【実施例】
【0044】
以下、複数の実施例を挙げて本発明の無色透明ポリアミド酸樹脂及びその製造方法について説明し、その特性を測定する。
【0045】
ポリアミド酸溶液(ポリイミド樹脂前駆体)の製造
【0046】
[実施例1]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.40g(0.012モル)の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、4.16g(0.008モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、7.1g(0.016モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と4.71g(0.016モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例1のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0047】
[実施例2]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.4g(0.012モル)の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、10.4g(0.02モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、5.33g(0.012モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と2.35g(0.008モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例2のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0048】
[実施例3]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.98g(0.012モル)の3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3−DDS)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、4.16g(0.008モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、10.66g(0.024モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と2.35g(0.008モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例3のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0049】
[実施例4]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.4g(0.012モル)の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、4.16g(0.008モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、7.1g(0.016モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と4.96g(0.016モル)の4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例4のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0050】
[実施例5]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.4g(0.012モル)の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、5.03g(0.008モル)の2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロイソプロピリデン二無水物(HFBPADA)、7.1g(0.016モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4.71g(0.016モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例5のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0051】
[実施例6]
6.4g(0.02モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、4.97g(0.02モル)の3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3−DDS)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、2.08g(0.004モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、8.88g(0.02モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA、4.7g(0.016モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例6のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0052】
[実施例7]
3.28g(0.008モル)の2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、7.69g(0.024モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、1.99g(0.08モル)の3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3−DDS)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、10.66g(0.024モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と4.7g(0.016モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例7のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0053】
[実施例8]
4.15g(0.008モル)の2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、7.69g(0.024モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、1.99g(0.08モル)の3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3−DDS)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、10.66g(0.024モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と4.7g(0.016モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例8のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0054】
