特許第6694099号(P6694099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6694099感光性組成物の製造方法、ペースト状の感光性組成物、電子部品の製造方法および電子部品、ならびに感光性組成物中の有機成分の配合比決定装置、コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6694099
(24)【登録日】2020年4月20日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】感光性組成物の製造方法、ペースト状の感光性組成物、電子部品の製造方法および電子部品、ならびに感光性組成物中の有機成分の配合比決定装置、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/38 20060101AFI20200427BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20200427BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20200427BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20200427BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
   G03F7/38 501
   G03F7/40 521
   H01B13/00 Z
   H01B1/00 D
   H01B1/22 A
   H01B13/00 503D
【請求項の数】14
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2019-128628(P2019-128628)
(22)【出願日】2019年7月10日
【審査請求日】2019年7月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐合 佑一朗
(72)【発明者】
【氏名】長江 省吾
【審査官】 塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/118875(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00 − 7/40
H01B 1/00
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた配合比で導電性粉末を含む感光性組成物を製造する方法であって、
使用する導電性粉末の粒径を測定して、実測値を得る工程;
前記実測値を、予め用意された第1相関式であって、前記導電性粉末の粒径と、導電膜の光吸収または光硬化に起因して変動する因子であって前記粒径の変位に相関して変動する何れかの因子との第1相関式と対比して、予め定められた目標レベルに対する前記因子の予想ズレ値を確認する工程;
め用意された第2相関式であって、前記第1相関式における因子と、前記感光性組成物に含まれる有機成分であって配合比の変動が前記因子の変動に相関する何れかの有機成分との第2相関式に基づいて、前記予想ズレ値を打ち消すように前記有機成分の配合比を決定する工程;
を包含する、感光性組成物の製造方法。
【請求項2】
前記有機成分が、前記感光性組成物の光吸収性および光重合性のうちの少なくとも1つを調整する有機成分である、
請求項1に記載の感光性組成物の製造方法。
【請求項3】
前記有機成分が、光重合開始剤系、光吸収剤、および重合禁止剤のうちの少なくとも1つである、
請求項2に記載の感光性組成物の製造方法。
【請求項4】
前記有機成分が、光重合開始剤系である、
請求項3に記載の感光性組成物の製造方法。
【請求項5】
前記第1相関式における因子が、導電膜の線幅、膜厚、電極断面積、硬化収縮率、または抵抗値である、
請求項1〜4の何れか一つに記載の感光性組成物の製造方法。
【請求項6】
前記第1相関式における因子が、線幅である
請求項1〜5の何れか一つに記載の感光性組成物の製造方法。
【請求項7】
前記第2相関式が、一次関数で示される、
請求項1〜6の何れか一つに記載の感光性組成物の製造方法。
【請求項8】
前記導電性粉末が、銀系粒子を含む、
請求項1〜7の何れか一つに記載の感光性組成物の製造方法。
【請求項9】
前記導電性粉末が、コアとなる金属材料と前記コアの表面の少なくとも一部を被覆するセラミック材料とを含んだコアシェル粒子を含む、
請求項1〜8の何れか一つに記載の感光性組成物の製造方法。
【請求項10】
前記感光性組成物は、電極を形成する用途に用いられる、
請求項1〜9の何れか一つに記載の感光性組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一つに記載の製造方法によって得られた感光性組成物を基材上に付与して、光硬化およびエッチングを行った後、焼成して、前記感光性組成物の焼成体からなる導電層を形成する工程、をさらに含む、電子部品の製造方法。
【請求項12】
予め定められた配合比で導電性粉末を含む感光性組成物に対する有機成分の配合比を決定する配合比決定装置であって、
利用者の入力を受け付けて、使用する導電性粉末の種類と粒径の実測値とが入力される入力部と、
め用意された第1相関式であって、前記導電性粉末の粒径と、導電膜の光吸収または光硬化に起因して変動する因子であって前記粒径の変位に相関して変動する何れかの因子との第1相関式、および、予め用意された第2相関式であって、前記第1相関式における因子と、前記感光性組成物に含まれる有機成分であって配合比の変動が前記因子の変動に相関する何れかの有機成分との第2相関式を記憶する記憶部と、
前記第1相関式に基づいて、前記入力部に入力された前記実測値から、予め定められた目標レベルに対する前記第1相関式における因子の予想ズレ値を算出する第1算出部と、
前記第2相関式に基づいて、前記予想ズレ値を打ち消す前記第2相関式における有機成分の配合比を算出する第2算出部と、
を包含する、配合比決定装置。
【請求項13】
前記第1相関式における因子が、導電膜の線幅、膜厚、電極断面積、硬化収縮率、または抵抗値である、
請求項12に記載の配合比決定装置。
【請求項14】
コンピュータを、請求項12または13に記載の配合比決定装置として動作させるように構成されている、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物の製造方法、ペースト状の感光性組成物、電子部品の製造方法および電子部品、ならびに感光性組成物中の有機成分の配合比決定装置、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インダクタ等の電子部品の製造では、導電性粉末と光重合性樹脂と光重合開始剤とを含む感光性組成物を用いて、フォトリソグラフィ法により基材上に導電層を形成する手法が知られている(例えば特許文献1、2参照)。かかる方法では、まず、基材上に感光性組成物を付与し、乾燥させて、導電膜を成形する(導電膜の成形工程)。次に、上記成形した導電膜に所定の開口パターンを有するフォトマスクを被せ、フォトマスクを介して導電膜を露光する(露光工程)。これによって、導電膜の露光部分を光硬化させる。次に、フォトマスクで遮光されていた未露光部分を、現像液で腐食して除去する(現像工程)。そして、所望のパターンとなった導電膜を焼成することで基材に焼き付ける(焼成工程)。以上のような工程を含むフォトリソグラフィ法によれば、従来の各種印刷法に比べて精細な導電層を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5163687号
【特許文献2】国際公開2015/122345号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年、各種電子機器の小型化や高性能化が急速に進み、電子機器に実装される電子部品に対しても一層の小型化や高密度化が求められている。これに伴い、積層チップインダクタ等の電子部品の製造にあたっては、導電層の低抵抗化と共に、細線化(狭小化)が求められている。より具体的には、導電層を構成する配線の線幅と隣り合う配線間のスペース(ラインアンドスペース:L/S)を、30μm/30μm以下、さらには20μm/20μm以下にまで微細化することが求められている。導電層のL/Sが小さいと、配線の線幅が僅かに太くなっただけで隣り合う配線同士がつながってショート不良を生じたり、逆に配線の線幅が僅かに細くなっただけで剥離や断線を生じたりしやすくなる。このため、例えば積層チップインダクタ等の電子部品では、線幅のバラつきが大きいと製品特性に悪影響が出たり、歩留まりが低くなったりしうる。したがって、量産化の観点からは、現像後の導電膜の線幅のバラつきを低く抑えることで、焼成後の導電層の線幅のバラつきを抑え、電子部品における細線状の配線を再現性良く形成することが必要となる。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、所望の線幅で細線状の配線を再現性良く形成することができる感光性組成物を提供することである。また、関連する他の目的は、電子部品の製造方法および電子部品を提供することである。また、関連する他の目的は、感光性組成物中の有機成分の配合比決定装置およびコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが感光性組成物の各成分について鋭意検討を重ねたところ、新たに、導電性粉末の粒径が現像後の線幅を決定する1つの重要なファクターとなっていることが判明した。すなわち、図1(A)は、粒径が相対的に大きい導電性粉末1Aを用いた場合の露光工程の様子を表す模式的な側面図である。図1(A)に示すように、導電性粉末1Aの粒径が大きいと、フォトマスクの開口から導電膜の内部に侵入した光が導電性粉末1Aの表面で反射し、光散乱しやすい。このため、光が導電膜の水平方向に広がりやすくなる。その結果、フォトマスクの開口の周辺(フォトマスクで遮光した部分)にも光が届いてしまい、線幅がフォトマスクの開口の幅よりも太めになりやすい。これに対して、図1(B)は、粒径が相対的に小さい導電性粉末1Bを用いた場合の露光工程の様子を表す模式的な側面図である。図1(B)に示すように、導電性粉末1Bの粒径が小さいと、フォトマスクの開口から導電膜の内部に侵入した光が導電性粉末1Bの表面で反射されにくく、光の散乱が抑えられる。このため、光が導電膜の水平方向に広がりにくく、図1(A)に比べて線幅が相対的に細くなりやすい。このことから、線幅を安定させるためには、使用する導電性粉末の粒径を高度に管理することが望ましいといえる。
