(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切り欠き部が、前記絶縁ホルダの底面に向かうに従って前記第1挿通孔の径が大きくなるように傾斜したテーパー状に形成されている、請求項1に記載の密閉型電池。
前記シール部材の封止部の厚みを100%としたときの前記絶縁ホルダの底面における前記切り欠き部の径方向の長さが10%〜60%である、請求項1または請求項2に記載の密閉型電池。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池などの二次電池は、車両搭載用電源あるいはパソコンや携帯端末等の電源として重要性が高まっている。かかる二次電池は、例えば、電解質物質とともに電極体がケース内に密閉された密閉型電池として構築される。
かかる密閉型電池のケースには、他の電池やモーターなどの外部機器と電気的に接続される電極端子が設けられている。例えば、2個以上の密閉型電池を隣接して配列し、各々の電池の電極端子同士をバスバーを介して接続することによって、複数の電池からなる組電池を構築することができる。
【0003】
かかる電極端子を備えた密閉型電池の一例を
図1に示す。
図1に示す密閉型電池100は、扁平な角型のケース10を備えており、該ケース10の内部に電極体20が収容されている。かかるケース10は、上面が開口した扁平な角型のケース本体12と、当該ケース本体12上面の開口部を塞ぐ蓋体14とを備えており、当該ケース10の上面をなす蓋体14に正負極の電極端子30が設けられている。
各々の電極端子30は、集電部材32と、ボルト34と、外部接続部材36とを備えている。集電部材32の一方の端部32aはケース10内の電極体20と接続され、他方の端部32bはケース10外に露出している。また、ボルト34は、上記した外部機器と電気的に接続される柱状の接続部34aを備えている。そして、この電極端子30では、上記した集電部材32とボルト34とが板状の外部接続部材36によって電気的に接続されている。また、この電極端子30では、上記した各々の部材がケース10(蓋体14)と通電することを防止するために、外部接続部材36と蓋体14との間に絶縁ホルダ38が配置されている。
【0004】
また、かかる電極端子30では、
図2に示すように、ケース10内部において蓋体14と集電部材32とが通電することを防止するために、蓋体14の下面に絶縁性のシール部材39が配置される。
図8に示すように、このシール部材39には、上方に向かって突出する円筒状の封止部39bが形成されており、当該封止部39bが蓋体14の集電部材挿通孔14aに挿通されて絶縁ホルダ38の底面に圧着されている。これによって、蓋体14の集電部材挿通孔14aが絶縁ホルダ38とシール部材39によって覆われるため、蓋体14と集電部材32とが通電することを防止できる。かかる電極端子におけるシール構造の例が特許文献1、2に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では、密閉型電池の安全性向上への要望が高まっており、上記した蓋体14(ケース10)と集電部材32との通電をより確実に防止できるような技術が求められている。一方で、電極端子の強度や部品コストや製造効率などの観点から、上記した絶縁ホルダ38とシール部材39とからなる絶縁構造を簡素なものにすることも求められている。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、簡素な構造で蓋体と集電部材との通電を確実に防止することができる電極端子を有した密閉型電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を実現するべく、本発明によって以下の構成の密閉型電池が提供される。
【0008】
ここで開示される密閉型電池は、ケース内に電極体が収容されることによって構成されており、外部機器と接続される電極端子がケースに設けられている。
かかる密閉型電池の電極端子は、一方の端部がケース内の電極体と電気的に接続されていると共に、他方の端部がケースの外部に露出している集電部材と、ケースの外部において集電部材と電気的に接続されている板状の外部接続部材と、外部接続部材とケースとの間に配置される絶縁部材であって集電部材の他方の端部が挿通される第1挿通孔が形成されている絶縁ホルダと、ケースの内部においてケースと集電部材との間に介在する絶縁部材であって集電部材の他方の端部が挿通される第2挿通孔が形成され、当該第2挿通孔の周囲にケースを貫通して絶縁ホルダの底面に圧着される円筒状の封止部が形成されているシール部材とを備えている。