[実施例9]
3.46g(0.008モル)のビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、7.69g(0.024モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、1.99g(0.08モル)の3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3−DDS)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、10.66g(0.024モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と4.7g(0.016モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例9のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0055】
[実施例10]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.98g(0.012モル)の3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3−DDS)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、4.16g(0.008モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、7.1g(0.016モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、5.73g(0.016モル)の3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例10のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0056】
[実施例11]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.54g(0.012モル)のm−トリジン(M−TOLIDINE)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、4.16g(0.008モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、7.1g(0.016モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4.71g(0.016モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例11のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0057】
[実施例12]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、4g(0.012モル)の2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BISAF)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、4.16g(0.008モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、7.1g(0.016モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4.71g(0.016モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例12のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0058】
[実施例13]
3.28g(0.008モル)の2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、7.69g(0.024モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、1.99g(0.08モル)の3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3−DDS)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、4.16g(0.008モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、7.1g(0.016モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4.71g(0.016モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、実施例13のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0059】
以下、さらに比較例1〜5を挙げる。
【0060】
[比較例1]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.4g(0.012モル)の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、12.49g(0.024モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、5.33g(0.012モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、1.18g(0.004モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、比較例1のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0061】
[比較例2]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.4g(0.012モル)の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、10.66g(0.024モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と4.7g(0.016モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、比較例2のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0062】
[比較例3]
