(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリビニルアルコール系重合体が、JIS K6726に従って測定した4質量%水溶液粘度が2.0mPa・s以上10.0mPa・s以下を満たすポリビニルアルコール系重合体である、請求項1〜3のいずれかに記載の結合剤。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[ポリビニルアルコール系重合体]
本発明の結合剤は、ポリビニルアルコール系重合体を含む。
ポリビニルアルコール系重合体(PVA系重合体、PVAなどということがある)(a)は、通常、ビニルエステル系重合体(少なくともビニルエステルを重合成分とする重合体)の鹸化物であってもよい。
【0016】
PVA系重合体のけん化度は、特に限定されないが、医薬品添加物規格、米国薬局方及びヨーロッパ薬局方の3つの公定書に記載されているPVAのけん化度の規格内に入ることが好ましい。また、体内で速やかに溶解できるなどの観点から、PVA系重合体の平均けん化度は、例えば、74.0モル%〜89.0モル%(例えば、80.0〜89.0モル%など)が好ましく、85.0モル%〜89.0モル%(例えば、85.5〜89.0モル%、86.0〜89.0モル%、86.5〜89.0モル%、87.0〜89.0モル%、87.5〜88.9モル%、88.0〜88.8モル%)が特に好ましい。
【0017】
平均けん化度が85.0モル%以上であれば、グローバルに販売される医薬用製剤の原料として使用でき、また、疎水性基の割合が少なくなることから、親水性が向上したり、水溶液を調製する際に高温で析出しにくいため、取扱いが容易になるなどの観点から特に好ましい。
一方、平均けん化度が89.0モル%以下であれば、グローバルに販売される医薬用製剤の原料として使用でき、PVAの水酸基の増加に伴う結晶性の向上による水への溶解性の低下や、錠剤における崩壊性や溶出速度を十分なものとしやすいなどの観点から特に好ましい。
【0018】
なお、PVAの平均けん化度は、特に限定されないが、例えば、JIS K6726のけん化度測定方法などによって、測定してもよい。
【0019】
本発明では、特定のけん化度分布を有するPVA系重合体を使用する。
【0020】
すなわち、PVA系重合体は、以下の要件(A)を充足する。
【0021】
要件(A):検出器が荷電化粒子検出器、カラムがThermo Scientific社のAcclaim
TM300(カタログ番号:060266、炭素含量:8%、最大圧力:4500psi、粒子径:3μm、細孔径:300Å、固定相:C18、表面積:100m
2/g、長さ:150mm、直径:4.6mm、pH:2.5〜7.5、材質:Glass Lined Tubing(グラスライニング管))である液体クロマトグラフィを用いて以下の測定条件でポリビニルアルコール系重合体を測定し、ベースライン補正を行った後に得られる保持時間と検出強度の関係において、データサンプリング周期を500ミリ秒とした時に保持時間5.0分から12.0分の間に得られる全データにおける保持時間T
i[分]の時の検出強度をP
i[pA]としたとき、式(1)及び式(2)に基づいて算出される、式(3)で表される値が、22以上である。
【0022】
[測定条件]
・ポリビニルアルコール系重合体水溶液濃度:0.1質量%
・ポリビニルアルコール系重合体水溶液注入量:2μL
・カラム温度:50℃
・流速:1.0ml/分
・溶離液:水とメタノールの混合溶媒
・溶離液のグラジエント条件:測定時間0分〜10分において溶離液中における水とメタノールの混合比が95:5〜15:85へと一定の割合で変化し、かつ、測定時間10分〜15分における溶離液中の水とメタノールの混合比が15:85で一定である。
【0023】
[式]
T
n= Σ(T
i×P
i)/Σ(P
i) 式(1)
T
w= Σ(T
i2×P
i)/Σ(T
i×P
i) 式(2)
{(T
w/T
n)−1}×1000 式(3)
【0024】
上記要件において、使用する荷電化粒子検出器と液体クロマトグラフィについて特に制限はないが、例えば、荷電化粒子検出器としてはThermo Scientific社の CORONA VEOを使用することができる。また、液体クロマトグラフィとしてはThermo Scientific社のULTIMATE3000を使用することができる。
【0025】
荷電化粒子検出器を用いた液体クロマトグラフィによってPVA系重合体の測定を行った場合、カラムから分離したPVAを含む試料溶液が荷電化粒子検出器内部において窒素で噴霧及び乾燥されることにより微粒子化され、そのPVA微粒子がN
+イオンで荷電化され測定されることにより、検出される。
【0026】
本発明の液体クロマトグラフィで使用するカラムとしては、通常は、オクタデシルシリル基で表面が修飾された化学結合型多孔性球状シリカゲルが固定相として充填されている逆相系ODSカラムであるThermo Scientific社のAcclaim
TM300 (カタログ番号:060266、炭素含量:8%、最大圧力:4500psi、粒子径:3μm、細孔径:300Å、固定相:C18、表面積:100m
2/g、長さ:150mm、直径:4.6mm、pH:2.5〜7.5、材質:Glass Lined Tubing(グラスライニング管))である。
【0027】
測定試料であるPVA系重合体は、精製水に溶解し、水溶液として測定される。PVA系重合体水溶液濃度は、通常は、0.1質量%である。
測定条件は、通常は、流速が1ml/分、カラム温度が50℃、PVA系重合体水溶液の注入量が2μLである。
【0028】
溶離液としては、通常は、水とメタノールの混合溶媒を用いる。
さらに、通常は、溶離液にグラジエントをかけて測定を行う。
測定時間ごとの溶離液のグラジエント条件としては、通常は、測定時間0分における溶離液中の水とメタノールの混合比が95:5であり、0分〜10分にかけて一定の割合(例えば、水とメタノールの混合比において、水の割合を1分間あたり8ずつ減らし、メタノールの割合を1分間あたり8ずつ増やす)で水とメタノールの比率を変化させ、10分における水とメタノールの混合比が15:85となるように変化させ、測定時間10分〜15分においては、溶離液中の水とメタノールの混合比が15:85の一定の比率とする。
【0029】
溶離液中における水の割合が多い時間帯においては、PVA系重合体中の高けん化度成分が分離されていき、メタノールの割合が増えてくるにつれて徐々にPVA系重合体中の低けん化度成分が分離されていく。
