特許第6694657号(P6694657)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6694657ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体およびその熱可塑性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6694657
(24)【登録日】2020年4月22日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体およびその熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/08 20060101AFI20200511BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20200511BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20200511BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20200511BHJP
   C08L 55/02 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   C08L51/08
   C08K3/32
   C08L67/00
   C08L69/00
   C08L55/02
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-250490(P2015-250490)
(22)【出願日】2015年12月22日
(65)【公開番号】特開2017-114994(P2017-114994A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】藤本 豊久
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−130485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L51
C08L101
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体100重量部と(B)リン酸化合物からなるpH緩衝剤0.1〜1.5重量部を含むポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体組成物であり、
(A)ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体が、(A)100重量%に対し、(a−1)ポリオルガノシロキサン粒子からなるコア層の重量比率が50〜95重量%であり、(a−2)ビニル単量体の重合体からなるグラフト層の重量比率が5〜50重量%であり、
(B)リン酸化合物からなるpH緩衝剤が、リン酸二水素アルカリ金属塩およびリン酸水素二アルカリ金属塩の混合物であることを特徴とするポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体組成物。
【請求項2】
(A)ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体100重量部と(B)リン酸化合物からなるpH緩衝剤0.1〜1.5重量部を含むポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体組成物であり、
(A)ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体が、(A)100重量%に対し、(a−1)ポリオルガノシロキサン粒子からなるコア層の重量比率が50〜95重量%であり、(a−2)ビニル単量体の重合体からなるグラフト層の重量比率が5〜50重量%であり、
(B)リン酸化合物からなるpH緩衝剤のpHが6.5〜7.0であることを特徴とするポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体組成物。
【請求項3】
(B)リン酸化合物からなるpH緩衝剤が、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸トリナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸トリカリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つからなることを特徴とする、請求項に記載のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体組成物。
【請求項4】
(A)ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体が、(a−1)ポリオルガノシロキサン粒子からなるコア層の重量比率が70〜85重量%であり、(a−2)ビニル単量体の重合体からなるグラフト層の重量比率が15〜30重量%であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体組成物。
【請求項5】
(B)リン酸化合物からなるpH緩衝剤の量が、0.1〜0.6重量部を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載のポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体組成物0.1〜10重量部、(C)熱可塑性樹脂100重量部を含み、
前記(C)熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂のアロイ、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂のアロイからなる群より選ばれる1種である熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性、耐衝撃性、耐熱性、湿熱老化特性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供するための、ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体に関する。また、ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂の用途、特に、電気電子用途においては、難燃性、耐衝撃性、耐熱性、湿熱老化特性といった様々な物性がバランスよく良好な熱可塑性樹脂組成物が求められている。
