(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルコキシオリゴマーに含まれるアルコキシ基量が、10〜30質量%の範囲であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
前記固化体に対して、前記紫外光を1000時間照射したときに、前記固化体の前記紫外光に対する透過率が85%以上であることを特徴とする請求項7に記載の硬化性樹脂組成物。
前記固化体に対して、前記紫外光を5000時間照射したときに、前記固化体の前記紫外光に対する透過率が80%以上であることを特徴とする請求項8に記載の硬化性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0025】
本発明の実施の形態に係る硬化性樹脂組成物は、例えば、大電力を印加する紫外線LEDの封止に使用されるものであり、アルコキシオリゴマーと硬化触媒とを合成して得られるものである。
【0026】
[アルコキシオリゴマー]
本実施形態のアルコキシオリゴマーは、オルガノポリシロキサン構造を有するものであり、
下記一般式(1)
(R
1R
2R
3SiO
1/2) ・・・(1)
(ただし、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立した、同一または各々異なる有機基である。)で表される構成単位、
下記一般式(2)
(R
4R
5SiO
2/2) ・・・(2)
(ただし、R
4およびR
5は、それぞれ独立した、同一または各々異なる有機基である。)で表される構成単位、
下記一般式(3)
(R
6SiO
3/2) ・・・(3)
(ただし、R
6は有機基である。)で表される構成単位および
下記一般式(4)
(SiO
4/2) ・・・(4)
で表される構成単位から選ばれる一種以上の構成単位を有するととともに、
下記一般式(5)
(R
7a(OR
8)
3−aSiO
1/2) ・・・(5)
(ただし、aは、0、1または2であり、R
7およびR
8は、それぞれ独立した、同一または各々異なる有機基であり、R
7またはR
8が複数含まれる場合には、各R
7またはR
8は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。)で表される構成単位、
下記一般式(6)
(R
9b(OR
10)
2−bSiO
2/2) ・・・(6)
(ただし、bは、0または1であり、R
9およびR
10は、それぞれ独立した、同一または各々異なる有機基であり、R
10が複数含まれる場合には、各R
10は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。)で表される構成単位および
下記一般式(7)
((OR
11)SiO
3/2) ・・・(7)
(ただし、R
11は有機基である。)で表される構成単位から選ばれる一種以上の構成単位を有している。
【0027】
上記一般式(1)で表される構成単位、すなわち(R
1R
2R
3SiO
1/2)で表される構成単位は、1官能性構成単位(M単位)であり、上記一般式(2)で表される構成単位、すなわち(R
4R
5SiO
2/2)で表される構成単位は、2官能性構成単位(D単位)であり、上記一般式(3)で表される構成単位、すなわち(R
6SiO
3/2)で表される構成単位は、3官能性構成単位(T単位)であり、上記一般式(4)で表される構成単位、すなわち(SiO
4/2)で表される構成単位は、4官能性構成単位(Q単位)である。
また、上記一般式(5)で表される構成単位、すなわち(R
7a(OR
8)
3−aSiO
1/2)で表される構成単位は、aが、0、1又は2であるものであり、aが2である場合、(R
72(OR
8)SiO
1/2)で表されるアルコキシ基OR
8を1つ有する2官能性構成単位であり、aが1である場合、(R
7(OR
8)
2SiO
1/2)で表されるアルコキシ基OR
8を2つ有する3官能性構成単位であり、aが0である場合、((OR
8)
3SiO
1/2)で表されるアルコキシ基OR
8を3つ有する4官能性構成単位である。
上記一般式(6)で表わされる構成単位、すなわち(R
9b(OR
10)
2−bSiO
2/2)で表わされる構成単位は、bが、0又は1であるものであり、bが1である場合、(R
9(OR
10)SiO
2/2)で表わされるアルコキシ基OR
10を一つ有する3官能性構成単位であり、bが0である場合、((OR
10)
2SiO
2/2)で表わされるアルコキシ基OR
10を2つ有する4官能性構成単位である。
上記一般式(7)で表わされる構成単位、すなわち((OR
11)SiO
3/2)で表わされる構成単位は、アルコキシ基OR
11を2つ有する4官能性構成単位である。
【0028】
上記一般式(1)で表される化合物において、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立した、同一又は各々異なる有機基であり、上記一般式(2)で表される化合物において、R
4及びR
5は、それぞれ独立した、同一又は各々異なる有機基であり、上記一般式(3)で表される化合物において、R
6は、有機基である。
また、上記一般式(5)において、R
7及びR
8は、それぞれ独立した、同一又は各々異なる有機基であり、R
7及びR
8が複数含まれる場合には、各R
7及びR
8は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。
一般式(6)で表わされる化合物において、R
9及びR
10は、それぞれ独立した、同一又は各々異なる有機基であり、R
10が複数含まれる場合には、各R
10は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。
一般式(7)で表わされる化合物において、R
11は有機基である。
このように、R
1〜R
11で表される有機基は、それぞれ独立した、同一又は各々異なる有機基である。
R
1〜R
11で表される有機基としては、炭化水素基が好ましく、炭素数1〜12の炭化水素基がより好ましく、炭素数1〜8の炭化水素基がさらに好ましく、炭素数1〜4の炭化水素基が一層好ましく、炭素数1〜3の炭化水素基がより一層好ましく、炭素数1〜2の炭化水素基が特に好ましい。
上記炭化水素基としては、アルキル基から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0029】
上記炭化水素基がアルキル基である場合、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等を挙げることができ、メチル基またはエチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0030】
本発明の硬化性樹脂組成物において、アルコキシオリゴマーとしては、アルコキシオリゴマーを構成する構成単位に含まれる有機基の少なくとも1つの有機基が炭素数1〜4のアルキル基であり、上記アルキル基以外の有機基が、炭素数1〜8の炭化水素基であるものが好ましい。
また、本発明の硬化性樹脂組成物において、アルコキシオリゴマーとしては、アルコキシオリゴマーを構成する構成単位に含まれる有機基の少なくとも1つがメチル基であり、アルコキシオリゴマーを構成する構成単位に含まれる全ての有機基がメチル基であるものが好ましい。
【0031】
一般に、シリコーンの主鎖であるSi-O結合のイオン結合性は略50%であり、ポリエチレンなどの一般的な有機樹脂のC−C結合に比べて大きい。このため、シリコーンの側鎖のC−H結合やC−C結合などの化学的安定性は、主鎖がC−C結合である場合に比べて増加し、通常、シリコーンは、酸化や紫外線の影響を受け難い構造となっている。
