(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固定型と第1移動型及び第2移動型とによって金属製板部材から製品を切り出すと共に、前記製品以外のスクラップを切断するためのスクラップカッターを備えたプレス型において、
前記スクラップカッターは前記固定型から略水平方向に片持ち状に該固定型と一体に突出形成され、
前記スクラップカッターには、前記スクラップを切断するためのスクラップ切れ刃部が形成され、
前記固定型には、前記金属製板部材を予め設定された前記製品の切断線で切断するための固定型切れ刃部が形成され、
前記第1移動型には、前記固定型切れ刃部との剪断加工で前記金属製板部材を前記製品の切断線で切断する第1移動型切れ刃部と、前記スクラップ切れ刃部との剪断加工で前記スクラップを切断する移動型スクラップ切れ刃部とが形成され、
前記第2移動型には、前記固定型切れ刃部との剪断加工で前記金属製板材を前記製品の切断線で切断する第2移動型切れ刃部が形成され、
前記固定型切れ刃部には、前記スクラップカッターを形成するための加工工具の加工半径に応じた略円弧断面部を含めて、前記製品の切断線よりも製品内側に窪んだ固定型切れ刃逃げ部が前記スクラップカッターの突出基端部近傍に形成され、
前記第1移動型切れ刃部には、前記固定型切れ刃逃げ部との剪断加工で前記金属製板部材を前記製品の切断線よりも前記製品内側で切断する移動型切れ刃突出部が形成されたことを特徴とするプレス型。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のスクラップカッターは、固定型とは別個の台座部に設けられるので、この台座部と切断されたスクラップが干渉してプレス機からの排出が困難になる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、スクラップカッターを設けるための別個の台座部をなくしてスクラップのスムーズな排出が可能なプレス型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため請求項1に記載のプレス型は、
固定型と第1移動型及び第2移動型とによって金属製板部材から製品を切り出すと共に、前記製品以外のスクラップを切断するためのスクラップカッターを備えたプレス型において、前記スクラップカッターは前記固定型から略水平方向に片持ち状に該固定型と一体に突出形成され、前記スクラップカッターには、前記スクラップを切断するためのスクラップ切れ刃部が形成され、前記固定型には、前記金属製板部材を予め設定された前記製品の切断線で切断するための固定型切れ刃部が形成され、前記第1移動型には、前記固定型切れ刃部との剪断加工で前記金属製板部材を前記製品の切断線で切断する第1移動型切れ刃部と、前記スクラップ切れ刃部との剪断加工で前記スクラップを切断する移動型スクラップ切れ刃部とが形成され、前記第2移動型には、前記固定型切れ刃部との剪断加工で前記金属製板材を前記製品の切断線で切断する第2移動型切れ刃部が形成され、前記固定型切れ刃部には、前記スクラップカッターを形成するための加工工具の加工半径に応じた略円弧断面部を含めて、前記製品の切断線よりも製品内側に窪んだ固定型切れ刃逃げ部が前記スクラップカッターの突出基端部近傍に形成され、前記第1移動型切れ刃部には、前記固定型切れ刃逃げ部との剪断加工で前記金属製板部材を前記製品の切断線よりも前記製品内側で切断する移動型切れ刃突出部が形成されたことを特徴とする。
【0009】
本発明では、固定型の固定型切れ刃部と第1移動型の第1移動型切れ刃部及び第2移動型の第2移動型切れ刃部で切り出された金属製板部材を製品と規定する。
【0010】
この構成によれば、スクラップカッターを固定型と一体に略水平方向に片持ち状(片持ち梁状)に突出形成したことにより、スクラップカッターを設けるための別個の台座部が不要となり、その結果、切断されたスクラップがプレス機からスムーズに排出される。一方、単にスクラップカッターを固定型から片持ち状に一体形成すると、スクラップカッターを固定型に形成する段階で用いられる加工工具の加工半径に応じたR部がスクラップカッターの突出基端部(固定型からの突出開始部分)に残る。従って、スクラップカッターの縁部に形成されるスクラップ切れ刃部にもR部が生じ、そのスクラップ切れ刃R部で切れ残った部分を切断するための移動型スクラップ切れ刃部を大きく延長する必要が生じ、しかもその延長部の先端部が尖鋭になる。このように移動型スクラップ切れ刃部の延長部が尖鋭になると、その尖鋭部分が十分な刃物強度を確保できないおそれがある。
