【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、総務省、140GHz帯高精度レーダーの研究開発に関する委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
[本開示の一態様をするに至った経緯]
図1Aは、サブアレー構成のアンテナ素子(以下、サブアレー素子と呼ぶこともある)の一例を示す。
図1Aに示すサブアレー素子は、2×2の4個のアンテナ素子から構成される。また、
図1Aに示す一例では、サブアレー素子のサイズを水平方向及び垂直方向の双方とも0.8波長とする。
【0019】
図1Bは、
図1Aに示すサブアレー素子を直列に4個並べて構成されるアレーアンテナの一例を示す。
図1Bに示すように、各サブアレー素子のサイズが0.8波長(
図1Aを参照)であるので、サブアレー素子間の間隔として1波長程度以上の間隔を採る必要がある。
【0020】
例えば、メインローブの±90°の範囲内にグレーティングローブを発生させないためのアレー素子間隔(所望の素子間隔)は0.5波長である。
図1Bに示すアレーアンテナでは、サブアレー素子の素子間隔が1波長程度以上となるので、所望の素子間隔が設定困難であり、メインローブの±90°の範囲内にグレーティングローブが発生してしまうことになる。
【0021】
このように、サブアレー素子のサイズが0.5波長以上の場合、アレーアンテナの素子間隔を0.5波長にすることが困難である可能性がある。よって、メインローブの±90°の範囲内に不要なグレーティングローブが発生し、測角時に虚像が発生することになり、誤検出の要因となる。
【0022】
ここで、特許文献1には、幅d=1波長程度となるサブアレー素子を用いたアレーアンテナ構成が開示されている。特許文献1では、送信アンテナTx0, Tx1の素子間隔を6波長とし、受信アンテナRX0,RX1,RX2,RX3の素子間隔を1.5波長±(λ/8)としている(λは1波長を表す)。また、特許文献1では、送信アンテナTx0,Tx1を時分割で切り替えてレーダ送信信号が送信され、各送信アンテナTx0,Tx1から送信されたレーダ送信信号に対して、受信アンテナRX0,RX1,RX2,RX3で受信信号を取得する構成を備えている。
【0023】
このような構成により、受信アレーアンテナで取得される受信信号には、送信アンテナの位置が変わることによる位相変化が重畳されるため、仮想的に受信アンテナの開口長が増大する効果が得られる。以下では、送受信アレーアンテナにおけるアンテナ素子の配置によって実効的な開口長が増大する仮想的な受信アレーアンテナを「仮想受信アレー」と呼ぶ。
【0024】
しかしながら、特許文献1では、受信アレーアンテナの素子間隔は1.5波長±λ/8であるため、メインビーム方向から40°程度ずれた方向にグレーティングローブが発生してしまう。
【0025】
本開示に係る一態様は、サブアレー構成のアレー素子を用いる場合でも、不要なグレーティングローブの発生を抑え、所望の指向性パターンを実現する。
【0026】
以下、本開示の一態様に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
【0027】
[レーダ装置の構成]
図2は、本実施の形態に係るレーダ装置10の構成を示すブロック図である。
【0028】
レーダ装置10は、レーダ送信部100と、レーダ受信部200と、基準信号生成部300と、を有する。
【0029】
レーダ送信部100は、基準信号生成部300から受け取るリファレンス信号に基づいて高周波のレーダ信号(レーダ送信信号)を生成する。そして、レーダ送信部100は、複数の送信アンテナ106−1〜106−Ntによって構成される送信アレーアンテナを用いて、レーダ送信信号を所定の送信周期にて送信する。
【0030】
レーダ受信部200は、ターゲット(図示せず)により反射したレーダ送信信号である反射波信号を、複数の受信アンテナ202−1〜202−Naから成る受信アレーアンテナを用いて受信する。レーダ受信部200は、基準信号生成部300から受け取るリファレンス信号を用いて、各アンテナ202において受信した反射波信号を信号処理し、ターゲットの有無検出、方向推定などを行う。なお、ターゲットはレーダ装置10が検出する対象の物体であり、例えば、車両又は人を含む。
【0031】
基準信号生成部300は、レーダ送信部100及びレーダ受信部200のそれぞれに接続されている。基準信号生成部300は、基準信号としてのリファレンス信号をレーダ送信部100及びレーダ受信部200に共通に供給し、レーダ送信部100及びレーダ受信部200の処理を同期させる。
【0032】
[レーダ送信部100の構成]
レーダ送信部100は、レーダ送信信号生成部101−1〜101−Ntと、送信無線部105−1〜105−Ntと、送信アンテナ106−1〜106−Ntとを有する。すなわち、レーダ送信部100は、Nt個の送信アンテナ106を有し、各送信アンテナ106は、それぞれ個別のレーダ送信信号生成部101及び送信無線部105に接続されている。
【0033】
レーダ送信信号生成部101は、基準信号生成部300から受け取るリファレンス信号を所定数倍したタイミングクロックを生成し、生成したタイミングクロックに基づいてレーダ送信信号を生成する。そして、レーダ送信信号生成部101は、所定のレーダ送信周期(Tr)にてレーダ送信信号を繰り返し出力する。レーダ送信信号は、r
z(k, M)=I
z(k, M)+jQ
z(k, M)で表される。ここで、zは各送信アンテナ106に対応する番号を表し、z=1,…,Ntである。また、jは虚数単位を表し、kは離散時刻を表し、Mはレーダ送信周期の序数を表す。
【0034】
各レーダ送信信号生成部101は、符号生成部102と、変調部103と、LPF(Low Pass Filter)104とから構成される。以下、第z番目(z=1,…,Nt)の送信アンテナ106に対応するレーダ送信信号生成部101−zにおける各構成部について説明する。
【0035】
具体的には、符号生成部102は、レーダ送信周期Tr毎に、符号長Lの符号系列の符号a(z)
n(n=1,…,L)(パルス符号)を生成する。各符号生成部102−1〜102−Ntにおいて生成される符号a(z)
n(z=1,…,Nt)には、互いに低相関又は無相関となる符号が用いられる。符号系列としては、例えば、Walsh-Hadamard符号、M系列符号、Gold符号などが挙げられる。
【0036】
変調部103は、符号生成部102から受け取る符号a(z)
nに対してパルス変調(振幅変調、ASK(Amplitude Shift Keying)、パルスシフトキーイング)又は位相変調(Phase Shift Keying)を行い、変調信号をLPF104へ出力する。
【0037】
LPF104は、変調部103から受け取る変調信号のうち、所定の制限帯域以下の信号成分を、ベースバンドのレーダ送信信号として送信無線部105へ出力する。
