特許第6694316号(P6694316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6694316
(24)【登録日】2020年4月21日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】無線タグ通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/59 20060101AFI20200427BHJP
   H04B 5/02 20060101ALI20200427BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
   H04B1/59
   H04B5/02
   G06K7/10 100
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-76752(P2016-76752)
(22)【出願日】2016年4月6日
(65)【公開番号】特開2017-188801(P2017-188801A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2019年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(72)【発明者】
【氏名】佐野 貢一
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−177774(JP,A)
【文献】 特開2003−331382(JP,A)
【文献】 特開2007−176470(JP,A)
【文献】 特表2002−517050(JP,A)
【文献】 特開2003−283367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/59
G06K 7/10
H04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信可能な範囲が重複するように設置され、無線タグとの間で通信を行う複数の通信装置であって、当該通信装置の通信と休止とを切り替える動作切替部を有する複数の通信装置と、
同期制御部によって、前記通信装置それぞれが通信と休止とを繰り返すように前記各通信装置の前記動作切替部を制御し、前記複数の通信装置のうちの少なくともいずれか1つが、前記重複している範囲内に位置する無線タグに対して通信するよう制御する上位機器と、
を有する無線タグ通信システム
【請求項2】
請求項1に記載の無線タグ通信システムにおいて、
前記同期制御部は、前記複数の通信装置のいずれかが無線タグに対して通信を行っている最中は、他の通信装置が休止するように制御する
無線タグ通信システム
【請求項3】
請求項1に記載の無線タグ通信システムにおいて、
前記同期制御部は、前記複数の通信装置のいずれか1つが無線タグに対して通信を行うように制御し、当該1つの通信装置が無線タグに対して通信を行っている最中は、他の通信装置が休止するように制御する
無線タグ通信システム
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線タグ通信システムにおいて、
前記複数の通信装置は、運転移動する移動体に設置されており、前記移動体の進行方向に沿って設置されている複数の無線タグと通信する
無線タグ通信システム
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の無線タグ通信システムにおいて、
前記同期制御部は、1つの通信装置が4秒以内に収まる期間通信を行った後に当該1つの通信装置が少なくとも50ミリ秒以上休止する動作を繰り返すように、前記複数の通信装置それぞれを制御する
無線タグ通信システム
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の無線タグ通信システムにおいて、
前記同期制御部は、前記通信装置の通信と休止との切り替わりの周期が、前記通信装置それぞれで同じとなるように制御する
無線タグ通信システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に記載の実施形態は、無線タグとの間で通信を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
識別情報を記憶した無線タグが普及しており、商品や機材等の物品に貼付するのみならず、建築物や道路周辺などにも無線タグが貼付され、管理され始めている。無線タグとして、ID情報などを記憶し、数cm〜数mの近距離無線通信を行うRFIDタグ(RFID:radio frequency identifier)がある。通信装置(リーダライタ)でRFIDタグを読取ると、読取られたタグIDに紐付けられた情報により、商品情報や位置情報などを入手することができる。
【0003】
関連のある技術として、以下の文献が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−205754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
UHF帯の無線タグ通信システムに関し、特定小電力無線の無線タグ通信装置は、法令などに基づき免許取得や登録の手続きをすることなく、屋外で所在を移動して使用することができる。一方、特定小電力無線の無線タグ通信装置は、例えば電波を最大4秒送信した後に最低50msの間、電波送信を休止(停止)する必要があるなどの制約がある。
【0006】
また、読取りの信頼性などを考慮し、無線タグと通信する通信装置を複数用いて無線タグを読取る場合がある。この場合、通信装置を読取り範囲が重複するように配置し、それぞれが読取り範囲内の無線タグを読取る。
【0007】
しかし、従来の複数台構成の無線タグ通信装置の場合、一つの通信装置の電波送信休止のタイミング(例えば上記50msの間)と、他方の通信装置の電波送信休止のタイミングとが重なり、いずれの通信装置でも無線タグを読むことができないことがある。
【0008】
無線タグが同じ位置に静止しているシーンでは、休止状態から復帰した後に無線タグを読取ることができる。しかし、無線タグや通信装置が移動するシーンでは、通信装置の休止時間が重なると、この休止時間中に無線タグや通信装置が移動し、無線タグが読取り範囲外となる場合がある。この場合、当該無線タグのデータを得ることができない。
【0009】
