特許第6694306号(P6694306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6694306ロックウール吹付け工法用ロックウール集合体の品質評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6694306
(24)【登録日】2020年4月21日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】ロックウール吹付け工法用ロックウール集合体の品質評価方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 14/46 20060101AFI20200427BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
   C04B14/46
   E04B1/94 E
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-66940(P2016-66940)
(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-178656(P2017-178656A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 亮太
(72)【発明者】
【氏名】谷辺 徹
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−133665(JP,A)
【文献】 特開2013−133664(JP,A)
【文献】 特開2014−101705(JP,A)
【文献】 特開2014−102178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 14/46
E04B 1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターを内蔵したミキサー本体と、当該ミキサー本体に載置されるコップと、コップの内底部に配置され且つ前記モーターと連結し回転するカッターを備えるミキサーの前記コップ内に、ロックウール集合体と該ロックウール集合体の質量の2〜50倍の質量の液体を投入する工程(投入工程)と、
前記投入工程後に、前記カッターを所定の総回転数(NT)となるように回転させる工程(攪拌工程)と、
前記攪拌工程後に、攪拌物を取り出し当該攪拌物中の液体を気化させロックウール解砕物を得る工程(気化工程)と、
公称目開き1mmの篩を用いて前記気化工程で気化させたロックウール解砕物を篩い分ける工程(分級工程)とを備え、
前記分級工程により得られるロックウール解砕物中の1mmの篩における残留物の割合である1mm残留率を求める1mm残留率測定試験により得られる、
前記所定の総回転数(NT)が9500〜10500回転のときの1mm残留率(R1)に対する、前記所定の総回転数(NT)が48000〜50000回転のときの1mm残留率(R2)の次式(1)により求まる減少量が、規定値以下であるロックウール集合体を選定する工程(選定工程)を更に具備することを特徴とするロックウール吹付け工法用ロックウール集合体の品質評価方法
減少量(%)=R1-R2 ・・・・・・ (1)
【請求項2】
上記規定値が20%であることを特徴とする請求項1記載のロックウール吹付け工法用ロックウール集合体の品質評価方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロックウールに関する。例えば、構造物の部材に、耐火性、防火性、吸音性、及び/又は断熱性等を付与する目的で採用されるロックウール、セメント及び水を用いたロックウール吹付け工法において、圧送時のホース内詰まりが生じ難いロックウールに関する。
【背景技術】
【0002】
耐火性、防火性、吸音性及び/又は断熱性などを付与する目的で、構造体表面にロックウール層を設けることが提案されている。ロックウール層の形成には、一般的には、ロックウール、セメント及び水を用いたロックウール吹付け工法が用いられる。
【0003】
