(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6694629
(24)【登録日】2020年4月22日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】感光マイクロアレイのマクロホットエンボス成形のリアルタイム制御装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B29C 59/02 20060101AFI20200511BHJP
【FI】
B29C59/02 Z
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-548264(P2019-548264)
(86)(22)【出願日】2017年12月11日
(65)【公表番号】特表2020-509950(P2020-509950A)
(43)【公表日】2020年4月2日
(86)【国際出願番号】CN2017115398
(87)【国際公開番号】WO2018184401
(87)【国際公開日】20181011
【審査請求日】2019年9月3日
(31)【優先権主張番号】201710226928.5
(32)【優先日】2017年4月6日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519216910
【氏名又は名称】華南理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】謝 晋
(72)【発明者】
【氏名】盧 闊
(72)【発明者】
【氏名】劉 継楠
(72)【発明者】
【氏名】胡 満鳳
【審査官】
一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0249609(US,A1)
【文献】
特開2008−008889(JP,A)
【文献】
特開2016−063152(JP,A)
【文献】
中国実用新案第206696685(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/00−59/18
B29C 43/00−43/58
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光マイクロアレイのマクロホットエンボス成形のリアルタイム制御装置であって、ホットエンボス装置下型板(12)に設けられた感光システムと、リアルタイム分析及び制御システムとを備え、前記感光システムは、光源(3)と、オンライン光センサー(1)と、チャック(2)とを備え、前記チャック(2)が下型板(12)に固定され、前記光源(3)、オンライン光センサー(1)がチャック(2)に固定され、前記光源(3)が透明重合体板(5)の厚み方向の入光面に対向して設置され、オンライン光センサーが、透明重合体板(5)の入光面の対向面と両側面のそれぞれに対向して設置され、リアルタイム分析及び制御システム回路に接続され、前記リアルタイム分析及び制御システムは、回路を介して光源(3)、オンライン光センサー(1)及びホットエンボス装置PLCのそれぞれに接続され、オンライン光センサー(1)がリアルタイムで検出した光照射に応じてホットエンボス装置のホットエンボスパラメータを調整することに用いられることを特徴とする感光マイクロアレイのマクロホットエンボス成形のリアルタイム制御装置。
【請求項2】
前記光源(3)は、LEDストリップライトであることを特徴とする請求項1に記載の感光マイクロアレイのマクロホットエンボス成形のリアルタイム制御装置。
【請求項3】
前記オンライン光センサー(1)は、透明重合体板(5)との距離が10〜30mmであり、照度Lが最大で400000Luxであり、最小解像度が0.01Luxであることを特徴とする請求項1に記載の感光マイクロアレイのマクロホットエンボス成形のリアルタイム制御装置。
【請求項4】
前記オンライン光センサー(1)は、デジタル照度計であることを特徴とする請求項3に記載の感光マイクロアレイのマクロホットエンボス成形のリアルタイム制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のリアルタイム制御装置を用いた感光マイクロアレイのマクロホットエンボス成形のリアルタイム制御方法であって、
