短辺方向に形成している。より詳細には、取り付け部11c、11dを、側壁部5b、5d間に設けている。このように、取り付け部11c、11dの位置を、任意に配置することができる。
尚、図10の構成では、側壁部5b、5d間の隙間に、取り付け部11dを隙間と同じ幅で形成しているため、側壁部と取り付け部とを形成する際に、単に、切り込みを入れるだけで良く、加工時の金属の無駄を極力減らすことができる。
【0033】
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。
図11(a)、(b)は、本発明の第5の実施の形態による抵抗器を回路基板等に取り付けるための取り付け金具であるブラケットによる抵抗器の固定構造の一構成例を示す側面図である。図11(a)は側面図、図11(b)は平面図である。ケース33の角部を、側壁部5b、7h、7gのように、4隅の角部においてケース33を囲むことで、ケース33を角部において、ケースの水平方向への移動を制限する。これにより、ケースの固定がより強固になる。さらに、図11(a)に示すように、端子板37とブラケット側壁部7e、7fの絶縁のために、例えば2mm以上の間隔を開けている。このような間隔を設ける理由は、抵抗素子の端子は高電流が流れているため、近くに導電物があると電流とびを起こす恐れがあるためである。
本実施の形態によれば、ケース33の角部を側壁部により囲むことでケース33を角部で固定することができるため、水平方向の移動を制限し、より強固な固定を実現することができる。特に、ケースを4隅の角部で固定すれば、より一層強固に固定することができる。
【0034】
(第6の実施の形態)
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。
図12は、本発明の第6の実施の形態による抵抗器を回路基板等に取り付けるための取り付け金具であるブラケットによる抵抗器の固定構造の一構成例を示す側面図および平面図であり、図4(b)に対応する図である。
図12に示す構造では、対向する2つの側壁部のうち、一方側の側壁部5bにのみ、傾斜部5b−1、屈曲部5b−2、折り返し部5b−3を形成し、他方側の側壁部5aには傾斜部を設けていない。尚、垂直方向への移動を制限するため、他方側の略垂直に折り曲げた方の側壁部5aには、ケース33の縁辺45の上に位置する突出部5fを設けると良い。このように、本実施の形態によれば、対向する2つの側壁部のうち一方のみに傾斜部を形成するだけで、より簡単な構造で、ケースを固定することができる。
【0035】
(第7の実施の形態)
次に、本発明の第7の実施の形態について説明する。
図13(a)は、本発明の第7の実施の形態による抵抗器を回路基板等に取り付けるための取り付け金具であるブラケットによる抵抗器の固定構造の一構成例を示す側面図であり、図4(b)に対応する図である。
図13(a)に示す構造では、ブラケット1の折り返し部の構造を変更している。すなわち、図13(a)に示す構造では、折り返し部5gを、図4(b)よりも、より外側に広がるように形成している。折り返し部5gは外側に広がるほどブラケットの弾力性は強くなるため、図13(a)の構成においては、より強い弾性力で、ケース33を保持することができる。さらに、折り返し部5gにおいて丸みを帯びさせると、底面からの高さがあまり高くならないように高さを抑制することができる。
また、図13(b)においては、折り返し部5hが、複数回折り返したジグザグ形状を有している。そして、折り返し部5hは、全体として、内側に傾斜するが、開口部では外側に傾斜して開口幅を広くしている。図13(b)の構成においては、ブラケット1内に一旦収容したケース33の抜けの防止効果を高めることができるという利点がある。
【0036】
(第8の実施の形態)
次に、本発明の第8の実施の形態について説明する。図14は、本発明の実施の形態によるブラケット付き抵抗器の製造工程の一例を示すフローチャート図である。
まず、ステップS1からステップS3の工程により抵抗体本体を製造する。
ステップS1において、ガラス繊維を束ねて長尺の棒状に形成した芯材の外周に抵抗線(NiCr線等)を所定のピッチで巻き付ける。抵抗線を巻き付けた後には、長尺の状態であるため、ステップS2において、個片に切断を行う。ステップS3において、例えば芯材の両端に板状端子37が一体となった金属製のキャップを嵌合(装着)し、抵抗素子(抵抗体本体32)を作製する(図2参照)。
【0037】
次いで、抵抗器31の組立工程を行う。
ステップS4において、セラミックス等の絶縁性ケース33の開口部43から、ケース33内部に液状の絶縁材料を充填する(ステップS4)。ステップS3で作製した抵抗素子(抵抗器本体32)を、ケース33の開口部43から板状端子37、37が外部へ突出するようにケース33内に挿入する(ステップS5)。その後、乾燥・焼付けを行なってから(ステップS6)、ケース表面にレーザーによる定格等の表示を行なう(ステップS7)。