カラム中にデッドスペース部分が存在している場合、0〜10分のみのグラジエントでは正確な測定が行えない可能性があるため、通常は、それを防ぐために上記条件で5分間溶離液を流す。
15分以降は、カラム中に残る低けん化度成分を追い出すために、水とメタノールの混合比を5:95として5分間流すのが好ましく、引き続きPVA系重合体の測定を行う際は、7分から10分間程度、水とメタノールの混合比を95:5の一定として溶離液を流し、カラム内部を初期状態に平衡化させるのが好ましい。
【0030】
上記条件下でPVA系重合体の試料を測定すると、保持時間と検出強度の相関を示すグラフを得ることができる。このグラフから、上記測定条件下において試料溶液を何も打たずに測定を行った時に得られるいわゆるベースラインのピークを差し引いてベースライン補正を行うことで、保持時間ごとの検出強度のグラフが得られる。
図1に、JIS K6726に従って測定した平均けん化度が88.2モル%、JIS K6726に従って測定した4質量%水溶液粘度が5.3mPa・sのPVA(日本酢ビ・ポバール製 JP−05)の測定を行った際の保持時間5.0分〜12.0分における保持時間(Retention time)と検出強度(Intensity)のチャートを示す。
【0031】
本発明においては、検出器から送られてきた信号をデータ処理装置が受け取る際の頻度を示すデータサンプリング周期が500ミリ秒、すなわち0.5秒に一回の割合で検出強度のデータを得ることが好ましく、データのサンプリング周期が2秒より短いことがより好ましい。これらのデータをプロットすることにより、
図1のようなチャートが得られる。
【0032】
本液体クロマトグラム条件では、溶離液中の水の割合が高い測定初期には、サンプルPVA系重合体中の高けん化度成分が溶出し、溶離液中のメタノールの割合が増えるにつれて低けん化度成分が溶出するため、コロナ検出器で検出される保持時間毎のイオン強度のチャートとしては、けん化度分布が狭いPVA系重合体の場合、保持時間9.5分近辺にピークトップを有するシャープなピークが得られるが、同じけん化度であってもけん化度分布の広いPVA系重合体を測定した場合、ピークトップの位置は変わらないが、ブロードなピークが得られる。
【0033】
得られた保持時間と検出強度の全データにおいて、保持時間T
i[分]における検出強度をP
i[pA]とした場合、式(1)、式(2)のようなT
nとT
wで表記することができる。ここで示すT
nおよびT
wは、ゲル浸透クロマトグラフィ(以下、GPCと略記する)を用いた分子量分布測定における、数平均分子量M
nおよび重量平均分子量M
wに相当する意味合いのものである。
これらT
nおよびT
wを用いて、分子量分布測定におけるいわゆる多分散度M
w/M
nに相当するT
w/T
nを用いることにより、けん化度の分布の広がりを式(3)のように規定することができる。
【0034】
式(3)で表される値(すなわち、{(T
w/T
n)−1}×1000)は、22以上(例えば、23以上)であればよく、例えば、25以上(例えば、27以上)、好ましくは28以上(例えば、30以上)、さらに好ましくは32以上(例えば、33以上)であってもよく、35以上(例えば、38以上、40以上、42以上、44以上など)であってもよい。
【0035】
式(3)で表される値の上限値は、特に限定されないが、例えば、100、98、95、93、90、88、85、83、80、78、75などであってもよい。
【0036】
PVA系重合体の4質量%水溶液粘度(JIS K6726に従って測定)は、特に制限はないが、2.0mPa・s以上10.0mPa・s以下(例えば、2.2mPa・s以上9.5mPa・s以下、2.5mPa・s以上9.0mPa・s以下、2.8mPa・s以上8.5mPa・s以下)が好ましく、3.0mPa・s以上7.0mPa・s以下(例えば、3.5mPa・s以上6.5mPa・s以下、4.0mPa・s以上6.0mPa・s以下、4.5mPa・s以上5.5mPa・s以下)であってもよい。
【0037】
このような4質量%水溶液粘度を有することで、前記要件(A)との組み合わせもあいまって、錠剤の崩壊時間を効率よく短いものとしやすい。
【0038】
PVA系重合体は、市販品を利用してよく、合成したものを使用してもよい。PVA系重合体の製造方法としては、ビニルエステル系モノマーを含む重合成分の重合体(ビニルエステル系重合体)をけん化する等の公知の方法が用いられる。
【0039】
ビニルエステル系モノマー(ビニルエステル系単量体)としては、特に限定されないが、例えば、脂肪酸ビニルエステル[例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリル酸ビニル、バーサチック酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニルなどのC
1−20脂肪酸ビニルエステル(例えば、C
1−16アルカン酸−ビニルエステル)など]、芳香族カルボン酸ビニルエステル[例えば、安息香酸ビニルなどのアレーンカルボン酸ビニル(例えば、C
7−12アレーンカルボン酸−ビニルエステル)など]などが挙げられる。
【0040】
ビニルエステル系モノマーは、1種で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0041】
ビニルエステル系モノマーは、少なくとも脂肪酸ビニルエステル(例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどのC
1−10アルカン酸−ビニルエステルなど)を含んでいるのが好ましく、工業的観点などから、特に、酢酸ビニルを含んでいてもよい。
【0042】
ビニルエステル系重合体は、ビニルエステル単位を有していればよく、必要に応じて、他の単量体(ビニルエステル系モノマーと共重合可能な単量体)由来の単位を有していてもよい(他の単量体により変性されていてもよい)。
【0043】