しかしながら、C−H結合やC−C結合などの側鎖が大きくなり、側鎖を構成する原子とSi原子との距離が離れると、Si−O結合のイオン結合性による安定化の寄与が低下するといった問題が発生する。このため、側鎖の有機基(つまり、R
1〜R
11で表わされる有機基)の炭素数は少ない方が好ましく、中でもメチル基は、アルキル基の中では最も小さく、メチル基を構成するすべての原子と(メチル基が結合している)Si原子との距離が近く、イオン性結合によって安定化し易いこと、さらにC−C結合がないことから、最も好ましい。
【0032】
また、R
1〜R
11で表される有機基としては、芳香族環を含まないものが好ましい。
R
1〜R
11で表される有機基として、例えば、フェニル基などの芳香族環を有する基を用いると、官能基が二重結合を有することになるため、二重結合のπ電子に由来するπ−π*遷移により、紫外光域から可視光域に掛けて吸収が生じ、紫外域の透過特性及び耐紫外線性が低下し易くなる。このため、R
1〜R
11で表される有機基としては、ベンゼン系芳香環、複素芳香環、非ベンゼン系芳香環等の芳香族環を含まない基であることが好ましい。
また、R
1〜R
11で表される有機基としては、耐紫外線性の低下を抑制するために、N原子含有基(アミノ基等)や、S原子含有基(メルカプト基等)を含まないものが好ましい。また、同様の理由により、R
1〜R
11で表される有機基が芳香族炭化水素以外の炭化水素である場合においても、炭素−炭素結合(C−C結合、C=C結合またはC≡C結合)含有基についても、可能な限り含まないものが好ましい。
【0033】
上述したように、本発明の硬化性樹脂組成物においては、アルコキシオリゴマーが、一般式(5)で表されるアルコキシ基を有する構成単位、すなわち(R
7a(OR
8)
3−aSiO
1/2)で表される構成単位、一般式(6)で表わされる構成単位、すなわち(R
9b(OR
10)
2−bSiO
2/2)で表わされる構成単位、一般式(7)で表わされる構成単位、すなわち((OR
11)SiO
3/2)で表わされる構成単位から選ばれる一種以上の構成単位を含む。
本発明の硬化性樹脂組成物においては、アルコキシオリゴマーが、上記一般式(5)〜一般式(7)で表される構成単位から選ばれるアルコキシ基を有する構成単位を含むことにより、光半導体装置を構成する光半導体素子の封止材として用いたときに、上記アルコキシ基と封止対象となるダイ表面、基板表面、配線パターン表面等とが化学的に強固に結合すると考えられる。
すなわち、無機物で構成されているダイ等の表面にはSiO
2等からなる保護層が設けられ、通常水酸基が存在しているため、上記一般式(5)〜一般式(7)で表される構成単位から選ばれる構成単位中のアルコキシ基とダイ表面等の水酸基とが水素結合やファンデルワールス力による分子間力により結合するとともに、さらに上記アルコキシ基およびダイ表面等の水酸基間に脱アルコール縮合反応、脱水反応による結合が生じると考えられ、両者が化学的に強固に結合すると考えられる。
このように、本発明の硬化性樹脂組成物を封止材とした場合、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物(固化体)とダイ等とが強固に結合し、このために、大電力を印加する紫外線LEDの封止用途に用いた場合であっても硬化性樹脂組成物の硬化物(固化体)へのクラックや剥離等の発生を効果的に抑制し得ると考えられる。
【0034】
本発明の硬化性樹脂組成物において、アルコキシオリゴマーは、アルコキシオリゴマーを構成する全シロキサン単位を100モル%とした場合に、一般式(1)〜一般式(7)で表される構成単位を90〜100モル%含むものであり、一般式(1)〜一般式(7)で表される構成単位を95〜100モル%含むものであることが好ましく、一般式(1)〜一般式(7)で表される構成単位を100モル%含むものであることがより好ましい。
すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物において、アルコキシオリゴマーは、アルコキシオリゴマーを構成する全シロキサン単位を100モル%とした場合に、一般式(1)で表される構成単位の含有モル%と、一般式(2)で表される構成単位の含有モル%と、一般式(3)で表される構成単位の含有モル%と、一般式(4)で表される構成単位の含有モル%と、一般式(5)で表される構成単位の含有モル%と一般式(6)で表される構成単位の含有モル%と、一般式(7)で表される構成単位の含有モル%との合計が、90〜100モル%であるものであり、95〜100モル%であるものがより好ましく、100モル%である(シリコーンレジンを構成する全シロキサン単位が上記一般式(1)〜一般式(7)で表されるいずれかの構成単位で構成されている)ものがさらに好ましい。
【0035】
アルコキシオリゴマーを構成する構成単位において、一般式(1)〜一般式(7)で表される構成単位の構成比は特に制限されないが、非反応性の官能基が一定量含まれないと、硬化性樹脂組成物を硬化させた際に、硬化物(固化体)が硬くなり過ぎ、加熱、冷却時に発生する応力を緩和することができず、紫外線LED内のボンディングワイヤを切断したり、LEDダイ自体を破損させてしまう場合がある。
そこで、本発明の硬化性樹脂組成物において、アルコキシオリゴマーは、アルコキシオリゴマーに含まれる、Si原子の合計量に対するO原子の合計量の原子比(アルコキシオリゴマーに含まれるO原子の合計量/アルコキシオリゴマーに含まれるSi原子の合計量)が、2.3〜3.5であるものが好ましく、2.3〜3.4であるものがより好ましく、2.2〜3.2であるものがさらに好ましい。
アルコキシオリゴマーに含まれる、Si原子の合計量に対するO原子の合計量の原子比が、上記範囲内にあることにより、非反応性の官能基を一定量含むことができ、このために、加熱、冷却時に発生する応力を好適に緩和することができる。
アルコキシオリゴマーに含まれるSi原子の合計量に対するO原子の合計量の原子比が、2.3未満であると耐紫外線性が低下し易くなり、3.5を超えると硬化性樹脂組成物の硬化物(固化体)へのクラックや割れが発生しやすくなる。
アルコキシオリゴマーに含まれる、Si原子の合計量に対するO原子の合計量の原子比は、アルコキシオリゴマーを構成する、一般式(1)〜一般式(7)で表される構成単位の構成比を調整することにより制御することができる。
【0036】
本発明の硬化性樹脂組成物において、アルコキシオリゴマーは、アルコキシオリゴマーを構成する2官能性構成単位と3官能性構成単位の合計モル数に対する2官能性構成単位のモル数の比が所定範囲内にあるものが好ましい。
すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物において、アルコキシオリゴマーは、一般式(5)で表される構成単位(R
7a(OR
8)
3−aSiO
1/2)において、aが2である場合の構成単位(R
72(OR
8)SiO
1/2)と一般式(2)で表されるD単位と称される構成単位(R
4R
5SiO
2/2)の合計モル数をDnとし、一般式(5)で表される構成単位(R
7a(OR
8)
3−aSiO
1/2)において、aが1である場合の構成単位(R
7(OR
8)
2SiO
1/2)と、一般式(6)(R
9b(OR
10)
2−bSiO
2/2)で表わされる構成単位において、bが1である場合の構成単位(R
9(OR
10)SiO
2/2)と、一般式(3)で表されるT単位と称される構成単位(R
6SiO
3/2)の合計モル数をTnとしたときに、Tn/(Dn+Tn)で表される比が、0.2〜1であることが好ましく、0.25〜1であることがより好ましく、0.3〜1であることがさらに好ましい。
