(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のエアクリーナでは、クリーナケースに別体の吸気ダクトを接続するので、組立工数が増える。
【0005】
本発明は、吸気音の抑制を図りつつ、組立工数の増加を抑えることができるエアクリーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のエアクリーナは、エンジンへの吸気を浄化するクリーナエレメントと、前記クリーナエレメントが収納されたクリーナケースとを備え、前記クリーナケースに空気取入口が設けられ、前記空気取入口から前記クリーナケースの内側に突出する空気導入ダクトが、前記クリーナケースに一体形成されている。
【0007】
上記構成によれば、空気導入ダクトがクリーナケースに一体形成されているので、部品点数が少なくなるうえに、組立工数も減る。また、空気導入ダクトが内側に延びているので、クリーナケース内部に空気を導入する吸気通路の長さを確保し易くなり、吸気音の抑制を図ることができる。さらに、空気導入ダクトが内側に延びるので、エアクリーナ周辺の部品と空気導入ダクトとの干渉を防ぐことができる。
【0008】
本発明において、前記空気導入ダクトの周壁の一部分が、前記クリーナケースの外壁の一部分を形成していることが好ましい。この構成によれば、空気導入ダクトをクリーナケースに一体形成した場合でも、クリーナケースの重量が増加するのを抑制できる。
【0009】
本発明において、前記クリーナケースは、前記クリーナエレメントの上流側に位置する立壁を有し、前記立壁に前記空気導入ダクトの出口が対向していることが好ましい。この構成によれば、空気導入ダクトからクリーナケース内に導入された空気が立壁に衝突するので、空気とともに流入する水分が好適に分離される。
【0010】
本発明において、前記空気導入ダクトは、長手方向に垂直な断面形状において、出口の外周部の周方向の一部の外径が、残余の部分の外径よりも小さく形成されていることが好ましい。この構成によれば、空気導入ダクトを長尺に形成しつつ、空気導入ダクトの出口部分がクリーナケースの内部の他の部分に干渉するのを防止できる。
【0011】
この場合、前記空気導入ダクトは、その軸心が出口側に向かってクリーナエレメントに近づくように傾斜しており、前記空気導入ダクトの出口部の前記クリーナエレメント側の外周部が、残余の外周部に比べて外径が小さく形成されていることが好ましい。この構成によれば、空気導入ダクトを長尺に形成しつつ、空気導入ダクトとクリーナエレメントとの干渉を防止できる。
【0012】
本発明のエアクリーナは、自動二輪車のヘッドパイプとライダー用シートとの間で前記エンジンの上方に配置され、単一の前記空気取入口が前方を向いて配置され、前記クリーナケースは下側の第1ケース半体と上側の第2ケース半体とを有し、これら第1および第2ケース半体の間に前記クリーナエレメントが位置しており、前記第1ケース半体に前記空気導入ダクトが一体形成され、前記第1ケース半体は前半部が後半部よりも下方に突出しており、前記クリーナケースにスロットルボディに接続されるファンネルが設けられ、前記ファンネルの出口は前記第1ケース半体の前記前半部の後方で前記後半部の下方の空間に下方に開口していることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、空気は、空気導入ダクトから後方に向かってエアクリーナの第1ケース半体内へ導入されたのち、上方に偏向してクリーナエレメントを通過して第2ケース半体に流れ、ファンネルを介して下方に流れてエンジンへ供給される。このように、空気導入ダクト、クリーナエレメント、ファンネル等を効率よく省スペースで配置しつつ、これらの部品に必要な作用を確保できる。例えば、空気導入ダクトは、吸気音を低減させるために長く構成されるのが好ましく、クリーナエレメントは、浄化促進と吸気抵抗低減を達成するために面積を大きくすることが要求され、クリーナエレメントの二次側のクリーン室は、出力特性および出力絶対値の向上のために大きな容量が必要で、ファンネルは、ダウンドラフト吸気とするために、下側を向いていることが好ましい。このような要請が、上記構成によって満たされる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエアクリーナによれば、吸気音の抑制を図りつつ、組立工数の増加を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。本明細書において、「左側」および「右側」は、自動二輪車に乗車した運転者から見た左右側をいう。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係るエアクリーナを備えた自動二輪車の側面図である。
