特許第6693818号(P6693818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6693818埋込管の設置工法並びにこれに使用する埋込管切断及び設置装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6693818
(24)【登録日】2020年4月20日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】埋込管の設置工法並びにこれに使用する埋込管切断及び設置装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/06 20060101AFI20200427BHJP
   C10B 29/08 20060101ALN20200427BHJP
【FI】
   E04G23/06 B
   !C10B29/08
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-123521(P2016-123521)
(22)【出願日】2016年6月22日
(65)【公開番号】特開2017-227033(P2017-227033A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000178011
【氏名又は名称】山九株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】本田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】杉村 裕二
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐輝
【審査官】 前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−188526(JP,A)
【文献】 特開2005−307627(JP,A)
【文献】 特公昭54−020443(JP,B1)
【文献】 特開昭56−044713(JP,A)
【文献】 特開2001−152501(JP,A)
【文献】 特開2004−346500(JP,A)
【文献】 特公昭49−011113(JP,B1)
【文献】 米国特許第04364798(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/06
C10B 29/08
B26D 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵩上げを行うべき炉床盤の既設スラブ上に列設された複数の既設埋込管をその埋込面に対して平行にフラット切断し、
前記既設スラブ上に所定方向に沿って敷設した仮設レール上に移動台車を支持すると共に、前記既設埋込管と整合する投入孔を有するテンプレートを前記移動台車に装架し、
切断された所定の前記既設埋込管まで前記移動台車を移動し、前記テンプレートの投入孔を介して新設埋込管を投入して前記既設埋込管に嵌装し、
前記新設埋込管を前記既設スラブ上に固定し、前記移動台車を固定された当該新設埋込管から離脱移動させ、
前記既設スラブ上にコンクリートを打設して前記炉床盤を嵩上げすることを特徴とする埋込管の設置工法。
【請求項2】
前記投入孔にソケットを装着し、このソケットを介して前記新設埋込管が投入されることを特徴とする請求項1に記載の埋込管の設置工法。
【請求項3】
前記ソケットは前記新設埋込管の固定後、前記テンプレートから取り外されることを特徴とする請求項2に記載の埋込管の設置工法。
【請求項4】
前記新設埋込管は前記既設埋込管に嵌装後、速乾グラウト又は固定部材により前記既設スラブ上に固定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の埋込管の設置工法。
【請求項5】
既設スラブ上に配列された既設埋込管を切断するための埋込管切断装置であって、
ベース上に回動可能に支持されたアームに搭載された駆動モータと、
前記駆動モータの出力軸に取り付けられ、前記ベースの下面で回転するカッタと、
前記既設埋込管に対する位置決め固定手段と、を有し、
前記既設埋込管をその埋込面に対して平行にフラット切断することを特徴とする埋込管切断装置。
【請求項6】
前記ベースの高さ調整及び水平出し等を行う位置調整機構を備えたことを特徴とする請求項5に記載の埋込管切断装置。
【請求項7】
既設スラブ上に配列された既設埋込管に新設埋込管を設置するための埋込管設置装置であって、
前記既設スラブ上に敷設された仮設レール上を移動可能に支持された移動台車と、
前記既設埋込管と整合する前記新設埋込管の投入孔を有し、前記移動台車に搭載されるテンプレートと、を有し、
切断された所定の前記既設埋込管まで前記移動台車が移動し、前記テンプレートの投入孔を介して前記新設埋込管を投入し前記既設埋込管に嵌装させるようにしたことを特徴とする埋込管設置装置。
【請求項8】
前記移動台車は、前記新設埋込管が前記既設埋込管へ嵌装された後、所定方向に移動可能であることを特徴とする請求項7に記載の埋込管設置装置。
【請求項9】
