特許第6694617号(P6694617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6694617
(24)【登録日】2020年4月22日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】カメラの絞り羽根の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/00 20060101AFI20200511BHJP
【FI】
   G03B9/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-114458(P2018-114458)
(22)【出願日】2018年6月15日
(65)【公開番号】特開2019-219439(P2019-219439A)
(43)【公開日】2019年12月26日
【審査請求日】2020年1月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596087731
【氏名又は名称】株式会社ニチベイパーツ
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】杉永 誠一
【審査官】 ▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5940717(JP,B1)
【文献】 特開2008−203576(JP,A)
【文献】 特開2010−8786(JP,A)
【文献】 特開2013−222154(JP,A)
【文献】 特開2011−59237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/02
G02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラの絞り羽根の製造方法であって、
前記絞り羽根は遮光フィルムを切削して形成し、
前記絞り羽根の絞り開口面はテーパーを有し、
前記絞り開口面は、前記テーパーに合わせた刃角を有するバイトを円状に回転させながら移動し、前記バイトにより前記遮光フィルムを切削して形成することを特徴とする、カメラの絞り羽根の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のカメラの絞り羽根の製造方法において、
前記遮光フィルムの上面には上保護テープを接着し、
前記遮光フィルムの下面には下保護テープを接着し、
前記遮光フィルムを前記バイトにより切削する際に、同時に前記上保護テープ及び前記下保護テープも切削することを特徴とする、カメラ絞り羽根の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のカメラの絞り羽根の製造方法において、
前記バイトは、四角形状に突設した先端部と、
前記先端部と連続し、前記テーパーに合わせた刃角である傾斜部と、を有することを特徴とする、カメラの絞り羽根の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のカメラの絞り羽根の製造方法であって、
前記下保護テープの下面には回収テープを接着し、
前記遮光フィルムを前記バイトにより切削する際に、前記先端部を前記回収テープの上面から所定の範囲に貫入することを特徴とする、カメラの絞り羽根の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のカメラの絞り羽根の製造方法であって、
前記バイトの回転軸は、前記バイトよりも外側に位置し、
前記バイトを回転させて前記遮光フィルムを切削する際に、前記回転軸に沿って切削屑が発生することを特徴とする、カメラの絞り羽根の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のカメラの絞り羽根の製造方法であって、
前記遮光フィルムは、テーブルの上面に配置し、
前記テーブルは上面から下面に貫通する貫通孔を有し、
前記遮光フィルムは、前記テーブルの下面から吸引することにより、前記テーブルの上面に吸着させて切削を行うことを特徴とする、
カメラの絞り羽根の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラの絞り部に用いる絞り羽根の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のカメラの絞り部は、複数の絞り羽根を移動させて絞り開口の調節を行って光量調節を行っている(図7)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年は、デジタルカメラや車載カメラ、ドローンに搭載するカメラなど、小型なカメラの需要が高まっている。
小型カメラに用いる絞り羽根は遮光フィルムを切断して作られるが、絞り羽根は薄く、かつ、小さいため、加工が困難である。
このため、できあがる製品にばらつきが生じたり、切断面にテーパーを設ける精度の高い加工は困難であった。
【0004】
本発明は、薄くて小さな絞り羽根を精度良く加工することができる、カメラの絞り羽根の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた本願の第1発明は、カメラの絞り羽根の製造方法であって、前記絞り羽根は遮光フィルムを切削して形成し、前記絞り羽根の絞り開口面はテーパーを有し、前記絞り開口面は、前記テーパーに合わせた刃角を有するバイトを円状に回転させながら移動し、前記バイトにより前記遮光フィルムを切削して形成することを特徴とする、カメラの絞り羽根の製造方法を提供する。
本願の第2発明は、第1発明のカメラの絞り羽根の製造方法において、前記遮光フィルムの上面には上保護テープを接着し、前記遮光フィルムの下面には下保護テープを接着し、前記遮光フィルムを前記バイトにより切削する際に、同時に前記上保護テープ及び前記下保護テープも切削することを特徴とする、カメラ絞り羽根の製造方法を提供する。
本願の第3発明は、第2発明のカメラの絞り羽根の製造方法において、前記バイトは、四角形状に突設した先端部と、前記先端部と連続し、前記テーパーに合わせた刃角である傾斜部と、を有することを特徴とする、カメラの絞り羽根の製造方法を提供する。
本願の第4発明は、第3発明のカメラの絞り羽根の製造方法であって、前記下保護テープの下面には回収テープを接着し、前記遮光フィルムを前記バイトにより切削する際に、前記先端部を前記回収テープの上面から所定の範囲に貫入することを特徴とする、カメラの絞り羽根の製造方法を提供する。
