(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリアミドが、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸と脂肪族もしくは環状ジアミンとの重縮合により得られるポリアミド、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と脂肪族もしくは芳香族ジアミンとの重縮合により得られるポリアミド、少なくとも1種のアミノ酸もしくはラクタムのそれ自体との重縮合により得られるポリアミド、またはそれらのブレンドおよび(コ)ポリアミドから選択される、請求項1に記載の組成物。
前記ポリアミドが、PA66、PA6.10、PA6.12、PA12.12、PA4.6、MXD6、PA6、PA7、PA9T、PA10T、PA11、PA12、PA6T/6I、PA6T/6I/66、それらに由来するコポリアミド、およびそれらのブレンドから選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融状態の少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、特にポリアミドによる布地(強化材料)の含侵によって製造された、複合材料、およびそれを製造するための方法の分野に関する。
【0002】
今日、熱可塑性マトリックスを含む複合材料は、大量市場産業、例えば、陸上輸送(自動車など)、エネルギー、スポーツおよびレジャー、ならびに農業機械もしくは土木機械、またはより限定された、しかし発展市場、例えば、航空学のための高性能材料を構成する。事実、それらは、良好な固有の機械的性能レベル、特に延性、耐衝撃性、良好な化学的安定性(特に溶媒に対する)、および全体的リサイクル可能性を有する。
【0003】
複合材料構造を製造するための方法の中で、半製品(プリプレグ、シート、テープ)を使用する方法、例えば、スタンピングおよびオーバーモールディング、繊維またはテープのフィラメントワインディングまたはポジショニング、ならびに直接法、例えば、液体複合材料成形(LCM)または連続法、例えば、引抜−射出が挙げられる。
【0004】
残念なことに、熱可塑性系複合材料の場合、方法に関しての限定的な制約は、溶融状態のポリマーによる繊維状強化材の含浸度である。
【0005】
特に、強化材の含浸後のその場重合によるオリゴマーおよび/もしくはモノマーの使用、または高流動性を有するポリマーの使用のいずれかによる、様々な解決策が過去数年にわたって開発されてきた。
【0006】
そのようにして、低い溶融粘度を有する新規な熱可塑性ポリマーの開発は、繊維状強化材のより良好な含浸(繊維の量の増加、プロセスサイクル時間の減少)を得ることを可能にしてきた。
【0007】
それにも関わらず、これらのポリマーの粘度のなお高いレベルは、制限を課している。
【0008】
予想外にも、2種の特定の化合物の組み合わせた使用が、熱可塑性ポリマー、特にポリアミドタイプの溶融粘度を非常に大きく低下させることを可能にすることが認められた。
【0009】
したがって、その態様の一つによれば、本発明は、溶融状態で高流動性を有する熱可塑性組成物であって、
(a)1種の熱可塑性ポリマーマトリックス;
(b)環状エステルオリゴマー、エーテルオリゴマー、およびそれらの混合物から選択される1種のオリゴマー;ならびに
(c)1種のフェノールポリマー
を少なくとも含み;
前記化合物(b)および(c)は、0.25〜6好ましくはおおよそ0.75〜2.75変わる重量比(c)/(b)で存在する、熱可塑性組成物に関する。
【0010】
本文において、用語「熱可塑性ポリマーマトリックス」は、単一の熱可塑性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーのブレンドを意味するために使用される。
【0011】
本発明において、用語「熱可塑性ポリマーマトリックス」は、熱可塑性ポリマー、または熱可塑性ポリマーのブレンドを意味することが意図される。
【0012】
本発明において、用語「熱可塑性ポリマー」は、325℃以下の融点を有するいずれのポリマーも意味することが意図される。
【0013】
明らかに、特に溶融状態のポリアミドの流動性を増加させるための、ポリアミドへのフェノールポリマータイプの反可塑剤の添加は、例えば、国際公開第2011/048055A1号パンフレット、国際公開第2009/037276A1号パンフレットおよび国際公開第2011/003786A1号パンフレットに既に記載されている。
【0014】
ポリアミドへの、環状エステルオリゴマーおよびエーテルオリゴマーから選択されるオリゴマータイプの可塑剤の添加は、やはり、特に国際公開第2013/190224A1号パンフレットに開示されている。しかしながら、これらのオリゴマーは、ポリアミドの溶融粘度の限定された低下をもたらし、このように添加されたポリマーからの複合材料の製造中にその特性の悪化、例えば、そのガラス転移温度Tgまたは界面の繊維−マトリックス凝集の変更を引き起こし得る。
【0015】
本発明者らの知る限りでは、これらの2種の化合物と熱可塑性マトリックスとの組合せは、現時点で知られていない。
【0016】
予想外にも、本発明者らは、そのようにして、環状エステルオリゴマー、エーテルオリゴマーおよびそれらの混合物から選択されるオリゴマーと、フェノールポリマータイプの添加物との組み合わせた使用が、熱可塑性マトリックスの溶融粘度を非常に大きく低下させることを可能にすることを発見した。
【0017】
本発明者らはまた、これらの2種の添加物の組合せが、上述の欠点なしに、特にそれらが少量(1%〜10%)で導入される場合、熱可塑性樹脂マトリックスの溶融状態の流動性を相乗的に増加させることを可能にすることに気づいた。
【0018】
特に以降の実施例から明らかになるように、本発明の組成物は、いくつかの点で有利であることが判明する。
【0019】
まず第一に、高流動性を有する熱可塑性組成物の使用は、強化材料のより良好な含浸、したがって、低多孔性も有する複合材料物品のより速い取得を可能にする。このような組成物の使用はまた、高い繊維含有量を有する物品を生成することを可能にする。
【0020】
さらに、特に本発明の組成物の低い粘度は、特に25Pa.s未満である場合、LCMまたは引抜タイプ、特に引抜−射出タイプの直接法によって、すなわち、産業ニーズに適合する速度で、複合材料物品を生成することを可能にする。
【0021】
その態様の別のものによれば、本発明は、複合材料物品を製造するための方法であって、強化布地またはプレフォームに溶融状態で本発明による組成物を含浸する少なくとも1つの工程を含む方法に対して向けられる。
【0022】
この態様によれば、この方法は、好ましくは直接射出による、引抜プロセス、または密閉成形射出によるRTMプロセスであってもよい。
【0023】