【0007】
しかしながら、本発明者らの調査によれば、導電性粉末は、製造ロット(製品単位)が異なると多少なりとも粒径が変動する。例えば本発明者らが平均粒径(公称値)2.9μmのいくつかの製造ロットの導電性粉末を購入して実際に平均粒径を測定したところ、平均粒径(実測値)が公称値から±0.4μm程度変動していた。この変動は、製造工程でのバラつき等に起因するものと考えられる。したがって、このままでは導電性粉末の平均粒径(実測値)の変動により、線幅にバラつきが生じることが予想された。そこで本発明者らは、導電性粉末の製造ロット間の変動によって生じうる線幅のバラつきを、感光性組成物の製造時に緩衝できないかと考えた。そして、更なる検討を重ねた結果、本発明を創出するに至った。
【0008】
本発明により、予め定められた配合比で導電性粉末を含む感光性組成物を製造する方法が提供される。この製造方法は、使用する導電性粉末の粒径を測定して、実測値を得る工程;上記実測値を、上記使用する導電性粉末の種類に応じて予め用意された第1相関式と対比して、予め定められた目標レベルに対する予想ズレ値を確認する工程;上記使用する導電性粉末の種類に応じて予め用意された第2相関式に基づいて、上記予想ズレ値を打ち消すように有機成分の配合比を決定する工程;を包含する。
【0009】
上記製造方法では、感光性組成物の製造に使用する導電性粉末の粒径を事前に測定し、目標レベルに対する予想ズレ値をシミュレーションする。そして、シミュレーションの結果に基づいて予想ズレ値を打ち消すように有機成分の配合比を決定する。このことにより、導電性粉末の製造ロット間の変動による影響が小さくなり、導電性粉末の製造ロットの違いによって生じる線幅のバラつきを抑えることができる。したがって、導電性粉末の粒径をそれほど高度に管理する必要もなく、例えば購入する導電性粉末の生産ロットが途中で切り替わっても、所望の線幅を安定的に形成することが可能な感光性組成物を提供することができる。これにより、歩留まりを向上し量産性や生産性を向上することができる。
【0010】
ここで開示される好ましい一態様では、上記有機成分が、上記感光性組成物の光吸収性および光重合性のうちの少なくとも1つを調整する有機成分である。上記有機成分は、光重合開始剤系、光吸収剤、および重合禁止剤のうちの少なくとも1つであってもよい。上記有機成分は、光重合開始剤系であってもよい。このことにより、例えば感光性組成物中の光硬化成分(重合反応して硬化する成分。例えば光硬化性化合物。)の配合比を安定させることができ、導電膜の諸特性、例えば基材に対するタック性等を総じて高く維持したまま、ここに開示される技術の効果を奏することができる。
【0011】
上記第1相関式は、例えば、線幅と、上記導電性粉末の上記実測値との相関式で示される。上記第2相関式は、例えば、線幅と、上記有機成分の配合比との相関式で示される。上記第2相関式は、一次関数で示されるとよい。一次関数では2つの変数が比例関係にあるので、配合比の算出をシンプルかつ容易に行うことができる。
【0012】
ここで開示される好ましい一態様では、上記導電性粉末が、銀系粒子を含む。このことにより、コストと低抵抗とのバランスに優れた導電層を実現することができる。
【0013】
ここで開示される好ましい一態様では、上記第1導電性粉末が、コアとなる金属材料と上記コアの表面の少なくとも一部を被覆するセラミック材料とを含んだコアシェル粒子である。このことにより、感光性組成物中での導電性粉末の安定性をより良く向上すると共に、高耐久性な導電層を実現することができる。また、例えばセラミック製の基材(セラミック基材)上に導電層を形成してセラミック電子部品を製造する用途では、セラミック基材との一体性を高めることができる。
【0014】
また、本発明により、上記感光性組成物を基材上に付与して、光硬化およびエッチングを行った後、焼成して、上記感光性組成物の焼成体からなる導電層を形成する工程を含む、電子部品の製造方法が提供される。このような製造方法によれば、小型および/または高密度な導電層を備えた電子部品を好適に製造することができる。
【0015】
また、本発明により、予め定められた配合比で導電性粉末を含む感光性組成物に対する有機成分の配合比を決定する配合比決定装置が提供される。この配合比決定装置は、利用者の入力を受け付けて、使用する導電性粉末の種類と粒径の実測値とが入力される入力部と、上記使用する導電性粉末の種類に応じて予め用意された第1相関式および第2相関式を記憶する記憶部と、上記第1相関式に基づいて、上記入力部に入力された上記実測値から、予め定められた目標レベルに対する予想ズレ値を算出する算出部と、上記第2相関式に基づいて、上記予想ズレ値を打ち消す有機成分の配合比を算出する第2算出部と、を包含する。また、本発明により、コンピュータを、上記配合比決定装置として動作させるように構成されている、コンピュータプログラムが提供される。これにより、計算ミスを防止して、例えば作業に習熟していない作業者であっても、容易に有機成分の配合比を決定することができる。
【0016】
また、本発明により、上記感光性組成物の焼成体からなる導電層を備える、電子部品が提供される。上記感光性組成物によれば、細線状の配線を備えた導電層であっても安定して実現することができる。このため、上記感光性組成物によれば、小型および/または高密度な導電層を備えた電子部品を好適に実現することができる。
【0017】
また、本発明により、上記感光性組成物が有機系分散媒を含む、ペースト状の感光性組成物が提供される。ペースト状に調製することで、例えば塗布や印刷等の手段により、基材の所望の位置に所望の形態で上記感光性組成物を簡便に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】導電膜の模式的な側面図であり、(A)は、平均粒径が大きい導電性粉末を用いた場合、(B)は、平均粒径が大きい導電性粉末を用いた場合の側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る製造方法のフローチャートである。
図3】積層チップインダクタの構造を模式的に示す断面図である。
図4】配合比決定装置の機能ブロック図である。
図5】実施例1に係る第1相関式の一例である。
図6】光重合開始剤系に係る第2相関式の一例である。
図7】実線幅を比較したグラフである。
図8】実施例2に係る第1相関式の一例である。
図9】実施例2に係る第1相関式の一例である。
図10】紫外線吸収剤に係る第2相関式の一例である。
図11】光重合禁止剤に係る第2相関式の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、導電膜や導電層の形成方法、電子部品の製造方法等)は、本明細書により教示されている技術内容と、当該分野における当業者の一般的な技術常識とに基づいて理解することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0020】
なお、本明細書において「導電膜」とは、感光性組成物を有機成分の沸点以下の温度(概ね200℃以下、例えば100℃以下)で乾燥させた膜状体(乾燥物)をいう。導電膜は、未焼成(焼成前)の膜状体全般を包含する。導電膜は、光硬化前の未硬化物であってもよく、光硬化後の硬化物であってもよい。また、本明細書において「導電層」とは、感光性組成物を導電性粉末の焼結温度以上で焼成した焼結体(焼成物)をいう。導電層は、配線(線状体)、配線パターン、ベタパターン、を包含する。また、本明細書において範囲を示す「A〜B」の表記は、A以上B以下の意と共に、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。
【0021】
≪感光性組成物の製造方法≫
本実施形態では、特に要求特性として線幅が重要であるという背景から、目標レベルの因子を線幅とした(線幅を対象とした)製造方法を説明する。すなわち、本実施形態において、予め定められた目標レベルは「目標線幅」で表され、予想ズレ値は「予想ズレ幅」で表される。ただし、後述するように、目標レベルの因子は、導電膜の光吸収度や光硬化度に起因するものであればよく、線幅に限定されるものではない。
【0022】
図2は、本実施形態に係る製造方法のフローチャートである。ここに開示される製造方法は、予め定められた配合比で導電性粉末を含む感光性組成物を製造する方法である。本実施形態において、かかる製造方法は、次のステップ:(ステップS1)平均粒径の測定工程;(ステップS2)予想ズレ幅の確認工程;(ステップS3)有機成分の配合比決定工程;(ステップS4)感光性組成物の調製工程;を包含する。以下、各工程について順に説明する。
【0023】
<(ステップS1)平均粒径の測定工程>
本工程では、まず、感光性組成物の製造に使用する導電性粉末を用意する。導電性粉末は、導電層に電気伝導性を付与する成分である。導電性粉末は、市販品を購入してもよく、従来公知の方法で自ら作製してもよい。導電性粉末の種類は特に限定されず、従来公知のものの中から、例えば用途等に応じて、1種類を単独で、または2種類以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0024】
