特許第6694034号(P6694034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6694034
(24)【登録日】2020年4月20日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】ポリイミド樹脂及びその製造方法と薄膜
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20200427BHJP
【FI】
   C08G73/10
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-187022(P2018-187022)
(22)【出願日】2018年10月2日
(62)【分割の表示】特願2017-152097(P2017-152097)の分割
【原出願日】2017年8月7日
(65)【公開番号】特開2019-14907(P2019-14907A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2018年10月29日
(31)【優先権主張番号】106104879
(32)【優先日】2017年2月15日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】506021156
【氏名又は名称】律勝科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100113398
【弁理士】
【氏名又は名称】寺崎 直
(72)【発明者】
【氏名】頼 柏宏
(72)【発明者】
【氏名】侯 韋銘
(72)【発明者】
【氏名】黄 堂傑
【審査官】 阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0046463(KR,A)
【文献】 国際公開第2016/175344(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/038810(WO,A1)
【文献】 特開2011−183370(JP,A)
【文献】 特開2011−161396(JP,A)
【文献】 特開2001−011181(JP,A)
【文献】 特開2017−019264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G73/
C08J 5/00〜5/02,5/12〜5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無色透明のポリイミド樹脂であって、少なくとも2種類の二無水物モノマーと、少なくとも2種類のジアミンモノマーを共重合して成り、前記二無水物モノマーと前記ジアミンモノマーとの組合せが、
(a)前記二無水物モノマーとして、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物、並びに、前記ジアミンモノマーとして、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、および4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、
(b)前記二無水物モノマーとして、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、および4,4’−オキシジフタル酸無水物、並びに、前記ジアミンモノマーとして、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、および4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、
(c)前記二無水物モノマーとして、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロイソプロピリデン二無水物、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物、並びに、前記ジアミンモノマーとして、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、および4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、
(d)前記二無水物モノマーとして、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物、並びに、前記ジアミンモノマーとして、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、および
3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、
(e)前記二無水物モノマーとして、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物、並びに、前記ジアミンモノマーとして、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、および3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、
(f)前記二無水物モノマーとして、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物、並びに、前記ジアミンモノマーとして、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、および3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、
(g)前記二無水物モノマーとして、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、および3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、並びに、前記ジアミンモノマーとして、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、および3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、
(h)前記二無水物モノマーとして、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物、並びに、前記ジアミンモノマーとして、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、およびm−トリジン、
(i)前記二無水物モノマーとして、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物、並びに、前記ジアミンモノマーとして、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、および2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、
または
(j)前記二無水物モノマーとして、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物、並びに、前記ジアミンモノマーとして、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、および3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、
