特許第6693776号(P6693776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6693776コークス炉における煉瓦モジュール取込装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6693776
(24)【登録日】2020年4月20日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】コークス炉における煉瓦モジュール取込装置
(51)【国際特許分類】
   C10B 29/06 20060101AFI20200427BHJP
【FI】
   C10B29/06
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-47474(P2016-47474)
(22)【出願日】2016年3月10日
(65)【公開番号】特開2017-160364(P2017-160364A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2019年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000178011
【氏名又は名称】山九株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】小森 健二郎
(72)【発明者】
【氏名】三枝 純己
(72)【発明者】
【氏名】本山 太一
【審査官】 上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−137444(JP,A)
【文献】 特開2001−019969(JP,A)
【文献】 特開2015−010145(JP,A)
【文献】 特開2017−137446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 29/02、29/06
F16D 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉補修において煉瓦モジュールをコークス炉に対して取り込んで積み替えるための煉瓦モジュール取込装置であって、
前記コークス炉の所定位置に架設された架台と、前記架台上に炉団長方向に沿って敷設されたガイドレールと、前記ガイドレールに支持されて炉団長方向に沿って移動可能なトロリーとを備え、
前記トロリーにより前記煉瓦モジュールを昇降可能に吊下することを特徴とするコークス炉における煉瓦モジュール取込装置。
【請求項2】
前記架台は、前記コークス炉の炉上に設置されることを特徴とする請求項1に記載のコークス炉における煉瓦モジュール取込装置。
【請求項3】
炉団長方向と直交方向に前記コークス炉の外方へ延出する補助ガイドレールを有し、前記トロリーが前記補助ガイドレールの下側で炉団長方向と直交方向に沿って移動可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコークス炉における煉瓦モジュール取込装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉の熱間補修においてPS(Pusher Side;押出機のある側)及びCS(Coke Side;ガイド車のある側)の窯口煉瓦モジュールを効率的に取込可能とする取込装置関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉において窯口煉瓦積替を行なう場合、新品の煉瓦モジュールを積み重ねる方法がある。特に炉の稼動を止めずに行なう熱間補修(それぞれ燃焼室及び炭化室を含む連続した複数窯の稼動を停止しその窯口煉瓦を取り替える作業)では、小さな煉瓦を積み重ねるよりも補修時間の短縮に効果があり望ましいとされる。この場合、コークス炉の稼働中に煉瓦モジュールを取り込む際、炉上の装入車や、PSにあっては押出機、CSにあってはガイド車の移動を妨げないようにする必要がある。
【0003】
例えば特許文献1に記載のコークス炉への煉瓦取込装置では、天井吊り金物に固定された炉内ビーム、及び炉外ビームとからなるビームを設け、炉外ビームは格納式とし、ガイド車等が通過する際に干渉しないようにする。炉内ビーム及び炉外ビームに添って移動し吊り荷を昇降させる吊り装置と、該吊り装置から吊下した煉瓦挟持装置により外部から煉瓦モジュールを積み重ねるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−19969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る装置では、最も傷み易いとされる窯口炉頂部及びその直下の煉瓦を取り替えることができない。つまり、窯口全ての煉瓦を取り替え得るように対応しておらず、即ち補修対象が部分的なものとなっている。また、基本的に1窯の補修を行なう方法である。
【0006】