12.81g(0.04モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、16.66g(0.032モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)と、2.35g(0.008モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、比較例3のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0063】
[比較例4]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.98g(0.012モル)の3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3−DDS)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、4.16g(0.008モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)と、14.21g(0.032モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、比較例4のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0064】
[比較例5]
8.97g(0.028モル)の2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2.40g(0.012モル)の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)及び100gのジメチルアセトアミド(DMAc)を三ツ口フラスコ内に入れる。30℃下で完全に溶解するまで撹拌した後、4.16g(0.008モル)の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、3.55g(0.008モル)の2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、7.06g(0.024モル)のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加え、続いて撹拌を継続し、25℃下で24時間反応させて、比較例5のポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0065】
ポリイミド樹脂の特性の測定
【0066】
上述の実施例及び比較例のポリアミド酸溶液の組成成分と割合を下の表1にまとめる。実施例1〜6及び10〜12は式1の構造を含む二無水物を使用、実施例7〜9は式1の構造を含むジアミンを使用しており、実施例13は式1の構造を含む二無水物とジアミンを同時に使用している。実施例1、5、7、8、9及び13のIRスペクトル測定を範例とし、結果を
図1から
図6に示す。このほか、実施例及び比較例のポリアミド酸溶液(ポリイミド樹脂前駆体)をイミド化してポリイミド薄膜を製造した後、その透過率、色彩性質、誘電率(Dk)、誘電正接(Df)、線熱膨張係数(CTE)及びガラス転移点(Tg)を測定した。データ測定結果を下の表2にまとめる。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
表2に示した各項の特性は、ポリアミド酸溶液で薄膜を製造した後、次の方法で測定されている。
【0070】
透過率(Transmittance,T%)
分光光度計(メーカー:Jasco、型番:V−530)を使用して550nmの波長下で厚み約20μmの薄膜の透過率を測定した。
【0071】
色彩性質
分光光度計を利用して約25℃の温度下で前記等ポリイミド膜の色彩性質を測定した。この色彩性質は「Lab色空間」中のb*値で表され、b*値の定義は青色から黄色までの間の色域である。b値が3より大きいと、薄膜は薄黄色を呈する。
【0072】
ガラス転移点(glass transition temperature,Tg):
SII Nano Technology製示差走査熱量測定装置(DSC−6220)を使用して測定した。窒素ガス環境下で、ポリイミド樹脂に以下の条件の熱履歴を受けさせた。熱履歴の条件は第1回昇温(昇温速度10℃/分)後、冷却(冷却速度30℃/分)、その後第2回昇温(昇温速度10℃/分)とした。本発明のガラス転移点は、第1次昇温、または第2次昇温で観測された値を読み取り、決定された。
【0073】
線熱膨張係数(Coefficient of thermal expansion,CTE):
熱機械分析により、負荷3g/膜厚20μm、昇温速度10℃/分で、試料の延伸から、50〜200℃範囲の平均値を計算し、線熱膨張係数とした。線熱膨張がより低い材料は、回路板製造の加熱ベーキングプロセスで過度の変形を回避でき、生産ラインの歩留まりを高く維持することができる。
【0074】
誘電率(dielectric constant,Dk):
インピーダンスアナライザ(メーカー:Agilent、型番:HP4291)を使用して、10GHzの条件下で、IPC−TM−650−2.5.5.9標準方法を採用して測定を行った。
【0075】
誘電正接(dissipation factor,Df):
インピーダンスアナライザ(メーカー:Agilent、型番:HP4291)を使用して、10GHzの条件下で、IPC−TM−650−2.5.5.9標準方法を採用して測定を行った。
【0076】
高周波回路に対するニーズはつまり信号伝送の速度と品質に対するニーズであり、これら2つに影響する主な要因は伝送材料の電気特性、即ち材料の誘電率(Dk)と誘電正接(Df)である。以下の信号伝送の公式に基づいて説明される。
【0077】
【数1】
【0078】
α
d:伝送損失(transmission loss)
ε
R:誘電率(Dk)
F
GHz:周波数(frequency)
tanδ:誘電正接(Df)
【0079】
上述の公式から分かるように、Dfの影響はDkより大きいため、Df値が低いほど、その伝送損失が小さくなり、その材料が高周波素子に適していることを表す。
【0080】
表1、表2から分かるように、本発明の実施例1〜9で使用した二無水物モノマーとジアミンモノマーのうち少なくとも1つが次の式1の構造を有する。
【0081】
【化4】
【0082】
XはSO
2、C(CH
3)
2またはC(CF
3)
2であり、Yは酸素原子である。
【0083】
化学式1の構造を有するモノマーを使用して重合したポリイミド樹脂は、化学式2の構造により、巨大な空間障害物を形成し、分子鎖の回転を阻害する。
【0084】
【化5】
【0085】
さらに、化学式3の構造によりポリアミド酸溶液(ポリイミド樹脂前駆体)が形成するポリイミド高分子の規則配列レベルを高め、誘電正接がより低いポリイミド樹脂を得ることができる。
【0086】
【化6】
【0087】
実験結果によると、比較例2のポリイミドは化学式1の構造を有する二無水物/ジアミンモノマーを備えていないため、その形成するポリイミド薄膜は透明膜ではあるが、誘電正接(Df)が0.01より大きい。実施例1〜13を参照すると、比較例2の成分中に式1の構造を含むモノマーを加えると、その高分子のDfに比較的大きな変化があり(比較的低い誘電正接Dfを有する)、かつ製造されたポリイミド薄膜が透明膜を保持する。
【0088】