【0003】
熱可塑性樹脂の諸物性を改良するために、コアシェル構造を有するグラフト共重合体が用いられており、以下のような特許文献1や特許文献2のものが例示される。特許文献1には、ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体が開示されているが、このポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体では、湿熱老化特性の改善効果に課題があった。特許文献2には、pH緩衝剤を含むMBSコアシェルグラフトポリマーが開示されているが、このMBSコアシェルグラフトポリマーでは、難燃性の改善効果に課題があった。従来のグラフト共重合体は、難燃性、耐衝撃性、耐熱性および湿熱老化特性の全てを改善するものでなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−12910号公報
【特許文献2】特開平07−286087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のグラフト共重合体は、熱可塑性樹脂組成物に配合しても、難燃性、耐衝撃性、耐熱性および湿熱老化特性の全てを改善するものでなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、特定量のリン酸系化合物からなるpH緩衝剤を含み、特定の設計のポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体としたものである。
[1]すなわち、本発明は、(A)ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体100重量部と(B)リン酸化合物からなるpH緩衝剤0.1〜1.5重量部を含むポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体組成物であり、(A)ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体が、(A)100重量%に対し、(a−1)ポリオルガノシロキサン粒子からなるコア層の重量比率が50〜95重量%であり、(a−2)ビニル単量体の重合体からなるグラフト層の重量比率が5〜50重量%であることを特徴とするポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体組成物に関する。
[2]さらに本発明は、(B)リン酸化合物からなるpH緩衝剤が、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸トリナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸トリカリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つからなることを特徴とするポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体組成物に関する。
[3]さらに本発明は、(B)リン酸化合物からなるpH緩衝剤が、リン酸二水素アルカリ金属塩およびリン酸水素二アルカリ金属塩の混合物であることを特徴とするポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体組成物に関する。
[4]さらに本発明は、(B)リン酸化合物からなるpH緩衝剤のpHが6.5〜7.0であることを特徴とするポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体組成物に関する。
[5]さらに本発明は、(A)ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体が、(a−1)ポリオルガノシロキサン粒子からなるコア層の重量比率が70〜85重量%であり、(a−2)ビニル単量体の重合体からなるグラフト層の重量比率が15〜30重量%であることを特徴とするポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体組成物に関する。
[6]さらに本発明は、(B)リン酸化合物からなるpH緩衝剤の量が、0.1〜0.6重量部を含むことを特徴とするポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体組成物に関する。
[7]さらに本発明は、ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体組成物0.1〜10重量部、(C)熱可塑性樹脂100重量部を含む熱可塑性樹脂組成物に関する。
[8](C)熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂のアロイ、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂のアロイからなる群より選ばれる1種である熱可塑性樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体は、このような課題を解決するものであり、難燃性、耐衝撃性、耐熱性、湿熱老化特性に優れる樹脂組成物を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体組成物>
本発明のポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体組成物は、(A)ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体100重量部、(B)リン酸化合物からなるpH緩衝剤0.1〜1.5重量部を含む。
【0009】
<(A)ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体>