その態様のさらに別のものによれば、本発明は、上で定義されたとおりの方法によって得られる複合材料物品に関する。
【0024】
本発明の別の主題は、熱可塑性ポリマーマトリックス中で可塑性添加物としての、少なくとも1種のフェノールポリマー(c)と組み合わせての、環状エステルオリゴマー、エーテルオリゴマーおよびそれらの混合物から選択されるオリゴマー(b)の使用である。
【0025】
1つの実施変形によれば、熱可塑性ポリマーマトリックス中可塑性添加物として使用される前記化合物(b)および(c)を、0.25〜6、好ましくはおよそ0.75〜2.75変わる重量比(c)/(b)で接触させる。
【0026】
有利には、化合物(b)および(c)の量は、前記マトリックスの溶融粘度を75Pa.s未満、好ましくは50Pa.s未満、またはさらには20Pa.s以下の値に低下させるように調整される。
【0027】
本発明の文脈において、溶融状態で表される粘度のすべては、窒素下、および連続周波数掃引および等温条件による動的モードで100%歪みにおける10
−1〜10
2s
−1の範囲の段階的剪断掃引下で、直径25mmのコーンプレートレオメータを使用して測定される。以下に述べられる場合を除いて、この測定は、10Hzの周波数について、それが半結晶性である場合、問題の材料の融点(Mp)を超えて20℃〜30℃の範囲の温度で、およびそれが非晶質である(325℃未満のTで)場合、そのガラス転移温度(Tg)を超えて、80℃〜200℃、またはさらには100℃〜200℃の範囲の温度Tで行われる。
【0028】
これを行うために、問題の材料は、レオメータのプレート間に、顆粒または粉末の形態で、乾燥状態(RH=0、相対湿度のRH)で導入され、次いで、溶融されて、50μm厚の液体フィルムを形成し、次いで、その上で測定が行われる。
【0029】
粘度測定が、熱可塑性ポリマーマトリックスを含む組成物、特に本発明による組成物に関する特定の場合、それは、それが半結晶性である場合、ポリマーマトリックス(a)融点(Mp)を超えて20℃〜30℃の範囲の温度で、およびそれが非晶質である場合、そのガラス転移温度(Tg)を超えて80℃〜200℃の範囲の温度で行われる。
【0030】
粘度測定が本発明による組成物に関する場合、それは、この組成物の均一混合物に対して行われる。
【0031】
本発明において、用語「均一な」は、本発明による化合物(a)、(b)および(c)がその中で一様に分布している、組成物または混合物を表す。したがって、同じ溶融粘度値が、混合物中のいずれの点でも保証される。
【0032】
熱可塑性ポリマーマトリックス
前に示されたとおりに、本発明による組成物は、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーマトリックスを含む。
【0033】
本発明における使用に適した熱可塑性ポリマーは、
− ポリエチレンイミン(PEI);
− ポリイミド(PI);
− 熱可塑性ポリウレタン(TPU);
− ポリエステル;ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリブチレンテレフタレート(PBT);
− ポリフェニレンスルフィド(PPS);
− ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)およびポリエーテルケトンケトン(PEKK);
− 脂肪族ポリアミド(Pa)、および半芳香族ポリアミド(PPA)、これらのポリマーの一部は、TechnylおよびAmodelの名称の下でSolvay社により販売されている;
− 以下の式(I):CFX=CHX’(I)[式中、XおよびX’は、水素もしくはハロゲン原子(特にフッ素または塩素原子)またはペルハロゲン化(特にペルフッ素化)アルキル基を独立して意味し、好ましくは、X=FおよびX−Hである]を有する少なくとも1種のモノマーを含むフルオロポリマー、例えば、ポリ(フッ化ビニリデン)(好ましくは、フッ化ビニリデンと例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマーの形態の)、フルオロエチレン/プロピレン(FEP)コポリマー、エチレンと、フルオロエチレン/プロピレン(FEP)、もしくはテトラフルオロエチレン(TFE)、もしくはペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、もしくはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)のいずれかとのコポリマー、これらのポリマーの一部は、特にSolefという名称の下でSolvay社により販売されている;ならびに
− それらのブレンド
から選択されてもよい。
【0034】
好ましくは、本発明の熱可塑性マトリックスは、1〜200Pa.s、特に1〜75Pa.s、より優先的には5〜50Pa.sの範囲の粘度を有する。
【0035】
本発明の1つの実施形態によれば、熱可塑性ポリマーマトリックスは、少なくとも1種のポリアミドを含み、それは、好ましくはポリアミドからなる。
【0036】
本発明における使用に適したポリアミドは、特に脂肪族または半芳香族の、半結晶性または非晶質であってもよい。
【0037】
本発明のポリアミドの重合は、特に、連続的にまたはバッチ式で、標準的なポリアミド重合操作条件によって行われる。
【0038】
より特には、十分な機械的特性および様々な形成プロセス中の保持度を有して、5000g/モル超、より優先的には8000g/モル〜20000g/モルの数平均分子量を有するポリアミド、さもなければ、異なる分子量のポリアミドの混合物が、本発明における使用に適する。
【0039】
本発明における使用に適し得るポリアミドの重量平均分子量Mwは、10000〜50000g/モル、優先的には12000〜30000g/モルであってもよい。
【0040】
これらのポリマーに関して現れる分子量は、本質的に重量計の指示によって提示されることが留意されるべきである。具体的な分子量は、当業者にそれら自体周知である多くの仕方で決定されてもよいことが留意されるべきである。
【0041】
これらの方法の例証として、特に、末端基の分析に基づくもの、および特に、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)としても知られる、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用する測定を要求するものが挙げられてもよい。一般に、ポリアミドのGPC測定は、それを可溶化するためのポリアミドの化学変性後に、ジクロロメタン(溶媒および溶出液)中で行われてもよい。化学変性ポリアミドはUV発色団を有するので、UV検出器が使用される。重量の分布、ならびに平均重量MnおよびMwの計算は、商業的標準を使用して校正後、ポリスチレン当量(PST)または絶対重量で行われてもよい。必要に応じて、絶対重量測定は、粘度計検出によって行われてもよい。本発明の文脈において、平均分子量MnおよびMwは、絶対重量で表される。MnおよびMw値は、全体的分布から、または環状オリゴマーの寄与を考慮することが望ましくない場合は低い重量の切捨て後に計算されてもよい。
