(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
全ての炭素原子に水酸基が結合している炭素数2〜6の多価アルコール、疎水性末端を有する多価アルコール、及び多価アルコール重合物の総量が、組成物の全量に対し10〜60質量%であることを特徴とする、請求項5又は6に記載のスクリーンフォーマー用の組成物。
非イオン性界面活性剤を泡沫形成剤として用いるスクリーンフォーマー用の組成物の評価方法であって、前記組成物をスクリーンフォーマーに通して泡沫を形成させたとき、
前記泡沫において、その表面に広がる、互いの境界が識別可能な、光透過性を有する高光透過性領域と、該高光透過性領域よりも光透過性が低い低光透過性領域と、が観察され、
前記泡沫を25℃下で静置したとき、前記泡沫殻の表面積に占める前記低光透過性領域の面積が経時的に拡張することで、前記泡沫殻の表面全体が前記低光透過性領域により占められることを認めた場合には、スクリーンフォーマー用の組成物として適したものであると判別し、
前記泡沫を25℃下で静置したとき、前記泡沫殻の表面積に占める前記低光透過性領域の面積が経時的に拡張することで、前記泡沫の表面全体が前記低光透過性領域により占められることが認められない場合には、スクリーンフォーマー用の組成物として適していないものであると判別することを特徴とする、スクリーンフォーマー用の組成物の評価方法。
前記泡沫を25℃下で静置したとき、前記泡沫殻の表面積に占める前記低光透過性領域の面積が経時的に拡張する過程において観察される、前記高光透過性領域の最大径と最小径の差が小さいほど、スクリーンフォーマー用の組成物としてより適していると判別することを特徴とする、請求項17又は18に記載のスクリーンフォーマー用の組成物の評価方法。
さらに、前記組成物をスクリーンフォーマーに通さずに光学顕微鏡で観察した場合において、下記(A)および下記(B)の条件を充足する場合に、スクリーンフォーマー用の組成物として適したものであると判別することを特徴とする、請求項17〜19何れか一項に記載のスクリーンフォーマー用の組成物の評価方法。
(A)下記(I)又は下記(II)の処理前は、ミセル像が観察されない状態又はほとんどミセル像が観察されない状態にある。
(B)下記(I)の処理後は、ミセル像が観察される状態にある。
(I)前記組成物を開放系で静置する。
(II)前記組成物に応力を加える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、このような状況下為されたものであり、荒れた肌など、刺激を感じやすい皮膚上に物理的刺激感少なく水溶性有効成分を投与することができる新規な泡沫、及びこのような泡沫を形成するために用いられるスクリーンフォーマー用の組成物を提供することを課題とする。さらに、本発明は、このような泡沫を形成するスクリーンフォーマー用組成物の評価方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような状況に鑑みて、本発明者らは、安全性が高い非イオン性界面活性剤を泡沫形成剤として用いた泡沫の構造について鋭意研究を重ねた結果、泡沫の表面に高光透過性領域と低光透過性領域を有し、静置条件下で経時的に低光透過性領域の面積が拡張し、泡沫表面全体が低光透過性領域により占められるような性質を有する泡沫には、良好な持続性を有することを見出した。
すなわち、上記課題を解決する本発明は以下に示す通りである。
【0010】
上記課題を解決する本発明は、非イオン性界面活性剤を含み、空気層とこれを内包する泡沫殻とからなる泡沫であって、
前記泡沫殻はその表面に広がる、互いの境界が識別可能な、光透過性を有する高光透過性領域と、該高光透過性領域よりも光透過性が低い低光透過性領域と、を有し、
前記泡沫を25℃下で静置したとき、前記泡沫殻の表面積に占める前記低光透過性領域の面積が経時的に拡張することで、前記泡沫殻の表面全体が前記低光透過性領域により占められることを特徴とする泡沫である。
本発明の泡沫は、安全性が高く、持続性に優れる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記低光透過性領域における前記泡沫殻の構造が、2以上の層からなる多層構造であることを特徴とする。
本発明のさらに好ましい形態では、前記多層構造が、
前記泡沫の外気相に接する水性成分相と、
前記泡沫の内気相と接する水性成分相と、
これら2つの水性成分相に挟まれ、非イオン性界面活性剤及び疎水性末端を有する多価アルコール及び/又は多価アルコール重合物を含む液滴相と、を備える二相三層構造であることを特徴とする。
このような低光透過性領域における泡沫殻の構造が多層構造である泡沫は、持続性に優れる。
【0012】
さらに、前記課題を解決する本発明は、非イオン性界面活性剤を泡沫形成剤として含み、スクリーンフォーマーにより請求項1〜3の何れか一項に記載の泡沫を形成可能な、可溶化状態であることを特徴とする、スクリーンフォーマー用の組成物である。
本発明の組成物は、前述した本発明の泡沫を形成するのに好適である。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記組成物は硫酸化されていても良い多糖類を0.001〜5質量%含有する。
硫酸化されていても良い多糖類の含有量が前記範囲である組成物は、形成した泡沫の低光透過性領域における構造を安定化させることができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記硫酸化されていても良い多糖類が、ヘパリン類似物質及び/又はヒアルロン酸である。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記組成物は非イオン性界面活性剤を1〜15質量%含有する。
非イオン性界面活性剤の濃度が前記範囲である組成物は、本発明の泡沫を形成するのにより好適である。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記組成物は疎水性末端を有する多価アルコール及び/又は多価アルコール重合物を10質量%以上含有する。
疎水性末端を有する多価アルコール及び/又は多価アルコール重合物の濃度を前記範囲とすることによって、形成した泡沫の低光透過性領域における構造を安定化させることができる。また、保湿感などの使用実感を向上させることができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、全ての炭素原子に水酸基が結合している炭素数2〜6の多価アルコールを0.001〜30質量%含有することを特徴とする。
前記多価アルコールの濃度を前記範囲とすることによって、形成した泡沫の低光透過性領域における構造を安定化させることができる。また、保湿感などの使用実感を向上させることができる。
【0018】
また本発明の好ましい形態では、有機塩及び/又は無機塩を含む。
有機塩及び/又は無機塩を含む形態の本発明の組成物は、本発明の泡沫を形成するのにより好適である。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記組成物は、その構成成分を、前記非イオン性界面活性剤の曇点以上で可溶化することで製造される。
曇点以上で可溶化することにより製造して得られる組成物は、本発明の泡沫を形成するのにより好適である。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記組成物は、これを光学顕微鏡で観察した場合において、下記(A)および(B)の条件を充足する。
(A)下記(I)又は下記(II)の処理前は、ミセル像が観察されない状態又はほとんどミセル像が観察されない状態にある。
(B)下記(I)の処理後は、ミセル像が観察される状態にある。
(I)前記組成物を開放系で静置する。
(II)前記組成物に応力を加える。
上記(A)および上記(B)の条件を充足する組成物は、本発明の泡沫を形成するのに好適である。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記組成物は、さらに、下記(C)の条件を充足する。
(C)前記(II)の処理後は、該処理前よりも多くのミセル像が観察される状態にある。
上記(C)の条件を充足する前記組成物は、発明の泡沫を形成するのにより好適である。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記組成物は、前記(II)の処理として、前記組成物に遠心分離により応力を加えた場合に、前記条件を充足する。
遠心分離によって応力を加えた場合に前記条件を充足する組成物は、発明の泡沫を形成するのにより好適である。
【0023】
また、本発明は、前述した本発明のスクリーンフォーマー用の組成物の製造方法であって、前記組成物の構成成分を、前記非イオン性界面活性剤の曇点以上で可溶化することを特徴とする製造方法にも関する。