そして、ここで開示される密閉型電池では、第1挿通孔の周囲の絶縁ホルダの底面に切り欠き部が設けられており、円筒状の封止部の上面の内周縁部が絶縁ホルダの切り欠き部に入り込むようにシール部材の封止部と絶縁ホルダとが圧着されている。
【0009】
本発明者は、上記した課題を解決するために、先ず、
図8に示すような従来の構造の電極端子30において、蓋体14と集電部材32とが通電する可能性について検討した。
そして、かかる検討の結果、
図8に示す構造の電極端子30では、絶縁ホルダ38の底面とシール部材39の封止部39bとを面で接触させて圧着しているため、かかる接触面における面圧が低くなると、絶縁ホルダ38の底面と封止部39bの上面との間に隙間が生じる可能性があることが分かった。本発明者は、密閉型電池の使用環境によっては、かかる隙間に水蒸気が入り込んで結露することにより蓋体14と集電部材32とが通電する虞があると考えた。
【0010】
そこで、本発明者は、密閉型電池の安全性のさらなる向上のために、絶縁ホルダの底面と封止部とを隙間なく圧着し、結露による蓋体と集電部材との通電を確実に防止できるような絶縁構造について検討した。
そして、かかる検討によって思い至った種々の絶縁構造のうち、電極端子の強度が低下せず、かつ、部品コストや製造効率の点でも好ましい効果が得られるような簡素な絶縁構造についてさらに検討を進め、ここで開示される密閉型電池を完成させるに至った。
【0011】
具体的には、ここで開示される密閉型電池では、第1挿通孔の周囲の絶縁ホルダの底面に切り欠き部が設けられている。かかる切り欠き部を設けた場合、シール部材の封止部と絶縁ホルダとを圧着する際に、円筒状の封止部の上面の内周縁部が絶縁ホルダの切り欠き部に入り込むように変形する。これによって、封止部の上面と切り欠き部との接点に圧着の際の応力が集中するため、絶縁ホルダとシール部材とを面で接触させて圧着する従来の技術と異なり、絶縁ホルダとシール部材とを確実に圧着させることができるため、絶縁ホルダと封止部との間の隙間に結露が生じて蓋体と集電部材とが通電することを確実に防止できる。
【0012】
そして、ここで開示される密閉型電池は、上記したように、電極端子の強度や部品コストや製造効率などを考慮し、簡素な構造で集電部材とケースとの通電を防止できるように構成されている。
具体的には、ここで開示される密閉型電池では、第1挿通孔の周囲の絶縁ホルダの底面に切り欠き部が設けられている。これによって、絶縁ホルダの底面側の第1挿通孔の径を若干広げるような加工をするのみで切り欠き部を容易に形成できるため、絶縁ホルダやシール部材などに複雑な加工を施す必要がなく、部品コストの上昇や製造効率の低下を適切に抑制することができる。
また、ここで開示される密閉型電池では、シール部材の封止部と絶縁ホルダの底面のうち、絶縁ホルダの底面の方に切り欠き部を設けている。これは、円筒状の突起である封止部に切り欠き部を設けると当該封止部の強度が低下し、圧着の際に封止部の破損による圧着不良や電極端子の強度低下などが生じる虞があるためである。
さらに、ここで開示される密閉型電池においては、円筒状の封止部の内周縁部のみが絶縁ホルダの切り欠き部に入り込むように切り欠き部が形成されている。このように、圧着の際の封止部の変形量が少なくすることによって、封止部の変形不良による圧着不良や強度低下の発生を好適に防止することができる。
【0013】
また、ここで開示される密閉型電池の好ましい一態様では、切り欠き部が、絶縁ホルダの底面に向かうに従って第1挿通孔の径が大きくなるように傾斜したテーパー状に形成されている。
かかる態様のようにテーパー状の切り欠き部を形成した場合、絶縁ホルダとシール部材とを圧着させる際に、シール部材の封止部を切り欠き部の傾斜面に沿って変形させることができるため、封止部の変形不良をより好適に防止することができる。
【0014】
ここで開示される密閉型電池の好ましい一態様では、シール部材の封止部の厚みを100%としたときの絶縁ホルダの底面における切り欠き部の径方向の長さが10%〜60%である。
上記した切り欠き部の寸法は、シール部材や絶縁ホルダの材質などを考慮して適宜調整することが好ましい。封止部の厚みに対する切り欠き部の径方向の長さが短すぎると、当該切り欠き部に封止部を十分に入り込ませることができなくなる虞がある。一方、切り欠き部の径方向の長さが長すぎると、圧着の際の封止部の変形量が大きくなるため、変形不良が生じる可能性が高くなる。これらを考慮すると、径方向における切り欠き部の長さは、シール部材の厚みの10%〜60%であることが好ましい。
【0015】
ここで開示される密閉型電池の好ましい一態様では、絶縁ホルダの厚みを100%としたときの切り欠き部の深さが10%〜40%である。