【0011】
これに対し、上記構成では、固定型切れ刃逃げ部と移動型切れ刃突出部の剪断加工により、スクラップカッターを固定型と一体に形成するための加工工具の加工半径に応じた略円弧断面部は、予め設定された製品の切断線よりも製品内側に形成される。従って、スクラップカッターのスクラップ切れ刃部には、上記加工工具の加工半径に応じた略円弧断面部が形成されないか、又は、小さくしか形成されない。即ち、スクラップ切れ刃部に形成される上記加工工具の加工半径に応じた略円弧断面部は0か又は小さいので、固定型切れ刃部と第1移動型切れ刃部の剪断加工後に製品の切断線よりも製品外側に残存する上記略円弧断面部のスクラップ該当部分も0か又は小さい。従って、これを切断するために第2移動型切れ刃部を移動型スクラップ切れ刃部側に延長したときの延長部の突出寸法は0か又は僅かであり、その突出先端部を尖鋭化する必要のないことから、移動型スクラップ切れ刃延長部の刃物強度を確保することが可能になる。また、上記加工工具の加工半径に応じて製品の切断線よりも製品内側に形成される略円弧断面部の製品の切断線からの寸法を、予め製品の切断線に設定された許容範囲内に設定することで、製品の切断精度に支障は生じない。
【0012】
請求項2に記載のプレス型は、請求項1に記載のプレス型において、前記スクラップ切れ刃部には、前記加工工具の加工半径に応じた略円弧断面部からなるスクラップ切れ刃R部が前記スクラップカッターの突出基端部に形成され、前記移動型スクラップ切れ刃部には、前記スクラップ切れ刃R部との剪断加工で前記スクラップを切断するための移動型スクラップ切れ刃R部が形成され、前記第2移動型切れ刃部には、前記移動型スクラップ切れ刃R部側に突出する移動型切れ刃延長部が形成されたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、スクラップ切れ刃R部と移動型スクラップ切れ刃R部の剪断加工によって、上記加工工具の加工半径に応じた略円弧断面部のスクラップ該当部分が、固定型切れ刃部と第1移動型切れ刃部の剪断加工後に、製品の切断線よりも製品外側に残存する。この残存した略円弧断面部のスクラップ該当部分は、移動型切れ刃延長部と固定型切れ刃部との剪断加工によって切断される。固定型切れ刃部と第1移動型切れ刃部の剪断加工後に製品の切断線よりも製品外側に残存する上記略円弧断面部のスクラップ該当部分は小さいので、これを切断するための第2移動型切れ刃部の移動型切れ刃延長部の突出寸法は小さく、その突出先端部を尖鋭化する必要がない。従って、第2移動型切れ刃部を移動型スクラップ切れ刃部側に延長する場合にも、その移動型切れ刃延長部の刃物強度を確保することが可能となる。
【0014】
請求項3に記載のプレス型は、請求項2に記載のプレス型において、少なくとも前記移動型切れ刃延長部の刃先部が予め前記固定型側に突出形成され、前記スクラップカッターには、前記第2移動型の前記固定型との剪断加工時に前記移動型切れ刃延長部の前記固定型側への突出部が収納される収納凹部が形成されたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、固定型切れ刃部と第1移動型切れ刃部の剪断加工後に製品の切断線よりも製品外側に残存する上記略円弧断面部のスクラップ該当部分は、第2移動型切れ刃部と固定型切れ刃部の剪断加工によるスクラップと一緒に移動型切れ刃延長部と固定型切れ刃部の剪断加工によって切断される。その際、切断されたスクラップの上記略円弧断面部がスクラップカッターの収納凹部内に収まるので、そのスクラップとスクラップカッターの干渉が抑制される。