【0042】
ポリアミドは、特に、少なくとも1種の直鎖脂肪族ジカルボン酸と脂肪族もしくは環状ジアミンとの、または少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と脂肪族もしくは芳香族ジアミンとの重縮合によって得られるポリアミド、少なくとも1種のアミノ酸もしくはラクタムとそれ自体との重縮合によって得られるポリアミド、あるいはそれらのブレンドおよび(コ)ポリアミドからなる群から選択されてもよい。
【0043】
より具体的には、これらのコポリアミドは、例えば、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、テレフタル酸および/もしくはイソフタル酸から得られるポリフタルアミド、またはアジピン酸、ヘキサメチレンジアミンおよびカプロラクタムから得られるコポリアミドであってもよい。
【0044】
本発明のポリアミドは、特に、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸と、脂肪族もしくは環状ジアミンとの重縮合によって得られるポリアミド、例えば、PA66、PA6.10、PA6.12、PA12.12、PA4.6もしくはMXD6、または少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と、脂肪族もしくは芳香族ジアミンとの重縮合によって得られるポリアミド、例えば、ポリテレフタルアミド、ポリイソフタルアミドもしくはポリアラミド、あるいはそれらのブレンドおよび(コ)ポリアミドからなる群から選択されてもよい。本発明のポリアミドは、少なくとも1種のアミノ酸またはラクタムのそれ自体との重縮合によって得られるポリアミド、例えば、PA6、PA7、PA10T、PA11、PA12、またはそれらのブレンドおよびそれらの(コ)ポリアミドから選択されてもよく、アミノ酸は、ラクタムが加水分解的に開くことによって生成することが可能である。
【0045】
本発明における使用に適するポリアミドとして、特に、PA6、PA7、PA10、PA11、PA12、PA46、PA66、PA69、PA610、PA612、PA9T、PA10T、PA4.6、PA6.10、PA6.12、PA12.12、PA6.66、MXD6、PA6TXT、PA66/6T、PA66/6I、PA6T/6IおよびPA6T/6I/66が挙げられてもよい。
【0046】
特に、Stabamidという名称の下でSolvayにより販売されるPA66 22FE1が挙げられてもよい。
【0047】
本発明の組成物はまた、特に、上記のポリアミド、またはこれらポリアミドのブレンドもしくはコポリアミド由来のコポリアミドを含んでもよい。
【0048】
好ましくは、ポリアミドは、PA66、PA6.10、PA6.12、PA12.12、PA4.6、MXD6、PA6、PA7、PA9T、PA10T、PA11、PA12、PA6T/6I、PA6T/6I/66、それらに由来するコポリアミド、およびそれらのブレンドから選択される。
【0049】
ポリアミドは、特に、星形またはH形巨大分子鎖を含むポリマー、分岐または超分岐ポリマー、および適切な場合には、線状巨大分子鎖を含むポリマーであってもよい。このような星形またはH形巨大分子鎖を含むポリマーは、例えば、文献仏国特許第2743077号明細書、仏国特許第2779730号明細書、米国特許第5959069号明細書、欧州特許第0632703号明細書、欧州特許第0682057号明細書および欧州特許第0832149号明細書に記載されている。
【0050】
星形構造を有するポリアミドは、線状ポリアミドと比較して改善されたメルトフローを示すことが知られている。星形巨大分子鎖は、コアおよび少なくとも3つのポリアミド分岐を含む。分岐は、アミド基または別の性質の基を介して、共有結合によってコアに結合している。コアは、有機または有機金属化合物、好ましくは、ヘテロ原子を任意選択で含み、かつ分岐がそれに連結している炭化水素化合物である。分岐は、ポリアミド鎖である。分岐を構成するポリアミド鎖は、好ましくは、ラクタムまたはアミノ酸の重合によって得られるもののタイプ、例えば、ポリアミド−6タイプのものである。本発明による星形構造を有するポリアミドは、星形鎖に加えて、線状ポリアミド鎖を任意選択で含む。この場合、星形鎖の量と、星形鎖および線状鎖の量の合計との重量比は、0.5〜1であり、両端を含む。それは、好ましくは0.6〜0.9である。
【0051】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、星形構造を有する、すなわち、星形巨大分子鎖を含むポリアミドは、
a)以下の一般式(I)のモノマー:
b)以下の一般式(Ma)および一般式(Mb)のモノマー:
c)任意選択で以下の一般式(III)または一般式(IV)のモノマー:
Z−R
3−Z(III)またはR4−Z(IV)
(式中、
− R
1は、恐らくはヘテロ原子を含み少なくとも2個の炭素原子を含む線状または環状の芳香族または脂肪族炭化水素基であり;
− Aは、共有結合、またはヘテロ原子を含むことができかつ1〜20個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基であり;
− Zは、第一級アミン官能基またはカルボン酸官能基を表し;
− Yは、Xがカルボン酸官能基を表す場合、第一級アミン官能基であるか、またはXが第一級アミン官能基を表す場合、カルボン酸官能基であり;
− R
2、R
3およびR
4は、同一であるかまたは異なり、恐らくはヘテロ原子を含み2〜20個の炭素原子を含む、置換または非置換の脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素基を表し;
− mは、3〜8の整数を表す)
を少なくとも含むモノマーの混合物の共重合によって得られる。
【0052】
カルボン酸は、カルボン酸およびそれらの誘導体、例えば、酸無水物、酸塩化物またはエステルを意味することが意図される。
【0053】
これらの星形ポリアミドを製造するための方法は、文献仏国特許第2743077号明細書および仏国特許第2779730号明細書に記載されている。これらの方法は、任意選択で、線状巨大分子鎖との混合物として、星形巨大分子鎖の形成をもたらす。式(III)のコモノマーが使用される場合、重合反応は、有利には熱力学平衡に達するまで行われる。
【0054】
式(I)のモノマーはまた、押出成形操作中に溶融ポリマーとブレンドされてもよい。
【0055】
したがって、本発明の別の実施形態によれば、星形構造を有するポリアミドは、例えば、押出成形装置を使用して、ラクタムおよび/またはアミノ酸ならびに式(I)のモノマーの重合によって得られるタイプのポリアミドを溶融ブレンドすることによって得られる。このような製造方法は、欧州特許第0682070号明細書および欧州特許第0672703号明細書に記載されている。