上記した切り欠き部の径方向における長さと同様に、切り欠き部の深さについても、シール部材や絶縁ホルダの材質などを考慮して適宜調整することが好ましい。例えば、切り欠き部が浅すぎると、当該切り欠き部に封止部を十分に入り込ませることができなくなる虞がある。一方、切り欠き部が深すぎると、圧着の際の封止部の変形量が大きくなるため、変形不良が生じる可能性が高くなる。これらを考慮すると、切り欠き部の深さは絶縁ホルダの厚みの10%〜40%であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、上記課題を解決するための一側面として、上記した密閉型電池に用いられる電極端子を提供する。
かかる電極端子は、一方の端部がケース内の電極体と電気的に接続されていると共に、他方の端部がケースの外部に露出している集電部材と、ケースの外部において集電部材と電気的に接続されている板状の外部接続部材と、外部接続部材とケースとの間に配置される絶縁部材であって集電部材の他方の端部が挿通される第1挿通孔が形成されている絶縁ホルダと、ケースの内部においてケースと集電部材との間に介在する絶縁部材であって集電部材の他方の端部が挿通される第2挿通孔が形成され、当該第2挿通孔の周囲にケースを貫通して絶縁ホルダの底面に圧着される円筒状の封止部が形成されているシール部材とを備えている。
そして、ここで開示される電極端子では、第1挿通孔の周囲の絶縁ホルダの底面に切り欠き部が設けられており、円筒状の封止部の上面の内周縁部が絶縁ホルダの切り欠き部に入り込むようにシール部材の封止部と絶縁ホルダとが圧着されている。
【0017】
かかる構造の電極端子によれば、シール部材の封止部と絶縁ホルダとを圧着する際に、円筒状の封止部の内周縁部を切り欠き部に入り込むように変形させることによって、絶縁ホルダとシール部材とを確実に圧着することができる。このため、絶縁ホルダと封止部との間に隙間が生じて集電部材とケースとが通電することを確実に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る密閉型電池の一例としてリチウムイオン二次電池を説明する。なお、ここで開示される密閉型電池はリチウムイオン二次電池に限定されず、例えば、ニッケル水素電池などであってもよい。
【0020】
また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。なお、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、電極体や電解質物質の構成および製法などのリチウムイオン二次電池の構築に係る一般的技術等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。
【0021】
1.全体構成
本実施形態に係る密閉型電池の基本的な構造は従来の密閉型電池と同様である。具体的には、
図1に示すように、本実施形態に係る密閉型電池100は、扁平な角型のケース10の内部に電極体20が収納されることによって構成されている。かかる密閉型電池100のケース10は、上面が開口した扁平な角型のケース本体12と、当該ケース本体12上面の開口部を塞ぐ板状の蓋体14とから構成されている。かかるケース10は、軽量で熱伝導性の良い金属材料を主体に構成されていることが好ましく、かかる金属材料としてはアルミニウムなどが挙げられる。
【0022】
ケース10の内部に収容された電極体20は、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な電極活物質を含む合材層が箔状の集電体の表面に付与された正負極を備えている。
本実施形態においては、電極体20として捲回電極体が用いられている。図示は省略するが、かかる捲回電極体20は、箔状の正極集電体の表面に正極合材層が付与された長尺シート状の正極と、箔状の負極集電体の表面に負極合材層が付与された長尺シート状の負極とを備えており、これらの正負極をセパレータを介して積層させ、該積層体を捲回することによって形成される。そして、幅方向Xにおける捲回電極体20の中央部には、正負極の合材層が対向した捲回コア部20Aが形成されている一方で、幅方向Xの両側縁部には、合材層が付与されていない集電体が巻き重ねられた端子接続部20Bが形成されている。
なお、本実施形態に係る密閉型電池100において、電極体20を構成する各部材(例えば正極、負極およびセパレータ等)の材料は、従来の一般的なリチウムイオン二次電池に用いられるものと同様のものを制限なく使用可能であり、本発明を特徴づけるものではないため、詳細な説明を省略する。
【0023】
また、本実施形態に係る密閉型電池100のケース10の内部には、上記した電極体20と共に電解質物質も収容されているが、かかる電解質物質についても、従来の一般的なリチウムイオン二次電池と同様のものを特に限定なく使用することができるため詳細な説明は省略する。