から選ばれ、
2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物の含有量が、前記二無水物モノマーの総モル数の30〜60%であり、
記二無水物モノマーと前記ジアミンモノマーのうち少なくとも1つのモノマーが、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロイソプロピリデン二無水物、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、および2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンからなる群より選ばれ、且つ当該モノマーの含有量が、前記二無水物モノマーまたは前記ジアミンモノマーの総モル数の10%より高く50%以下を占めることを特徴とする、
前記無色透明のポリイミド樹脂。
【請求項2】
10GHzの誘電正接が0.01より小さく、波長550nm箇所の透過率が85%より高く、黄色度(b*)が3より低いことを特徴とする、請求項1に記載の無色透明のポリイミド樹脂。
【請求項3】
ガラス転移点が270℃より高く、線熱膨張係数が20〜50ppm/kの間であることを特徴とする、請求項1に記載の無色透明のポリイミド樹脂。
【請求項4】
前記二無水物モノマーと前記ジアミンモノマーのうち少なくとも1つのモノマーが、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロイソプロピリデン二無水物、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、および2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンからなる群より選ばれ、且つ当該モノマーの含有量が、前記二無水物モノマーまたは前記ジアミンモノマーの総モル数の20〜50%を占めることを特徴とする、請求項1に記載の無色透明のポリイミド樹
脂。
【請求項5】
無色透明のポリイミド樹脂の製造方法であって、
(a)溶媒を使用して少なくとも2種類の二無水物モノマーと少なくとも2種類のジアミンモノマーを溶解し、前記二無水物モノマーと前記ジアミンモノマーとの組合せが、
(i)前記二無水物モノマーとして、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物、並びに、前記ジアミンモノマーとして、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、および4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、
(ii)前記二無水物モノマーとして、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、および4,4’−オキシジフタル酸無水物、並びに、前記ジアミンモノマーとして、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、および4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、
(iii)前記二無水物モノマーとして、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロイソプロピリデン二無水物、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物、並びに、前記ジアミンモノマーとして、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、および4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、
(iv)前記二無水物モノマーとして、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物、並びに、前記ジアミンモノマーとして、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、および3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、
(v)前記二無水物モノマーとして、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物、並びに、前記ジアミンモノマーとして、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、および3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、
(vi)前記二無水物モノマーとして、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物、並びに、前記ジアミンモノマーとして、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、および3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、
(vii)前記二無水物モノマーとして、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、および3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、並びに、前記ジアミンモノマーとして、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、および3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、
(viii)前記二無水物モノマーとして、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物、並びに、前記ジアミンモノマーとして、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、およびm−トリジン、
(ix)前記二無水物モノマーとして、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物、並びに、前記ジアミンモノマーとして、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、および2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、
または
(x)前記二無水物モノマーとして、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物、並びに、前記ジアミンモノマーとして、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、および
3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、
から選ばれ、
2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物の含有量が、二無水物モノマーの総モル数の30〜60%であり、