前記テンプレートの投入孔に装着されるソケットを有し、前記新設埋込管が前記投入孔から投入された後、前記ソケットを着脱可能であることを特徴とする請求項7又は8に記載の埋込管設置装置。
【請求項10】
前記移動台車は、コロ付アジャストボルトをフレーム材に有し、該移動台車の固定後においても前記テンプレートの位置並びにレベル調整が可能であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の埋込管設置装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉において嵩上げを行う炉床盤に新設埋込管を設置するための埋込管切断及び設置装置と、これらの装置を使用して行う新設埋込管の設置工法に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉の蓄熱室は、燃焼室からの燃焼排ガスを導入して熱を奪い、その熱で上部にある燃焼室に供給する燃料又は空気の温度を高める。蓄熱室には、燃料や空気を供給する多数の配管が列設され、これらの配管が燃焼室の炉床盤において埋込管として所定のピッチ間隔で配設される。
【0003】
既設の炉床盤の構造変更等のために、炉床盤のコンクリートスラブを嵩上げし、更にこれに伴い埋込管(鋼管)を新設する必要が生じる。その場合、先ずスラブ面から露出する既設の埋込管の根元を切断し、その後、コンクリートスラブの嵩上げ分に対応する長さの埋込管(新設埋込管)にすべく、鞘管等と称する埋込管を既設の埋込管に取付設置する。
【0004】
この種の鋼管等の切断装置等として、例えば特許文献1に記載の鋼管切断機や特許文献2に記載の鋼管杭切断装置の取付具、あるいは特許文献3に記載の鋼管杭用切断装置等が知られている。
また、埋込管の設置方法等として、特許文献4に記載の埋込管の設置方法等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−210611号公報
【特許文献2】特開平11−188526号公報
【特許文献3】特開2005−307627号公報
【特許文献4】特開平10−152987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1等に係る従来の切断装置では、鋼管あるいは鋼管杭が鋼管埋込面(グランド面(GL面)やコンクリート面)に対して傾いている場合、鋼管の切断面がそのGL面に対してフラットにならない。また、特許文献4等に係る埋込管の設置方法等ではコンクリートスラブの嵩上げにはそのまま適用することができず、従来では多数の埋込管を効率よく、高い精度で設置できることが実質的に困難であった。
【0007】
本発明はかかる実情に鑑み、効率よく、高い精度で新設埋込管を設置できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の埋込管の設置工法は、嵩上げを行うべき炉床盤の既設スラブ上に列設された複数の既設埋込管をその埋込面に対して平行にフラット切断し、前記既設スラブ上に所定方向に沿って敷設した仮設レール上に移動台車を支持すると共に、前記既設埋込管と整合する投入孔を有するテンプレートを前記移動台車に装架し、切断された所定の前記既設埋込管まで前記移動台車を移動し、前記テンプレートの投入孔を介して新設埋込管を投入して前記既設埋込管に嵌装し、前記新設埋込管を前記既設スラブ上に固定し、前記移動台車を固定された当該新設埋込管から離脱移動させ、前記既設スラブ上にコンクリートを打設して前記炉床盤を嵩上げすることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の埋込管の設置工法において、前記投入孔にソケットを装着し、このソケットを介して前記新設埋込管が投入されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の埋込管の設置工法において、前記ソケットは前記新設埋込管の固定後、前記テンプレートから取り外されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の埋込管の設置工法において、前記新設埋込管は前記既設埋込管に嵌装後、速乾グラウト又は固定部材により前記既設スラブ上に固定されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の埋込管切断装置は、既設スラブ上に配列された既設埋込管を切断するための埋込管切断装置であって、ベース上に回動可能に支持されたアームに搭載された駆動モータと、前記駆動モータの出力軸に取り付けられ、前記ベースの下面で回転するカッタと、前記既設埋込管に対する位置決め固定手段と、を有し、前記既設埋込管をその埋込面に対して平行にフラット切断することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の埋込管切断装置において、前記ベースの高さ調整及び水平出し等を行う位置調整機構を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の埋込管設置装置は、既設スラブ上に配列された既設埋込管に新設埋込管を設置するための埋込管設置装置であって、前記既設スラブ上に敷設された仮設レール上を移動可能に支持された移動台車と、前記既設埋込管と整合する前記新設埋込管の投入孔を有し、前記移動台車に搭載されるテンプレートと、を有し、切断された所定の前記既設埋込管まで前記移動台車が移動し、前記テンプレートの投入孔を介して前記新設埋込管を投入し前記既設埋込管に嵌装させるようにしたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の埋込管設置装置において、前記移動台車は、前記新設埋込管が前記既設埋込管へ嵌装された後、所定方向に移動可能であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の埋込管設置装置において、前記テンプレートの投入孔に装着されるソケットを有し、前記新設埋込管が前記投入孔から投入された後、前記ソケットを着脱可能である。
