特許第6693791号(P6693791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6693791粘着シート製造装置及び粘着シート製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6693791
(24)【登録日】2020年4月20日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】粘着シート製造装置及び粘着シート製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20200427BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20200427BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20200427BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20200427BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20200427BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20200427BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20200427BHJP
   G01B 11/28 20060101ALI20200427BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20200427BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20200427BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
   G01N21/892 A
   C09J201/00
   C09J11/04
   B05D7/00 A
   B05D7/24 301P
   B05D3/00 D
   B05D7/24 303F
   G01B11/30 Z
   G01B11/28 H
   B05C5/02
   B05C11/10
   B05C11/00
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-72410(P2016-72410)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-181419(P2017-181419A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 慈
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 渉
(72)【発明者】
【氏名】能勢 幸治
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/152348(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/152351(WO,A1)
【文献】 特開2010−285498(JP,A)
【文献】 特開平04−158249(JP,A)
【文献】 特開平08−159982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G01B 11/00−11/30
C09J 7/00− 7/50
C09J 9/00−201/10
B32B 1/00−43/00
B05C 5/00− 5/04
B05C 7/00−21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材又は剥離材を構成するシートを送るシート送り部と、
前記シート送り部から送られたシートに、主成分として樹脂を含む樹脂部分と前記樹脂部分に混在する複数の微粒子とを含む材料を供給し、粘着性を有する樹脂層を形成する粘着剤供給部と、
前記樹脂層の前記シートと接する面とは反対側の面にそれぞれ形成される凹部と凸部との少なくとも一方から反射した光を受光する受光部と、
前記受光部で受光した光から前記樹脂層の凹部と凸部との比率を演算する凹凸比演算部と、
前記凹凸比演算部で求められた前記比率が許容範囲にあるか否かを判定する判定部と、
前記判定部で前記比率が許容範囲にないと判定された場合に前記粘着剤供給部から前記シートに送られる前記樹脂部分と前記複数の微粒子との相対的な量を変更する制御部と、を備えたことを特徴とする粘着シート製造装置。
【請求項2】
請求項に記載された粘着シート製造装置において、
前記受光部は、前記樹脂層の凹部と凸部とを撮像する撮像部を備え、
前記凹凸比演算部は前記撮像部で撮像された前記凹部及び前記凸部に対する前記凹部又は前記凸部の面積比率を演算する
ことを特徴とする粘着シート製造装置。
【請求項3】
請求項に記載された粘着シート製造装置において、
前記凹凸比演算部は、前記撮像部で撮像された画像を二値化する二値化部と、前記二値化部で二値化された画像に基づいて前記凹部及び凸部に対する前記凹部又は前記凸部の面積比率を算出する面積比算出部と、を備えたことを特徴とする粘着シート製造装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載された粘着シート製造装置において、