【0037】
一般式(5)で表される構成単位(R
7a(OR
8)
3−aSiO
1/2)において、aが2である場合の構成単位(R
72(OR
8)SiO
1/2)は、通常、アルコキシオリゴマーの調製時において、一般式(2)で表される構成単位(R
4R
5SiO
2/2)の原料の一部のアルコキシ基が未反応のまま残存した状態でオリゴマー中に取り込まれたものである。
また、一般式(5)で表される構成単位(R
7a(OR
8)
3−aSiO
1/2)において、aが1である場合の構成単位(R
7(OR
8)
2SiO
1/2)や、一般式(6)(R
9b(OR
10)
2−bSiO
2/2)で表わされる構成単位において、bが1である場合の構成単位(R
9(OR
10)SiO
2/2)は、通常、アルコキシオリゴマーの調製時において、一般式(3)で表される構成単位(R
6SiO
3/2)の原料の一部のアルコキシ基が未反応のまま残存した状態でオリゴマー中に取り込まれたものである。
上述したように、本発明の硬化性樹脂組成物は、光半導体装置を構成する光半導体素子の封止材として用いたときに、アルコキシオリゴマーが、上記一般式(5)〜一般式(7)で表される構成単位中のアルコキシ基と封止対象となるダイ表面等とが化学的に強固に結合するものと考えられる。アルコキシオリゴマーは、アルコキシ基と有機基とのバランスを考慮した場合、アルコキシオリゴマーを専ら2官能性構成単位と3官能性構成単位で構成することが好ましいが、上記封止材とダイとの結合性を考慮した場合、DnよりもTnが多い方が有利となる。
Tn/(Dn+Tn)で表される比が、上記範囲内にあることにより、光半導体素子の封止材として用いたときに、硬化性樹脂組成物とダイ表面とを好適に結合することができ、大電力を印加する紫外線LED等の封止に用いて強度の強い紫外光を浴び続けても、ダイ表面と硬化性樹脂組成物の硬化物(固化体)との界面におけるクラックや剥離の発生を好適に抑制することができる。
【0038】
本発明の硬化性樹脂組成物において、アルコキシオリゴマー中に含まれるアルコキシル基量は、10〜30質量%であることが好ましく、11〜27.5質量%であることがより好ましく、12〜25質量%であることがさらに好ましい。
アルコキシオリゴマー中に含まれるアルコキシル基量が上記範囲内にあることにより、所望の固形分濃度を維持しつつ、3次元的な結合を抑制し、所望の応力緩和能力を発揮することができる。
【0039】
本発明の硬化性樹脂組成物において、アルコキシオリゴマーの質量平均分子量は、特に制限されず、使用目的に応じて適宜選択すればよく、紫外線LED等の光半導体素子の封止材として用いる場合には、同目的に応じて任意に選択すればよい。
アルコキシオリゴマーの質量平均分子量は、500〜4,500であることが好ましく、750〜4,250であることがより好ましく、1,000〜4,000であることがさらに好ましい。また、アルコキシオリゴマー中に含まれる水酸基(OH)量は、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0040】
本発明の硬化性樹脂組成物において、アルコキシオリゴマーの製造方法も特に制限されない。
本発明の硬化性樹脂組成物において、アルコキシオリゴマーは、例えば、一般式(1)〜一般式(4)で表されるシロキサン単位に対応する下記一般式(1)’〜一般式(4)’で表されるオルガノキシシロキサンを各々所定量配合し、加水分解、縮合することにより作製することができる。
R
12R
13R
14SiOR
15 ・・・(1)’
(ただし、R
12、R
13、R
14及びR
15は、それぞれ独立した、同一又は各々異なる有機基である。)
R
16R
17Si(OR
18)(OR
19) ・・・(2)’
(ただし、R
16、R
17、R
18及びR
19は、それぞれ独立した、同一又は各々異なる有機基である。)
R
20Si(OR
21)(OR
22)(OR
23) ・・・(3)’
(ただし、R
20、R
21、R
22及びR
23は、それぞれ独立した、同一又は各々異なる有機基である。)
Si(OR
24)(OR
25)(OR
26)(OR
27) ・・・(4)’
(ただし、R
24、R
25、R
26及びR
27は、それぞれ独立した、同一又は各々異なる有機基である。)
R
12〜R
27で表される有機基としては、上述したR
1〜R
11で表される有機基と同様の基を挙げることができる。
上記加水分解、縮合反応においては、加水分解反応を完全に進行させることなく、加水分解物中に一定量のアルコキシ基を残存させる。一般式(2)’〜一般式(4)’で表されるオルガノキシシロキサンを構成するアルコキシ基(−OR
18基、−OR
19基、−OR
21基、−OR
22基、−OR
23基、−OR
24基、−OR
25基、−OR
26基、−OR
27基 )の一部が残存することにより、得られるアルコキシオリゴマー中に一般式(5)〜一般式(7)で表されるシロキサン単位から選ばれる一種以上のシロキサン単位を形成することができる。
上記アルコキシ基の残存量は、加水分解、縮合条件(使用する触媒、反応時間、反応温度等)を適宜調整することにより制御することができる。
一般式(1)’〜一般式(4)’で表されるオルガノキシシロキサンの配合比は、得ようとするアルコキシオリゴマーに応じて、適宜選定すればよい。
【0041】
本発明の硬化性樹脂組成物において、アルコキシオリゴマーを製造する方法として、具体的には、例えば、メチルトリメトキシシラン(示性式:CH
3Si(OCH
3)
3、以下MTMSと略記する。)や、MTMSとジメチルジメトキシシラン(示性式:(CH
3)
2Si(OCH
3)
2、以下DMDMSと略記する。)の混合物)を触媒と水の存在下で加水分解する方法を挙げることができる。
また、本発明の硬化性樹脂組成物におけるアルコキシオリゴマーとしては、上述する方法以外の方法で製造されたシリコーンアルコキシオリゴマーであってもよい。
アルコキシオリゴマーとしては、例えば、信越化学工業株式会社製シリコーンアルコキシオリゴマー X−40−9225、X−40−9246、X−40−9250、KC−89S、KR−500や、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製XC−96−B0446、XR31−B1410、XR31−B2230等を挙げることができる。
【0042】
本発明の硬化性樹脂組成物において、アルコキシオリゴマーを、上記一般式(1)’〜一般式(4)’で表されるオルガノキシシロキサンを加水分解、縮合して調製する場合、触媒存在下、通常、0℃〜100℃程度の温度で数十分〜一日程度反応させることにより調製することができる。
【0043】
上記一般式(1)’〜一般式(4)’で表されるオルガノキシシロキサンを加水分解、縮合する際に使用する触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、過塩素酸、リン酸などの無機酸、ギ酸、酢酸などの有機酸を使用することができる。また、共加水分解・縮合反応させるために、必要に応じて有機溶媒を添加してもよい。この場合、溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物、アセトンなどのケトン、酢酸エチルなどのエステルを使用することができる。
【0044】
上記一般式(1)’〜一般式(4)’で表されるオルガノキシシロキサンにおいて、R
12〜R
27で表される有機基としては、芳香族環を含まないものが好ましい。
上述したように、R
12〜R
