(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一金属箔層の前記一方の面にバインダー層を介して前記正極活物質層が積層され、前記第二金属箔層の前記一方の面にバインダー層を介して前記負極活物質層が積層され、前記バインダー層は、PVDF、SBR、CMCおよびPANからなる群より選ばれる少なくとも1種のバインダー材で形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄型蓄電デバイス。
前記第一金属箔層における少なくとも前記正極活物質層が積層される側の面に化成皮膜が形成され、前記第二金属箔層における少なくとも前記負極活物質層が積層される側の面に化成皮膜が形成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の薄型蓄電デバイス。
第一金属箔層と、該第一金属箔層の一方の面における一部の領域に積層された正極活物質層と、前記第一金属箔層の前記一方の面における正極活物質層が形成されていない周縁部に設けられた第一熱可塑性樹脂層と、を備えた正極側シート体を準備する工程と、
第二金属箔層と、該第二金属箔層の一方の面における一部の領域に積層された負極活物質層と、前記第二金属箔層の前記一方の面における負極活物質層が形成されていない周縁部に設けられた第二熱可塑性樹脂層と、を備えた負極側シート体を準備する工程と、
セパレーターを準備する工程と、
前記正極側シート体と前記負極側シート体とを互いの熱可塑性樹脂層で接触させると共に前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に前記セパレーターを挟み込んだ状態で、前記正極側シート体の第一熱可塑性樹脂層と前記負極側シート体の第二熱可塑性樹脂層とをヒートシール接合する工程と、を含み、
前記第一熱可塑性樹脂層が、熱可塑性樹脂未延伸フィルムで形成され、前記第二熱可塑性樹脂層が、熱可塑性樹脂未延伸フィルムで形成されていることを特徴とする薄型蓄電デバイスの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の薄型電池では、電極本体部とラミネート外装材が別々に構成されており、ラミネート外装材で外装した蓄電デバイスとしての全体厚さは、電極本体部の厚さとラミネート外装材の厚さの合計になることから、厚さ制限や重量制限のある用途(ICカード、スマートフォン等)への搭載は困難であった。
【0007】
また、電極から導出されるタブリード線(リード線)を設ける必要があるので、その分部品点数が多くなるという問題があった。更に、このタブリード線は、ラミネート外装材の周縁のヒートシール部分で固定させる必要があるので、その分製造時の工数が多くなって手間がかかるという問題があるし、薄型電池としての重量(質量)もより大きくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、軽量化及び薄型化された薄型蓄電デバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
[1]第一金属箔層と、該第一金属箔層の一方の面における一部の領域に積層された正極活物質層と、を含む正極部と、
第二金属箔層と、該第二金属箔層の一方の面における一部の領域に積層された負極活物質層と、を含む負極部と、
前記正極部と前記負極部の間に配置されたセパレーターと、を備え、
前記第一金属箔層と前記セパレーターとの間に前記正極活物質層が配置され、前記第二金属箔層と前記セパレーターとの間に前記負極活物質層が配置され、
前記正極部の第一金属箔層の前記一方の面における正極活物質層が形成されていない周縁部領域と、前記負極部の第二金属箔層の前記一方の面における負極活物質層が形成されていない周縁部領域とが、熱可塑性樹脂を含有してなる周縁封止層を介して接合されていることを特徴とする薄型蓄電デバイス。
【0011】
[2]前記第一金属箔層の他方の面に、該第一金属箔層が露出した第一金属露出部を残した態様で、第一絶縁樹脂フィルムが積層されると共に、
前記第二金属箔層の他方の面に、該第二金属箔層が露出した第二金属露出部を残した態様で、第二絶縁樹脂フィルムが積層されている前項1に記載の薄型蓄電デバイス。
【0012】
[3]前記第一絶縁樹脂フィルムおよび前記第二絶縁樹脂フィルムが、耐熱性樹脂延伸フィルムで形成されている前項2に記載の薄型蓄電デバイス。
【0013】
[4]前記第一金属箔層の前記一方の面にバインダー層を介して前記正極活物質層が積層され、前記第二金属箔層の前記一方の面にバインダー層を介して前記負極活物質層が積層され、前記バインダー層は、PVDF、SBR、CMCおよびPANからなる群より選ばれる少なくとも1種のバインダー材で形成されている前項1〜3のいずれか1項に記載の薄型蓄電デバイス。
【0014】
[5]前記周縁封止層が、熱可塑性樹脂未延伸フィルムで形成されている前項1〜4のいずれか1項に記載の薄型蓄電デバイス。
【0015】
[6]前記セパレーターと前記正極活物質層の間に電解液が封入され、前記セパレーターと前記負極活物質層の間に電解液が封入されている前項1〜5のいずれか1項に記載の薄型蓄電デバイス。
【0016】
[7]前記第一金属箔層がアルミニウム箔で形成され、
前記第二金属箔層が、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔またはチタン箔で形成されている前項1〜6のいずれか1項に記載の薄型蓄電デバイス。
【0017】
[8]前記第一金属箔層における少なくとも前記正極活物質層が積層される側の面に化成皮膜が形成され、前記第二金属箔層における少なくとも前記負極活物質層が積層される側の面に化成皮膜が形成されている前項1〜7のいずれか1項に記載の薄型蓄電デバイス。
【0018】
[9]第一金属箔層と、該第一金属箔層の一方の面における一部の領域に積層された正極活物質層と、前記第一金属箔層の前記一方の面における正極活物質層が形成されていない周縁部に設けられた第一熱可塑性樹脂層と、を備えた正極側シート体を準備する工程と、
第二金属箔層と、該第二金属箔層の一方の面における一部の領域に積層された負極活物質層と、前記第二金属箔層の前記一方の面における負極活物質層が形成されていない周縁部に設けられた第二熱可塑性樹脂層と、を備えた負極側シート体を準備する工程と、
セパレーターを準備する工程と、
前記正極側シート体と前記負極側シート体とを互いの熱可塑性樹脂層で接触させると共に前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に前記セパレーターを挟み込んだ状態で、前記正極側シート体の第一熱可塑性樹脂層と前記負極側シート体の第二熱可塑性樹脂層とをヒートシール接合する工程と、を含むことを特徴とする薄型蓄電デバイスの製造方法。
【0019】
[10]前記第一熱可塑性樹脂層が、熱可塑性樹脂未延伸フィルムで形成され、前記第二熱可塑性樹脂層が、熱可塑性樹脂未延伸フィルムで形成されている前項9に記載の薄型蓄電デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
[1]の発明では、正極部を構成する第一金属箔層および負極部を構成する第二金属箔層が、蓄電デバイスの外装材としての機能も果たすものであり、即ち、第一、二金属箔層が、電極及び外装材の両機能を果たすものであり、従って本構成にさらに外装材を要することはないから(外装材が不要になるから)、蓄電デバイスとして、軽量化、薄型化、省スペース化を図ることができると共に、コストも低減できる。
【0021】
[2]の発明では、第一金属箔層の他方の面に、該第一金属箔層が露出した第一金属露出部を残した態様で、第一絶縁樹脂フィルムが積層されると共に、第二金属箔層の他方の面に、該第二金属箔層が露出した第二金属露出部を残した態様で、第二絶縁樹脂フィルムが積層された構成であり、これら絶縁樹脂フィルムがデバイスの両側に積層されていることにより、(金属露出部を除いて)絶縁性を十分に確保できると共に、物理的強度も確保できる。従って、絶縁性を備えていることが要求される箇所や凹凸のある箇所への(本薄型蓄電デバイスの)搭載にも十分に対応できる。