【0038】
第z(z=1,…,Nt)番目の送信無線部105は、第z番目のレーダ送信信号生成部101から出力されるベースバンドのレーダ送信信号に対して周波数変換を施してキャリア周波数(Radio Frequency:RF)帯のレーダ送信信号を生成し、送信増幅器により所定の送信電力P[dB]に増幅して第z番目の送信アンテナ106へ出力する。
【0039】
第z(z=1,…,Nt)番目の送信アンテナ106は、第z番目の送信無線部105から出力されるレーダ送信信号を空間に放射する。
【0040】
図3は、レーダ送信部100のNt個の送信アンテナ106から送信されるレーダ送信信号を示す。符号送信区間Tw内には符号長Lのパルス符号系列が含まれる。各レーダ送信周期Trのうち、符号送信区間Twの間にパルス符号系列が送信され、残りの区間(Tr-Tw)は無信号区間となる。1つのパルス符号(a(z)
n)あたり、No個のサンプルを用いたパルス変調が施されることにより、各符号送信区間Tw内には、Nr(=No×L)個のサンプルの信号が含まれる。すなわち、変調部103におけるサンプリングレートは、(No×L)/Twである。また、無信号区間(Tr-Tw)には、Nu個のサンプルが含まれるものとする。
【0041】
なお、レーダ送信部100は、レーダ送信信号生成部101の代わりに、
図4に示すレーダ送信信号生成部101aを備えてもよい。レーダ送信信号生成部101aは、
図2に示す符号生成部102、変調部103及びLPF104を有さず、代わりに符号記憶部111及びDA変換部112を備える。符号記憶部111は、符号生成部102(
図2)において生成される符号系列を予め記憶し、記憶している符号系列を巡回的に順次読み出す。DA変換部112は、符号記憶部111から出力される符号系列(デジタル信号)をアナログ信号に変換する。
【0042】
[レーダ受信部200の構成]
図2において、レーダ受信部200は、Na個の受信アンテナ202を備え、アレーアンテナを構成する。また、レーダ受信部200は、Na個のアンテナ系統処理部201−1〜201−Naと、方向推定部214と、を有する。
【0043】
各受信アンテナ202は、ターゲット(物体)に反射したレーダ送信信号である反射波信号を受信し、受信した反射波信号を、対応するアンテナ系統処理部201へ受信信号として出力する。
【0044】
各アンテナ系統処理部201は、受信無線部203と、信号処理部207とを有する。
【0045】
受信無線部203は、増幅部204と、周波数変換器205と、直交検波器206と、を有する。受信無線部203は、基準信号生成部300から受け取るリファレンス信号を所定数倍したタイミングクロックを生成し、生成したタイミングクロックに基づいて動作する。具体的には、増幅器204は、受信アンテナ202から受け取る受信信号を所定レベルに増幅し、周波数変換器205は、高周波帯域の受信信号をベースバンド帯域に周波数変換し、直交検波器206は、ベースバンド帯域の受信信号を、I信号及びQ信号を含むベースバンド帯域の受信信号に変換する。
【0046】
信号処理部207は、AD変換部208、209と、分離部210−1〜210−Ntと、を有する。
【0047】
AD変換部208には、直交検波器206からI信号が入力され、AD変換部209には、直交検波器206からQ信号が入力される。AD変換部208は、I信号を含むベースバンド信号に対して、離散時間でのサンプリングを行うことにより、I信号をデジタルデータに変換する。AD変換部209は、Q信号を含むベースバンド信号に対して、離散時間でのサンプリングを行うことにより、Q信号をデジタルデータに変換する。
【0048】
ここで、AD変換部208,209のサンプリングでは、レーダ送信信号における1つのサブパルスの時間Tp(=Tw/L)あたり、Ns個の離散サンプルが行われる。すなわち、1サブパルスあたりのオーバーサンプル数はNsとなる。
【0049】
以下の説明では、I信号Ir(k, M)及びQ信号Qr(k, M)を用いて、AD変換部208,209の出力としての第M番目のレーダ送信周期Tr[M]の離散時間kにおけるベースバンドの受信信号を複素数信号x(k, M)=Ir(k, M)+jQr(k, M)と表す。また、以下では、離散時刻kは、レーダ送信周期(Tr)の開始するタイミングを基準(k=1)とし、信号処理部207は、レーダ送信周期Trが終了する前までのサンプル点であるk=(Nr+Nu)Ns/Noまで周期的に動作する。すなわち、k=1,…,(Nr+Nu)Ns/Noとなる。ここで、jは虚数単位である。
【0050】
信号処理部207は、送信アンテナ106の個数分の系統数に等しいNt個の分離部210を含む。各分離部210は、相関演算部211と、加算部212と、ドップラー周波数解析部213と、を有する。以下、第z(z=1,…,Nt)番目の分離部210の構成について説明する。
【0051】
相関演算部211は、レーダ送信周期Tr毎に、AD変換部208,209から受け取る離散サンプル値Ir(k, M)及びQr(k, M)を含む離散サンプル値x(k, M)と、レーダ送信部100において送信される符号長Lのパルス符号a(z)
n(ただし、z=1,…,Nt、n=1,…,L)との相関演算を行う。例えば、相関演算部211は、離散サンプル値x(k, M)と、パルス符号a(z)
nとのスライディング相関演算を行う。例えば、第M番目のレーダ送信周期Tr[M]における離散時刻kのスライディング相関演算の相関演算値AC
(z)(k, M)は、次式に基づき算出される。
【数1】
【0052】
上式において、アスタリスク(*)は複素共役演算子を表す。
【0053】
相関演算部211は、例えば、式(1)に従って、k=1,…,(Nr+Nu)Ns/Noの期間に渡って相関演算を行う。
【0054】
なお、相関演算部211は、k=1,…,(Nr+Nu)Ns/Noに対して相関演算を行う場合に限定されず、レーダ装置10の測定対象となるターゲットの存在範囲に応じて、測定レンジ(すなわち、kの範囲)を限定してもよい。これにより、レーダ装置10では、相関演算部211の演算処理量の低減が可能となる。例えば、相関演算部211は、k=Ns(L+1),…,(Nr+Nu)Ns /No-NsLに測定レンジを限定してもよい。この場合、
図5に示すように、レーダ装置10は、符号送信区間Twに相当する時間区間では測定を行わないこととなる。
【0055】
これにより、レーダ装置10は、レーダ送信信号がレーダ受信部200に直接的に回り込むような場合でも、レーダ送信信号が回り込む期間(少なくともτ1未満の期間)では相関演算部211による処理が行われないので、回り込みの影響を排除した測定が可能となる。また、測定レンジ(kの範囲)を限定する場合、以下で説明する加算部212、ドップラー周波数解析部213及び方向推定部214の処理に対しても、同様に測定レンジ(kの範囲)を限定した処理を適用すればよい。これにより、各構成部での処理量を削減でき、レーダ受信部200における消費電力を低減できる。