本発明はかかる実情に鑑み、有効且つ効率的に熱間補修を実施可能とするコークス炉における煉瓦モジュール取込装置及び取込方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による煉瓦モジュール取込装置は、コークス炉補修において煉瓦モジュールを前記コークス炉に対して取り込んで積み替えるための煉瓦モジュール取込装置であって、前記コークス炉の所定位置に架設された架台と、前記架台上に炉団長方向に沿って敷設されたガイドレールと、前記ガイドレールに支持されて炉団長方向に沿って移動可能なトロリーとを備え、前記トロリーにより前記煉瓦モジュールを昇降可能に吊下することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の煉瓦モジュール取込装置において、前記架台は、前記コークス炉の炉上に設置されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の煉瓦モジュール取込装置において、炉団長方向と直交方向に前記コークス炉の外方へ延出する補助ガイドレールを有し、前記トロリーが前記補助ガイドレールの下側で炉団長方向と直交方向に沿って移動可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、煉瓦モジュールをガイドレールに吊下して移動させる煉瓦モジュール取込装置を備え、この煉瓦モジュール取込装置をコークス炉の所定位置に設置し、煉瓦モジュールの搬入及び積み上げを行なう。これにより有効且つ効率的にコークス炉の熱間補修を実施することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るコークス炉の構造例を示す破断斜視図である。
図2】本発明の実施形態における窯口煉瓦積替の作業内容を概略的に示す図である。
図3A】本発明の実施形態におけるCSの煉瓦モジュール取込装置の構成例を示す側面図である。
図3B】本発明の実施形態におけるCSの煉瓦モジュール取込装置の構成例を示す正面図である。
図4】煉瓦モジュール取込装置の断面を示す図である。
図5】本発明の実施形態における移動式クレーンによる煉瓦モジュールの搬送時の様子を示す平面図である。
図6A】本発明の実施形態におけるPSの煉瓦モジュール取込装置の構成例を示す正面図である。
図6B】本発明の実施形態におけるPSの煉瓦モジュール取込装置の構成例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき、本発明によるコークス炉における煉瓦モジュール取込装置及び取込方法における好適な実施の形態を説明する。
図1はコークス炉の構造例を示す破断斜視図である。コークス炉100は蓄熱室101の上部に炭化室102と燃焼室103が交互に並べられ(図1、矢印Y方向)、炉団をなしている。炭化室102は、石炭を蒸し焼きにしてコークスを作る部屋である。燃焼室103は、燃料ガスを燃焼させる部屋であり、煉瓦から構築される。コークス炉は基本的に煉瓦製であり、多数の煉瓦を積み重ねて構成される。
【0014】
各炭化室102は十数メートル程度の奥行き(図1、矢印X方向)を持ち、コークス原料である配合、粉砕された石炭が投入される。燃焼室103の奥行き方向Xの両端部には図2において略記するが、補強構造体(支柱)であるバックステー104(104A)が煉瓦を積み重ねて形成された燃焼室103をPSとCSの両側から挟みこんだ状態で略同一高さで立設される。炉団のPSには押出機が配備され、CSにはガイド車等の付帯設備あるいは装置が設置される。また、炉団のPS及びCSには炉団長方向Yに沿ってプラットホーム105が設けられる。CSのプラットホームにはガイド車が走行する軌条が設置されている。
【0015】
図2は、本発明の実施形態における窯口煉瓦積替の作業内容を概略的に示している。PS及びCSそれぞれにコークス炉100の煉瓦積替エリア106が設定され、移動式クレーン1によって煉瓦モジュール取込装置10が設置された場所まで煉瓦モジュール200を移動させる。ここで、6つの炭化室と5つの燃焼室の稼動を止め、5つの燃焼室の窯口煉瓦及びバックステーを補修する作業を“5窯補修”と言い、同様に9つの炭化室と8つの燃焼室の稼動を止め、8つの燃焼室について補修する作業を、“8窯補修”と言う。6つの炭化室、5つの燃焼室の稼動を止め、5つの燃焼室の窯口煉瓦の補修を行なう場合、5つの窯口は5つとも並行して同時に窯口煉瓦モジュールを積み上げていき、同様に8窯補修の場合も、8つの燃焼室の窯口煉瓦は、8つとも略全て同じ高さに積み上げられる。
また、バックステー104は煉瓦の積替に伴い、相当部分を切断のうえその部分(交換部分104A)を新品に交換(溶接接合)する。
【0016】
図3A及び図3Bは、CSの煉瓦モジュール取込装置10の構成例を示す側面図及び正面図である。煉瓦モジュール取込装置10は、コークス炉100の所定位置に架設された架台11と、架台11上に炉団長方向Yに沿って敷設されたガイドレール12と、ガイドレール12に支持されて炉団長方向Yに沿って移動可能なトロリー13とを備え、トロリー13により煉瓦モジュール200を昇降可能に吊下するようにしている。
【0017】
架台11の炉団長方向Yの長さは、補修を行なう複数の炉と略等しいかそれより長く設定され、トロリー13はその長さ範囲で炉団長方向Yに動くことができる。また、架台11は装入車、押出機及びガイド車の走行と干渉しないよう設置する。装入車走行干渉範囲106Aを図3Aに示す。そして、架台11は、ガイドレール12が炉団長方向Yに沿うように煉瓦積替エリア106(CS)の炉上に設置される。なお図3Bのモジュール取込装置10は右側に煉瓦モジュール取込エリア106Bを備えている。
【0018】
架台11の設置方法について、例えば炉団長方向Yで両端(及び途中1本残す場合もある)のバックステー104の上端、又はその上に延長金具等を溶接固定し取り付けることができる。あるいは、コークス炉100に付帯するドライメーン、集塵配管等の配管を保持しているブラケットに溶接等によって取り付けることができ、更に架台11の脚部を直接コークス炉100の上に載せることで設置することができる。
【0019】