記二無水物モノマーと前記ジアミンモノマーのうち少なくとも1つのモノマーが、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロイソプロピリデン二無水物、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、および2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンからなる群より選ばれ、且つ当該モノマーの含有量が、前記二無水物モノマーまたは前記ジアミンモノマーの総モル数の10%より高く50%以下を占め、
(b)溶解した前記二無水物モノマーと、溶解した前記ジアミンモノマーを混合し、重合反応を行ってポリアミド酸樹脂を形成し、前記二無水物モノマーの総モル数と前記ジアミンモノマーの総モル数の比が0.85〜1.15である工程と、
(c)前記ポリアミド酸樹脂をイミド化して、前記無色透明のポリイミド樹脂を形成する工程と、
を含むことを特徴とする、無色透明のポリイミド樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記溶媒が非プロトン溶媒であることを特徴とする、請求項5に記載の無色透明のポリイミド樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記溶媒が、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンで構成される群より選択されることを特徴とする、請求項5に記載の無色透明のポリイミド樹脂の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の無色透明のポリイミド樹脂を含むことを特徴とする、薄膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリイミド樹脂及びその製造方法と薄膜に関し、特に、誘電正接が低い、無色透明のポリイミド樹脂に関する。このポリイミド樹脂は、タッチパネル、ディスプレイデバイス、フレキシブル回路板、アンテナ、高周波伝送ケーブルの絶縁基板に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
無線通信技術において、電子設備はアンテナを設置しなければ無線通信機能を提供することはできない。アンテナの数が増えるにつれて、アンテナを携帯電話内に配置する空間が狭くなり、美観と端子位置をどこにでも設置できるという2つの要求に基づいて、透明アンテナのニーズが徐々に高まっている。
【0003】
高周波基板の信号伝送速度と基板の誘電率(Dk)の平方根は反比例するため、基板の誘電率は通常小さいほどよい。また誘電正接(Df)が小さいほど、信号伝送の損失が少ないことを表し、提供できる伝送品質もより優れていることになる。このため、高周波伝送速度の維持と、伝送信号の完全性保持のためには、高周波基板の誘電率と誘電正接が小さくなければならない。
【0004】
現在よく見受けられる高周波フレキシブル基板は液晶ポリマー膜(Liquid Crystal Polymer,LCP)が主である。しかしながら、LCPの独特の分子構造特性により配向性の配列過多を生じやすく、横方向の機械性質が優れないため、LCP薄膜加工及び製品応用の面で大きな制限を受ける。このほか、LCPは透明性の面でも優れない。
【0005】
ポリイミド(Polyimide)は良好な寸法安定性、耐熱性、熱膨張係数、機械強度、電気抵抗絶縁性を備え、すでに電子産業において大量に運用されている。しかしながら、ポリイミドはその高い芳香環密度により色が褐色または黄色であるため、可視光範囲内での透光度が低く、透明性が優れない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中華民国特許第I462952B号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の問題に鑑み、本発明の目的は、ポリイミド樹脂、その製造方法と薄膜を提供することにある。本発明のポリイミド樹脂はその材料自体の良好な耐熱性、耐化性、機械強度、電気抵抗絶縁性等の特性を維持し、同時に、さらに低誘電正接と透明無色の特性を備え、高周波基板、透明アンテナ、透明フレキシブル基板での応用に適している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に基づき、無色透明のポリイミド樹脂を提供する。この無色透明のポリイミド樹脂は、少なくとも2種類の二無水物モノマーと、少なくとも2種類のジアミンモノマーを共重合して成る。
【0009】
この無色透明のポリイミド樹脂に使用する二無水物モノマーのうち、1つは2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)であり、かつその含有量は二無水物モノマ−総モル数の30〜60%を占める。そのほかの二無水物モノマーは、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)及び2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロイソプロピリデン二無水物(HFBPADA)から構成される群より選択される。
【0010】
この無色透明のポリイミド樹脂に使用するジアミンモノマーは、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(33−DDS)、m−トリジン(M−TOLIDINE)及び2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフル オロプロパン(BISAF)で構成される群より選択される。
【0011】
そのうち、二無水物モノマーとジアミンモノマーのうち、少なくとも1つのモノマーが式1で表される構造を有し、かつ式1で表される構造の前記モノマーの含有量が、二無水物またはジアミンの総モル数の10〜50%を占める。
【0012】
【化1】
【0013】
式1において、XはSO2、C(CH32またはC(CF32であり、Yは酸素原子である。
【0014】
一実施例において、無色透明のポリイミド樹脂は、10GHzの誘電正接が0.01より小さく、波長550nm箇所の透過率が85%より高く、黄色度(b*)が3より低い。
【0015】
一実施例において、無色透明のポリイミド樹脂のガラス転移点は270℃より高く、線熱膨張係数は20〜50ppm/kの間である。
【0016】
本発明の別の一態様に基づき、無色透明のポリイミド樹脂の製造方法を提供する。この方法は次の工程を含む。
【0017】
(a)溶媒を使用し、少なくとも2種類の二無水物モノマー及び少なくとも2種類のジアミンモノマーを溶解する。二無水物モノマーのうち、1つは2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)であり、かつその含有量は二無水物モノマー総モル数の30〜60%を占める。そのほかの二無水物モノマーは、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)及び2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロイソプロピリデン二無水物(HFBPADA)から構成される群より選択される。ジアミンモノマーは、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(33−DDS)、m−トリジン(M−TOLIDINE)及び2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BISAF)で構成される群より選択される。二無水物モノマーとジアミンモノマーのうち、少なくとも1つのモノマーが式1で表される構造を有し、かつ式1で表される構造を有する前記モノマーの含有量が、二無水物またはジアミンの総モル数の10〜50%を占める。