このような製造方法により、本発明の泡沫を形成するスクリーンフォーマー用の組成物としてより適している組成物を製造することが可能となる。
【0024】
また、本発明は、非イオン性界面活性剤を泡沫形成剤として用いるスクリーンフォーマー用の組成物の評価方法であって、前記組成物をスクリーンフォーマーに通して泡沫を形成させたとき、
前記泡沫殻において、その表面に広がる、互いの境界が識別可能な、光透過性を有する高光透過性領域と、該高光透過性領域よりも光透過性が低い低光透過性領域と、が観察され、
前記泡沫を25℃下で静置したとき、前記泡沫殻の表面積に占める前記低光透過性領域の面積が経時的に拡張することで、前記泡沫殻の表面全体が前記低光透過性領域により占められることを認めた場合には、スクリーンフォーマー用の組成物として適したものであると判別し、
前記泡沫を25℃下で静置したとき、前記泡沫殻の表面積に占める前記低光透過性領域の面積が経時的に拡張することで、前記泡沫の表面全体が前記低光透過性領域により占められることが認められない場合には、スクリーンフォーマー用の組成物として適していないものであると判別することを特徴とする、スクリーンフォーマー用の組成物の評価方法にも関する。
本発明の評価方法を用いれば、スクリーンフォーマー用の組成物として適しているか否かを判別することができるため、適している組成物を選択することで起泡性、泡持続性に優れるスクリーンフォーマーで起泡する製剤を提供することができる。
【0025】
本発明の好ましい形態では、前記高光透過性領域と前記低光透過性領域の観察を光学顕微鏡で行うことを特徴とする。
光学顕微鏡で観察することにより、簡便に、又は正確に、スクリーンフォーマー用の組成物として適しているか否か判別することができる。
【0026】
前記泡沫を25℃下で静置したとき、前記泡沫殻の表面積に占める前記低光透過性領域の面積が経時的に拡張する過程において観察される、前記高光透過性領域の最大径と最小径の差が小さいほど、スクリーンフォーマー用の組成物としてより適していると判別する。
当該基準を用いることにより、より正確な評価ができる。
【0027】
本発明の好ましい形態では、前記組成物をスクリーンフォーマーに通さずに光学顕微鏡で観察した場合において、下記(A)および下記(B)の条件を充足する場合に、スクリーンフォーマー用の組成物として適したものであると判別する。
(A)下記(I)又は下記(II)の処理前は、ミセル像が観察されない状態又はほとんどミセル像が観察されない状態にある。
(B)下記(I)の処理後は、ミセル像が観察される状態にある。
(I)前記組成物を開放系で静置する。
(II)前記組成物に応力を加える。
この形態の評価方法によれば、スクリーンフォーマー用の組成物として適しているか否かを判別することができるため、適している組成物を選択することで良好な泡を呈する製品を提供することができる。当該評価方法は、それのみで用いることもできるし、前述した泡沫の低光透過性領域の態様を指標とする評価と組み合わせて用いることもできる。
【0028】
本発明の好ましい形態では、さらに、下記(C)の条件を充足する場合に、スクリーンフォーマー用の組成物としてより適したものであると判別する。
(C)前記(II)の処理後は、該処理前よりも多くのミセル像が観察される状態にある。
当該基準を用いることにより、より正確な評価ができる。
【0029】
本発明の好ましい形態では、前記(C)において、観察されるミセル像の粒径が小さいほど、スクリーンフォーマー用の組成物としてより適していると判別する。
当該基準を用いることにより、より正確な評価ができる。
【0030】
本発明の好ましい形態では、前記(C)において、観察されるミセル像の粒径の均一性が高いほど、スクリーンフォーマー用の組成物としてより適していると判別する。
当該基準を用いることにより、より正確な評価ができる。
【0031】
本発明の好ましい形態では、前記(II)の処理が、前記組成物に遠心分離により応力を加える処理である。
遠心分離によって前記組成物に応力を加えた後に光学顕微鏡観察することにより、より正確にミセル像を観察することが可能であり、より正確にスクリーンフォーマー用の組成物として適しているか否か判別することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の泡沫は、非イオン界面活性剤を含むため安全性が高く、新規な構造がゆえに泡持続性に優れる。また、本発明のスクリーンフォーマー用の組成物は、起泡性に優れ、前記泡沫を形成するのに好適である。また、本発明の評価方法を用いることにより、簡便又は正確に、前記泡沫を形成し得る組成物を評価することができる。
以上の本発明によれば、洗い流すことを前提としない皮膚外用剤として適用し得る、良好な泡を呈する新規なフォーム形態の製剤の設計、製造が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の泡沫、これを形成するためのスクリーンフォーマー用の組成物、及び該組成物の評価方法の順に好ましい実施形態を説明する。
【0035】
<1>本発明の泡沫
本発明において、「泡沫」とは、集合体としての泡を意味し、空気層とこれを内包する泡沫殻とからなる。
【0036】
<1−1>泡沫の構造
本発明の泡沫について図を参照しながら説明を加える。本発明の泡沫10は、これを構成する泡沫殻の表面に広がる高光透過性領域11及び低光透過性領域12を備える(
図1)。低光透過性領域12は高光透過性領域11に比して光透過性が低い。この光透過性の違いにより、低光透過性領域12と高光透過性領域11の互いの境界は識別することができる。低光透過性領域12における光透過性はほぼ均一であることが好ましい。
低光透過性領域12は、光学顕微鏡によって観察したときに灰色又は黒色に見えるほど光透過性が低いことが好ましい。
【0037】
本発明の泡沫10は、25℃下に静置すると、泡沫殻の表面積に占める低光透過性領域12の面積が経時的に拡張する。そして、最終的に泡沫10の表面全体が低光透過性領域12により占められる(
図1)。
上述したような特性を有する本発明の泡沫は持続性に優れる。
【0038】
また、泡沫10を25℃下で静置したとき、泡沫10の表面積に占める低光透過性領域12の面積が経時的に拡張する過程、より具体的には泡沫10の表面積の半分以上を低光透過性領域12が占めている状態において、高光透過性領域11の最大径と最小径の差が小さいほど、より持続性に優れた泡沫10となる。
例えば、低光透過性領域12の面積が拡大する過程において、
図2の(a)に表されるような最大径と最小径の差が大きな高光透過性領域11を有する泡沫10と比較して、
図2の(b)に表されるような最大径と最小径の差が小さな高光透過性領域11を有する泡沫10は、持続性に優れる。
【0039】
例えば、脂肪酸石けんを気泡性成分とするような泡沫においては、脂肪酸塩が親水性部分を液相3に向け、かつ、疎水性部分を気相21、22側に向けて配列された1枚の二重膜構造の膜で空気を包含する構造をとる(
図3)。
本発明の泡沫における高光透過性領域11における泡沫殻の構造も、これと同様に気液界面に非イオン性界面活性剤が配列した1枚の水性成分相31からなる一層構造であってもよい(
図4)。
【0040】
また、水性成分相31には、非イオン性界面活性剤及び疎水性末端を有する多価アルコール及び/又は多価アルコール重合物を含む液滴(ミセル)33が分散している形態であることが好ましい。
【0041】
一方、低光透過性領域12における泡沫殻の構造は多重構造であることが好ましい。より具体的には、前記多層構造が二相三層構造であることが好ましい。すなわち、低光透過性領域12における泡沫殻の構造は、泡沫10の外気相21に接する水性成分相31、泡沫10の内気相22と接する水性成分相31、及びこれら2つの水性成分相に挟まれた液滴相32を備えることが好ましい。この場合、液滴相32が非イオン性界面活性剤及び疎水性末端を有する多価アルコール及び/又は多価アルコール重合物を含むことが好ましい。
【0042】
図3に示す脂肪酸石けんを泡沫形成成分として含む泡沫10は、表面張力を著しく減少させながら二重膜構造を形成する。これに対し、本発明の泡沫10では表面張力そのものは減少させず、多価アルコールの層間移動により生ずる浸透圧と表面張力を拮抗させて膜を広げる(
図5参照)。
【0043】
この様な構造の膜を形成することにより、表面張力を著しく減じること無く泡沫を形成することができる。この為、表面張力の著しい低下による皮膚への刺激を軽減することができる。故に、本発明の泡沫を形成することができる組成物は、洗浄工程を含むこと無く使用する態様の外用剤の基剤として有用である。
【0044】
<1−2>泡沫の構成成分
本発明の泡沫は、前記泡沫殻に必須成分として非イオン性界面活性剤を含有する。非イオン界面活性剤は、泡沫を形成する作用を有する。