導電性粉末としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)等の金属の単体、およびこれらの混合物や合金等が挙げられる。合金としては、例えば、銀−パラジウム(Ag−Pd)、銀−白金(Ag−Pt)、銀−銅(Ag−Cu)等の銀合金が挙げられる。好適な一態様では、導電性粉末が銀系粒子を含んでいる。銀は比較的コストが安く、かつ電気伝導度が高い。このため、導電性粉末が銀系粒子を含むことでコストと低抵抗とのバランスに優れた導電層を実現することができる。なお、本明細書において「銀系粒子」とは、銀成分を含むもの全般を包含する。銀系粒子の一例として、銀の単体、上記した銀合金、銀系粒子をコアとするコアシェル粒子、例えば銀−セラミックのコアシェル粒子等が挙げられる。
【0025】
導電性粉末は、その表面に有機表面処理剤が付着していてもよい。有機表面処理剤は、例えば、感光性組成物中における導電性粉末の分散性を向上する、導電性粉末と他の含有成分との親和性を高める、導電性粉末を構成する金属の表面酸化を防止する、のうちの少なくとも1つの目的で使用されうる。有機表面処理剤としては、例えば、カルボン酸等の脂肪酸、ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられる。
【0026】
好適な一態様では、導電性粉末が、金属−セラミックのコアシェル粒子を含んでいる。金属−セラミックのコアシェル粒子は、金属材料を含むコア部と、セラミック材料を含み、コア部の表面の少なくとも一部を被覆する被覆部と、を有する。被覆部は、典型的には複数の微細なセラミック粒子を含んで構成されている。被覆部を構成するセラミック粒子の平均粒径は、典型的にはコア部を構成する金属材料の平均粒径よりも小さく、例えば金属材料の平均粒径の1/1000〜1/2、さらには1/100〜1/10程度であってもよい。セラミック材料は、化学的安定性や耐熱性、耐久性に優れる。このため、金属−セラミックのコアシェル粒子の形態を採用することにより、感光性組成物中での導電性粉末の安定性をより良く向上すると共に、高耐久性な導電層を実現することができる。また、例えばセラミック製の基材上に導電層を形成してセラミック電子部品を製造する用途では、セラミック基材との一体性を高めることができ、焼成後の導電層の剥離や断線を好適に抑えることができる。
【0027】
特に限定されるものではないが、コアシェル粒子の被覆部を構成するセラミック材料としては、例えば、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン(チタニア)、酸化セリウム(セリア)、酸化イットリウム(イットリア)、チタン酸バリウム等の酸化物系材料;コーディエライト、ムライト、フォルステライト、ステアタイト、サイアロン、ジルコン、フェライト等の複合酸化物系材料;窒化ケイ素(シリコンナイトライド)、窒化アルミニウム(アルミナイトライド)等の窒化物系材料;炭化ケイ素(シリコンカーバイド)等の炭化物系材料;ハイドロキシアパタイト等の水酸化物系材料;等が挙げられる。例えばセラミック製の基材上に導電層を形成して、セラミック電子部品を製造する用途では、セラミック基材と同じあるいは親和性に優れたセラミック材料が好ましい。特に限定されるものではないが、コアシェル粒子におけるセラミック材料の含有比率は、例えばコア部の金属材料100質量部に対して0.01〜5.0質量部であってもよい。
【0028】
特に限定されるものではないが、市販の導電性粉末を使用する場合は、露光性能(例えば光吸収度や光硬化度)との兼ね合いから、導電性粉末の平均粒径(公称値)が、概ね0.1〜10μmであってもよい。平均粒径(公称値)を上記範囲とすることで、細線状の配線を一層安定的に形成することができる。感光性組成物中での凝集を抑制して感光性組成物の保存安定性を向上する観点からは、導電性粉末の平均粒径(公称値、例えば、レーザー回折・散乱法の測定やSEM観察等に基づく値)が、例えば、0.5μm以上、1μm以上、1.5μm以上、2μm以上であってもよい。また、細線形成性を向上したり、導電層の緻密化や低抵抗化を進めたりする観点からは、導電性粉末の平均粒径(公称値)が、例えば、5μm以下、4.5μm以下、4μm以下であってもよい。
【0029】
特に限定されるものではないが、導電性粉末は、典型的には、平均アスペクト比が概ね1〜2の略球状、好ましくは1〜1.5、例えば1〜1.3の球状である。このことにより、露光性能をより安定的に実現することができる。なお、本明細書において「平均アスペクト比」とは、導電性粉末を構成する複数の導電性粒子を電子顕微鏡で観察し、得られた観察画像から算出されるアスペクト比の算術平均値(長径/短径比)をいう。また、本明細書において「球状」とは、全体として概ね球体(ボール)と見なせる形態であることを示し、楕円状、多角体状、円盤球状等をも含みうる。
【0030】
特に限定されるものではないが、導電性粉末は、JIS Z 8781:2013年に基づくL表色系において、明度Lが50以上であるとよい。このことにより、露光時に未硬化の導電膜の深部にまで安定して光が届くようになり、例えば、膜厚が5μm以上、さらには10μm以上のような厚めの導電層をも安定的に形成することができる。上記観点からは、導電性粉末の明度Lが、概ね55以上、例えば60以上であってもよい。なお、明度Lの測定は、例えばJIS Z 8722:2009年に準拠する分光測色計で行うことができる。
【0031】
本工程では、次に、使用する導電性粉末の平均粒径を実測する。平均粒径の測定方法、測定装置および測定条件ならびに測定結果の解析条件は、後述する第1相関式の算出時と統一するとよい。これにより、後の予想ズレ幅の確認工程(ステップS2)における予想精度を向上することができる。一例では、レーザー回折・散乱法に基づく粒度分布測定装置を用いて粒度分布測定を行う。例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製のマイクロトラックMT−3000IIシリーズを用いることにより、概ね0.02〜2800μmの粒径範囲を測定することができる。粒度分布測定により、導電性粉末の体積基準の粒度分布が得られる。そして、粒度分布において、粒径の小さい側から積算値50%に相当する粒径(D50粒径)を「平均粒径(実測値)」とする。以上のようにして、感光性組成物の製造に使用する導電性粉末の平均粒径(実測値)を取得する。
【0032】
<(ステップS2)予想ズレ幅の確認工程>
本工程では、まず、第1相関式を用意する。第1相関式は、導電性粉末の種類ごと(例えば製品名ごと)に予め用意されている。第1相関式は、相関係数Rが概ね0.85以上、好ましくは0.9以上、例えば0.92以上であるとよい。第1相関式は、例えば次のようにして用意することができる。
【0033】
すなわち、まず製造ロットおよび/または平均粒径(公称値)の異なる複数の導電性粉末を用意する。このとき、複数の導電性粉末の粒径以外の物性、例えば、露光性能(例えば光吸収度や光硬化度)に比較的な大きな影響を与えうる導電性粉末の金属種、平均アスペクト比、明度L等については条件を統一(略同じく)することで、粒径以外のバイアスを取り除いて、粒径そのものの影響をクリアに評価することができる。次に、用意した複数の導電性粉末の平均粒径をそれぞれ個別に実測する。平均粒径の測定は、従来公知の測定方法で行うことができる。例えば、レーザー回折・散乱法に基づく粒度分布測定装置を用いて行うことができる。
【0034】
次に、平均粒径を実測した複数の導電性粉末を用いて、それぞれ感光性組成物を調製する。例えば、まず有機成分を含む所定のベヒクルを調製し、そこに導電性粉末を分散させて、感光性組成物を調製する。これにより、導電性粉末以外の成分とその配合比が統一され、導電性粉末の種類のみが異なる複数の感光性組成物を調製する。次に、調製した感光性組成物をそれぞれ基材上に付与して、光硬化およびエッチングを行う。これにより、細線状の配線を形成する。
【0035】
次に、基材上の配線を観察し、得られた観察画像から配線の線幅を計測する。配線の観察には、例えばレーザー顕微鏡を用いることができる。このとき、線幅の計測は複数視野について行い、その算術平均値を実線幅(実際の線幅)とする。そして、例えば、横軸Xに導電性粉末の平均粒径(実測値)をとり縦軸Yに実線幅をとった「平均粒径(実測値)X−実線幅Y」のグラフにデータをプロットする。このグラフから、平均粒径(実測値)と実線幅との相関式を算出する。このようにして、第1相関式を用意する。
【0036】
本工程では、次に、ステップS1で得られた実測値を、同じ種類の導電性粉末に係る第1相関式と対比する。そして、予め定められた目標線幅に対して想定されるズレ幅(予想ズレ幅)を確認する。例えばまず、ステップS1で得られた実測値を、平均粒径(実測値)と実線幅との相関式に内挿して、予想される線幅を算出する。そして、予想される線幅と所望の目標線幅との差分を予想ズレ幅として算出する。なお、目標線幅は任意に設定することができる。このようにして、予想ズレ幅を確認する。
【0037】
<(ステップS3)有機成分の配合比決定工程>
本工程では、まず、第2相関式を用意する。第2相関式は、導電性粉末の種類ごと(例えば製品名ごと)に予め用意されている。第2相関式は、相関係数Rが概ね0.85以上、好ましくは0.9以上、例えば0.92以上であるとよい。第2相関式は、一次関数で示されているとよい。一次関数では2つの変数が比例関係にある。このため、配合比の算出をシンプルかつ容易に行うことができる。第2相関式は、例えば次のようにして用意することができる。すなわち、まず感光性組成物の製造に使用する有機成分のうちの少なくとも1つを用意する。例えば、第1相関式の算出時に用いたベヒクルに含まれる有機成分のうちの少なくとも1つを用意する。用意する有機成分は、1種類であってもよいし、例えば2種類以上であってもよい。
【0038】
特に限定されるものではないが、このとき用意する有機成分は、感光性組成物の硬化速度に影響を与える成分、例えば有機バインダおよび光硬化性化合物以外の、感光性組成物の光吸収性および光重合性のうちの少なくとも1つを調整する有機成分(硬化速度調整剤)を含むとよい。用意する有機成分は、例えば、(A)光重合開始剤、(B)増感剤、(C)光吸収剤、および(D)重合禁止剤のうちの少なくとも1つを含むとよい。なかでも、重合開始剤系、すなわち(A)光重合開始剤および(B)増感剤のうちの少なくとも1つを含むとよい。用意する有機成分は、例えば(A)〜(D)の成分うち、ベヒクル中で最も配合比の高い第1成分であってもよく、2番目に配合比の高い第2成分をさらに含んでもよい。