他の単量体としては、特に限定されないが、例えば、α−オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレンなど)、(メタ)アクリル酸エステル類[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル]、不飽和アミド類[例えば、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなど]、不飽和酸類{例えば、不飽和酸[例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸など]、不飽和酸エステル[(メタ)アクリル酸以外の不飽和酸エステル、例えば、アルキル(メチル、エチル、プロピルなど)エステルなど]、不飽和酸無水物(無水マレイン酸など)、不飽和酸の塩[例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アンモニウム塩など]など}、グリシジル基含有単量体[例えば、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなど]、スルホン酸基含有単量体(例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、その塩類など)、リン酸基含有単量体[例えば、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレートなど]、ビニルエーテル類(例えば、アルキルビニルエーテル類)、アリルアルコールなどが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0044】
他の単量体は、1種で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0045】
なお、重合成分が、他の単量体を含む場合、重合成分における他の単量体の割合は、例えば、50質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下であってもよい。
【0046】
重合成分におけるビニルエステル系モノマーの割合は、例えば、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0047】
なお、PVA系重合体は、ビニルアルコール単位の一部が、アセタール化、エーテル化、アセトアセチル化、カチオン化などの反応によって、変性されたものであってもよい。
【0048】
重合成分(例えば、酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマーを含む重合成分)の重合方法としては、特に限定されず、例えば、従来公知の塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられるが、溶剤としてメタノールを用いた溶液重合が工業的に好ましい。該溶液重合には、過酸化物系、アゾ系等の公知の開始剤を用いることができ、重合成分とメタノールの配合比、重合収率を変えることにより、ビニルエステル系重合体の重合度を調整することができる。また、PVA系重合体を得るための原料として、市販のビニルエステル系重合体(ポリ酢酸ビニル樹脂など)を使用することもできる。
【0049】
ビニルエステル系重合体(例えば、ポリ酢酸ビニル)のけん化方法としては、従来から公知のアルカリ触媒又は酸触媒を用いたけん化方法を適用することができ、中でもビニルエステル系重合体(例えば、ポリ酢酸ビニル)のメタノール溶液又はビニルエステル系重合体(例えば、ポリ酢酸ビニル)のメタノール、水、酢酸メチル等の混合溶液に水酸化ナトリウム等のアルカリを加えて、撹拌して混合しながら、ビニルエステル系重合体(例えば、ポリ酢酸ビニル)のアシル基(例えば、アセチル基)を加アルコール分解する方法が、工業的に好ましい。
【0050】
その後、得られた塊状物、ゲル状物あるいは粒状物を粉砕し、必要に応じて添加したアルカリを中和した後、固形物と液分を分離し、固形物を乾燥することによりPVA系重合体を得ることができる。
【0051】
本発明で用いられるPVA系重合体は、けん化反応を通常より不均一な系で行うことで効率よく製造することができる。具体的な方法としては、けん化時のビニルエステル系重合体(例えば、ポリ酢酸ビニル)のメタノール溶液の濃度を高くして(例えば、55質量%以上)けん化を行う方法、アルカリを添加して混合する際の撹拌速度を低くして(例えば、20rpm以下)けん化を行う方法、アルカリを添加して混合する際の撹拌及び混合時間を短縮してけん化を行う方法、アルカリ量を増やして短時間でけん化を行う方法、ビニルエステル系重合体(例えば、ポリ酢酸ビニル)のメタノール溶液と添加するアルカリの温度を調整する等して、けん化反応系に温度勾配又は温度分布を与えてけん化する方法が挙げられる。
【0052】
その他にも、けん化反応速度に影響を与える水、酢酸メチル等の溶剤を不均一な状態になるように添加して、けん化反応を行う方法等があり、これらの操作を行うことで、作成したPVA系重合体中のけん化度にムラが生じやすくなり、それにより従来の方法で作成したPVA系重合体と同じ平均けん化度であっても、けん化度分布が広いPVA系重合体を製造することができる。
【0053】
また、上記方法以外にも、加重平均けん化度が目的の値になるようにけん化度の異なる2種以上のPVAを配合したPVAも、PVA系重合体の一形態として本発明において使用することができる。
【0054】
この場合、PVA系重合体は、複数のPVA、例えば、2種のPVA(a)とPVA(b)とを混合することにより、得ることができる。
【0055】
JIS K6726のけん化度測定方法に従って測定される、PVA(a)の平均けん化度は、例えば85モル%以上(例えば、85〜99モル%)、好ましくは88モル%以上(例えば、88〜99モル%)、より好ましくは90モル%以上(例えば、90〜99モル%)、さらに好ましくは92モル%以上(例えば、92〜99モル%)のPVA(a)であってもよい。
【0056】
PVA(b)の前記平均けん化度は、例えば99モル%以下(例えば、60〜99モル%)、好ましくは95モル%以下(例えば、60〜95モル%)、より好ましくは90モル%以下(例えば、65〜90モル%)、さらに好ましくは88モル%以下(例えば、65〜88モル%)であってもよい。
【0057】
PVA(a)とPVA(b)の混合割合は、充足させる式(3)の値等に応じて適宜選択でき、例えば、PVA(a):PVA(b)の質量比が、例えば5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは15:85〜85:15、さらに好ましくは20:80〜80:20であってもよい。
【0058】
PVA(a)とPVA(b)の混合によって得られるPVA系重合体の加重平均けん化度(すなわち、PVA(a)のけん化度をAモル%、PVA(b)のけん化度をBモル%、PVA(a)とPVA(b)の混合割合をA’:B’とした時、加重平均けん化度C=(A×A’+B×B’)/100)は、前記と同様の範囲から選択できるが、例えば、83.0〜89.0モル%、好ましくは85.0〜89.0モル%、より好ましくは86.0〜89.0モル%であってもよい。
【0059】
[結合剤など]
本発明の結合剤(バインダー)は、上記PVA系重合体を含む。