【0018】
【化2】
式1において、XはSO2、C(CH32またはC(CF32であり、Yは酸素原子である。
【0019】
(b)溶解した二無水物モノマーと、溶解したジアミンモノマーを混合し、重合反応を行ってポリアミド酸樹脂を形成し、二無水物モノマーの総モル数とジアミンモノマーの総モル数の比が0.85〜1.15である。
【0020】
(c)前記ポリアミド酸樹脂をイミド化し、前記無色透明のポリイミド樹脂を形成する。
【0021】
一実施例において、前記溶媒は非プロトン溶媒である。
【0022】
一実施例において、前記溶媒は、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンで構成される群より選択される。
【0023】
本発明のさらに別の一態様において、上述の製造方法で製造した無色透明のポリイミド樹脂を提供する。かつ、前記ポリイミド樹脂は10GHzで0.01より小さい誘電正接を有し、波長550nm箇所の透過率が85%より高く、黄色度(b*)が3より低い。
【0024】
本発明のさらに別の一態様において、上述の製造方法で製造した無色透明のポリイミド樹脂を提供する。前記ポリイミド樹脂のガラス転移点は270℃より高く、線熱膨張係数は20〜50ppm/kの間である。
【0025】
本発明のまた別の一態様において、上述の無色透明のポリイミド樹脂を含む薄膜を提供する。
【0026】
本発明のその他の態様において、上述の薄膜を含むフレキシブル回路板、ディスプレイデバイス用基板、タッチパネル用基板、透明アンテナ用基板及び高周波伝送ケーブル用基板を提供する。
【0027】
本発明の上述及びその他の面をよりはっきりと分かりやすく示すため、以下、実施例を挙げ、図面を組み合わせて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施例1のポリイミド樹脂のIRスペクトルである。
図2】実施例5のポリイミド樹脂のIRスペクトルである。
図3】実施例7のポリイミド樹脂のIRスペクトルである。
図4】実施例8のポリイミド樹脂のIRスペクトルである。
図5】実施例9のポリイミド樹脂のIRスペクトルである。
図6】実施例13のポリイミド樹脂のIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の無色透明のポリイミド樹脂は、まず二無水物モノマーとジアミンモノマーを重合してポリアミド酸樹脂(ポリイミド樹脂前駆体)を形成した後、ポリアミド酸樹脂にイミド化プロセスを行い、形成される。
【0030】
重合の方法は、溶媒を用いて二無水物モノマーとジアミンモノマーを溶解し、溶解した二無水物モノマーとジアミンモノマーを混合して反応させると、ポリアミド酸樹脂(ポリイミド樹脂前駆体)を得ることができる。
【0031】
上述の溶媒は例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン溶媒とすることができるが、これらに限らず、その他の適した非プロトン溶媒を用いることもできる。
【0032】
イミド化の方法は高温脱水環化を用いることができ、例えば連続して、または段階的に、ポリアミド酸樹脂(ポリイミド樹脂前駆体)を加熱する。ポリイミド樹脂を薄膜または絶縁層とする必要があるときは、先にポリアミド酸樹脂(ポリイミド樹脂前駆体)を基材上に塗布してから、基材全体をオーブンに入れて加熱し、脱水環化を行うことができる。また従来のイミド化の方法を使用してもよく、本発明はこれについて限定しない。
【0033】
本発明の無色透明のポリイミド樹脂は、少なくとも2種類の二無水物モノマーと、少なくとも2種類のジアミンモノマーを共重合して成る。
【0034】
二無水物モノマーのうち、1つは2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)であり、その含有量は二無水物モノマー総モル数の30〜60%を占める。そのほかの二無水物モノマーは、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)及び2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロイソプロピリデン二無水物(HFBPADA)から構成される群より選択される。上述の群より1種類以上の二無水物モノマーを選択することができる。
【0035】
ジアミンモノマーは、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(33−DDS)、m−トリジン(M−TOLIDINE)及び2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BISAF)で構成される群より選択される。上述の群より2種類以上のジアミンモノマーを選択することができる。
【0036】
上述の二無水物モノマー及びジアミンモノマーのうち、少なくとも1つのモノマーが次の式1の構造を有する。
【0037】
【化3】
【0038】
式1において、XはSO2、C(CH32またはC(CF32であり、Yは酸素原子である。
【0039】
式1の構造を有する二無水物及びジアミンモノマーは、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロイソプロピリデン二無水物(HFBPADA)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)を含む。
【0040】
式1で表される構造を有する前記モノマーの含有量は、二無水物またはジアミンの総モル数の10〜50%を占める。例えば、ポリイミド樹脂にBPADAを二無水物モノマーとして使用する場合、BPADAのモル数はポリイミド樹脂の二無水物モノマーの総モル数の10〜50%を占める。ポリイミド樹脂がHFBPADA及びBPADAの2種類の式1の構造を有する二無水物モノマーを含む場合、HFBPADA及びBPADA両者の合計モル数が二無水物モノマー総モル数の10〜50%を占める。ポリイミド樹脂にBPADA(二無水物)及びBAPP(ジアミン)モノマーを同時に使用する場合、BPADA及びBPAA両者の合計モル数が二無水物またはジアミンモノマー総モル数の10〜50%を占める(下の実施例13を参照、BPADA及びBPAAの含有量はいずれも0.008モルで、合計0.016モルであり、二無水物またはジアミンモノマー総量0.04モルの40%を占める)。
【0041】
本発明の無色透明のポリイミド樹脂において、二無水物モノマー成分の総モル数及びジアミンモノマー成分の総モル数の比は約0.85〜1.15である。
【0042】
本発明の無色透明のポリイミド樹脂の周波数10GHz下の誘電正接は0.01より小さく、かつ波長550nmの透過率は85%より高く、黄色度(b*)は3より低いため、透明性があり、高周波素子への応用に適している。
【0043】