実施形態は、無線タグとの間での通信の信頼性を向上させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の無線タグ通信装置は、複数の通信部と、制御部とを有する。複数の通信部は、通信可能な範囲が重複するように設置される。複数の通信部は、無線タグとの間で通信を行う。制御部は、通信部それぞれが通信と休止とを繰り返すように制御し、複数の通信部のうちの少なくともいずれか1つが、重複している範囲内に位置する無線タグに対して通信するよう制御する。
【0011】
また、実施形態の無線タグ通信システムは、複数の通信部と、制御部と、無線タグとを有する。複数の通信部は、移動体に設置されており、通信可能な範囲が重複するように設置される。複数の通信部は、無線タグとの間で通信を行う。制御部は、通信部それぞれが通信と休止とを繰り返すように制御し、複数の通信部のうちの少なくともいずれか1つが、重複している範囲内に位置する無線タグに対して通信するよう制御する。無線タグは、移動体の進行方向に沿って複数設置されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態の構成例の概要を示す図である。
図2】実施形態の第1、第2通信装置を移動体に設置し、無線タグを路面に設置した態様例を示す図である。
図3】システムの構成例を示す図であり、特に第1通信装置の構成例に着目したブロック図である。
図4】無線タグ通信部の内部構成例を示す図である。
図5】第1実施形態の通信シーケンスの一例を示す図である。
図6】第2実施形態の構成の概要を示す図である。
図7】第2実施形態の通信シーケンスの一例を示す図である。
図8】第3実施形態の第1、第2通信装置間で入出力される信号を示す図である。
図9】第3実施形態のタイミングチャートの一例を示す図である。
図10】第3実施形態の読取り動作から休止動作までの動作例を示すフローチャートである。
図11】第3実施形態の休止動作から読取り動作までの動作例を示すフローチャートである。
図12】第4実施形態のシステム構成例を示す図であり、特に第1通信装置の構成例に着目したブロック図である。
図13】第4実施形態で使用する各フラグと休止/動作の各状態との対応例を示すタイミングチャートである。
図14】通信装置を3つ以上の構成とする際の信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態の無線タグ通信装置、無線タグ通信システム、および通信方法について、図面を用いて説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態の構成例を示した図である。無線タグ通信システム1は、第1通信装置100A(通信部)、第2通信装置100B(通信部)の2つの通信装置、上位機器200、および複数の無線タグTGを有する。
【0015】
第1通信装置100A、第2通信装置100Bは、それぞれ上位機器200とデータ通信可能なように接続している。第1通信装置100A、第2通信装置100Bは、無線タグTGから受信したデータを上位機器200に送信する。また第1通信装置100A、第2通信装置100Bは、制御信号線を介して互いに信号の入出力を行っている。
【0016】
第1通信装置100Aは、UHF帯の無線電波を送受信する第1アンテナ121Aを有し、図1の破線で示す範囲内に位置する無線タグTGのデータを読取る。第2通信装置100Bも同様に、UHF帯の無線電波を送受信する第2アンテナ121Bを有し、図1の一点鎖線で示す範囲内に位置する無線タグTGのデータを読取る。図1に示すように、第1通信装置100Aおよび第2通信装置100Bとでは、読取り範囲が一部重なるように設置される。
【0017】
第1通信装置100Aと第2通信装置100Bとは、一方が休止状態であるときは他方が読取り動作となるように、且つ、一方が読取り動作中である場合は他方が休止状態となるように、互いに同期して読取り/休止の各動作を繰り返し行う。この同期は、制御信号線を介して信号を入出力することで行われる。
【0018】
無線タグTGは、RFID(radio frequency identifier)タグであり、第1アンテナ121A、第2アンテナ121Bの各読取り範囲内で重複する範囲に位置するように設置されている。すなわち、無線タグTGのデータは、第1アンテナ121A、第2アンテナ121Bの双方から読取り可能となっている。
【0019】
第1通信装置100Aと第2通信装置100Bとを含み、これら各装置が制御信号線で接続されている構成を無線タグ通信装置10とする。また、無線タグ通信システム1に、複数の無線タグTGを含めない構成としてもよい。
【0020】
図2は、2つの通信装置100A、100Bを移動体に設置し、当該移動体が通過する路面に無線タグを設置した態様を示した図である。以下、第1通信装置100Aおよび第2通信装置100Bを総称する場合は、必要に応じて「通信装置100A、100B」と称する。図2(A)は移動体Tの進行方向正面から示した図であり、図2(B)は進行方向側面から示した図である。移動体Tは、例えばレールL上を走行する列車など、運転手が操作等して運転移動し、自走する車両である。無線タグTGは、図2(A)に示すように2本のレールLの間に設置され、通信装置100A、100Bの双方から読取ることができる。また無線タTGは、図2(B)に示すようにレールLに沿って複数設置されている。無線タTGの設置場所は、例えば一定間隔ごとや、信号、分岐ポイントなどの管理上必要となるポイントとなる。
【0021】
無線タグTGのそれぞれは、タグ自身の識別情報であるタグIDを記憶している。移動体Tが進行することで、1つの無線タグTGが通信装置100A、100Bの読取り範囲に入ると、当該無線タグTGが起動し、自らのタグIDを通信装置100A、100Bに無線出力する。通信装置100A、100Bは、読取ったタグIDを上位機器200に出力する。上位機器200は、タグIDに対応付けられた位置情報などを取得することで、移動体Tがいずれのポイントを通過したかなどを知ることができる。この動作は、移動体Tが引き続き走行して順次無線タグTGの読取り範囲に到達することで、繰返し行われる。
【0022】
このように移動体に通信装置を複数設置し、移動しながら無線タグを読取る構成において、各通信装置の電波送信休止のタイミングが重なり、この休止中に移動体が移動して読取り範囲外となると、当該無線タグのIDを取得することができない。
【0023】
また、複数の通信装置からの無線通信信号が重なると、電波干渉などが発生する場合もある。また、複数の通信装置から無線通信信号が同時に出力されると、いずれの通信装置でタグIDが読取られるのかが不確定となる場合もある。
【0024】
第1実施形態では、通信装置100A、100Bとで同期をとり、一方の装置が休止状態のときは他方で読取り動作を行い、逆に一方が読取り動作を行っている最中は他方が休止状態となるように制御する。