本発明の(A)ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体は、(a−1)ポリオルガノシロキサン粒子からなるコア層50〜95重量% と、(a−2)ビニル重合体からなるグラフト層5〜50重量%からなる。
【0010】
<(a−1)ポリオルガノシロキサン粒子からなるコア層>
(a−1)ポリオルガノシロキサン粒子からなるコア層を形成するポリオルガノシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン−アクリル酸ブチル共重合体などがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
<ポリオルガノシロキサン>
前記ポリオルガノシロキサンは、例えば、オルガノシロキサンおよび(または)2官能シラン化合物、ビニル系重合性基含有シラン化合物、必要に応じて使用される3官能以上のシラン化合物などからなるポリオルガノシロキサン形成成分を重合することによりうることができる。
【0012】
<オルガノシロキサンおよび(または)2官能シラン化合物>
前記オルガノシロキサンおよび(または)2官能シラン化合物は、ポリオルガノシロキサン鎖の主骨格を構成する成分であり、オルガノシロキサンの具体例としては、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン(D8)など、2官能シラン化合物の具体例としては、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシランなどがあげられる。
これらのなかでは、難燃性が良好という点からD4またはD3〜D7の混合物もしくはD3〜D8の混合物を70〜100%、さらには80〜100%を含み、残りの成分としてはジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどを0〜30%、さらには0〜20%含むものが好ましく用いられる。
【0013】
<ビニル系重合性基含有シラン化合物>
前記ビニル系重合性基含有シラン化合物は、前記オルガノシロキサン、2官能シラン化合物、3官能以上のシラン化合物などと共重合し、共重合体の側鎖または末端にビニル系重合性基を導入するための成分であり、このビニル系重合性基は後述するビニル系単量体から形成されるビニル系(共)重合体と化学結合する際のグラフト活性点として作用する。さらには、ラジカル重合開始剤によってグラフト活性点間をラジカル反応させて架橋結合を形成させることができ架橋剤としても使用できる成分でもある。このときのラジカル重合開始剤は後述のグラフト重合において使用されうるものと同じものが使用できる。なお、ラジカル反応によって架橋させたばあいでも、一部はグラフト活性点として残るのでグラフトは可能である。
【0014】
前記ビニル系重合性基含有シラン化合物の具体例としては、例えば、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシ基含有シラン化合物、p−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン、p−ビニルフェニルトリメトキシシランなどのビニルフェニル基含有シラン化合物、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基含有シラン化合物、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルジメトキシメチルシランなどのメルカプト基含有シラン化合物があげられる。これらのなかでは(メタ)アクリロイルオキシ基含有シラン化合物、ビニル基含有シラン化合物、メルカプト基含有シラン化合物が経済性の点から好ましく用いられる。
【0015】
なお、前記ビニル系重合性基含有シラン化合物がトリアルコキシシラン型であるばあいには、次に示す3官能以上のシラン化合物の役割も有する。
【0016】
<3官能以上のシラン化合物>
前記3官能以上のシラン化合物は、前記オルガノシロキサン、2官能シラン化合物、ビニル系重合性基含有シラン化合物などと共重合することによりポリオルガノシロキサンに架橋構造を導入してゴム弾性を付与するための成分、すなわちポリオルガノシロキサンの架橋剤として用いられる。具体例としては、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシランなどの4官能、3官能のアルコキシシラン化合物などがあげられる。これらのなかではテトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシランが架橋効率の高さの点から好ましく用いられる。
【0017】
<ポリオルガノシロキサン粒子の組成比>
前記オルガノシロキサン、2官能シラン化合物、ビニル系重合性基含有シラン化合物、および3官能以上のシラン化合物の重合時の使用割合は、通常、オルガノシロキサンおよび/または2官能シラン化合物(オルガノシロキサンと2官能シラン化合物との割合は、通常重量比で100/0〜0/100、さらには100/0〜70/30)50〜99.9%、さらには60〜99%、ビニル系重合性基含有シラン化合物0〜40%、さらには0.5〜30%、3官能以上のシラン化合物0〜50%、さらには0.5〜39%であるのが好ましい。なお、ビニル系重合性基含有シラン化合物、3官能以上のシラン化合物は同時に0%になることはなく、いずれかは0.1%以上使用するのが好ましい。
前記オルガノシロキサンおよび2官能シラン化合物の使用割合があまりにも少なすぎるばあいには、配合して得られた樹脂組成物が脆くなる傾向がある。また、あまりにも多いばあいは、ビニル系重合性基含有シラン化合物および3官能以上のシラン化合物の量が少なくなりすぎて、これらを使用する効果が発現されにくくなる傾向にある。また、前記ビニル系重合性基含有シラン化合物あるいは前記3官能以上のシラン化合物の割合があまりにも少ないばあいには、難燃性の発現効果が低くなり、また、あまりにも多いばあいには、配合して得られた樹脂組成物が脆くなる傾向がある。
【0018】
<ポリオルガノシロキサン粒子の他の形態>
本発明のポリオルガノシロキサン粒子は、ポリオルガノシロキサンのみからなるものであっても、ポリオルガノシロキサンとビニル重合体の複合体やポリオルガノシロキサンとビニル重合体の共重合体であってもよい。
前記ビニル重合体としては、ポリアクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル−スチレン共重合体が挙げられる。