本発明の無色透明のポリイミド樹脂はガラス転移点が270℃より高く、線熱膨張係数が20〜50ppm/kの間であり、熱安定性が優れている。
【実施例】
【0044】
以下、複数の実施例を挙げて本発明の無色透明ポリアミド酸樹脂及びその製造方法について説明し、その特性を測定する。
【0045】
ポリアミド酸溶液(ポリイミド樹脂前駆体)の製造
【0046】
[実施例1]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.40g(0.012モル)の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、4.16g(0.008モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、7.1g(0.016モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と4.71g(0.016モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例1のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0047】
[実施例2]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.4g(0.012モル)の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、10.4g(0.02モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、5.33g(0.012モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と2.35g(0.008モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例2のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0048】
[実施例3]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.98g(0.012モル)の3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3−DDS)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、4.16g(0.008モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、10.66g(0.024モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と2.35g(0.008モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例3のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0049】
[実施例4]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.4g(0.012モル)の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、4.16g(0.008モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、7.1g(0.016モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と4.96g(0.016モル)の4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例4のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0050】
[実施例5]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.4g(0.012モル)の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、5.03g(0.008モル)の2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロイソプロピリデン二無水物(HFBPADA)、7.1g(0.016モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4.71g(0.016モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例5のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0051】
[実施例6]
6.4g(0.02モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、4.97g(0.02モル)の3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3−DDS)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、2.08g(0.004モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、8.88g(0.02モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA、4.7g(0.016モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例6のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0052】
[実施例7]
3.28g(0.008モル)の2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、7.69g(0.024モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、1.99g(0.08モル)の3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3−DDS)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、10.66g(0.024モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と4.7g(0.016モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例7のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0053】
[実施例8]