【0025】
尚、図2においては、移動体Tを列車車両とし、線路上に無線タグを設ける構成としているが、別の態様として、移動体を自動車とし、道路に沿って無線タグを設ける態様でもよい。また、通信装置100A、100Bの位置を固定とし、無線タグを貼付した商品や機材等の物品をベルト上に載せて通信装置100A、100Bまで搬送、通過させる態様でもよい。または、店舗などのドアに通信装置100A、100Bを備えたゲートを設け、物品の無断持ち出しを防止する態様も考えられる。
【0026】
このように実施形態においては、通信装置100A、100Bと無線タグTGとで相対速度を有し、読取り範囲に入った無線タグTGを通信装置100A、100Bが読取る。ここでは通信装置100A、100B或いは無線タグTGのいずれかが移動するシーンを例に挙げているが、双方が移動していてもよい。または、通信装置100A、100Bと無線タグTGとの双方を固定にした状態にも実施形態の態様を適用させることができる。
【0027】
図3は、無線タグ通信システム1の構成例を示したブロック図である。図3においては、第1通信装置100Aの内部構成に着目した図となっているが、第2通信装置100Bも第1通信装置100Aと同様の構成である。第1通信装置100Aは、通知部130、入力部140を有する。通知部130は、ディスプレイやブザーなどを含み、ユーザに状況を通知し、また設定するための画面を提供する。入力部140は、ユーザが操作する部位であり、物理ボタンでもよく、通知部130のディスプレイ上に配置したタッチパネルでもよい。
【0028】
第1通信装置100Aは、装置内に供給される電力を制御する電源部150、上位機器200との通信手段を提供する上位通信部160を有する。電源部150は、バッテリとその充電及び放電の制御回路からなる場合でもよく、上記の移動体Tから電力を受ける構成でもよい。
【0029】
第1通信装置100Aは、無線タグ通信部120を有する。無線タグ通信部120は第1アンテナ121Aと接続しており、無線タグTGと通信して各無線タグの記憶部に記憶されたタグIDなどを受信する。無線タグ通信部120の詳細については後述する。
【0030】
第1通信装置100Aは、制御部110を有する。制御部110は、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置であるプロセッサ801を主体として構成されている。制御部110は、通知部130、入力部140、電源部150、上位通信部160、及び無線タグ通信部120、および後述の信号入出力部170を制御して、無線タグ通信装置100の全体を制御する。
【0031】
制御部110は、ROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)からなる記憶部802を有する。ROMには、制御部110が使用するプログラムや設定データ等が予め格納されている。RAMには、制御部110の作用により、可変的なデータが一時的に書き込まれる。RAMは、無線タグ通信部120が受信した識別情報を含む読取情報などを格納する。尚、制御部110での制御機能の一部または全てをASIC(application specific integrated circuit)などの回路で実装してもよい。
【0032】
第1通信装置100Aは、信号入出力部170を有する。信号入出力部170は、制御信号線を介して第2通信装置100Bの信号入出力部170と接続しており、ハイレベル、ローレベルの信号出力を行う。このハイレベルとローレベルの切り替えは、制御部110からの指示に従い行われる。本実施形態では、第1通信装置100Aが信号の出力のみを行い、第2通信装置100Bが入力のみを行うものとするが、複数配線を結束させるなどして、双方が入力、出力を行ってもよい。
【0033】
上位機器200は、プロセッサ811、記憶部812を少なくとも有するコンピュータである。上位機器200は、本例では通信装置100A、100Bに対して、各通信装置の動作開始指示および動作停止指示を行う。また、上位機器200は、無線タグTGから得られたタグIDなどのデータに基づき、これに対応付けられた位置情報などのデータを例えばデータベースから取得し、加工などの処理を行う。また上位機器200は、無線タグTGから得られたデータを、現在時刻などと対応付けてデータベースに蓄積してもよい。上位機器200と上位通信部160との通信は、有線/無線を問わず、従前より用いられるプロトコルで行われる。尚、上位機器200は、上記の移動体Tに積載されていてもよく、外部に設置されていてもよい。上位機器200のこれら動作の一部については、他の外部サーバが行ってもよい。
【0034】
図4は、無線タグ通信部120の具体的な構成を示すブロック図である。無線タグ通信部120は、無線タグTGにデータを送信するための送信部502と、無線タグTGからデータを受信するための受信部501と、サーキュレータ等の方向性結合器503と、ローパスフィルタ(LPF)504とを備える。方向性結合器503は、送信部502、受信部501及びローパスフィルタ504と接続し、ローパルフィルタ504を介してアンテナ121(第1通信装置100Aの場合は第1アンテナ121A)と接続している。
【0035】
送信部502は、符号化部551、PLL(Phase Locked Loop)部555、振幅変調部552、バンドパスフィルタ(BPF)553及び電力増幅器(Amp)554を備えている。
【0036】
符号化部551は、送信制御部541から出力される送信信号を符号化する。PLL部555は、振幅変調部552にローカルキャリア信号を供給する。振幅変調部552は、PLL部555からのローカルキャリア信号を、符号化部551にて符号化された送信信号で振幅変調する。バンドパスフィルタ553は、振幅変調部552で振幅変調された送信信号から、不要な成分を除去する。電力増幅器554は、送信出力設定部540からの送信出力設定信号に応じた増幅率で、バンドパスフィルタ553を通過した送信信号を増幅する。送信信号を増幅することにより、送信出力が可変される。電力増幅器554で増幅された送信信号は、方向性結合器503に供給される。
【0037】
方向性結合器503は、送信部502からの送信信号を、ローパスフィルタ504を介してアンテナ121に供給する。アンテナ121に供給された送信信号は、アンテナ121から電波として放射される。
【0038】
アンテナ121から放射された電波を受信すると、無線タグTGは起動する。そして、起動した無線タグTGは、無変調信号に対してバックスキャッタ変調を行うことにより、無線タグTGの内部メモリに格納された情報を第1通信装置100Aに無線送信する。無線タグTGからの無線信号は、アンテナ121で受信される。