前記撮像部は、前記樹脂層の凹部と凸部とに光を照射する光源と、前記樹脂層の凹部と凸部との少なくとも一方から反射した光を受光するカメラと、を備えたことを特徴とする粘着シート製造装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載された粘着シート製造装置において、
前記粘着剤供給部と前記撮像部との間に、前記樹脂層を乾燥させる乾燥部を配置したことを特徴とする粘着シート製造装置。
【請求項6】
請求項ないし請求項5のいずれか1項に記載された粘着シート製造装置において、
前記粘着剤供給部は、前記シートに前記樹脂部分を積層した状態で供給する複数の供給部を備え、
前記複数の供給部のうち少なくとも一部は前記樹脂部分に前記複数の微粒子が混在することを特徴とする粘着シート製造装置。
【請求項7】
請求項6に記載された粘着シート製造装置において、
前記制御部は、前記判定部が前記凹部及び凸部に対する前記凸部の面積比率が前記許容範囲より大きいと判定した場合には前記供給部から供給される前記複数の微粒子が混在した前記樹脂部分の供給量を多くし、前記凹部及び前記凸部に対する前記凸部の面積比率が小さいと判定した場合には前記供給部から供給される前記複数の微粒子が混在した前記樹脂部分の供給量を少なくすることを特徴とする粘着シート製造装置。
【請求項8】
基材又は剥離材を構成するシートを送る工程と、
前記シートを送る工程で送られたシートに、主成分として樹脂を含む樹脂部分と前記樹脂部分に混在する複数の微粒子とを含む材料を供給し、粘着性を有する樹脂層を形成する工程と、
前記シートに形成された樹脂層を乾燥させる工程と、
前記乾燥させる工程で乾燥した樹脂層の前記シートと接する面とは反対側の面にそれぞれ形成される凹部と凸部との少なくとも一方から反射する光を受光する工程と、
前記受光した光から前記樹脂層の凹部と凸部との比率を演算する工程と、
前記比率が許容範囲にあるか否かを判定する工程と、
前記比率が許容範囲にない場合に前記シートに送られる前記樹脂部分と前記複数の微粒子との相対的な量を変更する工程と、を備えたことを特徴とする粘着シート製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着シート製造装置及び粘着シート製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着シートの製造時において、基材に塗布された粘着剤の表面欠陥や塗布ムラを検査するための検査装置や、当該検査装置を組み込んだ粘着シートの製造装置が知られている。
従来例として、ダイと乾燥装置の間に配設された第1フィゾー干渉計により、塗布後におけるフィルムシート上の粘着剤表面を測定するとともに粘着剤表面の干渉縞画像データを取得し、第1フィゾー干渉計により取得された粘着剤表面の干渉縞画像データをフーリエ変換法で解析するとともに、粘着剤表面に発生する微細凹凸に関する算術平均粗さ、最大高さと最小高さとの差の基準数値データを演算し、その演算された基準数値データに基づき、ダイによる粘着剤の塗布条件を変更するものがある(特許文献1)。特許文献1の従来例では、粘着テープの製造中に微細な凹凸に起因する表面欠陥が発生した場合に、その表面欠陥の原因をインラインで迅速に検出するとともに、表面欠陥の原因を除去するように製造条件が変更可能となる。
【0003】
他の従来例として、アルミニウム箔表面の接着剤の溶剤成分を除去した後、アルミニウム箔にプラスチックフィルムを圧着する前に、アルミニウム箔の表面の接着剤塗布面の温度を赤外線サーモグラフィにより測定し、接着剤塗布面の温度分布に基づいて、接着剤の塗布状態を検出し、接着剤塗布面の温度が所定の基準値以下の場合に、接着剤の塗布ムラがあると判定するものがある(特許文献2)。特許文献2の従来例では、アルミニウム箔表面の接着剤の塗布状態を精度よく検出することができる。
【0004】
他の従来例として、基材に塗布された塗膜を線状に走査して温度分布を測定し、その温度分布範囲内の温度差に基づいて塗膜の塗布ムラを求めるものがある(特許文献3)。特許文献3の従来例では、塗膜が塗布された基材をその長手方向に搬送し、赤外線カメラによる測温点を基材の塗膜面の幅方向へ線状に走査移動させ、赤外線カメラによって検出される赤外線エネルギーに基づいて基材の塗膜面に関する線状の温度分布を測定する。これにより、多種類の塗膜に適用でき、その塗膜の塗布ムラを高精度に測定できる。
【0005】
ここで、本件出願人は、基材又は剥離材上に、主成分として樹脂を含む樹脂部分と、微粒子からなる粒子部分とを含む樹脂層を有し、前記基材又は剥離材が設けられた側とは反対側の樹脂層の表面に粘着性を有する粘着シートを開発した(特許文献4)。特許文献4の従来例では、乾燥した樹脂層の表面、つまり、樹脂層の基材又は剥離材と接合する面とは反対側の面には凹凸が形成されることになる。これは、樹脂層の塗膜を乾燥させる工程において、塗膜内部に収縮応力が発生し、微粒子の存在に起因すると思われる樹脂の結合力が弱くなった部分で塗膜内に割れが生じ、割れ部分の周辺の樹脂が割れにより一時的に生じる空間に流入することと考えられる。
樹脂層を被着体に貼付するにあたり、樹脂層の表面に形成された凸部が被着体に当接し、樹脂層と被着体との間の空気溜まりが凹部を通じてシート外に排出される(エア抜け性)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−285498号公報
【特許文献2】特開2012−225728号公報
【特許文献3】特開平8−304036号公報
【特許文献4】国際公開第2015/152347号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4で示される従来例において、樹脂層の表面の凸部の凹部に対する面積が大きすぎると、凹部を通じてのエア抜け性が十分ではなくなる。逆に、凸部の凹部に対する面積が小さすぎると、被着体への粘着特性が十分ではなくなる。つまり、エア抜け性と粘着特性とを確保するには、樹脂層の表面に形成された凹凸の面積比が所定範囲にある必要がある。