【0056】
本発明の1つの特定の特性によれば、R1基は、四価シクロヘキサノニル基などの脂環式基、または1,1,1−プロパントリイルもしくは1,2,3−プロパントリイル基のいずれかである。本発明における使用に適当である他のR1基として、例として、置換または非置換の三価フェニルおよびシクロヘキサニル基、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)由来の基などの、メチレン基の数が有利には2〜12個である四価ジアミノポリメチレン基、八価シクロヘキサノニルまたはシクロヘキサジオニル基、ならびにグリコール、ペンタエリトリトール、ソルビトールまたはマンニトールなどのポリオールと、アクリロニトリルとの反応から生じる化合物由来の基が挙げられてもよい。
【0057】
有利には、少なくとも2個の異なるR2基が、式(II)のモノマーに用いられてもよい。
【0058】
A基は、好ましくは、メチレンもしくはポリメチレン基、例えば、エチル、プロピルもしくはブチル基、またはポリオキシアルキレン基、例えば、ポリオキシエチレン基である。
【0059】
本発明の具体的な実施形態によれば、数mは、3以上であり、有利には3または4に等しい。記号Zで表される多官能性化合物の反応性官能基は、アミド官能基を形成することができる官能基である。
【0060】
好ましくは、式(I)の化合物は、2,2,6,6−テトラ−(β−カルボキシエチル)シクロヘキサノン、トリメシン酸、2,4,6−トリ(アミノカプロン酸)−1,3,5−トリアジンおよび4−アミノエチル−1,8−オクタンジアミンから選択される。
【0061】
星形巨大分子鎖の原因である、モノマーの混合物は、他の化合物、例えば、連鎖制限剤(chain limiter)または触媒を含んでもよい。以下の化合物は、星形構造の原因である、モノマーの混合物の必ずしも一部に限定されないが、合成時またはその後に添加されてもよい:添加剤、例えば、光安定剤、熱安定剤および潤滑剤。
【0062】
ポリアミドは、ランダムツリー形のポリマー、好ましくはランダムツリー構造を示すコポリアミドであってもよい。ランダムツリー構造を有するこれらのコポリアミドおよびそれらの製造方法は、特に文献国際公開第99/03909号パンフレットに記載されている。本発明の組成物はまた、線状熱可塑性ポリマーならびに上に記載されたとおりの星形、H形および/またはツリー形の熱可塑性ポリマーを含む組成物であってもよい。本発明の組成物はまた、文献国際公開第00/68298号パンフレットに記載されているタイプの超分岐コポリアミドを含んでもよい。本発明の組成物はまた、線状、星形、H形またはツリー形の熱可塑性ポリマーと上に記載されたとおりの超分岐コポリアミドとの任意の組合せを含んでもよい。
【0063】
様々な仕方で、特に、ポリアミド重合もしくは重縮合過程の間のモノマーの化学量論の不均衡および/またはブロッキング成分(これらは、末端ブロッキング基(TBG)のある濃度を有して、連鎖制限剤としても知られる一官能性分子である)の添加によって、さもなければ、混合、特に押出し中にモノマーまたはブロッキング成分を添加することによって得られてもよい、低分子量の非進展性(non−evolutive)ポリアミド樹脂が使用されてもよい。これらのポリアミド樹脂の重量平均分子量Mwは、6000〜30000g/モル、優先的には10000〜20000g/モルである。重量平均分子量は、国際公開第2011/073198A1号パンフレットに述べられた技術に従って測定されてもよい。
【0064】
これらのポリアミドは、20ミリ当量/kg以下の末端アミン基(TAG)および/または末端カルボン酸基(TCG)の濃度を有する。
【0065】
これらの樹脂は、それらが本発明による製造プロセスで使用される場合;すなわち、分子量の増加を通常促進する温度および圧力条件下で、それらの分子量または重合度の有意な増加がまったく認められないので、非進展性と称される。これらの樹脂は、この意味で、慣用的に使用される部分重合またはプレ重合されたポリマーと異なる。これらのポリアミド樹脂は、優先的には、20ミリ当量/kg以下、優先的には15ミリ当量/kg、より優先的には10ミリ当量/kg、さらにより優先的には5ミリ当量/kg、最も特には0ミリ当量/kgの末端アミン基(TAG)および/または末端カルボン酸基(TCG)の濃度を有する。したがって、本発明における使用に適するポリアミドは、例えば、0ミリ当量/kgのTAGおよび500ミリ当量/kgのTCGを有してもよい。したがって、本発明における使用に適するポリアミドは、例えば、400ミリ当量/kgのTAGおよび0ミリ当量/kgのTCGを有してもよい。5ミリ当量/kg以下の末端アミン基(TAG)の濃度を有するポリアミドは、一般に100〜1000ミリ当量/kgの末端カルボン酸基(TCG)の濃度を有する。5ミリ当量/kg以下の末端カルボン酸基(TCG)の濃度を有するポリアミドは、一般に100〜1000ミリ当量/kgの末端アミン基(TAG)の濃度を有する。
【0066】
最後に、本発明のポリアミドはまた、TAG=400ミリ当量/kg、0ミリ当量/kgのTCG、および末端ブロッキング基TBG=100ミリ当量/kgの濃度を有してもよい。
【0067】
末端アミン基(TAG)および/または末端酸基(TCG)の量は、たとえば、トリフルオロエタノール中への、ポリアミドの完全溶解、および過剰の強塩基の添加後の電位差分析によって決定されてもよい。次いで、塩基性化学種は、強酸の水溶液で滴定される。
【0068】
本発明によるこのような樹脂は、様々な仕方で製造されてもよく、それら自体が当業者に周知である。
【0069】
このような樹脂は、例えば、やはり二官能性および/または一官能性化合物の存在下で、ポリアミドのモノマーの、特に重合の始め、間または最後に、重付加によって製造されてもよい。これらの二官能性および/または一官能性化合物は、ポリアミドのモノマーと反応することができるアミンまたはカルボン酸官能基を有し、得られるポリアミド樹脂は、優先的には20ミリ当量/kgのTAGおよび/またはTCGを有するような割合で使用される。二官能性および/または一官能性化合物をポリアミドと、特に押出し、一般的には反応性押出しによって混合して、本発明によって使用されるポリアミドを得ることも可能である。脂肪族もしくは芳香族のモノカルボン酸もしくはジカルボン酸のいずれのタイプ、または脂肪族もしくは芳香族のモノアミンもしくはジアミンのいずれのタイプも使用することが可能である。一官能性化合物として、特にn−ドデシルアミンおよび4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、酢酸、ラウリン酸、ベンジルアミン、安息香酸、酢酸およびプロピオン酸が使用されてもよい。二官能性化合物として、特に、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、デカン二酸、ピメリン酸、スベリン酸、脂肪酸ダイマー、ジ(エチルカルボキシ)シクロヘキサノン、ヘキサメチレンジアミン、メチル−5−ペンタメチレンジアミン、メタ−キシリレンジアミン、ブタンジアミン、イソホロンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサンおよび3,3’,5−トリメチルヘキサメチレンジアミンが使用されてもよい。過剰のアジピン酸または過剰のヘキサメチレンジアミンが、高い溶融流動性、ならびに優先的には20ミリ当量/kgの末端アミン基(TAG)および/または末端カルボン酸基(TCG)の濃度を有するポリアミドタイプ66の製造に使用されてもよい。
