(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
沸点近傍の温度(例えば、160℃)に加熱されたリン酸水溶液に基板を浸漬してエッチング処理を行う装置において、乾燥した気体をリン酸水溶液中に吹き出させて気泡を発生させると、気泡の温度上昇と、リン酸水溶液から蒸発した水蒸気が気泡に入り込むこととによって、気泡径が拡大し、気泡によって基板がダメージを受ける。
【0005】
湿った気体を、リン酸水溶液中に吹き出させて気泡を発生させれば、リン酸水溶液から蒸発した水蒸気が気泡内へ入り込むことが抑制されて気泡の拡大が抑制され、基板が受けるダメージを軽減できると考えられる一方、気泡が小さすぎると、リン酸水溶液の撹拌性能が低下してエッチングの効率が低下すると考えられる。
【0006】
このため、撹拌性能の低下を抑制しつつ、基板が気泡から受けるダメージを抑制するためには、発生した気泡が基板を通過するときの気泡径を、撹拌性能を維持しつつ、基板のダメージを抑制できる大きさに制御する必要が有る。このためには、湿った気体の湿度を、この条件を満たす適切な範囲に制御する必要が有る。
【0007】
特許文献1に示される各手法によって生成される湿った気体を、リン酸水溶液中に供給する場合、当該湿った気体の湿度を所望の範囲に制御することは容易ではない。このため、基板のダメージを抑制しつつ基板の処理効率を向上することが困難であるといった問題がある。
【0008】
本発明は、こうした問題を解決するためになされたもので、曝気撹拌されているリン酸水溶液によって基板を処理する技術において、基板のダメージを抑制できるとともに、基板の処理効率を向上できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、第1の態様に係る基板処理装置は、リン酸水溶液を収容し、当該リン酸水溶液に浸漬された基板にエッチング処理を施す処理槽と、水蒸気を供給する水蒸気供給機構と、不活性ガスを供給する不活性ガス供給機構と、前記水蒸気供給機構から前記水蒸気を供給されるとともに、前記不活性ガス供給機構から前記不活性ガスを供給され、供給された前記水蒸気と前記不活性ガスとを混合して混合気体を生成する混合機構と、前記混合機構から前記混合気体を供給されるとともに、供給された前記混合気体を前記リン酸水溶液中に吹き出して前記混合気体の気泡を発生させる気泡発生器と、前記混合気体の湿度が目標湿度になるように、前記水蒸気供給機構が供給する前記水蒸気の流量と前記不活性ガス供給機構が供給する前記不活性ガスの流量とを調整する流量調整機構と、を備える。
【0010】
第2の態様に係る基板処理装置は、第1の態様に係る基板処理装置であって、前記流量調整機構は、前記混合気体の湿度が前記目標湿度になるとともに、前記混合気体の流量が目標流量になるように、前記水蒸気供給機構が供給する前記水蒸気の流量と前記不活性ガス供給機構が供給する前記不活性ガスの流量とを調整する。
【0011】
第3の態様に係る基板処理装置は、第2の態様に係る基板処理装置であって、前記混合気体の湿度が前記目標湿度になるとともに、前記混合気体の流量が前記目標流量になるときの前記水蒸気供給機構が供給する前記水蒸気の流量と前記不活性ガス供給機構が供給する前記不活性ガスの流量とを取得する流量取得部と、前記流量取得部が取得した前記水蒸気の流量と前記不活性ガスの流量とに基づいて前記流量調整機構を制御する調整機構制御部と、をさらに備える。
【0012】
第4の態様に係る基板処理装置は、第3の態様に係る基板処理装置であって、前記流量取得部は、前記混合気体の湿度が前記目標湿度になるとともに、前記混合気体の流量が前記目標流量になるときの、前記水蒸気供給機構が供給する前記水蒸気の流量と前記不活性ガス供給機構が供給する前記不活性ガスの流量とを、定められた演算を行うことによって取得する。
【0013】
第5の態様に係る基板処理装置は、第1から第4の何れか1つの態様に係る基板処理装置であって、前記水蒸気供給機構が供給する前記水蒸気を、前記混合機構に供給される前に加熱する水蒸気加熱ヒーターと、前記不活性ガス供給機構が供給する前記不活性ガスを、前記混合機構に供給される前に加熱する不活性ガス加熱ヒーターを備える。
【0014】
第6の態様に係る基板処理装置は、第1から第5の何れか1つの態様に係る基板処理装置であって、前記混合気体を、前記気泡発生器に供給される前に加熱する混合気体加熱ヒーターをさらに備える。
【0015】