また、移動型切れ刃延長部又は移動型切れ刃延長部を含む第2移動型切れ刃部の固定型側への突出部を収納する収納凹部分だけ、スクラップカッターに形成されるスクラップ切れ刃部を除去すればよいので、スクラップ切れ刃部の刃物長さを確保して、その刃物強度を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、スクラップカッターを固定型から略水平方向に片持ち状に突出形成して固定型以外の別個の台座部をなくすことができると共に、製品の切断精度に支障なく、固定型や移動型の切れ刃部、特に第2移動型切れ刃部やその延長部の刃物強度を確保することができる。そして、これらの結果、スクラップのプレス機からの排出をスムーズにし、且つプレス機による製品切り出し工程を簡略化することも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明のプレス型の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この実施の形態のプレス型の主要部を示す斜視図であり、
図2は、
図1のプレス型のY矢視詳細図、
図3は、
図1のプレス型で切断される金属製板部材Wの平面図である。また、
図6は、
図1のプレス型のZ矢視詳細図であり、後述のように、移動型切れ刃延長部とスクラップ切れ刃部の干渉を回避する構造を説明するためのものである。以下、金属製板部材Wの平面図には、プレス型の各型及び切れ刃部の符号を合わせて示す。この実施の形態のプレス型は、所謂下型を構成する固定型10と、上型を構成する第1移動型12及び第2移動型14を備えて構成される。なお、
図2では、理解を容易にするために、第1移動型12の切れ刃部のみを二点鎖線で示している。このプレス型は、一般にトリミングと呼ばれる製品Pの切り出しのためのものであり、固定型10には固定型切れ刃部20が、第1移動型12には第1移動型切れ刃部22が、第2移動型14には第2移動型切れ刃部24が夫々形成され、固定型切れ刃部20と第1移動型切れ刃部22及び第2移動型切れ刃部24の剪断加工によって金属製板部材Wから製品Pが切り出される。
【0019】
この実施の形態では、例えばバネ、カムなどを使用した図示しない機構や個別のエネルギーで駆動されるシリンダーなどの図示しない装置によって、下型である固定型10に対して上型である第1移動型12が下降し、次いで第2移動型14が下降するように構成している。即ち、この実施の形態では、固定型10の固定型切れ刃部20と第1移動型12の第1移動型切れ刃部22の剪断加工により金属製板部材Wを切断した後、固定型10の固定型切れ刃部20と第2移動型14の第2移動型切れ刃部24の剪断加工により製品Pを切り出す。その際、後述するように、固定型切れ刃部20と第1移動型切れ刃部22による金属製板部材Wの切断と同時に、又はそれにわずかに遅れてスクラップカッター16によってスクラップS1、S2が切断される。なお、図示の製品例は、あくまでも一例であり、この実施の形態のプレス型は、所望されるあらゆる製品形状に合わせて適用可能である。また、当業者に理解されるように、図面は寸法を誇張して記載されており、実際の寸法は、図示のものよりもずっと小さい。また、実際の切れ刃には、逃げ角などの微小な角度や逃がしなどの微小な寸法の設定が必要であるが、そうした微小な角度や寸法も省略している。
【0020】
この実施の形態のプレス型では、固定型10から略水平方向に片持ち状(片持ち梁状)に、固定型10と一体にスクラップカッター16が突出形成されている。この実施の形態では、スクラップカッター16を固定型10から一体に突出形成することにより、従来のスクラップカッター16を支持する別個の台座部をなくすことができる。このようにスクラップカッター16を固定型10と一体に形成する場合、スクラップカッター形成部を含む固定型ブランク(素材)から、所謂削り出しによって固定型10及びスクラップカッター16を形成する。この固定型10及びスクラップカッター16の形成は、通常、フライス加工(ミリング)などによって行われ、フライス加工には、例えばエンドミルが加工工具として使用される。エンドミルは、周知のように、軸方向端部の切れ刃で平面切削加工することもできるし、径方向外側(側面)の切れ刃で円弧断面の切削加工もできる。この実施の形態のスクラップカッター16は、例えば、このエンドミルの側面の切れ刃で切削加工される。このエンドミルの側面の切れ刃による円弧断面(略円弧断面を含む)の加工半径を加工半径rと規定する。
【0021】