27で表される有機基として、例えば、フェニル基などの芳香族環を有する基を用いると、官能基が二重結合を有することになるため、二重結合のπ電子に由来するπ−π*遷移により、紫外光域から可視光域に掛けて吸収が生じ、紫外域の透過特性及び耐紫外線性が低下し易くなる。このため、R
12〜R
27で表される有機基としては、ベンゼン系芳香環、複素芳香環、非ベンゼン系芳香環等の芳香族環を含まない基であることが好ましい。
また、R
12〜R
27で表される有機基としては、耐紫外線性の低下を抑制するために、N原子含有基(アミノ基等)や、S原子含有基(メルカプト基等)を含まない基であることが好ましい。また、同様の理由により、R
9〜R
24で表される有機基が芳香炭化水素以外の炭化水素である場合においても、炭素−炭素結合(C−C結合、C=C結合またはC≡C結合)含有基についても、可能な限り含まないものが好ましい。
【0045】
本発明の硬化性樹脂組成物において、アルコキシオリゴマーは、室温(25℃)において液体状態のオルガノシロキサン構造を有するシリコーン系材料であることが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物において、アルコキシオリゴマーは、室温(25℃)において液体状態であることにより、充填、成型を容易に行うことができる。
なお、本出願書類において、室温において液体状態にあるとは、JIS Z 8803の規定に準じて測定された、室温下における粘度が10
3Pa・s以下の状態にあることを意味する。
【0046】
本発明の硬化性樹脂組成物は、固形分(不揮発分)換算で、アルコキシオリゴマーを、50.0〜99.9質量%含むことが好ましく、70.0〜99.5質量%含むことがより好ましく、90.0〜99.0質量%含むことがさらに好ましい。
【0047】
本発明の硬化性樹脂組成物において、アルコキシオリゴマーの含有量が上記範囲内にあることにより、従来の硬化性樹脂組成物に比較して、紫外域での透明性、耐紫外線性および耐熱性が極めて高く、大電力を印加する紫外線LEDの封止に使用しても、クラックや剥離、着色の発生を容易に抑制することができる。
【0048】
[硬化触媒]
本実施形態の硬化触媒は、上述のアルコキシオリゴマーを硬化し得るものであり、具体的には、リン酸H
3PO
4、又は、B、Al、P、Sc、Ga、Y、Zr、Nb、In、Sn、La、Gd、Dy、Yb、Hf、Ta、Wの群から選ばれる少なくとも一種の金属アルコキシドである。
【0049】
本実施形態の硬化触媒には、例えば、リン酸H
3PO
4とアルコキシシランを混合した溶液を用いることができ、具体的には、DMDMSに、オルトリン酸(示性式:H
3PO
4)水溶液を混合することで得られる。なお、オルトリン酸水溶液には、H
2Oが含まれているが、以下の化学反応式(8)に示すように、DMDMSのメトキシ基(CH
3O−)と反応し、全て消費される。
(CH
3)
2Si(OCH
3)
2 + 2H
2O
→ (CH
3)
2Si(OH)
2 + 2CH
3OH ・・・(8)
【0050】
なお、上記合成においては、オルトリン酸と混合するアルコキシシランとしてDMDMSを使用したが、以下の一般式(9)で表されるアルコキシシランを使用してもよい。
R
1nSi(OR
2)
4−n ・・・(9)
なお、一般式(9)において、R
1、R
2は、それぞれ、R
1:C
kH
2k+1− (k=1、2)、R
2:C
mH
2m−1− (m=1、2、3、4、5)で表される有機基であり、nは、0〜3の整数である。
【0051】
また、リン酸H
3PO
4の添加量は、少な過ぎると硬化しなくなったり、硬化が遅くなり過ぎるといった問題が発生し、また、多過ぎると固化体が硬く成り過ぎ、LEDの点灯・消灯に伴う温度変化によって生じる応力を緩和する能力が著しく低下するといった問題が発生することから、アルコキシオリゴマー100重量部に対して、0.1〜17.5重量部の範囲にあることが好ましく、0.2〜15.0重量部の範囲がより好ましく、0.3〜12.5重量部の範囲が更に好ましい。
【0052】
また、上述のように、リン酸H
3PO
4に代えて、B、Al、P、Sc、Ga、Y、Zr、Nb、In、Sn、La、Gd、Dy、Yb、Hf、Ta、Wの群から選ばれる少なくとも一種の金属アルコキシドを用いることができる。この場合、金属アルコキシドの添加量は、アルコキシオリゴマー100重量部に対して、0.5〜20重量部の範囲である。金属アルコキシドの添加量が0.5重量部を下回ると、硬化しなくなったり、硬化が遅くなり過ぎるといった問題が発生し、20重量部を上回ると、固化体が硬く成り過ぎる。
【0053】
なお、アルコキシオリゴマーと同様、硬化触媒には、耐紫外線性を劣化させる、窒素N又は硫黄Sを含む物質、炭素−炭素結合(C−C、C=C、C≡C)を有する物質、Tiを含む物質は使用しない。また、硬化触媒には、紫外LED内のLEDダイにダメージを与える、強酸性、強アルカリ性の触媒や、Li、Na,Kなどのアルカリを含む物質は使用しない。また、硬化触媒には、Pb、Hg、As、Cdなどの有害物質は使用しない。
【0054】
また、金属イオンにキレート剤(例えば、アセチルアセトン(示性式:C
5H
8O
2)、アセト酢酸エチル(示性式:C
6H
9O
3))が配位した金属キレート化合物などは、安定であることから硬化触媒として使用されることが多いが、キレート環のπ−π
*遷移により、紫外光域から可視光域に掛けて吸収が生じる。この吸収は、必ずしも紫外線LEDの発光ピーク波長と一致するものではないが、一般に紫外線LEDからは発光スペクトル幅の広い紫外光が出射されるため、金属キレート化合物の吸収スペクトルと一致する範囲においては、紫外光の吸収が生じる。このように、金属キレート化合物を硬化触媒として使用した場合には、紫外域の透過特性及び耐紫外線性が悪化することから、硬化触媒としては使用しない。
【0055】
[硬化性樹脂組成物の調製]
上述のアルコキシオリゴマーに、上述の硬化触媒を加え、所定時間混合することにより、本実施形態の硬化性樹脂組成物が得られる。なお、アルコキシオリゴマーと硬化触媒が均一に混合可能な方法であれば、硬化性樹脂組成物の調製方法は特に限定されない。
【0056】
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、室温において液体の状態であるため、紫外線LEDの封止材として用いる場合には、紫外線LEDのパッケージ内に所定量をキャストし、所定時間加熱して乾燥させる。なお、加熱条件は、硬化性樹脂組成物を所望の硬化状態にすることができれば特に制限はないが、例えば100℃〜200℃で、1時間〜2時間程度加熱することが望ましい。
【0057】
[硬化性樹脂組成物によって封止されたLEDの構成]
上述したように、本実施形態の硬化性樹脂組成物は、例えば、大電力を印加する紫外線LEDの封止材として好適である。
図1は、本実施形態の硬化性樹脂組成物を表面実装型紫外線LED100に適用した場合の一例を示す概略構成図(断面図)である。また、
図2は、本実施形態の硬化性樹脂組成物をパッケージ型紫外線LED200に適用した場合の一例を示す概略構成図(断面図)である。
【0058】
図1に示すように、紫外線LED100は、基板101と、LEDダイ103等を備えている。基板101は、絶縁性を有する基材(例えば、セラミック(窒化アルミ、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素など))から構成された、いわゆる配線基板である。
図1に示すように、基板101の表面には、導電性を有する金属材料(例えば、銅、アルミ)からなる正極パターン102aと、負極パターン102bとが形成されている。
【0059】