非イオン性界面活性剤は、泡沫の表面に低光透過性領域を形成する限り、特段の限定なく適用することができる。
【0045】
また、非イオン性界面活性剤のHLB値は、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは11以上、特に好ましくは13以上である。非イオン性界面活性剤のHLB値は、例えば10〜19である。
【0046】
前記非イオン性界面活性剤の疎水基を構成する炭素鎖の炭素数は、好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上、特に好ましくは12以上である。また、炭素数の上限値として好ましくは22である。
【0047】
非イオン性界面活性剤としては、以下のX群から選ばれる1種又は2種以上が好ましく用いられる。
(X群)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルケニルエーテル
【0048】
中でも、非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルを含む形態が好ましい。本発明の好ましい形態としては、非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルのみを含有させる形態、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルに加えて、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油より選択される1種又は2種以上を組み合わせる形態が好ましく例示できる。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルと組み合わせる成分として、特に、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましく、これらの両者を組み合わせることも好ましく例示できる。また、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのみを用いる形態も好ましく例示できる。
【0049】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルを構成するアルキル又はアルケニルの炭素数は、好ましくは10〜24、より好ましくは12〜22である。
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルとしては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルなどが好ましく例示できる。
また、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルにおいて、また、ポリオキシエチレンの平均付加モル数は2〜50が好ましく、4〜45がより好ましく、4〜40が更に好ましく、6〜30が特に好ましい。
【0050】
ポリオキシエチレン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数は、好ましくは8〜24、より好ましくは12〜18である。
前記ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンオレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウレート等のポリオキシエチレンの、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸エステルが好ましく例示できる。
また、前記ポリオキシエチレン脂肪酸エステルにおいて、ポリオキシエチレンの平均付加モル数は5〜70が好ましい。より好ましくは、5〜65である。さらに好ましくは、5〜55である。
【0051】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数は、好ましくは12〜18である。
前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどが好適に例示できる。
また、前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルにおいて、ポリオキシエチレンの平均付加モル数は10〜50が好ましく、5〜25がより好ましい。
【0052】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油においては、ポリオキシエチレンの平均付加モル数が30〜90であることが好ましい。
【0053】
ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルケニルエーテルを構成するアルキル又はアルケニルの炭素数は、好ましくは16〜24である。
ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルケニルエーテルとしては、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンセチルなどが好ましく例示できる。
また、ポリオキシエチレンの平均付加モル数は2〜30が好ましく、4〜20がより好ましい。また、ポリオキシプロピレンの平均付加モル数は10〜20が好ましく、6〜16がより好ましい。
【0054】
また、部分的な非イオン性界面活性剤として、脂肪族アルカノールアミド型界面活性剤から1種又は2種以上を選択し、組成物に含有させることができる。
脂肪族アルカノールアミド型界面活性剤は、外用医薬や化粧品などの通常の皮膚外用剤で使用されるものであれば特段の定めなく適用できる。具体例を挙げれば、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド(コカミドMEA)、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(コカミドDEA)、ラウリン酸モノエタノールアミド(ラウラミドMEA)、ラウリン酸ジエタノールアミド(ラウラミドDEA)、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド(ラウラミドMIPA)、パルミチン酸モノエタノールアミド(パルタミドMEA)、パルミチン酸ジエタノールアミド(パルタミドDEA)ヤシ油脂肪酸メチルエタノールアミド(コカミドメチルMEA)などが好適に例示でき、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、パルミチン酸ジエタノールアミドが好適に例示できる。
【0055】
前記脂肪族アルカノールアミド型界面活性剤は、組成物全量に対し1質量%であることが好ましい。より好ましくは0.5質量%である。さらに好ましくは、全く含まない形態である。
【0056】
本発明の泡沫は、前記HLB値が9以上の非イオン性界面活性剤以外に、HLB値が5以下の非イオン性界面活性剤を含んでいてもよい。
前記HLB値が5以下の非イオン性界面活性剤は、皮膚外用剤などに配合可能であれば特段の定めなく適用することができる。
前記HLB値が5以下の非イオン性界面活性剤として、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどが好適に例示できる。
【0057】
前記グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノステアリン酸グリセリン、モノミリスチン酸グリセリルが好適に例示できる。より好ましくは、モノステアリン酸グリセリルである。
前記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンなどが好適に例示できる。より好ましくは、モノステアリン酸ソルビタンである。
前記HLBが9以上の非イオン性界面活性剤と、HLB値が5以下の非イオン性界面活性剤の組み合わせの例としては、非イオン性界面活性剤として、HLBが9以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルにHLBが5以下のモノステアリン酸グリセリン及び/又はモノステアリン酸ソルビタンを組み合わせる形態、HLB値が9以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルに加え、HLBが9以上のポリオキシチレン脂肪酸エステル、ポリオキシチレン化されたソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシチレン化されていても良いヒマシ油より選択される1種又は2種以上と、HLB値が5以下のモノステアリン酸グリセリン及び/又はモノステアリン酸ソルビタンを組み合わせる形態が例示できる。