【0039】
(A)光重合開始剤は、光照射によって分解し、ラジカルや陽イオン等の活性種を発生させて光硬化成分の重合反応を進行させる成分である。光重合開始剤は、感光性組成物の光重合性を調整する(詳しくは重合反応を加速する)成分である。光重合開始剤としては、従来公知のものの中から、例えば光硬化成分の種類等に応じて、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であってもよく、光カチオン重合開始剤であってもよく、光アニオン重合開始剤であってもよい。特に、反応速度が速いことや熱による硬化が不要なことから、光ラジカル重合開始剤が好ましい。典型例として、ベンゾイン系光重合開始剤、α−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤、α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、ベンジルケタール系光重合開始剤、α−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤、α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、0−アシルオキシム系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤等が挙げられる。
【0040】
(B)増感剤(促進剤、反応促進剤等ともいう。)は、光を吸収して得たエネルギーを光硬化成分に伝えて、光硬化成分の重合反応を促進させる成分である。増感剤は、感光性組成物の光重合性を調整する(詳しくは重合反応を加速する)成分である。増感剤としては、従来公知のものの中から、例えば照射する光の波長等に応じて、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。典型例として、アントラセン系増感剤、芳香族ケトン系増感剤、ビフェニル系増感剤、アントラキノン系増感剤等が挙げられる。
【0041】
(C)光吸収剤(着色剤、有機顔料等ともいう。)は、感光性組成物の光吸収性を調整する成分である。光吸収剤は、典型的には感光性組成物の色みを変化させて、光の侵入率を調整する成分である。光吸収剤は、紫外線の波長の光を一部または全部吸収する紫外線吸収剤であってもよく、赤外線の波長の光を一部または全部吸収する赤外線吸収剤であってもよく、可視光の波長の光を一部または全部吸収する可視光吸収剤(例えば黒色剤)であってもよい。光吸収剤としては、従来公知のものの中から、例えば照射する光の波長範囲等に応じて、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。典型例として、ベンゾトリアゾール系光吸収剤、トリアジン系光吸収剤、ベンゾフェノン系光吸収剤、ベンゾエート系光吸収剤、サリチル酸エステル系光吸収剤、シアノアクリレート系光吸収剤、レゾルシノール系光吸収剤、ヒンダードアミン系光吸収剤等が挙げられる。
【0042】
特に紫外線吸収剤は、紫外線露光を行うに当たり、フォトマスクの開口から導電膜の内部に侵入した光が散乱し、フォトマスクの遮光部分を硬化させ、線幅がフォトマスクの開口幅より太めになる現象を低減させる効果がある。
【0043】
紫外線吸収剤としては250〜520nmの波長範囲で高い吸収係数を有するものが好ましく、なかでも350〜450nmの波長範囲で高い吸収係数を有する有機染料が好ましい。有機染料としてアゾ系、ベンゾフェノン系、アミノケトン系、キサンテン系、キノリン系、アミノケトン系、アントラキノン系、ジフェニルシアノアクリレート系、トリアジン系、p−アミノ安息香酸系等が挙げられる。なかでもアゾ系およびベンゾフェノン系の有機染料が好ましい。
【0044】
アゾ系有機染料としては、例えば、スダンブルー、スダンR、スダンII、スダンIII、スダンIV、オイルオレンジSS、オイルバイオレット、オイルイエローOB等が挙げられる。ベンゾフェノン系有機染料としては、例えば、BASF社製のユビナール(登録商標)D−50(2,2’,4,4’−テトラハイドロオキシベンゾフェノン)、ユビナール(登録商標)MS40(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン5−スルフォン酸)、ユビナール(登録商標)DS49(2,2−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン−5,5’−ジスルフォン酸ナトリウム)等が挙げられる。
【0045】
(D)重合禁止剤(禁止剤、光安定剤、安定化剤、ラジカル捕捉剤、酸素捕捉剤等ともいう。)は、光硬化成分の重合反応を阻害して、感光性組成物の耐候性、耐熱性および保存安定性のうちの少なくとも1つを向上する成分である。重合禁止剤は、感光性組成物の光重合性を調整する(詳しくは重合反応を減速する)成分である。重合禁止剤としては、従来公知のものの中から、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。典型例として、ヒドロキノンおよびその誘導体や、フェノール誘導体が挙げられる。
【0046】
次に、所定の導電性粉末を用いて、用意した有機成分の配合比を段階的に変更して、複数の感光性組成物を調製する。次に、第1相関式の算出時と同様に、調製した感光性組成物をそれぞれ基材上に付与して、光硬化およびエッチングを行う。これにより、細線状の配線を形成する。次に、基材上の配線をレーザー顕微鏡で観察し、得られた観察画像から配線の線幅を計測する。このとき、線幅の計測は複数視野について行い、その算術平均値を実線幅(実際の線幅)とする。そして、例えば、横軸Xに感光性組成物中の有機成分の配合比をとり縦軸Yに実線幅をとった「有機成分の配合比X−実線幅Y」のグラフにデータをプロットする。このグラフから、有機成分の配合比と実線幅との相関式を算出する。このようにして、第2相関式を用意する。
【0047】
本工程では、次に、第2相関式を用いて、ステップS2で確認された予想ズレ幅を打ち消すように感光性組成物における有機成分の配合比を決定する。言い換えれば、目標線幅に誘導するように、感光性組成物における有機成分の配合比を決定する。一例では、第1相関式の算出時に用いたベヒクルの配合をベースとする。そして、第2相関式を算出済みの有機成分のうちの少なくとも1つについて、ベースとなるベヒクルから配合比を変更する。このことにより、ステップS2で確認された予想ズレ幅がキャンセルされうる。なお、配合比を変更しない有機成分については、ベースとなるベヒクルと同じであってよい。配合比を変更する有機成分は、1種類であってもよいし、例えば予想ズレ幅が大きい場合等には、2種類以上の有機成分の配合比をそれぞれ少しずつ変更することにより、全体として予想ズレ幅を打ち消すようにしてもよい。
【0048】
例えば重合開始剤系を用いて予想ズレ幅を打ち消す場合は、まず第2相関式として、重合開始剤系の配合比と実線幅との相関式を用意する。例えば、光重合開始剤の配合比と実線幅との相関式、および、増感剤の配合比と実線幅との相関式の2つを用意する。この相関式において、重合開始剤系の配合比と実線幅とが正の相関を有すると仮定する。この場合、予想される線幅が目標線幅よりも大きければ、相関式に基づいて、ベースとなるベヒクルの配合から、予想ズレ幅を打ち消すように重合開始剤系の配合比を減らす。一方、予想される線幅が目標線幅よりも小さければ、相関式に基づいて、ベースとなるベヒクルの配合から、予想ズレ幅を打ち消すように重合開始剤系の配合比を増やす。
【0049】
また、例えば重合禁止剤を用いて予想ズレ幅を打ち消す場合は、まず第2相関式として、重合禁止剤の配合比と実線幅との相関式を用意する。この相関式において、重合禁止剤の配合比と実線幅とが負の相関を有すると仮定する。この場合、予想される線幅が目標線幅よりも大きければ、相関式に基づいて、ベースとなるベヒクルの配合から予想ズレ幅を打ち消すように重合禁止剤の配合比を増やす。また、予想される線幅が目標線幅よりも小さければ、相関式に基づいて、ベースとなるベヒクルの配合から予想ズレ幅を打ち消すように重合禁止剤の配合比を減らす。以上のようにして、感光性組成物における有機成分の配合比を決定する。
【0050】
なお、本工程で配合比を調整する有機成分は、上記した(A)〜(D)の成分に限定されない。例えば、他の性能(例えば基材に対する導電膜のタック性等)が著しく低下しない限りにおいて、後述する光硬化性樹脂および光硬化性化合物のうちの少なくとも1つの配合比を調整してもよい。また、例えば後述するその他添加成分の配合比を調整してもよい。
【0051】
<(ステップS4)感光性組成物の調製工程>
本工程では、ステップS1で平均粒径を実測した導電性粉末を用いて、感光性組成物を調製する。例えばまず、有機バインダと、光硬化性化合と、光重合開始剤と、増感剤と、光吸収剤と、重合禁止剤と、必要に応じて用いられるその他添加成分とを、有機系分散媒中で混合して、液状のベヒクルを調製する。このとき、感光性組成物がステップS3で決定された配合比となるように、各成分を添加する。次に、導電性粉末とベヒクルとを予め定められた配合比で混合する。これにより、感光性組成物を調製する。本実施形態では、有機系分散媒を含み、ペースト状(スラリー状、インク状を包含する。)に調製された感光性組成物(ペースト状の感光性組成物)を得ることができる。
【0052】
有機バインダ(ポリマー成分)は、基材と未硬化の導電膜との接着性を高める成分である。有機バインダは、感光性(光によって化学的または構造的な変化を生じる性質をいう。例えば光硬化性。)を有していてもよいし、有していなくてもよい。有機バインダは、重量平均分子量が2000以上5000未満の光重合性オリゴマー(プレポリマー)と、重量平均分子量が5000以上の光重合性ポリマーと、を包含する。有機バインダとしては、従来公知のものの中から、例えば基材や光重合性化合物、光重合開始剤の種類等に応じて、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。有機バインダとしては、現像工程において現像液で容易に除去可能なものが好ましい。例えば、現像工程においてアルカリ性の現像液を使用する場合には、ヒドロキシル基(−OH)、カルボキシル基(−C(=O)OH)、エステル結合(−C(=O)O−)、スルホ基(−SOH)等の、酸性を示す構造部分を有する化合物が好ましい。このことにより、未露光部分に残渣が残存し難くなり、例えばファインラインの間のスペースを安定して確保することができる。