4.15g(0.008モル)の2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、7.69g(0.024モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、1.99g(0.08モル)の3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3−DDS)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、10.66g(0.024モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と4.7g(0.016モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例8のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0054】
[実施例9]
3.46g(0.008モル)のビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、7.69g(0.024モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、1.99g(0.08モル)の3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3−DDS)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、10.66g(0.024モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と4.7g(0.016モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例9のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0055】
[実施例10]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.98g(0.012モル)の3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3−DDS)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、4.16g(0.008モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、7.1g(0.016モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、5.73g(0.016モル)の3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例10のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0056】
[実施例11]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.54g(0.012モル)のm−トリジン(M−TOLIDINE)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、4.16g(0.008モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、7.1g(0.016モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4.71g(0.016モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例11のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0057】
[実施例12]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、4g(0.012モル)の2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BISAF)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、4.16g(0.008モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、7.1g(0.016モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4.71g(0.016モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例12のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0058】
[実施例13]
3.28g(0.008モル)の2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、7.69g(0.024モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、1.99g(0.08モル)の3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3−DDS)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、4.16g(0.008モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、7.1g(0.016モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4.71g(0.016モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例13のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0059】
以下、さらに比較例1〜5を挙げる。
【0060】
[比較例1]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.4g(0.012モル)の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、12.49g(0.024モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、5.33g(0.012モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、1.18g(0.004モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、比較例1のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0061】
[比較例2]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.4g(0.012モル)の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、10.66g(0.024モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と4.7g(0.016モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、比較例2のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0062】
[比較例3]