この自動二輪車の車体フレームFRは、前半部を形成するメインフレーム1と、後半部を形成するリヤフレーム2とを有している。メインフレーム1は、前端に設けられたヘッドパイプ4から後方斜め下方に延びるメインフレーム片1aを有している。
図2に示すように、メインフレーム片1aは左右一対設けられている。左右一対のメインフレーム片1a,1aの車幅方向間隔は、前半部ではヘッドパイプ4から後方に向かって徐々に大きくなっており、中間部から後半部では略一定である。メインフレーム片1a,1aは、後部で車幅方向に延びるクロス部材1bにより連結されている。
【0018】
図1に示すように、リヤフレーム2は、クロス部材1bから後方に延びるシートレール2aと、メインフレーム片1aの後端部に前端が接続されて、この前端から後方斜め上方に延びてシートレール2aの下面に連結される補強パイプ2bとを有している。シートレール2aおよび補強パイプ2bも左右一対設けられている。
【0019】
ヘッドパイプ4にステアリングシャフト(図示せず)を介してフロントフォーク8が回動自在に軸支されている。フロントフォーク8の上端部に操向用のハンドル6が固定され、フロントフォーク8の下端部に前輪10が取り付けられている。
【0020】
メインフレーム1の後端部に、スイングアームブラケット9が設けられている。このスイングアームブラケット9に取り付けたピボット軸16の回りに、スイングアーム12が上下揺動自在に軸支されている。このスイングアーム12の後端部に、後輪14が回転自在に支持されている。メインフレーム1の下部でスイングアームブラケット9の前側に、エンジンEが取り付けられている。エンジンEがチェーンのような動力伝達部材11を介して後輪14を駆動する。本実施形態のエンジンは、2つの気筒が車幅方向に並んで配置された2気筒4サイクルエンジンであり、各気筒が鉛直方向に対して大概45°以下の角度で前傾している。ただし、エンジンの形式はこれに限定されない。
【0021】
メインフレーム1のメインフレーム片1aの上部に燃料タンク15が配置され、リヤフレーム2のシートレール2aにライダー用シート18および同乗者用シート20が支持されている。
【0022】
エンジンEのクランクケース21の上部に接続されたシリンダ23は、シリンダ軸線が上方に向かって前方に傾斜している。シリンダ23の鉛直方向に対する傾斜角度は大概45°以下である。シリンダ23の上部に接続されたシリンダヘッド25の前面の排気ポート(図示せず)に接続された2本の排気管22が、エンジンEの下方で合流し、エンジンEと後輪14との間に配置されたマフラ24に接続されている。
【0023】
シリンダヘッド25の後部の吸気ポート26に、スロットルボディ28が接続されている。ヘッドパイプ4とライダー用シート18との間で、エンジンEのシリンダヘッド25の上方で、燃料タンク15の下方に、エアクリーナ30が配置され、スロットルボディ28に接続されている。つまり、エアクリーナ30は、スロットルボディ28を介してエンジンEに支持されている。
【0024】
図3に示すように、エアクリーナ30は、エンジンEへの吸気を濾過するクリーナエレメント32と、クリーナエレメント32が収納されたクリーナケース34とを備えている。詳細には、クリーナケース34は下側の第1ケース半体36と上側の第2ケース半体38とを有し、これら第1および第2ケース半体36,38の間にクリーナエレメント32が位置している。第1および第2ケース半体36,38は、樹脂製の型成形品である。
【0025】