【0019】
<乳化重合>
前記ポリオルガノシロキサン粒子は、例えば、前記オルガノシロキサンおよび(または)2官能シラン化合物、ビニル系重合性基含有シラン化合物、必要に応じて使用される3官能以上のシラン化合物からなるポリオルガノシロキサン形成成分を乳化重合することにより製造することが好ましい。
前記乳化重合は、例えば、前記ポリオルガノシロキサン形成成分および水を乳化剤の存在下で機械的剪断により水中に乳化分散して酸性状態にすることで行なうことができる。このばあい、機械的剪断により数μm以上の乳化液滴を調製したばあい、重合後にえられるポリオルガノシロキサン粒子の平均粒子径は使用する乳化剤の量により0.02〜0.6μmの範囲で制御することができる。
【0020】
<ポリオルガノシロキサン粒子からなるコア層の体積平均粒子径>
ポリオルガノシロキサン粒子からなるコア層の体積平均粒子径は、光散乱法または電子顕微鏡観察から求められ、難燃性および耐衝撃性の観点から、0.008〜0.6μmが好ましく、0.01〜0.3μm、さらには0.02〜0.1μm、とくには、0.03〜0.05μmであることが好ましい。
該平均粒子径が0.008μm未満では耐衝撃性が発現しない傾向にあり、また0.6μmをこえるばあいには、難燃性が悪くなる傾向にある。
【0021】
<乳化剤>
前記乳化重合では、酸性状態下で乳化能を失わない乳化剤を用いることが好ましい。具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸、アルキルスルホン酸ナトリウム、(ジ)アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウムなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかで、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸、アルキルスルホン酸ナトリウム、(ジ)アルキルスルホコハク酸ナトリウムがエマルジョンの乳化安定性が比較的高いことから好ましい。さらに、アルキルベンゼンスルホン酸およびアルキルスルホン酸はポリオルガノシロキサン形成成分の重合触媒としても作用するので特に好ましい。
【0022】
<酸性状態>
酸性状態は、系に硫酸や塩酸などの無機酸やアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸を添加することでえられ、pHは生産設備を腐食させないことや適度な重合速度がえられるという点で1〜3に調整することが好ましく、さらに1.0〜2.5に調整することがより好ましい。
【0023】
<重合温度>
重合のための加熱は適度な重合速度がえられるという点で60〜120℃が好ましく、70〜100℃がより好ましい。
【0024】
<中和>
なお、酸性状態下ではポリオルガノシロキサンの骨格を形成しているSi−O−Si結合は切断と生成の平衡状態にあり、この平衡は温度によって変化するので、ポリオルガノシロキサン鎖の安定化のために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ水溶液の添加により中和することが好ましい。さらには、該平衡は、低温になるほど生成側により、高分子量または高架橋度のものが生成しやすくなるので、高分子量または高架橋度のものをうるためには、ポリオルガノシロキサン形成成分の重合を60℃以上で行ったあと室温以下に冷却して5〜100時間程度保持してから中和することが好ましい。
かくして、えられるポリオルガノシロキサン粒子は、例えば、オルガノシロキサンおよび(または)2官能シラン化合物、ビニル系重合性基含有シラン化合物から形成されたばあい、それらは通常ランダムに共重合してビニル系重合性基を有した重合体となる。また、3官能以上のシラン化合物を共重合したばあい、架橋された網目構造を有したものとなる。さらに、後述するグラフト重合時に用いられるようなラジカル重合開始剤によってビニル系重合性基間をラジカル反応により架橋させたばあい、ビニル系重合性基間が化学結合した架橋構造を有し、かつ一部未反応のビニル系重合性基が残存したものとなる。
【0025】
<トルエン不溶分量>
本発明のポリオルガノシロキサン粒子のトルエン不溶分量は、ポリオルガノシロキサン粒子0.5gをトルエン80mlに、室温で24時間、浸漬した後、トルエン不溶分の乾燥後の重量を測定することにより、求められる。ポリオルガノシロキサンのトルエン不溶分量は、難燃性および耐衝撃性の観点から、50〜95重量%が好ましく、60〜90重量%がより好ましい。
【0026】
<ポリオルガノシロキサン粒子からなるコア層の重量比率>
(A)ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト重合体において、(a−1)ポリオルガノシロキサン粒子からなるコア層と(a−2)ビニル系単量体の重合体からなるグラフト層の重量比率としては、耐衝撃性と難燃性の観点から、(A)100重量%に対し、(a−1)50〜95重量%、(a−2)5〜50重量%が好ましく、(a−1)60〜90重量%、(a−2)10〜40重量%がより好ましく、(a−1)70〜85重量%、(a−2)15〜30重量%がさらに好ましい。
(A)ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体が、(A)100重量%に対し、(a−1)ポリオルガノシロキサン粒子からなるコア層の重量比率が50〜95重量%であり、(a−2)ビニル単量体の重合体からなるグラフト層の重量比率が5〜50重量%である
(a−1)ポリオルガノシロキサン粒子からなるコア層の重量比率が50重量%より低い場合には、熱可塑性樹脂組成物の難燃性が発現しない点から好ましくない。また、95重量%を超える場合には、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性や難燃性が発現しない。
【0027】
<(a−2)ビニル系単量体の重合体からなるグラフト層>
本発明の(a−2)ビニル系単量体の重合体からなるグラフト層を形成するためのビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、パラブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有ビニル系単量体などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記のビニル系単量体としては、耐衝撃性の観点から、メタクリル酸アルキル、芳香族ビニル系単量体が好ましく、スチレン、メタクリル酸メチルがより好ましい。