【0056】
加算部212は、第M番目のレーダ送信周期Trの離散時刻k毎に相関演算部211から受け取る相関演算値AC
(z)(k, M)を用いて、所定回数(Np回)のレーダ送信周期Trの期間(Tr×Np)に渡って、相関演算値AC
(z)(k, M)を加算(コヒーレント積分)する。期間(Tr×Np)に渡る加算数Npの加算(コヒーレント積分)処理は次式で表される。
【数2】
【0057】
ここで、CI
(z)(k, m)は相関演算値の加算値(以下、相関加算値と呼ぶこともある)を表し、Npは1以上の整数値であり、mは加算部212における加算回数Npを1個の単位とした場合における加算回数の序数を示す1以上の整数である。また、z=1,…,Ntである。
【0058】
加算部212は、レーダ送信周期Trを単位として得られた相関演算部211の出力を一つの単位として、Np回の加算を行う。つまり、加算部212は、相関演算値AC
(z)(k, Np(m-1)+1)〜AC
(z)(k, Np×m)を一単位として、離散時刻kのタイミングをそろえて加算した相関値CI
(z)(k, m)を離散時刻k毎に算出する。これにより、加算部212は、相関演算値のNp回に渡る加算の効果により、ターゲットからの反射波信号が高い相関を有する範囲において、反射波信号のSNRを向上させることができる。よって、ターゲットの到来距離の推定に関する測定性能を向上させることができる。
【0059】
なお、理想的な加算利得を得るためには、相関演算値の加算回数Npの加算区間において、相関演算値の位相成分がある程度の範囲で揃う条件が必要である。つまり、加算回数Npは、測定対象となるターゲットの想定最大移動速度に基づいて設定されることが好ましい。これはターゲットの想定最大速度が大きいほど、ターゲットからの反射波に含まれるドップラー周波数の変動量が大きく、高い相関を有する時間期間が短くなるためである。この場合、加算回数Npは小さい値となるため、加算部212での加算による利得向上効果が小さくなる。
【0060】
ドップラー周波数解析部213は、離散時刻k毎に得られた加算部212のNc個の出力であるCI
(z)(k, Nc(w-1)+1)〜CI
(z)(k,Nc×w)を一単位として、離散時刻kのタイミングをそろえてコヒーレント積分を行う。例えば、ドップラー周波数解析部213は、次式に示すように、2Nf個の異なるドップラー周波数fsΔΦに応じた位相変動Φ(fs)=2πfs(Tr×Np)ΔΦを補正した上で、コヒーレント積分を行う。
【数3】
【0061】
ここで、FT_CI
(z)Nant(k, fs, w)は、ドップラー周波数解析部213における第w番目の出力であり、第Nant番目のアンテナ系統処理部201における離散時刻kでのドップラー周波数fsΔΦのコヒーレント積分結果を示す。ただし、Nant=1〜Naであり、fs=-Nf+1,…,0,…,Nfであり、k=1,…, (Nr+Nu)Ns/Noであり、wは1以上の整数であり、ΔΦは位相回転単位である。
【0062】
これにより、各アンテナ系統処理部201は、離散時刻k毎の2Nf個のドップラー周波数成分に応じたコヒーレント積分結果であるFT_CI
(z)Nant(k, -Nf+1,w),…, FT_CI
(z)Nant(k, Nf-1, w)を、レーダ送信周期間Trの複数回Np×Ncの期間(Tr×Np×Nc)毎に得る。なお、jは虚数単位であり、z=1,…,Ntである。
【0063】
ΔΦ=1/Ncとした場合、上述したドップラー周波数解析部213の処理は、サンプリング間隔Tm=(Tr×Np)、サンプリング周波数fm=1/Tmで加算部212の出力を離散フーリエ変換(DFT)処理していることと等価である。
【0064】
また、Nfを2のべき乗の数に設定することで、ドップラー周波数解析部213では、高速フーリエ変換(FFT)処理を適用でき、演算処理量を大きく削減できる。この際、Nf>Ncとなる場合には、q>Ncとなる領域においてCI
(z)(k、Nc(w-1)+q)=0とするゼロ埋め処理を行うことで、同様にFFT処理を適用でき、演算処理量を大きく削減できる。
【0065】
また、ドップラー周波数解析部213において、FFT処理を行わずに、上式(3)に示す積和演算を逐次的に演算する処理を行ってもよい。つまり、ドップラー周波数解析部213は、離散時刻k毎に得られた加算部212のNc個の出力であるCI
(z)(k, Nc(w-1)+q+1)に対して、fs=-Nf+1,…,0,…,Nf-1に対応する係数exp[-j2πf
sT
rN
pqΔφ]を生成し、逐次的に積和演算処理してもよい。ここで、q=0〜Nc−1である。
【0066】
なお、以下の説明では、Na個のアンテナ系統処理部201の各々において同様の処理を施して得られた第w番目の出力FT_CI
(z)1(k, fs, w), FT_CI
(z)2(k, fs, w),…, FT_CI
(z)Na(k, fs, w)をまとめたものを、次式のように仮想受信アレー相関ベクトルh(k, fs, w)として表記する。仮想受信アレー相関ベクトルh(k, fs, w)は、送信アンテナ数Ntと受信アンテナ数Naとの積であるNt×Na個の要素を含む。仮想受信アレー相関ベクトルh(k, fs, w)は、後述する、ターゲットからの反射波信号に対して受信アンテナ202間の位相差に基づく方向推定を行う処理の説明に用いる。ここで、z=1,…,Ntであり、b=1, …, Naである。
【数4】
【数5】
【0067】
以上、信号処理部207の各構成部における処理について説明した。
【0068】
方向推定部214は、アンテナ系統処理部201−1〜201−Naから出力されるw番目のドップラー周波数解析部213の仮想受信アレー相関ベクトルh(k, fs, w)に対してアレー補正値h_cal
[y]を用いてアンテナ系統処理部201間の位相偏差及び振幅偏差を補正した仮想受信アレー相関ベクトルh
_after_cal(k, fs, w)を算出する。仮想受信アレー相関ベクトルh
_after_cal(k, fs, w)は次式で表される。なお、y=1,…,(Nt×Na)である。
【数6】
【0069】
そして、方向推定部214は、仮想受信アレー相関ベクトルh
_after_cal(k, fs, w)を用いて、受信アンテナ202間の反射波信号の位相差に基づいて、水平方向及び垂直方向の方向推定処理を行う。方位推定部214は、方向推定評価関数値P(θ, φ,k, fs, w)における方位方向θ及び仰角方向Φを所定の角度範囲内で可変として空間プロファイルを算出し、算出した空間プロファイルの極大ピークを大きい順に所定数抽出し、極大ピークの方位方向及び仰角方向を到来方向推定値とする。
【0070】