下側の第1ケース半体36と上側の第2ケース半体38とが合わせ面35で重合されて、複数のボルト40により連結され、クリーナエレメント32が、ボルト40の締結力により第1および第2ケース半体36,38の間に挟持されている。つまり、クリーナエレメント32は、第1ケース半体36と上側の第2ケース半体38との合わせ面35に沿って配置されている。これら第1ケース半体36および第2ケース半体38の内部に、クリーナエレメント32の上流側のダーティ室42と、クリーナエレメント32の下流側のクリーン室44とが形成されている。すなわち、ダーティ室42はクリーナエレメント32を通過する前の空気が充填される空間であり、クリーン室44はクリーナエレメント32を通過した後の空気が充填される空間である。この明細書で、「上流」および「下流」とは、吸気の流れ方向の上流および下流をいう。
【0026】
詳細には、第1ケース半体36は、前半部36fが後半部36rよりも、第1ケース半体36と第2ケース半体38との合わせ面35を基準として合わせ面35から見て下方に突出しており、第1ケース半体36の前半部36fの後方で後半部36rの下方には空間が形成されている。この空間に、前記スロットルボディ28が配置されている。クリーナエレメント32は、
図4に示すように、第1ケース半体36の前半部36fと第2ケース半体38との間に配置されている。すなわち、第1ケース半体36の前半部36fの内部がダーティ室42を構成し、第2ケース半体38の内部と第1ケース半体36の後半部36rの内部とがクリーン室44を構成する。このように、クリーン室44は、容量が大きく形成されている。
【0027】
図2に示すように、エアクリーナ30は、平面視で、左右一対のメインフレーム片1a,1aの間で、左右のメインフレーム片1a,1aの車幅方向間隔が広い領域に配置されている。これにより、エアクリーナ30の容量が確保しやすい。なお、
図2では、上側の第2ケース半体38が省略され、第1ケース半体36のみが図示されている。
【0028】
第1ケース半体36の前壁36aに、
図4に示すように、前方に開口した空気取入口46が設けられており、空気取入口46から第1ケース半体36の内側(ダーティ室42)に突出する空気導入ダクト48が形成されている。空気導入ダクト48は、型成形により第1ケース半体36と一体形成されている。
【0029】
第1ケース半体36の後半部36rの底壁に、上下方向を向く貫通孔からなるパイプ挿通孔50が形成されている。パイプ挿通孔50は、
図2に示すように、車幅方向に並んで2つ設けられている。各パイプ挿通孔50,50に、エアクリーナ30の出口を構成するファンネル52が装着されている。
図4に示すファンネル52の出口52aは、第1ケース半体36の前半部36fの後方で後半部36rの下方の空間に位置して下方に開口し、スロットルボディ28に接続されている。
【0030】
第1ケース半体36は、合わせ面35に直交する直交方向D1に関して、ダクト48部分を除いて、合わせ面35から直交方向D1の一方(下方)に向かって、直交方向D1に垂直な断面形状が小さくなるように形成されている。ここで、直交方向D1は、型抜き方向D1と一致する。同様に、第2ケース半体38は、合わせ面35に直交する直交方向D1に関して、合わせ面35から直交方向D1の他方(上方)に向かって、直交方向D1に垂直な断面形状が小さくなるように形成されている。これにより、第1および第2ケース半体36,38は、抜き勾配がつくので、ダクト48部分を除いて、直交方向(型抜き方向)D1に合わさる2つの分割成形型によって形成される。
【0031】
ダクト48部分は、その軸心AXが直交方向(型抜き方向)D1に交差する交差方向に延びている。ダクト48部分を形成するために、交差方向(軸心AX方向)に移動可能なスライド型が用いられる。具体的には、2つの成形型にスライド型が挿入された状態で、第1ケース半体36を形成するための型空間が形成される。この型空間に成形材料が充填されて固化した状態で、分割成形型が直交方向D1に分離され、さらに、スライド型が交差方向に分離されることで、第1ケース半体36と空気導入ダクト48とが同時に形成される。
【0032】
一方、空気導入ダクト48は、単一の円筒状であり、