LEDダイ103は、四角柱状の形状を呈しており、上面(つまり、出射面103a)にカソード端子(不図示)を備え、下面にアノード端子(不図示)を備えている。LEDダイ103の下面(つまり、アノード端子)と正極パターン102aとは、ダイボンド剤(不図示)を介して機械的及び電気的に接合されている。また、LEDダイ103の上面のカソード端子は、ボンディングワイヤ104を介して負極パターン102bに電気的に接合されている。そして、正極パターン102a及び負極パターン102bを介して、アノード端子とカソード端子間に電流を印加すると、LEDダイ103内部の発光層(不図示)において紫外光(例えば、波長365nmの光)が発生し、出射面103aから出射される。
【0060】
LEDダイ103の周囲には、枠材105が設けられており、枠材105の内側のLEDダイ103が本実施形態の硬化性樹脂組成物の固化体106によって封止されている。
【0061】
図1に示される紫外線LED100の製造方法としては、LEDダイ103を正極パターン102aにダイボンドし、LEDダイ103のカソード端子と負極パターン102bとをボンディングワイヤ104によってワイヤーボンドし、次いで、枠材105の内側に本実施形態の硬化性樹脂組成物を充填し、100℃〜200℃で、1時間〜2時間程度加熱することにより硬化させる方法が例示される。
【0062】
図2に示す紫外線LED200は、LEDダイ203のカソード端子(不図示)及びアノード端子(不図示)がLEDダイ203の上面(つまり、出射面203a)
に形成されている点、LEDダイ203がケース210に収容されている点、及び、本実施形態の硬化性樹脂組成物の固化体206上に固化体207を備えている点で、
図1に示す紫外線LED100とは異なる。
【0063】
図2に示すように、紫外線LED200は、ケース210と、LEDダイ203等を備えている。ケース210は、絶縁性を有する材料(例えば、セラミック)から形成された椀状の部材である。
図2に示すように、ケース210の底部210aには、ケース210の内側から外側に引き出されるように形成された正極パターン202aと、負極パターン202bとが設けられている。
【0064】
LEDダイ203は、四角柱状の形状を呈しており、上面(つまり、出射面203a)にカソード端子(不図示)及びアノード端子(不図示)を備えている。LEDダイ203の下面は、ケース210の底部210aに、ダイボンド剤(不図示)を介して固定されている。また、LEDダイ203の上面のアノード端子は、ボンディングワイヤ204aを介して正極パターン
202aに電気的に接合されており、LEDダイ203の上面のカソード端子は、ボンディングワイヤ204bを介して負極パターン202bに電気的に接合されている。そして、正極パターン202a及び負極パターン202bを介して、アノード端子とカソード端子間に電流を印加すると、LEDダイ203内部の発光層(不図示)において紫外光(例えば、波長365nmの光)が発生し、出射面203aから出射される。
【0065】
LEDダイ203は、ケース210の壁面によって囲まれており、ケース210の内側のLEDダイ203が本実施形態の硬化性樹脂組成物の固化体206によって封止されている。また、固化体206の上には、本実施形態の硬化性樹脂組成物とは屈折率や弾性率が異なる、他の硬化性樹脂組成物の固化体207が形成されている。
【0066】
図2に示される紫外線LED200の製造方法としては、LEDダイ203をケース210内にダイボンドし、LEDダイ203のアノード端子及びカソード端子を、それぞれボンディングワイヤ204a、204bによって、正極パターン202a及び負極パターン202bにワイヤーボンドし、次いで、ケース210の内側に本実施形態の硬化性樹脂組成物を充填し、100℃〜200℃で、1時間〜2時間程度加熱することにより硬化させ、さらに固化体207の硬化性樹脂組成物を充填し、所定の温度、所定の時間で加熱することにより硬化させる方法が例示される。
【実施例】
【0067】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り下記の実施例に限定されるものではない。また、実施例2〜実施例10、比較例1〜比較例5においては、以下の事項が適応される。
(1)「2官能性構成単位」には、一般式(5)で表される構成単位(R
7a(OR
8)
3−aSiO
1/2)において、aが2である場合の構成単位(R
72(OR
8)SiO
1/2)を含み得る。
(2)「3官能性構成単位」には、一般式(5)で表される構成単位(R
7a(OR
8)
3−aSiO
1/2)において、aが1である場合の構成単位(R
7(OR
8)
2SiO
1/2)と、一般式(6)(R
9b(OR
10)
2−bSiO
2/2)で表わされる構成単位において、bが1である場合の構成単位(R
9(OR
10)SiO
2/2)とを含み得る。
(3)「4官能性構成単位」には、一般式(5)で表される構成単位(R
7a(OR
8)
3−aSiO
1/2)において、aが0である場合の構成単位((OR
8)
3SiO
1/2)と一般式(7)で表わされる構成単位((OR
11)SiO
3/2)とを含み得る。
【0068】
[実施例1]
(アルコキシオリゴマーの合成)
窒素導入管、リービッヒ冷却管、活栓付滴下ロートを備えた500mL四ツ口フラスコに、東レ・ダウコーニング株式会社製メチルトリメトキシシラン(MTMS)Z−6366(示性式:CH
3Si(OCH
3)
3、分子量:136.2)68.10g(0.50mol)と、メタノール(示性式:CH
3OH)32.04g(1.00mol)を入れ、室温下混合撹拌した。ここに、MTMSのメトキシ基を加水分解するため、加水分解触媒として塩酸(示性式:HCl)を使用し、モル比がHCl/MTMS=0.1、H
2O/MTMS=1.5となるように、3.70mol/Lの塩酸水溶液13.52gを、撹拌下30分掛けて滴下し、更に30分撹拌した。その後、四つ口フラスコをマントルヒータに設置し、80℃で4時間還流した後、室温まで冷却し1時間放置することにより透明均質な粘性液体(アルコキシオリゴマー、アルコキシ基量:19重量%)を得た。
【0069】
(硬化触媒の合成)
氷浴中で冷却した東レ・ダウコーニング株式会社製Z−6329(化学名:ジメチルジメトキシシラン(DMDMS)、示性式:(CH
3)
2Si(OCH
3)
2、分子量:120.2)100.00gを撹拌しながら、オルトリン酸(示性式:H
3PO
4)水溶液(H
3PO
4濃度:85%)25.93gを15分間掛けて滴下混合し、室温で更に1時間混合し、リン酸系硬化触媒H
3PO
4を得た。なお、オルトリン酸には、H
2Oが15重量%含まれているが、上述の化学反応式(2)に示すように、DMDMSのメトキシ基(CH
3O−)と反応し、全て消費される。また、この液体に含まれる硬化触媒H
3PO
4の濃度は、17.5重量%である。
【0070】
(硬化性樹脂組成物の調製)
上述の粘性液体(アルコキシオリゴマー)に、上述の硬化触媒(リン酸系硬化触媒)10.00gを加え、室温で10分間混合した。その後、ロータリーエバポレータを用いて、CH
3OH、H
2Oを留去し、有機基としてメチル基(CH
3−)を含み、T単位:D単位=87.9:12.1(モル比)からなる透明均質な液体(硬化性樹脂組成物)を得た。MTMSとDMDMSの合量に対する硬化触媒H
3PO
4の添加量は、2.30重量%である。また、Siに対するOの原子比は、2.9である。
【0071】
[実施例2]
T単位のシリコーンのみからなる、信越化学工業株式会社製シリコーンアルコキシオリゴマーX−40−9225(有機基:メチル基、アルコキシ基:メトキシ基、アルコキシ基量:24重量%、SiO