なお、評価関数値P(θ, φ,k, fs, w)は、到来方向推定アルゴリズムによって各種のものがある。例えば参考非特許文献1に開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いてもよい。
【0071】
(参考非特許文献1)Direction-of-arrival estimation using signal subspace modeling Cadzow, J.A.; Aerospace and Electronic Systems, IEEE Transactions on Volume: 28 , Issue: 1 Publication Year: 1992 , Page(s): 64 - 79
【0072】
例えばビームフォーマ法は次式のように表すことができる。他にも、Capon, MUSICといった手法も同様に適用可能である。
【数7】
【0073】
ここで、上付き添え字Hはエルミート転置演算子である。また、a(θ
u, φ
v)は、方位方向θ
u、仰角方向φ
vの到来波に対する仮想受信アレーの方向ベクトルを示す。
【0074】
以上のように、方向推定部214は、算出された第w番目の到来方向推定値、離散時刻k、ドップラー周波数fsΔΦ及び角度θ
uを、レーダ測位結果として出力する。
【0075】
ここで、方向ベクトルa(θ
u, φ
v)は、方位θ
u方向及び仰角方向φ
vからレーダ送信信号に対する反射波が到来した場合の仮想受信アレーの複素応答を要素とした(Nt×Na)次の列ベクトルである。仮想受信アレーの複素応答a(θ
u, φ
v)は、アンテナ間の素子間隔によって幾何光学的に算出される位相差を表す。
【0076】
また、θ
uは到来方向推定を行う方位範囲内を所定の方位間隔β
1で変化させたものである。例えば、θ
uは以下のように設定される。
θ
u=θmin + uβ
1、u=0,…, NU
NU=floor[(θmax-θmin)/β
1]+1
ここでfloor(x)は、実数xを超えない最大の整数値を返す関数である。
【0077】
また、φ
vは到来方向推定を行う仰角範囲内を所定の仰角間隔β
2で変化させたものである。例えば、φ
vは以下のように設定される。
φ
v=φmin + vβ
2、v=0,…, NV
NV=floor[(φmax-φmin)/β
2]+1
【0078】
なお、本実施の形態では、後述する仮想受信アレー配置VA#1,…, VA#(Nt×Na)に基づいて仮想受信アレーの方向ベクトルが予め算出されているものとする。仮想受信アレーの方向ベクトルの要素は、後述する仮想受信アレー配置番号順VA#1,…, VA#(Nt×Na)にアンテナ間の素子間隔で幾何光学的に算出される位相差を表す。
【0079】
また、上述した時刻情報kは、距離情報に変換して出力されてもよい。時刻情報kを距離情報R(k)に変換する際には次式を用いればよい。ここで、Twは符号送信区間を表し、Lはパルス符号長を表し、C
0は光速度を表す。
【数8】
【0080】
また、ドップラー周波数情報(fsΔΦ)は相対速度成分に変換して出力されてもよい。ドップラー周波数fsΔΦを相対速度成分vd(fs)に変換する際には次式を用いて変換することができる。ここで、λは送信無線部107から出力されるRF信号のキャリア周波数の波長である。
【数9】
【0081】
[レーダ装置10におけるアンテナ配置]
以上の構成を有するレーダ装置10におけるNt個の送信アンテナ106及びNa個の受信アンテナ202の配置について説明する。
【0082】
図6は、Nt=2個の送信アンテナ106(Tx#1、Tx#2)から構成される送信アレーのアンテナ配置、Na=3個の受信アンテナ202(Rx#1、Rx#2、Rx#3)から構成される受信アレーのアンテナ配置、及び、これらの送受信アレーアンテナに基づいて構成される仮想受信アレー(素子数:Nt×Na=6個)のアンテナ配置を示す。
【0083】
送信アンテナ106及び受信アンテナ202の各々は、2個のアンテナ素子を含むサブアレー素子を用いて構成される。
【0084】
また、サブアレー素子のサイズ(幅)をD
subarryとし、レーダ検知角範囲においてグレーティングローブが発生しない所望のアンテナ素子間隔をDeとする。
図6では、サブアレー素子のサイズD
subarryは所望のアンテナ素子間隔Deよりも大きい(D
subarry>De)。なお、所望のアンテナ素子間隔Deとしては、0.5波長以上0.75波長以下の値を用いる
【0085】
また、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔をDtとし、受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔をDrとする。例えば、
図6では、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtを1.5λ(1.5波長)とし、受信アンテナのサブアレー素子間隔Drを1λ(1波長)とする。つまり、サブアレー素子間隔Dt,Drは、1波長(λ)程度以上となる。
【0086】
本実施の形態では、レーダ検知角範囲においてグレーティングローブが発生しない所望のアンテナ素子間隔Deよりもサブアレー素子のサイズD
subarryが広い場合(D
subarry>De)。この場合、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtと受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Drとの間で次式に示す関係を満たすように、送信アレー及び受信アレーを配置する。
|Dt - Dr | = De (10)
【0087】
すなわち、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtと、受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Drとの差の絶対値は、所望のアンテナ素子間隔Deと同一である。
【0088】
図6は、一例として、De=λ/2とし、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dt=1.5λとし、受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dr=λとなる場合を示す。
【0089】
この場合、
図6に示すように、仮想受信アレーの中心付近(端部以外)の素子間隔が、所望のアンテナ素子間隔De(=|Dt-Dr|=λ/2)となる。すなわち、仮想受信アレーでは、レーダ検知角範囲においてグレーティングローブが発生しないアレー配置が得られる。
【0090】
図7は、
図6に示す送受信アレーアンテナ配置(De=0.5λ、Dt=1.5λ、Dr=λの場合)における指向性パターン(フーリエビームパターン。メインビーム:0°方向)を示す。