【0024】
そして、本実施形態に係る密閉型電池100では、ケース10の上面をなす蓋体14に、他の電池やモーターなどの外部機器と電気的に接続される電極端子30が設けられている。かかる電極端子30は、ケース10内の電極体20と電気的に接続されていると共に、当該ケース10外に露出して外部機器と接続可能に構成されている。
以下、本実施形態における電極端子30の具体的な構造について説明する。
【0025】
2.電極端子
(1)電極端子の構成部材
図3は本実施形態に係る密閉型電池100の電極端子30近傍の構造を模式的に示す断面図である。本実施の形態に係る密閉型電池100の電極端子30は、集電部材32と、ボルト34と、外部接続部材36と、絶縁ホルダ38と、シール部材39とを備えている。以下、かかる電極端子30を構成する各々の部材の構造を説明する。
【0026】
(a)集電部材
集電部材32は、導電性材料によって構成された長尺の部材である。
図1に示すように、集電部材32の一方の端部32aはケース10内の電極体20と電気的に接続されており、他方の端部32bはケース10の蓋体14を貫通して外部に露出している。具体的には、集電部材32の一方の端部32aは、長尺の板状に形成されており、密閉型電池100の縦方向Zに沿って延びてケース10内の電極体20の端子接続部20Bに接続されている。一方、集電部材32の他方の端部32bは、
図3に示すように、シール部材39、蓋体14、絶縁ホルダ38、外部接続部材36の各々を貫通してケース10の外部に露出している。そして、集電部材32は、
図2に示すように円筒状に成形された他方の端部32bを
図3に示すようにかしめることによって上記した各々の部材をケース10の蓋体14に固定している。かかる集電部材32に用いられる導電性材料としては、例えば、アルミニウム、銅などが挙げられる。
【0027】
(b)ボルト
ボルト34は、ケース10外部において密閉型電池の縦方向Zに沿って立設する柱状の接続部34aを備えた導電性部材であり、上記した集電部材32と同種の材料から構成されていることが好ましい。かかる柱状の接続部34aの外周面にはネジ溝(図示省略)が形成されている。例えば、ボルト34の接続部34aを板状のバスバー(図示省略)に貫通させた後、当該接続部34aにナットを締め込むことによって、密閉型電池と外部機器とが電気的に接続される。
一方、このボルト34では、上記した外部機器との接続の際にボルト34が供回りすることを防止するために、
図2および
図3に示すように、他方の端部に矩形の凸部である嵌合部34bが形成されている。かかるボルト34の嵌合部34bは、絶縁ホルダ38のボルト収納部38aと形状・寸法が対応するように設計されている。
【0028】
(c)外部接続部材
外部接続部材36は、ケース10の外部において、集電部材32と電気的に接続されている板状の導電部材である。本実施形態における外部接続部材36は、集電部材32と上記したボルト34とを電気的に接続するように密閉型電池の幅方向X(
図1参照)に沿って延びている。そして、
図2に示すように、外部接続部材36の一方の端部には、集電部材32を挿通させる集電部材挿通孔36bが形成されており、他方の端部にはボルト34を挿通させるボルト挿通孔36aが設けられている。また、本実施形態における外部接続部材36は、後述する絶縁ホルダ38の上面の形状と対応するように段差状に折り曲げられている。なお、外部接続部材36についても、上記した集電部材32と同種の導電性材料を用いることができる。
【0029】
(d)絶縁ホルダ
絶縁ホルダ38は、外部接続部材36と蓋体14とを絶縁するために設けられた絶縁部材である。かかる絶縁ホルダ38の材料については、上記したシール部材39と同種の絶縁性材料(例えば、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリイミド樹脂など)を好ましく用いることができる。
かかる絶縁ホルダ38は、外部接続部材36と蓋体14との間に配置されており、電極端子30を構成する各々の導電性部材(集電部材32、ボルト34、外部接続部材36)がケース10の蓋体14と通電することを防止している。具体的には、絶縁ホルダ38は、上記した外部接続部材36と同様に密閉型電池100の幅方向Xに沿って延びており、外部接続部材36と蓋体14との間に配置されている。そして、絶縁ホルダ38の一方の端部にはボルト34の嵌合部34bを収納するために角型の凹部であるボルト収納部38aが設けられている。本実施形態における電極端子30では、当該ボルト収納部38aに、上記したボルト34の嵌合部34bを嵌合させることによってボルト34の回転が規制される。