ホットエンボス過程に、オンライン光センサー(1)がそれに入射した光線の照度を感知し、照度データをリアルタイム分析及び制御システムにリアルタイムでフィードバックし、リアルタイム分析及び制御システムにおいて加工深さと品質の判断分析用のホットエンボス過程における照度−時間曲線を作成するステップと、
前記リアルタイム分析及び制御システムが、ホットエンボス成形過程における保圧時間終了時刻に対応する照度である重要点照度を、反復実験で得られた経験データベースと参照して比較し、比較結果に応じて対応するホットエンボスプロセスパラメータを調整するステップと、
前記リアルタイム分析及び制御システムが調整したプロセスパラメータをホットエンボス装置PLCに伝送し、ホットエンボス装置が調整したプロセスパラメータに基づいて次の透明重合体板のホットエンボス加工を行うように制御するステップとを含み、
上記ステップを繰り返して、ホットエンボス成形の重要点照度に対応する成形高さが予め設定された高さに徐々に近づいて最終的にそれに等しくなるようにし、ホットエンボスプロセス過程のアダプティブ制御を達成することを特徴とする感光マイクロアレイのマクロホットエンボス成形のリアルタイム制御方法。
【請求項6】
前記反復実験で得られた経験データベースの作成は、
表面にマイクロトレンチアレイを有するホットエンボス金型コアによりホットエンボスすることで様々の成形高さのマイクロ構造を得るとともに、様々な成形高さに対応するホットエンボスプロセスパラメータを記録するステップと、
マイクロ構造の様々な成形高さと照度Lとの対応関係を分析しフィッティングして、マイクロ構造の成形高さの経験式を取得するステップと、
測定した成形高さ、ホットエンボス成形過程における保圧時間終了時刻に対応する照度である重要点照度を対応する透明重合体板のホットエンボスプロセスパラメータと関連付けて、データの特徴量を抽出し、経験データベースを作成するステップとを含み、
前記経験式は、H=−aL+bであり、
式中、Lは、照度を示し、単位がLuxであり、Hは、透明重合体板表面のマイクロ構造の成形高さを示し、単位がμmであり、0.03≦a≦0.12、200μm≦b≦600μmである、ことを特徴とする請求項5に記載の感光マイクロアレイのマクロホットエンボス成形のリアルタイム制御方法。
【請求項7】
前記リアルタイム分析及び制御システムがホットエンボス過程における重要点照度を反復実験で得られた経験データベースと参照して比較し、比較結果に応じて対応するホットエンボスプロセスパラメータを調整するステップは、具体的には、
現在のホットエンボス成形過程における照度−時間曲線図を取得するステップと、
照度−時間曲線図における保圧時間終了時刻に対応する重要点照度を抽出するステップと、
抽出した重要点照度を経験データベースと参照して比較し、直前に抽出した重要点照度に対応するマイクロ構造の成形高さ、ホットエンボスプロセスパラメータを得るステップと、
当該直前に抽出した重要点照度に対応するマイクロ構造の成形高さが予め設定された高さと一致しないと、ホットエンボスプロセスパラメータを調整し、次の加工を行うステップとを含むことを特徴とする請求項5に記載の感光マイクロアレイのマクロホットエンボス成形のリアルタイム制御方法。
【請求項8】
前記ホットエンボスプロセスパラメータは、温度、圧力及び保圧時間を含むことを特徴とする請求項5に記載の感光マイクロアレイのマクロホットエンボス成形のリアルタイム制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズアレイ(Microlens array)の重合体基板のホットエンボスマイクロ成形のオンラインモニタリング及び知能故障診断の技術に関し、具体的には、ホットエンボスマイクロアレイのマイクロ成形に基づく高効率・高精度リアルタイム制御装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高精度マイクロアレイ構造基板は、LED照明、マイクロ流体チップ、太陽光発電、光電子などの分野に適用できる。マイクロレンズアレイの重合体基板の製造の低コスト化が産業化の主流となっている。重要な技術は、ミクロン、ひいてはナノのアレイ構造形態を光学レンズアレイの重合体基板の表面にどのように迅速に高精度でコピーするのかにある。現在、マイクロアレイ形態の検出は、物理的プローブ法及び白色光干渉法を用いて行われるが、マクロ表面のマイクロアレイの成形精度を検出しようとすると、極めて低い作業効率になってしまい、オンライン検出認識ができない。