【0053】
有機バインダの一好適例として、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース系高分子、アクリル樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。なかでも、現像工程において除去し易い観点から、親水性の有機バインダ、例えば、セルロース系高分子やアクリル樹脂等が好ましい。
【0054】
また、有機バインダとして光硬化性樹脂を用いても良い。光硬化性樹脂は、光重合開始剤から生じた活性種によって重合し、硬化する光硬化成分である。光硬化性樹脂は、典型的には不飽和結合および環状構造のうちの少なくとも一方を1つ以上有する。光硬化性樹脂としては、従来公知のものの中から、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。典型例として、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する樹脂、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」とは、「メタクリロイル」および「アクリロイル」を包含する用語である。
【0055】
アクリル樹脂の具体例として、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体や、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマー(最も大きな質量比を占めるモノマー)として、当該主モノマーに共重合性を有する副モノマーを含む共重合体が挙げられる。
【0056】
光硬化性化合物(モノマー成分)は、光重合開始剤から生じた活性種によって重合し、硬化する光硬化成分である。重合反応は、例えば付加重合であってもよいし開環重合であってもよい。光硬化性化合物は、ラジカル重合性であってもよく、カチオン重合性であってもよい。光硬化性化合物は、重量平均分子量が2000未満のモノマーである。光硬化性化合物としては、従来公知のものの中から、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。典型例として、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。(メタ)アクリレートモノマーは、1分子あたり1つの官能基を有する単官能(メタ)アクリレートと、1分子あたり2つ以上の官能基を有する多官能(メタ)アクリレートと、それらの変性物とを包含する。(メタ)アクリレートモノマーの具体例として、多官能(メタ)アクリレートや、ウレタン結合を有するウレタン変性(メタ)アクリレート、エポキシ変性(メタ)アクリレート、シリコーン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「メタクリレート」および「アクリレート」を包含する用語である。
【0057】
有機系分散媒は、感光性組成物に適度な粘性や流動性を付与して、感光性組成物の取扱性や導電膜を成形する際の作業性を向上する成分である。有機系分散媒としては、従来公知のものの中から、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。典型例として、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤、ミネラルスピリット等の有機溶剤が挙げられる。なかでも、感光性組成物の保存安定性や導電膜成形時の取扱性を向上する観点からは、沸点が150℃以上の有機溶剤、さらには170℃以上の有機溶剤が好ましい。また、他の一好適例として、導電膜を印刷した後の乾燥温度を低く抑える観点からは、沸点が250℃以下の有機溶剤、さらには沸点が220℃以下の有機溶剤が好ましい。
【0058】
その他添加成分としては、従来公知のものの中から、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。一例として、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤、レベリング剤、増粘剤、湿潤剤、分散剤、消泡剤、帯電防止剤、ゲル化防止剤、防腐剤、充填剤(有機または無機フィラー)、ガラス粉末、セラミック粉末(Al、ZrO、SiO等)、有機金属化合物(金属レジネート)等が挙げられる。
【0059】
本実施形態において、感光性組成物中の導電性粉末の配合比は予め定められている。特に限定されるものではないが、導電性粉末の配合比は、概ね50質量%以上、典型的には60〜95質量%、例えば70〜90質量%としてもよい。上記範囲を満たすことで、緻密性や電気伝導性の高い導電層を形成することができる。また、感光性組成物の取扱性や導電膜を成形する際の作業性を向上することができる。
【0060】
特に限定されるものではないが、感光性組成物全体に占める重合開始剤系の割合は、概ね5質量%以下、典型的には0.01〜1質量%、例えば0.02〜0.5質量%、0.05〜0.2質量%としてもよい。また、光吸収剤の割合は、概ね0.5質量%以下、典型的には0.1質量%以下、例えば0.01質量%以下、さらには0.001質量%以下としてもよい。また、重合禁止剤の割合は、概ね0.5質量%以下、典型的には0.1質量%以下、例えば0.001質量%以下としてもよい。また、感光性組成物全体に占める光硬化性樹脂の割合は、概ね5質量%以下、典型的には0.01〜1質量%、例えば0.02〜0.5質量%、0.03〜0.2質量%としてもよい。また、感光性組成物全体に占める光硬化性化合物の割合は、概ね5質量%以下、典型的には0.01〜1質量%、例えば0.02〜0.5質量%、0.03〜0.2質量%としてもよい。また、光硬化性樹脂と光硬化性化合物との配合比は、概ね1:10〜10:1、例えば1:3〜3:1、さらには1:2〜2:1としてもよい。また、有機系分散媒の割合は、概ね1〜50質量%、典型的には3〜30質量%、例えば5〜20質量%としてもよい。また、その他添加成分の割合は、概ね5質量%以下、例えば3質量%以下としてもよい。
【0061】
≪感光性組成物の用途≫
ここに開示される感光性組成物によれば、L/Sが30μm/30μmよりも微細な、さらにはL/Sが20μm/20μmよりも微細な導電層を安定して形成することができる。そのため、ここに開示される感光性組成物は、例えば、インダクタンス部品やコンデンサ部品、多層回路基板等の様々な電子部品における導電層の形成に好適に利用することができる。電子部品は、表面実装タイプやスルーホール実装タイプ等、各種の実装形態のものであってよい。電子部品は、積層型であってもよいし、巻線型であってもよいし、薄膜型であってもよい。インダクタンス部品の典型例としては、高周波フィルタ、コモンモードフィルタ、高周波回路用インダクタ(コイル)、一般回路用インダクタ(コイル)、高周波フィルタ、チョークコイル、トランス等が挙げられる。
【0062】
また、導電性粉末が金属−セラミックのコアシェル粒子を含む感光性組成物は、セラミック電子部品の導電層の形成に好適に利用することができる。なお、本明細書において、「セラミック電子部品」とは、非晶質のセラミック基材(ガラスセラミック基材)あるいは結晶質(すなわち非ガラス)のセラミック基材を有する電子部品全般を包含する。典型例として、セラミック製の基材を有する高周波フィルタ、セラミックインダクタ(コイル)、セラミックコンデンサ、低温焼成積層セラミック基材(Low Temperature Co-fired Ceramics Substrate:LTCC基材)、高温焼成積層セラミック基材(High Temperature Co-fired Ceramics Substrate:HTCC基材)等が挙げられる。
【0063】
図3は、積層チップインダクタ10の構造を模式的に示す断面図である。なお、図3における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。また、図面中の符号X、Yは、それぞれ左右方向、上下方向を表す。ただし、これは説明の便宜上の方向に過ぎない。
【0064】
積層チップインダクタ10は、本体部11と、本体部11の左右方向Xの両側面部分に設けられた外部電極20とを備えている。積層チップインダクタ10の形状は、例えば、1608形状(1.6mm×0.8mm)、2520形状(2.5mm×2.0mm)等のサイズである。本体部11は、セラミック層(誘電体層)12と内部電極層14とが一体化された構造を有する。セラミック層12は、例えば、導電性粉末の被覆部を構成しうるものとして上述したようなセラミック材料で構成されている。上下方向Yにおいて、セラミック層12の間には、内部電極層14が配置されている。内部電極層14は、上述の感光性組成物を用いて形成されている。セラミック層12を挟んで上下方向Yに隣り合う内部電極層14は、セラミック層12に設けられたビア16を通じて導通されている。このことにより、内部電極層14は、3次元的な渦巻き形状(螺旋状)に構成されている。内部電極層14の両端はそれぞれ外部電極20と接続されている。
【0065】
積層チップインダクタ10は、例えば、以下の手順で製造することができる。すなわち、まず、原料となるセラミック材料とバインダ樹脂と有機溶剤とを含むペーストを調製し、これをキャリアシート上に供給して、セラミックグリーンシートを形成する。次いで、このセラミックグリーンシートを圧延後、所望のサイズにカットして、複数のセラミック層形成用グリーンシートを得る。次いで、複数のセラミック層形成用グリーンシートの所定の位置に、穿孔機等を用いて適宜ビアホールを形成する。次いで、上述の感光性組成物を用いて、複数のセラミック層形成用グリーンシートの所定の位置に、所定のコイルパターンの導電膜を形成する。一例として、以下の工程:(ステップA)感光性組成物をセラミック層形成用グリーンシート上に付与して乾燥することにより、感光性組成物の乾燥体からなる導電膜を成形する工程;(ステップB)導電膜に所定の開口パターンのフォトマスクを被せ、フォトマスクを介して露光し、導電膜を部分的に光硬化させる工程:(ステップC)光硬化後の導電膜をエッチングしての未硬化の部分を除去する工程;を包含する製造方法によって、未焼成の状態の導電膜を形成することができる。
