【実施例1】
【0014】
まず、本発明であるエレベータ乗場用止水パネルが設置されるエレベータについて説明する。
図1は、エレベータの側面の断面図である。
図2は、エレベータの乗場の正面図である。
図3〜5は、エレベータの乗場の平面図である。
【0015】
図1に示すように、エレベータ100は、複数階の建物において、例えば最上階から最下階まで吹き抜けるように設けた昇降路110に、人や荷物を収容可能なかご130を配置し、昇降可能に吊設したものである。建物の各階(
図1においては1階及び2階)におけるエレベータ100への乗場200、200aには、かご130に乗降するための開口部が形成される。開口部の床面には、レール状の敷居220、220aが敷設され、乗場ドア210、210aが敷居220、220aに沿ってスライド移動可能に設置される。乗場ドア210、210aが閉まることで開口部が閉塞され、開くことで開口部が開放される。
【0016】
かご130は、昇降路110内を上下方向に移動し、各階の乗場200、200aに合わせて停止するように制御される。かご130には、乗場200、200a側に開口部が形成され、乗場ドア210、210aと連動して開閉するかごドア140が開閉可能に設置される。例えば、かご130の昇降動作中は全ての乗場ドア210、210a及びかごドア140は閉じ、かご130が1階に停止したときに乗場ドア210及びかごドア140が開く。
【0017】
昇降路110には、最上階や最下階など終端階の先にピット120が形成される。ピット120には、かご130の行き過ぎを防止するための検出スイッチ160や緩衝器などが設置される。また、空間を利用して、かご130を吊っているロープを巻き上げるための巻上機150など関連する設備が設置される場合もある。
【0018】
台風やゲリラ豪雨などの際、乗場200、200aが屋外にある場合や、屋内でも床面まで浸水した場合、大量の雨水が昇降路110内に入り込み、下側にピット120内に溜まり冠水すると、そこに存在する設備が故障したり、漏電したりするおそれがある。乗場ドア210、210aと敷居220、220aの間に防水対策が施されていても、完全に防水することは困難であり、特に人の乗降で乗場ドア210、210aを開閉させれば雨水が浸入する。
【0019】
大量の雨水が乗場ドア210、210aに到達することが予想される場合、すなわち雨水が来ないうちに、乗場ドア210、210aの手前に止水板300を取り付ける。止水板300により、雨水が乗場200、200aの開口部から昇降路110内に浸入することを抑止する。
【0020】
乗場ドア210、210aを開閉しても雨水が昇降路110内に浸入せず、止水板300を跨げば、取り付けた状態でも人が乗降することが可能である。乗場200が浸水したとしても、止水板300で堰き止めることで、ピット120が冠水して電気部品が使用不可となるのを遅延又は防止すれば、かご130内に人を閉じ込めてしまうこともない。
【0021】
図2に示すように、乗場ドア210は、乗場200の開口部の左縁、上縁及び右縁の壁240に沿って設けられた三方枠230、及び開口部の下縁の床面に沿って設けられた敷居220で囲まれた内側を閉塞する。乗場ドア210は、1枚の扉又は複数の扉を組み合わせたもので、片開き又は両開きにより、敷居220に沿って左側、右側又は両側にスライド移動し、開口部を開放する。
【0022】
止水板300は、三方枠230の左枠、敷居220及び三方枠230の右枠に接するように取り付けられる。止水板300と三方枠230及び敷居220との間を、止水板300に固定されたパッキン400でシールすることにより、乗場200の開口部まで雨水が到達することを抑止する。
【0023】
止水板300は、乗場200の状況を目視できる高さ(例えば、1000mm以下)であり、好ましくは人が跨ぐことが可能な高さ(400mm以下)である。乗場200が浸水するまでは人の乗降が可能であり、また、止水板300の高さまで浸水しなければ、雨水が昇降路110内に入り込まない。なお、雨水が止水板300の手前に溜まると、水圧で止水板300が押されるので、パッキン400によるシール性がより強化される。そして、雨水が引けば、止水板300を取り外せば良い。
【0024】
図3(a)は、前後方向にずれた2枚の扉を組み合わせた乗場ドア210が、左側に設けた収納スペースへ片開きし、2枚重ねて収納されるタイプである。三方枠230の内側面が乗場ドア210の面に対して垂直となっている場合は、三方枠230の手前側の角に止水板300のパッキン400が接触しやすいように傾斜させて押し当てれば良い。すなわち、パッキン400の前端が三方枠230の角より小さく、パッキン400の後端が三方枠230の角より大きくなるように、止水板300の横幅を決めれば良い。
【0025】
図3(b)に示すように、乗場200の開口部の幅によっては、開口部の壁240aと、三方枠230aの角との間隔が広い場合もあれば、
図3(a)に示すように、狭い場合もある。間隔が狭い場合、パッキン400の傾斜角度によっては、三方枠230に押し当てようとしても壁240が邪魔になることもある。すなわち、壁240など三方枠230の外側にあるものに干渉しないように傾斜角度を決める必要がある。
【0026】
図4は、2枚の扉を突き合わせた乗場ドア210aが、左側及び右側に設けた収納スペースへ両開きするタイプである。三方枠230の内側面が乗場ドア210の面に対して垂直となっている場合であるので、三方枠230の手前側の角に止水板300のパッキン400が接触しやすいように傾斜させて押し当てれば良い。
【0027】
図5は、三方枠230bが手前に大きく張り出し、かつ三方枠230bの内側面が乗場ドア210の面に対して手前側へ開くように傾斜している場合である。三方枠230bの手前側の角に止水板300のパッキン400を押し当てても、止水板300と乗場ドア210との間隔が大きく空いてしまうため、三方枠230bの傾斜した内側面に、止水板300のパッキン400の後端を接触させてシールしても良い。