【0030】
また、絶縁ホルダ38の他方の端部には、集電部材32を挿通させる第1挿通孔38cが形成されている。本実施形態においては、絶縁ホルダ38の底面とシール部材39の封止部39bとを適切に圧着させて集電部材32とケース10(蓋体14)との通電を確実に防止するために、第1挿通孔38cの周囲の絶縁ホルダ38の底面に切り欠き部38dが設けられている。かかる切り欠き部38dに関する構造については後に詳しく説明する。
【0031】
(e)シール部材
シール部材39は、ケース10の内部においてケース10と集電部材32との間に介在する絶縁部材である。具体的には、シール部材39は、蓋体14の集電部材挿通孔14aを挿通された集電部材32と当該蓋体14とが通電することを防止するために、ケース10の蓋体14の下面に配置される板状の絶縁部材である。かかるシール部材39には集電部材32の端部32bを挿通させる第2挿通孔39aが形成されており、当該第2挿通孔39aの周囲に上方に向けて突出した円筒状の封止部39bが設けられている。
図3に示すように、シール部材39の封止部39bは、蓋体14の集電部材挿通孔14aに挿入されることによって蓋体14を貫通し、絶縁ホルダ38の底面に圧着される。なお、シール部材39には、上記した絶縁ホルダと同様の絶縁性樹脂(例えば、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリイミド樹脂など)が用いられる。
【0032】
(2)電極端子の構築
本実施形態に係る密閉型電池100の電極端子30は、上記した各々の部材をケース10の蓋体14に組み付けることによって構築されている。
【0033】
かかる電極端子30を構築するに際しては、先ず、蓋体14に絶縁ホルダ38とシール部材39とを取り付ける。具体的には、蓋体14の集電部材挿通孔14aと絶縁ホルダ38の第1挿通孔38cとが連通するように、蓋体14の上面に絶縁ホルダ38を配置した後、シール部材39の封止部39bを蓋体14の下面側から集電部材挿通孔14aに挿入する。そして、絶縁ホルダ38とシール部材39とを挟み込んで押圧することによって絶縁ホルダ38の底面と円筒状の封止部39bの上面とを圧着させる。これによって、蓋体14に絶縁ホルダ38とシール部材39とが取り付けられ、蓋体14の集電部材挿通孔14aが絶縁部材で覆われる。
【0034】
次に、絶縁ホルダ38上にボルト34と外部接続部材36を配置する。具体的には、ボルト収納部38aが嵌合部34bに嵌合するように絶縁ホルダ38の上面にボルト34を配置した後に、ボルト34の接続部34aを外部接続部材36のボルト挿通孔36aに挿通させて当該外部接続部材36を絶縁ホルダ38の上面に配置する。
【0035】
そして、シール部材39と蓋体14と絶縁ホルダ38と外部接続部材36の各々を貫通するように、各々の部材の挿通孔39a、14a、38c、36bに集電部材32の他方の端部32bを挿通させた後、筒状の集電部材32の他方の端部32bをかしめる。これによって、上記した各々の部材がケース10の蓋体14に固定されるとともに、絶縁ホルダ38の底面と封止部39bの上面とがより強固に圧着され、
図3に示すような構造の電極端子30が構築される。
【0036】
(3)切り欠き部
上記したように、本実施形態に係る密閉型電池100では、絶縁ホルダ38の底面とシール部材39の封止部39bとを適切に圧着させて集電部材32とケース10(蓋体14)との通電を確実に防止するために、第1挿通孔38cの周囲の絶縁ホルダ38の底面に切り欠き部が設けられている。以下、かかる絶縁ホルダ38の切り欠き部について説明する。
図4は本実施形態における絶縁ホルダの第1挿通孔の近傍の拡大断面図であり、
図5は
図3中のVで示す領域を拡大した断面図である。
【0037】
図4に示すように、本実施形態では、絶縁ホルダ38の底面の第1挿通孔38cの周囲に切り欠き部38dが設けられており、底面側における第1挿通孔38cの径r2が、上面側における第1挿通孔38cの径r1よりも大きくなっている。なお、かかる切り欠き部38dは第1挿通孔38cの外周に沿って連続して形成されている。
【0038】
このような切り欠き部38dが設けられた絶縁ホルダ38を用いた場合、
図5に示すように、絶縁ホルダ38とシール部材39とを圧着する際に、シール部材39の封止部39bの上面の内周縁部が絶縁ホルダ38の切り欠き部38dに入り込むように変形する。これによって、封止部39bの上面と切り欠き部38dとの接点に圧着時の応力が集中して応力集中点Pが生じ、当該応力集中点Pにおいて絶縁ホルダ38とシール部材39とが隙間なく圧着される。このため、本実施形態に係る密閉型電池100によれば、絶縁ホルダ38とシール部材39との間に水蒸気が入り込むような隙間が形成されることを防止して、結露による集電部材32と蓋体14との通電を確実に防止することができる。