ステップS8の工程において、抵抗値検測や外観等の検査を行なう。
ステップS8の検査工程において合格となった部品に対して、図6に示すようにしてブラケット1を装着する(ステップS9)ことで、組み立て工程を終了する。尚、ブラケット1の装着は、ケース33の底面(下面)39とブラケット1の底面部3とが接するようにブラケット1の上部からケース33を押し付けて装着する。
【0038】
抵抗素子の一例として巻線抵抗素子が挙げられるが、酸化金属皮膜抵抗素子を使用することも可能である。また、ブラケットは、プレス加工によって形成することができるが、その際に、側壁部を折り曲げることにより傾斜部、折り返し部を形成することができる。
【0039】
図15および図16は、ブラケットの製造工程の例を示す図である。図15に示す工程は、ケースを収容する前に、予めブラケットに折り返し部を形成する工程を用いる例である(図4図6等参照)。
図15に示すように、ステップS11において処理を開始し(Start)、ステップS12において、ブラケットを加工する(図3参照、切断(図3(a)、折り返す(図3(b))ことで折り返し部を形成し、図1図4等に示す構造を形成する。
【0040】
次いで、ステップS13において、抵抗器31にブラケット1を装着する(図6参照)。ステップS14において、ブラケット1の側壁部の屈曲部が、ケース33の上面の縁辺45に当接するため固定される(ステップS15、End)。
【0041】
上記の工程により、例えば図3に示すような金属板を、予め、切断、加工して、図1に示すような形状をもつ、すなわち、傾斜部と折り返し部とを有するブラケットを作成し、図6に示すように、ブラケットにケースを収容するようにブラケットの上方からケースを近づけていくことで、図4に示すように、簡単にケースをブラケットにより固定して、ブラケットの取り付け部を用いた抵抗器の基板への装着(固定)を行うことができる。
【0042】
図16に示す工程は、ケース収容時に、ブラケットに折り返し部を形成する工程を用いる例である(図7参照)。
図16に示すように、ステップS21において処理を開始し(Start)、ステップS22において、抵抗器31をまだ折り返し部が形成されていないブラケット1に装着する。
次いで、ステップS23において、ブラケットの側壁部をブラケットの縁辺に当接させて内側に押し込むことで、折り返し部を形成し、抵抗器31をブラケット1に固定し、処理を終了する(ステップS24、End)。
【0043】
図16に示す工程は、図15に示す工程とは異なり、ケースをブラケットに嵌め込む前に折り返し部を形成しておくのではなく、ケースをブラケット内に収容した後に、ケースの上面の縁辺の形状を利用して折り返し部を形成するため、工程がより簡単になるとともに、ブラケットのケースに対する垂直方向の位置合わせが自動的にできる。なお、ブラケットをプレス加工する際に、屈曲部に沿って溝を形成しておくと、溝の部分で折り返しやすいため、折り返し部を容易に形成することができる。従って、ケースやブラケットの寸法のばらつき等を吸収して安定したブラケットとケースの固定構造を実現することができる。
以上において、抵抗器として巻線抵抗素子を一例として説明したが、酸化金属皮膜抵抗素子を使用することも可能である。
【0044】
上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0045】
例えば、本実施の形態では、ケースの底面に沿って、ブラケットの底面部を配置する構成としたが、ケースの上面に沿ってブラケットの底面部を配置しても良い。その他、ケースの形状や端子板の位置等に応じて、適宜、設計変更を行うことができる。
また、折り返し部を、ケースを挿入する前に形成する側壁部とケースに挿入した後に形成する側壁部とを、1つのブラケットで併用するようにしても良い。例えば、対向する一対の側壁部は前者とし、他方の対向する一対の側壁部を後者のようにしても良い。
【0046】
本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、簡単な構造で安定した固定が可能な抵抗器を提供する。
【符号の説明】
【0048】
1…ブラケット
3…底面部
5a、5b、7a〜7d…側壁部
5b−1、7a〜7d−1…傾斜部
5b−2、7a〜7d−2…屈曲部
7c−3、7d−3…折り返し部
11a、11b…取り付け部
13a、13b…取り付け孔
15…ケース収容部
31…抵抗器
32…抵抗体本体(抵抗素子)
33…ケース
37…端子板
43…開口部
45…ケース上面の縁辺
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
図16