従って、製品のホットエンボス成形加工による生産過程では、マクロ表面のオンライン検出を追加して、ホットエンボス成形のプロセスパラメータをリアルタイムで調整し、マイクロレンズアレイ構造表面のマクロ製品の精密製造を行うことが求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、従来のホットエンボスマイクロアレイ成形形態の検出方法の効率が低いという欠陥を解決するために、感光マイクロアレイのマクロホットエンボス成形のリアルタイム制御装置及び方法を提供することであり、該方法及び装置は、透明重合体板表面のマイクロ構造の成形深さをオンラインで検出し、プロセスパラメータを知能的で自動的に調整し、マクロ製品表面のマイクロアレイに対するホットエンボス成形過程における知能制御を達成し、それにより生産コスト、手動デバッグによる時間やコストを大幅に削減させるとともに、加工品質及び効率を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記目的を達成させるために、下記技術案を採用する。
【0005】
感光マイクロアレイのマクロホットエンボス成形のリアルタイム制御装置であって、ホットエンボス装置下型板に設けられた感光システムと、リアルタイム分析及び制御システムとを備え、前記感光システムは、光源と、オンライン光センサーと、チャックとを備え、前記チャックが下型板に固定され、前記光源、オンライン光センサーがチャックに固定され、前記光源が透明重合体板の厚み方向の入光面に対向して設置され、オンライン光センサーが、透明重合体板の入光面の対向面と両側面のそれぞれに対向して設置され、リアルタイム分析及び制御システム回路に接続され、前記リアルタイム分析及び制御システムは、回路を介して光源、オンライン光センサー及びホットエンボス装置PLCのそれぞれに接続され、オンライン光センサーがリアルタイムで検出した光照射に応じてホットエンボス装置のホットエンボスパラメータを調整することに用いられる。
【0006】
さらに、前記光源は、LEDストリップライトである。
【0007】
さらに、前記オンライン光センサーは、透明重合体板との距離が10〜30mmであり、照度Lが最大で400000Luxであり、最小解像度が0.01Luxである。
【0008】
さらに、前記オンライン光センサーは、デジタル照度計である。
【0009】
前記リアルタイム制御装置を用いた感光マイクロアレイのマクロホットエンボス成形のリアルタイム制御方法であって、
ホットエンボス過程に、オンライン光センサーがそれに入射した光線照度を感知し、照度データをリアルタイム分析及び制御システムにリアルタイムでフィードバックし、リアルタイム分析及び制御システムにリアルタイムでフィードバックにおいて加工深さと品質の判断分析用のホットエンボス過程における照度−時間曲線を作成するステップと、
前記リアルタイム分析及び制御システムが、ホットエンボス成形過程における保圧時間終了時刻に対応する照度である重要点照度を、反復実験で得られた経験データベースと参照して比較し、比較結果に応じて対応するホットエンボスプロセスパラメータを調整するステップと、
前記リアルタイム分析及び制御システムが調整したプロセスパラメータをホットエンボス装置PLCに伝送し、ホットエンボス装置が調整したプロセスパラメータに基づいて次の透明重合体板のホットエンボス加工を行うように制御するステップとを含み、
上記ステップを繰り返して、ホットエンボス成形の重要点照度に対応する成形高さが予め設定された高さに徐々に近づいて最終的にそれに等しくなるようにし、ホットエンボスプロセス過程のアダプティブ制御を達成する。
【0010】
さらに、前記反復実験で得られた経験データベースの作成は、
表面にマイクロトレンチアレイを有するホットエンボス金型コアによりホットエンボスすることで様々な成形高さのマイクロ構造を得るとともに、様々な成形高さに対応するホットエンボスプロセスパラメータを記録するステップと、
マイクロ構造の様々な成形高さと照度との対応関係を分析しフィッティングして、マイクロ構造の成形高さの経験式を取得するステップと、
測定した成形高さ、ホットエンボス成形過程における保圧時間終了時刻に対応する照度である重要点照度を対応する透明重合体板のホットエンボスプロセスパラメータと関連付け、データをキャラクタリゼーションし、経験データベースを作成するステップとを含む。