ロックウール吹付け工法としては、乾式工法、湿式工法、半乾式工法が知られている。乾式工法は、予め、ロックウールとセメントとを混合した乾燥混合物をノズルから吐出し、これと同時にノズルの周縁に配置した複数個の噴水口より圧力水を噴射し、両者を混合吹付ける工法である。この乾式工法は、嵩比重が0.2〜0.3と軽量の被覆層を形成できるが、施工時にセメントやロックウールによる発塵が著しく、環境上の問題が指摘されている。湿式工法は、乾式工法の欠陥を改善する為になされたものである。この湿式工法は、主材のロックウールとセメントに界面活性剤と増粘剤を配合してなる吹付け施工用被覆材を用い、これに水を加えたペーストを圧縮空気によりノズルから吹付ける方法である。この湿式工法は、浮遊粉塵の問題点は改善されたものの、形成される被覆層の嵩比重が0.4〜0.6と重く、乾式工法に比べてコストが高いという問題が指摘されている。半乾式工法は、予め、ロックウールとセメントとを混合しない工法である。半乾式工法において、ロックウールは、解繊機(解綿機)で解繊(解綿)・破砕され、ロータリーバルブ等により定量的に送り出され、エアブローワーによりホース内を圧送され、吹付けノズルに供給される。セメントはスラリー槽で水と混合されてセメントスラリーとされた後、スラリーポンプにより搬送ホースを通って吹付ノズルに供給される。セメントスラリーは、ノズルの周縁から噴射されるか、或いはノズルの中心から噴射され、ロックウールと合流・混合し、耐火被覆層が形成される。半乾式工法によれば、浮遊粉塵が減少し、乾式工法に近い嵩比重の被覆層が形成できる。このようなことから、半乾式工法がロックウール吹付け工法の主流となっている。
【0004】
上記半乾式工法は、例えば解繊機(解綿機)で細かく粒状にされた後に空気圧送されたロックウールに、セメントと水との混合により製造されたセメントスラリーをノズル先端部で噴射しながら混合し、部材に吹付ける工法である。
【0005】
ところで、半乾式工法によるロックウール吹付け工法時に、圧送時にホース内でロックウールが詰まる、又は吹付けられたロックウールが部材に付かない(落ちてしまう:このようなロックウールは「落ち綿」と言われる。)場合が有ることが認められた。このようなロックウールの割合が多いと、ロックウール吹付け施工性能が確保されないことが予想される。従って、場合によっては、作業を一から遣り直さなければならないことも予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−348978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、これまで、圧送ホース内でのロックウールの詰まりが何に起因しているかは全く判ってなかった。
【0008】
この問題点についての検討が、本発明者によって、鋭意、推し進められて行った。その結果、前記「ロックウールの詰まり」や「落ち綿」の不具合が発生したロックウールは解繊後に短繊維(繊維状となっていない微粒状のものを含む。)の割合が多いものであったことが究明された。そして、解繊後における短繊維の混入率の大小(多寡)の問題は、どうも、用いられたロックウール繊維の折れ易さに原因が有るのではないかとの考えを持つに至った。それは、用いられたロックウールの品番によって、施工性(詰まり易さ、施工面への付着性)が変動していたからである。更なる検討が推し進められて行った結果、ロックウールの繊維強度が充分に有った場合には、ホース内への詰まりも無く、吹付けた部材への付着性も良かったことが判った。そして、ロックウール集合体(解繊前のロックウール)に対してミキサー等による剪断力を加えて解砕した場合、解砕前後の短繊維混入率の増加率が低い場合には、ホース内の詰まりも無く、部材への付着性が良好であることが判って来た。
【0009】