トロリー13は図3A図3B及び図4にも示されるように、ガイドレール12の下側で炉団長方向Yに沿って移動可能に支持される。トロリー13下方にはチェーン14が垂下され、チェーン14に接続されたクランプ15によって煉瓦モジュール200を把持することができる。
【0020】
また、CSの煉瓦モジュール取込装置10では図3Aに示されるように、炉団長方向Yと直交方向、即ち奥行き方向Xに沿って、コークス炉100の外方へ延出する補助ガイドレール16を有する。この補助ガイドレール16についてもその下側で奥行き方向Xに沿ってトロリー13が移動可能に支持され、トロリー13の下方にはチェーン14が垂下され、チェーン14に接続されたクランプ15によって煉瓦モジュール200を把持することができるようになっている。
【0021】
補助ガイドレール16は、コークガイド車が走るCS側プラットホーム105から煉瓦モジュール200を取り込むことができるようにするためのものであり、CSではクレーン等を設置することができないためである。このように補助ガイドレール16によれば、コークス炉100のプラットホーム105から煉瓦モジュール200を取り込むことができる。
【0022】
煉瓦モジュール200を取り込む具体的な方法として、下記2通りがある。
ア)炉上からの取り込み:PS地上に設置した移動式クレーン1(図5参照)で、炉上のなるべくCS側に吊り卸し、台車(人力で押す)等により架台11のホイスト下に持っていく。図3Bのモジュール取込装置10の右側にある煉瓦モジュール取込エリア106Bから取込装置10のトロリー13に持っていくことができる。
イ)プラットホームからの取り込み:炉団端部にあるデッキから台車(人力で押す)により、CSプラットホーム105(コークガイド車走行部)に搬入し、架台11の補助ガイドレール16のホイスト下(炉団長方向と直角に動く)に持っていく。
イ)で対応可能な場合はイ)が望ましい。その理由は、ア)にあってはクレーン本体から遠くなること、炉上は非常に暑く、作業が長時間できないこと(夏は熱中症の恐れがあり)等があげられる。イ)の方が実作業に適しているが、補修を行なう炉が搬入するデッキ部から遠く、そこまで台車で煉瓦モジュールを持っていくのが困難な場合や、補助ガイドレール16のホイストが揚程の関係で使えない場合等もあり、炉上から取り込む方法も採用される。
【0023】
移動式クレーン1等や補助ガイドレール16のホイストを利用して所定の位置まで搬送された煉瓦モジュール200は、煉瓦モジュール取込装置10で受け取られて、図3Bのようにガイドレール12に装着されたトロリー13に吊下されて煉瓦積替エリア106(CS)の所定位置まで移動される。煉瓦モジュール200は順次積み上げられ、所定個数積み上げることで補修作業が完了する。
【0024】
煉瓦モジュール取込装置10によれば、CSの場合煉瓦モジュール200はコークス炉100のプラットホーム105から取り込むことも、炉上から取り込むこともできる。
また、隣り合った2つの炉の窯口について実施することができ、交互にモルタル塗布作業と積み作業を行なえるので効率的である。
【0025】
ここで図6A及び図6Bは、PSの煉瓦モジュール取込装置10の構成例を示す正面図及び側面図である。煉瓦モジュール取込装置10はCSの場合と実質的に同様に構成され、コークス炉100の炉上の所定位置に架設された架台11と、架台11上に炉団長方向Yに沿って敷設されたガイドレール12と、ガイドレール12に支持されて炉団長方向Yに沿って移動可能なトロリー13とを備え、トロリー13により煉瓦モジュール200を昇降可能に吊下するようにしている。PSの場合、煉瓦モジュール取込装置10は、炉上にある補修対象窯の上昇管を撤去してから設置される。(夫々の窯の煉瓦積替えエリア上部に上昇管が設置されており補修のためには撤去を要する。)
【0026】
PSにおいて煉瓦モジュール200を取り込む際、図2のように移動式クレーン1をPSプラットホーム105に近い地面に設置することが可能なため、煉瓦モジュール200を直接該移動式クレーン1で補修対象の燃焼室103の設置場所に置いていくことができる。その場合は、CSのように台車を使ってプラットホーム105上を移動し持っていく必要は無い。
この場合、煉瓦モジュール200を積み上げていき、略中程の高さになったところで、ドライメーンの配管等、煉瓦積みする箇所の上の設備にクレーンブーム先端が当たるようになる。そのためこれ以降は、地上クレーンで一旦ドライメーンの上部で煉瓦モジュール取込エリア106Bの位置に作ったステージ107に煉瓦モジュール200を吊り込み、架台11のホイストで設置場所までもって行く。このためPSの場合には、クレーンで煉瓦モジュール200を直接補修対象の設置場所に吊り込むのは略半数程度となる。ステージから煉瓦モジュールを効率よく設置場所まで持っていくコークス炉の外方へ延出するレールに沿って移動するトロリーが必要となるが、ホイスト13がステージ200上すなわち炉の外方にも移動できるよう、ガイドレール12を曲げて設置するとよい。
【0027】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
上記実施形態において、5窯補修あるいは8窯補修の例を説明したが、燃焼室補修の数に関しては、5又は8に限られることはなく、補修窯の数に応じて適宜増減可能である。
【符号の説明】
【0028】
10 煉瓦モジュール取込装置、11 架台、12 ガイドレール、13 トロリー、14 チェーン、15 クランプ、16 補助ガイドレール、100 コークス炉、101 蓄熱室、102 炭化室、103 燃焼室、104 バックステー、105 プラットホーム。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B