このほか、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物モノマー(6FDA)を導入する(かつその含有量を二無水物モノマー総モル数の30〜60%に限定する)と、フッ素原子の電子求引効果とトリフルオロメチルの基が形成する空間障害物により、薄膜の透明性と無色の特性を高めることができる。例えば、比較例3のポリイミド樹脂は6FDA二無水物を使用していないため、その色度値は4に達し、黄褐色を呈するため、無色透明の要求を満たすことができない。
【0089】
さらに異なるモノマーの占める割合のポリイミド樹脂特性に対する影響の分析では、比較例1と実施例2を比較すると、比較例1はより高割合のBPADA二無水物モノマーを使用しており、Df値は0.01より低いものの、熱特性が優れない(Tgが低めで、CTEが50ppm/kより大きい)。比較例3は特許文献1のモノマー配合割合を参考にして合成したもので、そのBPADAが占める割合も比較的高く、合成されたポリイミド樹脂は誘電性に優れているが、熱特性(TgとCTE)がやはり優れず、高温プロセスでの応用には不足し、かつ加熱ベーキングプロセス匂い手も変形の可能性が存在する。このほか、比較例3は色彩性質のb値が大きめで、薄膜が黄色っぽくなる。比較例4と実施例3を比較すると、6FDAの添加割合を増やすことで、明らかに薄膜の光学特性面の性能が向上されるが、ポリイミド樹脂薄膜の熱特性(TgとCTE)がやはり優れない。比較例5と実施例1を比較すると、6FDAの添加量を減少することで、薄膜の光学特性の性能が低下し、かつ薄膜が薄黄色を呈する。このため、本発明の実施例のように2種類以上の二無水物またはジアミンモノマーを混合し、式1の構造を有するモノマーを加え、かつその占める割合を制限することで、低いDf値、低いDk値、低いb*値、高いTg値、低いCTE値の間でバランスを見出し、電子素子基板(例えばフレキシブル回路板、ディスプレイデバイス用基板、タッチパネル用基板、透明アンテナ用基板、高周波伝送ケーブル用基板等)での応用に適したポリイミド樹脂を得ることができる。
【0090】
本発明について実施例を挙げて上述のとおり説明したが、これらの実施例は本発明を制限するために用いない。本発明が属する分野において通常の知識を有する者が、本発明の技術的要旨の範囲を逸脱せずに、これら実施例に対して同等効果の実施や変更を行うことは可能であり、このため本発明の保護範囲は後付の特許請求の範囲に準じる。
[付記事項]
[付記事項1]
無色透明のポリイミド樹脂であって、少なくとも2種類の二無水物モノマーと、少なくとも2種類のジアミンモノマーを共重合して成り、
前記二無水物モノマーのうちの1つが2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物であり、かつその含有量が前記二無水物モノマーの総モル数の30〜60%を占め、そのほかの二無水物モノマーが、4,4’−オキシジフタル酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)及び2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロイソプロピリデン二無水物で構成される群より選択され、
前記ジアミンモノマーが、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、m−トリジン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンで構成される群より選択され、
そのうち、前記二無水物モノマーと前記ジアミンモノマーのうち少なくとも1つのモノマーが式1の構造を有し、かつ式1の構造を有する前記モノマーの含有量が、二無水物またはジアミンの総モル数の10〜50%を占め、
【化7】
式1において、XはSO
2、C(CH
3)
2またはC(CF
3)
2であり、Yは酸素原子であることを特徴とする、無色透明のポリイミド樹脂。
[付記事項2]
10GHzの誘電正接が0.01より小さく、波長550nm箇所の透過率が85%より高く、黄色度(b*)が3より低いことを特徴とする、付記事項1に記載の無色透明のポリイミド樹脂。
[付記事項3]
ガラス転移点が270℃より高く、線熱膨張係数が20〜50ppm/kの間であることを特徴とする、付記事項1に記載の無色透明のポリイミド樹脂。
[付記事項4]
無色透明のポリイミド樹脂の製造方法であって、
(a)溶媒を使用して少なくとも2種類の二無水物モノマーと少なくとも2種類のジアミンモノマーを溶解し、前記二無水物モノマーのうちの1つが2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物であり、かつその含有量が前記二無水物モノマーの総モル数の30〜60%を占め、そのほかの二無水物モノマーが、4,4’−オキシジフタル酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロイソプロピリデン二無水物で構成される群より選択され、前記ジアミンモノマーが、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、m−トリジン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンで構成される群より選択され、そのうち、前記二無水物モノマーと前記ジアミンモノマーのうち少なくとも1つのモノマーが式1の構造を有し、かつ式1の構造を有する前記モノマーの含有量が、二無水物またはジアミンの総モル数の10〜50%を占め、
【化8】
式1において、XはSO
2、C(CH
3)
2またはC(CF
3)
2であり、Yは酸素原子である工程と、
(b)溶解した前記二無水物モノマーと、溶解した前記ジアミンモノマーを混合し、重合反応を行ってポリアミド酸樹脂を形成し、前記二無水物モノマーの総モル数と前記ジアミンモノマーの総モル数の比が0.85〜1.15である工程と、
(c)前記ポリアミド酸樹脂をイミド化して、前記無色透明のポリイミド樹脂を形成する工程と、
を含むことを特徴とする、無色透明のポリイミド樹脂の製造方法。
[付記事項5]
前記溶媒が非プロトン溶媒であることを特徴とする、付記事項4に記載の無色透明のポリイミド樹脂の製造方法。
[付記事項6]
前記溶媒が、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンで構成される群より選択されることを特徴とする、付記事項4に記載の無色透明のポリイミド樹脂の製造方法。
[付記事項7]
付記事項4に記載の製造方法で製造された無色透明のポリイミド樹脂であって、前記無色透明のポリイミド樹脂が、10GHzで0.01より小さい誘電正接を有し、波長550nm箇所の透過率が85%より高く、かつ黄色度(b*)が3より低いことを特徴とする、無色透明のポリイミド樹脂。
[付記事項8]
付記事項4に記載の製造方法で製造された無色透明のポリイミド樹脂であって、ガラス転移点が270℃より高く、かつ線熱膨張係数が20〜50ppm/kの間であることを特徴とする、無色透明のポリイミド樹脂。
[付記事項9]
付記事項1に記載の無色透明のポリイミド樹脂を含むことを特徴とする、薄膜。
[付記事項10]
付記事項9に記載の薄膜を含むことを特徴とする、フレキシブル回路板。
[付記事項11]
付記事項9に記載の薄膜を含むことを特徴とする、ディスプレイデバイス用基板。
[付記事項12]
付記事項9に記載の薄膜を含むことを特徴とする、タッチパネル用基板。
[付記事項13]
付記事項9に記載の薄膜を含むことを特徴とする、透明アンテナ用基板。
[付記事項14]
付記事項9に記載の薄膜を含むことを特徴とする、高周波伝送ケーブル用基板。