そこで、特許文献4の従来例の粘着シートを検査等するために、特許文献1、特許文献2及び特許文献3の従来例を用いることが考えられる。
【0008】
特許文献1の従来例は、粘着剤表面に発生する微細凹凸に関する算術平均粗さ、最大高さと最小高さとの差の基準数値データを演算し、その演算された基準数値データに基づき、制御装置を介してダイによる粘着剤の塗布条件を変更するものであるため、粘着テープの製造中に微細な凹凸に起因する表面欠陥を検出することができても、エア抜け性と粘着特性との検査ができるものではない。
特許文献2の従来例は、アルミニウム箔の表面の接着剤塗布面の温度を赤外線サーモグラフィにより測定し、接着剤塗布面の温度分布に基づいて接着剤の塗布状態を検出するものであるため、アルミニウム箔表面の接着剤の塗布状態を精度よく検出することができても、エア抜け性と粘着特性との検査ができるものではない。
特許文献3の従来例は、赤外線カメラによって検出される赤外線エネルギーに基づいて基材の塗膜面に関する線状の温度分布を測定するため、塗膜の塗布ムラを高精度に測定できても、エア抜け性と粘着特性との検査ができるものではない。
【0009】
本発明の目的は、エア抜け性と粘着特性とを達成する粘着シートを製造できる粘着シート製造装置及び粘着シート製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の粘着シート製造装置は、基材又は剥離材を構成するシートを送るシート送り部と、前記シート送り部から送られたシートに、主成分として樹脂を含む樹脂部分と前記樹脂部分に混在する複数の微粒子とを含む材料を供給し、粘着性を有する樹脂層を形成する粘着剤供給部と、前記樹脂層の前記シートと接する面とは反対側の面にそれぞれ形成される凹部と凸部との少なくとも一方から反射した光を受光する受光部と、前記受光部で受光した光から前記樹脂層の凹部と凸部との比率を演算する凹凸比演算部と、前記凹凸比演算部で求められた前記比率が許容範囲にあるか否かを判定する判定部と、前記判定部で前記比率が許容範囲にないと判定された場合に前記粘着剤供給部から前記シートに送られる前記樹脂部分と前記複数の微粒子との相対的な量を変更する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の粘着シート製造装置では、シート送り部で送られたシートに、粘着剤供給部により樹脂層が形成される。樹脂層が乾燥すると、その表面に凹部と凸部とが生じることになる。そして、凹部と凸部との少なくとも一方から反射する光が受光部で受光され、凹部と凸部の比率が凹凸比演算部で演算され、比率が許容範囲にあるか否かが判定部で判定される。判定部で比率が許容範囲にないと判定された場合には制御部で粘着剤供給部から供給される樹脂層の樹脂部分と微粒子との相対的な量が変更される。そのため、本発明では、判定部の判定結果に基づいて制御部が粘着剤供給部を制御するから、エア抜け性と粘着特性とを達成できる粘着シートを製造できる。
【0015】
本発明の粘着シート製造装置では、前記受光部は、前記樹脂層の凹部と凸部とを撮像する撮像部を備え、前記凹凸比演算部は前記撮像部で撮像された前記凹部及び前記凸部に対する前記凹部又は前記凸部の面積比率を演算する構成が好ましい。
この構成では、樹脂層の表面に生じた凹部と凸部とを撮像部で撮像し、凹部及び凸部の合計面積に対する凹部の合計面積又は凸部の合計面積の比率を凹凸比演算部で演算し、この面積比率が許容範囲にあるか否かを判定部で判定する。判定部により、面積比率が許容範囲にあるか否かが判定されるので、エア抜け性と粘着特性とを同時に達成できる粘着シートを精度よく製造することができる。
【0016】
本発明の粘着シート製造装置では、前記凹凸比演算部は、前記撮像部で撮像された画像を二値化する二値化部と、前記二値化部で二値化された画像に基づいて前記凹部及び前記凸部に対する前記凹部又は前記凸部の面積比率を算出する面積比算出部と、を備えた構成が好ましい。
この構成では、撮像部で撮像された画像を二値化することで、面積比率を容易かつ正確に求めることができる。そのため、粘着シートのエア抜け性と粘着特性とを向上させることができる。
【0017】
本発明の粘着シート製造装置では、前記粘着剤供給部は、前記シートに前記樹脂部分を積層した状態で供給する複数の供給部を備え、前記複数の供給部のうち少なくとも一部は前記樹脂部分に前記複数の微粒子が混在する構成が好ましい。
この構成では、複数の供給部によって、複数の層が同時に形成されることになるので、微粒子がシートに対して所定位置に配置されることになる。そのため、微粒子の存在に起因した樹脂の割れが確実に生じることになり、樹脂層の表面に凹凸が生じる。従って、優れたエア抜け性と粘着特性とを有する粘着シートを得ることができる。
【0018】
本発明の粘着シート製造装置では、前記制御部は、前記判定部が前記凹部及び凸部に対する前記凸部の面積比率が前記許容範囲より大きいと判定した場合には前記供給部から供給される前記複数の微粒子が混在した前記樹脂部分の供給量を多くし、前記凹部及び前記凸部に対する前記凸部の面積比率が小さいと判定した場合には前記供給部から供給される前記複数の微粒子が混在した前記樹脂部分の供給量を少なくする構成としてもよい。
凸部の凹部及び凸部に対する面積比率が許容範囲より大きいと、エア抜け性が十分ではなくなる。そのため、判定部で凸部の凹部及び凸部に対する面積比率が許容範囲より大きいと判定された場合には、制御部によって、供給部から供給される複数の微粒子が混在した樹脂部分の供給量を多くして、エア抜け性を向上させる。逆に、判定部で凸部の凹部及び凸部に対する面積比率が許容範囲より小さいと、判定された場合には、制御部によって、供給部から供給される複数の微粒子が混在した樹脂部分の供給量を少なくして、粘着特性を向上させる。