【0070】
すべてまたは実質的にすべての末端基を消費し、したがって、特に加圧下または真空下で、樹脂が分子量の増加の方向にはもはや進展しないことを保証するために、水を除去するように、重合の最後に真空下で仕上げを行うことによって、ポリアミドの末端の酸またはアミン基の濃度を大きく減少させることも可能である。
【0071】
本発明の組成物において、8000g/モル未満の数平均分子量(Mn)を有し、ならびに/または25ミリ当量/kg超の末端アミン基(TAG)の濃度、25ミリ当量/kg超の末端酸基(TCG)の濃度および式2000000/(TAG+TCG+TBG)<8000g/モルに従って含まれる末端ブロック化基(TBG)の濃度を有する低分子量の非進展性ブロック化ポリアミドを使用することも可能である。これらのポリアミドは、特に、ポリアミドの重合中に、様々な一官能性または二官能性モノマーを付加することによって製造されてもよい。
【0072】
本発明のポリアミドはまた、ポリアミド鎖に化学的に結合されたヒドロキシ芳香族単位を含んでもよい。これを行うために、少なくとも1個の芳香族ヒドロキシル基、および一旦ポリアミド鎖に化学的に結合されると、ヒドロキシ芳香族単位になる、ポリアミド鎖の酸またはアミン官能基に化学的に結合することができる少なくとも1個の官能基を含む化合物である、ヒドロキシ芳香族有機化合物が使用される。この化合物は、好ましくは、2−ヒドロキシテレフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸または没食子酸、L−チロシン、4−ヒドロキシフェニル酢酸、3,5−ジアミノフェノール、5−ヒドロキシ−m−キシレンジアミン、3−アミノフェノール、3−アミノ−4−メチルフェノール、および3−ヒドロキシ−5−アミノ安息香酸からなる群から選択される。
【0073】
本発明による組成物は、好ましくは組成物の全重量に対して、60重量%〜98重量%、優先的には80重量%〜95重量%の熱可塑性ポリマーを示す。
【0074】
本組成物はまた、所望の最終特性に応じて、任意選択で相溶化剤、例えば、別のポリアミド、ポリエチレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリスルホン樹脂、エラストマー樹脂、またはそれらのブレンドの存在下で、ポリアミドと1種以上の他のポリマーとのブレンドを含んでもよい。
【0075】
本発明における使用に適する、ポリアミドのブレンドの例として、組成物は、例えば、
(a)8000g/モル以上の数平均分子量Mnのポリアミド、および
(b)非進展性ポリアミド、すなわち、不活性雰囲気下で一定の温度および圧力で少なくとも30分間の間最大でも5%だけ、またはさらには最大でも2%だけ、好ましく
前記ポリアミド(b)は、5000g/モル〜8000g/モルの数平均分子量Mnを有する。
【0076】
事実、「低重量」ポリアミド(b)は、有利には、ポリアミド(a)単独のものに対してポリアミドブレンドの溶融粘度を低下させることを可能にする。さらに、ポリアミド(a)がブレンド中で大部分である場合、ポリアミド(a)の機械的特性は保存され、これは、それらが一般に、意図された用途、すなわち、複合材料の製造にとって「低重量」ポリアミドのものよりも有利であるので、特に有利である。
【0077】
ポリアミド(a)とポリアミド(b)とのブレンドは、有利には、ポリアミド(a)およびポリアミド(b)の全重量に対して、65重量%以上、特に80重量%以上のポリアミド(a)の含有量を有する。
【0078】
オリゴマー
上述から明らかになるように、本発明の熱可塑性組成物は、環状エステルオリゴマーまたはエーテルオリゴマーおよびそれらの混合物から選択されるオリゴマータイプの少なくとも1種の可塑剤を含む。
【0079】
本発明において、用語「オリゴマー」は、2〜25のモノマーを含む、小サイズ、すなわち、2〜25である重合度のポリマー性化合物を意味することがで意図される。
【0080】
オリゴマー、またはオリゴマーの混合物が、環状エステルオリゴマーから選択される場合、それは、より特には、
−(1)環状ポリエスルオリゴマー、例えば、環化ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)またはそれを含有する混合物、例えば、Cyclics Corporationにより販売されるCBT100樹脂など;
−(2)ラクチドオリゴマー、またはそれを含有する混合物;
−(3)ラクトンオリゴマー、例えば、ε−カプロラクトンダイマー、またはそれを含有する混合物など;
−(4)カーボネートオリゴマー、より特にはアルキレンカーボネートオリゴマー、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、およびそれらの混合物から選択されるもの;ならびに
−それらの混合物
から選択される。
【0081】
したがって、本発明において、用語「環状エステルオリゴマー」は、エステルオリゴマーであって、前記オリゴマーそれ自体が環を形成するエステルオリゴマーだけでなく、環状モノマーから形成されるエステルオリゴマーも意味することが意図される。エステルオリゴマーであって、前記オリゴマーそれ自体が環を形成し、かつ環状エステルモノマーから形成されるエステルオリゴマーも、本発明の一部である。特に、環形成性オリゴマーの例として、上記のオリゴマー(1)、および環状モノマーから形成されるオリゴマーの例として、上記のオリゴマー(2)、オリゴマー(3)およびオリゴマー(4)が挙げられてもよい。
【0082】
ラクチドは、2個のエステル官能基を含む環状ダイマーであり、乳酸のエステル化によって得られる。ラクチドは、3つの立体異性体として存在する。それらが、2に等しい重合度を超えて重合する場合、それらは、開環によって重合して、重合度に依存して乳酸オリゴマーまたはポリマーを生成する。
【0083】
ラクトンは、ヒドロキシ酸のエステル化および分子間環化によって得られるモノマーである。環状ダイマーまたはトリマー、例えば、ε−カプロラクトンダイマーが存在する。この重合度を超えると、オリゴマー化は、その環が開くことを伴う。