【0058】
本発明の泡沫は、イオン性界面活性剤(但し、リン脂質を除く)を好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは実質的に含まないことが好ましい。これにより、安全性の高い泡沫とすることが可能である。
【0059】
本発明の泡沫は、泡沫殻にアルコールを含むことが好ましい。本発明の泡沫におけるアルコールとは、一価アルコールおよび多価アルコールの総称である。かかる成分は、水と任意の割合で混合する性質のものが好ましい。
本発明の泡沫におけるアルコールは、非イオン性界面活性剤と相互作用することにより、泡沫殻を強固にする。
本発明の泡沫におけるアルコールは、多価アルコールであることが好ましい。
【0060】
一価のアルコールとしては、例えば、炭素数1〜3のアルコールが好ましく例示でき、より好ましくはエタノール、イソプロピルアルコール等が例示できる。
【0061】
一価のアルコールは、前述した多層構造における水性成分相の構成成分として含まれることが好ましい。
【0062】
多価アルコールとしては、全ての炭素原子に水酸基が結合している炭素数2〜6の多価アルコールが好適に例示できる。このような多価アルコールとしては、例えばジエチレングリコール、グリセロール、エリスリトール、グルコース、ソルビトールなどが好適に例示できる。
【0063】
全ての炭素原子に水酸基が結合している炭素数2〜6の多価アルコールは、前述した多層構造における水性成分相の構成成分として含まれることが好ましい。
【0064】
また、疎水性末端を有する多価アルコールを含むことが好ましい。疎水性末端を有する多価アルコールとしては、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、ヘキシレングリコールなどが好適に例示できる。
【0065】
疎水性末端を有する多価アルコールは、前述した多層構造における液滴相の構成成分として含まれることが好ましい。
【0066】
また、多価アルコール重合物も親水基同士が会合することで、泡沫において前述した疎水性末端を有する多価アルコールと同様の作用を有する。そのため、多価アルコール重合物を含む形態も好ましい。多価アルコール重合物としてはポリプロピレングリコールやポリエチレングリコールが好適に例示できる。
【0067】
多価アルコール重合物は、前述した多層構造における液滴相の構成成分として含まれることが好ましい。
【0068】
多価アルコールとしては、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンおよびプロピレングリコールから選択される1種乃至は2種以上が好ましく、より好ましくはポリエチレングリコールおよび1,3−ブチレングリコールである。
また、多価アルコールの分子量は、好ましくは、3500以下、より好ましくは、2000以下であることが好ましい。
【0069】
本発明の泡沫は硫酸化されていても良い多糖類を含むことが好ましい。
硫酸化されていてもよい多糖類としては、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体などのヒアルロン酸類、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸などのコンドイチン硫酸類、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ヘパリン類似物質、ケラタン硫酸等のムコ多糖類、キチン、キトサン等のポリグルコサミン;キサンタンガム、サクシノグリカン、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、ガラクタン、アラビアガム、トラガントガム、タマリンドガム、寒天、アガロース、マンナン、カードラン、ペクチン、アルギン酸及びその塩類、デンプン、デキストリン、セルロース類等の親水性天然高分子;カルボキシメチルスターチ及びその塩類、アクリル酸グラフトデンプン及びその塩類等のデンプン誘導体や、ヒドロキシプロピルセルロース及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース及びその誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートやステアリル基等の炭化水素基を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシプロピルメチルセルロースの誘導体、スルホン化セルロース誘導体、カルボキシメチルセルロース及びその誘導体並びにそれらの塩類、カルボキシメチルエチルセルロース及びその塩類、酢酸フタル酸セルロース、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(「ポリクオタニウム−10」ともいう)等のカチオン化セルロース、エチルセルロース、クロルカルメロース及びその塩類等のセルロース誘導体といった親水性合成高分子等が挙げられる。
【0070】
これら硫酸化されていてもよい多糖類のうち好ましくは、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体などのヒアルロン酸類、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ヘパリン類似物質、ケラタン硫酸等のムコ多糖類、キチン、キトサン等のポリグルコサミンを例示できる。特に好ましくはヒアルロン酸及びヘパリン類似物質を例示することができる。
硫酸化されていても良い多糖類はただ一種を含有することもできるし、二種以上を組み合わせて含有することもできる。
【0071】
硫酸化されていてもよい多糖類は、前述した多層構造における水性成分相の構成成分として含まれることで、分散滴の安定化を向上せしめる作用を有する。また、副次的効果として保湿作用ももたらす。
【0072】
本発明の泡沫は、有機塩及び/又は無機塩を含有していてもよい。本発明の泡沫は、有機塩及び/又は無機塩により液性が調整され、強酸性〜強アルカリ性(pH2〜12)の範囲において液性に影響を受けることなく優れた起泡性、泡持ち、泡質を形成し得る。
前記有機塩及び/又は無機塩としては、塩酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、ソルビン酸、乳酸、マレイン酸、硫酸、リン酸、リンゴ酸、アルギニン、アンモニア水、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及び水酸化ナトリウム、又はそれらの塩が挙げられるがこれに限定されない。
【0073】
本発明の泡沫は、皮膚外用医薬、化粧料などの外用組成物で使用される任意の成分を含有することができる。
前記任意の成分としては、例えば、流動パラフィンやスクワランなどの炭化水素類、ホホバ油、ドデカン酸オレイルエステル、セチルイソオクタネート等のエステル類、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキル−2−メチルピロリドン、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどの炭素数2〜4の炭酸アルキレン、クロタミトン、クエン酸トリエチル、ジエチレングリコールのエチルエーテル、トリアセチン、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピルなどの炭素数5〜12の二塩基酸のジエステル、ベンジルアルコール等の溶剤類、オレイン酸、イソステアリン酸などの脂肪酸、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガムなどの増粘剤、パラベン、クロルヘキシジングルコネート等の殺菌剤などが好適に例示できる。これらの任意成分の内、好適なものを適宜選択し、含有させることができる。
【0074】
本発明の泡沫に有効成分を含有することで、フォーム剤形の医薬として用いることができる。有効成分としては、例えば、ヒドロコルチゾン、クロベタゾン、デキサメタゾン及びベタメゾン、並びにそれらの誘導体などのステロイド類、インドメタシン、スプロフェンなどの非ステロイド抗炎症剤、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウムなどの殺菌剤、テルビナフィン、ブテナフィン、ビフォナゾール、ケトコナゾールなどの抗真菌剤、ペニシリン、メチシリン、テトラサイクリン、コリスチンメタンスルホン酸、フォスフォマイシン等の抗生物質、ナルフラフィンなどの抗掻痒剤、ビタミンA類、ビタミンB類、ビタミンC類、ビタミンD類、ビタミンE類、タクロリムスなどの免疫抑制剤等が好適に例示できる。