【0022】
また、正極と電気的に導通している第一金属露出部および負極と電気的に導通している第二金属露出部が存在していることで、これら金属露出部を介して電気の授受を行うことができるので、従来のリード線を不要とすることができる利点がある。従って、薄型蓄電デバイスの部品点数を少なくすることができるし、さらに軽量化を図ることができる。
【0023】
更に、従来のリード線が不要となるので、蓄電デバイスの充放電時の発熱がリード線周りに集中するような現象も生じないし、正極部を構成する第一金属箔層および負極部を構成する第二金属箔層を介して発熱を薄型蓄電デバイスの全体にわたって(面的に)拡散させることができるので、蓄電デバイスの寿命を延ばすことができる(長寿命の蓄電デバイスを得ることができる)。また、リード線が不要となることで、その分製造コストを低減できる。
【0024】
また、乾電池のように、ホルダーに蓄電デバイスを嵌め込むという簡単な装着手法を採用することもできる。
【0025】
[3]の発明では、第一絶縁樹脂フィルムおよび第二絶縁樹脂フィルムが、耐熱性樹脂延伸フィルムで形成されているから、強度及び成形性を向上させることができる。
【0026】
[4]の発明では、PVDF、SBR、CMCおよびPANからなる群より選ばれる少なくとも1種のバインダー材で形成されたバインダー層を設けているので、第一金属箔層と正極活物質層の結着性を向上できると共に、第二金属箔層と負極活物質層の結着性を向上できる。
【0027】
[5]の発明では、周縁封止層が、熱可塑性樹脂未延伸フィルムで形成されているので、耐薬品性(電解液に対する耐性を含む)を向上できると共に、周縁封止層におけるヒートシール性能を向上できて電解液の液漏れ等を十分に防止できる。
【0028】
[6]の発明では、セパレーターと正極活物質層の間に電解液が封入され、セパレーターと負極活物質層の間に電解液が封入された構成であるので、セパレーターを挟んでいても電解液により正極、負極間の電荷を移動させることができる。
【0029】
[7]の発明では、第一金属箔層がアルミニウム箔で形成されているので、正極活物質の塗布性が良くなるし、熱可塑性樹脂を含有してなる周縁封止層の第一金属箔層への積層を容易化できる。また、第二金属箔層が、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔またはチタン箔で形成されているので、電池やキャパシタ等の種々の蓄電デバイスに用途を広げることができる。
【0030】
[8]の発明では、第一金属箔層及び第二金属箔層の耐食性を向上させることができると共に、両金属箔層の密着性を向上させることができる。
【0031】
[9]の発明では、軽量化、薄型化、省スペース化された高品質の薄型蓄電デバイスを効率よく製造できる。
【0032】
[10]の発明では、第一及び第二熱可塑性樹脂層が、熱可塑性樹脂未延伸フィルムで形成されているので、薄型蓄電デバイスの周縁封止層の耐薬品性(電解液に対する耐性を含む)を向上できるし、周縁封止層におけるヒートシール性能を向上できて電解液の液漏れ等を十分に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に係る薄型蓄電デバイスの第一実施形態を
図1、2に示す。この薄型蓄電デバイス1は、正極部22と、負極部23と、セパレーター21と、を備えてなる(
図2参照)。前記正極部22と前記負極部23の間にセパレーター21が配置されている(
図2参照)。
【0035】
前記正極部22は、第一金属箔層2と、該第一金属箔層2の一方の面(セパレーター側の面)における一部の領域に積層された正極活物質層3と、を含む。本実施形態では、前記第一金属箔層2の一方の面(セパレーター側の面)における中央部(周縁部を除いた領域)に正極活物質層3が積層されている。また、本実施形態では、前記第一金属箔層2の一方の面(セパレーター側の面)の全面にバインダー層7が積層されている。即ち、本実施形態では、前記第一金属箔層2の一方の面(セパレーター側の面)に前記バインダー層7を介して前記正極活物質層3が積層されている(
図2参照)。
【0036】
前記負極部23は、第二金属箔層12と、該第二金属箔層12の一方の面(セパレーター側の面)における一部の領域に積層された負極活物質層13と、を含む。本実施形態では、前記第二金属箔層12の一方の面(セパレーター側の面)における中央部(周縁部を除いた領域)に負極活物質層13が積層されている。また、本実施形態では、前記第二金属箔層12の一方の面(セパレーター側の面)の全面にバインダー層17が積層されている。即ち、本実施形態では、前記第二金属箔層12の一方の面(セパレーター側の面)に前記バインダー層17を介して前記負極活物質層13が積層されている(
図2参照)。
【0037】
前記第一金属箔層2と前記セパレーター21との間に前記正極活物質層3が配置され、前記第二金属箔層12と前記セパレーター21との間に前記負極活物質層13が配置されている(
図2参照)。
【0038】
前記正極部22の第一金属箔層2の前記一方の面(セパレーター21側の面)の周縁部には、正極活物質層が形成されていない領域が存在し、前記負極部23の第二金属箔層12の前記一方の面(セパレーター21側の面)の周縁部には、負極活物質層が形成されていない領域が存在する。しかして、前記正極部22の第一金属箔層2の前記一方の面における正極活物質層が形成されていない周縁部領域と、前記負極部23の第二金属箔層12の前記一方の面における負極活物質層が形成されていない周縁部領域とが、熱可塑性樹脂を含有してなる周縁封止層31を介して接合されて封止されている(
図2参照)。前記セパレーター21の周縁部は、前記周縁封止層31の内周面の高さ方向(厚さ方向)の中間部に侵入して係合した態様になっている(
図2参照)。
【0039】
本実施形態では、前記正極部22の第一金属箔層2の前記一方の面に積層されたバインダー層7における正極活物質層が形成されていない周縁部領域に第一周縁接着剤層6が積層され、前記負極部23の第二金属箔層12の前記一方の面に積層されたバインダー層17における負極活物質層が形成されていない周縁部領域に第二周縁接着剤層16が積層され、これら両接着剤層6、16同士が、前記周縁封止層31を介して接合されて封止された構成が採用されている(
図2参照)。
【0040】
前記セパレーター21と前記正極活物質層3の間に電解液5が封入されている。また、前記セパレーター21と前記負極活物質層13の間に電解液15が封入されている(
図2参照)。前記第一金属箔層2における正極活物質層が形成されていない周縁部領域と、第二金属箔層12における負極活物質層が形成されていない周縁部領域とが、前記周縁封止層31を介して接合されて封止されているので、電解液5、15の漏出を防止することができる。即ち、前記第一金属箔層2の内面側のバインダー層7と前記第二金属箔層12の内面側のバインダー層17との間における前記周縁封止層31、第一周縁接着剤層6及び第二周縁接着剤層16で取り囲まれた封止空間内に、第一金属箔層2側から順に、正極活物質層3、電解液5、セパレーター21、電解液15、負極活物質層13が配置されて封入されている(
図2参照)。
【0041】
上記構成の薄型蓄電デバイス1では、正極部22を構成する第一金属箔層2および負極部23を構成する第二金属箔層12が、蓄電デバイスの外装材としての機能も果たすものであり、即ち、第一、二金属箔層が、電極及び外装材の両機能を果たすものであり、従って本構成にさらに外装材を要することはないから(外装材が不要になるから)、薄型蓄電デバイスとして、軽量化、薄型化、省スペース化を図ることができると共に、コストも低減できる。
【0042】
本発明に係る薄型蓄電デバイスの第二実施形態(好適な実施形態)を
図3、4に示す。この薄型蓄電デバイス1は、上述した第一実施形態の構成を具備した上で、更に次のような構成を備えている。
【0043】