前記経験式は、H=−aL+bであり、
式中、Lは、照度を示し、単位がLuxであり、Hは、透明重合体板表面のマイクロ構造の成形高さを示し、単位がμmであり、0.03≦a≦0.12、200μm≦b≦600μmである。
【0011】
さらに、前記リアルタイム分析及び制御システムがホットエンボス過程における重要点照度を反復実験で得られた経験データベースと参照して比較し、比較結果に応じて対応するホットエンボスプロセスパラメータを調整するステップは、具体的には、
現在のホットエンボス成形過程における照度−時間曲線図を取得するステップと、
照度−時間曲線図における保圧時間終了時刻に対応する重要点照度を抽出するステップと、
抽出した重要点照度を経験データベースと参照して比較し、直前に抽出した重要点照度に対応するマイクロ構造の成形高さ、ホットエンボスプロセスパラメータを得るステップと、
当該直前に抽出した重要点照度に対応するマイクロ構造の成形高さが予め設定された高さと一致しないと、ホットエンボスプロセスパラメータを調整し、次の加工を行うステップとを含む。
【0012】
さらに、前記ホットエンボスプロセスパラメータは、温度、圧力及び保圧時間を含む。
【0013】
本発明の作動原理は、以下のとおりである。ホットエンボス成形過程に、同じ表面構造のホットエンボス金型コアを用いても、異なるプロセスパラメータを用いて加工された透明重合体板表面のマイクロ構造の成形高さが多少異なる。ビームが異なる成形高さのマイクロアレイ構造を有する透明重合体板を透過するときに、そのマクロ表面のマイクロアレイ成形構造がビームの伝播方向及びルートを変えるため、透明重合体板の他の複数の側が受光する照度は、それに対応して変わる。複数の方向にリアルタイムで収集した感光ビッグデータを用いてデータ融合、特徴抽出を行い、元の経験データベースと比較し、マクロ薄板表面のマイクロアレイの高さや、マクロ成形の品質を判断し、マクロ変形を予測し、このように、圧力、温度、位置などのセンサー及びその閉ループ制御を必要とせず、ホットエンボスマイクロ成形プロセス及びパラメータを直接最適化させ、装置の故障の判断および予測を行う。
【発明の効果】
【0014】
従来技術に比べて、本発明は、以下の利点を有する。
【0015】
1.本発明は、オンライン感光システムで照度変化をリアルタイムでモニタリングし、透明重合体板表面のマイクロアレイの高さ変化の状況及び加工後の透明重合体板のマクロ変形状況をリアルタイムで示し、プロフィルメータで輪郭形状を検出し、マクロ変形を手動で観察する現状に比べて、観測効率を大幅に向上させ、デバッグ周期を短縮させ、それにより検出用の人件費、材料費や時間を削減させる。
【0016】
2.本発明は、リアルタイム分析及び制御システムでオンライン光センサーのデータに対してデータ融合、キャラクタリゼーション及び比較を行い、プロセスパラメータをリアルタイムで知能的に調整し、それによって、製品のマクロ表面のマイクロアレイ成形効果へのアダプティブ制御を実現し、生産コストを削減させ、加工品質及び効率を向上させる。
【0017】
3.本発明は、リアルタイム分析及び制御システムでプロセスパラメータを知能的に選択して調整し、圧力、温度、位置等のセンサー及びその閉ループ制御を必要とせず、ホットエンボスマイクロ成形プロセス及びパラメータを直接最適化させ、装置の故障を判断して予測する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】光線のマイクロ構造なしの透明重合体板における光路図
【
図3】光線のマイクロ構造付き透明重合体板における光路図
【
図5】透明重合体板のマイクロ構造の成形高さと光源の対向側の照度との関係の光学シミュレーション結果図(散布シミュレーション結果及びフィッティング曲線を含む)
【
図6】典型的なホットエンボス成形過程の照度−時間曲線図
【
図7】透明重合体板のマイクロ構造の成形高さと光源の対向側の照度との関係の実験結果図(スキャッタ実験データ及びフィッティング曲線を含む)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面及び実施例を参照しながら本発明についてさらに説明するが、本発明が特許請求する範囲は、これに限られない。
【0020】
図2及び