本発明はまた、特に、抗真菌剤として、ナフチルアミン系、ベンジルアミン系、アゾール系、ジチオラン系の抗真菌剤を含有する形態も好適に例示できる。
【0075】
前記有効成分は、水に対する溶解性に応じて、低光透過性領域及び高光透過性領域のいずれの領域における泡沫殻にも含むことができる。また、前記有効成分は、前述した多層構造における水性成分相及び液滴相の何れの構成成分として含むことができる。
【0076】
溶剤としては、例えば、以下Y群から選ばれる極性溶剤を含有することが好ましい。
(Y群)
N−アルキルピロリドン、炭酸アルキレン、ベンジルアルコール、アジピン酸ジエステル、セバシン酸ジエステル
前記Y群の極性溶剤は、難溶解性の薬剤(有効成分)の溶解性に優れ、難溶解性の薬剤を本発明の泡沫に安定に含有することができる。
【0077】
前記N−アルキルピロリドンとしては、炭素数1〜4のアルキル鎖を有するN−アルキル−2−ピロリドンが好適に例示できる。より好ましくは、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンである。
【0078】
前記炭酸アルキレンとしては、炭酸プロピレンが好ましい。
【0079】
前記アジピン酸ジエステルとしては、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピルが好ましい。
【0080】
前記セバシン酸ジエステルとしては、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピルが好ましい。
【0081】
前記極性溶剤は単独で組成物に含有させることもできるし、1種又は2種以上を選択し組成物に含有させることができる。
【0082】
本発明の泡沫は、リン脂質を含有することが好ましい。リン脂質としては、外用医薬や化粧品などの通常の皮膚外用剤で使用されるものであれば特段限定なく適用できる。具体例として、大豆や卵黄から精製されるレシチン、レシチンの主成分であるフォスファチジルコリン、水酸化レシチン、フォスファチジルコリンの主鎖であるフォスファチジン酸、水添レシチン、フォスファチジルセリン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリン、セレプロシドおよびこれらのリゾ体などが好適に例示できる。より好ましくは、レシチン、水素添加レシチンである。
【0083】
前記リン脂質は、組成物の泡質を向上させる作用、保湿作用に優れるほか、起泡性を低下させることなく、塗布後の適度な時間で消泡するため、塗布予及び延展時の刺激性が低く、伸ばし易く、泡残りしないため、アトピー性皮膚炎などの皮膚バリア機能が低下した皮膚への塗布に適する。前記リン脂質は、ただ1種を含有することもできるし、2種以上を組み合わせて含有させることもできる。
【0084】
本発明の泡沫は、前記リン脂質に加え、スクワレン、コレステロール、コレステロールエステル、ワックスエステル、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、セラミド、遊離脂肪酸などの皮脂成分、セリン、グリシンなどのアミノ酸、ピロリドンカルボン酸及びその塩、尿素、乳酸などの天然保湿因子、ヒアルロン酸などの酸性ムコ多糖類なども含有させることができる。
【0085】
本発明の泡沫は、アミノカルボン酸誘導体及びその塩、ホスホン酸誘導体及びその塩、フェナントロリン誘導体及びその塩、フェチン酸誘導体及びその塩、グルコン酸誘導体及びその塩から選択される1種または2種以上を含有していてもよい。
【0086】
前記アミノ酸カルボン酸誘導体としては、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、(S,S)−エチレンジアミンスクシン酸およびこれらの塩などが好適に例示できる。より好ましくは、エチレンジアミン四酢酸およびその塩が好ましい。
【0087】
前記ホスホン酸誘導体としては、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ホスホノブタントリカルボキシキシリックアシッド、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)およびこれらの塩などが好適に例示できる。より好ましくは、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸及びその塩である。
【0088】
以上説明した各成分の含有量など、好ましい組成については、<2>本発明のスクリーンフォーマー用組成物の項において説明し、その組成が本発明の泡沫にも当てはまる。
【0089】
<1−3>泡沫の用途
本発明の泡沫は、安全性が高く、泡持続性を有するため、患部に負担をかけることなく、均一に塗布することができる。
このような性質から、本発明の泡沫は、皮膚疾患に対する有効成分を含有する医薬として用いることが好ましい。この場合には、塗布後除去しないで用いられる。
【0090】
<1−4>泡沫の製造方法
本発明の泡沫は、次項で説明するスクリーンフォーマー用の組成物をスクリーンフォーマーに通すことで調製することができる。
ここで、スクリーンフォーマーとは、液体を加圧し、ネット状のスクリーンを通過させることにより、組成物を空気と混合せしめ、発泡させる機構のものを意味し、ポンプフォーマー、チューブフォーマーなどが知られており、特にポンプフォーマーが好ましく例示できる。ポンプフォーマーとはポンプでくみ上げた内容物を、泡状の形態で吐出する機構である。このようなスクリーンフォーマーを備えた容器は公知であり(例えば、特開2012−45525号公報、特開2008−307478号公報を参照)、市販品も存在するので、これを適宜用いることができる。
以下、スクリーンフォーマー用の組成物について詳述する。
【0091】
<2>本発明のスクリーンフォーマー用の組成物
本発明のスクリーンフォーマー用の組成物(以下、本発明の組成物)は、前述した本発明の泡沫の調製に用いられる組成物である。
【0092】
<2−1>組成物の構成成分
以下、本発明の組成物の構成成分について説明を加える。なお、構成成分の好ましい形態については、<1>本発明の泡沫の項の記載が当てはまる。
【0093】
本発明の組成物は、泡沫形成剤として、非イオン性界面活性剤を含む。すなわち、本発明の組成物は、非イオン性界面活性剤以外の泡沫を形成し得る成分(典型的には、イオン性界面活性剤)を、これが泡沫形成能を発揮する形態で含まない。例えば、イオン性界面活性剤(但し、リン脂質を除く)の含有量は、好ましくは1質量%以下であり、更に好ましくは実質的に含有しない。
【0094】
本発明の組成物において、本発明の組成物において、非イオン性界面活性剤は、組成物が可溶化状態となる量配合する。
例えば、非イオン性界面活性剤は、組成物全量に対し1〜15質量%含有されることが好ましい。また、非イオン性界面活性剤は、組成物全量に対し好ましくは2〜12質量%、更に好ましくは2〜10質量%、より好ましくは2.5〜10質量%、特に好ましくは2.5〜7質量%含有される。前記所定のHLB値を有する非イオン性界面活性剤の占める割合は、非イオン性界面活性剤の総量に対して、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。例えば、非イオン性界面活性剤の全量をHLB値が9以上、好ましくは10以上、さらに好ましくは11以上、特に好ましくは13以上の非イオン性界面活性剤で構成することも好ましい。
【0095】
前記X群から選ばれる非イオン性界面活性剤の占める割合は、非イオン性界面活性剤の総量に対して、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。例えば、非イオン性界面活性剤の全量を前記X群から選ばれる非イオン性界面活性剤で構成することも好ましい。
【0096】
また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルの占める割合は、非イオン性界面活性剤の総量に対して、好ましくは25質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。これらの割合の上限値は特に制限されないが、例えば、90質量%以下、好ましくは80質量%以下が挙げられる。
【0097】
非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルに加え、他の非イオン性界面活性剤を含有させる場合には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルの総含有量が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテル以外の非イオン性界面活性剤の総含有量に対し、質量比で、1:5〜5:1、より好ましくは、1:4〜4:1、さらに好ましくは、1:3〜3:1であることが好ましい。