【0084】
1つの実施形態によれば、本発明の組成物は、環状エステルオリゴマーまたはエーテルオリゴマー、およびそれらの混合物から選択されるオリゴマーとして環化ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)を少なくとも含む。
【0085】
オリゴマー、またはオリゴマーの混合物が、エーテルオリゴマーから選択される場合、それは、より特には、
− エチレングリコールオリゴマー;
− プロピレングリコールオリゴマー;および
− それらの混合物
から選択される。
【0086】
ポリオレフィンエーテルまたはポリエーテルとも呼ばれる、エーテルオリゴマーは、オリゴマー化されるエチレングリコールまたはプロピレングリコールから製造される。
【0087】
好ましくは、使用されるオリゴマー、またはオリゴマーの混合物は、熱可塑性ポリマーの融点Mp以下の融点Mp、および溶融状態で熱可塑性マトリックスのものより低い粘度を有する。
【0088】
これに関して、オリゴマーの溶融粘度は、一般に5Pa.s以下、好ましくは0.5Pa.s以下である。
【0089】
これは、オリゴマーが、溶融熱可塑性マトリックス中で適正かつ一様に混合することを可能にする。
【0090】
使用されるオリゴマーは、環化または線状成分、例えば、環状エステルまたは線状エーテルなどから製造されてもよい。
【0091】
有利には、本発明のオリゴマーは、完全に結晶性の構造を有し、すなわち、それらの分子は、組織化されかつ密な配列で秩序化されている。このような結晶構造は、高い溶融流動性を有し、これは、本発明による組成物の溶融粘度をさらに低下させることを可能にする。例として、CBT100樹脂およびポリカーボネートオリゴマーは、100%結晶性である。
【0092】
好ましくは、オリゴマー、またはオリゴマーの混合物は、本発明による組成物中で、組成物の全重量に対して、1重量%〜10重量%、好ましくは2重量%〜10重量%、好ましくは3重量%〜8重量%の範囲の含有量で存在する。
【0093】
1つの実施形態によれば、前記ポリマーマトリックス(a)および前記オリゴマー(単数または複数)(b)は、0.01〜0.15、好ましくは0.025〜0.15、特には0.03〜0.1の範囲の重量比(b)/(a)で組成物中で使用される。
【0094】
組成物中の可塑剤の含有量を調製することは当業者次第である。それが、十分な量で組み込まれない場合、それは、熱可塑性ポリマーの粘度を適正に低下させることを可能にしない。他方で、ある特定の量を超えると、ポリマーマトリックスは飽和され、一部の特性の劣化が認められ得る。
【0095】
オリゴマーの量が高過ぎる場合、相分離がポリマー中に生じることさえあり得る。結果として、上限、すなわち、オリゴマーの割合に関して超えられるべきでない臨界閾値は、この相分離を引き起こす量未満でなければならない。したがって、例えば、CBT100樹脂などの環化ポリ(ブチレンテレフタレート)の特定の場合、本発明による組成物中のオリゴマーの割合は、好ましくは15重量%未満であり、それらは、より好ましくは3重量%〜8重量%であり、これは、粘度の予期された低下、ならびに熱可塑性ポリマーマトリックスの、および含浸繊維状材料との界面の物理的(機械的)特性の保存を得るために十分である。
【0096】
フェノールポリマー
前に述べられたとおりに、本発明の熱可塑性組成物は、フェノールポリマータイプの少なくとも1種の反可塑剤を含む。
【0097】
このような作用剤は、有利には、水吸収反応速度論における低下による熱可塑性ポリマーマトリックスの水分感受性を低下させること、およびその融点(Mp)を変えることなくそのガラス転移温度(Tg)を実質的に上昇させることを可能にする。
【0098】
好ましくは、このフェノールポリマーは、ノボラック樹脂から選択される。
【0099】
本発明によるフェノールポリマーのブレンドは、特に本発明による組成物を調製するために使用されてもよい。特に、本発明による組成物は、1種またはいくつかの異なるタイプのノボラック樹脂を含んでもよい。
【0100】
ノボラック樹脂は、一般にポリヒドロキシフェノールタイプの化合物、例えば、フェノール化合物とアルデヒド、ケトン、またはそれらの誘導体、例えば、ケタールまたはヘミケタールとの縮合生成物である。これらの縮合反応は、一般に酸または塩基によって触媒される。
【0101】
ノボラック樹脂は、一般に2〜15の範囲の縮合度を有する。
【0102】
フェノール化合物は、フェノール、クレゾール、キシレノール、ナフトール、アルキルフェノール、例えば、ブチルフェノール、tert−ブチルフェノールもしくはイソオクチルフェノール、ニトロフェノール、フェニルフェノール、レゾルシノールもしくはビスフェノールA;または任意の他の置換フェノールから、単独でまたは混合物として、選択されてもよい。
【0103】
最も頻繁に使用されるアルデヒドは、ホルムアルデヒドである。しかしながら、他のアルデヒド、例えば、アセトアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキサールおよびフルフラールが使用されてもよい。
【0104】
ケトンとして、アセトン、メチルエチルケトン、またはアセトフェノンが使用されてもよい。
【0105】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、フェノールポリマーは、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合生成物である。
【0106】
使用されるノボラック樹脂は、有利には500〜3000g/モル、好ましくは800〜2000g/モルの分子量を有する。
【0107】
市販ノボラック樹脂として、市販製品Durez(登録商標)、Vulkadur(登録商標)またはRhenosin(登録商標)が特に挙げられてもよい。
【0108】
本発明の1つの実施形態によれば、フェノールポリマーは、以下の式(I):
(式中、Rは、水素原子、またはヘテロ原子を任意選択で含み、1〜20個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐アルキル基を表し、mは、6〜15であり、nは、5〜22である)
の単位を少なくとも含む。
【0109】
優先的には、直鎖または分岐アルキル基は、1〜10個の炭素原子を含む。優先的には、ヘテロ原子は、酸素または窒素である。Rは、より優先的には水素原子、メチル、エチル、プロピル、ブチルまたはオクチルであり、mは、より優先的には8〜12であり、特に8、9、10、11もしくは12の値、またはこれらの値間に含まれる任意の区間を取ってもよい。
【0110】
本発明のフェノールポリマーはまた、式(I)の単位、およびさらに以下の式(II):
(式中、R’は、水素原子、またはヘテロ原子を任意選択で含み、1〜20個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐アルキル基を表し、oは、6〜15である)