即ち、前記第一金属箔層2の他方の面(セパレーター側の面とは反対側の面)に、該第一金属箔層が露出した第一金属露出部9を残した態様で、第一絶縁樹脂フィルム8が積層されると共に、前記第二金属箔層12の他方の面(セパレーター側の面とは反対側の面)に、該第二金属箔層が露出した第二金属露出部19を残した態様で、第二絶縁樹脂フィルム18が積層されている。本実施形態では、前記第一金属箔層2の他方の面(セパレーター側の面とは反対側の面)に、該第一金属箔層が露出した第一金属露出部9を残した態様で、第三接着剤層41を介して第一絶縁樹脂フィルム8が積層されると共に、前記第二金属箔層12の他方の面(セパレーター側の面とは反対側の面)に、該第二金属箔層が露出した第二金属露出部19を残した態様で、第四接着剤層42を介して第二絶縁樹脂フィルム18が積層されている。また、本実施形態では、前記第一金属露出部9は、第一金属箔層2の他方の面における中央領域に設けられ、前記第二金属露出部19は、第二金属箔層12の他方の面における中央領域に設けられている(
図3、4参照)。
【0044】
この第二実施形態の薄型蓄電デバイス1では、前記第一実施形態と同様に、第一、二金属箔層が、電極及び外装材の両機能を果たすものであり、従って本構成にさらに外装材を要することはないから(即ち外装材が不要になるから)、蓄電デバイスとして、軽量化、薄型化、省スペース化を図ることができると共に、コストも低減できる。
【0045】
また、絶縁樹脂フィルム8、18がデバイスの両側に積層されていることにより、(金属露出部を除いて)絶縁性を十分に確保できると共に、物理的強度も十分に確保できる。従って、本発明の薄型蓄電デバイス1を、絶縁性を備えていることが要求される箇所や凹凸のある箇所へ搭載することにも十分に対応できる。
【0046】
また、正極と電気的に導通している第一金属露出部9および負極と電気的に導通している第二金属露出部19が存在していることで、これら金属露出部9、19を介して電気の授受を行うことができるので、従来のリード線(
図10で示すタブリード131、141など)を不要とできる(使用しないで済む)利点がある。従って、薄型蓄電デバイスの部品点数を低減できるし、さらに軽量化を図ることができる。
【0047】
更に、従来のリード線が不要となるので、蓄電デバイスの充放電時の発熱がリード線周りに集中するような現象が生じないし、正極部を構成する第一金属箔層2および負極部を構成する第二金属箔層12を介して発熱を薄型蓄電デバイス1の両面の全体にわたって拡散させることができるので、蓄電デバイス1の寿命を延ばすことができる(即ち長寿命の蓄電デバイスを得ることができる)。また、リード線が不要となることで、その分製造コストを低減できる。
【0048】
加えて、乾電池のように、ホルダーに本発明の薄型蓄電デバイス1を嵌め込むという簡単な装着手法を採用することもできる。
【0049】
本発明において、前記第一金属箔層2は、特に限定されるものではないが、アルミニウム箔で形成されるのが好ましい。前記第一金属箔層2の厚さは7μm〜150μmに設定されるのが好ましい。特に薄型リチウム2次電池として使用される場合には、第一金属箔層2は、厚さが7μm〜50μmの硬質のアルミニウム箔で形成されるのが好ましい。
【0050】
前記正極活物質層3は、特に限定されるものではないが、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム塩など)、PAN(ポリアクリロニトリル)等のバインダーに、塩(例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リン酸鉄リチウム、マンガン酸リチウム等)を添加した混合組成物などで形成される。前記正極活物質層3の厚さは、2μm〜300μmに設定されるのが好ましい。
【0051】
前記正極活物質層3には、カーボンブラック、CNT(カーボンナノチューブ)等の導電補助剤をさらに含有せしめてもよい。
【0052】
前記バインダー層7としては、特に限定されるものではないが、例えば、PVDF、SBR、CMC、PAN等で形成された層が挙げられ、例えば、第一金属箔層2の前記一方の面(セパレーター21側の面)に塗布することにより形成できる。
【0053】
前記バインダー層7には、第一金属箔層2と正極活物質層3の間の導電性を向上させるために、カーボンブラック、CNT(カーボンナノチューブ)等の導電補助剤がさらに添加されていてもよい。
【0054】
前記バインダー層7の厚さは、0.2μm〜10μmに設定されるのが好ましい。10μm以下とすることで、バインダー自体が蓄電デバイス1の内部抵抗を増大させることを極力抑制することができる。
【0055】
前記バインダー層7は、設けられていなくても良いが、第一金属箔層2と正極活物質層3の結着性を向上させるために、第一金属箔層2と正極活物質層3の間に設けられているのが好ましい。
【0056】
前記第一周縁接着剤層6としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、エラストマー系接着剤、フッ素系接着剤等により形成された接着剤層が挙げられる。中でも、アクリル系接着剤、ポリオレフィン系接着剤を用いるのが好ましく、この場合には、耐電解液性および水蒸気バリア性を向上させることができる。また、2液硬化型のオレフィン系接着剤により形成された層であるのが特に好ましい。2液硬化型のオレフィン系接着剤を用いた場合には、電解液による膨潤で接着性が低下するのを十分に防止できる。なお、蓄電デバイス1として電池を構成する場合には、前記第一周縁接着剤層6は、酸変性ポリプロピレン接着剤、酸変性ポリエチレン接着剤を用いるのが好ましい。前記第一周縁接着剤層6の厚さは、0.5μm〜5μmに設定されるのが好ましい。
【0057】
本発明において、前記第二金属箔層12は、特に限定されるものではないが、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔またはチタン箔で形成されるのが好ましい。前記第二金属箔層12の厚さは、7μm〜50μmに設定されるのが好ましい。
【0058】
前記負極活物質層13としては、特に限定されるものではないが、例えば、PVDF、SBR、CMC、PAN等のバインダーに、添加物(例えば、黒鉛、チタン酸リチウム、Si系合金、スズ系合金等)を添加した混合組成物等で形成される。前記負極活物質層13の厚さは、1μm〜300μmに設定されるのが好ましい。
【0059】
前記負極活物質層13には、カーボンブラック、CNT(カーボンナノチューブ)等の導電補助剤をさらに含有せしめてもよい。
【0060】
前記負極活物質層13や前記正極活物質層3を当該活物質の塗工により形成する場合には、活物質を塗工しない部分(周縁部等)に予めマスキングテープでマスキングを行ってから塗工することにより、活物質を塗工しない部分(周縁部等)に活物質を付着させることなく、所定領域に活物質層を形成することができる。前記マスキングテープとしては、ポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレン樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルム等のフィルムに粘着剤を塗布したものを使用できる。
【0061】
前記バインダー層17としては、特に限定されるものではないが、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム塩など)、PAN(ポリアクリロニトリル)等で形成された層が挙げられ、例えば、第二金属箔層12の前記一方の面(セパレーター側の面)に塗布することにより形成できる。
【0062】
前記バインダー層17には、第二金属箔層12と負極活物質層13の間の導電性を向上させるために、カーボンブラック、CNT(カーボンナノチューブ)等の導電補助剤がさらに添加されていてもよい。
【0063】
前記バインダー層17の厚さは、0.2μm〜10μmに設定されるのが好ましい。10μm以下とすることで、バインダー自体が蓄電デバイス1の内部抵抗を増大させることを極力抑制することができる。
【0064】
前記バインダー層17は、設けられていなくても良いが、第二金属箔層12と負極活物質層13の結着性を向上させるために、第二金属箔層12と負極活物質層13の間に設けられているのが好ましい。