第7の態様に係る基板処理方法は、リン酸水溶液に浸漬された基板にエッチング処理を施す基板処理方法であって、水蒸気を供給する水蒸気供給ステップと、不活性ガスを供給する不活性ガス供給ステップと、前記水蒸気供給ステップにおいて供給される前記水蒸気と、前記不活性ガス供給ステップにおいて供給される前記不活性ガスとを混合して混合気体を生成する混合ステップと、前記混合気体を前記リン酸水溶液中に吹き出して前記混合気体の気泡を発生させる気泡発生ステップと、前記混合気体の湿度が目標湿度になるように、前記水蒸気供給ステップにおいて供給される前記水蒸気の流量と前記不活性ガス供給ステップにおいて供給される前記不活性ガスの流量とを調整する流量調整ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0016】
第1の態様に係る発明によれば、混合機構は、水蒸気と不活性ガスとを混合して混合気体を生成し、気泡発生器は、混合気体をリン酸水溶液中に吹き出して混合気体の気泡を発生させる。そして、流量調整機構は、混合気体の湿度が目標湿度になるように、水蒸気供給機構が供給する水蒸気の流量と不活性ガス供給機構が供給する不活性ガスの流量とを調整する。従って、基板が気泡から受けるダメージを表現する指標値が所定の条件を満たし、かつ、基板の処理効率を表現する指標値が所定の条件を満たすときの気泡の気泡径に対応した湿度を目標湿度に設定すれば、基板のダメージを抑制できるとともに、基板の処理効率を向上できる。
【0017】
第2の態様に係る発明によれば、流量調整機構は、水蒸気供給機構が供給する水蒸気の流量と不活性ガス供給機構が供給する不活性ガスの流量とを調整して、混合気体の流量を目標流量にしつつ、混合気体の湿度を目標湿度とすることができる。従って、処理槽中のリン酸水溶液が気泡によって撹拌される範囲を安定させつつ、基板のダメージの抑制と、基板の処理効率の向上とを図ることができる。
【0018】
第3の態様に係る発明によれば、流量取得部は、混合気体の湿度が目標湿度になるとともに、混合気体の流量が目標流量になるときの水蒸気の流量と不活性ガスの流量とを取得する。調整機構制御部は、流量取得部が取得した水蒸気の流量と不活性ガスの流量とに基づいて流量調整機構を制御する。従って、目標湿度と目標流量が変動する場合でも、混合気体の流量を目標流量とし、混合気体の湿度を目標湿度とすることができる。
【0019】
第4の態様に係る発明によれば、流量取得部は、混合気体の湿度が目標湿度になるとともに、混合気体の流量が目標流量になるときの、水蒸気供給機構が供給する水蒸気の流量と不活性ガス供給機構が供給する不活性ガスの流量とを、定められた演算を行うことによって取得する。従って、目標湿度と目標流量が変動する場合でも目標湿度と目標流量に応じた水蒸気の流量と不活性ガスの流量とを取得することができる。
【0020】
第5の態様に係る発明によれば、水蒸気加熱ヒーターは、水蒸気供給機構が供給する水蒸気を、混合機構に供給される前に加熱し、不活性ガス加熱ヒーターは、不活性ガス供給機構が供給する不活性ガスを、混合機構に供給される前に加熱する。従って、混合機構に供給された水蒸気と不活性ガスとが混合されて混合気体が生成される際に、混合気体の温度が低下して結露が生ずることを抑制できる。
【0021】
第6の態様に係る発明によれば、混合気体加熱ヒーターは、混合気体を、気泡発生器に供給される前に加熱する。従って、気泡発生器に供給される前に、混合気体の温度が低下することを抑制できる。
【0022】
第7の態様に係る発明によれば、混合ステップは、水蒸気と不活性ガスとを混合して混合気体を生成し、気泡発生ステップは、混合気体をリン酸水溶液中に吹き出して混合気体の気泡を発生させる。そして、流量調整ステップは、混合気体の湿度が目標湿度になるように、水蒸気供給ステップにおいて供給される水蒸気の流量と不活性ガス供給ステップにおいて供給される不活性ガスの流量とを調整する。従って、基板が気泡から受けるダメージを表現する指標値が所定の条件を満たし、かつ、基板の処理効率を表現する指標値が所定の条件を満たすときの気泡の気泡径に対応した湿度を目標湿度に設定すれば、基板のダメージを抑制できるとともに、基板の処理効率を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、実施の形態について説明する。以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。また、以下に参照する各図では、理解容易のため、各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。また、各図では、同様な構成および機能を有する部分に同じ符号が付され、下記説明では重複説明が省略される。上下方向は鉛直方向であり、処理槽内の気泡発生器に対してリフタが上である。
【0025】
<1.基板処理装置の構成>