【0019】
本発明の粘着シート製造装置では、前記撮像部は、前記樹脂層の凹部と凸部とに光を照射する光源と、前記樹脂層の凹部と凸部との少なくとも一方から反射した光を受光するカメラと、を備えた構成が好ましい。
この構成では、光源の光量を制御することで、カメラの感度を向上させることができる。そのため、撮像精度を向上させることで、判定部における判定を正確なものにできる。
【0020】
本発明の粘着シート製造装置では、前記粘着剤供給部と前記撮像部との間に、前記樹脂層を乾燥させる乾燥部を配置したことが好ましい。
この構成では、粘着剤供給部によりシートに形成された樹脂層が乾燥部で乾燥されることになる。そのため、撮像部で撮像される前に、樹脂層の表面に凹部と凸部とが確実に形成されることになり、自然乾燥させる場合に比べて、製造作業の短縮化が図れる。
【0021】
本発明の粘着シート製造方法は、基材又は剥離材を構成するシートを送る工程と、前記シートを送る工程で送られたシートに、主成分として樹脂を含む樹脂部分と前記樹脂部分に混在する複数の微粒子とを含む材料を供給し、粘着性を有する樹脂層を形成する工程と、前記シートに形成された樹脂層を乾燥させる工程と、前記乾燥させる工程で乾燥した樹脂層の前記シートと接する面とは反対側の面にそれぞれ形成される凹部と凸部との少なくとも一方から反射する光を受光する工程と、前記受光した光から前記樹脂層の凹部と凸部との比率を演算する工程と、前記比率が許容範囲にあるか否かを判定する工程と、前記比率が許容範囲にない場合に前記シートに送られる前記樹脂部分と前記複数の微粒子との相対的な量を変更する工程と、を備えたことを特徴とする。
本発明では、前述の効果を奏することができる粘着シート製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】粘着シートの断面図。
図2】粘着シート製造装置の側面を示す概略図。
図3】粘着シート製造装置の平面を示す概略図。
図4】カメラで撮像された樹脂層の表面画像を示す図。
図5】二値化された樹脂層の表面画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[粘着シートの構成]
図1には、粘着シートが拡大して示されている。
図1において、粘着シートMは、基材又は剥離材を構成するシートSと、シートSの上に設けられた樹脂層Rとを備えている。
【0024】
樹脂層Rは、シートSに積層された第一層RM1と、第一層RM1に積層された第二層RM2と、第二層RM2に積層された第三層RM3とを有する。樹脂層Rの厚さは、例えば1μm以上300μm以下である。
第一層RM1と第三層RM3とは、それぞれ主成分として樹脂を含む樹脂部分RMを構成するものである。
第二層RM2は、樹脂部分RMに複数の微粒子Cが含まれている。第二層RM2において、微粒子Cの含有量は第二層RM2の全体に対して15質量%以上である。なお、第一層RM1と第三層RM3とにおいて、樹脂の含有量は40質量%以上100質量%以下である。第一層RM1と第三層RM3とに微粒子Cが15質量%未満の範囲で含まれていてもよい。
【0025】
第三層RM3の表面には凹部RRと凸部RPとがそれぞれ複数形成されている。凸部RPは、図示しない被着材と接着する粘着面(接着面)として機能する。凹部RRは、被着材に貼り付ける際のエア抜けとして機能する。
第三層RM3の表面の任意の位置において、1辺5mmの正方形で囲まれた領域内に、高低差の最大値が0.5μm以上の凹部RRが複数存在する。一個の凹部RRの高低差の最大値は、好ましくは、5.0μm以上樹脂層Rの厚み以下である。
複数の凹部RRは不規則に存在するものであり、それらの平面形状も異なり、複数の凸部RPの平面形状もそれぞれ異なる(図4参照)。
凹部RRの幅寸法の平均値、つまり、隣合う凸部RPのそれぞれの頂点間の寸法の平均値は、好ましくは、1μm以上500μm以下である。
【0026】
樹脂部分RMに含まれる樹脂としては、表面に粘着性を発現させるために、粘着性樹脂を用いることが好ましい。粘着性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられるが、これらのうちアクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂の含有量は、樹脂部分RMに含まれる樹脂の総量に対して、好ましくは、20質量%以上100質量%以下である。樹脂部分RMが官能基を有する樹脂を含むことが好ましく、官能基を有するアクリル系樹脂を含むことがより好ましい。
樹脂部分RMは架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。
本実施形態では、樹脂層Rを形成するために、粘着性樹脂の組成物を溶媒に溶かし、組成物の溶液の形態とするが、溶融状態としてもよい。溶媒としては、水や有機溶媒等が挙げられる。当該有機溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノール、s−ブタノール、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で、又は2種以上を併用してもよい。
第二層RM2に含まれる微粒子Cとして、特に制限はないが、シリカ粒子、酸化金属粒子、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラスビーズ、スメクタイト等の無機粒子や、アクリルビーズ等の有機粒子を挙げることができる。これらの微粒子の中でも、シリカ粒子、酸化金属粒子及びスメクタイトから選ばれる1種以上が好ましく、シリカ粒子がより好ましい。微粒子Cの平均粒径は、0.01μm以上100μ以下である。