【0028】
次に、エレベータ乗場用止水パネルについて説明する。
図6は、エレベータ乗場用止水パネルの(a)正面図、(b)側面図及び(c)底面図である。
図7は、エレベータ乗場用止水パネルの形状を説明する平面図である。なお、乗場ドアの方を向いた奥側を正面(前方)とし、手前側を背面(後方)とする。
【0029】
エレベータ乗場用止水パネルは、エレベータ100の乗場200における三方枠230の左右両枠と敷居220に接するように着脱可能に設置するもので、エレベータ100へ雨水が浸入するのを抑止する止水板300、止水板300の左側面から底面を介して右側面に渡って取り付けられるパッキン400等を有する。止水板300を三方枠230の左枠と右枠の間に押し込むことにより、パッキン400が三方枠230の左右両枠及び敷居220に密着してエレベータ100への隙間が封止される。
【0030】
図6に示すように、止水板300は、金属、樹脂又は木製などの板材である前板310、前板310の左端及び右端を後方へ斜めに折り曲げた左側板320及び右側板320a、前板310の下端を後方へ垂直に折り曲げた底板330を有する。なお、左側板320及び右側板320aを、後方へ拡がるようにテーパ状に折り曲げることで、止水板300が楔状に食い込めば良い。
【0031】
図7(a)は、三方枠230の内側面が乗場ドア210の面に対して垂直となっている場合である。止水板300の前幅500を三方枠230の開口幅520より狭く、止水板300の後幅510を三方枠230の開口幅520より広くすれば、止水板300が三方枠230の間に嵌め込まれる。例えば、前幅500を開口幅520より5〜10mm小さくし、後幅510を開口幅520より5〜10mm大きくすれば良い。
【0032】
また、乗場ドア210の開閉を確保するために、止水板300と乗場ドア210との前間隔530を6mm以上空ける。すなわち、前間隔530が確保された位置で止水板300が三方枠230に接するように、止水板300の前幅500と側板320の傾斜角度を決めれば良い。さらに、止水板300が壁240と干渉しないように、止水板300の後幅510を壁240の壁幅540よりも小さくすれば良い。
【0033】
図7(b)は、三方枠230bの内側面が乗場ドア210の面に対して手前側へ開くように傾斜している場合である。止水板300の側板320の前端から後端の何れか一点で三方枠230bと接すれば良いが、止水板300が乗場ドア210と接触しないように前間隔530を確保する必要がある。
【0034】
次に、エレベータ乗場用止水パネルへのパッキンの取付けを説明する。
図8は、パッキンの取付けを説明する正面図である。
図9は、パッキンの取付けを説明する底面を拡大した断面図である。
【0035】
図8(a)に示すように、パッキン400は、ゴム等の弾性体を薄いシート状にした1枚の長い密封材であり、止水板300の左側板320、底板330及び右側板320aを合計した長さであり、止水板300の側板320等の2倍の幅である。パッキン400は、止水板300の左側板320から底板330との角部410で折り曲げられ、底板330を介して右側板320aとの角部410でまた折り曲げられ、右側板320aに渡って取り付けられる。
【0036】
図8(b)に示すように、パッキン400の下半分420を左側板320等に重ねる。さらに、パッキン400を止水板300に固定するために、パッキン400の下半分420にそれぞれ左側留板340、底留板350及び右側留板340aを重ねる。左側留板340、底留板350及び右側留板340aは、それぞれ左側板320、底板330及び右側板320aと同じ形状の金属、樹脂又は木製などの板材である。
【0037】
図9(a)に示すように、止水板300の側板320に対し、パッキン400の下半分420を当て、側留板340にボルト等を通した上で、パッキン400及び側板320にボルト等を貫通させる。そして、ナット等の留具360でボルトを固定する。
【0038】
図9(b)に示すように、パッキン400の上半分430を側留板340の上に折り返し、パッキン400で側留板340を挟み込むように被せる。なお、左側留板340と底留板350との間に角度があり、また底留板350と右側留板340aとの間に角度があることから、折り返したパッキン400の上半分430が元のように開くのを抑えられる。
【0039】
パッキン400の上半分430が側留板340に固着されていないことに加え、底板330は前板310に対して垂直に折り曲がっているが、左側板320及び右側板320aは前板310に対して傾斜して折り曲がっていることから、パッキン400の角部410において弛みが生じる。パッキン400自体の弾力性とその弛みを利用することで密封性が高められ、止水板300を三方枠230の間に押し込んだときに、よりエレベータ100への隙間が封止される。
【0040】
本発明によれば、大雨時に既設のエレベータに対しても乗場に簡単に取付け及び取外しすることができる。すなわち、予め止水板を固定するための部材を設置しておく必要はなく、大雨が予想されるときに取り付ければ良い。また、取り付ける際に機械的な固定は必要なく、パッキンで隙間を塞ぐだけで良い。なお、止水板を取り付けた状態でもエレベータに乗り降りすることができ、また水が引けば簡単に取り外すことも可能である。
【0041】
以上、本発明の実施例を述べたが、これらに限定されるものではない。例えば、
図10(a)及び(b)に示すように、止水板300の背面に支持足370を取り付けて、三方枠230に押し付けた止水板300が後退しないように密着を補強しても良い。パッキン400の弾力性により止水板が外れて転倒することを防止することができる。