2分:67重量%)100.00gと、実施例1と同様にして作製したリン酸系硬化触媒3.00gとを、室温で10分間混合し、有機基としてメチル基を含み、T単位:D単位=98.2:1.8(モル比)からなる透明均質な液体(硬化性樹脂組成物)を得た。シリコーンアルコキシオリゴマーX−40−9225に対する硬化触媒H
3PO
4の添加量は、0.52重量%である。Siに対するOの原子比は、3.0である。なお、シリコーンアルコキシオリゴマーX−40−9225の構成単位は、日本電子株式会社製核磁気共鳴装置(NMR)JNM−ECX400を使用し、
29SiについてNMRスペクトル(
29Si−NMR)を測定・解析をすることによって行った。
【0072】
[実施例3]
信越化学工業株式会社製シリコーンアルコキシオリゴマーX−40−9225:100.00gと、実施例1と同様にして作製したリン酸系硬化触媒40.00gとを室温で10分間混合撹拌し、有機基としてメチル基を含み、T単位:D単位=80.2:19.8(モル比)からなる透明均質な液体(硬化性樹脂組成物)を得た。シリコーンアルコキシオリゴマーX−40−9225に対する硬化触媒H
3PO
4の添加量は、7.00重量%である。また、Siに対するOの原子比は、2.8である。
【0073】
[実施例4]
T単位:D単位=53.6:46.4で構成される信越化学工業株式会社製シリコーンアルコキシオリゴマーX−40−9246(有機基:メチル基、アルコキシ基:メトキシ基、アルコキシ基量:12重量%、SiO
2分:72重量%)100.00gと、実施例1と同様にして作製したリン酸系硬化触媒60.00gとを室温で10分間混合撹拌し、有機基としてメチル基を含み、T単位:D単位=39.9:60.1(モル比)からなる透明均質な液体(硬化性樹脂組成物)を得た。なお、シリコーンアルコキシオリゴマーX−40−9246に対する硬化触媒H
3PO
4の添加量は、10.50重量%である。また、Siに対するOの原子比は、2.4である。なお、シリコーンアルコキシオリゴマーX−40−9246の構成単位は、実施例2と同様に
29Si−NMRスペクトルを測定・解析することにより行った。
【0074】
[実施例5]
窒素導入管、リービッヒ冷却管、活栓付滴下ロートを備えた500mL四ツ口フラスコに、東レ・ダウコーニング株式会社製メチルトリメトキシシラン(MTMS)Z−6366:47.67g(0.35mol)、東レ・ダウコーニング株式会社製ジメチルジメトキシシラン(DMDMS)Z−6329:18.03g(0.15mol)、メタノール32.04g(1.00mol)を入れ、室温下混合撹拌した。ここに、モル比がHCl/(MTMS+DMDMS)=0.1、H
2O/(MTMS+DMDMS)=1.5となるように、3.70mol/L塩酸(示性式:HCl)水溶液13.52gを、撹拌下30分掛けて滴下し、更に30分撹拌した。その後、四つ口フラスコをマントルヒータに設置し、80℃で4時間加温した後、室温まで冷却し1時間放置することにより透明均質な粘性液体(アルコキシオリゴマーアルコキシ基量:16重量%)を得た。そして、この粘性液体に、実施例1で使用したリン酸系硬化触媒10.00gを加え、室温で10分間混合した。その後、ロータリーエバポレータを用いて、CH
3OH、H
2Oを留去し、有機基としてメチル基を含み、T単位:D単位=61.6:38.4(モル比)からなる透明均質な液体(硬化性樹脂組成物)を得た。なお、MTMSとDMDMSの合量に対する硬化触媒H
3PO
4の添加量は、2.66重量%である。また、Siに対するOの原子比は、2.6である。
【0075】
[実施例6]
実施例5と同様にして、東レ・ダウコーニング株式会社製メチルトリメトキシシラン(MTMS)Z−6366:24.52g(0.18mol)、東レ・ダウコーニング株式会社製ジメチルジメトキシシラン(DMDMS)Z−6329:38.46g(0.32mol)から透明均質なアルコキシオリゴマー(アルコキシ基量:13重量%)を得た。そのアルコキシオリゴマーに対し、リン酸系触媒(実施例1と同一)10.00gを用いて、有機基としてメチル基を含み、T単位:D単位=31.7:68.3(モル比)からなる透明均質な液体(硬化性樹脂組成物)を得た。なお、MTMSとDMDMSの合量に対する硬化触媒H
3PO
4の添加量は、2.78重量%である。また、Siに対するOの原子比は、2.3である。
【0076】
[実施例7]
60℃に加温した信越化学工業株式会社製シリコーンアルコキシオリゴマーX−40−9246:100.00gに、硬化触媒として、日本曹達株式会社製テトラ−n−ブトキシジルコニウム(示性式:Zr(O−n−C
4H
9)
4、成分濃度:85重量%、含有溶剤:1−ブタノール、以
下TBZRと略記する。)3.00gを滴下し、1時間混合した後室温まで冷却して、有機基としてメチル基を含み、T単位:D単位=53.6:46.4(モル比)から成る透明均質な液体(硬化性樹脂組成物)を得た。なお、アルコキシオリゴマーに対する硬化触媒Zr(O−n−C
4H
9)
4の添加量は、2.55重量%である。また、Siに対するOの原子比は、2.5である。
【0077】
[実施例8]
実施例1で使用した、東レ・ダウコーニング株式会社製メチルトリメトキシシラン(MTMS)Z−6366に代えて、東京化成工業株式会社製のエチルトリメトキシシラン(示性式:C
2H
5Si(OCH
3)
3、分子量:150.25、以下ETMSと略記する。)75.13g(0.5mol)を使用し、実施例1と同様にして、透明均質なアルコキシオリゴマー(アルコキシ基:15重量%)を得た。そのアルコキシオリゴマーに対し、リン酸系触媒(実施例1と同一)10.00gを用いて、有機基としてエチル基(C
2H
5−)を含み、T単位:D単位=87.9:12.1(モル比)から成る透明均質な液体(硬化性樹脂組成物)を得た。なお、ETMSとDMDMSの合量に対する硬化触媒H
3PO
4の添加量は、2.11重量%である。また、Siに対するOの原子比は、2.9である。
【0078】
[実施例9]
実施例7において硬化触媒として使用した、日本曹達株式会社製TBZRに代えて、北興化学工業株式会社製ペンタエトキシタンタル(示性式:Ta(OC
2H
5)
5)3.00gを硬化触媒として使用し、実施例7と同様にして、有機基としてメチル基を含み、T単位:D単位=53.6:46.4(モル比)から成る透明均質な液体(硬化性樹脂組成物)を得た。なお、シリコーンアルコキシオリゴマーに対する硬化触媒Ta(OC
2H
5)
5の添加量は、3.00重量%である。また、Siに対するOの原子比は、2.5である。
【0079】
[実施例10]
信越化学工業株式会社製シリコーンアルコキシオリゴマーX−40−9246:90.00gと、Q単位のシリコーンのみからなるコルコート株式会社製シリコーンアルコキシオリゴマー(メチルシリケート51(アルコキシ基:メトキシ基、アルコキシ基量:66重量%、SiO
2分:51重量%))10.00gを室温で1時間撹拌混合した後、実施例1で使用したリン酸系硬化触媒3.00gを加え、更に
室温で30分間混合し、Q単位:T単位:D単位=7.2:91.1:1.7から成る透明均質な液体(硬化性樹脂組成物)を得た。シリコーンアルコキシオリゴマーに対する硬化触媒H
3PO
4の添加量は、0.53重量%である。また、Siに対するOの原子比は、3.1である。
【0080】
[比較例1]
実施例7のリン酸系硬化触媒の代わりに、日本曹達株式会社製B−1(化学名:テトラ−n−ブトキシチタニウム、示性式:Ti(O−n−C
4H
9)
4)3.50gを硬化触媒として使用し、実施例7と同様にして、有機基としてメチル基を含み、T単位:D単位=53.6:46.4(モル比)から成る透明均質な液体(硬化性樹脂組成物)を得た。シリコーンアルコキシオリゴマーに対する硬化触媒Ti(O−n−C