の単位を少なくとも含むポリマーであってもよい。RおよびR’は、互いに独立していても、または等しくてもよい。oは、特に6、7、8、9、10、11、12、13、14もしくは15の値、またはこれらの値間に含まれる任意の区間を取ってもよい。
【0111】
次いで、この化合物は、特にランダムポリマーであってもよい。
【0112】
式(I)により表される単位および任意選択で式(II)により表される単位を少なくとも含む本発明のポリマー性フェノール化合物は、様々な仕方で製造されてもよい。ノボラック樹脂を製造するために慣用的に使用される方法が特に、使用されてもよい。
【0113】
好ましくは、フェノールポリマーは、本発明による組成物中、組成物の全重量に対して、1重量%〜15重量%、好ましくは2重量%〜12重量%、優先的には4重量%〜10重量%の範囲の含有量で存在する。
【0114】
1つの実施形態によれば、前記マトリックス(a)および前記フェノールポリマー(c)は、組成物中0.01〜0.20、好ましくは0.02〜0.17、特には0.04〜0.15の範囲の重量比(c)/(a)で使用される。
【0115】
組成物中の反可塑剤の含有量を調整することは、当業者次第である。それが十分な量で組み込まれない場合、それは、熱可塑性ポリマーの粘度を適正に低下させることを可能にしない。他方で、ある特定の量を超えると、ポリマーマトリックスは飽和され、フェノールポリマーは、本発明の組成物によって生成した部分からにじみ出る/外に移動する傾向がある。本発明による組成物を有する複合材料物品の製造の文脈において、過剰のフェノールポリマーは、繊維−マトリックス界面のレベルに負の効果を有し得る。
【0116】
組成物
本発明による組成物は、有利には、
(a)80重量%〜99.8重量%の熱可塑性ポリマーマトリックス、特にポリアミド;
(b)0.1重量%〜10重量%の環状エステルオリゴマー、エーテルオリゴマー、またはそれらの1つもしくは複数の混合物、特に環化ポリ(ブチレンテレフタレート);および
(c)0.1重量%〜12重量%のフェノールポリマー、特にノボラック樹脂
を含む。
【0117】
好ましくは、それは、
(a)80重量%〜98重量%の熱可塑性ポリマーマトリックス、特にポリアミド;
(b)1重量%〜8重量%の環状エステルオリゴマー、エーテルオリゴマー、またはそれらの1つもしくは複数の混合物、特に環化ポリ(ブチレンテレフタレート);および
(c)1重量%〜12重量%のフェノールポリマー、特にノボラック樹脂
を含む。
【0118】
特に、それは、
(a)80重量%〜92重量%の熱可塑性ポリマーマトリックス、特にポリアミド;
(b)3重量%〜8重量%の環状エステルオリゴマー、エーテルオリゴマー、またはそれらの1つもしくは複数の混合物、特に環化ポリ(ブチレンテレフタレート);および
(c)5重量%〜12重量%のフェノールポリマー、特にノボラック樹脂を含む。
【0119】
有利には、本発明による組成物は、溶融状態で、75Pa.s未満、好ましくは50Pa.s未満、さらには20Pa.s以下の粘度を有する。
【0120】
本発明による溶融状態で高流動性を有する熱可塑性組成物はまた、熱可塑性ポリマー系組成物で通常使用される、特に複合材料を製造するための方法で使用される添加剤のすべてを含んでもよい。
【0121】
したがって、添加剤の例として、熱安定剤、可塑剤、酸化防止剤、潤滑剤、顔料、染料、強化充填剤、耐衝撃改質剤、核形成剤、触媒、光および/または熱安定剤、帯電防止剤、艶消し剤、成形のための加工助剤、ならびに他の慣用の添加剤が挙げられてもよい。
【0122】
より特に耐衝撃改質剤に関して、それらは、一般にエラストマーポリマーである。靱性改質剤は、一般に約500MPa未満のASTM D−638引張りモジュラスを有すると定義される。好適なエラストマーの例は、エチレン/アクリルエステル/無水マレイン酸生成物、エチレン/プロピレン/無水マレイン酸生成物または任意選択でグラフト化無水マレイン酸ととものエチレン/プロピレン/ジエンモノマー生成物(EPDM)である。エラストマーの重量濃度は、有利には組成物の全重量に対して0.1%〜30%である。
【0123】
特に、熱可塑性ポリマー、特にポリアミド、と反応性である官能基を含む衝撃改質剤が好ましい。例えば、エチレンとアクリルエステルとグリシジルメタクリレートとのターポリマー、エチレンとアクリル酸ブチルエステルとのコポリマー、エチレンとn−ブチルアクリレートとグリシジルメタクリレートとのコポリマー、エチレンと無水マレイン酸とのコポリマー、無水マレイン酸でグラフトされたスチレン/マレイミドコポリマー、無水マレイン酸で変性されたスチレン/エチレン/ブチレン/スチレンコポリマー、無水マレイン酸でグラフトされたスチレン/アクリロニトリルコポリマー、無水マレイン酸でグラフトされたアクリロニトリル/ブタジエン/スチレンコポリマー、およびそれらの水素化バージョンが挙げられてもよい。また、(応力緩和)シリコーンエラストマータイプの作用剤が挙げられてもよい。全組成物中のこれらの改質剤の重量割合は、特に0.1%〜40%である。
【0124】
熱可塑性ポリマー強化布地界面の品質を改善するための添加剤がまた、使用されもよい。これらの添加剤は、例えば、組成物中に組み込まれてもよい。
【0125】
例えば、このような添加剤は、カップリング剤、例えば、アミノシランもしくはクロロシラン型のもの、または液化剤もしくは湿潤剤、あるいはそれらの組合せであってもよい。
【0126】
強化充填剤は、熱可塑性組成物中に組み込まれてもよい。これらの充填剤は、繊維状充填剤、例えば、短ガラス繊維など、または非繊維状充填剤、例えば、カオリン、タルク、シリカ、マイカもしくはウォラストナイトから選択されてもよい。それらのサイズは、一般に0.5〜10μmである。サブミクロン、実際にはさらにはナノメートルの充填剤がまた、単独で、または他の充填剤を補足して、使用されてもよい。
【0127】
これらの充填剤および添加剤は、例えば、重合中または溶融ブレンディングにおいてなどで、それぞれの充填剤または添加剤に適切な通常の手段によって組成物に添加されてもよい。
【0128】
本発明の組成物は、一般に、熱可塑性マトリックスを溶融媒体中に維持するのに十分な温度で、例えば、単軸スクリューもしくは二軸スクリュー押出機で、加熱しながら;または特にメカニカルミキサー中、冷条件下で、様々な構成成分を混合することによって得られる。一般に、得られたブレンドはロッドの形態で押し出され、これは顆粒を形成するために小片へ切断される。組成物の構成成分は、いずれの順序で添加されてもよい。オリゴマー、フェノールポリマー、および任意選択の添加剤の添加は、これらの化合物を溶融熱可塑性マトリックスに添加することによって行われてもよい。
【0129】
方法
上述から明らかになるように、その態様の1つによれば、本発明は、強化布地に本発明による組成物を溶融状態で含浸させる少なくとも1つの工程を含む、複合材料物品を製造するための方法に関する。