【0027】
シートSを基材として用いる場合は、その材質として、紙基材、樹脂フィルム、紙基材に樹脂フィルムをラミネートしたもの、その他を例示できる。
紙基材を構成する紙としては、例えば、薄葉紙、中質紙、上質紙、含浸紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙等を例示できる。樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、三酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリウレタン、アクリル変性ポリウレタン等のウレタン系樹脂、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
基材の厚さは特に制限はないが、例えば、5〜1000μmである。
剥離材として、両面剥離処理された剥離シートや、片面剥離処理された剥離シート等が用いられ、剥離材用の基材上に剥離剤を塗布したものが挙げられる。なお、剥離処理面は凹凸形状が形成されておらず、平坦な剥離材が好ましい。
剥離材用の基材としては、紙基材、樹脂フィルム、紙基材に樹脂フィルムをラミネートしたもの、その他を例示できる。剥離剤としては、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、等が挙げられる。剥離材としての厚さは、特に制限はないが、好ましくは、10μm以上200μm以下である。
【0028】
[粘着シート製造装置の概略]
図2には本実施形態にかかる粘着シート製造装置の側面概略が示され,図3には粘着シート製造装置の上面概略が示されている。
図2及び図3において、粘着シート製造装置1は、シート送り部2と、シート送り部2から送られたシートSに粘着性を有する樹脂層Rを形成する粘着剤供給部3と、樹脂層Rを乾燥させる乾燥部4と、乾燥した樹脂層Rを検査する検査装置5と、検査装置5の検査結果に基づいて粘着剤供給部3を制御する制御部6と、樹脂層Rが設けられたシートSを巻き取るシート巻取部7とを備えて構成されている。
シート送り部2とシート巻取部7とは、シートSを所定速度、例えば、30m/minの速度で搬送する。
【0029】
[粘着剤供給部の構成]
粘着剤供給部3は、三層ダイ30と、三層ダイ30にそれぞれ設けられた第一ポンプ31、第二ポンプ32及び第三ポンプ33とを備えている。
三層ダイ30は、樹脂部分RMを第一層RM1としてシートSに積層する第一供給部301と、微粒子Cが混在した樹脂部分RMを第二層RM2として第一層RM1に積層する第二供給部302と、樹脂部分RMを第三層RM3として第二層RM2に積層する第三供給部303とを有する。
第一供給部301、第二供給部302及び第三供給部303は、それぞれダイ本体300に形成された流路である。第一供給部301、第二供給部302及び第三供給部303は一体に設けられている。
第一供給部301は第一ポンプ31と接続されており、第二供給部302は第二ポンプ32と接続されており、第三供給部303は第三ポンプ33と接続されている。なお、本実施形態で使用されるポンプは、例えば、ダイアフラムポンプ、ギアポンプ、プランジャーポンプ、スクリューポンプ等の従来公知のポンプが挙げられ、樹脂を吐出する構成であれば、その構造は限定されるものではない。
第一ポンプ31、第二ポンプ32及び第三ポンプ33は、図示しない材料収納タンクと接続されている。
乾燥部4は、シートSの樹脂層Rに温風を吹き付ける装置や、遠赤外線を照射する装置、その他の装置から構成される。
【0030】
[粘着シート検査装置]
検査装置5は、樹脂層Rの表面にそれぞれ形成される凹部RRと凸部RPとを撮像する撮像部51と、撮像部51で撮像された凹部RRと凸部RPとの面積比率を演算する凹凸比演算部52と、凹凸比演算部52で求められた面積比率が許容範囲にあるか否かを判定する判定部53と、判定部53で判定した結果を表示する表示部54とを備えている。
撮像部51は、樹脂層Rの凹部RRと凸部RPとから反射する光を受光する受光部として機能する。
凹凸比演算部52、判定部53及び表示部54は、制御部6とともにパーソナルコンピューター8に組み込まれている。パーソナルコンピューター8には、キーボード等からなる操作部81と、記憶部82とが設けられている。
【0031】
撮像部51は、樹脂層Rの表面に形成された凹部RRと凸部RPとに光を照射する光源51Aと、樹脂層Rの凹部RRと凸部RPとから反射した光を受光するカメラ51Bと、光源51A及びカメラ51Bを一体に保持するフレーム51Cと、フレーム51CをシートSの流れ方向とは直交する方向に進退させる進退機構51Dとを備えている。
光源51Aとしては、例えば、LED光源を用いることができるが、これに限定されるものではない。
カメラ51Bとしては、例えば、ラインセンサカメラを用いることができるが、これに限定されるものではない。
カメラ51Bで撮像された情報はパーソナルコンピューター8に送られる。
カメラ51Bは、樹脂層Rの表面を撮像するものであり、撮像画像データはグレースケール化された明暗画像である(図4(A)〜(C)参照)。
【0032】
光源51Aは、光源の光軸と樹脂層Rの平面とのなす角度αが15°〜85°となるように配置されるが、この角度に限定されるものではない。光源51Aの投光距離、つまり、光源51Aの光軸に沿った長さのうち光源51Aの先端と樹脂層Rとの間の距離は150mm以上250mm以下である。なお、この距離は限定されるものではなく、光源51Aの光量等に応じて変更される。