【0060】
このような結合剤は、対象物(例えば、粉末)に対して結合剤として機能する限り、その具体的用途は特に限定されないが、特に、造粒用の結合剤として好適である。
【0061】
対象物(結合剤の対象物、結合対象物)としては、特に限定されないが、例えば、医薬品、医薬部外品、食品などであってもよい。また、対象物は、有効成分、栄養素(又は栄養成分)などであってもよく、薬物(原薬等)であってもよい。
対象物は、有機物、無機物のいずれであってもよく、これらの混合物や有機−無機ハイブリット物であってもよい。
【0062】
このような対象物のうち薬物ないし有効成分(又は対象物中に含まれる薬物ないし有効成分)としては、特に限定されるものではない。かかる薬物としては、例えば、中枢神経系薬物、循環器系薬物、呼吸器系薬物、消化器系薬物、抗生物質、鎮咳・去たん剤、抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛消炎剤、利尿剤、自律神経作用薬、抗マラリア剤、止潟剤、向精神剤、ビタミン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0063】
中枢神経系薬物としては、例えば、ジアゼパム、イデベノン、アスピリン、イブプロフェン、パラセタモール、ナプロキセン、ピロキシカム、インドメタシン、スリンダック、ロラゼパム、ニトラゼパム、フェニトイン、アセトアミノフェン、エテンザミド、ケトプロフェン及びクロルジアゼポキシド等が挙げられる。
【0064】
循環器系薬物としては、例えば、モルシドミン、ビンポセチン、プロプラノロール、メチルドパ、ジピリダモール、フロセミド、トリアムテレン、ニフェジビン、アテノロール、スピロノラクトン、メトプロロール、ピンドロール、カプトプリル、硝酸イソソルビト、塩酸デラプリル、塩酸メクロフェノキサート、塩酸ジルチアゼム、塩酸エチレフリン、ジギトキシン、塩酸プロプラノロール及び塩酸アルプレノロール等が挙げられる。
【0065】
呼吸器系薬物としては、例えば、アムレキサノクス、デキストロメトルファン、テオフィリン、プソイドエフェドリン、サルブタモール及びグアイフェネシン等が挙げられる。
【0066】
消化器系薬物としては、例えば、2−[〔3−メチル−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−ピリジル〕メチルスルフィニル]ベンゾイミダゾール及び5−メトキシ−2−〔(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジル)メチルスルフィニル〕ベンゾイミダゾール等の抗潰瘍作用を有するベンゾイミダゾール系薬物、シメチジン、ラニチジン、塩酸ピレンゼピン、パンクレアチン、ビサコジル並びに5−アミノサリチル酸等が挙げられる。
【0067】
抗生物質としては、例えば、塩酸タランピシリン、塩酸バカンピシリン、セファクロル及びエリスロマイシン等が挙げられる。
【0068】
鎮咳・去たん剤としては、例えば、塩酸ノスカピン、クエン酸カルベタペンタン、臭化水素酸デキストロメトルファン、クエン酸イソアミニル及びリン酸ジメモルファン等が挙げられる。
【0069】
抗ヒスタミン剤としては、例えば、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン及び塩酸プロメタジン等が挙げられる。
【0070】
解熱鎮痛消炎剤としては、例えば、イブプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、フルフェナム酸、スルピリン、アスピリン及びケトプロフェン等が挙げられる。
【0071】
利尿剤としては、例えば、カフェイン等が挙げられる。
【0072】
自律神経作用薬としては、例えば、リン酸ジヒドロコデイン及びdl−塩酸メチルエフェドリン、硫酸アトロピン、塩化アセチルコリン、ネオスチグミン等が挙げられる。
【0073】
抗マラリア剤としては、例えば、塩酸キニーネ等が挙げられる。
【0074】
止潟剤としては、例えば、塩酸ロペラミド等が挙げられる。
【0075】
向精神剤としては、例えば、クロルプロマジン等が挙げられる。
【0076】
ビタミン類及びその誘導体としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB1、フルスルチアミン、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、パントテン酸カルシウム及びトラネキサム酸等が挙げられる。
【0077】
なお、対象物が、有効成分や栄養素などを含む場合、これらに加えて、他の成分(例えば、賦形剤、崩壊剤、滑択剤、凝集防止剤、溶解補助剤など通常この分野で使用される種々の添加剤)を含んでいてもよい。
【0078】
賦形剤としては、例えば、白糖、乳糖、マンニトール、グルコースなどの糖類、でんぷん、結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどが挙げられる。崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース又はその塩、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、結晶セルロース及び結晶セルロース・カルメロースナトリウム等が挙げられる。滑択剤、凝集防止剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、コロイダルシリカ、ステアリン酸、ワックス類、硬化油、ポリエチレングリコール類、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。更に、溶解補助剤としては、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸等の有機酸等が挙げられる。これら添加剤は、1種又は2種以上を使用することができる。他の成分(添加剤)の含有量は、薬剤の種類等に応じて適宜決定することができる。
【0079】
対象物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0080】
対象物は、常温(例えば、10〜40℃等)において固体であってもよい。
【0081】
対象物の形状は、例えば、粉末(又は粉体)であってもよい。このような粉末(原体、原末など)の大きさは、特に限定されないが、例えば、平均粒子径が、500μm以下(例えば、5〜400μm)、好ましくは300μm以下、さらに好ましくは100μm以下(例えば、10〜80μm)程度であってもよい。