【0098】
本発明の組成物において、前記脂肪族アルカノールアミド型界面活性剤を用いる場合には、例えば0.5〜10質量%、好ましくは1〜5質量%とすることができる。
【0099】
本発明の組成物において、前記HLB値が5以下の非イオン性界面活性剤を、前記HLB値が9以上の非イオン性界面活性剤と組み合わせる場合には、それらの質量比は、1:3〜3:1が好ましく、1:2〜2:1がより好ましい。
また、HLB値が9以上の非イオン性界面活性剤と、HLB値が5以下の非イオン性界面活性剤を共に配合する場合は、HLB値の加重平均が9〜16であることが好ましい。
【0100】
前記一価アルコールの含有量は、組成物の全量に対し5〜25質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜20質量%、さらに好ましくは10〜15質量%である。
【0101】
全ての炭素原子に水酸基が結合している炭素数2〜6の多価アルコールの含有量は、好ましくは0.001〜40質量%、より好ましくは0.001〜30質量%、さらに好ましくは1〜30質量%である。
【0102】
一価アルコール及び全ての炭素原子に水酸基が結合している炭素数2〜6の多価アルコールを合わせて含む形態とする場合には、その総量は、10〜45質量%が好ましく、20〜40質量%がより好ましい。
【0103】
疎水性末端を有する多価アルコールと多価アルコール重合物の含有量は、総量で、組成物全量に対して1〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、10〜20質量%が更に好ましい。このような濃度範囲とすることにより、安定した包括殻を有する泡沫を形成することができる組成物を提供することができる。
【0104】
全ての炭素原子に水酸基が結合している炭素数2〜6の多価アルコール、疎水性末端を有する多価アルコール、及び多価アルコール重合物の含有量は、総量で、組成物の全量に対し10〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは12〜50質量%である。
【0105】
前記アルコールの総含有量は、組成物の全量に対し10〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは12〜45質量%、特に好ましくは15〜30質量%である。さらに、本発明の組成物は、前記アルコールの総含有量のうち、前記多価アルコールを10質量%以上含有することが好ましく、より好ましくは10〜45質量%である。
本発明の組成物は、アルコールの含有量を前記範囲とすることで、吐出した泡沫を長時間保持することができ、また保湿感などの使用実感を向上させることができる。
【0106】
また、本発明の組成物の好ましい形態としては、以下が挙げられる。
1,3−ブチレングリコールを5〜30質量%、より好ましくは10〜25質量%含有する形態。
前記1,3−ブチレングリコールに加え他の多価アルコールも含有する形態。
前述のアルコール、取り分け、多価アルコールを高濃度で含有することにより、非イオン界面活性剤との相互作用により、空気との界面が強化された泡沫殻を有する泡を形成することができる。また、アルコールを高濃度で含有することにより、保湿感を実感できる組成物となる。
【0107】
本発明の泡沫は硫酸化されていても良い多糖類を含むことが好ましい。この場合、前記多糖類の含有量は、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜1質量%である。
【0108】
本発明の組成物において、前記極性溶剤を含有する場合には、その含有量は、組成物の全量に対し1〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%である。
また、本発明の組成物は、前記極性溶剤の含有量が、難溶解性の薬剤(有効成分)の含有量の20〜250質量倍とすることが好ましく、より好ましくは30〜200質量倍である。
本発明の組成物は、前記極性溶剤の濃度を上記範囲とすることで、吐出した泡沫の強度を高めることができ、かつ有効成分を組成物に安定的に配合することができる。
さらに、本発明の組成物は、前記極性溶剤の濃度を上記範囲とすることで、塗布及び延展時の刺激感を低減することができる。
【0109】
本発明の組成物は、有機塩及び/又は無機塩を含有していてもよい。本発明の組成物は、有機塩及び/又は無機塩により液性が調整され、強酸性〜強アルカリ性(pH2〜12)の範囲において液性に影響を受けることなく優れた起泡性、泡持ち、泡質を形成し得る。有機塩及び/又は無機塩の好ましい形態については、<1>本発明の泡沫の項の記載が当てはまる。
【0110】
本発明の組成物において、前記有機塩及び/又は無機塩を含む場合には、その含有量は、組成物の液性が前記pH範囲(pH2〜12)に調整される量であることが好ましい。前記含有量は有機塩及び/無機塩の種類により異なるが、一般には組成物全量に対し0.1〜10質量%であり、好ましくは0.5〜5質量%である。
本発明の組成物は、アルカリ性においては洗浄剤などとして、弱酸性においては、皮膚への刺激を低減した医薬品、化粧品などに適用することができる。特に、弱酸性においては、塗布後除去しない形態で使用される医薬品や化粧品に好適である。
【0111】
本発明の組成物において、前記リン脂質を含有する場合には、その含有量は、組成物全量に対し0.001〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.01〜5質量%である。
本発明の組成物は前記リン脂質の濃度を上記範囲とすることで、吐出した泡沫の強度を高めるとともに、泡沫がpHの影響を受けて性状が変化するのを防ぐ作用を有する。さらに塗布延展時の使用感を向上させるとともに、皮膚が刺激を受けるのを避けることができる。
【0112】
本発明の組成物において、アミノカルボン酸誘導体及びその塩、ホスホン酸誘導体及びその塩、フェナントロリン誘導体及びその塩、フェチン酸誘導体及びその塩、グルコン酸誘導体及びその塩から選択される1種または2種以上を含有する場合には、前記誘導体およびその塩は、組成物の全量に対し0.0001〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.001〜5質量%である。
本発明の組成物は、前記誘導体およびその塩の含有量を上記範囲とすることで、有効成分又は製剤成分の分解、変性などを抑制し、製剤安定性を向上させることができる。
【0113】
前述した成分以外の任意成分の好ましい含有量は、それぞれの配合目的により異なるが、大凡0.1〜20質量%である。
【0114】
本発明の組成物は、安全性、特に敏感肌のヒトに対して、刺激や刺激感を呈する成分を含有しないという観点から、以下の成分についてはその使用が制限されることが好ましい。
リン脂質を除くイオン性界面活性剤の含有量の総和は1質量%以下であることが好ましく、実質的に含有しないことが好ましい。
また、非イオン性界面活性剤のうち、アルカノールアミド型界面活性剤もその使用は制限されることが好ましく、特に好ましい形態では実質的に含有しない。また、非イオン性界面活性剤のうち、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは、粘膜においてアナフィラキシーを誘起することから、その使用が制限されることが好ましい。これらの非イオン性界面活性剤の使用量は、非イオン性界面活性剤に占める割合として、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは含有しない。
また、シリコーンについても実質的に含有しないことが好ましい。
【0115】
<2−2>組成物の物性
本発明の組成物は、上記成分を含有し、可溶化状態であることが好ましく、マイクロエマルション剤形をとることがより好ましい。マイクロエマルション剤形か否かについては、以下の通り確認することができる。
(1)調製直後、100〜1000倍の倍率で顕微鏡下観察してもミセルは確認されない。
(2)遠心分離などの応力を付加したとき、100〜1000倍の倍率で顕微鏡下観察すると、ミセル(平均粒径1〜10ミクロン)を確認できる。この時の遠心分離の条件としては、例えば、1000〜100000gで1〜5分間などの条件が好ましく例示できる。
(3)スライドグラス上に滴下し、1時間室温放置した場合、ミセルをほとんど観察しないか、ミセルを明確に観察する。
【0116】
本発明の組成物は、好ましくは、O/W型のマイクロエマルションである。このような形態において、組成物がアルコール、好ましくは多価アルコールを含む場合には、(アルコール+非イオン性界面活性剤)/(水+アルコール)のO/W型であることが好ましい。
【0117】