【0066】
なお、上記感光性組成物を用いて導電膜を形成するにあたっては、従来公知の手法を適宜用いることができる。例えば、(ステップA)において、感光性組成物の付与は、スクリーン印刷等の各種印刷法や、バーコータ等を用いて行うことができる。感光性組成物の乾燥は、典型的には50〜100℃で行うとよい。(ステップB)において、露光には、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線のような放射線を発する露光機を用いることができる。一例として、10〜400nmの波長範囲の光線を発する露光機、例えば高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等の紫外線照射灯を用いることができる。(ステップC)において、エッチングには、例えば水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム等のアルカリ成分を含む水溶液を用いることができる。
【0067】
次いで、未焼成の状態の導電膜が形成されているセラミック層形成用グリーンシートを複数枚積層し、圧着する。このことによって、未焼成のセラミックグリーンシートの積層体を作製する。次いで、セラミックグリーンシートの積層体を、例えば600〜1000℃で焼成する。これによって、セラミックグリーンシートが一体的に焼結され、セラミック層12と、感光性組成物の焼成体からなる内部電極層14とを備えた本体部11が形成される。そして、本体部11の両端部に適当な外部電極形成用ペーストを付与し、焼成することによって、外部電極20を形成する。このようにして、積層チップインダクタ10を製造することができる。
【0068】
≪配合比決定装置≫
図4は、配合比決定装置30の機能ブロック図である。ここに開示される配合比決定装置30は、入力部31と、記憶部32と、第1算出部33と、第2算出部34と、表示部35と、を備えている。配合比決定装置30の各部は、相互に通信可能に構成されている。配合比決定装置30の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。配合比決定装置30の各部は、プロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれたものであってもよい。
【0069】
入力部31は、利用者(例えば感光性組成物を調製する作業者)の操作入力を受け付けて、使用する導電性粉末の種類および平均粒径(実測値)、ならびに目標線幅を入力可能なように構成されている。複数の導電性粉末を併用する場合には、さらにそれらの混合比率を入力可能なように構成されている。導電性粉末の種類は、例えば、購入先、品目名(製品名)、品番等で表される情報である。導電性粉末の種類は、例えば、導電性粉末の構造(コアシェル構造か否か)や、平均粒径(公称値)、平均アスペクト比、明度L等の物性値で表される情報であってもよい。入力部31は、例えば、カーソルキーや数字入力キー等を備えたキーボード、マウス等のポインティングデバイス、ボタン等の入力装置(図示せず)を備えている。入力部31は、例えば表示部35に表示されたプルダウンメニューのなかから、導電性粉末の種類を選択可能なように構成されていてもよい。入力部31は、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器や有線または無線で接続されたネットワークから、上記したような情報を取り込み可能なように構成されていてもよい。なお、本実施形態において、「目標線幅」は、予め定められた目標レベルの一例である。
【0070】
記憶部32は、第1相関式および第2相関式を記憶している。第1相関式および第2相関式は、導電性粉末の種類ごと(例えば製品名ごと)に予め記憶部32に記憶されている。このため、記憶部32に記憶されている第1相関式および第2相関式は、典型的にはそれぞれ複数である。第1相関式は、一次関数で示されていてもよい。特に限定されるものではないが、第1相関式は、例えば上記した導電性粉末の平均粒径(実測値)と実線幅との相関式である。第2相関式は、所定の傾き(変化の割合)を有している。第2相関式は、一次関数で示されていてもよい。特に限定されるものではないが、第2相関式は、例えば、上記した有機成分(例えば重合開始剤系)の配合比と実線幅との相関式である。記憶部32は、さらにベースとなるベヒクルの組成、すなわちベヒクルに含まれる各有機成分の種類と配合比を記憶していてもよい。
【0071】
第1算出部33は、利用者によって、入力部31から、使用する導電性粉末の種類および平均粒径(実測値)の入力操作がなされると、記憶部32に記憶されている第1相関式のなかから、入力された導電性粉末と同じ種類の導電性粉末に係る第1相関式を参照する。そして、入力部31に入力された平均粒径(実測値)から、目標線幅に対する予想ズレ幅を算出する。例えば、第1相関式が導電性粉末の平均粒径(実測値)と実線幅との相関式で示されている場合は、まず入力部31に入力された平均粒径(実測値)を対応する第1相関式に内挿して、予想される線幅を算出する。そして、予想される線幅と、利用者によって入力部31から入力された目標線幅と、の差分を予想ズレ幅として算出する。なお、本実施形態において、「予想ズレ幅」は、予想ズレ値の一例である。
【0072】
第2算出部34は、第1算出部33で予想ズレ幅が算出されると、記憶部32に記憶されている第2相関式のなかから、入力された導電性粉末と同じ種類の導電性粉末に係る第2相関式を参照する。そして、第1算出部33で算出された予想ズレ幅に基づいて、有機成分の配合比を算出する。例えば、第2相関式が重合開始剤系の配合比と実線幅との相関式とで示されている場合は、予想ズレ幅を第2相関式の傾きで割り、予想ズレ幅を打ち消すための重合開始剤系の配合比を算出する。そして、ベヒクルに含まれる光重合開始剤系の配合比から、上記予想ズレ幅を打ち消すための配合比を増減して最終的な配合比とする。
【0073】
配合比決定装置30は、例えばコンピュータであり、利用者に対するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置と、を備えている。配合比決定装置30は、コンピュータのCPUを、配合比決定装置30の各部として動作させるように構成されたコンピュータプログラムであってもよい。かかるコンピュータプログラムは、配合比決定装置30の動作が書き込まれ、コンピュータで読み取り可能な記録媒体であっていてもよい。
【0074】
記録媒体としては、例えば、半導体記録媒体(例えば、ROM、不揮発性メモリーカード)、光記録媒体(例えば、DVD、MO、MD、CD、BD)、磁気記録媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク)等が例示される。また、上記コンピュータプログラムは、上記記録媒体あるいはインターネットやイントラネット等のネットワークを介して、サーバーコンピュータに送信することができる。この場合、サーバーコンピュータもまた、配合比決定装置30の一形態である。
【0075】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を係る実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0076】
<実施例1:1種類の導電性粉末を単独で用いる場合>
以下、1種類の導電性粉末を単独で用いて感光性組成物を製造する場合を説明する。ここでは事前準備として、まず使用する導電性粉末に対応した第1相関式および第2相関式を用意した。具体的には、図5に示す第1相関式と、図6の第2相関式と、を用意した。図6は、光重合開始剤系の配合比を調整するための第2相関式である。
【0077】
図5に示す第1相関式は、次のようにして用意されたものである。すなわち、まず導電性粉末として、平均粒径(公称値)が概ね3μm前後である市販の銀粉末を複数(ここでは15種類)用意した。次に、レーザー回折・散乱法に基づく粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製の型式「MT−3000II」、測定範囲:0.02〜2800μm)を用いて、分散溶媒中での湿式測定によって15種類の銀粉末の平均粒径をそれぞれ実測した。分散溶媒としては、銀粉末の凝集を抑制して、個々の粒子を分散溶媒中に分散させる観点から、アルコール系溶媒(具体的には、エタノール)を用いた。そして、体積基準の粒度分布を得た。なお、粒度分布は、典型的にはモード径(最頻粒子径)が1つのみの単峰性であった。粒度分布から、15種類の銀粉末の平均粒径(実測値)をそれぞれ読みとった。
【0078】
次に、有機バインダと、光硬化性化合物と、光重合開始剤と、増感剤と、光吸収剤としての紫外線吸収剤と、重合禁止剤とを、表1の組成で有機系分散媒に溶解させて、ベヒクルを用意した。次に、上記用意した15種類の銀粉末と、ベヒクルとを、77:23の質量比で混合することにより、それぞれ感光性組成物を調製した。
【0079】
【表1】
【0080】
次に、スクリーン印刷により、上記調製した感光性組成物を市販のセラミックグリーンシート上にそれぞれ塗布した。次に、これを60℃で15分間乾燥させて、グリーンシート上に導電膜(ベタ膜)を成形した(導電膜の成形工程)。次に、導電膜の上からフォトマスクを被せた。フォトマスクとしては、L/S=25μm/25μmのものを使用した。このフォトマスクを導電膜の上に被せた状態で、紫外線露光機により、2500mJ/cmの強度で光を照射し、導電膜を部分的に硬化させた(露光工程)。露光後、セラミックグリーンシートに0.4質量%のNaCO水溶液を吹き付け、未硬化の導電膜部分をエッチング除去した後、純水で洗浄し、室温で乾燥させた(現像工程)。こうして、セラミックグリーンシート上に配線パターンを形成した。