スクラップカッター16は、前述のように、切断対象となる金属製板部材Wの製品P以外のスクラップ部分を更に切断するためのものである。従って、例えば
図2において、スクラップカッター16の図示左上端縁には、スクラップS1、S2を切断するためのスクラップ切れ刃部26が形成されている。また、第1移動型12には、このスクラップ切れ刃部26との剪断加工によってスクラップS1、S2を切断する移動型スクラップ切れ刃部28が形成されている。従って、下型である固定型10に対して上型である第1移動型12が図示下方に移動する際、金属製板部材Wがスクラップ切れ刃部26と移動型スクラップ切れ刃部28によって剪断加工されて、その金属製板部材Wのスクラップ該当部分が切断される。なお、スクラップS1、S2は、金属製板部材Wの主として周縁部からなるが、製品P以外の金属製板部材W、所謂余分はできるだけ小さくしてあるので、その余分を切断するスクラップ切れ刃部26や移動型スクラップ切れ刃部28も、それほど長くない。
【0022】
この実施の形態では、固定型10の固定型切れ刃部20及び第1移動型12の第1移動型切れ刃部22は、予め設定された製品Pの切断線Lで製品Pを切断するように設定されている。また、同様に、固定型10の固定型切れ刃部20及び第2移動型14の第2移動型切れ刃部24も、予め設定された製品Pの切断線Lで製品Pを切断するように設定されている。一方、前述のように、スクラップカッター16を加工工具で加工して形成する場合、その加工工具の加工半径rに応じた円弧断面部(略円弧断面部を含む)30がスクラップカッター16の突出基端部又はその近傍に生じる。そこで、この実施の形態では、この加工工具の加工半径rに応じた円弧断面部30を含む固定型切れ刃逃げ部32を、製品Pの切断線Lよりも製品内側、つまり固定型10に窪むようにしてスクラップカッター16の突出基端部近傍の固定型切れ刃部20に形成する。また、第1移動型切れ刃部22には、固定型切れ刃逃げ部32との剪断加工で金属製板部材Wを切断するように、製品Pの切断線Lよりも製品内側に突出する、つまり第1移動型12から突出する移動型切れ刃突出部34を形成する。
【0023】
従って、製品Pには、固定型切れ刃逃げ部32と移動型切れ刃突出部34の剪断加工によって、上記加工工具の加工半径rに応じた円弧断面部30を含む窪み部が製品Pの切断線Lよりも製品内側に窪んで形成される。この窪み部のうち、製品Pの切断線Lよりも最も製品内側に窪む部分は上記加工工具の加工半径rに応じた円弧断面部30である。この円弧断面部30の製品Pの切断線Lからの寸法Dを、製品Pの切断位置の許容範囲、所謂公差内に設定しておけば、製品Pに円弧断面部30を含む窪み部が生じても、製品Pの切断精度には支障が生じない。なお、固定型切れ刃逃げ部32及び移動型切れ刃突出部34の剪断加工によって製品Pに形成される窪み部は、上記加工工具の加工半径rに応じた円弧断面部30だけでもよい。
【0024】
上記加工工具の加工半径rに応じた円弧断面部30は、例えば
図4の変形例に見られるように、製品Pの内部に全て収まり、スクラップS1、S2側にはみ出ないようにすることも理論上は可能である。そして、このように上記加工工具の加工半径rに応じた円弧断面部30を含む窪み部を設定することができれば、残りの製品Pの切断線Lは、固定型切れ刃部20と第2移動型切れ刃部24の剪断加工によって切断することができる。従って、例えば第2移動型切れ刃部24を延長するなどの必要がなく、第2移動型切れ刃部24の刃物強度を確保することができる。
【0025】
しかし、実質的には、
図3に明示するように、上記加工工具の加工半径rに応じた円弧断面部30がスクラップS2側、即ちスクラップ切れ刃部26側にはみ出すことの方が多い。その場合、スクラップ切れ刃部26に、その円弧断面部30に応じたスクラップ切れ刃R部36を形成する。これに合わせて、移動型スクラップ切れ刃部28には、スクラップ切れ刃R部36との剪断加工でスクラップS2該当部分における上記円弧断面部30を切断する移動型スクラップ切れ刃R部38を形成する。その際、