【0065】
前記第二周縁接着剤層16としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、エラストマー系接着剤、フッ素系接着剤等により形成された接着剤層が挙げられる。中でも、アクリル系接着剤、ポリオレフィン系接着剤を用いるのが好ましく、この場合には、耐電解液性および水蒸気バリア性を向上させることができる。また、2液硬化型のオレフィン系接着剤により形成された層であるのが特に好ましい。2液硬化型のオレフィン系接着剤を用いた場合には、電解液による膨潤で接着性が低下するのを十分に防止できる。なお、蓄電デバイス1として電池を構成する場合には、前記第二周縁接着剤層16は、酸変性ポリプロピレン接着剤、酸変性ポリエチレン接着剤を用いるのが好ましい。前記第二周縁接着剤層16の厚さは、0.5μm〜5μmに設定されるのが好ましい。
【0066】
上記実施形態では、前記周縁封止層(熱可塑性樹脂を含有してなる周縁封止層)31は、第一金属箔層2の一方の面の周縁部に積層された第一熱可塑性樹脂層4と、第二金属箔層12の一方の面の周縁部に積層された第二熱可塑性樹脂層14とが重ね合わされて熱により融着されて形成されたものである。前記第一熱可塑性樹脂層4としては、熱可塑性樹脂未延伸フィルムで形成されるのが好ましい。また、前記第二熱可塑性樹脂層14としては、熱可塑性樹脂未延伸フィルムで形成されるのが好ましい。
【0067】
前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム4、14は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムにより構成されるのが好ましい。
【0068】
前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム4、14の厚さは、それぞれ、20μm〜150μmに設定されるのが好ましい。
【0069】
前記セパレーター21としては、特に限定されるものではないが、例えば、
・ポリエチレン製セパレーター
・ポリプロピレン製セパレーター
・ポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとからなる複層フィルムで形成されるセパレーター
・上記のいずれかにセラミック等の耐熱無機物を塗布した湿式又は乾式の多孔質フィルムで構成されるセパレーター
等が挙げられる。前記セパレーター21の厚さは、5μm〜50μmに設定されるのが好ましい。
【0070】
前記電解液5、15としては、特に限定されるものではないが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジメトキシエタンからなる群より選ばれる少なくとも2種の電解液と、リチウム塩と、を含む混合非水系電解液を用いるのが好ましい。前記リチウム塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム等が挙げられる。前記電解液5、15としては、前述の混合非水系電解液が、PVDF、PEO(ポリエチレンオキサイド)等とゲル化したものを用いてもよい。
【0071】
前記セパレーター21と前記電解液5、15は、前記第一金属箔層2と前記第二金属箔層12の間の空間内において周囲を周縁封止層31等で取り囲まれて中に密閉状態に封入されているので(
図2、4参照)、電解液の漏出を防止できる。
【0072】
前記第一絶縁樹脂フィルム8および第二絶縁樹脂フィルム18としては、特に限定されるものではないが、延伸ポリアミドフィルム(延伸ナイロンフィルム等)または延伸ポリエステルフィルムを用いるのが好ましい。中でも、二軸延伸ポリアミドフィルム(二軸延伸ナイロンフィルム等)、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたは二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが特に好ましい。なお、前記第一絶縁樹脂フィルム8および第二絶縁樹脂フィルム18は、いずれも、単層で形成されていても良いし、或いは、例えば延伸ポリエステルフィルム/延伸ポリアミドフィルムからなる複層(延伸PETフィルム/延伸ナイロンフィルムからなる複層等)で形成されていても良い。
【0073】
前記第一絶縁樹脂フィルム8には、第一金属露出部9を確保するための開口部8Xが一部に設けられる(
図4参照)。上記実施形態では、開口部8Xは、第一絶縁樹脂フィルム8の中央部に設けられているが、特にこのような位置に限定されるものではない。前記開口部8Xの平面視形状も矩形状に限定されない。
【0074】
同様に、前記第二絶縁樹脂フィルム18には、第二金属露出部19を確保するための開口部18Xが一部に設けられる(
図4参照)。上記実施形態では、開口部18Xは、第二絶縁樹脂フィルム18の中央部に設けられているが、特にこのような位置に限定されるものではない。前記開口部18Xの平面視形状も矩形状に限定されない。
【0075】
前記第一絶縁樹脂フィルム8の厚さおよび前記第二絶縁樹脂フィルム18の厚さは、いずれも、0.02mm〜0.1mmに設定されるのが好ましい。
【0076】
前記第三接着剤層41、前記第四接着剤層42を設ける場合において、これら接着剤41、42としては、特に限定されるものではないが、ポリエステルウレタン系接着剤およびポリエーテルウレタン系接着剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の接着剤を用いるのが好ましい。前記ポリエステルウレタン系接着剤としては、例えば、主剤としてのポリエステル樹脂と、硬化剤としての多官能イソシアネート化合物とによる二液硬化型ポリエステルウレタン系樹脂接着剤が挙げられる。前記ポリエーテルウレタン系接着剤としては、例えば、主剤としてのポリエーテル樹脂と、硬化剤としての多官能イソシアネート化合物とによる二液硬化型ポリエーテルウレタン系樹脂接着剤が挙げられる。前記第三接着剤層41の厚さ、前記第四接着剤層42の厚さは、いずれも、0.5μm〜5μmに設定されるのが好ましい。前記第一金属箔層2の他方の面(セパレーター側と反対側の面)に上記第三接着剤41を塗布した後、第一絶縁樹脂フィルム8を貼り合わせて両者を接着一体化するのがよい。また、前記第二金属箔層12の他方の面(セパレーター側と反対側の面)に上記第四接着剤42を塗布した後、第二絶縁樹脂フィルム18を貼り合わせて両者を接着一体化するのがよい。
【0077】
前記第三接着剤層41および前記第四接着剤層42における接着剤未塗布部(開口部8X、18Xに対応する領域)は、絶縁樹脂フィルム(耐熱性樹脂延伸フィルム等)を通して外観しても接着剤塗布領域とは光沢度が異なるので、開口部のない絶縁樹脂フィルムを貼り合わせた状態でも外側から接着剤未塗布部の位置および形状を判別することができる。しかして、前記貼り合わせた絶縁樹脂フィルムにおける接着剤未塗布部に対応する部分を除去することによって、前記開口部8X、18Xを形成せしめて前記金属露出部9、19を露出させた構成とすることができる。例えば、前記貼り合わせた絶縁樹脂フィルムにおける接着剤未塗布部の周縁にレーザーを照射して、接着剤未塗布部に対応する部分の絶縁樹脂フィルムを切断することにより、前記開口部8X、18Xを形成せしめて前記金属露出部9、19を露出させた構成とすることができる。
【0078】
また、前記第三接着剤層41および前記第四接着剤層42は、接着剤未塗布部を判別し易くするために上記接着剤に有機系顔料、無機系顔料、色素等の着色剤を樹脂成分100質量部に対し0.1質量部〜5質量部の範囲で添加しても良い。前記有機系顔料としては、特に限定されるものではないが、例えばレーキレッド、ナフトール類、ハンザイエロー、ジスアゾイエロー、ベンズイミダゾロン等のアゾ系顔料、キノフタロン、イソインドリン、ピロロピロール、ジオキサジン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の多環式系顔料、レーキレッドC、ウォチュングレッド等のレーキ顔料などが挙げられる。また、前記無機系顔料としては、特に限定されるものではないが、例えばカーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、酸化鉄、酸化亜鉛等が挙げられる。また、前記色素としては、特に限定されるものではないが、例えばトリナトリウム塩(黄色4号)等の黄色色素類、ジナトリウム塩(赤色3号)等の赤色色素類、ジナトリウム塩(青色1号)等の青色色素類などが挙げられる。