【0039】
無線タグTGからの無線信号をアンテナ121が受信すると、その受信信号がアンテナ121からローパスフィルタ504を介して方向性結合器503に供給される。方向性結合器504は、アンテナ121の受信信号、すなわち無線タグTGからの信号を受信部501に供給する。
【0040】
受信部501は、I信号生成部561、Q信号生成部562、I信号処理部514、Q信号処理部563及び受信信号レベル検出部527を備えている。
【0041】
I信号生成部561は、第1ミキサ511と、ローパスフィルタ512と、2値化回路513とからなる。Q信号生成部562は、第2ミキサ519と、ローパスフィルタ520と、2値化回路521と、90度位相シフト器526とからなる。
【0042】
受信部501は、方向性結合器503からの受信信号を、第1ミキサ511と第2ミキサ519にそれぞれ入力する。また、受信部501は、PLL部555からのローカルキャリア信号を、第1ミキサ511と90度位相シフト器526とに入力する。90度位相シフト器526は、ローカルキャリア信号の位相を90度シフトして、第2ミキサ519に供給する。
【0043】
第1ミキサ511は、受信信号とローカルキャリア信号とを混合して、ローカルキャリア信号と同相成分のI信号を生成する。I信号は、ローパスフィルタ512を介して2値化回路513に供給される。ローパスフィルタ512は、I信号から不要な高周波成分を除去して、符号化されたデータ成分を取り出す。2値化回路513は、ローパスフィルタ512を通過した信号を2値化する。
【0044】
第2ミキサ519は、受信信号と90度位相がシフトされたローカルキャリア信号とを混合して、ローカルキャリア信号と直交成分のQ信号を生成する。Q信号は、ローパスフィルタ520を介して2値化回路521に供給される。ローパスフィルタ520は、Q信号から不要な高周波成分を除去して、符号化されたデータ成分を取り出す。2値化回路521は、ローパスフィルタ520を通過した信号を2値化する。
【0045】
I信号処理部514は、I信号同期クロック生成部515、I信号プリアンブル検出部516、I信号復号部517及びI信号エラー検出部518を含む。Q信号処理部563は、Q信号同期クロック生成部522、Q信号プリアンブル検出部523、Q信号復号部524及びQ信号エラー検出部525を含む。
【0046】
受信部501は、I信号生成部561の2値化回路513で2値化したI信号を、I信号処理部514に供給する。またQ信号生成部562は、2値化回路521で2値化したQ信号を、Q信号処理部563に供給する。ここでI信号処理部514とQ信号処理部563は、その動作が共通である。このため、以下ではI信号処理部514について説明し、Q信号処理部563の説明は省略する。
【0047】
I信号同期クロック生成部515は、2値化回路513からの2値化信号と同期したクロック信号を常時生成し、生成したクロック信号を、受信制御部530、I信号プリアンブル検出部516、I信号復号部517及びI信号エラー検出部518に供給する。
【0048】
I信号プリアンブル検出部516は、I信号同期クロック生成部515からのクロック信号を基に、I信号の先頭に付されているプリアンブルを検出する。プリアンブルが検出されると、I信号プリアンブル検出部516は、受信制御部530に検出信号を出力する。プリアンブル検出信号を受信すると、受信制御部530は、I信号復号部517に復号開始の指令信号を供給する。I信号復号部517は、I信号同期クロック生成部515からのクロック信号に同期して、2値化回路513からの2値化信号をサンプリングする。そして、受信制御部530から復号開始の指令を受けると、そのサンプリングした2値化信号を復号する。復号されたデータは、受信制御部530に供給される。
【0049】
受信制御部530は、復号されたデータをI信号エラー検出部518に供給する。I信号エラー検出部518は、復号されたデータのチェックコードからエラーの有無を検出する。そして、その検出結果を示すデータを受信制御部530に供給する。受信制御部530は、少なくともI信号或いはQ信号の一方で誤りが無い場合、正しくデータを受信したと判定する構成となっている。正しく受信した受信データは、制御部110の制御に従い、記憶部802に読取情報として格納される。
【0050】
受信信号レベル検出部527は、ローパスフィルタ512を通過したI信号の振幅と、ローパスフィルタ520を通過したQ信号の振幅とをそれぞれ検出する。そして、大きい方の振幅の値を、受信信号レベルとして受信制御部530に通知する。或いは、ベクトル合成した値(√{I2+Q2})を受信信号レベルとして通知してもよい。
【0051】
図5は、横方向を時間軸とした第1実施形態の通信シーケンスを示した図である。本例では、第1通信装置100Aが制御信号を出力し、第2通信装置100Bが入力するものとして説明する。
【0052】
上位機器200は、動作開始の指示を第1通信装置100Aと第2通信装置100Bに対して行う。第1通信装置100Aと第2通信装置100Bは、制御信号線で接続されており、制御信号がハイレベル(以下「H」と称する)の時は、第1通信装置100Aが無線送信および読取りの動作を行い、第2通信装置100Bが無線送信休止とする。逆に、制御信号がローレベル(以下「L」と称する)の時は、第2通信装置100Bが無線送信および読取りの動作を行い、第1通信装置100Aが無線送信休止の状態となる。例えば、制御信号は第1通信装置100Aが出力しているとする。
【0053】
各通信装置内の制御部110は、上記の信号レベルに応じて読取り動作/休止状態となるように無線タグ通信部120を制御する。また第1通信装置100Aの制御部110は、HからLへ、またはLからHへの切り替えを4秒以内となるように実施する。本例では、読取り動作の準備などを考慮し、例えば2秒程度の周期で切り替える。
【0054】
このように、第1通信装置100Aの制御部110は、1つの通信装置が4秒以内に収まる期間読取り動作を行った後に当該1つの通信装置が少なくとも50ミリ秒以上休止する動作を繰り返すように、信号レベルを切り替える。例えば2秒程度の周期で切り替えると、この規定を満たすことができる。
【0055】
尚、上位機器200から動作開始の指示を受けた際の初期時は、第1通信装置100Aが読取り動作となり、第2通信装置100Bが休止状態となるものとする。また初期時において、制御信号はHで出力される。第1通信装置100Aと第2通信装置100Bは、読取ったタグIDを上位機器200に出力する。上位機器200から動作終了の指示があると、制御信号のレベルによらず、第1通信装置100Aと第2通信装置100Bは休止状態になる。
【0056】