図1は、実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を模式的に示す側面模式図である。基板処理装置1は、バッチ組みされた複数枚の基板W(基板群W1)に対して一括してリン酸水溶液を用いたエッチング処理を施すバッチ式の基板処理装置である。
【0026】
基板処理装置1は、処理槽61と、水蒸気82を供給する水蒸気供給機構2と、不活性ガス83を供給する不活性ガス供給機構3とを備える。処理槽61は、リン酸水溶液87を収容し、リン酸水溶液87に浸漬された基板W(基板群W1)にエッチング処理を施す。
【0027】
基板処理装置1は、水蒸気供給機構2が供給する水蒸気82の流量Q0と不活性ガス供給機構3が供給する不活性ガス83の流量Q1とを調整する流量調整機構4と、混合機構5と、処理槽61内に収容された気泡発生器64とを、さらに備えている。混合機構5は、水蒸気供給機構2から水蒸気82が供給されるとともに、不活性ガス供給機構3から不活性ガス83が供給され、供給された水蒸気82と不活性ガス83とを混合して混合気体84を生成する。気泡発生器64は、混合機構5から混合気体84を供給されるとともに、供給された混合気体84をリン酸水溶液87中に吹き出して混合気体84の気泡85を発生させる。
【0028】
<水蒸気供給機構2>
水蒸気供給機構2は、混合機構5の配管51に水蒸気82を供給する。水蒸気供給機構2は、水蒸気82を生成するための密閉された水蒸気生成槽22と、純水81を供給する純水供給源21と、水蒸気生成槽22に収容された純水81を加熱して沸騰させ、水蒸気82を生成するヒーター25とを備えている。
【0029】
水蒸気生成槽22は、底壁と、底壁を取り囲んで底壁の周縁から立設された周壁と、周壁の先端に当接して周壁の先端を閉鎖する上壁とを含んでいる。
【0030】
純水供給源21は、配管23の一端に連通している。純水供給源21は、純水を貯留する不図示の貯留槽からポンプ等によって純水を配管23に供給する。配管23は、水蒸気生成槽22の上壁を貫通して水蒸気生成槽22内に配設されており、配管23の他端は、水蒸気生成槽22内で開口している。純水供給源21は、配管23への純水81の供給/停止を切り替える不図示の開閉弁を備えており、当該開閉弁の動作は制御部130によって制御される。純水供給源21は、水蒸気生成槽22内に収容された純水81の水位が基準水位となるように水蒸気生成槽22に純水81を供給する。
【0031】
純水81が基準水位に達した状態では、純水81の水面と、水蒸気生成槽22の上壁との間に空間29が形成される。水蒸気供給機構2は、水蒸気生成槽22の上壁を貫通する配管24を備えている。配管24の一端は、空間29において開口している。配管24の他端は、混合機構5の配管51に連通している。配管24の経路の途中には流量調整機構4の流量制御機器41が設けられている。
【0032】
ヒーター25が水蒸気生成槽22内の純水81を加熱して水蒸気82を生成すると、水蒸気生成槽22内の純水81の水位が低下する。このため、水蒸気供給機構2は、純水81の水位が基準水位よりも低下したことを検出可能な水位センサー27をさらに備えている。水位センサー27の出力信号は、制御部130に供給される。制御部130は、水位センサー27の出力信号に基づいて、水蒸気生成槽22内の純水81の水位が基準水位に保たれるように純水供給源21の当該開閉弁の開閉動作を制御する。
【0033】
水蒸気供給機構2は、外部と水蒸気生成槽22内とを連通する配管と、当該配管の途中に設けられた圧力調整弁26とをさらに備えている。圧力調整弁26は、水蒸気生成槽22の湿度を一定にし、また、水蒸気生成槽22を保護するために、水蒸気生成槽22内の圧力の急激な変動を抑制する。圧力調整弁26は、例えば、制御部130によって制御される電動アクチュエーターを備えている。制御部130は、電動アクチュエーターを制御して、圧力調整弁26に設定圧力P0を自在に設定する。圧力調整弁26は、空間29における水蒸気82の圧力が設定圧力P0よりも高くなると、開放されて水蒸気82の圧力を下げ、水蒸気82の圧力が設定圧力P0以下であれば、閉じる。ヒーター25が純水81を加熱して沸騰させると、水蒸気82が生成されて空間29に充満する。空間29に充満した水蒸気82は、配管24を介して配管51へと供給される。配管51へ供給される水蒸気82の流量は、流量制御機器41によって調整される。
【0034】
また、水蒸気供給機構2は、ヒーター(「水蒸気加熱ヒーター」)28をさらに備えている。ヒーター28は、配管24の周囲を覆うように設けられている。ヒーター28は、制御部130の制御に従って配管24を加熱することによって、水蒸気供給機構2が配管24によって供給する水蒸気82を、混合機構5の配管51に供給される前に加熱して水蒸気82の温度を調整する。