図3に示すように、異なる高さを有するマイクロ構造は、入射光線の光路に対して異なる影響を与える。入射光線4がマイクロ構造6なしの(マイクロ構造の高さが0μmである)透明重合体板5に照射されると、光線が透明重合体板5の上下平面に到達する入射角が大きいので、光線が全反射され、次にオンライン光センサー1のセンサーに照射し、オンライン光センサー1で受光した光線の数が多い。一方、完全に同じ入射光線4がマイクロ構造6付きの透明重合体板5に照射すると、マイクロ構造6は、入射光線4に対する屈折と反射によりその伝播方向を変更し、一部の入射光線をマイクロ構造の対向面(
図3には、上面)から射出させ、この結果、残りの一部の光線のみがオンライン光センサー1のセンサーに照射し、オンライン光センサー1の受光した光線の数が少なくなる。従って、マイクロ構造6なしの透明重合体板5に比べて、マイクロ構造6付きの透明重合体板5の右側のオンライン光センサー1の照度が小さい。
【0021】
図4に示すように、光学シミュレートソフトウェアTraceProを利用して本発明に記載の技術案の実行可能性を検証する。まず、表面にマイクロアレイ構造を有する13個の透明重合体板モデル8を作成し、具体的なパラメータは、以下のとおりである。
【表1】
【0022】
続いて、ホットエンボス成形をするときの透明重合体板の実際作業条件をシミュレートするために、透明重合体板モデル8の大きさに応じてその上下面に鋼質の上下型板モデル9を作成し、最後に、受光面モデル10を作成し、透明重合体板モデル8の左側に波長0.5μm、照度3W/m
2、光線数1,000,000本のランバート面光源モデル7を置く。
【0023】
図5に示すように、表面に異なる高さのマイクロ構造を有する透明重合体板モデル8を作成し、光線が複数種の透明重合体板の側面に入射された後に透過する光路をシミュレートすることにより、対応する照度(透明重合体板の面平均照度)を得る。分析をした結果、光線が光源モデル7から離れるに伴って、光線のエネルギーが減衰し、且つ透明重合体板のマイクロ構造の成形高さがほぼ照度に反比例し、すなわち、照度がマイクロ構造の成形高さの増加につれて減少する。減衰幅も徐々に減少する現象からわかるように、成形高さが小さいマイクロ構造を検出する場合、光学感光システムの感度は高く、逆には、感度は低下する。
【0024】
実施例1
図1に示すように、感光マイクロアレイのマクロホットエンボス成形のリアルタイム制御装置は、ホットエンボス装置下型板12に設けられた感光システムと、リアルタイム分析及び制御システムとを備え、前記感光システムは、光源3と、オンライン光センサー1と、チャック2とを備え、前記チャック2が下型板12に固定され、前記光源3、オンライン光センサー1がチャック2に固定され、前記光源3が定格電圧12VのLEDストリップライトであり、透明重合体板5の厚み方向の入光面に対向して設置され、オンライン光センサーが、透明重合体板5の入光面の対向面と両側面のそれぞれに対向して設置され、リアルタイム分析及び制御システム回路に接続されている。本実施例において、前記リアルタイム分析及び制御システムは、回路を介してオンライン光センサー1及びホットエンボス装置PLCのそれぞれに接続され、オンライン光センサー1がリアルタイムで検出した照度に応じてホットエンボス装置のホットエンボスパラメータを調整するためのコンピュータを用いる。
【0025】
前記オンライン光センサー1は、透明重合体板5との距離が10〜30mmであり、照度Lが最大で400000Luxであり、最小解像度が0.01Luxである。
【0026】
本実施例において、コンピュータは、データケーブルを介してシステムと感光システムを接続し、オンライン光センサー1は、それに入射した光線照度を感知し、照度データをコンピュータにリアルタイムでフィードバックすることができ、コンピュータにおいて、加工深さと品質に対する判断分析用の照度−時間曲線を作成することができる。コンピュータは、照度データを反復実験で得られた経験データベースと参照して比較し、調整を必要とするプロセスパラメータを知能的に判断し、ホットエンボス装置PLCに伝送し、ホットエンボス装置は、これに基づいて加工パラメータを修正して次の透明重合体板加工を行い、このように、ホットエンボスプロセス過程のアダプティブ制御が実現される。
【0027】
ホットエンボス装置の加工過程に、時々被加工物が金型コアに付着したり、位置ずれが発生したり、または機器が故障したりする場合があり、リアルタイム分析及び制御システムは、各点からフィードバックした照度の変化の傾向、変化速度、特に曲線における異常な変化状況に応じて、加工過程における異常状況を知能的に予測、判断することができる。