図2に示すように、第1ケース半体36の前半部36fの車幅方向中央部に配置されている。換言すれば、空気導入ダクト48の車幅方向位置は、2つのファンネル52,52の車幅方向中間位置と一致する。これにより、エアクリーナ30内部での吸気の偏りを防ぎやすい。
【0033】
図5に示すように、空気導入ダクト48の周壁の一部分、本実施形態では底壁48aが、クリーナケース34の底壁34aの一部分を形成している。また、クリーナケース34の底面における空気導入ダクト48の底壁48aで構成される部分以外の部分は、空気導入ダクト48の底壁48aで構成される部分よりも下方に凹んでいる。換言すれば、クリーナケース34の底面における空気導入ダクト48の底壁48aで構成される部分は、それ以外の部分よりも高い位置にある。これにより、吸気から分離された水分が空気導入ダクト48を逆流することが防がれて、クリーナケース34の底壁34aに設けた水抜き孔55から流出し易い。
【0034】
本実施形態では、単一の円筒形状の空気導入ダクト48が設けられている。
図4に示すように、空気導入ダクト48の長さは、少なくともクリーナケース34の肉厚tよりも大きい。空気導入ダクト48の長さは、クリーナケース34の肉厚tの3倍以上であることが好ましい。「空気導入ダクト48の長さ」とは、空気導入ダクト48の軸心AX方向の長さ、つまり、円筒形の空気導入ダクト48の入口端(前端)54から出口端(後端)56までの長さをいう。つまり、空気導入ダクト48の入口端54が、空気取入口46を構成する。
【0035】
空気導入ダクト48を長くすると、吸気音を低減する効果があるが、その反面、摩擦抵抗が増すので吸気効率は低下する。一方、空気導入ダクト48の径(通路面積)を大きくすると、吸気効率は向上するが、その反面、吸気音は大きくなる。このような吸気音と吸気効率とのバランスを考慮して、空気導入ダクト48の長さが決定される。
【0036】
空気導入ダクト48の軸心AXは、空気導入ダクト48の入口面、すなわち第1ケース半体36の前面36bに対して傾斜している。詳細には、空気導入ダクト48の軸心AXが前後方向に延び、第1ケース半体36の前面36bが上方に向かって後方に傾斜している。これにより開口面積を大きくし易くなる。また、空気導入ダクト48の軸心AXは、クリーナケースの底壁34aとほぼ平行に延びている。これにより、空気導入ダクト48の底壁48aを、クリーナケース34の底壁34aの一部分として形成し易くなっている。
【0037】
空気導入ダクト48の先端(前端)の空気取入口46は、クリーナケース34の外表面、具体的には第1ケース半体36の前面36bよりもケース内側(後方)に凹入した位置にある。これにより、空気導入ダクト48が、エアクリーナ30の周辺の部品、例えば、ケーブル等と干渉するのを防止できる。また、空気導入ダクト48の空気取入口46よりも前方にあるクリーナケース34の外表面が、ガイドの役割を果たし、空気取入口46への吸気の取入れが安定する。
【0038】
このように、空気導入ダクト48の前端が、クリーナケース34の外表面よりもケース内側(後方)に位置しているので、空気導入ダクト48の長さを稼ぐために、空気導入ダクト48は、クリーナケース34の外表面からクリーナケース34の内部を後方に延びている。空気導入ダクト48の後端56は、ダーティ室42の前後方向のほぼ中間に位置している。
【0039】
クリーナケース34は、クリーナエレメント32の上流側、すなわちダーティ室42に、上下方向に延びる立壁58を有している。立壁58は、第1ケース半体36の前半部36fの後壁、すなわち、ダーティ室42の後壁を構成する。空気導入ダクト48の後端の出口58が、この立壁58に前後方向に対向している。したがって、空気導入ダクト48から導入された吸気Aは、立壁58に向けて放出され、直接、クリーナエレメント32に放出されない。これにより、吸気Aに含まれる水分が立壁58に当たって分離され、下方に滴下するので、クリーナエレメント32に、吸気中の水分が付着するのを避けることができる。
【0040】
空気導入ダクト48の軸心AXが、出口側に向かってクリーナエレメント32に近づくように傾斜しており、空気導入ダクト48の出口部の外周が、クリーナエレメント32と平行な面に切り欠かれている。つまり、空気導入ダクト48の出口部におけるクリーナエレメント32に近接する部分に、クリーナエレメント32と平行な曲折部60が形成されている。このように、空気導入ダクト48の長さおよび径は、クリーナエレメント32に干渉しない寸法に設定されている。