図4のように、スクラップ切れ刃部26の位置までしか第2移動型切れ刃部24が存在していないと、上記加工工具の加工半径rに応じた円弧断面部30の一部が残存してしまう。そこで、この加工工具の加工半径rに応じた円弧断面部30を固定型切れ刃部20との剪断加工で切断するように、第2移動型切れ刃部24を移動型スクラップ切れ刃部28側に延長(突出)して移動型切れ刃延長部40を形成する。
【0026】
このように第2移動型切れ刃部24を延長して移動型切れ刃延長部40を形成すると、
図3の平面図からも推察されるように、例えば第1移動型12の移動型スクラップ切れ刃部28や前述の移動型スクラップ切れ刃R部38と移動型切れ刃延長部40が干渉する。この実施の形態では、前述のように、固定型10に対して第1移動型12が先に下降し、次いで第2移動型14が下降する。そこで、この実施の形態では、
図6に示すように、移動型切れ刃延長部40の下降時に第1移動型12と干渉する部分を除去し、移動型スクラップ切れ刃部28がスクラップ切れ刃部26との剪断加工で金属製板部材Wを切断した後、移動型切れ刃延長部40が固定型切れ刃部20との剪断加工で金属製板部材Wを切断できるようにした。
【0027】
また、この実施の形態では、
図2に明示するように、少なくとも第2移動型切れ刃部24の移動型切れ刃延長部40の刃先部だけを予め固定型10側に突出し、これに伴って、スクラップカッター16には、第2移動型14の固定型10との剪断加工時に移動型切れ刃延長部40の固定型10側への突出部が収納される収納凹部42を形成した。第2移動型切れ刃部24の移動型切れ刃延長部40と固定型切れ刃部20の剪断加工により金属製板部材Wを切断する際、
図3からも理解されるように、移動型切れ刃延長部40はスクラップカッター16のスクラップ切れ刃部26まで突出する。この移動型切れ刃延長部40の突出部との干渉を回避するためには、スクラップ切れ刃部26の干渉部分を除去しなければならない。しかし、スクラップ切れ刃部26は移動型スクラップ切れ刃部28との剪断加工で金属製板部材WのスクラップS1、S2を切断しなければならないから、切れ刃部の除去部分は小さい方がよい。
【0028】
そこで、この実施の形態では、第2移動型切れ刃部24の移動型切れ刃延長部40の刃先部だけを予め固定型10側に突出し、この突出部と干渉する部分にその突出部が収納される収納凹部42を形成することで、干渉を回避すると共に、スクラップ切れ刃部26の除去部分を必要最小限とした。これにより、スクラップ切れ刃部26の刃物長さを確保することができ、合わせてスクラップ切れ刃部26の刃物強度を確保することができる。また、このようにすることで、移動型切れ刃延長部40と固定型切れ刃部20の剪断加工により切断されるスクラップS2の上記加工工具の加工半径rに応じた円弧断面部30が収納凹部42に落下し、そのスクラップS2とスクラップカッター16との干渉が回避される。
【0029】
また、この実施の形態では、
図3から明らかなように、上記固定型切れ刃逃げ部32と固定型切れ刃部20の交点に移動型切れ刃延長部40の突出先端角隅部を一致させ、これにより、前述のように、移動型切れ刃延長部40の移動型スクラップ切れ刃部28側への突出寸法を最小にしている。しかしながら、このようにした結果、例えば移動型切れ刃延長部40の刃物強度が不十分になるような場合には、
図5の更なる変形例の平面図に示すように、移動型切れ刃延長部40の移動型スクラップ切れ刃部28側への突出寸法を大きくしてもよい。更には、同図に示すように、第2移動型切れ刃部24の少なくとも移動型切れ刃延長部40(図は第2移動型切れ刃部24全体)と固定型切れ刃部20の剪断加工による金属製板部材Wの切断線を、第1移動型切れ刃部22と固定型切れ刃部20の剪断加工による金属製板部材Wの切断線、即ち上記製品Pの切断線Lよりも製品内側に設定することも可能である。
【0030】
次に、この実施の形態のプレス型の作用・効果について、従来のプレス型から順を追って説明する。
図8は、従来のプレス型の一例を示す主要部の斜視図、
図9は、
図8のプレス型で切断される金属製板部材Wの平面図である。この従来のプレス型も、下型である固定型10と上型である第1移動型12及び第2移動型14の剪断加工により製品Pを切り出すと共に、スクラップカッター16によってスクラップS1、S2を切断する。なお、