カメラ51Bは、カメラのレンズ光軸と樹脂層Rの平面とのなす角度βが15°〜85°となるように配置されるが、この角度に限定されるものではない。カメラ51Bの受光距離、つまり、カメラ51Bのレンズ光軸に沿った長さのうちカメラ51Bの先端と樹脂層Rとの間の距離は100mm以上750mm以下である。なお、この距離は限定されるものではなく、カメラ51Bの性能等に応じて変更される。
これらの光源51Aとカメラ51Bとの配置は一例であって、本実施形態では、当該配置に限定されるものではない。
進退機構51Dは、フレーム51Cに螺合されたボールねじ51D1と、ボールねじ51D1を回転駆動するモータ51D2とを備えている。
カメラ51Bは、進退機構51Dによって所定位置、例えば、シートSの送り方向と直交する方向(幅方向)の中央部、その両側の3箇所において、所定エリアの樹脂層Rの表面をサンプリングして撮像する。
【0033】
凹凸比演算部52は、カメラ51Bで撮像された明暗画像を二値化する二値化部521と、二値化部521で二値化された画像に基づいて凹部RRと凸部RPとの面積比率を算出する面積比算出部522とを備えている。
二値化部521は、グレースケール化されかつ所定エリアで切り出された画像データを白と黒の2階調に変換する(図5(A)〜(C)参照)。例えば、凹部RRが黒、凸部RPが白として変換される。
面積比算出部522は、所定エリア内で黒表示された凹部RRの合計面積と、白表示された凸部RPの合計面積とをそれぞれ演算し、凹部RRの合計面積XRと凸部RPの合計面積XPとを合算した全体面積(XR+XP)に対する凸部RPの合計面積XPの比率(XP/(XR+XP))を算出する。なお、カメラ51Bの分解能を最適化することで、測定視野を大きくすることができる。
【0034】
判定部53は、所定エリア内における凹部RR及び凸部RPの全体面積(XR+XP)に対する凸部RPの面積XPの比率(XP/(XR+XP))が許容範囲より大きいか否かを判定するものである。凹部RR及び凸部RPの全体面積(XR+XP)に対する凸部RPの面積XPの比率を、以後、凸部面積率と称する。凸部面積率は、本実施形態では、30%以上70%以下が許容範囲である。
表示部54は、判定部53での判定結果が表示されるものであり、例えば、判定結果が許容範囲にある場合には「OK」マークが表示され、許容範囲から外れた場合には「NG」マークが表示される。
【0035】
[制御部]
制御部6は、判定部53で凸部面積率が許容範囲にない場合に粘着剤供給部3からシートSに送られる樹脂部分RMと微粒子Cとの相対的な量を変更するものであり、具体的には、第一層RM1の塗布量、第二層RM2の塗布量、第三層RM3の塗布量の全てあるいは一部を制御する。ここでは、第一層RM1の塗布量、第二層RM2の塗布量、第三層RM3の塗布量のうち第二層RM2の塗布量を制御する手法について説明をする。
第一層RM1の樹脂部分RMは、アクリル系樹脂溶液100質量部、アルミニウムキレート系架橋剤5質量部、及び希釈用液としてのイソプロピルアルコール(IPA)を添加して作製される。
アクリル系樹脂溶液は、アクリル系樹脂(ブチルアクリレート(BA)及びアクリル酸(AA)に由来する構成単位を有するアクリル系共重合体、BA/AA=90/10(質量%)、Mw:47万)を含有する固形分濃度33.6質量%のトルエンと、酢酸エチルとの混合溶液である。
アルミニウムキレート系架橋剤は製品名「M−5A」(総研化学株式会社製、固形分濃度4.95質量%)を用いる。
第三層RM3の樹脂部分RMは、第一層RM1の樹脂部分RMと同じである。
【0036】
第二層RM2の樹脂部分RMは、アクリル系樹脂溶液30.3質量部、微粒子分散液69.7質量部、アルミニウムキレート系架橋剤5.52質量部及びイソプロピルアルコール(IPA)を添加して作製される。アクリル系樹脂溶液及びアルミニウムキレート系架橋剤は第一層RM1と同じ材料のものである。
微粒子分散液は、第一層RM1と同じアクリル系樹脂溶液100質量部に対して、微粒子Cとして、シリカ粒子(製品名「ニップシール E−200A」、東ソー・シリカ株式会社製、体積平均二次粒子径:3μm)を50.4質量部及びトルエンを添加して、微粒子を分散させて作製された溶液である。以上の材料条件を材料条件Xとする。
この材料条件Xに対して、第一層RM1の樹脂部分RMの塗布量が8.4g/mであり、第二層RM2の樹脂部分RMの塗布量が10.5g/mであり、第三層RM3の樹脂部分RMの塗布量が15.5g/mである。これを塗布条件Xとする。なお、塗布条件Xにおける塗布量は乾燥後の塗布量である。
【0037】
図4には、微粒子Cを含む第二層RM2の樹脂部分RMの塗布量を変化させた場合のカメラ51Bの撮像画像が示されている。図4(A)は前記塗布条件Xの場合の撮像画像であり、図4(B)は前記塗布条件Xにおける微粒子Cを含む第二層RM2の樹脂部分RMの塗布量を9.5%増加させた場合の撮像画像であり、図4(C)は前記塗布条件Xにおける微粒子Cを含む第二層RM2の樹脂部分RMの塗布量を19%増加させた場合の撮像画像である。
【0038】
図5には二値化された画像が示されている。図5(A)は前記塗布条件Xの場合の二値化画像であり、図5(B)は前記塗布条件Xにおける微粒子Cを含む第二層RM2の樹脂部分RMの塗布量を9.5%増加させた場合の二値化画像であり、図5(C)は前記塗布条件Xにおける微粒子Cを含む第二層RM2の樹脂部分RMの塗布量を19%増加させた場合の二値化画像である。
図5で示される二値化画像に基づいて、凸部面積率を求めた結果、前記塗布条件Xの場合では、凸部面積率が52%であり、前記塗布条件Xにおける微粒子Cを含む第二層RM2の樹脂部分RMの塗布量を9.5%増加させた場合では、凸部面積率が49%であり、前記塗布条件Xにおける微粒子Cを含む第二層RM2の樹脂部分RMの塗布量を19%増加させた場合では、凸部面積率が44%であった。