【0035】
また、水蒸気供給機構2は、純水81の温度を測定する温度センサー91と、生成される水蒸気82の湿度を測定する湿度センサー92と、配管24の温度を測定する温度センサー93と、配管24を流れる水蒸気82の流量を測定する流量計94とをさらに備えている。温度センサー91、湿度センサー92、温度センサー93、流量計94の測定値は、制御部130に供給される。
【0036】
<不活性ガス供給機構3>
不活性ガス供給機構3は、混合機構5の配管51に乾燥した不活性ガス(図示の例では、乾燥したN
2ガス)83を供給する。不活性ガス供給機構3は、不活性ガス供給源31と、配管34と、配管34の途中に設けられたレギュレーター32、ヒーター(「不活性ガス加熱ヒーター」)33とを備えている。配管34は、一端が不活性ガス供給源31に連通しており、他端が配管51に連通している。
【0037】
不活性ガス供給源31は、圧縮されているとともに、乾燥している不活性ガス83を貯留している。不活性ガス供給源31は、貯留している不活性ガス83を配管34に供給する。レギュレーター32は、不活性ガス供給源31から供給される不活性ガス83の圧力を定められた値に調整する。ヒーター33は、制御部130の制御に従って、不活性ガス83が混合機構5に供給される前に不活性ガス83を加熱することによって、不活性ガス83の温度を調整する。
【0038】
配管34には、流量調整機構4の流量制御機器42がさらに設けられている。流量制御機器42は、不活性ガス供給源31から配管51に供給される不活性ガス83の流量を調整する。
【0039】
また、不活性ガス供給機構3は、配管34を流れる不活性ガス83の温度と流量とをそれぞれ測定する温度センサー95と流量計96とをさらに備えている。温度センサー95、流量計96の測定値は、制御部130に供給される。
【0040】
<流量調整機構4>
流量調整機構4は、水蒸気供給機構2が供給する水蒸気82の流量と不活性ガス供給機構3が供給する不活性ガス83の流量とを調整する。流量調整機構4は、配管24の経路途中に設けられた流量制御機器41と、配管34の経路途中に設けられた流量制御機器42とを備えている。
【0041】
流量制御機器41は、配管24を流れる水蒸気82の単位時間当りの供給量、すなわち水蒸気82の流量Q0を制御する。流量制御機器42は、配管34を流れる不活性ガス83の単位時間当りの供給量、すなわち不活性ガス83の流量Q1を制御する。流量制御機器41、42は、例えば、マスフローコントローラー(MFC)を備えて構成される。制御部130は、水蒸気82(不活性ガス83)の単位時間当りの供給量を、流量制御機器41(42)に設定する。これにより、水蒸気82(不活性ガス83)の単位時間当りの供給量は、設定された供給量に調整される。流量制御機器41、42として、例えば、制御部130からの制御により弁の開度が調節可能な電動弁などが採用されてもよい。
【0042】
<混合機構5>
混合機構5は、水蒸気供給機構2から配管24を介して水蒸気82を供給されるとともに、不活性ガス供給機構3から配管34を介して不活性ガス83を供給される。混合機構5は、供給された水蒸気82と不活性ガス83とを混合して混合気体84を生成する。
【0043】
混合機構5は、配管(「混合配管」)51と、ヒーター(「混合気体加熱ヒーター」)52とを備えている。ヒーター52は、配管51の周囲を覆うように設けられている。配管51の一端には、配管24の他端と、配管34の他端とが接続されている。配管51の他端は、基板処理機構6の気泡発生器64に連通している。
【0044】
水蒸気供給機構2の水蒸気生成槽22において生成された水蒸気82は、その流量Q0を流量制御機器41によって調整された後、配管51に供給される。不活性ガス供給機構3の不活性ガス供給源31から供給される乾燥した不活性ガス83は、その流量Q1を流量制御機器42によって調整された後、配管51に供給される。配管51に供給された水蒸気82と不活性ガス83とは配管51において互いに混合される。これにより、混合気体84が生成される。ヒーター52は、制御部130の制御に従って配管51を加熱することによって、混合気体84が気泡発生器64に供給される前に混合気体84を加熱して混合気体84の温度を調整する。
【0045】
混合機構5は、ヒーター52を流れる混合気体84の温度、湿度、および流量をそれぞれ測定する温度センサー97、湿度センサー98、および流量計99をさらに備えている。温度センサー97、湿度センサー98、流量計99の測定値は、制御部130に供給される。
【0046】
<基板処理機構6>
図2、
図3は、基板処理装置1の基板処理機構6の概略構成を模式的に示す斜視図である。
図2、