マイクロエマルション剤形とする場合、連続相中に非イオン界面活性剤と疎水性部分を有する多価アルコールとを含む分散滴を分散させてなる形態とすることが好ましい。かかる分散形態は、通常マイクロエマルションの形態をとり、遠心分離などの系にストレスをかけることにより、マイクロミセルが合一してミセルを形成し、通常の可溶化乃至は乳化状態へと遷移する。上述の方法により、組成物がマイクロエマルションであることを確認することができる。
【0118】
また、マイクロエマルション剤形とする場合、連続相は、水を主成分として、炭素数1〜3の単価アルコール、全ての炭素原子に水酸基が結合している炭素数2〜6の多価アルコール、硫酸化されていても良い多糖類等を含む形態とすることが好ましい。
【0119】
本発明の組成物は、スクリーンフォーマーに通すことにより、起泡する。そして、発泡後の泡沫は持続性のあるものである。また、本発明の組成物の好ましい形態では、結晶などを析出することなく、長期保存における安定性に優れる。
【0120】
本発明の組成物は、好ましくは水系である。ここで、水系とは、水が基剤として機能する程度に含有されていることをいい、例えば、その含有量は15質量%以上、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。
本発明の組成物は、水を40〜85質量%、より好ましくは50〜80質量%、更に好ましくは55〜75質量%含有することを特徴とする。
本発明の組成物において、水はスクリーンフォーマーで吐出したときに泡沫を形成するための重要な構成要素である。
本発明の組成物は、水の量を前記範囲とすることで、起泡性や泡持続性により優れた泡沫を形成することができる。また、外用の際に、塗布している間安定に泡を維持するためには、水の量を前記範囲とすることが有効である。
【0121】
また、本発明の組成物は、下記(A)の条件を充足する。好ましくは、下記(A)および下記(B)を充足する。より好ましくは、下記(A)、下記(B)および下記(C)の条件を充足する。
(A)下記(I)又は下記(II)の処理前は、ミセル像が観察されない状態又はほとんどミセル像が観察されない状態にある。
(B)下記(I)の処理後は、ミセル像が観察される状態にある。
(C)下記(II)の処理後は、該処理前よりも多くのミセル像が観察される状態にある。
(I)前記組成物を静置する。
(II)前記組成物に応力を加える。
【0122】
これらの条件に合致するスクリーンフォーマー用の組成物は、スクリーンフォーマー容器に充填し形成させた泡沫に関しては、
(1)本発明の泡沫、すなわち、25℃静置条件下で泡沫殻表面全体が低光透過性領域によって占められている泡沫となる。
(2)低光透過性領域における泡沫殻はミセルの合一により形成される。
(3)組成物自体の表面張力はさほど低下していない。
と言う特質が確認できる。
【0123】
前記(I)の処理は、例えば前記組成物を開放系で静置する処理である。また、前記(I)の処理は、好ましくは前記組成物を開放系で1時間静置する処理である。組成物に於いては、1時間スライドグラス上に放置したときに、明確にミセルが確認された方が、ミセルを確認されない場合より、本発明の組成物としては好ましい。これは、多価アルコールの相間移動のしやすさを示す指標だからである。
【0124】
また、本発明の組成物における、前記(II)の応力を加える処理として、例えば、引っ張り応力、圧縮応力、遠心分離による応力を加える処理等が好ましく例示できる。中でも好ましくは前記(II)の処理が遠心分離により応力を加える処理である。遠心分離の条件としては、例えば10000〜20000g、1〜5分間が挙げられる。
【0125】
また、前記ミセル像の観察は、100〜5000倍の倍率での光学顕微鏡観察によって行うことが好ましい。観察倍率は、好ましくは100〜2000倍であり、さらに好ましくは100〜1000倍であり。特に好ましくは、100〜400倍である。
【0126】
本発明の組成物の好ましい形態を定義するにあたり、開放系で静置する等の経時的条件あるいは応力負荷条件を加えた後に、ミセルが観察できるか否かは重要である。
【0127】
本発明の組成物は、皮膚外用医薬、化粧料などの皮膚外用組成物の形態であることが好ましい。より好ましくは塗布後除去しない態様で使用するためのものである。
【0128】
<2−3>組成物の製造方法
本発明の組成物は、前述した構成成分を室温以上で可溶化することにより製造することができる。本発明の組成物は、前述した構成成分を50℃以上で可溶化することにより製造することが好ましく、より好ましくは非イオン性界面活性剤の曇点以上で可溶化することにより製造する。
本発明の組成物は、室温付近で可溶化することにより製造することもできるが、非イオン性界面活性剤の曇点以上で可溶化することで、スクリーンフォーマー用の組成物としてより適している組成物を製造することができる。
【0129】
<3>本発明のスクリーンフォーマー用の組成物の評価方法
以下、本発明のスクリーンフォーマー用の組成物の評価方法(以下、本発明の評価方法)について説明を加えるが、説明における用語の定義等は上記<1>〜<2>の記載を適用することができる。
【0130】
本発明の評価方法は、非イオン性界面活性剤を泡沫形成剤として含むスクリーンフォーマー用の組成物をスクリーンフォーマーに通して泡沫を形成させたときの泡沫殻の表面の態様を観察して行う。
すなわち、形成された泡沫の泡沫殻の表面に高光透過性領域及び低光透過性領域が観察され、この泡沫を25℃下で静置したとき、泡沫殻の表面積に占める低光透過性領域の面積が経時的に拡張することで、泡沫殻の表面全体が前記低光透過性領域により占められることを認めた場合には、スクリーンフォーマー用の組成物として適したものであると判別する。
【0131】
一方、形成された泡沫を25℃下で静置したとき、泡沫殻の表面積に占める低光透過性領域の面積が経時的に拡張することで、泡沫の表面全体が低光透過性領域により占められることが認められない場合には、スクリーンフォーマー用の組成物として適していないものであると判別する。
【0132】
つまり、本発明の評価方法は、スクリーンフォーマー用の組成物から泡沫を形成したときに、該泡沫の表面において
図1に示すような態様変化が観察されたときに、スクリーンフォーマー用の組成物として適しているものであると判別する。
【0133】
スクリーンフォーマー用の組成物が形成する泡沫の起泡性および泡持続性は、製造方法や、製造手順などにより異なる場合が存在する。
本発明の評価方法は、これらの製造方法や、製造手順の違いによって生じる起泡性および泡持続性の差異を、泡沫の表面における低光透過性領域の態様変化によって判別することができる。
【0134】
本発明の評価方法は、泡沫の表面に形成される低光透過性領域及び高光透過性領域の観察方法について特段の限定はない。例えば、光学顕微鏡や電子顕微鏡による観察、X線回折による構造の特定等が挙げられる。本発明の評価方法は、簡便さ、正確さの観点から、好ましくは顕微鏡によって、より好ましくは光学顕微鏡によって観察する。
【0135】
また、本発明の評価方法は、泡沫を25℃下で静置したとき、泡沫の表面積に占める低光透過性領域の面積が経時的に拡張する過程、より具体的には泡沫の表面積の半分以上を低光透過性領域が占めている状態において、高光透過性領域の最大径と最小径の差が小さいほど、よりスクリーンフォーマー用の組成物に適していると判別することができる。
例えば、低光透過性領域12の面積が拡大する過程において、
図2の(a)に表されるような最大径と最小径の差が大きな高光透過性領域11が観察される場合と比較して、
図2の(b)に表されるような最大径と最小径の差が小さな高光透過性領域11が観察される場合の方が、よりスクリーンフォーマー用の組成物に適していると判別することができる。
【0136】
また、本発明の評価方法は、非イオン性界面活性剤を含む組成物をスクリーンフォーマーに通さずに光学顕微鏡で観察した場合において、下記(A)の条件を充足する場合に、スクリーンフォーマー用の組成物として適したものであると判別する。
好ましくは、下記(A)および(B)の条件を充足する場合に、スクリーンフォーマー用の組成物として適したものであると判別する。
より好ましくは、下記(A)、(B)および(C)の条件を充足する場合に、スクリーンフォーマー用の組成物として適したものであると判別する。
(A)下記(I)又は下記(II)の処理前は、ミセル像が観察されない状態又はほとんどミセル像が観察されない状態にある。
(B)下記(I)の処理後は、ミセル像が観察される状態にある。
(C)下記(II)の処理後は、該処理前よりも多くのミセル像が観察される状態にある。
(I)前記組成物を静置する。
(II)前記組成物に応力を加える。
【0137】
各処理、並びに観察の方法および条件の好ましい形態は、前述したとおりである。