図2と同様に、第1移動型12の第1移動型切れ刃部22及び移動型スクラップ切れ刃部28は、二点鎖線で切れ刃部のみを示している。また、固定型10と第1移動型12及び第2移動型14の剪断加工による製品Pの切り出しやスクラップS1、S2の切断順序も、
図2の実施の形態と同じである。
【0031】
この従来のプレス型では、スクラップカッター16は固定型10とは別個の台座部Bに設けられている。このスクラップカッター16には、例えば直線状のスクラップ切れ刃部26が形成されており、第1移動型12には、このスクラップ切れ刃部26との剪断加工でスクラップS1、S2を切断する移動型スクラップ切れ刃部28が同じく例えば直線状に形成されている。この従来のプレス型では、
図2の実施の形態のプレス型と同様に、固定型10の固定型切れ刃部20と第1移動型12の第1移動型切れ刃部22の剪断加工により製品Pの切断線Lで金属製板部材Wを切断し、それと同時に、スクラップカッター16のスクラップ切れ刃部26と第1移動型12の移動型スクラップ切れ刃部28の剪断加工により金属製板部材Wのスクラップ部分を切断する。そして、その後、固定型10の固定型切れ刃部20と第2移動型14の第2移動型切れ刃部24の剪断加工により製品Pの切断線Lで製品Pを切り出す。
【0032】
このとき、スクラップカッター16のスクラップ切れ刃部26と第1移動型12の移動型スクラップ切れ刃部28で生じたスクラップS1は台座部Bの図示左側を通って落下し、製品Pの切り出しで生じるスクラップS2は台座部Bの図示右側を通って落下する。この例では、スクラップカッター16が搭載される台座部Bは、図示左側でプレス機の土台と連結されているので、例えば、この台座部Bの図示左側を通って落下しようとするスクラップS1は、この台座部B分と干渉するおそれがあり、その結果、プレス機からスムーズに排出されない可能性がある。
【0033】
そこで、
図2の実施の形態に示すように、スクラップカッター16を設けるための台座部Bをなくすべく、スクラップカッター16を固定型10から略水平方向に片持ち状に、固定型10と一体に突出形成する。このとき、例えば前述のエンドミルを加工工具として用いて、スクラップカッター16を固定型10と一体に固定型10から突出するように形成すると、例えば
図7に示すように、スクラップ切れ刃部26には、スクラップカッター16の突出基端部に、加工工具の加工半径rに応じた円弧断面部(略円弧断面部を含む)30が形成される。もし、この円弧断面部30をスクラップ切れ刃部26に残したまま、第1移動型12の移動型スクラップ切れ刃部28でスクラップS1、S2を切断する場合には、移動型スクラップ切れ刃部28にも、同様に円弧断面部30が必要となる。
【0034】
このように構成された円弧断面部30を含むスクラップ切れ刃部26と移動型スクラップ切れ刃部28の剪断加工により金属製板部材Wを切断すると、この円弧断面部30に相当する部分がそのままスクラップS2該当部分として金属製板部材Wに残存する。この円弧断面部30に相当するスクラップS2該当部分を、第2移動型切れ刃部24と固定型切れ刃部20の剪断加工により切断するべく、移動型スクラップ切れ刃部28との干渉を回避しながら第2移動型切れ刃部24を移動型スクラップ切れ刃部28側に延長すると、延長寸法が大きく、しかも、その延長部の突出先端部は、第1移動型12との隙間に入り込むように尖鋭化する。そして、このように移動型スクラップ切れ刃部24の延長部の突出先端部が尖鋭化すると、刃物強度が確保できなくなるおそれがある。
【0035】
これに対し、この実施の形態のプレス型では、固定型10と一体にスクラップカッター16を形成するための加工工具の加工半径rに応じた円弧断面部30を製品Pの切断線Lより製品内側に窪ませるように、固定型切れ刃部20に固定型切れ刃逃げ部32を形成すると共に、この固定型切れ刃逃げ部32との剪断加工で金属製板部材Wを切断する移動型切れ刃突出部34を第1移動型切れ刃部22に形成する。従って、固定型切れ刃逃げ部32と移動型切れ刃突出部34の剪断加工により、加工工具の加工半径rに応じた円弧断面部30は、製品Pの切断線Lよりも製品内側に形成され、スクラップカッター16のスクラップ切れ刃部26には、
図4のように、加工工具の加工半径rに応じた円弧断面部30が形成されないか、又は、