従って、本発明が解決しようとする第1の課題は、ロックウールの吹付け施工に際してホース内でのロックウールの詰まりが改善された技術を提供することである。本発明が解決しようとする第2の課題は、落ち綿が改善された技術を提案することである。本発明は、ロックウールの吹付け施工に際してホース内でのロックウールの詰まりが少なく、且つ落ち綿が少ないロックウール集合体を提供することを目的とする。また、本発明は、ロックウールの吹付け施工に際してホース内でのロックウールの詰まりが少なく、且つ落ち綿が少ないロックウール集合体を選定することが可能なロックウール吹付け工法用ロックウール集合体の品質評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題解決のため鋭意検討した結果、ロックウールの圧送経路内において、結合材と合流前に圧送されているロックウールから粉塵を取り除くことにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下の(1)又は(2)で表すロックウール吹付け工法用ロックウール集合体の品質評価方法である。
(1)モーターを内蔵したミキサー本体と、当該ミキサー本体に載置されるコップと、コップの内底部に配置され且つ前記モーターと連結し回転するカッターを備えるミキサーの前記コップ内に、ロックウール集合体と該ロックウール集合体の質量の2〜50倍の質量の液体を投入する工程(投入工程)と、前記投入工程後に、前記カッターを所定の総回転数(NT)となるように回転させる工程(攪拌工程)と、
前記攪拌工程後に、攪拌物を取り出し当該攪拌物中の液体を気化させロックウール解砕物を得る工程(気化工程)と、
公称目開き1mmの篩を用いて前記気化工程で得たロックウール解砕物を篩い分ける工程(分級工程)とを備え、
前記分級工程により得られるロックウール解砕物中の1mmの篩における残留物の割合である1mm残留率を求める1mm残留率測定試験により得られる、
前記所定の総回転数(NT)が9500〜10500回転のときの1mm残留率(R1)に対する、前記所定の総回転数(NT)が48000〜50000回転のときの1mm残留率(R2)の次式(1)により求まる減少量が、規定値以下であるロックウール集合体を選定する工程(選定工程)を更に具備することを特徴とするロックウール吹付け工法用ロックウール集合体の品質評価方法。
減少量(%)=R1−R2 ・・・・・・ (1)
(2)上記規定値が20%であることを特徴とする上記(1)のロックウール吹付け工法用ロックウール集合体の品質評価方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロックウールの吹付け施工に際してホース内でのロックウールの詰まりが改善される。また、本発明によれば、落ち綿が改善される。本発明によれば、ロックウールの吹付け施工に際してホース内でのロックウールの詰まりが少なく、且つ落ち綿が少ないロックウール集合体が得られる。また、本発明によれば、ロックウールの吹付け施工に際してホース内でのロックウールの詰まりが少なく、且つ落ち綿が少ないロックウール集合体を選定することが可能なロックウール吹付け工法用ロックウール集合体の品質評価方法が得られる。本発明によれば、ロックウール吹付け時に発生する粉塵量、落ち綿を抑制できる。本発明により形成されるロックウール被覆層は、粉状のロックウールが混じり難いので、密度が小さく断熱性又は耐火性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のロックウール集合体は、次の試験方法により求まる減少量が、20%以下であることを特徴とする。
モーターを内蔵したミキサー本体と、当該ミキサー本体に載置されるコップと、コップの内底部に配置され且つ前記モーターと連結し回転するカッターを備えるミキサーの前記コップ内に、ロックウール集合体と該ロックウール集合体の質量の2〜50倍の質量の液体を投入する工程(投入工程)と、
前記投入工程後に、前記カッターを所定の総回転数(N)となるように回転させる工程(攪拌工程)と、
前記攪拌工程後に、攪拌物を取り出し当該攪拌物中の液体を気化させロックウール解砕物を得る工程(気化工程)と、
公称目開き1mmの篩を用いて前記気化工程で得たロックウール解砕物を篩い分ける工程(分級工程)とを備え、
前記分級工程により得られるロックウール解砕物中の1mmにおける残留物の割合である1mm残留率を求め、前記所定の総回転数(N)が9500〜10500回転のときの1mm残留率(R)に対する、前記所定の総回転数(N)が48000〜50000回転のときの1mm残留率(R)の減少量を、次式(1)により求める。
減少量(%)=R−R ・・・・・・ (1)
【0013】