【0079】
また、着色剤の添加の有無にかかわらず、透明の絶縁樹脂フィルム(耐熱性樹脂延伸フィルム等)を貼り合わせることで、接着剤未塗布部を判別し易くできる。前記第三接着剤層41や前記第四接着剤層42の接着剤に前記着色剤を添加し、かつ透明の絶縁樹脂フィルム(耐熱性樹脂延伸フィルム等)を貼り合わせた構成とすれば、接着剤未塗布部の判別は極めて容易なものとなる。
【0080】
本発明において、前記第一金属箔層2における少なくとも前記正極活物質層3が積層される側の面に化成皮膜が形成されているのが好ましい。また、同様に、前記第二金属箔層12における少なくとも前記負極活物質層13が積層される側の面に化成皮膜が形成されているのが好ましい。前記化成皮膜は、金属箔の表面に化成処理を施すことによって形成される皮膜であり、このような化成処理が施されていることによって、内容物(電解液等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。例えば、次のような処理を行うことによって、金属箔に化成処理を施す。即ち、脱脂処理を行った金属箔の表面に、
1)リン酸と、
クロム酸と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)〜3)のうちのいずれかの水溶液を金属箔の表面に塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施す。
【0081】
前記化成皮膜は、クロム付着量(片面当たり)として0.1mg/m
2〜50mg/m
2が好ましく、特に2mg/m
2〜20mg/m
2が好ましい。
【0082】
次に、本発明の薄型蓄電デバイス1を電気2重層キャパシタとして使用する場合における該薄型蓄電デバイスの好適構成について説明するが、あくまでも好適構成について説明するものであって、これら例示の構成に限定されるものではない。
【0083】
即ち、電気2重層キャパシタとして使用する場合には、前記第一金属箔層2および前記第二金属箔層12は、いずれも、厚さが7μm〜50μmの硬質のアルミニウム箔で形成されるのが好ましい。
【0084】
前記正極活物質層3および前記負極活物質層13としては、特に限定されるものではないが、いずれの層も、例えば、カーボンブラック、CNT(カーボンナノチューブ)等の導電剤を含有する構成であるのが好ましい。
【0085】
前記セパレーター21としては、特に限定されるものではないが、厚さ5μm〜100μmの多孔質のポリセルロース膜、厚さ5μm〜100μmの不織布等が好適に用いられる。
【0086】
前記電解液5、15としては、特に限定されるものではないが、水、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびアセトニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒と、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウムおよびテトラフルオロホウ酸4級アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩と、を含む電解液を用いるのが好ましい。前記4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0087】
以上、電気2重層キャパシタとして使用する場合における本発明の薄型蓄電デバイスの好適構成について説明した。以下は、電気2重層キャパシタ以外の他の用途も全て含めた説明である。
【0088】
本発明の薄型蓄電デバイス1は、通常は、厚さ0.08mm〜0.3mmに設定される。中でも、薄型蓄電デバイス1の厚さは、0.1mm〜0.2mmに設定されるのが好ましい。
【0089】
次に、本発明の薄型蓄電デバイス1を用いて構成される蓄電デバイスモジュールについて説明する。この蓄電デバイスモジュール50の一実施形態を
図5、6に示す。
【0090】
前記蓄電デバイスモジュール50は、本発明の薄型蓄電デバイス1が複数枚厚さ方向に積層された(積んで重ね合わされた)構成である(
図5、6参照)。本実施形態の蓄電デバイスモジュール50では、各薄型蓄電デバイス1における第一金属露出部9及び第一金属露出部19のそれぞれに導電性樹脂が塗布されている。即ち、各薄型蓄電デバイス1における第一金属露出部9の表面に、導電性樹脂を含有してなる正極側導電層51が形成されると共に、第二金属露出部19の表面に、導電性樹脂を含有してなる負極側導電層52が形成されている(
図6参照)。しかして、前記蓄電デバイスモジュール50では、隣り合う薄型蓄電デバイス1において、一方の蓄電デバイス1の正極側導電層51と、他方の蓄電デバイス1の負極側導電層52とが互いに十分に接触するものとなって、複数枚の薄型蓄電デバイス1が直列に接続された構成になっている(
図6参照)。前記導電性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、カーボンを含有した樹脂等が挙げられる。
【0091】
上記実施形態では、金属露出部9、19に導電性樹脂が塗布された構成であるが、特にこのような構成に限定されるものではなく、例えば、金属露出部9、19に、100μm以下の金属箔(アルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔、ニッケル箔等)が積層された構成を採用してもよい。即ち、第一金属露出部9の表面に、金属箔からなる正極側導電層51が形成されると共に、第二金属露出部19の表面に、金属箔からなる負極側導電層52が形成された構成であってもよい。
【0092】
このように正極側導電層51および負極側導電層52が設けられていることで、単に重ね合わせて積層配置するだけで、隣り合う蓄電デバイス1同士において十分に電気的導通状態を確保することができる利点がある。
【0093】
或いは、このような導電層51、52を設けることなく、厚さ方向に隣り合う薄型蓄電デバイス1において、一方の蓄電デバイス1の第一金属露出部9と、他方の蓄電デバイス1の第二金属露出部19とを互いに接触させて、複数枚の薄型蓄電デバイス1が直列に接続された構成であってもよい。前記絶縁樹脂フィルム層8、18の厚さが小さい場合には、正極側導電層51および負極側導電層52を設けなくても、隣り合う蓄電デバイス1同士において十分に電気的導通状態を確保できる。
【0094】
次に、本発明の薄型蓄電デバイス1が複数枚厚さ方向に積層されてなる前記蓄電デバイスモジュール50(
図5、6参照)の使用例について説明する。
【0095】
前記蓄電デバイスモジュール50は、薄型蓄電デバイス1が複数枚積層された構成であるので、変形することが可能である。例えば、蓄電デバイスモジュール50を曲げて円筒状にすることも可能であり、さらに小さく曲げて複数回捲回して円筒状に形成することも可能である。前記蓄電デバイスモジュール50のこのような特性を生かして以下に説明する構成(
図9参照)を採用することもできる。
【0096】
図9では、蓄電デバイス1が長い矩形状に構成されると共に、第一金属露出部9及び第二金属露出部19が、蓄電デバイスの長さ方向の端部に設けられているが、その他の構成は、
図5、6の蓄電デバイスと同様である。しかして、
図9では、薄型蓄電デバイス1が複数枚厚さ方向に積層されてなる蓄電デバイスモジュール50が、捲回されて円筒状に構成されている。第一金属露出部9及び第二金属露出部19が、蓄電デバイス1の長さ方向の端部に設けられているので、機器(電子タバコ、ペンライトなど)等の端子(正極側接続端子、負極側接続端子)との接続が容易である。また、モジュール50の外面が絶縁樹脂フィルム8、18で形成されているので、十分な絶縁性を確保できる。