また、本発明の埋込管設置装置において、前記移動台車は、コロ付アジャストボルトをフレーム材に有し、該移動台車の固定後においても前記テンプレートの位置並びにレベル調整が可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、埋込管切断装置により多数の既設埋込管を効率よく切断し、迅速な切断作業を行うことができる。既設埋込管は埋込面に対して平行にフラット切断される。その後、新設埋込管が既設埋込管の上方から嵌装される際に円滑な設置作業を確保することができる。
また、埋込管設置装置においてガイドレール上で移動台車を走行させながら、多数の新設埋込管を効率よく設置し、迅速な設置作業を行うことができる。この場合、テンプレートやソケットを使って新設埋込管を適正且つ円滑に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る嵩上げを行うコークス炉の例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るコークス炉の炉床盤及び埋込管設置装置の配置構成等を模式的に示す平面図である。
図3】本発明の実施形態における埋込管切断装置を示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態における埋込管切断装置の上面図である。
図5】本発明の実施形態における埋込管切断装置の側面図である。
図6】本発明の実施形態におけるコークス炉の既設スラブ上に配置された移動台車を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態における移動台車の構成例を示す上面図及び正面図である。
図8】本発明の実施形態における移動台車の構成例を示す側面図である。
図9】本発明の実施形態における移動台車の走行輪及びガイドレールの構成例をそれぞれ示す図である。
図10】本発明の実施形態における新設埋込管の投入工程を模式的に示す図である。
図11】本発明の実施形態に係るソケットの斜視図である。
図12】本発明の実施形態に係るソケットの構成例をそれぞれ示す図である。
図13】本発明の実施形態における新設埋込管のアンカー固定工程を模式的に示す図である。
図14】本発明の実施形態における新設埋込管の設置工法における主要工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき、本発明における好適な実施の形態を説明する。
本発明の実施形態において、例えば図1のように老朽化したコークス炉を解体して、既存の同じ基礎部(炉床盤1)の上に同規模で新しい炉体を建設するものとし、既存の炉床盤1にコンクリートを打設してその嵩上げを行う。この場合、当該コークス炉において、図2(A)のように炉床盤1の既設スラブ2上には多数の既設埋込管3が列設されている。なお、既設スラブ2はPS(Pusher Side)及びCS(Coke Side)間の炉長方向(本例では図2(A)のX方向)で、炉団長方向(図2(A)のY方向)に沿った極めて広い領域に亘っている。
【0020】
本発明では先ず、既設スラブ2に埋め込まれている既設埋込管3をその埋込面から所定高さ位置で、その垂直方向に対してフラット切断する。図3は、既設埋込管3を切断するための埋込管切断装置10を示している。また、図4は埋込管切断装置10の上面図、図5はその側面図である。埋込管切断装置10において、ベース11上には支軸12のまわりに回動可能にアーム13が支持され、グリップ14を把持してアーム13を実質的に水平方向に図4の矢印Aのように回動することができる。アーム13の略中央部上に電動モータ15(駆動モータ)が搭載され、図5のようにその出力軸16がベース11の下面に突出し、出力軸16にはカッタ17が取り付けられる。なお、電動モータ15はギヤドモータ等であってよく、そのギヤ部に出力軸16を設定することができる。また、グリップ14の適所には電動モータ15を始動又は停止させるための手元スイッチが装着され、電動モータ15を適宜ON/OFF制御することができるようになっている。アーム13が回動した際、出力軸16を通過させるための切欠き18が形成されている。
【0021】