本発明において、上記液体が水及び有機溶媒から選ばれる液体又はこれらの2種以上の混合液であると好ましい。有機溶媒としては、メタノールやエタノール等のアルコール類、アセトンやジエチルケトン等のケトン類、酢酸エチルや蟻酸メチル等のエステル類、エチルエーテルやメチルエーテル等のエーテル類、ベンゼンやトルエン等の芳香族炭化水素類、石油ベンジンやナフサ等の脂肪族炭化水素類、トリクロロエチレンや四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類等が好適な例として挙げられる。沸点が150℃以下の液体が好ましく、沸点が100℃以下の液体がより好ましい。本発明で用いる液体としては、取扱いが容易で燃焼の虞がないことから、水が最も好ましい。本発明において、液体は分散媒のような役割を果たし、ミキサーのコップ内に投入されたロックウール集合体が液体に分散することで、効率よくカッターと接触し解砕される。当該液体は、ミキサーのコップ内に投入するロックウール集合体の質量の2〜50倍の質量を当該コップ内に投入することが好ましく、より好ましくはロックウール集合体の質量の5〜40倍の質量、更に好ましくはロックウール集合体の質量の10〜30倍の質量とする。ロックウール集合体の質量の50倍を超えるとロックウール集合体がカッターと接触し難くなり、2倍未満ではロックウール集合体が液体に分散し難い。また、コップに投入する液体の量は、コップの定格容量の20〜80%とすることが、ロックウール集合体が効率よくカッターと接触し易いことから好ましく、より好ましい液体の投入量は、コップの定格容量の30〜70%とする。更に好ましい液体の投入量は、コップの定格容量の40〜60%とする。
【0014】
本発明において、ロックウールは、溶融炉で溶融された岩石や高炉スラグ等を主体とする材料が、急冷されながら、繊維化された素材(鉱物繊維)である。例えば、高炉スラグを主体とする材料より製造されたスラグウールなども含まれる。前記ロックウールは、繊維化された鉱物繊維を集めただけの原綿を解綿機等で細かくした粒状ロックウールを好適に用いることができる。原綿を用いる場合は、輸送前に解綿機等で細かくして用いる。粒状ロックウールは、ロックウールの原綿を解砕、解綿、切断、分級(例えば、篩い分け)、造粒などの工程の一種又は二種以上の組み合わせにより得られる。この粒状ロックウールは、ロックウールの繊維が凝集しているもので、ロックウールの粒状綿、細粒綿、微粒綿を含むものである。粒状綿としては、日本ロックウール社製「エスファイバー粒状綿」(商品名)、JFEロックファイバー社製「ロクセラム 粒状綿」(商品名)、太平洋マテリアル社製「太平洋ミネラルファイバー粒状綿」(商品名)等の市販のロックウールの粒状綿、細粒綿、微粒綿を好適に用いることが出来る。斯かる粒状ロックウールが用いられた場合、熱がロックウールを被覆する下地に伝わり難く、断熱性、耐火性又は不燃性が得られ、また、吸音性も得られる。
【0015】
本発明に用いるミキサーは、モーターを内蔵したミキサー本体と、当該ミキサー本体に載置されるコップと、コップの内底部に配置され且つ前記モーターと連結し回転するカッターを備えるミキサーである。このようなミキサーとして、野菜や果物等の食材、牛乳やジュース等の飲料及び/又は氷等を切断及び/又は粉砕と同時に混合する家庭用ミキサー又は業務用ミキサーを好適に用いることができる。このようなミキサーとしては、例えば、パナソニック社製業務用ミキサー「MX−152SP−W」(商品型番)(コップの定格容量:1800ml、回転数:9700回転/分)、同社製家庭用ミキサー「ファイバーミキサー(商品名)MX−X300(商品型番)」(コップの定格容量:700ml、回転数:低速;8800回転/分、高速;11700回転/分)、同社製家庭用ミキサー「ファイバーミキサー(商品名)MX−700(商品型番)」(コップの定格容量:1000ml、回転数:低速;7900回転/分、高速;10300回転/分)、テスコム社製ミキサー「ミル&ミキサー(商品名)TML160(商品型番)」(コップの定格容量:400ml、回転数:20000回転/分)、同社製ミキサー「ミル&ミキサー(商品名)TML161(商品型番)」(コップの定格容量:400ml、回転数:20000回転/分)、同社製ミキサー「TM845(商品型番)」(コップの定格容量:1000ml、回転数:10000回転/分)、小泉成器社製ミキサー「ミルミキサー(商品名)KMZ−0400(商品型番)」(コップの定格容量:400ml、回転数:18000回転/分)、デロンギ・グループ社製ミキサー「デロンギパワーブレンダー3WAY(商品名)DBL247(商品型番)」(コップの定格容量:800ml、回転数:22000回転/分)及びこれらに類似のミキサーが好ましい例として例示できる。ここでいうミキサーにはフードプロセッサーも含むものである。