【0041】
換言すれば、空気導入ダクト48の出口部のクリーナエレメント32側の外周部が、残余の外周部に比べて外径が小さく形成されている。つまり、空気導入ダクト48は、長手方向(軸心AX方向)に垂直な断面形状において、出口58の外周部の周方向の一部の外径が、残余の部分の外径よりも小さく形成されている。
【0042】
図6に示すように、空気導入ダクト48の出口部とクリーナエレメント32との間、詳細には、空気導入ダクト48の曲折部60とクリーナエレメント32との間には、隙間Gが形成されている。換言すれば、空気導入ダクト48は、クリーナエレメント32に対して隙間Gを開けて配置されている。これにより、クリーナエレメント32が吸気圧により上下方向に振動、変形した場合でも、クリーナエレメント32が空気導入ダクト48に干渉するのを防ぐことができる。その結果、クリーナエレメント32の損傷、劣化を防ぐことができる。
【0043】
特に、本実施形態では、空気導入ダクト48の出口部の上部が、クリーナエレメント32の左右方向の中央部で前後方向の中央部に近接しているので、クリーナエレメント32が変形した場合に、空気導入ダクト48の出口部の上部とクリーナエレメント32の変形量が大きい中央部とが干渉しやすい。しかしながら、空気導入ダクト48の出口部に曲折部60を設けることで、このような干渉を防ぐことができる。また、クリーナエレメント32が空気導入ダクト48の出口部よりも上方に配置されているので、雨水がクリーナエレメント32に付着するのを防ぎ易い。
【0044】
図4に示す空気導入ダクト48は、その軸心AXが下流に向かってクリーナエレメント32に近づくように配置されている。一方、空気導入ダクト48の曲折部60の上面は、下流に向かって軸心AXに近づくように傾斜している。これにより、空気導入ダクト48の軸心AX方向に流れる吸気が、空気導入ダクト48の出口部でクリーナエレメント32側に拡散するのが抑制される。その結果、吸気が空気導入ダクト48からクリーナエレメント32に向かって放出されるのが抑制され、クリーナエレメント32が、局所的に損傷、劣化するのを防ぐことができる。本実施形態では、空気導入ダクト48の曲折部60の上面は、立壁58と直交するように形成されている。これにより、吸気を立壁58に案内し易くなる。このような構成とすることで、空気導入ダクト48を大形化して吸気音を抑制しつつ、クリーナエレメント32を保護できる。
【0045】
図1のエンジンEが始動すると、動力伝達部材11を介して後輪14が回転し、自動二輪車が走行する。エンジンEへの吸気Aは、ヘッドパイプ4の左右両側から後方に流れて、
図3に示すエアクリーナ30に達する。この吸気Aが、
図4に示す空気導入ダクト48を後方に向かって流れ、エアクリーナ30における第1ケース半体36の前半部36f内のダーティ室42に導入される。
【0046】
空気導入ダクト48の出口58からダーティ室42に導入された吸気Aは、立壁58に向けて放出され、前述のとおり、立壁58に衝突することで吸気内の水分が分離される。水分が分離された後、吸気Aは上方に偏向して流れ、クリーナエレメント32を通過して第2ケース半体38内のクリーン室44に導入される。クリーン室44に導入された吸気Aは、ファンネル52を介して下方に流れ、
図3のスロットルボディ28に送られ、スロットルボディ28内の吸気通路を下方に流れてエンジンEに供給される。
【0047】
上記構成によれば、
図4に示す空気導入ダクト48がクリーナケース34に一体形成されているので、部品点数が少なくなるうえに、組立工数も減る。別体の空気導入ダクトを第1ケース半体36の内部に取り付ける場合、空気導入ダクトを第1ケース半体36に取り付けるための空間が必要となり、設置スペースの制約等からケース自体を大形化できない場合、空気導入ダクトの長さを確保しにくい。上記構成では、空気導入ダクト48がクリーナケース34に一体形成されているので、このような空間が不要となるから、空気導入ダクトの長さを確保しやすい。
【0048】