また、難燃性に優れることから、前記ビニル単量体の70重量%以上がメタクリル酸メチルであることが好ましく、80重量%以上がメタクリル酸メチルであることがより好ましく、90重量%以上がメタクリル酸メチルであることがさらに好ましく、95重量%以上がメタクリル酸メチルであることが特に好ましい。
【0028】
<グラフト重合>
前記グラフト重合は、通常の乳化重合が適用でき、ポリオルガノシロキサン粒子のラテックス中で前記ビニル系単量体のラジカル重合を行なえばよい。また、ビニル系単量体は、1段階で重合させてもよく2段階以上で重合させてもよい。
【0029】
<ラジカル重合>
前記ラジカル重合としては、ラジカル重合開始剤を熱分解することにより反応を進行させる方法でも、また、還元剤を使用するレドックス系での反応などとくに限定なく行なうことができる。
【0030】
<ラジカル重合開始剤>
ラジカル重合開始剤の具体例としては、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレイト、ラウロイルパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、シクロヘキサンノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドなどの有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物などがあげられる。このうち、反応性の高さから有機過酸化物または無機過酸化物が特に好ましい。
【0031】
<還元剤>
また、前記レドックス系で使用される還元剤としては硫酸第一鉄/グルコース/ピロリン酸ナトリウム、硫酸第一鉄/デキストロース/ピロリン酸ナトリウム、または硫酸第一鉄/ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート/エチレンジエアミン酢酸塩などの混合物などがあげられる。
【0032】
<ラジカル重合開始剤の量>
前記ラジカル重合開始剤の使用量は、用いられるポリオルガノシロキサン粒子100部に対して、通常、0.005〜20部、さらには0.01〜10部であり、とくには0.03〜5部であるのが好ましい。前記ラジカル重合開始剤の量が0.005部未満のばあいには反応速度が低く、生産効率がわるくなる傾向があり、20部をこえると反応中の発熱が大きくなり生産が難しくなる傾向がある。
【0033】
<連鎖移動剤>
また、ラジカル重合の際に要すれば連鎖移動剤も使用できる。該連鎖移動剤は通常の乳化重合で用いられているものであればよく、とくに限定はされない。
前記連鎖移動剤の具体例としては、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタンなどがあげられる。連鎖移動剤は任意成分であるが、使用するばあいの使用量は、ビニル系単量体100部に対して0.01〜5部であることが好ましい。前記連鎖移動剤の量が0.01部未満のばあいには用いた効果がえられず、5部をこえると重合速度が遅くなり生産効率が低くなる傾向がある。
【0034】
<重合時の反応温度>
また、重合時の反応温度は、通常30〜120℃であるのが好ましい。
前記重合では、ポリオルガノシロキサン粒子がビニル系重合性基を含有するばあいにはビニル系単量体がラジカル重合開始剤によって重合する際に、ポリオルガノシロキサン粒子のビニル系重合性基と反応することにより、グラフトが形成される。ポリオルガノシロキサン粒子にビニル重合性基が存在しない場合、特定のラジカル開始剤、例えば、t−ブチルパーオキシラウレートなどを用いれば、ケイ素原子に結合したメチル基などの有機基から水素を引く抜き、生成したラジカルによってビニル系単量体が重合しグラフトが形成される。
【0035】
<ビニル系重合性基含有シラン化合物>
また、ビニル系単量体のうちの0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%をビニル系重合性基含有シラン化合物を用いて重合し、pH5以下の酸性状態下で再分配反応させてもグラフトが生成する。これは、酸性状態ではポリオルガノシロキサンの主骨格のSi−O−Si結合は、切断と生成の平衡状態にあるので、この平衡状態でビニル系単量体とビニル系重合性基含有シラン化合物を共重合すると、重合によって生成中あるいは生成したビニル系共重合体の側鎖のシランがポリオルガノシロキサン鎖と反応してグラフトが生成するのである。該ビニル系重合性基含有シラン化合物は、ポリオルガノシロキサン粒子の製造時に必要あれば使用されるものと同じものでよく、該ビニル系重合性基含有シラン化合物の量が0.1重量%未満のばあいには、ビニル系単量体のグラフトする割合が低下し、10重量%をこえるばあいには、ラテックスの安定性が低くなる傾向にある。
【0036】
<フリーポリマー>
なお、ポリオルガノシロキサン粒子の存在下でのビニル系単量体の重合では、グラフト共重合体の枝にあたる部分(ここでは、ビニル系単量体の重合体)が幹成分(ここではポリオルガノシロキサン粒子)にグラフトせずに枝成分だけで単独に重合してえられるいわゆるフリーポリマーも副生し、グラフト共重合体とフリーポリマーの混合物としてえられるが、本発明においてはこの両者を併せてグラフト共重合体という。
【0037】
<グラフト共重合体の紛体>
乳化重合によってえられたグラフト共重合体からなる難燃剤は、ラテックスのまま使用してもよいが、適用範囲が広いことから、ラテックスからポリマーを分離して粉体として使用することが好ましい。ポリマーを分離する方法としては、通常の方法、例えば、ラテックスに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの金属塩を添加することによりラテックスを凝固、分離、水洗、脱水し、乾燥する方法があげられる。また、スプレー乾燥法も使用できる。
【0038】
<(B)リン酸化合物からなるpH緩衝剤:>
本発明の(B)リン酸化合物からなるpH緩衝剤は、リン酸化合物からなり、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸トリナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸トリカリウムが好ましい。