図5に示すように、通信装置100A、100Bの休止状態が重ならないように制御されるため、第1アンテナ121Aと第2アンテナ121Bの読取り範囲が重複している領域に位置する無線タグTGは、第1通信装置100A或いは第2通信装置100Bのいずれかで読取られることとなる。また読取り動作も重ならないため、干渉なども発生しない。
【0057】
上記例では、第1通信装置100Aが信号を出力し、第1通信装置100Aの制御部110が同期制御を行っているものとしたが、第2通信装置100B側で同期制御を行ってもよい。すなわち、第2通信装置100Bの制御部110が信号の出力を制御してもよい。また、双方が信号を出力し合う実装でもよい。この場合、第1通信装置100Aの制御部110および第2通信装置100Bの制御部110が1つの制御部として機能する。
【0058】
第1実施形態を適用することで、休止期間の重複を回避し、読取りの精度を向上させることができる。また、切り替え周期を調整することで、例えば最大4秒電波送信した後に最低50msの間、電波送信を休止することも可能となる。
【0059】
(第2実施形態)
第1実施形態では、通信装置100A、100Bが自らで同期制御を行う態様について説明したが、第2実施形態では上位機器200が同期制御を行い、通信装置100A、100Bは上位機器200からの指示に従い読取り動作および休止する実装例について説明する。
【0060】
図6は、第2実施形態の態様を示す図である。上位機器200は、同期制御部210を有する。同期制御部210は、通信装置100A、100Bに対し読取り開始指示、読取り終了指示を送信する機能部である。同期制御部210は、記憶部812に記憶されているプログラムをプロセッサ811が演算実行し、これに基づき上位機器200内の他のハードウェア(例えば通信装置100A、100Bと通信制御する通信機器)と協働することで実現される。
【0061】
また、第1通信装置100Aは動作切替部211Aを有し、第2通信装置100Bは動作切替部211Bを有する。これら動作切替部211A、211Bは、同期制御部210からの指示に従い、読取り動作および休止を切り替える。動作切替部211A、211Bは、記憶部802に記憶されているプログラムをプロセッサ801が演算実行することで、これに基づき通信装置100A、100B内の各ハードウェアと協働することで実現される。
【0062】
第2実施形態においては、第1通信装置100Aと第2通信装置100B、および上位機器200の同期制御部210とを含み、同期制御部210が各通信装置と通信可能な構成を無線タグ通信装置10Aとする。
【0063】
図7は、第2実施形態の通信シーケンスを示した図である。上位機器200の同期制御部210は、第1通信装置100Aに対して読取開始を指示するとともに、これと同時に第2通信装置100Bに対して読取終了を指示する。これら指示を送信した後、4秒以内のうちに(例えば2秒経過したら)、同期制御部210は、第1通信装置100Aに対して読取終了指示を送信するとともに、これと同時に第2通信装置100Bに対して読取開始指示を出力する。このように、同期制御部210は、4秒以内のうちに、読取り動作を行っている通信装置に対しては終了指示を行い、休止状態となっている通信装置に対しては読取り開始指示を行う。
【0064】
上位機器200の記憶部812には、通信装置100A、100Bの今現在の状態フラグが記憶されており、同期制御部210自らで、読取動作中/休止状態中の各状態を示す値をフラグに書き込む。また同期制御部210は、この状態フラグの値に基づき、通信装置100A、100Bに指示を送信する。この指示を受信した通信装置100A、100Bは、指示に従い読取り開始動作または終了動作を行う。
【0065】
動作切替部211A、211Bは、上記指示を受信するモジュールや、指示に従い読取り動作/休止を行うように無線タグ通信部120を制御するモジュールが組み込まれている。プロセッサ801は、これらのモジュールを実行することで、同期制御部210からの指示に従い読取り動作/休止を行う。
【0066】
第2実施形態の態様も、第1実施形態と同様に通信装置100A、100Bの休止状態が重ならない。よって第1アンテナ121Aと第2アンテナ121Bの読取り範囲が重複している領域にある無線タグTGは、第1通信装置100A或いは第2通信装置100Bのいずれかで読取られる。また読取り動作も重ならないため、干渉なども発生しない。
【0067】
第2実施形態においても、休止期間の重複を回避することができ、読取りの精度を向上させることができる。また、切り替え周期を調整し、例えば上記のように2秒とすることで、例えば最大4秒電波送信した後に最低50msの間、電波送信を休止する要件を満たすことも可能となる。
【0068】
(第3実施形態)
第3実施形態では、各通信装置間で切り替え動作を制御する一つの具体例について説明する。装置構成などについては、第1実施形態と同様であるため、説明を割愛する。
【0069】
図8は、第1通信装置100Aおよび第2通信装置100Bで入出力される信号例を示した図である。第1通信装置100Aは電波送信信号1を出力し、また切替要求信号1を出力する。これら出力信号を第2通信装置100Bが入力する。第2通信装置100Bは電波送信信号2を出力し、切替要求信号2を出力する。これら出力信号を第1通信装置100Aが入力する。
【0070】
図9は、横方向を時間軸とした第3実施形態のタイミングチャートの一例を示した図である。図9は、第1通信装置100Aが電波(Query、図中では「Q」としている)を送信して読取り動作を行っており、第2通信装置100Bが休止しており電波を出力していない状態から示している。以下のカッコ内の番号は、図9のものと対応している。
【0071】
(1)先ず、第1通信装置100Aは、電波送信信号1がHで、Query(図中の「Q」)を送信して無線タグTGを読取っている状態にある。説明を簡単にするために、Queryは一定の間隔で送信するとして説明する。第1通信装置100A一方第2通信装置100Bは、電波送信していない休止状態にある。図示しないが、無線タグTGは、Queryを受信すると、乱数(RN16)を送信し、通信装置からACKを受信すると、タグIDを返す動きを行う。
【0072】
(2)第1通信装置100Aは、前回の切り替えから2秒程度経過すると、切替要求信号1をHにする。切替要求信号1は、第2通信装置100Bが無変調キャリア(搬送波、図中の「CW」)の電波出力を開始してよいことを示した信号である。
【0073】
(3)第2通信装置100Bは、切替要求信号1がHとなるのを検出すると、自身が使用するチャネル(ここではChB)を外部の他局が使用しているかを検出するキャリアセンス(図中の「CS」)を行う。
【0074】