本願の第5発明は、第1発明乃至第4発明のいずれかのカメラの絞り羽根の製造方法であって、前記バイトの回転軸は、前記バイトよりも外側に位置し、前記バイトを回転させて前記遮光フィルムを切削する際に、前記回転軸に沿って切削屑が発生することを特徴とする、カメラの絞り羽根の製造方法を提供する。
本願の第6発明は、第1発明乃至第5発明のいずれかのカメラの絞り羽根の製造方法であって、前記遮光フィルムは、テーブルの上面に配置し、前記テーブルは上面から下面に貫通する貫通孔を有し、前記遮光フィルムは、前記テーブルの下面から吸引することにより、前記テーブルの上面に吸着させて切削を行うことを特徴とする、カメラの絞り羽根の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
(1)回転しながら切削することにより、薄い遮光フィルムであっても精度良く加工することができる。
(2)上下に保護テープを接着した遮光フィルムを切削加工するため、薄い遮光フィルムであってもずれることなく、精度良く加工することができる。
(3)下保護テープの下面に接着した回収テープを切削後に剥がすことで、回収テープについた切削屑を回収することができる。
(4)遮光フィルムをテーブルに吸着させて切削を行うことにより、遮光フィルムがずれることなく、精度良く加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】絞り羽根の説明図
図2】絞り羽根の開口部の断面図
図3】バイトの説明図
図4】絞り開口面の形成方法の説明図
図5a】絞り羽根の製造方法の説明図(1)
図5b】絞り羽根の製造方法の説明図(2)
図5c】絞り羽根の製造方法の説明図(3)
図5d】絞り羽根の製造方法の説明図(4)
図6】絞り羽根の製造方法の説明図(5)
図7】従来の絞り羽根の説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図に示す実施例に基づき、本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
[実施例1]
[1]絞り羽根の構成
<1>絞り羽根1
絞り羽根1は、デジタルカメラや車載カメラ、ドローンに搭載するカメラに内蔵する小型カメラに使用するものである。
絞り羽根1は遮光用プラスチック製の遮光フィルム3からなり、厚みは0.025〜0.15mmである。(図1
絞り羽根1の外形は内側、外側いずれも円弧状を呈している。そして内側の円弧が絞り開口面11となる。
【0010】
<2>絞り開口面
絞り開口面11は、テーパーをつけて形成する(図2)。テーパー角は30度〜60度とする。
テーパーをつけることにより、絞り開口面11での反射光が入光側に反射されることとなり、より鮮明な画像を撮影することができる。
【0011】
<3>バイト
バイト2は、四角形状に突設した先端部21と、先端部21と連続し、絞り開口面11のテーパーに合わせた刃角を呈する傾斜部22と、を有する(図3)。
【0012】
<4>絞り開口面の加工
絞り開口面11は、バイト2を回転させながら、傾斜部22が絞り開口面11に沿うように移動させることにより、遮光フィルム3を切削して加工する(図4)。
【0013】
[2]絞り羽根の製造方法。
(1)保護テープの接着(図5a)
絞り羽根1を構成する遮光フィルム3の上面には上保護テープ4を接着し、下面には下保護テープ5を接着し、遮光フィルム3を上保護テープ4及び下保護テープ5で挟み込む。
上保護テープ4及び下保護テープ5はPETP系のシート材であり、アクリル系感圧接着やUV系接着など、適宜シートの材質および接着方法を選択することができる。
上保護テープ4及び下保護テープ5の厚みは0.025mm以上が好適である。
【0014】
(2)回収テープ6の接着
下保護テープ5の下にはさらに回収テープ6を接着してもよい。
回収テープ6は上保護テープ4、下保護テープ5と同様に、PETP系のシート材であり、アクリル系感圧接着やUV系接着など、適宜シートの材質および接着方法を選択することができる。
回収テープ6の厚みは0.025mm以上が好適である。
【0015】
(3)遮光フィルムの切削
貼り合わせて重合した遮光フィルム3、上保護テープ4、下保護テープ5、および回収テープ6のうち、遮光フィルム3、上保護テープ4、下保護テープ5、遮光フィルム3のみを切削して、絞り羽根1の絞り開口面11を形成する。
絞り開口面11はテーパーをつけるため、テーパーに合わせた刃角を有するバイト2を使用して絞り開口面11を切削して形成する(図5b)。
バイト2は、先端部21を前記回収テープ6の上面から所定の範囲に貫入する位置で回転し、遮光フィルム3と、貼り合わせた上保護テープ4、下保護テープ5のみを切削する。
遮光フィルム3は0.025〜0.15mmと薄いものであるため、単体で切削した場合には動いてしまい、要求寸法を満足することができないおそれがある。
しかし、本願においては遮光フィルム3をサポートとなる上保護テープ4、下保護テープ5に貼り合わせて固定してあるため、薄い遮光フィルム3であっても高い精度で加工することができる。
バイト2の回転軸23は、先端部21よりも外側に設定する。
バイト2を回転しながら切削するため、回転軸23上には回収テープ6に付着した切削屑31が残る(図5c)。
【0016】
(4)回収テープの剥離
回収テープ6を剥離して切削屑31を回収する(図5d)。
回収テープ6の素材を、紫外線により硬化する樹脂製とすることにより、回収テープ6に紫外線を照射して硬化することで、回収テープ6と切削屑31を容易に剥離することができる。
その後、切削して形成した絞り羽根1以外の部分の遮光フィルム3、上保護テープ4、下保護テープ5を取り除く。上保護テープ4、下保護テープ5は、絞り羽根1を別工程で用いるために搬送する際や、別工程での材料送り等に有用である場合には、取り除かずに残しておいてもよい。
【0017】
[実施例2]
(1)吸着による遮光フィルムの固定
実施例1においては、遮光フィルム3はサポートとなる上保護テープ4、下保護テープ5に貼り合わせて固定して切削する。
本実施例においてはこれらの材料を、上面から下面に貫通する貫通孔71を形成したテーブル7上に載置し、テーブル7の下面から吸引することにより、テーブル7の上面に材料を吸着させて切削を行う(図6)。
テーブル7に吸着した状態で切削を行うことにより、薄い遮光フィルム3であっても動くことがなく、高い精度で加工することができる。
【符号の説明】
【0018】
1…絞り羽根、11…絞り開口面
2…切削バイト、21…先端部、22…傾斜部、23…回転軸
3…遮光フィルム、31…切削屑
4…上保護テープ
5…下保護テープ
6…回収テープ
7…テーブル、71…貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6
図7