本例ではベース11は矩形状を呈し、その一端側には既設埋込管3を入れ込むための開口部19が開設され、この開口部19の奥部には既設埋込管3を受けて、カッタ17による切断の際に一体的に位置決め支持する受け部20が立設される。本例では受け部20は既設埋込管3の外周と二点接触するように、例えばV字状あるいは直角に近い角度で一対の受け部20が配置される。受け部20の側近には、既設埋込管3を固定するための緊締用ワイヤ21を張架するクランプ22を備える。受け部20、ワイヤ21及びクランプ22等を含んで、既設埋込管3に対する位置決め固定手段が構成される。なお、開口部19には着脱可能な防護カバー23を取り付けてもよい。
【0022】
ベース11の角部には複数(本例では四隅に4つ)のアジャストボルト24が螺着し、これらのアジャストボルト24により埋込管切断装置10の位置調整機構が構成される。アジャストボルト24を適宜調節してベース11の高さ調整及び水平出し等を行うことができる。その場合、例えば防護カバー23上に水平器25を搭載してもよい。
【0023】
上記の場合、例えばベース11の矩形状の一端側に一対のキャスタ26を取り付けると共に、他端側にハンドル27を付帯させることができる。既設埋込管3の切断作業の前後には、ハンドル27を持ってキャスタ26にて埋込管切断装置10を既設スラブ2上で適宜移動させることができる。
【0024】
既設埋込管3の切断に際して、埋込管切断装置10を既設埋込管3まで移動し、受け部20に当接させる。この場合、ワイヤ21を介してその既設埋込管3をクランプ22により仮固定しておいてもよい。アジャストボルト24を適宜調節してベース14の水平出しを行い、クランプ22により既設埋込管3を本固定する。電動モータ15を作動させると共に、アーム13を図4の矢印Aのように回動することで、カッタ17によって既設埋込管3を切断することができる。その際、水平出しされたベース11に支持されるアーム13を介して電動モータ15が搭載されているため、カッタ17によって既設埋込管3をその埋込面に対して平行にフラット切断することができる。
【0025】
次に、上記のように所定長さに切断された既設埋込管3に対して新設埋込管が設置される。図2(B)に模式的に示すように新設埋込管を設置するための埋込管設置装置30が使用される。この埋込管設置装置30は図6に示したように既設スラブ2上で炉長方向に横架されて、炉団長方向に移動可能な移動台車31を備える。既設スラブ2上には炉団長方向に沿って、複数のガイドレール32(仮設レール)が敷設される。本例では炉長方向に所定のピッチ間隔で4本のガイドレール32が敷設され、これらのガイドレール32上を移動台車31が走行するようになっている。移動台車31はチャンネル鋼等の鋼材を用いて、図7のように炉長方向に長尺に形成された枠型のフレーム33を有し、フレーム33の上に後述するテンプレートが搭載される。
【0026】
より具体的にはフレーム33は上下2段のフレーム材33A及び33Bを相互に結合してなり、下段側のフレーム材33Bには図8に示されるように各ガイドレール32上を移動可能な2個ずつ計8個の走行輪34が取り付けられる。ここで、図7に示すようにガイドレール32のうち内側いずれかのガイドレール32A及びこのガイドレール32A上を走行する走行輪34Aは、図9を参照して他のガイドレール32と異なるガイド構造を有する。即ち、図9(A)のように走行輪34Aはガイドレール32Aを両側から挟むように構成され、これにより走行輪34Aの脱輪を防ぐようにする。一方、他の走行輪34は図9(B)はガイドレール32上に載置されるが、ガイドレール32A及び走行輪34Aによる位置規制作用により全ての走行輪34が脱輪することなく安定走行する。なお、ガイドレール32(及びガイドレール32A)は、図9(A),(B)のように既設スラブ2に対してアンカーボルト35を介して水平出しされて敷設される。
【0027】
ここで、上段のフレーム材33Aにおいて図8に示されるように、炉団長方向一端側のフレーム材33aは、テンプレート36の載置面よりも高い位置に配置される。テンプレート36は図2に示されるように既設埋込管3と整合するように配置形成された複数(2窯分を網羅する)の投入孔37を有し、上段のフレーム材33A上に載置されてセットされる。図10に模式的に示すように投入孔37から新設埋込管4が投入され、既に切断された既設埋込管3の上方から嵌装される。なお、新設埋込管4は既設埋込管3よりも大径であり、その上端が、上段のフレーム材33Aにセットされているテンプレート36の下面直近に位置するように設置される。上記のようにフレーム材33aをテンプレート36の載置面よりも高い位置に配置することで、新設埋込管4とフレーム材33aとが干渉することなく、移動台車31を所定方向に走行させることが可能になる。
【0028】
テンプレート36を上段のフレーム材33A上にセットする際、図8あるいは図10に示したようにコロ付アジャストボルト38を介してフレーム材33A上に載置されるので、移動台車31が固定された後も上下方向及び水平方向に位置調整ができる。この位置調整後、図示しないアンカー部材等によりテンプレート36を上段のフレーム材33Aに固定することができる。
【0029】
また、埋込管設置装置30においてテンプレート36の投入孔37から新設埋込管4を投入する際、図11(A),(B)に示すようなソケット39が使用される。このソケット39は、新設埋込管4を投入孔37から投入する際これをガイドすると共に、新設埋込管4を既設スラブ2上にアンカー固定する際、新設埋込管4を一時的に保持しておく。ソケット39の具体的構成において図12を参照して、テンプレート36の投入孔37に挿入可能な外径を持つ円筒部39aと、テンプレート36上に重なるフランジ部39bとを主要構成とし、新設埋込管4をテンプレート36に投入する際、図12(B)のように予めテンプレート36に装着される。