また、空気導入ダクト48がクリーナケース34の内側に延びているので、クリーナケース34内部に空気を導入する吸気通路の長さが確保される。これにより、吸気音の抑制を図ることができる。特に、自動二輪車の運転者は前傾姿勢で操縦することが多いので、エンジンEの上方にエアクリーナ30を配置すると、運転者の頭部がエアクリーナ30の近くに位置することになり、吸気音の低減が望まれる。さらに、空気導入ダクト48がクリーナケース34の内側に延びるので、特に、エアクリーナ30の着脱時に、エアクリーナ30周辺の部品と空気導入ダクト48とが干渉するのを防ぐことができる。したがって、エアクリーナ30の着脱作業が容易になる。
【0049】
また、クリーナケース34の第1ケース半体36の型抜き方向D1に対して空気導入ダクト48の軸心AXが傾斜しており(直交していない)、かつ、クリーナケース34の底壁34aが空気導入ダクト48の軸心AXとほぼ平行に延びている。これにより、クリーナケース34の分割成形型とスライド型を組み合わせて、空気導入ダクト48を第1ケース半体36に一体形成し易い。
【0050】
具体的には、型抜き方向D1の一方(下方)に移動させる一方の成形型と、型抜き方向D1の他方(上方)に移動させる他方の成形型と、軸心AX方向に移動させるスライド型とで第1ケース半体36に空気導入ダクト48を一体形成する場合、上記構成により、一方の成形型を型抜き方向D1の一方(下方)に移動させる際に、スライド型が円滑に軸心AX方向に移動する。
【0051】
図5に示す空気導入ダクト48の底壁48aが、クリーナケース34の底壁34aの一部分を形成しているので、空気導入ダクト48をクリーナケース34に一体形成した場合でも、クリーナケース34の重量が増加するのを抑制できる。また、クリーナケース34の底壁34aが、空気導入ダクト48の底壁48aにより補強されるので、ダクト形成部分のクリーナケース34の外壁の変形が抑制される。これにより、クリーナケース34の肉厚を薄くしたり、軽量化を図ったりすることができる。このように、クリーナケース34の外壁の変形が抑制されることで、第1ケース半体36が振動することに起因する異音の発生を抑制できる。
【0052】
図4に示すクリーナケース34の立壁58に、空気導入ダクト48の出口56が対向している。これにより、空気導入ダクト48からクリーナケース34内に導入された吸気が立壁58に衝突するので、吸気とともに流入する水分が好適に分離される。その結果、クリーナエレメント32に水分が付着するのを抑制できる。
【0053】
また、空気導入ダクト48の出口部におけるクリーナエレメント32に近接する部分に、クリーナエレメント32と平行な曲折部60が形成されている。これにより、空気導入ダクト48を長尺および大径として吸気音の抑制を図りながら、空気導入ダクト48がクリーナエレメント32に干渉するのを防止できる。
【0054】
吸気は、空気導入ダクト48から後方に向かってダーティ室42へ導入されたのち、上方に偏向してクリーナエレメント32を通過してクリーン室44に流れ、ファンネル52を介して下方に流れてエンジンE(
図3)へ供給される。このように、エアクリーナ30に、空気導入ダクト48、クリーナエレメント32およびファンネル52を効率よく省スペースで配置しつつ、吸気Aを円滑に流すことができる。
【0055】
具体的には、空気導入ダクト48は、吸気音を低減させるために長く構成されるのが好ましい。上記構成では、空気導入ダクト48は、前端の入口56がクリーナケース34の外表面よりも後方に形成され、入口56からクリーナケース34の内側に延びるとともに、出口部に曲折部60を設け、クリーナエレメント32に近接する位置まで延びている。これにより、エアクリーナ30周辺の部品やクリーナエレメント32との干渉を防ぎつつ、空気導入ダクト48を長く構成できる。
【0056】
また、クリーナエレメント32は、浄化促進と吸気抵抗低減を達成するために面積を大きくすることが要求される。上記構成では、
図2に示す左右のメインフレーム片1a,1aの間で、車幅方向間隔が最も大きくなる箇所にダーティ室42が位置し、ダーティ室42の上方にクリーナエレメント32が配置されている。したがって、クリーナエレメント32の表面積が大きくなる。
【0057】