12.81g(0.04モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、16.66g(0.032モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)と、2.35g(0.008モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、比較例3のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0063】
[比較例4]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.98g(0.012モル)の3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3−DDS)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、4.16g(0.008モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)と、14.21g(0.032モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、比較例4のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0064】
[比較例5]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.40g(0.012モル)の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、4.16g(0.008モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、3.55g(0.008モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、7.06g(0.024モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、比較例5のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0065】
ポリイミド樹脂の特性の測定
【0066】
上述の実施例及び比較例のポリアミド酸溶液の組成成分と割合を下の表1にまとめる。実施例1〜6及び10〜12は式1の構造を含む二無水物を使用、実施例7〜9は式1の構造を含むジアミンを使用しており、実施例13は式1の構造を含む二無水物とジアミンを同時に使用している。実施例1、5、7、8、9及び13のIRスペクトル測定を範例とし、結果を図1から図6に示す。このほか、実施例及び比較例のポリアミド酸溶液(ポリイミド樹脂前駆体)をイミド化してポリイミド薄膜を製造した後、その透過率、色彩性質、誘電率(Dk)、誘電正接(Df)、線熱膨張係数(CTE)及びガラス転移点(Tg)を測定した。データ測定結果を下の表2にまとめる。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
表2に示した各項の特性は、ポリアミド酸溶液で薄膜を製造した後、次の方法で測定されている。
【0070】
透過率(Transmittance,T%)
分光光度計(メーカー:Jasco、型番:V−530)を使用して550nmの波長下で厚み約20μmの薄膜の透過率を測定した。
【0071】
色彩性質
分光光度計を利用して約25℃の温度下で前記等ポリイミド膜の色彩性質を測定した。この色彩性質は「Lab色空間」中のb*値で表され、b*値の定義は青色から黄色までの間の色域である。b値が3より大きいと、薄膜は薄黄色を呈する。
【0072】
ガラス転移点(glass transition temperature,Tg):
SII Nano Technology製示差走査熱量測定装置(DSC−6220)を使用して測定した。窒素ガス環境下で、ポリイミド樹脂に以下の条件の熱履歴を受けさせた。熱履歴の条件は第1回昇温(昇温速度10℃/分)後、冷却(冷却速度30℃/分)、その後第2回昇温(昇温速度10℃/分)とした。本発明のガラス転移点は、第1次昇温、または第2次昇温で観測された値を読み取り、決定された。
【0073】
線熱膨張係数(Coefficient of thermal expansion,CTE):
熱機械分析により、負荷3g/膜厚20μm、昇温速度10℃/分で、試料の延伸から、50〜200℃範囲の平均値を計算し、線熱膨張係数とした。線熱膨張がより低い材料は、回路板製造の加熱ベーキングプロセスで過度の変形を回避でき、生産ラインの歩留まりを高く維持することができる。
【0074】
誘電率(dielectric constant,Dk):
インピーダンスアナライザ(メーカー:Agilent、型番:HP4291)を使用して、10GHzの条件下で、IPC−TM−650−2.5.5.9標準方法を採用して測定を行った。
【0075】
誘電正接(dissipation factor,Df):
インピーダンスアナライザ(メーカー:Agilent、型番:HP4291)を使用して、10GHzの条件下で、IPC−TM−650−2.5.5.9標準方法を採用して測定を行った。
【0076】
高周波回路に対するニーズはつまり信号伝送の速度と品質に対するニーズであり、これら2つに影響する主な要因は伝送材料の電気特性、即ち材料の誘電率(Dk)と誘電正接(Df)である。以下の信号伝送の公式に基づいて説明される。
【0077】
【数1】
【0078】
αd:伝送損失(transmission loss)
εR:誘電率(Dk)
GHz:周波数(frequency)
tanδ:誘電正接(Df)
【0079】
上述の公式から分かるように、Dfの影響はDkより大きいため、Df値が低いほど、その伝送損失が小さくなり、その材料が高周波素子に適していることを表す。
【0080】
表1、表2から分かるように、本発明の実施例1〜9で使用した二無水物モノマーとジアミンモノマーのうち少なくとも1つが次の式1の構造を有する。
【0081】
【化4】
【0082】
XはSO2、C(CH32またはC(CF32であり、Yは酸素原子である。
【0083】
化学式1の構造を有するモノマーを使用して重合したポリイミド樹脂は、化学式2の構造により、巨大な空間障害物を形成し、分子鎖の回転を阻害する。
【0084】
【化5】
【0085】
さらに、化学式3の構造によりポリアミド酸溶液(ポリイミド樹脂前駆体)が形成するポリイミド高分子の規則配列レベルを高め、誘電正接がより低いポリイミド樹脂を得ることができる。
【0086】
【化6】
【0087】
実験結果によると、比較例2のポリイミドは化学式1の構造を有する二無水物/ジアミンモノマーを備えていないため、その形成するポリイミド薄膜は透明膜ではあるが、誘電正接(Df)が0.01より大きい。実施例1〜13を参照すると、比較例2の成分中に式1の構造を含むモノマーを加えると、その高分子のDfに比較的大きな変化があり(比較的低い誘電正接Dfを有する)、かつ製造されたポリイミド薄膜が透明膜を保持する。
【0088】
このほか、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物モノマー(6FDA)を導入する(かつその含有量を二無水物モノマー総モル数の30〜60%に限定する)と、フッ素原子の電子求引効果とトリフルオロメチルの基が形成する空間障害物により、薄膜の透明性と無色の特性を高めることができる。例えば、比較例3のポリイミド樹脂は6FDA二無水物を使用していないため、その色度値は4に達し、黄褐色を呈するため、無色透明の要求を満たすことができない。