【0030】
ソケット39は円筒部39aの内孔の上部付近に段部39cを有し、この段部39cにて後述する新設埋込管4の係止バーと係合するようになっている。新設埋込管4にはテンプレート36への投入に先立ち、その上端部に予め係止バー40が付設されている。この係止バー40は段部39cの内径と略同等な長さを有する棒状部材により形成され、例えば点付け等により新設埋込管4の直径方向に沿って固定される。新設埋込管4がソケット39内に挿入されると、係止バー40が段部39cと係合し、図12(B)のように新設埋込管4はソケット39内に係止される。更に、ソケット39には図12(C)のように円筒部39aの母線方向に沿って段部39cを通る一対のスリット39dが形成される。図11(B)のようにソケット39を矢印Bのように回動して、係止バー40とスリット39dを位置合せすることで、係止バー40及び段部39cの係合を外し、即ちソケット39を図11(B)の状態から引き上げることができる。
【0031】
ソケット39を介してテンプレート36に投入された新設埋込管4は、図13に示されるように下部付近で固定部材41を介して既設スラブ2上にアンカー固定することができる。この例では数本の棒状の固定部材41を用い、各固定部材41の一端側が新設埋込管4の外周面に溶接等で固着されると共に、それらの他端側が既設スラブ2に埋設されたアンカーと結合される。
【0032】
図14は、本発明による新設埋込管4の設置工法における主要工程を示している。本発明工法では先ず、既設スラブ2上の既設埋込管3が順次、埋込管切断装置10により所定長さに切断される。
次に既設埋込管3の切断後、既設スラブ2上にガイドレール32が敷設されると共に、ガイドレール32上に移動台車31が移載される。
次に移動台車31が所定の既設埋込管3まで移動し、その上段のフレーム材33A上所定位置にテンプレート36が装架される。
次にテンプレート36の各投入孔37にソケット39が装着される。
【0033】
次に図14(A)のようにソケット39を介して、テンプレート36の投入孔37から新設埋込管4が投入される。この際、新設埋込管4の上端部に係止バー40が付設されている。
次に図14(B)のように新設埋込管4が既設埋込管3の上方から嵌装される。この場合、既設埋込管3の根元まわりに速乾グラウト42を施設しておき、この速乾グラウト42によって新設埋込管4の下端と既設スラブ2の隙間を埋めると共に、新設埋込管4を固定することができる。
次に図14(C)のようにソケット39をテンプレート36から取り外し、これにより次に新設埋込管4を設置すべき既設埋込管3まで移動台車31を移動させる。
次に図14(D)のように設置された新設埋込管4は、固定部材41を介して既設スラブ2上にアンカー固定される。
【0034】
なお、図14(B)のように新設埋込管4が既設埋込管3に嵌装された時点で、即ち移動台車31の移動前に固定部材41によりアンカー固定することも可能である。
また、新設埋込管4の設置後、係止バー40は適宜撤去される。
【0035】
既設スラブ2上の全ての既設埋込管3に対して順次、新設埋込管4を設置し、その際新設埋込管4相互間を、固定部材を介して結合し、剛性等を強化することができる。新設埋込管4の所定の高さ位置までコンクリートが打設され、これにより炉床盤1を嵩上げすることができる。
【0036】
本発明によれば、埋込管切断装置10により多数の既設埋込管3を効率よく切断し、迅速な切断作業を行うことができる。この場合、既設埋込管3は埋込面に対して平行にフラット切断される。その後、新設埋込管4が既設埋込管3の上方から嵌装される際に円滑な設置作業を確保することができる。
【0037】
また、埋込管設置装置30においてガイドレール32上で移動台車31を走行させながら、多数の新設埋込管4を効率よく設置し、迅速な設置作業を行うことができる。この場合、テンプレート36やソケット39を使って新設埋込管4を適正且つ円滑に設置することができる。
【0038】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
上記実施形態において、既設埋込管3や新設埋込管4個数及びそれらの配列等は図示例のものに限定されるものでない。
【符号の説明】
【0039】
1 炉床盤、2 既設スラブ、3 既設埋込管、4 新設埋込管、10 埋込管切断装置、11 ベース、12 支軸、13 アーム、14 グリップ、15電動モータ、16 出力軸、17 カッタ、18 切欠き、19 開口部、20 受け部、21 ワイヤ、22 クランプ、23 防護カバー、24 アジャストボルト、25 水平器、26 キャスタ、27 ハンドル、30 埋込管設置装置、31 移動台車、32 ガイドレール、33 フレーム、34 走行輪、35 アンカーボルト、36 テンプレート、37 投入孔、38 アジャストボルト、39 ソケット、40 係止バー、41 固定部材、42 速乾グラウト。
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