【0028】
実施例2
前記リアルタイム制御装置を用いた感光マイクロアレイのマクロホットエンボス成形のリアルタイム制御方法は、
ホットエンボス過程に、オンライン光センサー1がそれに入射した光線照度を感知し、照度データをリアルタイム分析及び制御システムにリアルタイムでフィードバックし、リアルタイム分析及び制御システムにおいて加工深さと品質の判断分析用のホットエンボス過程中の照度−時間曲線を作成するステップと、
前記リアルタイム分析及び制御システムが、ホットエンボス成形過程における保圧時間終了時刻に対応する照度である重要点照度を反復実験で得られた経験データベースと参照して比較し、比較結果に応じて対応するホットエンボスプロセスパラメータを調整するステップと、
前記リアルタイム分析及び制御システムが調整したプロセスパラメータをホットエンボス装置PLCに伝送し、ホットエンボス装置が調整したプロセスパラメータに基づいて次の透明重合体板のホットエンボス加工を行うように制御するステップとを含み、
上記ステップを繰り返して、ホットエンボス成形の重要点照度に対応する成形高さが予め設定された高さに徐々に近づいて最終的にそれに等しくなるようにし、ホットエンボスプロセス過程のアダプティブ制御を達成する。
【0029】
具体的には、前記反復実験で得られた経験データベースの作成は、
表面にマイクロトレンチアレイを有するホットエンボス金型コアをホットエンボスすることで様々な成形高さのマイクロ構造を得るとともに、TAYLOR HOBSONプロファイラーにより検出した様々な成形高さに対応するホットエンボスプロセスパラメータを記録するステップと、
マイクロ構造の様々な成形高さと照度との対応関係を分析しフィッティングして、マイクロ構造の成形高さの経験式を取得するステップと、
測定した成形高さ、ホットエンボス成形過程における保圧時間終了時刻に対応する照度である重要点照度を対応する透明重合体板5のホットエンボスプロセスパラメータと関連付け、データをキャラクタリゼーションし、経験データベースを作成するステップとを含む。
前記経験式は、H=−aL+bであり、
式中、Lは、照度を示し、単位がLuxであり、Hは、透明重合体板表面のマイクロ構造の成形高さを示し、単位がμmであり、0.03≦a≦0.12、200μm≦b≦600μmである。
【0030】
十分に反復実験をした後、測定した成形高さ、重要点照度を対応する透明重合体板5のプロセスパラメータと関連付け、ビッグデータをキャラクタリゼーションし、コンピュータに記憶し、それにより経験データベースを、後続のプロセスパラメータの知能調整及び故障判断診断の根拠として作成する。
【0031】
具体的には、前記リアルタイム分析及び制御システムが、ホットエンボス過程における重要点照度を反復実験で得られた経験データベースと参照して比較し、比較結果に応じて対応するホットエンボスプロセスパラメータを調整するステップは、具体的には、
現在のホットエンボス成形過程における照度−時間曲線図を取得するステップと、
照度−時間曲線図における保圧時間終了時刻に対応する重要点照度を抽出するステップと、
抽出した重要点照度を経験データベースと参照して比較し、直前に抽出した重要点照度に対応するマイクロ構造の成形高さ、ホットエンボスプロセスパラメータを得るステップと、
当該直前に抽出した重要点照度に対応するマイクロ構造の成形高さが予め設定された高さと一致しないと、ホットエンボスプロセスパラメータを調整し、次の加工を行うステップとを含む。
【0032】
本実施例において、ホットエンボス装置の稼動プラットフォームにおいてホットエンボスマイクロ構造の成形実験を行う。使用される透明重合体板5の寸法は、84×87×3mmであり、光源3は、定格電圧が12VのLEDストリップライトであり、オンライン光センサー1は、デジタル照度計である。オンライン光センサー1は、ホットエンボス過程の照度データをリアルタイムでモニタリングし、データをコンピュータに伝送し、コンピュータは、重要点照度を自動的に選択して記録する。外界からの光線の実験環境への入射による実験結果の精度への影響を防止するために、実験過程において、ホットエンボス装置の真空カバーを完全に閉じる必要がある。
【0033】