即ち、微粒子Cを含む第二層RM2の樹脂部分RMの塗布量を多くすると、凸部面積率が小さくなるので、制御部6では、判定部53で凸部面積率が許容範囲より大きいと判定された場合には、第二供給部302から供給される微粒子Cが混在した樹脂部分RMの供給量を多くし、凸部面積率が小さいと判定された場合には第二供給部302から供給される微粒子Cが混在した樹脂部分RMの供給量を少なくする。
【0039】
[粘着シート製造方法]
次に、本実施形態にかかる粘着シート製造方法を説明する。
シート送り部2とシート巻取部7とを作動させて、シートSを粘着剤供給部3に送る。
その後、粘着剤供給部3でシートSに樹脂層Rを供給する。まず、第一供給部301で樹脂部分RMをシートSに積層して第一層RM1を形成し、第二供給部302で微粒子Cが混在した樹脂部分RMを第一層RM1に積層して第二層RM2を形成し、さらに、第三供給部303で樹脂部分RMを第二層RM2に積層して第三層RM3を形成する。シートSに樹脂層Rを設けた直後では、樹脂層Rの表面は図1の想像線で示される通り、平面状となる。
その後、シートSに供給された樹脂層Rを乾燥部4で乾燥させる。この乾燥工程において、樹脂層Rの表面に複数の凹部RRと凸部RPとが形成されることになる(図1の実線参照)。
【0040】
樹脂層Rが乾燥する工程において、樹脂層Rの内部に収縮応力が発生し、微粒子Cの存在に起因すると思われる樹脂の結合力が弱くなった部分で樹脂層Rの内部に割れが生じる。この割れ部分の周辺の樹脂が割れにより一時的に生じる空間に流入することと考えられる。乾燥の工程において、樹脂層Rに割れが生じた際に、当初存在していた微粒子Cが他の部分に押しのけられるため、凹部RRが形成される箇所の微粒子Cの割合は凸部RPが形成される箇所に比べて少ないものと考えられる(図1参照)。
【0041】
乾燥した樹脂層Rの表面の凹部RRと凸部RPとを撮像部51で撮像する。そのため、光源51Aから樹脂層Rの表面に向けて光を照射し、樹脂層Rの表面で反射した光をカメラ51Bで撮像する。カメラ51Bによる樹脂層Rの表面の撮像は、進退機構51Dによって、光源51A及びカメラ51BがシートSの送り方向とは直交する方向に進退しながら、所定位置でサンプリングして行われる。カメラ51Bで撮像された画像情報はパーソナルコンピューター8の凹凸比演算部52に送られる。
凹凸比演算部52では、カメラ51Bで撮像された画像が二値化部521で二値化され、二値化された画像に基づいて凸部RPの凹部RRに対する面積比率、つまり、凸部面積率が面積比算出部522で算出される。
面積比算出部522で算出された凸部面積率が許容範囲にあるか否かが判定部53で判定され、その判定結果が表示部54で表示される。
判定部53において、凸部面積率が許容範囲にないと判定された場合には、制御部6により、シートSに送られる樹脂部分RMと微粒子Cとの相対的な量を変更するように粘着剤供給部3が制御される。
【0042】
[実施形態の効果]
従って、本実施形態では次の効果を奏することができる。
(1)樹脂部分RM及び複数の微粒子Cを含み、かつ、表面にそれぞれ凹部RRと凸部RPとが形成された樹脂層RをシートSに設けた粘着シートを検査する装置を、樹脂層Rの凹部RRと凸部RPとを撮像する撮像部51と、撮像部51で撮像された凸部RPの凹部RR及び凸部RPに対する面積比率(凸部面積率)を演算する凹凸比演算部52と、凹凸比演算部52で求められた面積比率が許容範囲にあるか否かを判定する判定部53と、を備えた構成にした。樹脂層Rの表面に生じた凹部RRと凸部RPとの面積比率が許容範囲にあるか否かが判定部で判定されるので、エア抜け性と粘着特性とを達成できる粘着シートの検査を実現できる。
【0043】
(2)シートSを送るシート送り部2と、シート送り部2から送られたシートSに樹脂部分RM及び複数の微粒子Cを含む材料を供給して樹脂層Rを形成する粘着剤供給部3と、樹脂層Rの表面にそれぞれ形成される凹部RRと凸部RPとを撮像する撮像部51と、撮像部51で撮像された凸部RPの凹部RR及び凸部RPに対する面積比率(凸部面積率)を演算する凹凸比演算部52と、凹凸比演算部52で求められた面積比率が許容範囲にあるか否かを判定する判定部53と、判定部53で面積比率が許容範囲にない場合に粘着剤供給部3からシートSに送られる樹脂部分RMと微粒子Cとの相対的な量を変更する制御部6と、を備えて粘着シート製造装置を構成した。判定部53の判定結果に基づいて制御部6が粘着剤供給部3を制御するから、エア抜け性と粘着特性とを達成できる粘着シートを製造できる。
【0044】
(3)凹凸比演算部52は、撮像部51で撮像された画像を二値化する二値化部521と、二値化部521で二値化された画像に基づいて面積比率を算出する面積比算出部522と、を備えている。撮像部51で撮像された画像を二値化することで、面積比率を容易かつ正確に求めることができるから、検査精度が向上する。
【0045】
(4)粘着剤供給部3は、シートSに樹脂部分RMを積層する第一供給部301と、微粒子Cが混在した樹脂部分RMを積層する第二供給部302と、樹脂部分RMを積層する第三供給部303とを有する三層ダイ30を備え、第一供給部301、第二供給部302及び第三供給部303が一体に三層ダイ30に設けられているから、三層構造の樹脂層Rが同時に形成されることになり、乾燥に伴って、微粒子Cの存在に起因した樹脂割れが確実に生じる。そのため、樹脂層Rの表面に凹凸が確実に生じることになるので、優れたエア抜け性と粘着特性とを有する粘着シートを得ることができる。
【0046】