(B)pH緩衝剤のpHは、ポリカーボネート樹脂の湿熱老化特性を維持する観点から、中性付近に調整することが好ましく、pH6〜7.5に調整することが好ましく、pH6.5〜7.0に調整することが特に好ましい。
前記リン酸化合物の中でも、pHを中性付近に調整することが比較的容易であることからリン酸二水素アルカリ金属塩とリン酸水素二アルカリ金属塩を併用することが好ましく、その中でもリン酸二水素ナトリウムおよびリン酸水素二カリウムを併用することが特に好ましい。
また、本発明の(B)リン酸化合物からなるpH緩衝剤は、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウム、およびリン酸を混合して調製してもよい
本発明の(B)リン酸化合物からなるpH緩衝剤の含有量は、ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体組成物において、(A)ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体100重量部に対して、0.1重量部以上1.5重量部以下であることが好ましい。さらに0.2重量部以上1.2重量部以下であることが好ましく、0.3重量部以上1.0重量部以下であることがより好ましく、0.4重量部以上0.8重量部以下であることが特に好ましい。
pH緩衝剤が0.1重量部未満となると湿熱老化特性の改良効果が発現しにくい傾向にあり、また1.5重量部を超えると耐熱性等の物性が低下する傾向がある。
【0039】
<(B)リン酸化合物からなるpH緩衝剤の添加方法>
pH緩衝剤の添加方法については、pH緩衝剤の溶液、好ましくは水溶液を、ラテックス、スラリー、脱水樹脂、乾燥粉体のいずれかの状態のポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体に添加して、混合することができる。中でも、脱水樹脂あるいは乾燥粉体の状態に添加する方法が好ましい。
【0040】
<グラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物>
また、本発明は、(A)ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体と(B)pH緩衝剤を含むポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体組成物を(C)熱可塑性樹脂と配合した熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0041】
熱可塑性樹脂組成物は、さらに、(D)ポリテトラフルオロエチレン、(E)リン系難燃剤、(F)難燃助剤、(X)その他配合剤を含んでもよい。
【0042】
<(C)熱可塑性樹脂>
前記(C)熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂(PC樹脂)、ナイロン等のポリアミド系樹脂(PA樹脂)、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(PET樹脂)、ポリブチレンテレフタレート系樹脂(PBT樹脂)、ポリ乳酸(PLA)等のポリヒドロキシアルカノエート系樹脂(PHA樹脂)、ポリスチレン系樹脂(PS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂(PVC樹脂)、ポリフェニレンスルフィド系樹脂(PPS樹脂)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE樹脂)や、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体系樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリルスチレンアクリレート共重合体系樹脂(ASA樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体系樹脂(AS樹脂)、ポリサルフォン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(PO樹脂)が好ましく用いられる。
また、PC樹脂/ABS樹脂、PC樹脂/ASA樹脂、PC樹脂/PLA樹脂、PC樹脂/PET樹脂、PC樹脂/PBT樹脂、PPE樹脂/PS樹脂、PPE樹脂/PO樹脂などのポリマーアロイ樹脂も好ましく用いられる。
【0043】
本発明の(C)熱可塑性樹脂としては、電気・電子用途において、難燃性、耐衝撃性、及び耐熱性に優れるPC樹脂のアロイ、電気特性に優れるPBT樹脂、又は電気特性と耐熱性に優れるPPE樹脂/PS樹脂のアロイを適宜必要に応じて使うことが好ましい。
なかでも、本発明の(C)熱可塑性樹脂として、最も広範に使用できるのは、PC樹脂のアロイである。PC樹脂のアロイとしては、成形性とコストのバランスに優れるPC樹脂/ABS樹脂のアロイ、環境循環サイクルへの貢献できるPC樹脂/PLA樹脂のアロイ、成形性に優れるPC樹脂/PBT樹脂のアロイが好ましい。
【0044】
これらの(C)熱可塑性樹脂の中でも、耐衝撃性と難燃性、耐熱性、耐久性のバランスに優れる観点から、PC樹脂、PC樹脂/ABS樹脂のアロイ、PC樹脂/PBT樹脂のアロイ、PC樹脂/PET樹脂のアロイが特に好ましい。
【0045】
<(D)ポリテトラフルオロエチレン>
本発明の樹脂組成物は、特にUL−94試験等の試験方法で試験が可能な燃焼時の滴下につき防止効果を得る観点から、滴下防止剤として、フッ素樹脂、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むことが好ましい。このようなPTFEとしては、繊維形成型のものが好ましく、フッ素の含有量が73重量%程度のものが好ましく、重量平均分子量が500万のものが好適である。具体的には、ダイキン工業株式会社製の、商品名:ポリフロンFA−500(登録商標)や商品名:MPA−FA100、商品名:ポリフロンFA−500(登録商標)や商品名:MPA FA100、三井デュポンフロロケミカル株式会社製の、商品名:PTFE6−Jなどがある。PTFEはハンドリング性が悪いため、ハンドリング性を重視する場合にはPTFEを他の樹脂で被覆した被覆PTFEを使用することも出来る。具体的には、三菱レイヨン株式会社製の、商品名:メタブレンA−3800(被覆PTFE中のPTFEの含有比率は50重量%である)、PIC社製の、商品名:Poly TS AD001などが挙げられる。燃焼時に滴下が問題となる場合に、その防止効果が有効に得られるように、また成型時の流動性を確保するために、前記PTFE(被覆PTFEの場合には該被覆PTFE中のPTFE成分)の添加量は、マトリクス樹脂100重量部当たり、0.1〜2重量部であることを要し、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.6重量部以下である。