さらに、クリーン室44は、出力特性および出力絶対値の向上のために容量が必要である。上記構成では、クリーン室44は、左右のメインフレーム片1a,1aの間で、車幅方向間隔が大きくなる箇所に配置され、かつ、平面視でクロス部材1bの近傍まで後方に形成されている。したがって、クリーン室44の容量を大きくできる。
【0058】
また、ファンネル52は、燃焼室への円滑な流れを保ちやすいダウンドラフト吸気とするために、下側を向いていることが好ましい。上記構成では、
図3に示すように、ファンネル52の出口52aは、第1ケース半体36の前半部36fの後方で後半部36rの下方の空間に下方に開口し、スロットルボディ28に接続されている。詳細には、第1ケース半体36の前半部36fの後方で後半部36rの下方の空間と、前傾したシリンダヘッド25の後方で上方の空間とに渡って、スロットルボディ28が配置されている。したがって、エンジン周辺の空間を圧迫することなく、ダウンドラフト吸気を実現できる。
【0059】
クリーナケース34の内部に空気導入ダクト48の出口部が干渉するような凸部分がある場合、空気導入ダクト48の出口の外周部の周方向の一部の外径を、残余の部分の外径よりも小さく形成してもよい。これにより、空気導入ダクト48を長尺に形成しつつ、空気導入ダクト48の出口部分がクリーナケース34の内部の他の部分に干渉するのを防止できる。
【0060】
上記実施形態では、空気取入口46はエアクリーナ30の前部に配置されたが、空気取入口46の配置は、これに限定されず、例えば、エアクリーナ30の後部、上部、下部または側部に配置されてもよい。空気取入口46の軸心は、クリーナエレメント32の表面(ろ過面)に直交しない方向に延びることが好ましく、ろ過面に対して平行に延びてもよい。
【0061】
空気導入ダクト48は、クリーナケース34の内側に延びる部分を有する構造であればよく、クリーナケース34の外側に突出する部分を有していてもよい。これにより、空気導入ダクト48の長さを一層大きくできる。この場合も、空気導入ダクト48が内側に延びる部分がなく外側にのみ突出する構造に比べて、クリーナケース34と空気導入ダクト48とを含む構造体の外形が大きくなるのを防ぎつつ、吸気通路の長さを確保できる。
【0062】
空気導入ダクト48は、その軸線AXが入口側(上流側)に向かって下方に傾斜するように配置してもよい。この場合、空気導入ダクト48内に浸入した雨水を空気導入ダクト48から排出し易くなる。上記実施形態では、合わせ面35にクリーナエレメント32が配置され、空気取入口46が合わせ面35よりも下方に設けられているので、軸線AXが出口側(下流側)に向かって上方に傾斜するように配置しても、空気導入ダクト48とクリーナエレメント32との干渉を防ぎ易い。
【0063】
なお、本発明の応用例のエアクリーナでは、空気導入ダクト48がクリーナケース34から外側へ延びている。
具体的には、本発明の応用例のエアクリーナは、エンジンへの吸気を浄化するクリーナエレメントと前記クリーナエレメントが収納されたクリーナケースとを備え、前記クリーナケースに空気取入口が設けられ、前記空気取入口は前記クリーナケースの外表面から突出した位置にあり、前記空気取入口から前記クリーナケースの外側に突出する空気導入ダクトが一体成形されている。
【0064】
この応用例のエアクリーナによれば、空気導入ダクトがクリーナケースに一体形成されているので、部品点数が少なくなるうえに、組立工数も減る。
【0065】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、空気導入ダクト48は、複数であってもよく、円筒形以外の形状、例えば横断面が楕円形状の筒形であってもよい。また、エアクリーナ30は、エンジンEの上方以外に配置されてもよく、例えば、エンジンEの後方に配置されてもよい。さらに、本発明のエアクリーナは、自動二輪車以外の車両のエンジンにも適用可能で、地上に設置されるエンジンにも適用できる。エンジンEは、1気筒エンジンでもよく、3気筒以上の多気筒エンジンであってもよく、V形エンジンであってもよい。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。