【0082】
なお、粉末の平均粒子径は、レーザー式粒度分布測定装置などにより測定してもよい。
【0083】
結合剤を造粒用に用いる場合、造粒物(造粒末)が得られる。すなわち、造粒物は、対象物(粉体等)と、結合剤とを含む。換言すれば、造粒物は、結合剤を本発明の結合剤(又はポリビニルアルコール系重合体)とする造粒物ということもできる。
【0084】
粉末の造粒物(造粒末)は、通常、顆粒(顆粒状)であってもよい。
【0085】
造粒物(例えば、顆粒)の大きさは、粉体の大きさや造粒方法等に応じて適宜選択できるが、例えば、平均粒子径700μm以下(例えば、30〜600μm)、好ましくは400μm以下、さらに好ましくは300μm以下(例えば、50〜200μm)程度であってもよい。
【0086】
なお、造粒物の平均粒子径は、レーザー式粒度分布測定装置などにより測定してもよい。
【0087】
造粒物において、結合剤(又はポリビニルアルコール系重合体)の割合は、例えば、0.1〜50質量%程度の範囲から選択でき、0.2〜30質量%(例えば、0.3〜15質量%)、好ましくは0.5〜10質量%(例えば、0.7〜8質量%)、さらに好ましくは1〜5質量%(例えば、1〜3質量%)程度であってもよい。
【0088】
造粒物において、本発明の結合剤(又はポリビニルアルコール系重合体)の割合は、例えば、粉体1質量部に対して、0.001〜0.5質量部程度の範囲から選択でき、0.002〜0.2質量部(例えば、0.003〜0.15質量部)、好ましくは0.005〜0.1質量部(例えば、0.007〜0.08質量部)、さらに好ましくは0.01〜0.05質量部(例えば、0.01〜0.03質量部)程度であってもよい。
【0089】
本発明の結合剤は、対象物のバインダーとして機能する限り、特に限定されないが、通常、対象物と接触させることにより、使用できる。
【0090】
特に、本発明の結合剤(又はポリビニルアルコール系重合体)を用いて造粒する(結合剤と対象物とを接触させる)ことにより、造粒物を製造できる。
なお、本発明の結合剤(造粒物)は、下記(1)〜(3)の態様を含んでもよく、含まなくてもよい。
(1)レボドバ及び/又はカルビドバに使用する(例えば、レボドバ及びカルビドバを含む医薬製剤に、けん化度の異なるポリビニルアルコールからなる重合体混合物を含有させる)。
(2)イルベサルタンに使用する(例えば、イルベサルタン含有医薬組成物に含有させる)。
(3)オベチコール酸またはその薬学的に許容される塩に使用する(例えば、オベチコール酸またはその薬学的に許容される塩、(i)水溶性賦形剤、(ii)崩壊剤、および(iii)水溶性高分子結合剤を含有する経口製剤において、水溶性高分子結合剤として使用する)。
【0091】
造粒方法としては、特に限定されず、乾式造粒(例えば、薬物などの粉末と結合剤を混合した後、ローラーコンパクターと呼ばれるような装置で粉末に圧力をかけて造粒を行い、最後に粉砕して顆粒を作成する方法)であってもよいが、代表的には、湿式造粒(湿式造粒法)であってもよい。
【0092】
湿式造粒は、結合剤を液体状として対象物と接触させる工程(造粒工程)を少なくとも含む。代表的な造粒工程では、溶媒の存在下で、結合剤(又はポリビニルアルコール系重合体)と対象物とを接触させてもよい。より具体的には、結合剤を含む分散又は溶液(特に、水溶液及び/又は水性溶液)を、対象物(特に粉体)に接触(例えば、噴霧、滴下)させる方法(例えば、溶液添加法)、対象物(粉体)と結合剤との混合物に溶媒(結合剤を溶解又は分散可能な溶媒)を接触(例えば、噴霧、滴下)させる方法(例えば、粉末添加法)などが挙げられる。
【0093】
溶媒としては、特に、結合剤(又はポリビニルアルコール系重合体)を溶解又は分散できれば特に限定されないが、通常、水、水と有機溶媒との混合液(水性溶媒)、特に、水又は水性溶媒(代表的には水)を好適に使用できる。有機溶媒(水溶性溶媒)としては、特に限定されないが、例えば、アルコール類(例えば、エタノールなど)などが挙げられる。
【0094】
湿式造粒において、溶媒の割合又は使用量(例えば、水溶液における水の割合)は、対象物(粉体)100質量部に対して、例えば、1〜70質量部(例えば、3〜60質量部)、好ましくは4〜50質量部(例えば、5〜45質量部)、さらに好ましくは7〜40質量部(例えば、8〜35質量部)程度であってもよい。
【0095】
具体的な湿式造粒法としては、例えば、流動層造粒、高速撹拌造粒、押し出し造粒、転動造粒などが挙げられるが、本発明では、特に流動層造粒、高速撹拌造粒などを好適に利用してもよい。
【0096】
流動層造粒は、例えば、流動層と呼ばれる層の中に対象物(粉末)を入れ、下層から温風を噴霧して対象物(粉末)を流動させているところに、上層から結合剤を含む溶液又は分散液(特に、水溶液)を噴霧して造粒する方法である。なお、流動層造粒であれば、造粒(造粒する工程)と同時に乾燥も行うことができ、造粒後の乾燥の手間が省ける。
【0097】
高速撹拌造粒では、例えば、装置内部にブレンダーと呼ばれる大きな羽根とチョッパーと呼ばれる小さな羽根がついている高速撹拌造粒機が使用される。このような高速攪拌造粒では、装置内部に対象物(粉末)を入れ、撹拌羽根を回転させているところに結合剤を含む溶液又は分散液(特に水溶液)を噴霧または滴下して造粒を行う。造粒後、乾燥を行い、顆粒が得られる。
【0098】
造粒物(例えば、顆粒)は、対象物の種類や用途等に応じて適宜利用でき、例えば、顆粒として利用(例えば、顆粒剤、カプセル剤などとして利用)してもよく、さらに顆粒を用いて成形してもよい。
例えば、造粒物(顆粒)は、錠剤の材料として使用できる。換言すれば、錠剤は、造粒物を含んでおり、造粒物を用いて打錠することにより製造できる。
【0099】
このような本発明の造粒物(及び錠剤などのその成形品)は、経口用途(経口剤)として好適に利用してもよい。
【0100】
錠剤は、造粒物を少なくとも含んでいればよく、他の成分を含んでいてもよい。
【0101】
他の成分としては、通常、この分野で常用され得る添加剤(例えば、崩壊剤、滑択剤、凝集防止剤、溶解補助剤など)を含んでいてもよい。
【0102】
崩壊剤としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース又はその塩、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウムなどが挙げられる。
【0103】