図3は、基板処理機構6の処理槽61に収容された気泡発生器64、リフタ68等を透視した図として示されている。
図3では、
図2に示されるリフタ68の記載が省略されている。
図4は、基板処理機構6の気泡発生器64を模式的に示す側面断面図である。
【0047】
基板処理機構6は、バッチ組みされた複数枚の基板W(基板群W1)に対して一括してリン酸水溶液87を用いたエッチング処理を施す。基板処理機構6は、処理槽61と、処理槽61に収容された気泡発生器64と、基板群W1を支持して昇降可能なリフタ68とを備えている。
【0048】
処理槽61は、リン酸水溶液87を収容し、リン酸水溶液87に浸漬された基板W(基板群W1)にエッチング処理を施す。処理槽61は、底壁と、底壁を取り囲んで底壁の周縁から立設された周壁とを含んでいる。処理槽61の上部には開口部が形成されている。当該開口部は、処理槽61の周壁の先端によって囲まれて形成されている。
【0049】
処理槽61内には、配管(「リン酸水溶液供給配管」)62が設けられている。配管62には、処理槽61の外部に設けられた不図示のリン酸水溶液供給源が連通している。リン酸水溶液供給源は、ヒーターによって、予め、沸点近傍の温度(例えば、160℃)に加熱したリン酸水溶液87を配管62に供給する。配管62の周壁には、多数の吐出口(不図示)が形成されている。配管62に供給されたリン酸水溶液87は、当該吐出口から処理槽61内に吐出されて、処理槽61に収容される。
【0050】
処理槽61の底壁には、平板状の保持版67が底板と平行に設けられている。保持版67の上面には、少なくとも1つ(図示の例では2つ)の筒状の気泡発生器64が取り付けられている。
【0051】
気泡発生器64は、混合機構5から混合気体84を供給されるとともに、供給された混合気体84を、処理槽61内のリン酸水溶液87中に吹き出して混合気体84の気泡85を発生させる。気泡発生器64は、高温のリン酸水溶液87に曝されるため、例えば、石英によって、例えば、円筒状に形成されることが好ましい。
【0052】
気泡発生器64の一端には、配管51の他端が接続されている。気泡発生器64の内周面は、配管51から供給される混合気体84が流れる流路65を成している。気泡発生器64の先端(他端)は、壁部によって閉塞されている。気泡発生器64の周壁のうち上側部分には、多数の吐出口66が形成されている。各吐出口66は、気泡発生器64内の流路65に連通し、気泡発生器64の外周面に開口している。各吐出口66の口径D1は、例えば、0.1mm〜0.5mmに設定される。気泡発生器64は、好ましくは、リフタ68によって支持される複数の基板Wの配列方向に沿って延設されている。
【0053】
気泡発生器64は、配管51から供給された混合気体84を、流路65を経て各吐出口66からリン酸水溶液87中に吹き出すことによって、混合気体84の気泡85をリン酸水溶液87中に発生させる。気泡85がリン酸水溶液87内で上昇する過程で、気泡85内には、リン酸水溶液87から蒸発した水蒸気が入り込もうとする。しかし、気泡85を形成する混合気体84は、乾燥しておらず、その容器絶対湿度が目標湿度に設定されているため、気泡85内への水蒸気の入り込みが抑制される。これにより、水蒸気の入り込みによる気泡85の拡大が抑制される。従って、リン酸水溶液87に浸漬される基板Wが気泡85から受けるダメージを抑制できる。
【0054】
リフタ68は、鉛直方向に立った姿勢の板状のリフタヘッド68aと、基板支持部材68bとを備えている。リフタヘッド68aは、処理槽61の外部に設けられた不図示の昇降機構によって昇降される。
【0055】
基板支持部材68bは、鉛直方向に立った姿勢で水平方向に配列された複数の基板W(基板群W1)を下方から支持可能に設けられている。基板支持部材68bは、複数(図示の例では3個)の長尺部材を含んでいる。当該複数の長尺部材は、リフタヘッド68aの一主面の下端部分から互いに同じ方向(当該一主面の法線方向)に沿って、リフタヘッド68aに対してそれぞれ同じ側に延設されている。互いに隣り合う長尺部材の間には、隙間が設けられている。これにより、リフタ68に支持された各基板Wの下端側の周縁は、リフタ68の下方に設けられている気泡発生器64に対向する。
【0056】
各基板Wは、その主面がリフタヘッド68aの一主面と平行になるように、基板支持部材68bによって支持される。基板支持部材68bの各長尺部材の上端部分のうち複数の基板Wを支持する複数の部分には、不図示の複数の溝部が形成されている。各溝部は、基板Wの厚みよりも若干広い幅で、基板Wの主面(リフタヘッド68aの一主面)に沿って形成されている。各溝部の深さは、基板Wの周縁部の幅に略等しくなるように設定されている。これにより、基板Wは、その周縁部を各長尺部材のうち対応する各溝部によって挟まれた状態で、基板支持部材68bによって下方から支持される。