【0089】
さらに異なるモノマーの占める割合のポリイミド樹脂特性に対する影響の分析では、比較例1と実施例2を比較すると、比較例1はより高割合のBPADA二無水物モノマーを使用しており、Df値は0.01より低いものの、熱特性が優れない(Tgが低めで、CTEが50ppm/kより大きい)。比較例3は特許文献1のモノマー配合割合を参考にして合成したもので、そのBPADAが占める割合も比較的高く、合成されたポリイミド樹脂は誘電性に優れているが、熱特性(TgとCTE)がやはり優れず、高温プロセスでの応用には不足し、かつ加熱ベーキングプロセス匂い手も変形の可能性が存在する。このほか、比較例3は色彩性質のb値が大きめで、薄膜が黄色っぽくなる。比較例4と実施例3を比較すると、6FDAの添加割合を増やすことで、明らかに薄膜の光学特性面の性能が向上されるが、ポリイミド樹脂薄膜の熱特性(TgとCTE)がやはり優れない。比較例5と実施例1を比較すると、6FDAの添加量を減少することで、薄膜の光学特性の性能が低下し、かつ薄膜が薄黄色を呈する。このため、本発明の実施例のように2種類以上の二無水物またはジアミンモノマーを混合し、式1の構造を有するモノマーを加え、かつその占める割合を制限することで、低いDf値、低いDk値、低いb*値、高いTg値、低いCTE値の間でバランスを見出し、電子素子基板(例えばフレキシブル回路板、ディスプレイデバイス用基板、タッチパネル用基板、透明アンテナ用基板、高周波伝送ケーブル用基板等)での応用に適したポリイミド樹脂を得ることができる。
【0090】
本発明について実施例を挙げて上述のとおり説明したが、これらの実施例は本発明を制限するために用いない。本発明が属する分野において通常の知識を有する者が、本発明の技術的要旨の範囲を逸脱せずに、これら実施例に対して同等効果の実施や変更を行うことは可能であり、このため本発明の保護範囲は後付の特許請求の範囲に準じる。
[付記事項]
[付記事項1]
無色透明のポリイミド樹脂であって、少なくとも2種類の二無水物モノマーと、少なくとも2種類のジアミンモノマーを共重合して成り、
前記二無水物モノマーのうちの1つが2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物であり、かつその含有量が前記二無水物モノマーの総モル数の30〜60%を占め、そのほかの二無水物モノマーが、4,4’−オキシジフタル酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)及び2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロイソプロピリデン二無水物で構成される群より選択され、
前記ジアミンモノマーが、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、m−トリジン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンで構成される群より選択され、
そのうち、前記二無水物モノマーと前記ジアミンモノマーのうち少なくとも1つのモノマーが式1の構造を有し、かつ式1の構造を有する前記モノマーの含有量が、二無水物またはジアミンの総モル数の10〜50%を占め、
【化7】
式1において、XはSO2、C(CH32またはC(CF32であり、Yは酸素原子であることを特徴とする、無色透明のポリイミド樹脂。
[付記事項2]
10GHzの誘電正接が0.01より小さく、波長550nm箇所の透過率が85%より高く、黄色度(b*)が3より低いことを特徴とする、付記事項1に記載の無色透明のポリイミド樹脂。
[付記事項3]
ガラス転移点が270℃より高く、線熱膨張係数が20〜50ppm/kの間であることを特徴とする、付記事項1に記載の無色透明のポリイミド樹脂。
[付記事項4]
無色透明のポリイミド樹脂の製造方法であって、
(a)溶媒を使用して少なくとも2種類の二無水物モノマーと少なくとも2種類のジアミンモノマーを溶解し、前記二無水物モノマーのうちの1つが2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物であり、かつその含有量が前記二無水物モノマーの総モル数の30〜60%を占め、そのほかの二無水物モノマーが、4,4’−オキシジフタル酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロイソプロピリデン二無水物で構成される群より選択され、前記ジアミンモノマーが、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、m−トリジン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンで構成される群より選択され、そのうち、前記二無水物モノマーと前記ジアミンモノマーのうち少なくとも1つのモノマーが式1の構造を有し、かつ式1の構造を有する前記モノマーの含有量が、二無水物またはジアミンの総モル数の10〜50%を占め、
【化8】
式1において、XはSO2、C(CH32またはC(CF32であり、Yは酸素原子である工程と、
(b)溶解した前記二無水物モノマーと、溶解した前記ジアミンモノマーを混合し、重合反応を行ってポリアミド酸樹脂を形成し、前記二無水物モノマーの総モル数と前記ジアミンモノマーの総モル数の比が0.85〜1.15である工程と、
(c)前記ポリアミド酸樹脂をイミド化して、前記無色透明のポリイミド樹脂を形成する工程と、
を含むことを特徴とする、無色透明のポリイミド樹脂の製造方法。
[付記事項5]
前記溶媒が非プロトン溶媒であることを特徴とする、付記事項4に記載の無色透明のポリイミド樹脂の製造方法。
[付記事項6]
前記溶媒が、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンで構成される群より選択されることを特徴とする、付記事項4に記載の無色透明のポリイミド樹脂の製造方法。
[付記事項7]
付記事項4に記載の製造方法で製造された無色透明のポリイミド樹脂であって、前記無色透明のポリイミド樹脂が、10GHzで0.01より小さい誘電正接を有し、波長550nm箇所の透過率が85%より高く、かつ黄色度(b*)が3より低いことを特徴とする、無色透明のポリイミド樹脂。
[付記事項8]
付記事項4に記載の製造方法で製造された無色透明のポリイミド樹脂であって、ガラス転移点が270℃より高く、かつ線熱膨張係数が20〜50ppm/kの間であることを特徴とする、無色透明のポリイミド樹脂。
[付記事項9]
付記事項1に記載の無色透明のポリイミド樹脂を含むことを特徴とする、薄膜。
[付記事項10]
付記事項9に記載の薄膜を含むことを特徴とする、フレキシブル回路板。
[付記事項11]
付記事項9に記載の薄膜を含むことを特徴とする、ディスプレイデバイス用基板。
[付記事項12]
付記事項9に記載の薄膜を含むことを特徴とする、タッチパネル用基板。
[付記事項13]
付記事項9に記載の薄膜を含むことを特徴とする、透明アンテナ用基板。
[付記事項14]
付記事項9に記載の薄膜を含むことを特徴とする、高周波伝送ケーブル用基板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6