【0097】
次に、本発明の薄型蓄電デバイス1の製造方法の一例を説明する。まず、正極側シート体61、負極側シート体62およびセパレーター21をそれぞれ準備する(
図7参照)。
【0098】
即ち、第一金属箔層2の一方の面における一部の領域にバインダー層7を介して正極活物質層3が積層され、前記第一金属箔層2の前記一方の面に積層されたバインダー層7における正極活物質層が形成されていない周縁部に第一周縁接着剤層6を介して第一熱可塑性樹脂層4が積層されると共に、前記第一金属箔層2の他方の面に、第一金属箔層2が露出した第一金属露出部9を残した態様で、第三接着剤層41を介して第一絶縁樹脂フィルム層8が積層されてなる正極側シート体61を準備する(
図7参照)。前記第一熱可塑性樹脂層4は、熱可塑性樹脂未延伸フィルムで形成されるのが好ましい。また、前記第一絶縁樹脂フィルム層8は、耐熱性樹脂延伸フィルムで形成されるのが好ましい。
【0099】
また、第二金属箔層12の一方の面における一部の領域にバインダー層17を介して負極活物質層13が積層され、前記第二金属箔層12の前記一方の面に積層されたバインダー層17における負極活物質層が形成されていない周縁部に第二周縁接着剤層16を介して第二熱可塑性樹脂層14が積層されると共に、前記第二金属箔層12の他方の面に、第二金属箔層12が露出した第二金属露出部19を残した態様で、第四接着剤層42を介して第二絶縁樹脂フィルム層18が積層されてなる負極側シート体62を準備する(
図7参照)。前記第二熱可塑性樹脂層14は、熱可塑性樹脂未延伸フィルムで形成されるのが好ましい。また、前記第二絶縁樹脂フィルム層18は、耐熱性樹脂延伸フィルムで形成されるのが好ましい。
【0100】
また、セパレーター21を準備する。しかして、正極側シート体61と負極側シート体62とを互いの熱可塑性樹脂層4、14で接触させると共に、正極活物質層3と負極活物質層13との間にセパレーター21を挟み込んで、これら重ね合わされた正極側シート体61と負極側シート体62の周縁部を熱板等を用いて挟圧することによって、第一熱可塑性樹脂層4と第二熱可塑性樹脂層14とをヒートシール接合する。
【0101】
前記ヒートシール接合は、重ね合わされた正極側シート体61と負極側シート体62の周縁部の4辺のうち3辺について先に行って仮封止を行うようにし、次いで残りの未封止の1辺部からセパレーター21と正極活物質層3との間およびセパレーター21と負極活物質層13との間に電解液5、15を注入し、しかる後、未シール箇所の残りの1辺を上下から一対の熱板等で挟圧することによって、4辺を完全に封止接合して、
図3、4に示す本発明の薄型蓄電デバイス1を得る。得られた薄型蓄電デバイス1では、第一絶縁樹脂フィルム層8の中央部の開口部8Xを介して第一金属露出部9が露出すると共に、第二絶縁樹脂フィルム層18の中央部の開口部18Xを介して第二金属露出部19が露出している(
図3、4参照)。
【0102】
上記製造方法は、その一例を挙げたものに過ぎず、特にこのような製造方法に限定されるものではない。
【実施例】
【0103】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0104】
<実施例1>
(正極側シート体61の作成)
縦20cm、横30cm、厚さ15μmの硬質アルミニウム箔(JIS H4160で分類されるA1100の硬質アルミニウム箔)2の一方の面(の全面)に、バインダーとしてのPVDFを溶媒のジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させたバインダー液を塗布した後、100℃で30秒間乾燥せしめることによって、乾燥後の厚さが0.5μmのバインダー層7を形成した。
【0105】
コバルト酸リチウムを主成分とする正極活物質60質量部、結着剤兼電解液保持剤としてのPVDF10質量部、アセチレンブラック(導電材)5質量部、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(有機溶媒)25質量部が混練分散されてなるペーストを75mm×44mmのサイズで前記バインダー層7の表面の3箇所に塗布した後、100℃で30分間乾燥させて、次いで熱プレスを行うことによって、密度4.8g/cm
3、乾燥後の厚さが30.2μmの正極活物質層3を形成した(
図8(A)参照)。
【0106】
次に、3箇所の正極活物質層3のそれぞれの上に、同一サイズのポリエステル粘着テープを貼着することによって正極活物質層3のマスキングを行った後、このマスキングを行った側の面に、2液硬化型のオレフィン系接着剤(第一周縁接着剤層)6を厚さ2μmで塗布して100℃で15秒間乾燥せしめ、次いでさらにこの第一周縁接着剤の上に厚さ25μmの未延伸ポリプロピレンフィルム4Aを貼り合わせ、40℃の恒温槽に3日間放置して養生を行った後、前記ポリエステル粘着テープの外縁(正極活物質層3の外縁)に合わせた位置で未延伸ポリプロピレンフィルム層4Aのみに切り込みを入れ、次いでポリエステル粘着テープと一緒に未延伸ポリプロピレンフィルム(切り込みの内側部分のみ;粘着テープに対応する領域のみ)を除去することによって、正極活物質層3の表面を露出させた(
図8(B)参照)。
【0107】
次に、正極活物質層3の露出面の外縁から外方に向けて5mmの位置(
図8(B)で二点鎖線の位置)で全周にわたって切り出すことによって、85mm×54mmのサイズの正極側シート体61を3片作成した(
図8(C)参照、参考図;
図7)。
【0108】
前記未延伸ポリプロピレンフィルムによって形成された第一熱可塑性樹脂層4の幅Mは5mmであった(
図8(C)参照)。
【0109】
(負極側シート体62の作成)
縦20cm、横30cm、厚さ15μmの硬質銅箔(JIS H3100で分類されるC1100Rの硬質銅箔)2の一方の面(の全面)に、バインダーとしてのPVDFを溶媒のジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させたバインダー液を塗布した後、100℃で30秒間乾燥せしめることによって、乾燥後の厚さが0.5μmのバインダー層17を形成した。
【0110】
カーボン粉末を主成分とする負極活物質57質量部、結着剤兼電解液保持剤としてのPVDFを5質量部、ヘキサフルオロプロピレンと無水マレイン酸の共重合体10質量部、アセチレンブラック(導電材)3質量部、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(有機溶媒)25質量部が混練分散されてなるペーストを75mm×44mmのサイズで前記バインダー層17の表面の3箇所に塗布した後、100℃で30分間乾燥させて、次いで熱プレスを行うことによって、密度1.5g/cm
3、乾燥後の厚さが20.1μmの負極活物質層13を形成した。
【0111】
次に、3箇所の負極活物質層13のそれぞれの上に、同一サイズのポリエステル粘着テープを貼着することによって負極活物質層13のマスキングを行った後、このマスキングを行った側の面に、2液硬化型のオレフィン系接着剤(第二周縁接着剤層)16を厚さ2μmで塗布して100℃で15秒間乾燥せしめ、次いでさらにこの第二周縁接着剤の上に厚さ25μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを貼り合わせ、40℃の恒温槽に3日間放置して養生を行った後、前記ポリエステル粘着テープの外縁(負極活物質層13の外縁)に合わせた位置で未延伸ポリプロピレンフィルム層のみに切り込みを入れ、次いでポリエステル粘着テープと一緒に未延伸ポリプロピレンフィルム(切り込みの内側部分のみ;粘着テープに対応する領域のみ)を除去することによって、負極活物質層13の表面を露出させた。
【0112】
次に、負極活物質層13の露出面の外縁から外方に向けて5mmの位置で全周にわたって切り出すことによって、85mm×54mmのサイズの負極側シート体62(参考図;
図7)を3片作成した。