滑択剤又は凝集防止剤としては、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、コロイダルシリカ、ステアリン酸、ワックス類、硬化油、ポリエチレングリコール類、安息香酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0104】
溶解補助剤としては、例えば、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸などの有機酸などが挙げられる。
【0105】
これらの添加剤は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0106】
また、これら添加剤の含有量は、錠剤又は造粒物の成分の種類などに応じて適宜決定することができる。
【0107】
錠剤において、前記結合剤(又はポリビニルアルコール系重合体)の割合は、例えば、0.5〜10質量%、好ましくは2〜6質量%(例えば、1〜5質量%)、さらに好ましくは1〜3質量%程度であってもよく、3質量%以下(例えば、1〜2質量%、2〜3質量%など)であってもよい。
【0108】
なお、錠剤の形状は、特に限定されず、円盤形、レンズ形、竿形などのいずれであってもよい。
【0109】
また、錠剤の大きさも、特に限定されないが、例えば、直径(最大径)で、3mm以上(例えば、4〜15mm、5〜12mm、8〜11mmなど)であってもよい。
【0110】
打錠方法としては、特に限定されず、慣用の打錠方法を採用できる。
【0111】
錠剤は、錠剤表面に被覆層を有していてもよい。そのため、本発明には、さらに、錠剤と、この錠剤表面を被覆する被覆層(コーティング層)とを有する被覆錠剤を含む。
【0112】
被覆錠剤において、被覆層の構成成分としては、特に限定されないが、例えば、セルロース系樹脂(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートなど)、ポリビニルアルコール系重合体などの樹脂材料が挙げられる。
【0113】
なお、被覆層が、ポリビニルアルコール系重合体を含む場合、ポリビニルアルコール系重合体は、前記要件(A)を充足してもよく、しなくてもよいが、特に充足してもよい。被覆層を要件(A)を充足するポリビニルアルコール系重合体で構成することで、効率よく、高い生産性で、錠剤同士の付着が発生しにくく、防湿性やガスバリア性を発現しうる。
【0114】
錠剤表面に被覆層を形成する方法(被覆錠剤を製造する方法)としては、特に限定されず、従来公知のコーティング手段を使用してよく、フィルムコーティングなどが挙げられる。
【0115】
コーティング方法としては、例えば、スプレーコーティングが挙げられる。
コーティングの装置としては、例えば、パンコーティング装置、ドラムタイプコーティング装置などを使用してよい。また、これらの装置に付帯するスプレー装置としては、例えば、エアースプレー、エアレススプレーなどを使用してよい。
【0116】
具体的な被覆層の形成方法としては、例えば、上述したコーティング装置を用い、錠剤に、被覆層の構成成分(さらには必要に応じて添加剤)を加えたコーティング組成物を、溶媒[例えば、水、有機溶媒(例えば、エタノールなどのアルコール類など)、水と有機溶媒の混合溶媒など]に溶解又は分散させた溶液を調整し、乾燥と同時に該溶液を塗布又は噴霧して錠剤表面へ被覆する方法などが挙げられる。
【0117】
錠剤の表面にコーティングされるコーティング組成物の被覆量は、錠剤の種類、形、大きさ、表面状態、錠剤中に含まれる成分や添加剤の性質などによって異なるが、被覆錠剤全量に対して、好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%、特に好ましくは2〜6質量%である。このような範囲であれば、完全な皮膜が得られ、十分な防湿効果、酸素バリア性、臭気マスキング効果が得られるなどの観点から好ましい。また、このような範囲であれば、コーティングに要する時間が短くなるなどの観点から好ましい。
【0118】
なお、被覆錠剤は、被覆層に加えて他の層を有する多層構造を有していてもよい。他の層としては、例えば、アンダーコート層(被覆層の下に形成される層)、オーバーコート層(被覆層の上に形成される)を有していてもよい。このような他の層もまた、被覆層と同様の成分で構成できる。
【実施例】
【0119】
以下、本発明について実施例をあげて具体的に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例中、特にことわりのないかぎり、「%」及び「部」は質量基準を表す。
【0120】
また、各種条件等は以下の通りである。
【0121】
<平均けん化度及び4質量%水溶液粘度>
JIS K6726に従って、測定した。
【0122】
<要件(A)の充足・非充足の確認>
[液体クロマトグラフィ測定条件]
・検出器:荷電化粒子検出器
・カラム:Thermo Scientific社、Acclaim
TM300(カタログ番号:060266、炭素含量:8%、最大圧力:4500psi、粒子径:3μm、細孔径:300Å、固定相:C18、表面積:100m
2/g、長さ:150mm、直径:4.6mm、pH:2.5〜7.5、材質:Glass Lined Tubing(グラスライニング管))
・PVA系重合体水溶液濃度:0.1質量%
・PVA系重合体水溶液注入量:2μL
・カラム温度:50℃
・流速:1.0ml/分
・溶離液:水とメタノールの混合溶媒
・溶離液のグラジエント条件:測定時間0分〜10分において溶離液中における水とメタノールの混合比が95:5〜15:85へと一定の割合(水とメタノールの混合比において、水の割合を1分間あたり8ずつ減らし、メタノールの割合を1分間あたり8ずつ増やす)で変化させ、かつ、測定時間10分〜15分における溶離液中の水とメタノールの混合比を15:85一定とした。
【0123】
上記条件でPVA系重合体を測定し、ベースライン補正を行った後に得られる保持時間と検出強度の関係において、データサンプリング周期を500ミリ秒とした時に保持時間5.0分から12.0分の間に得られる全データにおける保持時間T
i[分]の時の検出強度をP
i[pA]としたとき、式(1)と式(2)においてT
iとP
iを用いて表されるT
nとT
wから式(3)で表される値を求めた。
[式]
T
n= Σ(T
i×P
i)/Σ(P
i) 式(1)
T
w= Σ(T
i2×P
i)/Σ(T
i×P
i) 式(2)
{(T
w/T
n)−1}×1000 式(3)
【0124】
<造粒条件>
装置:MP−01((株)パウレック)
給気温度:55−64℃
排気温度:28−34℃
給気空気量:0.8−1.0m
3/分
スプレー空気量:35L/分
スプレー空気圧:0.11MPa
結合剤水溶液量:250g