【0039】
そして、本実施形態に係る密閉型電池は、第1挿通孔38cの周囲に切り欠き部38dを設けるという簡素な構造によって集電部材32と蓋体14との通電を確実に防止することができるため、電極端子の強度や部品コストや製造効率などの点において優れた効果を有している。
【0040】
具体的には、上記した切り欠き部38dは、
図4に示すように、第1挿通孔38cの底面側を若干拡径させるような加工をすることによって容易に形成することができるため、シール部材や絶縁ホルダに複数の凹凸を設けるような技術に比べて部品コストの上昇や製造効率の低下を抑制することができる。
また、本実施形態においては、シール部材39の封止部39bではなく、絶縁ホルダ38に切り欠き部38dが形成されているため、封止部39bの強度を十分に確保することができる。このため、絶縁ホルダ38とシール部材39との圧着に際して封止部39bの先端が破損して圧着不良や強度低下を生じさせることを好適に防止できる。
さらに、本実施形態では、封止部39bの内周縁部のみを切り欠き部38dに入り込ませるという僅かな変形で絶縁ホルダ38とシール部材39とを隙間なく圧着させることができる。このため、圧着時に封止部39bの変形不良が生じて、圧着不良や強度低下が生じることを好適に防止することができる。
【0041】
また、本実施形態では、
図4に示すように、絶縁ホルダ38の底面側に向かうに従って第1挿通孔38cの径が大きくなるように傾斜したテーパー状の切り欠き部38dが設けられている。このようなテーパー状の切り欠き部38dが形成された絶縁ホルダ38を用いた場合、絶縁ホルダ38とシール部材39とを圧着させる際に、当該シール部材39の封止部39bの内周縁部を切り欠き部38dの傾斜面に沿って変形させることができるため、シール部材39の変形不良をより好適に防止することができる。
【0042】
なお、切り欠き部38dの寸法は、シール部材39の寸法などを考慮して適宜調整することが好ましい。例えば、封止部39bの厚みt2(
図5参照)を100%とした場合、切り欠き部38dの径方向の長さt1(
図4参照)は10%〜60%の範囲内に設定することが好ましい。封止部39bの厚みt2に対する切り欠き部38dの長さt1が短すぎると、当該切り欠き部38dに封止部39bを十分に入り込ませることができずに、シール部材39と絶縁ホルダ38とを適切に圧着できなくなる虞がある。一方、切り欠き部38dの径方向の長さt1が長すぎると、圧着の際の封止部39bの変形量が大きくなるため変形不良が生じる可能性が高くなる。
【0043】
また、
図4に示す切り欠き部38dの深さd1についても、適切な圧着が行うことができるように適宜調整することが好ましい。例えば、切り欠き部38dの深さd1が浅すぎると、当該切り欠き部38dに封止部39bを十分に入り込ませることができず、シール部材39と絶縁ホルダ38とを適切に圧着できなくなる虞がある。一方、切り欠き部38dの深さd1が深すぎると、封止部39bの変形量が大きくなって変形不良が生じる可能性が高くなる。このため、切り欠き部38dの深さd1は、例えば、絶縁ホルダ38の厚みd2の10%〜40%に設定することが好ましい。
【0044】
3.他の態様
以上、ここで開示される密閉型電池の一実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されず、種々の構造を変更することができる。
【0045】
例えば、上記した実施形態では、
図4に示すようにテーパー状の切り欠き部38dが形成されているが、切り欠き部38dの形状は上記した実施形態に限定されない。
例えば、切り欠き部38dの他の例として
図6に示すような形状が挙げられる。
図6に示される切り欠き部38dは断面矩形に形成されており、切り欠き部38dと絶縁ホルダ38の底面との間に段差が形成されている。かかる構造の切り欠き部38dが形成された絶縁ホルダ38を用いた場合、当該切り欠き部38dの底面の段差に応力集中点Pを生じさせることができるため、封止部39bと絶縁ホルダ38とをより強固に圧着させることができる。
【0046】
また、切り欠き部38dの形状の他の例として、
図7に示すような形状が挙げられる。
図6に示される切り欠き部38dは、断面が四分円形に形成されている。このような形状の切り欠き部38dを設けた場合であっても、封止部39bと絶縁ホルダ38とを隙間なく圧着させて、結露による集電部材32と蓋体14との通電を好適に防止することができる。
【0047】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。