図7に示すように、メインビーム方向から±90°の角度範囲においてグレーティングローブが発生していないことが分かる。
【0091】
このようにして、本実施の形態では、送信アンテナ106から構成される送信アレーアンテナの素子間隔と、受信アンテナ202から構成される受信アレーアンテナの素子間隔との差(絶対値)が、グレーティングローブが発生しない所望の素子間隔と等しくなるように、送信アンテナ106及び受信アンテナ202が配置される。
【0092】
こうすることで、送信アンテナ106及び受信アンテナ202の配置関係に従って構成される仮想受信アレーの素子間隔をグレーティングローブが発生しない所望の素子間隔に設定することができる。これにより、方向推定部214における方向推定処理を行う際に、グレーティングローブによる誤検出の発生を除去することができる。
【0093】
よって、本実施の形態によれば、サブアレー構成のアレー素子を用いる場合でも、不要なグレーティングローブの発生を抑え、所望の指向性パターンを実現することができる。
【0094】
なお、
図6では、水平方向の到来方向推定を行うために、水平方向にアレーアンテナを直線状に配置する構成を一例として示した。しかし、本実施の形態は、垂直方向の到来方向推定を行うために、垂直方向にアレーアンテナを直線状に配置する場合でも、同様にして、垂直方向において、グレーティングローブが発生しない所望の素子間隔の仮想受信アレーを配置することができる。
【0095】
(バリエーション1)
バリエーション1では、水平方向及び垂直方向の双方の到来方向推定を行う場合について説明する。
【0096】
送信アレー素子又は受信アレー素子が垂直方向及び水平方向の2次元に配置される。
【0097】
図8は、Nt=6個の送信アンテナ106(Tx#1〜Tx#6)から構成される送信アレーのアンテナ配置、Na=3個の受信アンテナ202(Rx#1、Rx#2、Rx#3)から構成される受信アレーのアンテナ配置、及び、これらの送受信アレーアンテナに基づいて構成される仮想受信アレー(素子数:Nt×Na=18個)のアンテナ配置を示す。
【0098】
図8では、送信アレーは、水平方向に2個、垂直方向に3個の2次元に各サブアレー素子が配置されている。
【0099】
また、
図8においてサブアレー素子の水平方向におけるサイズをD
subarryとし、サブアレー素子の垂直方向におけるサイズをDe以下とする。つまり、アンテナ素子のサイズは、水平方向において所望のアンテナ素子間隔Deより大きく、垂直方向において所望のアンテナ素子間隔De以下である。
【0100】
図8では、一例として、所望のアンテナ素子間隔De=λ/2とし、送信アレーアンテナの水平方向のサブアレー素子間隔Dtを1.5λとし、送信アレーアンテナの垂直方向の素子間隔をDeとする。また、受信アンテナの水平方向のサブアレー素子間隔Dr=λとする。
【0101】
この場合、
図8に示すように、水平方向において、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtと、受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Drとの差の絶対値は、所望のアンテナ素子間隔Deと同一である。また、
図8に示すように、垂直方向において、送信アレーアンテナの素子間隔は、所望のアンテナ素子間隔Deと同一である。
【0102】
これにより、
図8に示すように、水平方向において、仮想受信アレーの中心付近(端部以外)の素子間隔が、所望のアンテナ素子間隔De(=|Dt-Dr|=λ/2)となる。
【0103】
また、
図8に示すように、垂直方向において、仮想受信アレーの素子間隔は、送信アレーの垂直方向の素子間隔と同様、所望のアンテナ素子間隔Deとなる。
【0104】
すなわち、仮想受信アレーでは、水平方向及び垂直方向の何れでも、レーダ検知角範囲においてグレーティングローブが発生しないアレー配置が得られる。
【0105】
方向推定部214において水平方向及び垂直方向の到来方向推定を行う場合には、次式に示すように、方位方向θ
u及び仰角方向φ
vを可変にして、方向推定評価関数値P(θ
u、φ
v、k、fs、w)を算出し、その最大値が得られる方位方向、仰角方向を到来方向推定値DOA(k,fs,w)とする。
【数10】
【0106】
ここで、u=1,…,NUである。なお、arg max P(x)は関数値P(x)が最大となる定義域の値を出力値とする演算子である。
【0107】
なお、評価関数値P(θ
u、φ
v、k、fs、w)は、到来方向推定アルゴリズムによって各種のものがある。例えば上述した参考非特許文献1に開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いてもよい。例えばビームフォーマ法は次式のように表すことができる。他にも、Capon, MUSICといった手法も同様に適用可能である。
【数11】
【0108】
ここで上付き添え字Hはエルミート転置演算子である。また、a(θ
u,φ
v)は、方位方向θ
u及び仰角方向φ
vの到来波に対する方向ベクトルを示す。
【0109】
図9A及び
図9Bは、
図8に示す送受信アレーアンテナ配置(De=0.5λ、Dt=1.5λ、Dr=1λの場合)の水平方向及び垂直方向における指向性パターン(フーリエビームパターン。メインビーム:0°方向)をそれぞれ示す。
【0110】
図9Aに示すように、水平方向において、メインビーム方向から±90°の角度範囲においてグレーティングローブが発生していないことが分かる。また、
図9Bに示すように、垂直方向においてもグレーティングローブが発生しないビームパターンが形成されることが分かる。
【0111】
このような送受信アレーアンテナの配置を用いることで、方向推定部214における方向推定処理を行う際に、水平方向及び垂直方向の双方においてグレーティングローブによる誤検出の発生を除去することができる。
【0112】
よって、バリエーション1によれば、2次元に配置された、サブアレー構成のアレー素子を用いる場合でも、不要なグレーティングローブの発生を抑え、所望の指向性パターンを実現することができる。
【0113】
なお、
図8では、サブアレー素子の水平方向のサイズがD
subarry(>De)である場合について説明したが、バリエーション1は、サブアレー素子の垂直方向のサイズがD
subarry(>De)である場合にも同様に適用できる。この場合、送信アレーの垂直方向の配置において、送信アレーアンテナの素子間隔と、受信アレーアンテナの素子間隔との差(絶対値)が、グレーティングローブが発生しない所望の素子間隔と等しくなるように、送信アレーを配置すればよい。
【0114】
(バリエーション2)
バリエーション2では、水平方向及び垂直方向の双方の到来方向推定を行う他の例について説明する。
【0115】