【0113】
前記未延伸ポリプロピレンフィルムによって形成された第二熱可塑性樹脂層14の幅は5mmであった。
【0114】
(薄型蓄電デバイス1の作成)
次に、上記正極側シート体61と負極側シート体62との間に、縦85mm×横54mm×厚さ8μmの多孔質の湿式セパレーター21を配置した(参考図;
図7)。この時、正極側シート体61は、セパレーター21側に正極活物質層3が存在するように配置すると共に、負極側シート体62は、セパレーター21側に負極活物質層13が存在するように配置した(参考図;
図7)。
【0115】
次いで、正極側シート体61と負極側シート体62との間にセパレーター21を挟み付けた状態で、平面視における4辺のうちの3辺を上下から一対の200℃の熱板で0.2MPaの圧力で3秒間挟圧して熱シールを行うことによって、3辺を封止接合した。
【0116】
次に、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)が等量体積比で配合された混合溶媒に、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)が濃度1モル/Lで溶解された電解液を、未シール箇所の1辺からシリンジを用いて、セパレーター21と正極活物質層3との間およびセパレーター21と負極活物質層13との間にそれぞれ0.5mL注入した後、真空シールすることにより、仮封止を行った。
【0117】
しかる後、4.2Vの電池電圧が発生するまで充電を行い、電極やセパレーター等からのガスを発生させた後、3.0Vの放電状態で且つ0.086MPaの減圧下で、未シール箇所の残りの1辺を上下から一対の200℃の熱板で0.2MPaの圧力で挟圧して3秒間熱シールを行うことによって、4辺を完全に封止接合して、
図1、2に示す構成の電池容量20mAhのカード型の薄型蓄電デバイス(薄型模擬電池)1を得た。
【0118】
<実施例2>
負極部の第二金属箔層として、硬質の銅箔に代えて、硬質のステンレス箔(SUS304)を使用した以外は、実施例1と同様にして、
図1、2に示す構成の電池容量20mAhのカード型の薄型蓄電デバイス(薄型模擬電池)1を得た。
【0119】
<実施例3>
実施例1で得た正極側シート体61に更に次のような付加構成を設けたこと以外は、実施例1と同様にして、
図3、4に示す構成の電池容量20mAhのカード型の薄型蓄電デバイス(薄型模擬電池)1を得た。
【0120】
次のようにして付加構成を設けた。即ち、実施例1で得た正極側シート体61の硬質アルミニウム箔(第一金属箔層)2の他方の面(正極活物質層3が形成された側と反対側の面)の中央部に、5mm×5mmのサイズのポリエステル粘着テープを貼り付けてマスキングを行った後、このマスキングを行った側の面の全面に、ポリエステルウレタン系接着剤(第三接着剤層)41を厚さ2μmで塗布して100℃で15秒間乾燥せしめ、次いでこの第三接着剤層41の上に厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(第一絶縁樹脂フィルム層)8を貼り合わせ、40℃の恒温槽に3日間放置して養生を行った後、前記ポリエステル粘着テープの外縁に合わせた位置で二軸延伸ポリエステルフィルムのみに切り込みを入れ、次いでポリエステル粘着テープと一緒に当該部分の二軸延伸ポリエステルフィルムを除去して二軸延伸ポリエステルフィルムの中央部に開口部8Xを設けることによって、硬質アルミニウム箔(第一金属箔層)2の他方の面の中央部に5mm×5mmのサイズの第一金属露出部9を露出させて、
図7に示す正極側シート体61を得た。
【0121】
また、同様に、実施例1で得た負極側シート体62の硬質銅箔(第二金属箔層)12の他方の面(負極活物質層13が形成された側と反対側の面)の中央部に、5mm×5mmのサイズのポリエステル粘着テープを貼り付けてマスキングを行った後、このマスキングを行った側の面の全面に、ポリエステルウレタン系接着剤(第四接着剤層)42を厚さ2μmで塗布して100℃で15秒間乾燥せしめ、次いでこの第四接着剤層42の上に厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(第二絶縁樹脂フィルム層)18を貼り合わせ、40℃の恒温槽に3日間放置して養生を行った後、前記ポリエステル粘着テープの外縁に合わせた位置で二軸延伸ポリエステルフィルムのみに切り込みを入れ、次いでポリエステル粘着テープと一緒に当該部分の二軸延伸ポリエステルフィルムを除去して二軸延伸ポリエステルフィルムの中央部に開口部18Xを設けることによって、硬質銅箔(第二金属箔層)12の他方の面の中央部に5mm×5mmのサイズの第二金属露出部19を露出させて、
図7に示す負極側シート体62を得た。
【0122】
こうして得られた正極側シート体61、負極側シート体62を使用して、実施例1と同様にして、薄型蓄電デバイスの作成工程を実施することによって、
図3、4に示す構成の薄型蓄電デバイス(薄型模擬電池)1を得た。
【0123】
<比較例1>
まず、下記のようにしてラミネート外装材151、152、正極タブリード131、負極タブリード141をそれぞれ準備した。
【0124】
(ラミネート外装材)
厚さ20μmの軟質アルミニウム箔(JIS H4160で分類されるA8021の軟質アルミニウム箔)の一方の面に、ポリエステルウレタン系接着剤を介して厚さ12μmのポリエステルフィルムを貼り合わせ、前記軟質アルミニウム箔の他方の面に、ポリオレフィン系接着剤を介して厚さ25μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせ、次いで40℃の恒温槽内で3日間養生した後、裁断することによって、85mm×54mmのサイズのラミネート外装材151、152を得た。
【0125】
(正極タブリード)
長さ40mm、幅3mm、厚さ500μmの硬質のアルミニウム板(JIS H4000で分類されるA1050の硬質アルミニウム箔)の長さ方向の一端から5mm中の位置から内側の部分領域の両面に、長さ10mm、幅5mm、厚さ50μmの無水マレイン酸変性ポリプロピレンフィルム(融点140℃、MFRは3.0g/10分)からなる絶縁フィルム132をヒートシールにより挟着して、
図10に示す正極タブリード131を得た。
【0126】
(負極タブリード)
長さ40mm、幅3mm、厚さ500μmのニッケル板の長さ方向の一端から5mm中の位置から内側の部分領域の両面に、長さ10mm、幅5mm、厚さ50μmの無水マレイン酸変性ポリプロピレンフィルム(融点140℃、MFRは3.0g/10分)からなる絶縁フィルム142をヒートシールにより挟着して、
図10に示す負極タブリード141を得た。
【0127】
(薄型蓄電デバイス160の作成)
縦20cm、横30cm、厚さ15μmの硬質アルミニウム箔(JIS H4160で分類されるA1100の硬質アルミニウム箔)の一方の面(の全面)に、バインダーとしてのPVDFを溶媒のジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させたバインダー液を塗布した後、100℃で30秒間乾燥せしめることによって、乾燥後の厚さが0.5μmのバインダー層を形成した。
【0128】
コバルト酸リチウムを主成分とする正極活物質60質量部、結着剤兼電解液保持剤としてのPVDF10質量部、アセチレンブラック(導電材)5質量部、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(有機溶媒)25質量部が混練分散されてなるペーストを、前記硬質アルミニウム箔のバインダー層の表面に塗布した後、100℃で30分間乾燥させて、次いで熱プレスを行うことによって、密度4.8g/cm
3、乾燥後の厚さが30.2μmの正極活物質層を形成した後、裁断して、75mm×45mmのサイズの正極122を得た。
【0129】
前記正極122における活物質未塗布面(正極活物質層が形成された側と反対側の面)の長さ方向の一端部に、前記正極タブリード131の長さ方向の一端部(絶縁フィルム132が取り付けられた側の一端部)を重ねて、当該重なり部分を超音波溶接機で溶接した(