4H
9)
4の添加量は、3.50重量%である。また、Siに対するOの原子比は、2.5である。
【0081】
[比較例2]
実施例3のリン酸系触媒の代わりに、川研ファインケミカル株式会社製アルミニウムキレートD(化学名:アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、示性式:Al(C
5H
7O
2)(C
6H
9O
3)
2、成分濃度:76重量%、含有溶剤:2−プロパノール)6.50gを硬化触媒として使用し、実施例3と同様にして、有機基としてメチル基を含み、T単位のみから成る透明均質な液体(硬化性樹脂組成物)を得た。なお、シリコーンアルコキシオリゴマーの合量に対する硬化触媒Al(C
5H
7O
2)(C
6H
9O
3)
2の添加量は、4.99重量%である。また、Siに対するOの原子比は、3.0である。
【0082】
[比較例3]
実施例3のリン酸系硬化触媒の代わりに、マツモトファインケミカル株式会社製ZC−540(化学名:ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、示性式:Zr(O−n−C
4H
9)
3(C
5H
7O
2)、成分濃度:45重量%、含有溶剤:トルエン、1−ブタノール、酢酸ブチル)3.00gを硬化触媒として使用し、実施例3と同様にして、有機基としてメチル基を含み、T単位のみから成る透明均質な液体(硬化性樹脂組成物)を得た。シリコーンアルコキシオリゴマーに対する硬化触媒Zr(O−n−C
4H
9)
3(C
5H
7O
2)の添加量は、1.35重量%である。また、Siに対するOの原子比は、3.0である。
【0083】
[比較例4]
実施例5と同様にして、MTMS14.98g(0.11mol)、DMDMS46.88g(0.39mol)から透明均質なアルコキシオリゴマー(アルコキシ基量
:12重量%)を得た。そのアルコキシオリゴマーに対し、実施例1で使用したリン酸系触媒10.00gを使用し、有機基としてメチル基を含み、T単位:D単位=19.3:80.7(モル比)から成る透明な液体(硬化性樹脂組成物
)を得た。MTMSとDMDMSの合量に対する硬化触媒H
3PO
4の添加量は、2.83重量%である。また、Siに対するOの原子比は、2.2である。
【0084】
[比較例5]
実施例5と同様にして、MTMS54.48g(0.40mol)、DMDMS12.02g(0.10mol)から透明均質なアルコキシオリゴマー(アルコキシ基量:17重量%)を得た。このアルコキシオリゴマーに対し、実施例5のリン酸系触媒の代わりにオルトリン酸水溶液(H
3PO
4濃度:85%)15.65gを使用し、有機基としてメチル基を含み、T単位:D単位=80.0:20.0(モル比)から成る透明な液体(硬化性樹脂組成物)を得た。MTMSとDMDMSの合量に対する硬化触媒H
3PO
4の添加量は、20.00重量%である。また、Siに対するOの原子比は、2.8である。
【0085】
[評価・測定]
上述の実施例1〜10及び比較例1〜5の各硬化性樹脂組成物について、以下のように、クラック・割れの発生の有無の評価、透過率測定、耐紫外線性評価を行った。表1〜4は、その結果をまとめたものである。
【0086】
(クラック・割れの発生の有無の評価)
内径φ84mm、高さ14mmのポリメチルペンテン樹脂製シャーレに、上記各封止材(硬化性樹脂組成物)を6.0gキャストし、ポリメチルペンテン樹脂製の蓋(内径φ87mm、高さ8mm)を被せて室温で放置し、固化させた。固化の判定は、シャーレの端を高さ20mmの金属ブロックに乗せて傾け(約13°)、シャーレ内の液体の流動性の有無により判定した。固化後、蓋を取り去り、室温で放置し、クラック、割れの発生を目視で確認した。なお、評価結果は、表1〜4中「クラック・割れの発生の有無」として示し、クラック、割れのないものは「無」とし、クラック、割れのあるものは「有り」とした。
【0087】
(透過率測定・評価)
内径φ84mm、高さ14mmのポリメチルペンテン樹脂製シャーレに、上記各封止材(硬化性樹脂組成物)を、厚さ1mmの固化体が得られる容量をキャストし、ポリメチルペンテン樹脂製の蓋(内径φ87mm、高さ8mm)を被せて固化させた。固化後、150℃まで温度を上げ150℃で1時間保持して乾燥させた。得られた固化体の透過率は、株式会社日立テクノロジーズ製の紫外可視分光光度U−4100を用いて、波長200〜1200nmの波長の範囲で測定を行った。そして、波長300〜350nmの範囲において最小となる透過率を評価した。
【0088】
図3〜
図6は、透過率測定結果の一例を示すグラフである。
図3は実施例3の透過率測定結果を示し、
図4は実施例7の透過率測定結果を示し、
図5は実施例9の透過率測定結果を示し、
図6は実施例10の透過率測定結果を示している。実施例3においては、
図3から、波長300〜350nmの範囲において最小となる透過率を91.8%と評価した。また、実施例7においては、
図4から、波長300〜350nmの範囲において最小となる透過率を90.5%と評価した。また、実施例9においては、
図5から、波長300〜350nmの範囲において最小となる透過率を87.4%と評価した。また、実施例10においては、
図6から、波長300〜350nmの範囲において最小となる透過率を91.1%と評価した。このように、上記各封止材(硬化性樹脂組成物)の透過率測定結果から波長300〜350nmの範囲において最小となる透過率を求めた結果を、表1〜4中「Tmin
300−350」として示した。なお、「Tmin
300−350」が85%以上となるものを合格としている。
【0089】
(耐紫外線性評価)
ガラス窓を除去した日亜化学工業製のパッケージ型紫外線LED:NC4U133B(発光ピーク波長:365nm)を、アルミニウム製のスター基板にマウントし、当該スター基板を、テフロン(登録商標)製のスペーサーを介して、アルミニウム製のヒートシンクにネジ止めした。そして、パッケージ型紫外線LEDに、略1.0Aの電流を通電して略100W/cm
2の紫外光を発光させ、ジャンクション温度(Tj)が100℃と成るように、テフロン(登録商標)製スペーサーの厚みを調整した。ジャンクション温度は、ユアサエレクトロニクス株式会社製の熱抵抗測定機AT−205を使用して測定した。パッケージ型紫外線LEDの凹部に、上記各封止材(硬化性樹脂組成物)を充填し、室温で放置して固化させた後、150℃まで温度を上げ、150℃で1時間保持して乾燥させた。封止したパッケージ型紫外線LEDに、1.0Aの電流を通電して連続点灯させ、積分球(Labsphere製、型番:3P−GPS−020−SL、内径:φ2インチ)を使用して継続して発光強度の測定
を行った。発光強度の測定には、ウシオ電機株式会社製紫外線積算光量計UIT−150及び紫外線積算光量計用受光器UVD−S365を使用した。LEDは点灯時間の経過と共に発光強度が低下する性質を有するため、封止材(硬化性樹脂組成物)の耐紫外線性評価においては、封止したパッケージ型紫外線LEDと共に、封止をしていないパッケージ型紫外線LEDを同条件で連続点灯させ、5000時間にわたって両者の発光強度を相対比較することで行った。そして、後述するように、耐紫外線性評価においては、500時間経過後の発光強度(補正値)、1000時間経過後の発光強度(補正値)及び5000時間経過後の発光強度(補正値)を求め、少なくとも500時間経過後の発光強度(補正値)が85%以上となるものを合格とした。
【0090】
図7〜
図9は、発光強度の経時変化の一例を示すグラフである。
図7は実施例1の発光強度の経時変化を示し、