【0081】
次に、配線パターンをレーザー顕微鏡で観察し、得られた観察画像から配線の線幅を計測した。なお、線幅の計測は複数視野について行い、その算術平均値を実線幅(実際の線幅)とした。そして、図5に示すように、15種類の銀粉末の平均粒径(実測値)と実線幅との相関をグラフに表すと共に、相関式(Y=5.593X+11.192)を算出した。図5に示す第1相関式では、銀粉末の平均粒径(実測値)と、当該銀粉末を含んだ感光性組成物を用いてなる実線幅とが比例(相関係数:0.92)している。図5に示す第1相関式は、一次関数で示されている。図5において、平均粒径(実測値)と実線幅とは正の相関を有している。すなわち、銀粉末の平均粒径(実測値)が大きくなるにつれて、線幅はリニアに太くなっている。
【0082】
図6の第2相関式は、次のようにして用意されたものである。すなわち、まず、導電性粉末として所定の銀粉末を用意した。また、有機バインダと、光硬化性化合物と、光重合開始剤と、増感剤と、紫外線吸収剤と、重合禁止剤と、有機系分散媒とを、上記した表1の配合比で混合して、ベースとなるベヒクルを用意した。次に、銀粉末とベヒクルとを77:23の質量比で混合することにより、ベースとなる感光性組成物を調製した。
【0083】
次に、ベースとなる感光性組成物の中から、表2のように光重合開始剤系(光重合開始剤および増感剤)の配合比を変化させた。このとき光重合開始剤系の配合比を増減した分は、有機系分散媒の量を増減することで調整した。例えば、光重合開始剤系の配合比を0.550から0.515に減らした場合は、その分(0.035)だけ有機系分散媒の量を増やした。このような感光性組成物を複数(ここでは5パターン)調製した。なお、光重合開始剤系の配合比を変化させた際に、光重合開始剤と増感剤との比率は一定とした。次に、上記調製した複数の感光性組成物を用いて、上述した第1相関式の算出時と同様に配線パターンを形成し、実線幅を求めた。そして、5パターンの感光性組成物中の光重合開始剤の配合比と実線幅との相関をグラフに表すと共に、相関式(Y=74.927X+19.762)を算出した。
【0084】
【表2】
【0085】
図6の第2相関式では、感光性組成物中の重合開始剤系の配合比と実線幅とが比例(相関係数:0.96)している。図6の第2相関式は、一次関数で示されている。図6において、重合開始剤系の配合比と実線幅とは、正の相関を有している。すなわち、重合開始剤系の配合比が大きくなるにつれて、線幅がリニアに太くなっていることがわかる。
【0086】
実施例1では、以上のように第1相関式と第2相関式とを揃えた後、ステップS1として、感光性組成物に使用する銀粉末(平均粒径(公称値):3μm)を用意した。次に、第1相関式の算出時と同じ粒度分布測定装置を用いて、同じ測定解析条件で、銀粉末の平均粒径を実測した。そして、体積基準の粒度分布から銀粉末の平均粒径(実測値)を読みとった。ここでは、実測値が3.17μmであった。
【0087】
次に、ステップS2として、ステップS1で得られた実測値を、図5の第1相関式と対比した。そして、予め定められた目標線幅に対する予想ズレ幅を確認した。ここでは、実測値が3.17μmを、図5の第1相関式(Y=5.593X+11.192)に内挿すると、予想される線幅が28.92μmと算出される。このため、目標線幅が27.3μmである場合、予想ズレ幅は、(予想される線幅28.92μm)−(目標線幅27.3μm)で、+1.62μmと算出される。すなわち、このままベース通りのベヒクルの組成で感光性組成物を調製すると、目標線幅から1.62μmの線幅の太りが生じる可能性が高いことがわかる。
【0088】
そこで、次に、ステップS3として、予想ズレ幅を打ち消して目標線幅に近づけるように、有機成分の配合比を変更した。ここでは、図6の第2相関式(Y=74.927X+19.762)に基づいて、重合開始剤系の配合比を調整した。すなわち、予想ズレ幅+1.62μmを第2相関式の傾き74.927で割った値(=1.62/74.927)=+0.022が、予想ズレ幅+1.62μm分を調整する重合開始剤系の量となる。したがって、予想ズレ幅を打ち消すために、ベースの感光性組成物から重合開始剤系の割合を0.022質量%減少させた。表3は、予想ズレ幅を考慮して決定された重合開始剤系の配合比の一例である。
【0089】
【表3】
【0090】
次に、ステップS4として、表3のように重合開始剤系の配合比を変更したベヒクルを調製した。なお、表3に記載の無い有機成分、例えば、有機バインダ、光硬化性化合物、紫外線吸収剤、重合禁止剤については、ベースとなる感光性組成物の配合と同じである。次に、ステップS1で平均粒径を実測した銀粉末とベヒクルとを混合して、感光性組成物を調製した。そして、配線パターンを形成し、実線幅を計測した。その結果、実線幅は、27.4μmであった。すなわち、ステップS2で予想された線幅(29.0μm)よりも、目標線幅(27.3μm)に大きく近づく結果となった。
【0091】
さらに数種類の導電性粉末について、上記と同様に、ここで開示される技術を適用して、感光性組成物を調製し、実線幅を計測した。すなわち、ステップS1で銀粉末の平均粒径の実測値を取得し、ステップS2で予想ズレ幅を確認し、ステップS3で重合開始剤系の配合比を決定して、ベヒクルの配合を調整した後、感光性組成物を調製して、実線幅を計測した。結果を表4に示す。なお、表4の右端は、上記した実施例1の結果である。また、参考例として、ここで開示される技術を適用せず、ベースのベヒクルをそのまま使用した(すなわち、重合開始剤系の配合比を調整せずに一定とした)場合の実線幅(μm)を最下段に記載している。
【0092】
【表4】
【0093】
図7は、表4の結果を纏めて、ここで開示される技術の適用有無における実線幅を比較したグラフである。図7および表4から明らかなように、ここに開示される技術を適用することによって、ここに開示される技術を適用しない場合(参考例)と比べて、相対的に導電性粉末の製造ロット間の変動を緩衝して、線幅のバラつきを抑えることができた。ここでは、線幅の変動を±1μm以下、さらには±0.5μm以下に抑えることができた。言い換えれば、細線状の配線を目標線幅の付近で安定的に形成することができた。かかる結果は、ここに開示される技術の意義を示している。
【0094】
<実施例2:2種類の導電性粉末を混合して用いる場合>
以下、2種類の導電性粉末を混合した混合粉を用いて感光性組成物を製造する場合を説明する。ここでは事前準備として、まず使用する2つの導電性粉末に対応した2つの第1相関式を用意した。具体的には、図8、9に実線で示す第1相関式を用意した。また、あわせて第2相関式を用意した。なお、第2相関式については図6に示したものと同じものを用意した。
【0095】
図8に実線で示す第1相関式は、次のようにして用意されたものである。すなわち、まず第1の導電性粉末として、平均粒径(公称値)が概ね2.9μm前後である第1銀粉末を複数(ここでは7種類)用意した。そして、上記した実施例1の図5の第1相関式の算出時と同様に、7種類の第1銀粉末の平均粒径(実測値)をそれぞれ実測した。また、第2の導電性粉末として、平均粒径(実測値)が2.56μmである第2銀粉末を用意した。次に、第1銀粉末と第2銀粉末とを、所定の比率(ここでは40:60)の質量比で混合することにより、混合粉を調整した。この混合粉と表1に示したベヒクルとを77:23の質量比で混合することにより、感光性組成物を調製した。次に、この感光性組成物を用いて、上記した実施例1と同様に配線パターンを形成し、平均粒径(実測値)と実線幅との相関式(Y=1.89X+24.85)を算出した。
【0096】
図9に実線で示す第1相関式は、次のようにして用意されたものである。すなわち、まず第2の導電性粉末として、平均粒径(公称値)が概ね2.4μm前後である第2銀粉末を複数(ここでは5種類)用意した。そして、上記した実施例1の図5の第1相関式の算出時と同様に、5種類の第2銀粉末の平均粒径(実測値)をそれぞれ実測した。また、第1の導電性粉末として、平均粒径(実測値)が3.06μmである第1銀粉末を用意した。次に、第1銀粉末と第2銀粉末とを、40:60の質量比で混合することにより、混合粉を調整した。そして、上記した図8の第1相関式の算出時と同様に、平均粒径(実測値)と実線幅との相関式(Y=2.12X+24.72)を算出した。
【0097】
図8、9に実線で示す第1相関式は、実施例1の図5の第1相関式と同様に、変化させた銀粉末の平均粒径(実測値)と、実線幅とが、比例(相関係数:0.92以上)している。図8、9に実線で示す第1相関式は、一次関数で示されている。図8、9において、平均粒径(実測値)と実線幅とは、正の相関を有している。
【0098】
実施例2では、以上のように2つの第1相関式を揃えた後、ステップS1として、感光性組成物に使用する第1銀粉末(平均粒径(公称値):2.9μm)と第2銀粉末(平均粒径(公称値):2.4μm)の2種類の導電性粉末を用意した。次に、図8、9の第1相関式の算出時と同様に、第1銀粉末および第2銀粉末の平均粒径をそれぞれ実測した。次に、ステップS2として、ステップS1で得られた第1銀粉末の実測値を、図8の第1相関式(Y=1.89X+24.85)と対比した。また、第2銀粉末の実測値を、図9の第1相関式(Y=2.12X+24.72)と対比した。次に、2種類の銀粉末のそれぞれについて、目標線幅(ここでは、30.0μmに設定した。)に対する予想ズレ幅α1、α2を算出した。すなわち、第1銀粉末および第2銀粉末の実測値をx1,x2とし、予想線幅をy1,y2とすると、予想ズレ幅α1、α2は、下記の式から求めた。
α1 = y1−30.0 = 1.89×x1+24.85−30.0
α2 = y2−30.0 = 2.12×x2+24.72−30.0
【0099】
そして、2種類の導電性粉末を混合して用いる場合の予想ズレ幅をβ(μm)は、上記の予想ズレ幅α1、α2を用いて、以下の式から求めた。
β = α1+α2
【0100】