具体的には、送信アレーアンテナにおいて、水平方向の素子間隔をDt(>De)とし、垂直方向の素子間隔を所望のアンテナ素子間隔Deとする場合、送信アレーアンテナにおいて、垂直方向で隣接し、水平方向に直線上に並べられた2つのサブアレー素子配列が、水平方向に所望のアンテナ素子間隔Deと同一の間隔分ずれて配置される。
【0116】
図10は、Nt=6個の送信アンテナ106(Tx#1〜Tx#6)から構成される送信アレーのアンテナ配置、Na=3個の受信アンテナ202(Rx#1、Rx#2、Rx#3)から構成される受信アレーのアンテナ配置、及び、これらの送受信アレーアンテナに基づいて構成される仮想受信アレー(素子数:Nt×Na=18個)のアンテナ配置を示す。
【0117】
図10では、送信アレーは、水平方向に2個、垂直方向に3個の2次元に各サブアレー素子が配置されている。
【0118】
また、
図10においてサブアレー素子の水平方向におけるサイズをD
subarryとし、サブアレー素子の垂直方向におけるサイズをDe以下とする。つまり、アンテナ素子のサイズは、水平方向において所望のアンテナ素子間隔Deより大きく、垂直方向において所望のアンテナ素子間隔De以下である。
【0119】
図10では、
図8と同様、所望のアンテナ素子間隔De=λ/2とし、送信アレーアンテナの水平方向のサブアレー素子間隔Dtを1.5λとし、送信アレーアンテナの垂直方向の素子間隔をDeとする。また、受信アレーアンテナの水平方向のサブアレー素子間隔Dr=λとする。
【0120】
バリエーション1(
図8)と同様、
図10に示すように、水平方向において、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtと、受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Drとの差の絶対値は、所望のアンテナ素子間隔Deと同一である。また、
図10に示すように、垂直方向において、送信アレーアンテナの素子間隔は、所望のアンテナ素子間隔Deと同一である。
【0121】
更に、
図10では、送信アレーアンテナの垂直方向においてアンテナ素子間隔De離れた送信アンテナ106同士(垂直方向に隣接する送信アンテナ106同士)が、水平方向においてアンテナ素子間隔Deと同一間隔ずれて配置される。換言すると、送信アレーアンテナにおいて、垂直方向で隣接し、水平方向に直線上に並べられた2つのサブアレー素子配列が、水平方向に所望の素子間隔と同一間隔ずれて配置される。
【0122】
例えば、
図10に示す送信アンテナTx#1、Tx#2の配列(すなわち、サブアレー素子配列。以下同様)と、当該配列に垂直方向で隣接する送信アンテナT#3、Tx#4の配列とは、アンテナ素子間隔Deと同一間隔ずれて配置されている。同様に、送信アンテナTx#3、Tx#4の配列と、当該配列に垂直方向で隣接する送信アンテナT#5、T#6の配列とは、水平方向にアンテナ素子間隔Deと同一間隔ずれて配置されている。
【0123】
図10では、水平方向において、仮想受信アレーの中心付近(端部以外)の素子間隔が、所望のアンテナ素子間隔De(=|Dt-Dr|=λ/2)となる。また、
図10に示すように、垂直方向において、仮想受信アレーの素子間隔は、送信アレーの垂直方向の素子間隔と同様、所望のアンテナ素子間隔Deとなる。すなわち、仮想受信アレーでは、レーダ検知角範囲においてグレーティングローブが発生しないアレー配置が得られる。
【0124】
更に、
図10に示すように、仮想受信アレーの垂直方向において、中央(2段目)のアレー素子の配列が、他のアレー素子(1段目及び3段目)のアレー素子の配列と比較して、水平方向にDeずれて配置される。これにより、
図10では、バリエーション1(
図8)と比較して、仮想受信アレーが配置される2次元平面におけるアンテナ素子の間隔がより密接になる。これにより、仮想受信アレーでは、サイドローブレベルの低減が可能となる。
【0125】
図11A及び
図11Bは、
図10に示す送受信アレーアンテナ配置(De=0.5λ、Dt=1.5λ、Dr=λの場合)の水平方向及び垂直方向における指向性パターン(フーリエビームパターン。メインビーム:0°方向)をそれぞれ示す。
【0126】
図11Aに示すように、水平方向において、メインビーム方向から±90°の角度範囲においてグレーティングローブが発生していないことが分かる。また、
図11Bに示すように、垂直方向においてもグレーティングローブが発生しないビームパターンが形成されることが分かる。
【0127】
更に、バリエーション1(
図9A)と比較すると、
図11Aに示すように、水平方向の指向性パターンにおいてサイドローブレベルが低減されていることが分かる。
【0128】
このような送受信アレーアンテナの配置を用いることで、方向推定部214における方向推定処理を行う際に、水平方向及び垂直方向の双方において、グレーティングローブ及びサイドローブによる誤検出の発生を除去することができる。
【0129】
よって、バリエーション2によれば、2次元に配置された、サブアレー構成のアレー素子を用いる場合でも、不要なグレーティングローブの発生、及び、サイドローブレベルを抑え、所望の指向性パターンを実現することができる。
【0130】
(バリエーション3)
バリエーション3では、水平方向及び垂直方向の双方の到来方向推定を行う他の例について説明する。
【0131】
具体的には、送信アレーアンテナにおいて、垂直方向で隣接し、水平方向に直線上に並べられたサブアレー素子配列の間隔が所望のアンテナ素子間隔Deに定数αを乗算した間隔であり、かつ、垂直方向で隣接し、水平方向に直線上に並べられた2つのサブアレー素子配列が、水平方向に所望のアンテナ素子間隔Deに定数βを乗算した間隔ずれて配置される。
【0132】
図12は、Nt=6個の送信アンテナ106(Tx#1〜Tx#6)から構成される送信アレーのアンテナ配置、Na=3個の受信アンテナ202(Rx#1、Rx#2、Rx#3)から構成される受信アレーのアンテナ配置、及び、これらの送受信アレーアンテナに基づいて構成される仮想受信アレー(素子数:Nt×Na=18個)のアンテナ配置を示す。
【0133】
図12では、送信アレーは、水平方向に2個、垂直方向に3個の2次元に各サブアレー素子が配置されている。
【0134】
また、
図12においてサブアレー素子の水平方向におけるサイズをD
subarryとし、サブアレー素子の垂直方向におけるサイズをDe以下とする。つまり、アンテナ素子のサイズは、水平方向において所望のアンテナ素子間隔Deより大きく、垂直方向において所望のアンテナ素子間隔De以下である。
【0135】
図12は、
図8と同様、所望のアンテナ素子間隔De=λ/2とし、送信アレーアンテナの水平方向のサブアレー素子間隔Dt=1.5λとし、受信アレーアンテナの水平方向のサブアレー素子間隔Dr=λとする。また、受信アレーアンテナの水平方向のサブアレー素子間隔Dr=λとする。
【0136】
バリエーション1、2(
図8、
図10)と同様、