【0046】
<(E)リン系難燃剤>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(C)熱可塑性樹脂100重量部に対し、(E)リン系難燃剤0〜25重量部を含んでもよい。
前記(E)リン系難燃剤としては、(E1)赤リン、(E2)無機リン化合物、(E3)有機リン化合物等を挙げることができるが、ハロゲン原子を含まないものが焼却処分時の燃焼排ガス問題の側面から好ましく、また、埋め立て処分時の地下水への溶出問題や取り扱い時の安全性の観点から、より好ましくはリン酸エステル、縮合リン酸エステル、亜リン酸エステル、縮合亜リン酸エステル、有機ホスフォン酸エステルであり、さらに好ましくはリン酸エステル、縮合リン酸エステルであり、特に好ましくは縮合リン酸エステルであり、最も好ましくは縮合リン酸エステルのポリマー、又は、前記リン酸エステル、又は前記有機ホスフォン酸エステルである。
【0047】
<(E1)赤リン>
前記(E1)赤リンとしては、一般に知られる赤リンの他に、その表面を予め後述する難燃助剤である金属水酸化物の被膜を形成したもの、該金属水酸化物、及び熱硬化性樹脂からなる被膜を形成したもの、該金属水酸化物の被膜上に熱硬化性樹脂の被膜を二重に形成したもの等を挙げることができる。
【0048】
<(E2)無機リン化合物>
前記(E2)無機リン化合物としては、ポリリン酸アンモニウムなどの無機系リン酸塩等を挙げることができる。
【0049】
<(E3)有機リン化合物>
前記(E3)有機リン化合物としては、(E3−1)リン酸エステル、(E3−2)縮合リン酸エステル、(E3−3)亜リン酸エステル、(E3−4)縮合亜リン酸エステル及びその芳香環ハロゲン置換化合物、(E3−5)含ハロゲンリン酸エステル、(E3−6)含ハロゲン縮合リン酸エステル、(E3−7)窒素含有リン酸エステル、(E3−8)有機ホスフォン酸エステル等の有機リン酸エステルの他、(E3−9)ホスフィン、(E3−10)ホスフィンオキシド、(E3−11)ホスフォン酸塩、(E3−12)ホスファゼン、ホスホルアミド、有機ホスフォニウム塩等のリン酸化合物が挙げられる。
難燃性に優れ、かつ成型時の金型腐食や難燃性の経時変化が抑制できることから、好ましくは(E3−2)縮合リン酸エステル、(E3−4)縮合亜リン酸エステルである。
例えば、レゾルシンポリフォスフェートであり、具体的には、旭電化工業社製のアデカスタブPFRやアデカスタブFP500、大八化学工業社製のCR−741、PX−200、PX−202等が好ましく用いられる。
【0050】
<(E3−1)リン酸エステル>
前記リン酸エステルとしては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、2−エチルヘキシルジ(p−トリル)ホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)p−トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ジ(ドデシル)p−トリルホスフェート、トリス(2−ブトキシエチル)ホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、フェニルビスドデシルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、p−トリルビス(2,5,5’−トリメチルヘキシル)ホスフェート、クレジル−2,6−キシレニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(i−プロピルフェニル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)フェニルホスフェート、トリ(ノニルフェニル)ホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェート、チオリン酸エステル等が挙げられる。
【0051】
<(E3−2)縮合リン酸エステル>
前記縮合リン酸エステルとしては、1,3−フェニレン ビス(ジフェニルホスフェート)、1,4−フェニレン ビス(ジキシレニルホスフェート)、1,3−フェニレン ビス(3,5,5’−トリメチルヘキシルホスフェート)、ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)、4,4’−ビフェニル ビス(ジキシレニルホスフェート)、1,3,5−フェニレン トリス(ジキシレニルホスフェート)等が挙げられる。
【0052】
<(E3−3)亜リン酸エステル>
前記亜リン酸エステルとしては、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト等が挙げられる。
【0053】
<(E3−4)縮合亜リン酸エステル>
前記縮合亜リン酸エステルとしては、1,3−フェニレン ビス(ジフェニルホスファイト)、1,3−フェニレン ビス(ジキシレニルホスファイト)、1,4−フェニレン ビス(3,5,5’−トリメチルヘキシルホスファイト)、ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスファイト)、4,4’−ビフェニル ビス(ジキシレニルホスファイト)、1,3,5−フェニレン トリス(ジキシレニルホスファイト)等が挙げられ、前記縮合亜リン酸エステルの芳香環ハロゲン置換化合物は、これらの化合物の芳香環ハロゲン置換化合物である。
【0054】
<(E3−5)含ハロゲンリン酸エステル>
前記含ハロゲンリン酸エステルとしては、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、2−クロロエチルジフェニルホスフェート等が挙げられる。