図10(A)参照)。
図10(A)において、133が、溶接固定部である。
【0130】
縦20cm、横30cm、厚さ15μmの硬質銅箔(JIS H3100で分類されるC1100Rの硬質銅箔)2の一方の面(の全面)に、バインダーとしてのPVDFを溶媒のジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させたバインダー液を塗布した後、100℃で30秒間乾燥せしめることによって、乾燥後の厚さが0.5μmのバインダー層を形成した。
【0131】
カーボン粉末を主成分とする負極活物質100質量部、結着剤兼電解液保持剤としてのPVDFを5質量部、ヘキサフルオロプロピレンと無水マレイン酸の共重合体10質量部、アセチレンブラック(導電材)3質量部、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(有機溶媒)25質量部が混練分散されてなるペーストを、前記硬質銅箔のバインダー層の表面に塗布した後、100℃で30分間乾燥させて、次いで熱プレスを行うことによって、密度1.5g/cm
3、乾燥後の厚さが20.1μmの負極活物質層を形成した後、裁断して、75mm×45mmのサイズの負極123を得た。
【0132】
前記負極123における活物質未塗布面(負極活物質層が形成された側と反対側の面)の長さ方向の一端部に、前記負極タブリード141の長さ方向の一端部(絶縁フィルム142が取り付けられた側の一端部)を重ねて、当該重なり部分を超音波溶接機で溶接した(
図10(A)参照)。
図10(A)において、143が、溶接固定部である。
【0133】
次に、
図10(A)に示すように、正極タブリード131が接合された正極122と、負極タブリード141が接合された負極123との間に、セパレーター121を挟み込んで積層配置して電極本体部110を構成した(
図10(B)参照)。この時、正極122におけるセパレーター121側に正極活物質層が位置すると共に、負極123におけるセパレーター121側に負極活物質層が位置するように配置し、正極タブリード131と負極タブリード141が重なり合わないようにこれらタブリード131、141は、互いに左右反対に位置するようにした(
図10(B)参照)。
【0134】
次に、
図10(B)に示すように、上下一対のラミネート外装材151、152の間に、前記電極本体部110を配置した。この時、ラミネート外装材151、152のポリプロピレンフィルム(ヒートシール層)が内側(電極本体部110側)に位置するように配置した。
【0135】
しかる後、上下一対のラミネート外装材151、152の間に電極本体部110を挟み付けた状態で、平面視における4辺のうちの3辺を上下から一対の200℃の熱板で0.2MPaの圧力で3秒間挟圧して熱シールを行うことによって、3辺を封止接合した。
【0136】
次に、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)が等量体積比で配合された混合溶媒に、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)が濃度1モル/Lで溶解された電解液を、未シール箇所の1辺からシリンジを用いて、セパレーター121と正極活物質層との間およびセパレーター121と負極活物質層との間にそれぞれ0.5mL注入した後、真空シールすることにより、仮封止を行った。
【0137】
しかる後、4.2Vの電池電圧が発生するまで充電を行い、電極やセパレーター等からのガスを発生させた後、3.0Vの放電状態で且つ0.086MPaの減圧下で、未シール箇所の残りの1辺を上下から一対の200℃の熱板で0.2MPaの圧力で挟圧して3秒間熱シールを行うことによって、4辺を完全に封止接合して、
図10(C)に示す構成の電池容量20mAhのカード型の薄型蓄電デバイス(薄型模擬電池)160を得た。
【0138】
【表1】
【0139】
上記のようにして得られた実施例1〜3、比較例1の各薄型蓄電デバイス(薄型模擬電池)について下記評価法に基づいて評価を行った。
【0140】
<軽量性及び薄型性の評価法>
各薄型蓄電デバイスの全体質量(g)を測定して軽量性を調べると共に、薄型蓄電デバイスにおける最も厚い部分の厚さ(μm)を測定して薄型性を調べた。
【0141】
<放電容量比率の評価法>
各薄型蓄電デバイスについてそれぞれサンプルを4個準備した。各薄型蓄電デバイスの第1サンプルに対して10mAの充電電流で4.2Vになるまで充電した後、10mA電流値で3.0Vまで放電したときの放電容量比率(充電直後の放電容量比率)を測定すると共に、内部抵抗測定器を用いて薄型蓄電デバイスの内部抵抗値の測定を行った。
【0142】
なお、各実施例における前記「充電直後の放電容量比率」は、
放電容量比率(%)=(各実施例の充電直後の放電容量測定値)÷(比較例1の充電直後の放電容量測定値)×100
上記計算式で計算される値である。
【0143】
(40℃放置後の放電容量比率)
また、各薄型蓄電デバイスの第2サンプルに対して10mAの充電電流で4.2Vになるまで充電した後、40℃の恒温槽内に7日間放置し、次いでこれを取り出して、10mA電流値で3.0Vまで放電したときの放電容量比率(40℃放置後の放電容量比率)を測定した。
【0144】
なお、各実施例における前記「40℃放置後の放電容量比率」は、
40℃放置後の放電容量比率(%)=(各実施例の40℃放置後の放電容量測定値)÷(比較例1の充電直後の放電容量測定値)×100
上記計算式で計算される値であり、一方、
比較例1における「40℃放置後の放電容量比率」は、
40℃放置後の放電容量比率(%)=(比較例1の40℃放置後の放電容量測定値)÷(比較例1の充電直後の放電容量測定値)×100
上記計算式で計算される値である。
【0145】
(60℃放置後の放電容量比率)
各薄型蓄電デバイスの第3サンプルに対して10mAの充電電流で4.2Vになるまで充電した後、60℃の恒温槽内に7日間放置し、次いでこれを取り出して、10mA電流値で3.0Vまで放電したときの放電容量比率(60℃放置後の放電容量比率)を測定した。なお、「60℃放置後の放電容量比率」の計算式は、上記「40℃放置後の放電容量比率」の計算式に準じる。
【0146】
(80℃放置後の放電容量比率)
更に、各薄型蓄電デバイスの第3サンプルに対して10mAの充電電流で4.2Vになるまで充電した後、80℃の恒温槽内に7日間放置し、次いでこれを取り出して、10mA電流値で3.0Vまで放電したときの放電容量比率(80℃放置後の放電容量比率)を測定した。なお、「80℃放置後の放電容量比率」の計算式は、上記「40℃放置後の放電容量比率」の計算式に準じる。
【0147】
表1から明らかなように、実施例1〜3の薄型蓄電デバイスは、比較例1の従来のタイプと比較して、より軽量であると共に、より薄型化が図られている。比較例1の蓄電デバイスでは、タブリードを要するので(存在しているので)、実施例1〜3のものと比較して質量が相当に大きいものとなっているし、タブリード131、141を上下の外装材151、152で挟み込んだヒートシール部分で厚さが大幅に増大していて薄型化することができない。
【0148】
また、充電直後の放電容量比率が100%であり、80℃放置後の放電容量比率が92%であり、一般的な金属缶を外装としたリチウムイオン電池と比較しても全く問題ないレベルである。また、内部抵抗値も低く抑えられている。
【0149】
本発明の薄型蓄電デバイスは、軽量化及び薄肉化されていて、且つリチウムイオン電池としての基本性能にも優れていることがわかる。
【0150】
【表2】
【0151】
次に、実施例1の薄型蓄電デバイス3枚を
図5、6に示すような態様で直列に積層してなるモジュールを作成した。但し、正極側導電層51、負極側導電層52を設けることなく直列に接続した。
【0152】
表2から明らかなように、前記モジュールの電圧は、11.85Vであり、容量値は19.8mAhであり、このように本発明の薄型蓄電デバイスを複数枚重ねて直列接続されたモジュールは、リチウムイオン電池としての基本性能に優れていることがわかる。