図12に示すように、水平方向において、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtと、受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Drとの差の絶対値は、所望のアンテナ素子間隔Deと同一である。
【0137】
一方、
図12に示すように、垂直方向において、送信アレーアンテナの素子間隔は、所望のアンテナ素子間隔Deに定数αを乗算した間隔αDeとなる。
【0138】
また、
図12では、送信アレーアンテナの垂直方向において素子間隔αDe離れた送信アンテナ106同士(垂直方向に隣接する送信アンテナ106同士)が、水平方向において所望のアンテナ素子間隔Deに定数βを乗算した間隔βDeずれて配置される。換言すると、送信アレーアンテナにおいて、垂直方向で隣接し、水平方向に直線上に並べられた2つのサブアレー素子配列が、水平方向に所望の素子間隔のβ倍の間隔ずれて配置される。
【0139】
例えば、
図12に示す送信アンテナTx#1、Tx#2の配列と、当該配列に垂直方向で隣接する送信アンテナT#3、Tx#4の配列とは、間隔βDeずれて配置されている。同様に、送信アンテナTx#3、Tx#4の配列と、当該配列に垂直方向で隣接する送信アンテナT#5、T#6の配列とは、水平方向に間隔βDeずれて配置されている。
【0140】
例えば、α=(3)
0.5/2≒0.866であり、β=0.5である。
【0141】
図12では、水平方向において、仮想受信アレーの中心付近(端部以外)の素子間隔が、所望のアンテナ素子間隔De(=|Dt-Dr|=λ/2)となる。
【0142】
また、
図12に示すように、垂直方向において、仮想受信アレーの素子間隔は、送信アレーの垂直方向の素子間隔と同様、αDe(=(3)
0.5De)となる。
【0143】
すなわち、仮想受信アレーでは、レーダ検知角範囲においてグレーティングローブが発生しないアレー配置が得られる。
【0144】
更に、
図12に示すように、仮想受信アレーの垂直方向において、中央(2段目)のアレー素子の配列が、他のアレー素子(1段目及び3段目)のアレー素子の配列と比較して、水平方向にβDe(=0.5De)ずれて配置される。
【0145】
これにより、
図12では、バリエーション2(
図10)と同様、バリエーション1(
図8)と比較して、仮想受信アレーが配置される2次元平面におけるアンテナ素子の間隔がより密接になる。これにより、仮想受信アレーでは、サイドローブレベルの低減が可能となる。
【0146】
ここで、
図12に示すように、仮想受信アレーの中心付近では、仮想受信アレーが配置される2次元平面において隣接する3個のアンテナ素子のそれぞれの間隔が所望のアンテナ素子間隔Deとなる。換言すると、仮想受信アレーが配置される2次元平面において隣接する3個のアレー素子を結ぶ直線は、1辺をアンテナ素子間隔Deとする正三角形を形成する。正三角形格子配置は、同じ開口長の方形格子配置に比べ、グレーティングローブ抑圧性能が高いため、バリエーション2と比較して、グレーティングローブ、サイドローブのレベルをより低減させることができる。
【0147】
つまり、定数α、βは、垂直方向及び水平方向の2次元において隣接する3個のアレー素子の互いの素子間隔が所望のアンテナ素子間隔De(1辺をDeとする正三角形状)となるように設定されればよい。
【0148】
図13A及び
図13Bは、
図12に示す送受信アレーアンテナ配置(De=0.5λ、Dt=1.5λ、Dr=1λ、α=(3)
0.5/2、β=0.5)の水平方向及び垂直方向における指向性パターン(フーリエビームパターン。メインビーム:0°方向)をそれぞれ示す。
【0149】
図13Aに示すように、水平方向において、メインビーム方向から±90°の角度範囲においてグレーティングローブが発生していないことが分かる。また、
図13Bに示すように、垂直方向においてもグレーティングローブが発生しないビームパターンが形成されることが分かる。
【0150】
更に、バリエーション1(
図9A)と比較すると、
図13Aに示すように、水平方向の指向性パターンにおいてサイドローブレベルが低減されていることが分かる。
【0151】
また、バリエーション2(
図11A)と比較すると、
図13Aに示すように、水平方向の指向性パターンのうち、メインローブに最も近接した方向(
図13Aでは±30°方向)に現れるサイドローブレベルが低減されていることが分かる。
【0152】
このような送受信アレーアンテナの配置を用いることで、方向推定部214における方向推定処理を行う際に、水平方向及び垂直方向の双方において、グレーティングローブ及びサイドローブによる誤検出の発生を除去することができる。
【0153】
よって、バリエーション3によれば、2次元に配置された、サブアレー構成のアレー素子を用いる場合でも、不要なグレーティングローブの発生、及び、サイドローブレベルを抑え、所望の指向性パターンを実現することができる。
【0154】
以上、本開示の一態様に係る実施の形態について説明した。
【0155】
なお、上記実施の形態、及び、各変形例に係る動作を適宜組み合わせて実施してもよい。
【0156】
また、上記実施の形態では、送信アンテナ106の個数Nt=2又は3、及び、受信アンテナ202の個数Na=3の場合について例示した。しかし、送信アンテナ106の個数Nt及び受信アンテナ202の個数Naは、これらの個数に限定されるものではない。
【0157】
また、上記実施の形態では、送信アンテナ106及び受信アンテナ202が2個のアンテナ素子から成るサブアレー素子である場合について説明したが、送信アンテナ106及び受信アンテナ202の各々を構成するアンテナ素子は、3個以上の素子から構成されてもよい。
【0158】
また、上記実施の形態のバリエーション1〜3において、送信アレーアンテナが水平方向及び垂直方向の2次元に配置され、受信アレーアンテナが水平方向の1次元に配置される場合について説明した。しかし、本開示は、受信アレーアンテナが2次元に配置され、送信アレーアンテナが1次元に配置されてもよい。この場合、上述した送信アレーアンテナにおけるサブアレー素子の配置を、受信アレーアンテナにおけるサブアレー素子の配置に適用すればよい。
【0159】
また、上記実施の形態では、アンテナ素子のサイズが、水平方向において所望のアンテナ素子間隔Deより大きく、垂直方向において所望のアンテナ素子間隔De以下である場合について説明したが、アンテナ素子のサイズは、垂直方向において所望のアンテナ素子間隔Deより大きく、水平方向において所望のアンテナ素子間隔De以下であってもよい。この場合、上述した送受信アレーアンテナにおけるサブアレー素子の配置について、水平方向と垂直方向とを入れ替えればよい。
【0160】
また、上記実施の形態では、符号化パルスレーダを用いる場合について説明したが、本開示は、チャープ(Chirp)パルスレーダのような周波数変調したパルス波を用いたレーダ方式についても適用可能である。