次に、ステップS3として、上記した実施例1と同様に、ベヒクルに含まれる重合開始剤系の配合比を表5、6のように調整した。次に、ステップS4として、上記した実施例1と同様に、感光性組成物を調製した。そして、配線パターンを形成し、実線幅を計測した。
【0101】
【表5】
【0102】
【表6】
【0103】
表5、6から明らかなように、ここに開示される技術を適用することによって、2種類の導電性粉末を混合して用いる場合においても、導電性粉末の製造ロット間の変動を緩衝して、線幅のバラつきを抑えることができた。ここでは、線幅の変動を±1μm以下、さらには±0.5μm以下に抑えることができた。
【0104】
なお、図8、9に破線で示す第1相関式は、それぞれ第1銀粉末と第2銀粉末とを70:30の質量比で混合した場合のものである。このように混合比を変化させた場合であっても、実線で示す第1相関式と同様に、変化させた銀粉末の平均粒径(実測値)と、実線幅とが、一次関数で比例(相関係数:0.95以上)している。平均粒径(実測値)と実線幅とは、正の相関を有している。このことから、混合比に依らず、種々の混合粉についてここに開示される技術が適用可能であると考えられる。
【0105】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を組み合わせたり、他の変形態様に置き換えたりすることも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0106】
上記した実施形態では、目標レベルの因子が「線幅」で定められていたが、これには限定されない。目標レベルの因子は、導電膜の光吸収度や光硬化度に起因するものであればよく、例えば、導電膜の膜厚、電極断面積、硬化収縮率、抵抗値等であってもよい。すなわち、図1(A)、(B)から、導電性粉末の粒径の違いによって、光の散乱が変化し、その結果、導電膜の光吸収性が変化することで、光硬化度が変化することがわかる。この観点からすると、導電性粉末の粒径の違いによって、上記した線幅だけでなく、膜厚、断面積、硬化収縮率等も同様に変化しうることが、当業者には明らかである。また、それに伴い、抵抗値も同様に変化しうることが、当業者には明らかである。
【0107】
このことは、例えば、以下のような参考文献1〜3:
・参考文献1:宇加治孝志著、CMCテクニカルライブラリー206、プラスチック表面処理技術と材料、P.67、塗膜の光透過率(%)と粒子径(μm)との相関図;
・参考文献2:山本貴金属地金 株式会社、高分子技術レポート、Vol.5(2011年)、P.20、図15(照射光の強度を変えた場合のヘキサンジオールジアクリレートの反応率と硬化時間の関係);
・参考文献3:情報技術協会発行、UV硬化樹脂の配合設計、特性評価と新しい応用、P.470、 図16(UVレジストの硬化収縮における膜厚の変化);
等からも裏づけられていると考えられる。
【0108】
上記文献の記載を考慮すると、例えば0.1〜10μmの範囲では、導電性粉末の粒径の変化にしたがって、光吸収度や光硬化度の因子が単調増加または単調減少することは明らかであると推認される。つまり、粒径の変位に伴う線幅の変動とそれらの変位は、比例、または一定の関数で相関の高い推移となると考えられる。以上のことから、線幅のバラつきを緩衝することは、光吸収度や光硬化度に関する因子のバラつきを抑制することと同義であるといえる。つまり、ここに開示される技術において、「目標レベル」は、目標線幅としてもよく、目標膜厚としてもよく、目標断面積としてもよく、目標硬化収縮率としてもよく、目標抵抗値としてもよくと考えられる。また、「予想ズレ値」は、目標レベルに対応して、ズレ幅としても良く、ズレ厚としてもよく、ズレ断面積としてもよく、ズレ硬化収縮率としてもよく、ズレ抵抗値としてもよくと考えられる。
【0109】
上記した実施形態では、ステップS2の後に続けてステップS3を実施していたが、これには限定されない。例えば、ステップS2の後に、予想ズレ幅と、予め設定された閾値と、を対比する判定工程を含んでもよい。そして、判定工程において予想ズレ幅が閾値よりも小さいと判定されたときに、ステップS3を省略してステップS4を行ってもよい。
【0110】
なお、上記した実施形態では、第1相関式として、平均粒径(実測値)と実線幅との相関式を例示したが、これには限定されない。平均粒径(実測値)と対比する変数としては、例えば実線幅から目標線幅を差し引いた予想ズレ幅としてもよい。すなわち、第1相関式は、平均粒径(実測値)と予想ズレ幅との相関式で表してもよい。この場合、ステップS1で得られた実測値を、相関式に内挿して、予想ズレ幅を直接確認してもよい。
【0111】
なお、上記した実施形態では、第2相関式として、感光性組成物中の有機成分の配合比と実線幅との相関式を例示したが、これには限定されない。有機成分の配合比と対比する変数としては、第1相関式の場合と同様に、例えば予想ズレ幅としてもよい。また、有機成分の配合比は、感光性組成物中のものではなく、例えばベヒクル中の配合比等で表してもよい。
【0112】
上記した実施形態では、配合比決定装置30は、入力部31と、記憶部32と、第1算出部33と、第2算出部34と、を備えていたが、これには限定されない。配合比決定装置30は、上記した各部に加えて、以下の少なくとも1つ:所定の種類の導電性粉末に対して第1相関式を設定し、記憶部32に記憶させる第1設定部;所定の種類の導電性粉末に対して第2相関式を設定し、記憶部32に記憶させる第2設定部;入力された導電性粉末と同じ種類の第1相関式または第2相関式が記憶部32に記憶されていない場合に、利用者にエラーを通知する通知部;等を備えていてもよい。
【0113】
上記した実施例1、2では、導電性粉末として銀粉末を用いていたが、これには限定されない。平均粒径の大きい導電性粉末を用いると、露光工程において導電膜の水平方向に照射光が広がりやすく配線の線幅が太くなりがちである、という機構は、他の金属種についても同様である。ここに開示される技術は、銀粉末のみならず、上述した各種金属、例えば、銅、白金、パラジウム、アルミニウム、ニッケル等を含んだ粉末に対しても勿論適用可能である。
【0114】
上記した実施例1、2では、ステップS1において、導電性粉末の平均粒径(D50粒径)、具体的には、体積基準の粒度分布において粒径の小さい側から積算値50%に相当する粒径を測定したが、これには限定されない。ステップS1では、体積基準の粒度分布にかえて個数基準の粒度分布等を用いてもよい。また、粒径ファクターは、平均粒径(D50粒径)にかえて、例えば、D40粒径(粒度分布において粒径の小さい側から積算値40%に相当する粒径)、D60粒径(粒度分布において粒径の小さい側から積算値60%に相当する粒径)等であってもよい。この場合、第1相関式は、「D40粒径(実測値)X−実線幅Y」、「D60粒径(実測値)X−実線幅Y」等で示されていてもよい。さらに、例えば導電性粉末の粒度分布が単峰性であるとき等に、粒径ファクターは、平均粒径からさらに離れた粒径、例えば、D5粒径(粒度分布において粒径の小さい側から積算値5%に相当する粒径)、D90粒径(粒度分布において粒径の小さい側から積算値90%に相当する粒径)、D95粒径(粒度分布において粒径の小さい側から積算値90%に相当する粒径)等であってもよい。
【0115】
上記した実施例1、2では、ステップS3において、重合開始剤系に係る第2相関式を用意し、光重合開始剤系の配合比を調整することで、線幅のバラつきを抑えていたが、これには限定されない。配合比を調整する有機成分は、例えば光重合開始剤および増感剤のうちのいずれか一方であってもよい。
【0116】
また、上記した実施例1、2では、ステップS3において、重合開始剤系に係る第2相関式を用意したが、これにかえて、あるいはこれに加えて、例えば光吸収剤に係る第2相関式(図10参照)を用意し、光吸収剤の配合比を調整することで、線幅のバラつきを抑えることもできる。図10に示す第2相関式では、感光性組成物中の紫外線吸収剤の配合比と、実線幅とが、対数曲線で示されている。対数曲線は変化が急激なため、例えば予想ズレ幅が大きい場合には、配合比を僅かに変更するだけで済む利点がある。また、例えば重合禁止剤に係る第2相関式(図11参照)を用意し、重合禁止剤の配合比を調整することで、線幅のバラつきを抑えることもできる。図11に示す第2相関式では、感光性組成物中の光重合禁止剤の配合比と、実線幅とが、比例(相関係数:0.99)している。図11に示す第2相関式は、一次関数で示されている。重合禁止剤の配合比と実線幅とは、負の相関を有している。すなわち、重合禁止剤系の配合比が大きくなるにつれて、線幅がリニアに細くなっていることがわかる。このような第2相関式もまた、上記した図6、7の第2相関式と同様に、ここに開示される技術で好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0117】
10 積層チップインダクタ
11 本体部
12 セラミック層
14 内部電極層
20 外部電極
30 配合比決定装置
31 入力部
32 記憶部
33 第1算出部
34 第2算出部
35 表示部
【要約】
【課題】所望の線幅で細線状の配線を再現性良く形成することができる感光性組成物を提供する。
【解決手段】本発明により、予め定められた配合比で導電性粉末を含む感光性組成物を製造する方法が提供される。この製造方法は、使用する導電性粉末の粒径を測定して、実測値を得る工程(ステップS1);上記実測値を、上記使用する導電性粉末の種類に応じて予め用意された第1相関式と対比して、予め定められた目標レベルに対する予想ズレ値を確認する工程(ステップS2);上記使用する導電性粉末の種類に応じて予め用意された第2相関式に基づいて、上記予想ズレ値を打ち消すように有機成分の配合比を決定する工程(ステップS3);を包含する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
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図5
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図11