【0057】
リフタ68は、処理槽61の上方の受渡し位置において、予めバッチ組みされた基板群W1を不図示の搬送ロボットから受け取る。リフタ68は、基板群W1を受け取った後に、処理槽61の開口部から処理槽61内に降下することによって、基板群W1を一括して処理槽61内に収容し、リン酸水溶液87に浸漬する。基板群W1に対する処理が終了すると、リフタ68は、処理槽61の上方の受渡し位置まで上昇して、処理済みの基板群W1を搬送ロボットに引き渡す。
【0058】
<制御部130>
基板処理装置1は、その各部の制御のために制御部130を備えている。制御部130のハードウエアとしての構成は、例えば、一般的なコンピュータと同様のものを採用できる。すなわち、制御部130は、例えば、各種演算処理を行うCPU11、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM(不図示)、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM(不図示)、操作者の入力を受け付ける入力部(不図示)、および各種処理に対応したプログラムPGやデータなどを記憶しておく記憶装置14を不図示のバスラインに接続して構成されている。記憶装置14には、入力部等を介して設定される混合気体84の目標温度T2、目標流量Q2、目標湿度H2なども記憶されている。
【0059】
制御部130において、プログラムPGに記述された手順に従って主制御部としてのCPU11が演算処理を行うことにより、基板処理装置1の各部を制御する各種の機能部が実現される。具体的には、CPU11は、例えば、流量取得部15、および調整機構制御部16などの各機能部として動作する。
【0060】
流量取得部15は、混合気体84の湿度が目標湿度H2になるとともに、混合気体84の流量が目標流量Q2になるときの、水蒸気供給機構2が供給する水蒸気82の流量Q0と不活性ガス供給機構3が供給する不活性ガス83の流量Q1とを、定められた演算を行うことによって取得する。流量取得部15は、混合気体84の湿度が目標湿度H2になるとともに、混合気体84の流量が目標流量Q2になるときの水蒸気供給機構2が供給する水蒸気82の流量Q0と不活性ガス供給機構3が供給する不活性ガス83の流量Q1とを取得することもできる。調整機構制御部16は、流量取得部15が取得した水蒸気82の流量Q0と不活性ガス83の流量Q1とに基づいて流量調整機構4を制御する。
【0061】
水蒸気供給機構2、不活性ガス供給機構3、流量調整機構4、および基板処理機構6などの基板処理装置1の各部は、制御部130の制御に従って動作を行う。
【0062】
<2.容積絶対湿度と気泡体積の拡大率との関係について>
図5は、リン酸水溶液87中に吹き出される混合気体84の容積絶対湿度と、リン酸水溶液87中に生ずる混合気体84の気泡85の体積拡大率との関係を理論式より算出して、グラフ形式で示した図である。気泡85の拡大率は、拡大前(気泡発生器64の吐出口66から吐出された直後)の気泡85の体積に対する、拡大後の気泡85の体積の拡大率である。
図5に示されるように、混合気体84の容積絶対湿度が増加すると、気泡の体積の拡大率は減少している。具体的には、例えば、容積絶対湿度が100g/m
3から500g/m
3に増加すると、気泡85の体積の拡大率は、約14倍から約4倍に減少している。
【0063】
<3.基板処理装置の動作>
図6は、基板処理装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
図6に基づいて基板処理装置1の動作の一例について以下に説明する。
【0064】
基板処理装置1による
図6に記載の動作の開始に先立って、作業者は、制御部130の入力部を操作して、処理槽61に供給される混合気体84の目標流量Q2[m
3/s]、目標湿度H2[kg/m
3]、目標温度T2[℃]および水蒸気生成槽22の圧力調整弁26の設定圧力P0を設定する。これらの設定値は、記憶装置14に記憶されてCPU11によって読み出され、制御部130による制御に使用される。結露予防のために目標温度T2は、好ましくは、後述する温度T0よりも高く設定される。
【0065】
基板処理装置1は、水蒸気82の供給を開始する(
図6のステップS10)。より詳細には、圧力調整弁26の設定圧力P0、すなわち水蒸気82の圧力P0が設定されると、制御部130は、飽和蒸気圧を圧力P0として蒸気圧曲線より水蒸気82の温度T0を算出する。
【0066】