当該評価方法は、組成物の評価方法として、単独で用いることができる。また、前述した泡沫の低光透過性領域に関する評価と組み合わせて用いることもできる。
【0138】
以下、本発明について、実施例を挙げて更に詳細に説明を加える。
【実施例1】
【0139】
下記の表1に従って、組成物1〜3を調製した。即ち、処方成分のヘパリン類似物質からPOE硬化ヒマシ油60までを量り込み、80℃で加熱可溶化し、室温まで攪拌冷却し、これに残余の成分を加え攪拌し組成物1〜3を得た。そして、組成物1〜3に対して以下の試験例1〜3の試験を行った。
【0140】
【表1】
【0141】
<試験例1>泡沫の観察
組成物1〜3をポンプフォーマーに通して、泡沫を形成させた。前記泡沫をスライドグラスに乗せ、光学顕微鏡観察を行い、起泡性および泡持続性について評価を行った。また、泡沫の表面に光の透過性の高い高光透過性領域と、光の透過性の低い低光透過性領域が形成されているか否か、そしてこれらがどのような態様の変化を見せるのか観察した。結果を
図6に示す。
図6にはスライドグラス上に乗せた泡沫の写真も併せて掲載する。なお、組成物1については経時変化を表す写真を
図7に示す。
また、それぞれの組成物から形成される泡沫について、起泡性と泡持続性を評価した。
【0142】
<試験例2>開放系で静置後の組成物の観察
前記組成物1〜3を、調製直後にスライドグラス上に乗せ顕微鏡観察を行った。さらに、スライドグラス上に1時間静置した後に、光学顕微鏡観察を行った。前記調製直後および大気下1時間静置後のそれぞれの光学顕微鏡観察により、ミセルの形成を認めるか否かの評価を行った。結果を
図6に示した。
【0143】
<試験例3>遠心分離後の組成物の観察
組成物1〜3をそれぞれポリエチレン製の遠心分離用チューブに100μl入れ、遠心分離(15000g、1分間)を行った。遠心分離後、組成物1〜3をそれぞれスライドグラス上に乗せ、光学顕微鏡観察を行い、観察されるミセルの評価行った。結果を
図6に示した。
【0144】
試験例1の結果、泡沫形成直後にはその表面に低光透過性領域と高光透過性領域が存在することが認められ、徐々に泡沫表面に占める低光透過性領域の割合が増加していき、最終的には泡沫の表面全体が低光透過性領域で構成されることが分かった(
図6及び7)。
また、低光透過性領域の拡張の過程において観察される高光透過性領域の形状に関して、組成物1においては最小径と最大径の差が小さい島状の高光透過性領域が観察されるのに対して、組成物3においては細長く、最小径と最大径の差が大きな高光透過性領域が観察された(
図6)。
【0145】
これら組成物1〜3より形成される泡沫は、いずれも起泡性と泡持続性に優れていた。なお、起泡性と泡持続性に関しては、組成物1>組成物2>組成物3の順で良好であった。つまり、疎水性末端基を有する多価アルコールである1,3−ブチレングリコール(1,3BG)を15質量%含有し、ヘパリン誘導体を0.3%含有する組成物1が良好な泡沫を形成することがわかる。
【0146】
試験例1の結果は、高光透過性領域と低光透過性領域を有し、25℃下で静置したとき、泡沫殻の表面積に占める低光透過性領域の面積が経時的に拡張することで、泡沫殻の表面全体が低光透過性領域により占められるような特性を有する泡沫は、起泡性と泡持続性に優れることを示している。
また、低光透過性領域の拡張の過程において観察される高光透過性領域の形状に関して、最小径と最大径の差が小さい島状の高光透過性領域が観察される場合には、より優れた性質の泡沫となることが分かった。
【0147】
試験例2の結果、調製直後の顕微鏡観察では、組成物1〜3のいずれもミセルが観察されないことがわかった。また、大気下1時間静置後には、組成物1〜3ではミセルが観察された。ミセルの数は組成物1>組成物3>組成物2の順で多かった。
【0148】
試験例3の結果、遠心分離(15000g、1分間)後の顕微鏡観察では、組成物1〜3のいずれにもミセルの出現が確認された。ミセルの出現数は組成物2>組成物1>組成物3の順で大きかった。
また、ミセルの大きさは組成物3>組成物2>組成物1の順で大きかった。またミセルの均一性は組成物1>組成物2>組成物3の順で高かった。この結果と試験例1の結果を合わせると、遠心分離後に出現するミセルの径が小さいほど、良質な泡沫を形成することができる組成物であると判別することができる。
【0149】
試験例2及び3の結果より、組成物1〜3はマイクロエマルション剤形をとることが推察される。この結果と、試験例1の観察結果を合わせた考察を
図4も参照しながら説明する。泡沫表面において低光透過性領域12が拡張していく現象は、組成物中に分散していたミセル33が合一しながら泡沫殻に融合していく様子であるものと推察される(
図4)。ここで、高光透過性領域11はミセルが吸着・融合過程にあるものであり、吸着後濃い色で見える高光透過性領域11に取り込まれることから、転相が起こっていることが推測される。また、低光透過性領域12は光学顕微鏡観察下で非常に濃く見えることから、低光透過性領域12における泡沫殻の構造は多層構造であることが推測され、泡沫殻の最外層はミセル(液滴)33と異なった相であることが推測される。又、空気界面に同じ相が、層として存在しなければならないことから、最外層はと最内層は液滴33とは異なる相、即ち、水を含む相、すなわち水性成分相31であることが示唆される。従って、泡沫殻は二相三層構造(水性成分相31−液滴相32−水性成分相31の三層構造)であることが示唆された。
【0150】
以上の結果を合わせると、調製後の顕微鏡写真でミセルを確認できないことを確認し、(1)1時間スライドグラス上で放置し顕微鏡観察し、ミセルの形成が確認でき、以てマイクロエマルション剤形であることが確認でき、
(2)遠心分離操作を行い、生ずるミセルに均一性が見られることを確認し、
(3)形成した泡沫がその表面に、高光透過性領域と低光透過性領域を有し、25℃下で静置したとき、泡沫殻の表面積に占める低光透過性領域の面積が経時的に拡張することで、泡沫殻の表面全体が低光透過性領域により占められるような特性を有することを確認する。
ことによって、塗布後、洗浄・除去操作のいらないスクリーンフォーマー用の組成物として適していると判別できる。
【0151】
1時間程度の放置により、水の蒸散で多価アルコールの平衡が変わり、ミセルが巨大化するが、このミセルの形成が泡沫殻の形成の基礎になるので、この時点でのミセルが観察しうることは重要であるものと推察する。また、15000gの遠心などの応力の付加で、ある程度の形状維持と巨大化の抑制が為されることが、二相三層構造、即ち、液滴相が上下を連続相でサンドイッチされた構造の泡沫殻の強度の要因となる。泡沫殻の強度が増すとむっちりとした、腰の強い、維持時間の長い泡沫となる。これは、表面張力に拮抗する浸透圧が大きいためであると考えられる。
【実施例2】
【0152】
組成物1と同一の処方であるが製造方法の異なる組成物4及び5を調製した。
すなわち、組成物4は、処方成分のヘパリン類似物質からPOE硬化ヒマシ油60までを量り込み、65℃で加熱可溶化し、室温まで攪拌冷却し、これに残余の成分を加え攪拌することで製造した。
また、組成物5は、非イオン界面活性剤以外の成分をあらかじめ混合可溶化しておき、これに65℃で溶解した非イオン界面活性剤を順次加え、攪拌冷却して製造した。
組成物1、組成物4及び組成物5について試験例1と同様の手法で泡沫の形態を比較観察した。結果を
図8に示す。
また、組成物1、組成物4及び組成物5について試験例2と同様の手法で組成物の状態を観察した。
【0153】
組成物1、組成物4及び組成物5はいずれも、調製直後においてミセルの形成を見なかった。一方、スライドグラス上に1時間静置した後においてはミセルの形成を認めた。
【0154】
図8の上段に示すように、組成物4及び5は吐出した泡も粗く、維持率も低かった。また、組成物4及び5から形成された泡沫の表面は、静置後なお高光透過性領域が観察され、低光透過性領域により泡沫の表面全体が占められることもなく、全体的に像が白っぽくなっている。また、低光透過性領域のおける泡沫の構造、すなわち泡沫の三層構造も不完全であった。更に、泡沫殻も薄かった。
【0155】
この結果より、泡沫を静置した後、泡沫全体が低光透過性領域により占められること、すなわち、泡沫殻の構造がしっかりとした二相三層構造を形成しているか否かが、使用性の良い泡沫を形成するか否かに相関していることがわかる。
【0156】
また、この結果は、本発明の泡沫を形成することが可能な本発明の組成物と同一の処方の組成物であっても、製造方法の違いにより、その泡の状態と構造に差異が生じることを示している。つまり、組成物の処方ではなく、泡の構造を精密に評価することにより、優れた外用剤となるか否かを判別することができる。
【0157】
さらに、この結果は、組成物の製造方法としては、組成物の構成成分を、非イオン性界面活性剤の曇点以上で可溶化する工程を含むものが好ましいことを示している。