【0130】
用語「布地」は、任意のプロセス、例えば、特に接着結合、フェルト編(felting)、編組(braiding)、製織(weaving)または編成(knitting)によって任意選択で統合されるヤーンまたは繊維のテキスタイル面を意味することが意図される。
【0131】
これらの布地は、繊維状またはフィラメント状網状組織としても示される。
用語「ヤーン」は、単一種類の繊維、または密接混合物としていくつかの種類の繊維から得られるモノフィラメント、連続マルチフィラメントヤーンまたはステープルヤーンを意味することが意図される。連続ヤーンはまた、いくつかのマルチフィラメントヤーンを集合させることによって得られてもよい。
【0132】
用語「繊維」は、切断され、亀裂を入れられ、または変化されているフィラメントまたはフィラメントの組合せを意味することが意図される。
【0133】
本発明による強化ヤーンおよび/または繊維は、好ましくは炭素、ガラス、アラミド、ポリイミド、亜麻、麻、サイザル、コイア、ジュート、ケナフおよび/またはそれらの混合物から形成されたヤーンおよび/または繊維から選択される。
【0134】
より好ましくは、強化布地は、炭素、ガラス、アラミド、ポリイミド、亜麻、麻、サイザル、コイア、ジュート、ケナフおよび/またはそれらの混合物から形成されたヤーンおよび/または繊維から選択される強化ヤーンおよび/または繊維のみから構成される。
【0135】
これらの布地は、好ましくは、坪量、すなわち、100〜1500g/m
2、好ましくは100〜1000g/m
2の平方メートル当たり重量を有する。
【0136】
それらの構造は、ランダム、一方向性(UD)または多方向性(2D、2.5D、3Dなど)であってもよい。
【0137】
本発明による方法によって得られる複合材料物品は、異なる性質のものであっても、なくてもよいいくつかの強化布地を含んでもよい。
【0138】
本発明の熱可塑性組成物および強化布地を含浸させる工程は、様々な可能なプロセスによって、様々な仕方で行われてもよい。1枚以上の強化布地の含浸を行うことが全く可能である。
【0139】
本発明における使用に適するプロセスの例として、特に、成形プロセス、例えば、射出成形、引抜き、例えば、引抜−射出、回転成形、焼結、キャスティング、押出し、例えば、押出/ブロー成形、さもなければ共成形プロセスが挙げられてもよい。
【0140】
樹脂(溶融ポリマー)および強化材を直接使用するプロセス、例えば、射出成形(LCM)および引抜成形、特に射出成形が、特に好ましい。
【0141】
射出成形として、例えば、樹脂トランスファー成形(RTM)プロセスが挙げられてもよい。このプロセスは、溶融熱可塑性組成物を、少なくとも1枚以上の強化布地を含む密閉型中に射出することを含む。型の内部は、熱可塑性組成物の融点に対して、プラスマイナス50℃の温度であってもよい。次いで、型および得られる物品は、冷却されて、最後に前記物品を回収する。このプロセスは、加圧下で行われてもよい。
【0142】
C−RTMプロセスとして知られ、圧縮射出成形としても知られる、このプロセスの変形はまた、本発明で使用されてもよい。それは、型の隙間が、溶融状態での組成物の射出中にわずかに開いている点でRTMプロセスと異なる。次いで、部分品は、型を閉じることによって、強固にされ、サイズに合わせられる。
【0143】
ポリアミドによる強化布地の含浸後、物品は、マトリックスの固化によって得られる。冷却は、有利には、特に物品の特性を保持するために、迅速に行われて、ポリアミドの有意な結晶化を防止してもよい。冷却は、特に、5分未満、より優先的には1分未満で行われてもよい。型は、例えば、冷流体回路によって冷却されてもよい。複合材料物品はまた、任意選択により加圧下で、冷たい型中に任意選択でトランスファーされてもよい。
【0144】
上で述べられたとおり、本発明の複合材料物品は、引抜きによって製造されてもよい。
【0145】
有利には、使用されるプロセスは、好ましくは射出、この場合引抜−射出として知られる、による引抜プロセスである。
【0146】
引抜技術は、加熱ダイを通して1本以上の連続ヤーンおよび繊維を、それらを溶融熱可塑性樹脂で含浸させて、完成または半完成ロッドまたは物品を得るように引くことにある。
【0147】
引抜−射出プロセスにおいて、溶融ポリマーは、このダイにやはり導入される強化布地に含浸させるために加熱ダイのレベルで射出される。
【0148】
任意選択で最終のオーバーモールド工程ととともに、後にスタンピングなどの形成工程が続くホットプレスフィルム積層プロセスも、特許請求組成物を有利に使用するプロセスである。
【0149】
物品
本発明はまた、本発明の方法によって得られることができる物品に関する。物品は、特に強化布地を含むポリアミド系複合材料物品であってもよい。
【0150】
本発明による物品は、優先的には、全体積に対して25体積%〜70体積%、特に45体積%〜67体積%の強化布地を含む。複合材料物品は、優先的には、50体積%の強化度について、450MPa超の引張り強さおよび20GPa超の弾性モジュラス(典型的には0〜2%の空洞率について)を有する。
【0151】
本発明の物品は、完成物品であっても、またプリプレグと呼ばれてもよい半完成物品であってもよい。例えば、シートの形態で複合材料物品の熱形成を行って、それらに冷却後に規定の形状を与えることも可能である。したがって、本発明は、本発明による方法によって得られることができる複合材料物品に関する。
【0152】
本発明の物品は、特に、使用される製造プロセスが引抜プロセスである場合、異形化され(profiled)てもよい。
【0153】
本発明の物品はまた、2つの表皮の間に挿入された中心部を示す、サンドイッチ型の構造であってもよい。本発明の複合材料は、外層部を、それらをハニカム型またはフォーム型の中心部と組み合わせることによって、形成するために使用されてもよい。層は、化学結合または熱結合によって集合させてもよい。本発明による複合材料構造は、多くの分野、例えば、航空、自動車およびエネルギー分野、ならびに電気およびスポーツおよびレジャー産業で用いられてもよい。スキーなどのスポーツ器材を製造するために、あるいは特殊な床、パーティション、車両本体またはビルボードなどの様々な表面を製造するために、これらの構造を使用することができる。航空学において、これらの構造は、特にフェアリング(fairing)(胴体、主翼、水平尾翼)用に使用される。自動車産業において、それらは、例えば、床、フロントブロックまたはリアブロックなどの支持体、さもなければ構造部品用に使用される。
【0154】
本説明および後に続く実施例において、特に断りのない限り、パーセンテージは重量によるパーセンテージであり、「 〜 」の形態で与えられる値の範囲は、特定された上限および下限を含む。
【0155】
後に続く実施例は、例証として、および本発明の分野を限定することなく提示される。