結合剤水溶液濃度:4重量%
造粒後乾燥条件:造粒終了後、排気温度が40℃に達するまで乾燥を継続
【0125】
<打錠条件>
装置:VERGO(菊水製作所製)
打錠圧:10kN
打錠機回転速度:10rpm
錠剤重量:200mg
【0126】
<錠剤硬度の評価>
得られた錠剤の硬度を錠剤硬度計(TBH125、ERWEKA製)を用いて測定した。6回測定を行い、その平均値を測定値とした。
【0127】
<崩壊時間の評価>
得られた錠剤の崩壊時間を、崩壊試験機(NT400、富山産業製)を用いて測定した。試験法として日本薬局方崩壊試験法を用いて、試験液として純水を用いた。6回測定を行い、その平均値を測定値とした。
【0128】
<PVA系重合体の合成方法>
(比較合成例1)
市販のポリ酢酸ビニル樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JMR-30LL 重合度590)を100℃で真空乾燥して水分を除去した後、メタノールに溶解し、ポリ酢酸ビニルの46質量%メタノール溶液を得た。この溶液500質量部を40℃に加温し、35℃に調整した水酸化ナトリウムの3質量%メタノール溶液16質量部を加え、プロペラタイプの撹拌翼を用いて300rpmで、1分間撹拌した後、40℃で40分間静置することでけん化反応を行った。得られたゲル状物を粉砕し、メタノール570質量部と酢酸メチル230質量部及び水17質量部からなる混合溶媒に浸漬し、ゆっくりと撹拌しながら更に1時間、40℃でけん化反応を行ったのち、pHが8〜9になるように1質量%酢酸水溶液を加えて中和を行った後、固形物と液分を分離し、固形物を60℃で8時間乾燥し、PVA系重合体を得た。
得られたPVA系重合体について測定した各種物性を表1に示す。
【0129】
(比較合成例2)
市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JL−05E けん化度:80.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.1mPa・s)6質量部と市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JP−05 けん化度:88.8モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)94質量部をポリエチレン袋に入れ、袋を約100回振り、PVA粉末を均一に混合して、PVA系重合体(2種の混合物)を作成した。
得られたPVA系重合体について測定した各種物性を表1に示す。
【0130】
(合成例1)
ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液に水酸化ナトリウム溶液を加えて撹拌する際、撹拌速度を60rpmで、30秒間行い、通常の条件よりも不均一になるように混合を実施した以外は、比較合成例1と同様にして、PVA系重合体を得た。
得られたPVA系重合体について測定した各種物性を表1に示す。
【0131】
(合成例2)
ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液に水酸化ナトリウム溶液を加えて撹拌する際、撹拌速度を20rpmで、60秒間行い、通常の条件よりも不均一になるように混合を実施した以外は、比較合成例1と同様にして、PVA系重合体を得た。
得られたPVA系重合体について測定した各種物性を表1に示す。
【0132】
(合成例3)
けん化反応を行う際、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液濃度を55質量%とし、この溶液500質量部に添加する水酸化ナトリウム溶液を23質量部とした以外は比較合成例1と同様にして、PVA系重合体を得た。
得られたPVA系重合体について測定した各種物性を表1に示す。
【0133】
(合成例4)
けん化反応を行う際、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液と水酸化ナトリウムとの混合液の容器の上半分にバンドヒーターを巻いて50℃に加熱し、けん化反応時の温度が上半分を50℃、下半分が室温(25℃)になるように温度勾配を設け、静置する時間を50分とした以外は比較合成例1と同様にして、PVA系重合体を得た。
得られたPVA系重合体について測定した各種物性を表1に示す。
【0134】
(合成例5)
ポリ酢酸ビニルの46質量%メタノール溶液500質量部をそれぞれ別の容器に250質量部ずつに分け、40℃に加温し、35℃に調整した水酸化ナトリウムの3質量%メタノール溶液を、一方には10質量部、もう一方には6質量部を加え、いずれも同時に300rpmで1分間撹拌した後、40℃で40分静置して別々にけん化反応を行って得られたゲル状物を一緒に粉砕した以外は、比較合成例1と同様にして、PVA系重合体を得た。
得られたPVA系重合体について測定した各種物性を表1に示す。
【0135】
(合成例6)
市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JL−05E けん化度:80.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.1mPa・s)40質量部と市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JT−05 けん化度:94.0モル%、4質量%水溶液粘度:5.6mPa・s)60質量部をポリエチレン袋に入れ、袋を約100回振り、PVA粉末を均一に混合して、けん化度分布の広いPVA系重合体を作成した。
得られたPVA系重合体について測定した各種物性を表1に示す。
【0136】
(合成例7)
市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JP−05 けん化度:87.5モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)90質量部と市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JT−05 けん化度:94.0モル%、4質量%水溶液粘度:5.6mPa・s)10質量部をポリエチレン袋に入れ、袋を約100回振り、PVA粉末を均一に混合して、けん化度分布の広いPVA系重合体を作成した。
得られたPVA系重合体について測定した各種物性を表1に示す。
【0137】
(合成例8)