(4)第2通信装置100Bは、チャネルBが空き状態であることを検出すると、無変調キャリア(CW)を電波出力し、電波送信信号2をHにする。
【0075】
(5)第1通信装置100Aは、電波送信信号2がHとなるのを検出すると、第2通信装置100BがいつでもQueryを出力することが可能な状態であるとし、電波送信信号1と切替要求信号1とをLにする。これと同時に第1通信装置100Aは、第2通信装置100BがQueryを出すタイミングの直前で電波送信およびQuery送信を停止する。
【0076】
(6)第2通信装置100Bは、電波送信信号1、切替要求信号1がLとなることを検出すると、Query送信を開始する。これにより、高精度のタイミングで、第1通信装置100Aの電波送信が第2通信装置100Bの電波送信に切り替わり、第1通信装置100Aが休止状態となり、第2通信装置100Bが読取り動作となる。
【0077】
上記(1)〜(6)で説明した動作を第1通信装置100A、第2通信装置100Bとで逆転させることで、図中の(1’)〜(6’)の動作となり、第1通信装置100Aが読取り動作となり、第2通信装置100Bが休止状態となる。以下、簡単に説明する。
【0078】
(1’)第2通信装置100Bが無線タグTGを読取る動作を行っており、第1通信装置100Aが休止状態となっている。
【0079】
(2’)第2通信装置100Bは、前回の切り替え(具体的には切替要求信号1がHとなったタイミング)から2秒程度経過すると、切替要求信号2をHにする。
【0080】
(3’)第1通信装置100Aは、切替要求信号2がHとなるのを検出すると、自身が使用するチャネル(ここではChA)を外部の他局で使用しているかを検出するキャリアセンスを行う。
【0081】
(4’)第1通信装置100Aは、チャネルAが空き状態であることを検出した後、無変調キャリア(CW)を電波出力するとともに、電波送信信号1をHにする。
【0082】
(5’)第2通信装置100Bは、電波送信信号1がHとなるのを検出すると、第1通信装置100AがQueryを出すタイミングの直前で電波送信およびQuery送信を停止する。これと同時に、第2通信装置100Bは、電波送信信号2と切替要求信号2とをLにする。
【0083】
(6’)第1通信装置100Aは、電波送信信号2、切替要求信号2がLとなることを検出すると、Query送信を開始する。これにより動作が切り替えられ、第2通信装置100Bが休止状態となり、第1通信装置100Aが読取り動作となる。
【0084】
このように、今現在読取り動作を行っている装置が切替要求信号出力し、これを入力した休止状態の装置は、読取り動作の準備に入る。読取り動作の準備とは、本例ではキャリアセンスや無変調キャリアの出力などである。その後、読取り動作を行っている装置が当該読取り動作を停止し、電波送信信号および切替要求信号の出力を停止する。この出力の停止を検出した他方(休止状態であり読取り準備を行っている装置)は、読取り動作を開始する。また、切替要求信号の出力は4秒以内の周期とする。本例では、準備期間などを考慮して、約2秒周期としている。
【0085】
図10図11は、第1通信装置100Aの読取り動作と休止状態との切り替え制御について示したフローチャートである。第2通信装置100Bの切り替え制御も、図10図11に示す動作に準拠する。
【0086】
まずは図10を参照しつつ、第1通信装置100Aの読取り動作から休止状態に切り替わるときの動作例について説明する。制御部110は、無線タグ通信部120を制御してQueryを送信する(ACT001)。制御部110は、前回の切り替えから規定時間(例えば2秒)経過したかを判定する(ACT002)。規定時間経過した場合(ACT002−Yes)、制御部110は信号入出力部170を制御して切替要求信号1をLからHに切り替える(ACT003)。尚、ACT001、ACT002は上記(1)の状態である。またACT003は上記(2)に対応する。他方の第2通信装置100Bは、切替要求信号1が出力されたことを検出すると、電波送信処理の準備を開始する(上記(3)に対応)。
【0087】
制御部110は、信号入出力部170を介して、第2通信装置100Bからの出力信号である電波送信信号2がLからHとなったかを判定する(ACT004)。尚、ACT004−Yesが上記(4)に対応する。
【0088】
制御部110は、Queryを送信するタイミングの直前で、無線タグ通信部120を制御して電波送信およびQueryの送信を停止し、信号入出力部170を制御して電波送信信号1をHからLに切り替える(ACT005)。この際に、本例では切替要求信号1もHからLに切り替える。尚、ACT005は上記(5)に対応し、ACT005以降、第1通信装置100Aは休止状態となる。第2通信装置100Bは、電波送信信号1が出力停止となったことを検出すると、Queryの送信を開始する(上記(6)に対応)。
【0089】
図11は、第1通信装置100Aの休止状態から読取り動作に切り替わるときの動作例を示すフローチャートである。制御部110は、信号入出力部170を介して切替要求信号2を検出するまで、休止状態を維持する(ACT101およびACT002−NoからACT101へのループ)。制御部110は、切替要求信号2を検出すると(ACT102−Yes)、電波送信処理の準備を開始する(ACT103)。ここでは、キャリアセンスの実施などを行う。尚、ACT101は上記(1’)の状態であり、ACT102−Yesは上記(2’)に対応する。また、ACT103は上記(3’)に対応する。
【0090】
制御部110は、無線タグ通信部120を制御して無変調キャリア(CW)を出力するとともに、信号入出力部170を制御して電波送信信号1をLからHに切り替える(ACT104)。ACT104は上記(4’)に対応する。
【0091】
制御部110は、電波送信信号2が停止したかを判定し(ACT105)、電波送信信号2が停止したことを検出すると(ACT105−Yes)、無線タグ通信部120を制御してQueryの送信を開始する(ACT106)。ACT105は上記(5’)に対応し、ACT106は上記(6’)に対応する。
【0092】
第3実施形態においては、双方が信号を出力し合い、双方で互いに制御している実装であることから、第1通信装置100Aの制御部110および第2通信装置100Bの制御部110が、1つの制御部として機能している。
【0093】
上記動作により、第1通信装置100Aと第2通信装置100BのQuery送信が重複することなく、第1通信装置100Aと第2通信装置100Bで読取りと休止がスムーズに切り替わる。従って、第1通信装置100Aと第B通信装置100Bが同時に休止状態になることを抑制し、無線タグTGをいつでも読むことができる。
【0094】