【0016】
ミキサーのコップ内へロックウール集合体と液体を投入する順序はどちらが先でもよく、また、両方同時でもよい。また、ロックウール集合体と液体の何れも、2以上に分けてミキサーのコップ内へ投入してもよく、そのときにどのような順序で投入しても良い。
【0017】
投入工程完了後に、カッターを所定の総回転数となるように回転させる工程(攪拌工程)を行う。カッターの回転数は早く目視で回転数を確認できないことから、回転数を時間で管理する。所定の総回転数(N)となる回転時間(T)を1分間当たりの回転数(N)から導き出す。所定の総回転数(N)となる回転時間(T)は、次式(2)により求まる。
=N÷N×60 (秒) ・・・・(2)
【0018】
本発明に用いるミキサーは、その多くが定格時間(連続攪拌できる時間および次に攪拌できるまでの停止時間)が定められていることが多いことから、本発明における攪拌工程では、回転させた時間の合計が、所定の総回転数(N)となる回転時間(T)となるまで、定格時間に従って攪拌と停止を繰り返す。
【0019】
攪拌工程終了後、コップ内のロックウール(粉砕物)と液体が混ざった攪拌物を、バット、ビーカー、蒸発皿、シャーレ―等の容器に全て取り出す。このとき、ロックウール粉砕物の一部がカッターやコップ等に付着するので、新たな液体で洗い落とす。洗い落とした攪拌物は、他の取り出した攪拌物と合流させる。洗い落としに用いる液体(洗浄液)は、少ない量とすることが好ましい。また、洗浄液は、投入工程でカップに投入した液体と同じ種類を用いることが好ましい。
【0020】
本発明における気化工程は、攪拌物を取り出し当該攪拌物中の液体を気化させロックウール解砕物を得る工程である。攪拌物中の液体を気化させる方法は特に限定されず、攪拌物を加熱する方法、減圧する方法、静置し蒸発させる方法、風などの気流を攪拌物に当てる方法、又はこれらの二種以上を併用する方法等が好適な例として挙げられ、特に、加熱する方法、減圧する方法、加熱と減圧を併用する方法、気流を充てる方法、又はこれらの二種以上を併用する方法がより短時間で攪拌物中の液体を気化させ取り除くことができることから更に好ましい。
【0021】
前記気化工程において、攪拌物中の液体を気化させ取り除いて得たものは、ロックウール粉砕物である。このロックウール粉砕物を、次の分級工程では、公称目開き1mmの篩を用いて篩い分けを行い、ロックウール解砕物中の1mmの篩における残留物の割合(含有率)である1mm残留率を求める。前記所定の総回転数(N)が9500〜10500回転のときの1mm残留率(R)を求める。また、前記所定の総回転数(N)が48000〜50000回転のときの1mm残留率(R)を求める。求めたR及びRを用いて、次式(1)により、減少量を求める。
減少量(%)=R−R ・・・・・・ (1)
【0022】
上記(1)式で求めた減少量が小さいほど繊維が折れ難いロックウール集合体である。減少量が20%以下のロックウール集合体であれば、ロックウールの吹付け施工に際して、圧送ホース内でロックウール繊維が充分折れ難いことから、ホース内でのロックウールの詰まりが起こり難く、また、粉塵が発生し難く、落ち綿の割合が少ない。更に、上記減少量が16%以下のロックウール集合体であれば、より一層、ホース内でのロックウールの詰まりが起こり難く、また、粉塵が発生し難く落ち綿の割合が少ないことから好ましい。
【0023】
また、所定の総回転数(N)が48000〜50000回転のときの1mm残留率(R)が、55%以上であると、ロックウールの吹付け施工に際して、圧送ホース内でロックウール繊維が充分折れ難いことから、ホース内でのロックウールの詰まりが起こり難く、また、粉塵が発生し難く、落ち綿の割合が少ない。更に、Rが、55%以上であると、より一層、ホース内でのロックウールの詰まりが起こり難く、また、粉塵が発生し難く落ち綿の割合が少ないことから好ましい。