【0161】
また、
図2に示すレーダ装置10において、レーダ送信部100及びレーダ受信部200は、物理的に離れた場所に個別に配置されてもよい。
【0162】
なお、レーダ装置において、レーダ送信部で、複数の送信アンテナから符号分割多重された異なる送信信号を送出し、レーダ受信部で、各送信信号を分離して受信処理を行う構成を示したが、レーダ装置の構成は、これに限定されず、レーダ送信部で、複数の送信アンテナから周波数分割多重された異なる送信信号を送出し、レーダ受信部で、各送信信号を分離して受信処理を行う構成でもよい。また、同様に、レーダ装置の構成は、レーダ送信部で複数の送信アンテナから時分割多重された送信信号を送出し、レーダ受信部で、受信処理を行う構成でもよく、上記実施の形態と同様な効果が得られる。
【0163】
また、レーダ装置10は、図示しないが、例えば、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等の記憶媒体、およびRAM(Random Access Memory)等の作業用メモリを有する。この場合、上記した各部の機能は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。但し、レーダ装置10のハードウェア構成は、かかる例に限定されない。例えば、レーダ装置10の各機能部は、集積回路であるIC(Integrated Circuit)として実現されてもよい。各機能部は、個別に1チップ化されてもよいし、その一部または全部を含むように1チップ化されてもよい。
【0164】
<本開示のまとめ>
本開示のレーダ装置は、所定の送信周期にてレーダ信号を送信アレーアンテナを用いて送信するレーダ送信部と、前記レーダ信号がターゲットに反射された反射波信号を受信アレーアンテナを用いて受信するレーダ受信部と、を具備し、前記送信アレーアンテナ及び前記受信アレーアンテナは、それぞれ、複数のサブアレー素子を含み、前記複数のサブアレー素子は、前記送信アレーアンテナ及び前記受信アレーアンテナにおいて、第1の方向の直線上に配置され、前記各サブアレー素子は、複数のアンテナ素子を含み、前記サブアレー素子のサイズは、前記第1の方向において、所望のアンテナ素子間隔より大きく、前記送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔と、前記受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔との差の絶対値は、前記所望のアンテナ素子間隔と同一である。
【0165】
また、本開示のレーダ装置において、前記所望のアンテナ素子間隔は、0.5波長以上、0.75波長以下である。
【0166】
また、本開示のレーダ装置において、前記送信アレーアンテナ及び前記受信アレーアンテナの何れか一方において、前記複数のサブアレー素子は、さらに、前記第1の方向に直交する第2の方向に配置され、前記サブアレー素子のサイズは、前記第1の方向において前記所望のアンテナ素子間隔より大きく、前記第2の方向において前記所望のアンテナ素子間隔以下である場合、前記第1の方向において、前記送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔と、前記受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔との差の絶対値は前記所望のアンテナ素子間隔と同一であり、前記第2の方向において、前記サブアレー素子の間隔は、前記所望のアンテナ素子間隔と同一である。
【0167】
また、本開示のレーダ装置において、前記第2の方向に配置された前記複数のサブアレー素子は、前記第1の方向に前記所望のアンテナ素子間隔と同一の間隔がシフトされて配置される。
【0168】
また、本開示のレーダ装置において、前記送信アレーアンテナ及び前記受信アレーアンテナの何れか一方において、前記複数のサブアレー素子は、さらに、前記第1の方向に直交する第2の方向に配置され、前記サブアレー素子のサイズは、前記第1の方向において前記所望のアンテナ素子間隔より大きく、前記第2の方向において前記所望のアンテナ素子間隔以下である場合、前記第1の方向において、前記送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔と、前記受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔との差の絶対値は前記所望の素子間隔と同一であり、前記第2の方向において、前記サブアレー素子の間隔は、前記所望のアンテナ素子間隔の((√3)/2)倍の長さであり、前記第2の方向に配置された前記複数のサブアレー素子は、前記第1の方向に前記所望のアンテナ素子間隔の(1/2)倍の間隔がシフトされて配置される。
【0169】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態(各バリエーション)について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態(各バリエーション)における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0170】
上記各実施形態では、本開示はハードウェアを用いて構成する例にとって説明したが、本開示はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
【0171】
また、上記各実施形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。集積回路は、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックを制御し、入力と出力を備えてもよい。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0172】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサを用いて実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、LSI内部の回路セルの接続又は設定を再構成可能なリコンフィギュラブル プロセッサ(Reconfigurable Processor)を利用してもよい。
【0173】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術により、LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックを集積化してもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。