(第4実施形態)
第4実施形態では、通信装置100A、100Bが上位機器200と連携して切り替え動作を行う態様例について説明する。図12は、第4実施形態における第1通信装置100Aの構成例を示すブロック図である。第2通信装置100Bも図12の第1通信装置100Aと同様の構成を有するものとする。第4実施形態の第1通信装置100Aは、電波送信イネーブルフラグ115、問合せ信号送信イネーブルフラグ116の2つのフラグを記憶部802に記憶している。通信装置100A、100Bは、これらフラグ値に基づき、互いに信号の入出力を行う。
【0095】
上位通信管理部117、タグ通信制御部118は、プロセッサ801が記憶部802に記憶された各プログラムを実行することにより実現される機能部である。上位通信管理部117は、上位機器200から送信される情報をもとに、各フラグ115、116の値を書き替える。また一方で、上位通信管理部117は、各フラグ115、116の値をもとに、上位機器200に情報を送信する。タグ通信制御部118は、各フラグ115、116の値をもとに、無線タグ通信部120の動作を制御する。またタグ通信制御部118は、各フラグ115、116の値を書き替える動作も行う。
【0096】
これら以外の装置構成は、第1実施形態で説明した図3と同様であるため、説明を省略する。
【0097】
図13は、横方向を時間軸として、休止/読取り動作の各状態および各フラグ115、116の値の切り替えを示した図である。本図を用いて、第4実施形態の切り替え動作について説明する。図13の初期状態は、第1通信装置100Aが休止状態であり、第2通信装置100Bが読取り動作を行っているものとする。また、以下のカッコ内の番号は、図13に図示した番号に対応する。
【0098】
(11)第2通信装置100Bのタグ通信制御部118は、読取り動作を開始してから規定時間(例えば2秒)経過すると、電波送信イネーブルフラグ115をHからLに書き替える。尚、本例ではH、Lと表記しているが、識別可能なものであればよく、1、0などでも構わない。第2通信装置100Bの上位通信部160は、電波送信イネーブルフラグ115がHからLに変わったことを上位機器200に通知する。
【0099】
(12)第1通信装置100Aの上位通信部160は、上位機器200を介して第2通信装置100Bから切替要求が送信されたとの情報を得ると、電波送信イネーブルフラグ115をLからHにする。電波送信イネーブルフラグ115が切り替わったことを検知した第1通信装置100Aのタグ通信制御部118は、無線タグ通信部120を制御してキャリアセンス(CS)を行う。タグ通信制御部118は、第1通信装置100Aが使用するチャネル(例えばChA)が他局に使われていないことを確認し、無変調キャリア(CW)を送信する。この動作を、本例では読取り動作の準備(図中の「準備中」)とする。
【0100】
(13)第2通信装置100Bのタグ通信制御部118は、問合せ信号送信イネーブルフラグ116をHからLに書き替える。この切り替えは、電波送信イネーブルフラグ115が切り替わってから経過時間が規定時間(例えば1秒)に達したかなどに基づき行われる。また第2通信装置100Bのタグ通信制御部118は、Query送信を終了するよう無線タグ通信部120を制御して読取り動作を停止させる。このQuery送信の終了タイミングは、正常に切り替えることを目的として若干遅延させて終了させてもよい。一方、第2通信装置100Bの上位通信管理部117は、問合せ信号送信イネーブルフラグ116がHからLになったことを検知し、上位機器200に対してQuery送信が終了したことを示す情報(以下、問合せ送信終了情報)を送信する。第2通信装置100Bは、これにより休止状態に入る。
【0101】
(14)第1通信装置100Aの上位通信管理部117は、上位通信部160を介して上位機器200から第2通信装置100Bの電波送信終了情報を受信すると、問合せ信号送信イネーブルフラグ116をLからHにする。第1通信装置100Aのタグ通信制御部118は、問合せ信号送信イネーブルフラグ116をLからHになることを検出し、Query送信を開始するよう無線タグ通信部120を制御する。第1通信装置100Aは、これにより読取り動作を開始する。
【0102】
図中の(15)〜(18)は、第1通信装置100A、第2通信装置100Bの上記動作を逆転させたものであるが、簡単に説明する。
【0103】
(15)第1通信装置100Aは、Queryの送信を開始から規定時間(例えば2秒)経過すると、上位機器200に対して切替要求を送信するとともに、電波送信イネーブルフラグ115をHからLに書き替える。
【0104】
(16)第2通信装置100Bは、上位機器200を介して第1通信装置100Aから切替要求が送信されたとの情報を得ると、電波送信イネーブルフラグ115をLからHにする。これと同時に第2通信装置100Bは、読取りの準備として、キャリアセンス(CS)して自身が使用するチャネル(例えばChB)が他局に使われていないことを確認すると、無変調キャリア(CW)を送信する。
【0105】
(17)第1通信装置100Aは、上位機器200に対して問合せ送信終了情報を送信するとともに、電波送信イネーブルフラグ115をHからLに書き替える。第1通信装置100Aは、これにより休止状態に入る。
【0106】
(18)第2通信装置100Bは、上位機器200から第1通信装置100Aの電波送信終了情報を受信すると、問合せ信号送信イネーブルフラグ116をLからHにして、Query送信を開始する。第2通信装置100Bは、これにより読取り動作を開始する。
【0107】
上記(11)〜(18)の動作が繰り返し行われることで、第1通信装置100Aと第2通信装置100Bの読取り動作が重複することなく、読取りと休止がスムーズに切り替わる。従って、第1通信装置100Aと第2通信装置100Bが同時に休止になることを防止し、無線タグをいつでも読むことができる。また、読取り動作も重複しないように制御することで、干渉なども抑制することができる。
【0108】
このように、電波送信イネーブルフラグ115、問合せ信号送信イネーブルフラグ116の2つのフラグは、上位通信管理部117、タグ通信制御部118の各モジュール間でのデータの共有手段として、また状態の通知手段として用いられる。
【0109】
なお、電波送信イネーブルフラグ115、問合せ信号送信イネーブルフラグ116は無線タグ通信装置100A/Bが書き替えるとして説明したが、上位機器が上位機器通信部を介してフラグ書替を行わせるデータを送信する方法でもよい。
【0110】
また、上記各実施形態のように第1通信装置100Aと第2通信装置100Bの周波数チャネル(ChAとChB)を異ならせておけば、電波干渉を低減し、より安定な無線タグの読取りを行うことができる。