(5)制御部6を、判定部53が凸部RPの凹部RR及び凸部RPに対する面積比率が許容範囲より大きいと判定した場合に第二供給部302から供給される微粒子Cが混在した樹脂部分RMの供給量を多くし、凸部RPの凹部RRに対する面積比率が許容範囲より小さいと判定した場合には第二供給部302から供給される微粒子Cが混在した樹脂部分RMの供給量を少なくした。第二供給部302により、微粒子Cが混在した樹脂部分RMの供給量を制御することで、微粒子C自体の供給量を容易に調整することができる。
【0047】
(6)撮像部51は、樹脂層Rの凹部RRと凸部RPとに光を照射する光源51Aと、樹脂層Rから反射した光を受光するカメラ51Bとを備えているから、光源51Aの光量を制御することで、カメラ51Bの感度を向上させることができる。そのため、撮像精度を向上させることで、判定部53における判定を正確なものにできる。
【0048】
(7)撮像部51は、カメラ51Bをシート送り方向とは直交する方向(幅方向)に進退させる進退機構51Dを備えているから、シートSの送り方向だけでなく、シートSの幅方向に沿っても樹脂層Rを撮像することができる。そのため、樹脂層Rの面積比率を算出するにあたり、撮像箇所の偏在に伴う不都合を回避することができる。
【0049】
(8)樹脂層Rを乾燥させる乾燥部4を粘着剤供給部3と撮像部51との間に配置したから、樹脂層Rの表面に凹部RRと凸部RPとが確実に形成されることになり、自然乾燥させる場合に比べて、製造作業の短縮化が図れる。
【0050】
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、受光部を、樹脂層Rの凹部RRと凸部RPとを撮像する撮像部とし、凹凸比演算部52を、撮像部51で撮像された凸部RPの凹部RRに対する面積比率を演算する構成としたが、本発明では、受光部をレーザー光源から照射されて樹脂層Rの表面で反射されるレーザー光のうち凹部RRと凸部RPの一方のみの反射光を受光する受光素子とし、凹凸比演算部52を受光素子で受光された単位時間あたりの受光量を演算するものとしてもよい。つまり、凹部RRと凸部RPとはシート送り方向に沿って交互に配置されるため、受光部を凹部RRと凸部RPの反射光のうち一方を受光する構成とすることで、凹部RR及び凸部RPに対する凸部RPの比率を算出することが可能となる。この比率が予め求められた許容範囲にあるか否かを判定部で判定する。
【0051】
さらに、前記実施形態では、凹部RRの合計面積と凸部RPの合計面積とを合算した全体面積に対する凸部RPの合計面積の比率を算出する構成としたが、本発明では、凹部RRの合計面積と凸部RPの合計面積とを合算した全体面積に対する凹部RRの合計面積の比率を算出する構成としてもよく、さらには、凹部RRの合計面積と凸部RPの合計面積との面積比率を算出する構成としてもよい。
本発明では、シートSを基材用のものとし、シートSに設けられた樹脂層Rの表面に剥離材用ロールSRから送られる剥離材用シートS1を貼り付ける構成としてもよい(図2の想像線参照)。
さらに、前記実施形態では、樹脂層Rを乾燥させる乾燥部4を粘着剤供給部3と撮像部51との間に配置したが、本発明では、粘着剤供給部3と撮像部51との間の距離を十分にとれるのであれば、樹脂層Rは撮像部で撮像される前に自然乾燥することになるので、乾燥部は不要にできる。
【0052】
前記実施形態では、粘着シートの検査を、インラインで実施したが、オフラインで実施するものでもよい。
さらに、前記実施形態は、1台のカメラ51Bを進退機構51Dで進退させる構成としたが、本発明では、シートSの幅方向に沿って複数台のカメラ51Bを配置する構成としてもよい。なお、シートSの幅が小さいときは1台のカメラ51Bで検査可能である。
また、本発明では、第二ポンプ32と接続された材料収納タンクは、微粒子Cと樹脂部分RMとの混合比を調整可能としてもよい。つまり、第二ポンプ32から供給される微粒子Cの樹脂部分RMに対する相対的な量を調整可能とするものでもよい。
【0053】
さらに、前記実施形態では、樹脂部分RMに複数の微粒子Cを混在させて樹脂層Rを構成したが、本発明の粘着シート検査装置では、樹脂層Rに複数の微粒子Cを含まない粘着シートでも適用できる。つまり、樹脂部分RMに複数の微粒子Cが混在されていない場合でも、樹脂層Rの表面に凹部と凸部とが形成されることがあるので、本発明の粘着シート検査装置により、凹部と凸部との比率を演算し、この比率が許容範囲にあるか否かを判定することで、エア抜け性と粘着特性とを達成できる粘着シートの検査を実現できる。
また、前記実施形態では、第一供給部301、第二供給部302及び第三供給部303を備えて三層ダイ30を構成したが、本発明では、供給部の数は3個に限定されるものではなく、1個、2個あるいは4個以上であってもよい。複数の微粒子Cが混在した樹脂部分RMを供給する供給部は第二供給部302に限定されるものではなく、他の供給部、例えば、第一供給部301や第三供給部303であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、粘着シートの検査や製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…粘着シート製造装置、2…シート送り部、3…粘着剤供給部、30…三層ダイ、300…ダイ本体、301…第一供給部、302…第二供給部、303…第三供給部、31…第一ポンプ、32…第二ポンプ、33…第三ポンプ、4…乾燥部、5…検査装置、51…撮像部、51A…光源、51B…カメラ、51C…フレーム、51D…進退機構、52…凹凸比演算部、521…二値化部、522…面積比算出部、53…判定部、54…表示部、6…制御部、7…シート巻取部、8…パーソナルコンピューター、81…操作部、82…記憶部、C…微粒子、M…粘着シート、R…樹脂層、RM1…第一層、RM2…第二層、RM3…第三層、RM…樹脂部分、RP…凸部、RR…凹部、S…シート
図1
図2
図3
図4
図5