市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JL−05E けん化度:80.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.1mPa・s)60質量部と市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JT−05 けん化度:94.0モル%、4質量%水溶液粘度:5.6mPa・s)40質量部をポリエチレン袋に入れ、袋を約100回振り、PVA粉末を均一に混合して、けん化度分布の広いPVA系重合体を作成した。
得られたPVA系重合体について測定した各種物性を表1に示す。
【0138】
(合成例9)
市販のポリ酢酸ビニル樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JMR-10LL 重合度250)を用いた以外は、比較合成例1と同様にして、PVA系重合体を得た。
得られたPVA系重合体について測定した各種物性を表1に示す。
【0139】
(合成例10)
重合度800のポリ酢酸ビニル樹脂を用いた以外は、比較合成例1と同様にして、PVA系重合体を得た。
得られたPVA系重合体について測定した各種物性を表1に示す。
【0140】
(合成例11)
市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JP−05 けん化度:87.5モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)93質量部と市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JT−05 けん化度:94.0モル%、4質量%水溶液粘度:5.6mPa・s)7質量部をポリエチレン袋に入れ、袋を約100回振り、PVA粉末を均一に混合して、けん化度分布の広いPVA系重合体を作成した。
得られたPVA系重合体について測定した各種物性を表1に示す。
【0141】
結果をまとめたものを下記表1に示す。なお、表1において、括弧内の「○」は要件(A)を充足する場合、「×」は要件(A)を充足しない場合を示す。
また、表1には、後述の比較例3において使用した、市販のPVA系重合体(日本酢ビ・ポバール製 JP−05)の各種物性も記載した。
【0142】
【表1】
【0143】
(実施例1)
合成例1で得られたPVA系重合体10質量部を精製水240質量部に添加し、80℃まで加温しながら1時間撹拌して結合剤溶液を調製した(PVA系重合体濃度:4質量%)。この結合剤溶液を、乳糖400g及びアセトアミノフェン100gを混合した粉末(平均粒子径40μm)に対して噴霧しながら流動槽造粒機を用いて造粒を実施し、顆粒[平均粒子径200μm、粉末1質量部に対してPVA系重合体0.02質量部(顆粒中にPVA系重合体2.0質量%)]を作成した。
【0144】
造粒後に得られた顆粒475.0g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース25.0gをポリエチレン製袋に入れて100回混合した後、ステアリン酸マグネシウム2.5gを加え、さらに30回混合し、打錠用粉末(平均粒子径180μm)を作成した。
得られた打錠用粉末を用いて、打錠を行い、錠剤を作成した。得られた錠剤について、錠剤硬度および崩壊時間を測定した。
【0145】
なお、崩壊時間は、錠剤硬度の値によって大きく変化する。したがって、同じ錠剤硬度条件で比較をするため、各錠剤において、結合剤溶液濃度(結合剤の割合)が異なる条件(顆粒中に1質量部に対してPVA系重合体を0質量部、0.01質量部、又は0.03質量部となるような条件)でそれぞれ造粒・打錠を行い、その時の結果をもとに、錠剤硬度が90Nとなるときの崩壊時間を算出した(見積もった)。
【0146】
結果を表2に示す。
【0147】
(実施例2〜11)
合成例1で得られたPVA系重合体に代えて、それぞれ合成例2〜11で得られたPVA系重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして造粒を実施し、錠剤硬度および崩壊時間を評価した。結果を表2に示す。
【0148】
(比較例1)
合成例1で得られたPVA系重合体に代えて、比較合成例1で得られたPVA系重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして造粒を実施し、錠剤硬度および崩壊時間を評価した。結果を表2に示す。
【0149】
(比較例2)
合成例1で得られたPVA系重合体に代えて、比較合成例2で得られたPVA系重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして造粒を実施し、錠剤硬度および崩壊時間を評価した。結果を表2に示す。
【0150】
(比較例3)
合成例1で得られたPVA系重合体に代えて、市販の部分けん化PVA(日本酢ビ・ポバール製 JP−05)を使用した以外は、実施例1と同様にして造粒を実施し、錠剤硬度および崩壊時間を評価した。結果を表2に示す。
【0151】
【表2】
【0152】
表2の結果から明らかなように、要件(A)を満たすPVA系重合体を結合剤として使用すると、要件(A)を充足しないPVA系重合体を結合剤として使用する場合に比べて、同じ硬度で比較したときの崩壊時間を短くできた。また、要件(A)を充足するPVA系重合体を使用することにより、要件(A)を充足しないPVA系重合体を結合剤として使用する場合に比べて、錠剤の硬度(ひいては成形性)が高いものを得ることができた。
特に、要件(A)を充足することにより、意外なことに、本来、トレードオフの関係にある、硬度と崩壊性をバランス良く両立できることが確認された。
新規な結合剤を提供する。結合剤を、JIS K6726に従って測定した平均けん化度85.0モル%〜89.0モル%を有し、下記要件(A)を充足するポリビニルアルコール系重合体で構成する。
/g、長さ:150mm、直径:4.6mm、pH:2.5〜7.5、材質:Glass Lined Tubing(グラスライニング管))である液体クロマトグラフィを用いて以下の測定条件でポリビニルアルコール系重合体を測定し、ベースライン補正を行った後に得られる保持時間と検出強度の関係において、データサンプリング周期を500ミリ秒とした時に保持時間5.0分から12.0分の間に得られる全データにおける保持時間T
・溶離液のグラジエント条件:測定時間0分〜10分において溶離液中における水とメタノールの混合比が95:5〜15:85へと一定の割合で変化し、かつ、測定時間10分〜15分における溶離液中の水とメタノールの混合比が15:85で一定である。