図6に示すように、a、b点のそれぞれは、加圧の開始点と終了点であり、a点以前の工程は、ホットエンボスプロセスの型閉じ過程であり、b点以降は、ホットエンボスプロセスの離型過程である。ホットエンボス下型板は、オイルポンプにより押されて上へ移動し、照度がまずゆっくりと増大してから迅速に減少し、透明重合体薄板がホットエンボス金型コアと接触すると、a点に達し、オイルポンプは、設定圧力で保圧し始まり、マイクロ構造は、徐々に成形される。保圧時間が終了すると、b点に達し、下型板は、元の位置に戻るまで下へ移動し、離型過程は、終了する。このため、b点は、離型前の最後の一瞬間であり、その照度がホットエンボス成形マイクロ構造の深さを示す。
【0034】
図7には、透明重合体板の側面の照度が、透明重合体板のマイクロ構造の成形高さに従う変化の関係は、上記実験により得られたものである。透明重合体板5における様々な高さのマイクロ構造は、表面にマイクロトレンチアレイを有する金型コア(角度120°、深さ100μm)でホットエンボスすることにより成形されており、対応する高さの値は、TAYLOR HOBSONプロファイラーにより測定された。分析した結果、透明重合体板5のマイクロ構造6の成形高さが70〜80μmの間である場合、照度の分布区間は、4400〜4500Luxである。つまり、ホットエンボス成形に上記照度を4400〜4500Lux範囲内に制御すれば、寸法が84×87×3mmの透明重合体板におけるマイクロ構造の成形高さが70〜80μmの間であることを確保できる。
図5の実験結果から、マイクロ構造の成形高さの経験式として、H=−0.05853L+344.6μmをフィッティングすることができる。さらに、該式から算出したところ、高さ70〜80μmのマイクロ構造アレイを有する透明重合体板の表面を検出するときの本発明の前記オンライン光センサー1の感度は、約17Lux/μmであった。
【0035】
実際加工過程に、オンライン光センサー1は、各点の照度の変化をリアルタイムでモニタリングしてコンピュータに伝送し、コンピュータは、照度の時間に対するExcelフォームを自動的に導出して分析ソフトウェアに入力する。重要点照度及び対応するプロセスパラメータをデータベースにおけるデータと比較し、分析ソフトウェアは、調整を必要とするパラメータ及び調整量を知能的に判断し、ホットエンボス装置PLCに自動的に伝送し、その後、新しいプロセスパラメータに従って次の加工を行う。それにより繰り返して、アダプティブ制御の効果を達成し、最終的に成形高さを所定の要求範囲に制御することができる。
【0036】
本発明の前記製品による感光マクロ表面のマイクロアレイ形態のホットエンボスマイクロ成形に対するオンライン制御機能を達成するために、以下の3点は、重要な技術である。
【0037】
1.光照射と透明重合体板表面のマイクロ構造の成形高さとの連結規則の作成
システムの感度及び精度を向上させるために、光源、および、オンライン光センサーが透明重合体板の四周における配置位置を合理的に選定してから実験を行う。
【0038】
2.ホットエンボス金型コアのマイクロ構造加工
透明重合体板表面に寸法が正確で品質に優れたマイクロアレイを加工するために、及び、光照射と透明重合体板表面のマイクロ構造の成形高さとの連結規則を作成するために、精密研削技術によりホットエンボス金型コア表面にマイクロトレンチアレイを加工し、ホットエンボス成形技術で表面に様々な高さマイクロ構造を有する一連の透明重合体板を製造する必要がある。
【0039】
3.リアルタイム分析及び制御システムの作成
プロセスパラメータをリアルタイムで分析して修正して最適な加工品質を実現するために、大量の反復実験を行って、照度、照度−時間変化曲線及びマイクロ構造の成形高さの関係を取得し、リアルタイム分析及び制御システムに対して元の経験データベースを作成して、後続加工においてデータ比較を行って適切なパラメータを選択するための根拠とする。
【0040】
以上は、本発明の好適な実施形態及び実施例であるが、本発明の実施形態は、上記内容に限定されず、本発明の主旨及び原理から逸脱することなく行われる他の変更、修飾、置換、組み合わせ、簡略化は、いずれも等価の置換方式であり、本発明の保護範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1−オンライン光センサー、2−チャック、3−光源、4−入射光線、5−透明重合体板、6−マイクロ構造、7−光源モデル、8−透明重合体板モデル、9−鋼質の上下型板モデル、10−受光面モデル、12−下型板。