【0024】
ロックウール吹付け工法用ロックウール集合体の品質評価方法は、上記で求めた減少量が、規定値以下であるロックウール集合体を選定する工程(選定工程)を更に具備することを特徴とする。当該規定値としては20%が好ましく、16%が更に好ましい。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0026】
[実施例1]
No.1〜No.5の5種類のロックウール集合体を準備した。これら5種類のロックウール集合体から各50gを取り、1000ml即ち1000gの水(20倍の質量の水)とともに、パナソニック社製業務用ミキサー「MX−152SP−W」(商品型番)(コップの定格容量:1800ml、回転数:9700回転/分)のコップに投入した。所定の総回転数(N)を9700回転(総攪拌時間1分間(60秒間))として、当該ミキサーのスイッチを入れ攪拌した。カッターによりロックウール集合体にせん断力が作用し、当該ロックウール集合体は解砕(解繊)され、水と混ざった攪拌物となった。
【0027】
次に、攪拌物を全てステンレス製バットに取り出した後、恒量となるまで105℃の乾燥機の中で乾燥させ、ロックウール粉砕物を得た。このロックウール粉砕物を、受け皿を付けた公称目開き1mmのステンレス製網篩に投入し蓋をして上下動及び水平動を与え篩い分けを行い、篩に留まる試料の1質量%以上が篩を新たに通過しなくなるまで作業を繰り返した。篩い分けによる分級作業終了後、1mm残留率(R)を求めた。同様に、所定の総回転数(N)を48500回転(総攪拌時間5分間(300秒間))として攪拌を行い、1mm残留率(R)を求めた。上記(1)式によりこのときの減少量を求めた。このときの試験結果を表1に示した。
【0028】
【表1】
【0029】
[実施例2]
実施例1と同じ5種類のロックウール集合体を準備し、これら5種類のロックウール集合体から各10gを取り、200ml即ち200gの水(20倍の質量の水)とともに、テスコム社製ミキサー「ミル&ミキサー(商品名)TML160(商品型番)」(コップの定格容量:400ml、回転数:20000回転/分)のコップに投入した。所定の総回転数(N)を10000回転(総攪拌時間30秒間)として、当該ミキサーのスイッチを入れ攪拌した。カッターによりロックウール集合体にせん断力が作用し、当該ロックウール集合体は解砕(解繊)され、水と混ざった攪拌物となった。実施例1と同様にこのときの1mm残留率(R)を求めた。また、同様に、所定の総回転数(N)を48333回転(総攪拌時間2分25秒間(145秒間))として攪拌を行い、1mm残留率(R)を求めた。上記(1)式によりこのときの減少量を求めた。このときの試験結果を表2に示した。
【0030】
【表2】
【0031】
次に、No.1〜No.5の5種類のロックウール集合体と、普通ポルトランドセメントと、水道水とを用い、半乾式工法によりロックウール吹付け作業を10分間行い、鉄骨製の梁にロックウール被覆層を形成した。このロックウール被覆層の形成時、つまり、半乾式工法によるロックウール吹付け時における作業性(ホース内の詰まりの有無)や落ち綿具合を確認した。その結果を表3に示した。このとき、ホース内の詰まりが無かった場合を作業性「良好」、ホース内の詰りがあった場合を作業性「不良」と評価した。また、落ち綿が目視で少なかった場合を落ち綿具合「良好」、落ち綿が多かった場合を落ち綿具合「不良」と評価した。
【0032】
【表3】
【0033】
No.1〜No.3のロックウール集合体は、上記減少率が16%以下のロックウール集合体であり、且つ所定の総回転数(N)が48000〜50000回転のときの1mm残留率(R)が、55%以上であった。これらのロックウール集合体は、本発明の実施例に当たるロックウール集合体である。また、これら3種類のロックウール集合体は、上記減少率が20%以下、特に16%以下であったので、これらをロックウール吹付け工法に用いるロックウール集合体として選択すると、吹付け施工時に発生する粉塵が少なく、落ち綿が少なく、また、ホース内の詰まりが無く作業性が良好である。