【0111】
上記各実施形態を組み合わせてもよい。
【0112】
上記各実施形態において、HおよびLの信号レベルを逆転させてもよい。
【0113】
また上記各実施形態において、上述したように、1つの通信装置での電波送信時間の最大値を4秒以下にして、且つ、当該通信装置が少なくとも50ミリ秒以上休止するように切り替え動作を制御する。これにより、特定小電力の制約を満たすことができ、屋外での無線タグの読取りや異なる住所を移動しつつ、無線タグの読取りを行うことができる。尚、各実施形態では、一例として2秒ごとに動作を切り替えるものとしたが、この切り替え周期は特定小電力の規格制約を満たしている。尚、具体的な例として2秒として説明したが、あくまで一例である。
【0114】
上記各実施形態では、2つの通信装置を例にして説明したが、3つ以上の通信装置にも適用させることができる。図14では、例えば6本の信号を通信装置に接続している。各信号は抵抗でプルアップされ、各通信装置はオープンコレクタあるいはオープンドレインにより各信号をHあるいはLにすることができるようになっている。例えば、通信装置#0が無線タグを読取っている場合には、図8と同様に、電波送信信号1と切替要求信号1は、無線タグ通信装置#0が出力する。AD0とAD1は、切換要求先の通信装置のアドレスであり、例えば、AD0がL、AD1がHの場合には、通信装置#0は、通信装置#2に対して、切換要求を出している。従って、電波送信信号2は通信装置#2が出力する。切替動作は、図8の説明と同様である。読取動作が通信装置#2に切り替わると、上述のように、電波送信信号1と切替要求信号1は、通信装置#2が出力する。以降、同様に、切替動作を行うことができる。切替の順番は、予め、決めておいてもよい。信号線は6本としたが、この例の場合、切換要求信号2は無くてもよい。
【0115】
通信装置を3つ以上とする場合、上記以外にも、上位機器が複数の値を表現できるフラグ情報を用い、このフラグ値に応じて、複数の通信装置の読取り動作/休止をそれぞれ制御することも可能である。
【0116】
3つ以上の通信装置を用いる場合、いずれか1つの通信装置が読取り動作である場合は、他の通信装置は全て休止状態として動作切り替えを行う実装でもよい。また干渉などの問題を解消することができれば、複数台で同時に読取り動作を行い、この最中は他の通信装置では休止状態となるようにして動作切り替えを行う実装でもよい。また、3つ以上の通信装置を用いる場合においても、全ての装置で読取ることができる共有の読取り範囲を有するように、読取り範囲の少なくとも一部が互いに重なるように配置される。無線タグも、この共有の読取り範囲内に位置するように設置される。
【0117】
本実施形態では、複数の無線タグ通信装置が同じ周期で休止/読取り動作を繰り返し行う実装とした。上記では、一例として2秒稼働した後に2秒休止するものと説明したが、例えば3秒稼働した後に1秒休止する、2.5秒稼働した後に1.5秒休止する、というように、各通信装置がそれぞれ同期をとりながら、各通信装置が同じ周期で切り替えるよう制御してもよい。各通信装置が同じ周期で切り替えることで、総稼働時間も通信装置ごとに一致させることができる。総稼働時間を通信装置ごとに一致させることで、各通信装置の劣化度合いが同程度となることから、修理や取り替えの時期も各通信装置でほぼ同じとなり、好適な運用を行うことができる。
【0118】
また一方で、2つの通信装置が使用している各チャネルのうち、一方のチャネルには空きがあり、他方のチャネルでは外部の他局が使用しているなどの理由で空きが無い状態となる場合がある。空きが無いチャネルを使用している通信装置では、通信を行うことが困難なことから、チャネルに空がある/なしによって各通信装置の使用頻度に隔たりが生ずる。このような状況においては、使用頻度の隔たりを解消するため、読取り動作の時間を異ならせる実装も可能である。すなわち、空きのあるチャネルを使用している通信装置については読取り動作の時間(稼働時間)を短くし、他方、空の無い状態が頻繁に発生する通信装置については読取り動作の時間を長くする、という実装も実現可能である。この場合、キャリアセンスの履歴データを蓄積しておき、チャネルの使用状態をこの履歴に基づきチェックして、読取り動作の時間を調整する。この調整は、ユーザ(保守者)が行う態様でもよいし、装置側独自で行う実装でもよい。
【0119】
本実施形態の「通信」とは、信号やデータのやり取りができている状態を意味し、通信装置と無線タグとの間で行われる、要求(コマンド)と応答(レスポンス)のやり取りを意味する。また、通信装置がQueryを出力してから、無線タグがタグ内の情報を出力して通信装置が受信するまでの一連の動作を通信としてもよい。また、キャリアセンスを行っている状態や無変調キャリアを出力している状態は、本実施形態では通信として扱わないが、これらのいずれか、または両方を含めて通信としてもよい。
【0120】
本実施形態では、通信の一例として、通信装置が無線タグを読取る動作に着目して説明しているが、通信装置が無線タグにデータを書き込む動作にも、上記各実施形態の態様を適用させることができる。すなわち、通信とは、無線タグから読取る動作のみならず、無線タグに書き込む動作も含む。
【0121】
実施形態では装置内部に発明を実施する機能が予め記録されている場合で説明をしたが、これに限らず同様の機能をネットワークから装置にダウンロードしても良いし、同様の機能を記録媒体に記憶させたものを装置にインストールしてもよい。記録媒体としては、CD−ROM等プログラムを記憶でき、かつ装置が読み取り可能な記録媒体であれば、その形態は何れの形態であっても良い。またこのように予めインストールやダウンロードにより得る機能は装置内部のOS(オペレーティング・システム)等と協働してその機能を実現させるものであってもよい。
【0122】
以上に詳説したように、実施形態では、通信部で電波送信の休止時間を設ける場合でも、無線タグを読取ることができ、通信の信頼性を向上させることができる。
【0123】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0124】
100A 第1通信装置(通信部)、100B 第2通信装置(通信部)、
110 制御部、120 無線タグ通信部、121A 第1アンテナ、
121B 第2アンテナ、130 通知部、140 入力部、150 電源部、
160 上位通信部、170 信号入出力部、
200 上位機器、210 同期制御部、211A、211B 動作切替部、
801、811 プロセッサ、802、812 記憶部、
TG 無線タグ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14