制御部130は、温度センサー91によって測定される純水81の温度が算出された温度T0となるように、ヒーター25を制御して純水81の加熱を行う。これにより、水蒸気82が生成され、その供給が開始される。また、制御部130は、温度センサー93が測定する配管24の温度に基づいてヒーター28を制御して配管24の温度が温度T0となるように、すなわち配管24を流れる水蒸気82の温度が温度T0となるように配管24を加熱する。これにより、配管24の結露が抑制される。
【0067】
制御部130の流量取得部15は、混合気体84の設定された目標流量Q2、目標湿度H2と、湿度センサー92によって測定された水蒸気82の湿度H0を式(1)に入力して、水蒸気生成槽22から配管24に供給される水蒸気82の流量Q0を算出する。また、流量取得部15は、水蒸気82の流量Q0と、不活性ガス83の流量Q1との和が混合気体84の目標流量Q2となるように、流量Q1を算出する。
【0069】
制御部130の調整機構制御部16は、水蒸気82の流量が、算出した流量Q0となるように、流量制御機器41を制御して水蒸気82を供給する。
【0070】
制御部130は、配管51で湿度センサー98により測定される混合気体84の湿度をフィードバックされる。制御部130は、混合気体84の湿度が目標湿度H2となるように、水蒸気82の流量Q0の微調整を行う。水蒸気82の流量Q0は、流量計94によって測定される。
【0071】
なお、水蒸気生成槽22で生成される水蒸気82の容積絶対湿度は、水蒸気82を理想気体と仮定すると、水蒸気82の湿度H0は、式(2)によって概算される。
【0073】
基板処理装置1は、不活性ガス83の供給を開始する(ステップS20)。より詳細には、制御部130は、温度センサー95が測定する不活性ガス(乾燥したN
2ガス)83の温度に基づいて、不活性ガス83が温度T1となるようにヒーター33を制御して不活性ガス83を加熱する。制御部130の調整機構制御部16は、不活性ガス83の流量が、算出した流量Q1となるように、流量制御機器42を制御して不活性ガス83を供給する。これにより、不活性ガス供給機構3は、温度T1に加熱された不活性ガス83の配管51への供給を開始する。
【0074】
基板処理装置1は、水蒸気供給機構2が配管24を介して供給する水蒸気82と、不活性ガス供給機構3が配管34を介して供給する不活性ガス83とを、混合機構5の配管51において混合して混合気体84を生成する(ステップS30)。
【0075】
基板処理装置1は、水蒸気82の流量と、不活性ガス83の流量とを調整する(ステップS40)。より具体的には、流量調整機構4は、混合気体84の湿度が目標湿度H2になるとともに、混合気体84の流量が目標流量Q2になるように、水蒸気供給機構2が供給する水蒸気82の流量Q0と不活性ガス供給機構3が供給する不活性ガス83の流量Q1とを調整する。流量調整機構4は、調整機構制御部16の制御下で、混合気体84の湿度が目標湿度H2になるように、水蒸気供給機構2が供給する水蒸気82の流量Q0と不活性ガス供給機構3が供給する不活性ガス83の流量Q1とを調整することもできる。
【0076】
より詳細には、配管51を流れる混合気体84の流量は、流量計99によって測定される。測定された流量は、制御部130にフィードバックされる。制御部130の調整機構制御部16は、混合気体84の流量が目標流量Q2となるように、流量制御機器42を制御して不活性ガス83の流量Q1を調整する。不活性ガス83の流量Q1は、流量計96によって測定される。
【0077】
制御部130は、温度センサー97が測定する混合気体84の温度に基づいて、ヒーター52によって配管51を加熱し、配管51を流れる混合気体84の温度を目標温度T2に調整する。目標温度T2に調整された混合気体84は、配管51を経て処理槽61に供給される。
【0078】
配管51を流れる混合気体84の湿度は、湿度センサー98によって測定される。測定された湿度は、制御部130にフィードバックされる。調整機構制御部16は、流量制御機器41を制御して、混合気体84の湿度が目標湿度H2になるように水蒸気生成槽22から配管24に供給される水蒸気82の流量Q0を調整する。
【0079】
配管51を流れる混合気体84の流量は、流量計99によって測定される。測定された流量は、制御部130にフィードバックされる。制御部130は、混合気体84の流量が目標流量Q2になるように流量制御機器41の設定値を制御して水蒸気生成槽22から配管24に供給される水蒸気82の流量Q0を調整する。
【0080】
基板処理機構6は、配管51を介して供給される混合気体84を気泡発生器64の吐出口66からリン酸水溶液87中に吹き出して、リン酸水溶液87中に混合気体84の気泡85を発生させる(ステップS50)。
【0081】