図3のように、小さくしか形成されない。なお、何れの場合も、上記加工工具の加工半径rに応じて製品Pの切断線Lよりも製品内側に形成される円弧断面部30の製品Pの切断線Lからの寸法Dを、予め製品Pの切断線Lに設定された許容範囲(公差)内に設定することで、製品Pの切断精度に支障は生じない。
【0036】
加工工具の加工半径rに応じた略円弧断面部30がスクラップ切れ刃部26に形成されない場合、固定型切れ刃部20と第1移動型切れ刃部22の剪断加工後、固定型切れ刃部20と第2移動型切れ刃部24の剪断加工によって製品Pの切断線Lで金属製板部材Wを切断することができる。従って、この場合、第2移動型切れ刃部24を延長したり尖鋭化させたりする必要がなく、第2移動型切れ刃部24の刃物強度が確保される。
【0037】
一方、加工工具の加工半径rに応じた円弧断面部30がスクラップ切れ刃部26に形成される場合であっても、固定型切れ刃部20と第1移動型切れ刃部22の剪断加工後に製品Pの切断線Lよりも製品外側に残存する上記円弧断面部30のスクラップS2該当部分は小さい。従って、これを切断するために第2移動型切れ刃部24を移動型スクラップ切れ刃部28側に延長したときの延長部の突出寸法が小さくなり、しかも、その突出先端部を尖鋭化させる必要がないので、その移動型スクラップ切れ刃延長部の刃物強度を確保することが可能になる。
【0038】
図2の実施の形態では、後者に合わせて、上記加工工具の加工半径rに応じた円弧断面部30からなるスクラップ切れ刃R部36をスクラップ切れ刃部26のスクラップカッター突出基端部に形成し、スクラップ切れ刃R部36との剪断加工でスクラップS1、S2を切断するための移動型スクラップ切れ刃R部38を移動型スクラップ切れ刃部28に形成すると共に、第2移動型切れ刃部24を移動型スクラップ切れ刃R部38側に突出させて移動型切れ刃延長部40を形成した。
【0039】
これにより、スクラップ切れ刃R部36と移動型スクラップ切れ刃R部38の剪断加工によって、上記加工工具の加工半径rに応じた円弧断面部30のスクラップ該当部分が、固定型切れ刃部20と第1移動型切れ刃部22の剪断加工後に、製品Pの切断線Lよりも製品外側に残存する。この残存した円弧断面部30のスクラップ該当部分は、移動型切れ刃延長部40と固定型切れ刃部20との剪断加工によって切断される。前述のように、また
図3に示すように、固定型切れ刃部20と第1移動型切れ刃部22の剪断加工後に製品Pの切断線Lよりも製品外側に残存する上記略円弧断面部30のスクラップ該当部分は小さいので、これを切断するための第2移動型切れ刃部24の移動型切れ刃延長部40の突出寸法は小さく、その突出先端部を尖鋭化する必要もない。従って、第2移動型切れ刃部24を移動型スクラップ切れ刃部28側に延長する場合にも、その移動型切れ刃延長部40の刃物強度を確保することが可能となる。
【0040】
また、
図2の実施の形態では、移動型切れ刃延長部40の刃先部を予め固定型10側に突出形成し、第2移動型14の固定型10との剪断加工時に移動型切れ刃部延長部の固定型10側への突出部が収納される収納凹部42をスクラップカッター16に形成した。これにより、固定型切れ刃部20と第1移動型切れ刃部22の剪断加工後、製品Pの切断線Lよりも製品外側に残存する上記円弧断面部30のスクラップS2該当部分は、第2移動型切れ刃部24と固定型切れ刃部20の剪断加工によるスクラップS2と一緒に移動型切れ刃延長部40と固定型切れ刃部20の剪断加工によって切断される。その際、切断されたスクラップS2の上記円弧断面部30がスクラップカッター16の収納凹部42内に収まるので、そのスクラップS2とスクラップカッター16の干渉が抑制される。また、移動型切れ刃延長部40又は移動型切れ刃延長部40を含む第2移動型切れ刃部24の固定型10側への突出部を収納する収納凹部42分だけ、スクラップカッター16に形成されるスクラップ切れ刃部26を除去すればよいので、スクラップ切れ刃部26の刃物長さを確保して、その刃物強度を確保することが可能となる。
【0041】
本発明が上記していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当とされる特許請求の範囲に記載された発明特定事項によってのみ定められるものである。