図8は実施例3の発光強度の経時変化を示し、
図9は実施例7の発光強度の経時変化を示している。
図7〜
図9において、「〇」及び点線で示すグラフは、各実施例の発光強度の経時変化(実測値)を示すグラフであり、LEDの点灯直後の発光強度を100%として相対値で示したものである。また、
図7〜
図9において、「●」及び実線で示すグラフは、封止をしていないパッケージ型紫外線LEDの発光強度を考慮して、「〇」及び点線で示す実測値を補正したもの(補正値)であり、具体的には、封止をしていないパッケージ型紫外線LEDの発光強度に対する上記補正値を示したものである。つまり、「●」及び実線で示すグラフ(つまり、補正値)は、封止をしていないパッケージ型紫外線LEDの発光強度に対する、各封止材(硬化性樹脂組成物)の固化体を通る紫外光の発光強度の比率、すなわち、各封止材(硬化性樹脂組成物)の固化体の、紫外光に対する透過率を示している。
【0091】
実施例1においては、
図7から、500時間経過後の発光強度(補正値)は、95%以上、1000時間経過後の発光強度(補正値)は、95%以上、5000時間経過後の発光強度(補正値)は、90%以上と評価した。実施例3においては、
図8から、500時間経過後の発光強度(補正値)は、95%以上、1000時間経過後の発光強度(補正値)は、95%以上、5000時間経過後の発光強度(補正値)は、90%以上と評価した。実施例7においては、
図9から、500時間経過後の発光強度(補正値)は、95%以上、1000時間経過後の発光強度(補正値)は、95%以上、5000時間経過後の発光強度(補正値)は、90%以上と評価した。このように、上記各封止材(硬化性樹脂組成物)を用いて封止したLEDの発光強度の測定結果から、500時間経過後の発光強度(補正値)と、1000時間経過後の発光強度(補正値)と、5000時間経過後の発光強度(補正値)とを求めた結果を、表1〜4中、耐紫外線性(1)(500時間経過後の発光強度(補正値))、耐紫外線性(2)(1000時間経過後の発光強度(補正値))及び耐紫外線性(3)(5000時間経過後の発光強度(補正値))として示した。なお、本実施例の耐紫外線性評価の合格基準については、少なくとも500時間経過後の発光強度(補正値)(つまり、500時間経過後の紫外光の透過率)が、85%以上となるものを合格としたが、耐紫外線性評価の合格基準については、LEDに求められる仕様に応じて適宜変更可能であり、87.5%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。また、耐紫外線性評価の合格基準として、1000時間経過後の発光強度(補正値)(つまり、1000時間経過後の紫外光の透過率)を加えることも可能である。この場合、1000時間経過後の発光強度(補正値)は、85%以上であることが好ましく、87.5%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。また、さらに耐紫外線性評価の合格基準として、5000時間経過後の発光強度(補正値)(つまり、5000時間経過後の紫外光の透過率)を加えることも可能である。この場合、5000時間経過後の発光強度(補正値)は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。表3及び4に示すように、比較例1〜7においては、耐紫外線性(1)及び(2)(つまり、500時間経過後の発光強度(補正値)及び1000時間経過後の発光強度(補正値))において、いずれも85%以下と評価されたため、耐紫外線性(3)(5000時間経過後の発光強度(補正値))の評価は行っていない。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
(考察)
表1〜2に示すように、実施例1〜8の各封止材(硬化性樹脂組成物)は、いずれもアルコキシオリゴマーのSiに対するOの原子比が、2.3〜3.5の範囲にあり、硬化触媒が、アルコキシオリゴマー100重量部に対して、3〜30重量部の範囲で含まれるリン酸、又は、0.5〜20重量部の範囲で含まれる、B、Al、P、Sc、Ga、Y、Zr、Nb、In、Sn、La、Gd、Dy、Yb、Hf、Ta、Wの群から選ばれる少なくとも一種の金属アルコキシドとなっている。このため、硬化後にクラック・割れの発生が認められず、「Tmin
300−350」が85%以上であり、「500時間経過後の発光強度(補正値)」(つまり、「耐紫外線性(1)」)が85%
以上となっている。従って、実施例1〜8の各封止材(硬化性樹脂組成物)は、紫外域での透明性、耐紫外線性及び耐熱性が極めて高いものと評価される。
【0097】
図10は、硬化触媒としてテトラ−n−ブトキシチタニウムを用いて作製された、比較例1の硬化性樹脂組成物の透過率特性である。
図10に示すように、比較例1のテトラ−n−ブトキシチタニウムは、Tiを含み、波長350nmよりも低い波長域において光を吸収することがわかる。このため、硬化触媒として使用した場合、紫外域の透過特性及び耐紫外線性が悪化することから(表3)、硬化触媒として使用することは適切では無い。
【0098】
図11は、硬化触媒としてアルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)を用いて作製された、比較例2の硬化性樹脂組成物の透過率特性である。
図11に示すように、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)のような金属キレート化合物は、波長350nmよりも低い波長域において光を吸収することがわかる。このため、硬化触媒として使用した場合、紫外域の透過特性及び耐紫外線性が悪化することから(表3)、硬化触媒として使用することは適切では無い。
【0099】
図12は、硬化触媒としてジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネートを用いて作製された、比較例3の硬化性樹脂組成物の透過率特性である。
図12に示すように、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネートも波長350nmよりも低い波長域において光を吸収することがわかる。このため、硬化触媒として使用した場合、紫外域の透過特性及び耐紫外線性が悪化することから(表3)、硬化触媒として使用することは適切では無い。
【0100】
比較例4から分かるように、D単位が相対的に多くなり、T単位/(D単位+T単位)の比率が低くなると、Siに対するOの原子比が2.3を下回るため、耐紫外線性が悪化する(表4)。
【0101】
比較例5から分かるように、触媒量が多過ぎると、材料が硬く成り過ぎ、LEDの点灯・消灯に伴う温度変化によって生じる応力を緩和する能力が著しく低下するため、耐紫外線性が悪化する(表4)。
【0102】
以上が本発明の実施の形態、及び実施例の説明であるが、本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において様々な変形が可能である。
【0103】
例えば、本発明の実施の形態の説明においては、硬化性樹脂組成物の用途として、紫外線LEDの封止を挙げたが、硬化性樹脂組成物の用途はこれに限定されるものではなく、例えば、レーザーダイオード等、他の半導体発光デバイス(光半導体装置)、光検出器、電気光学的ディスプレイ、有機半導体、有機発光ダイオード、電子発光ディスプレイ、有機太陽電池装置、照明装置などに用いる発光素子の封止材料としても使用することができる。
【0104】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。