基板処理装置1が、流量調整機構4を制御する調整機構制御部16を備えていなくてもよい。この場合には、例えば、流量制御機器41、42として手動で開度を調整可能な各調整弁を設けて、各調整弁の開度を作業者が手動で調整することによって、水蒸気82の流量Q0と、不活性ガス83の流量Q1とが調整される。
【0082】
混合機構5は、処理槽61の外部に設けられてもよいし、処理槽61の内部に設けられてもよい。水蒸気供給機構2として基板処理装置1が設置される工場の上記供給設備が用いられてもよい。
【0083】
以上のように構成された本実施形態に係る基板処理装置によれば、混合機構5は、水蒸気82と不活性ガス83とを混合して混合気体84を生成し、気泡発生器64は、混合気体84をリン酸水溶液87中に吹き出して混合気体84の気泡85を発生させる。そして、流量調整機構4は、混合気体84の湿度が目標湿度になるように、水蒸気供給機構2が供給する水蒸気82の流量と不活性ガス供給機構3が供給する不活性ガス83の流量とを調整する。従って、基板Wが気泡85から受けるダメージを表現する指標値が所定の条件を満たし、かつ、基板Wの処理効率を表現する指標値が所定の条件を満たすときの気泡85の気泡径に対応した湿度を目標湿度に設定すれば、基板Wのダメージを抑制できるとともに、基板Wの処理効率を向上できる。
【0084】
また、以上のように構成された本実施形態に係る基板処理装置によれば、流量調整機構4は、水蒸気供給機構2が供給する水蒸気82の流量と不活性ガス供給機構3が供給する不活性ガス83の流量とを調整して、混合気体84の流量を目標流量にしつつ、混合気体84の湿度を目標湿度とすることができる。従って、処理槽61中のリン酸水溶液87が気泡85によって撹拌される範囲を安定させつつ、基板Wのダメージの抑制と、基板Wの処理効率の向上とを図ることができる。
【0085】
また、以上のように構成された本実施形態に係る基板処理装置によれば、流量取得部15は、混合気体84の湿度が目標湿度になるとともに、混合気体84の流量が目標流量になるときの水蒸気82の流量と不活性ガス83の流量とを取得する。調整機構制御部16は、流量取得部15が取得した水蒸気82の流量と不活性ガス83の流量とに基づいて流量調整機構4を制御する。従って、目標湿度と目標流量が変動する場合でも、混合気体84の流量を目標流量とし、混合気体84の湿度を目標湿度とすることができる。
【0086】
また、以上のように構成された本実施形態に係る基板処理装置によれば、流量取得部15は、混合気体84の湿度が目標湿度になるとともに、混合気体84の流量が目標流量になるときの、水蒸気供給機構2が供給する水蒸気82の流量と不活性ガス供給機構3が供給する不活性ガス83の流量とを、定められた演算を行うことによって取得する。従って、目標湿度と目標流量が変動する場合でも目標湿度と目標流量に応じた水蒸気82の流量と不活性ガス83の流量とを取得することができる。
【0087】
また、以上のように構成された本実施形態に係る基板処理装置によれば、ヒーター28は、水蒸気供給機構2が供給する水蒸気82を、混合機構5に供給される前に加熱し、ヒーター33は、不活性ガス供給機構3が供給する不活性ガス83を、混合機構5に供給される前に加熱する。従って、混合機構5に供給された水蒸気82と不活性ガス83とが混合されて混合気体84が生成される際に、混合気体84の温度が低下して結露が生ずることを抑制できる。
【0088】
また、以上のように構成された本実施形態に係る基板処理装置によれば、ヒーター52は、混合気体84を、気泡発生器64に供給される前に加熱する。従って、気泡発生器64に供給される前に、混合気体84の温度が低下することを抑制できる。
【0089】
また、以上のような本実施形態に係る基板処理方法によれば、混合ステップは、水蒸気82と不活性ガス83とを混合して混合気体84を生成し、気泡発生ステップは、混合気体84をリン酸水溶液87中に吹き出して混合気体84の気泡85を発生させる。そして、流量調整ステップは、混合気体84の湿度が目標湿度になるように、水蒸気供給ステップにおいて供給される水蒸気82の流量と不活性ガス供給ステップにおいて供給される不活性ガス83の流量とを調整する。従って、基板Wが気泡85から受けるダメージを表現する指標値が所定の条件を満たし、かつ、基板Wの処理効率を表現する指標値が所定の条件を満たすときの気泡85の気泡径に対応した湿度を目標湿度に設定すれば、基板Wのダメージを抑制できるとともに、基板Wの処理効率を向上できる。
【0090】
本発明は詳細に示され記述されたが、上記の記述は全ての態様において例示であって限定的ではない。したがって、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。