【0055】
<(E3−6)含ハロゲン縮合リン酸エステル>
前記含ハロゲン縮合リン酸エステルとしては、2,2−ビス(クロロメチル)トリメチレン ビス(ビス(2−クロロエチル)ホスフェート)、ポリオキシアルキレン ビスジクロロアルキルホスフェート等が挙げられる。
【0056】
<(E3−7)窒素含有リン酸エステル>
前記窒素含有リン酸エステルとしては、メラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、メラミンポリホスフェート、リン酸エステルモボリド等が挙げられる。
【0057】
<(E3−8)有機ホスフォン酸エステル>
前記有機ホスフォン酸エステルとしては、メチルホスフォン酸ジフェニル、エチルホスフォン酸ジエチル、フェニルホスフォン酸ジエチル、チオホスフォン酸エステル等が挙げられる。
【0058】
<(E3−9)ホスフィン>
前記ホスフィンとしては、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)−2,2−ジメチルプロパン等の他、ジクロロフェニルホスフィン等のハロゲン化物等が挙げられる。
【0059】
<(E3−10)ホスフィンオキシド>
前記ホスフィンオキシドとしては、ホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリ−n−オクチルホスフィンオキシド、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイド、n−ブチル−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイド、トリス(2−シアノエチル)ホスフィンオキサイド、チオホスフィンオキサイド等の他、ジクロロプロピルホスフィンオキシド、ジクロロイソプロピルホスフィンオキシド等のハロゲン化物等が挙げられる。
【0060】
<(E3−11)ホスフォン酸塩>
前記ホスフォン酸塩としては、ニトリロトリスメチレンホスフォン酸メラミン付加物等が挙げられる。
【0061】
<(E3−12)ホスファゼン>
前記ホスファゼンとしては、環状フェノキシホスファゼン、環状ホスファゼンオリゴマー化合物、フォスフォニトリリッククロライド等が挙げられる。
【0062】
<(F)難燃助剤>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、より難燃性を高めるために、(F)難燃助剤を含んでもよい。(F)難燃助剤は、(F1)金属塩、(F2)金属酸化物、(F3)シリコーン化合物、(F4)アンチモン系難燃助剤、及び(F5)金属水酸化物が挙げられる。その中でも、難燃助剤としての効果が高い金属塩がより好ましい。
【0063】
また、(F)難燃助剤は、熱可塑性樹脂組成物の難燃性の観点から、(E)リン系難燃剤と併用することが好ましい。
(F)難燃助剤の添加量は、難燃性と機械的特性の観点から、(C)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.001〜5重量部が好ましく、0.1〜3重量部がより好ましく、0.2〜1重量部がさらに好ましく、0.3〜0.6重量部が特に好ましい。
【0064】
<(F1)金属塩>
前記(F1)金属塩としては、炭酸コバルト、炭酸ニッケル、炭酸銅、炭酸アルミニウム、炭酸亜鉛等の炭酸金属塩;ホウ酸亜鉛等のホウ酸金属塩;有機金属塩等が挙げられる。
中でも、(F1)金属塩としては、スルホン酸金属塩、硫酸モノエステル金属塩、スルホンアミド金属塩等の硫黄含有有機金属塩;芳香族スルホイミド、芳香族スルホンスルホン酸、パーフルオロアルカンスルホン酸、及び芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩等の有機アルカリ金属塩等の有機金属塩が好ましく、(C)熱可塑性樹脂が芳香族系のPC樹脂あるいはPC樹脂のアロイである場合には、難燃性の観点から、硫黄含有有機金属塩が特に好ましい。
【0065】
<硫黄含有有機金属塩>
前記硫黄含有有機金属塩としては、スルホン酸金属塩、硫酸モノエステル金属塩、スルホンアミド金属塩等が挙げられる。
このうち、難燃性の観点から、スルホン酸金属塩が好ましく、(アルキル)芳香族スルホン酸金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩、脂肪族スルホン酸金属塩、ジアリールスルホンスルホン酸金属塩、アルキル硫酸金属塩がより好ましく、難燃性が少量で良好になるという点から特に好ましくはパーフルオロブタンスルホン酸カリウムであり、また、ハロゲンを含まないことおよび難燃性が少量で良好になるという点から特に好ましくはジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ドデシル基は分岐型及び/または直鎖型である)、キシレンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウムであり、最も好ましくは工業的に安価に入手して利用できることからドデシルベンゼンスルホン酸に代表される(アルキル)芳香族スルホン酸のナトリウム塩(例えば、アルキル基の平均鎖長が12であるアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムである花王株式会社製ネオペレックスG−15(登録商標)、もしくはキシレンスルホン酸ナトリウムであるテイカ株式会社製テイカトックスN1140(登録商標)、クメンスルホン酸ナトリウムであるテイカ株式会社製テイカトックスN5040(登録商標))である。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
<スルホンアミド金属塩>
前記スルホンアミド金属塩としては、サッカリンのナトリウム塩、N−(p−トリルスルホニル)−p−トルエンスルホイミドのナトリウム塩、N−(N‘−ペンジルアミノカルボニル)スルファニルイミドのナトリウム塩、N−(フェニルカルボキシル)−スルファニルイミドのナトリウム塩等;(アルキル)芳香族スルホン酸金属塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウム等;パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩としては、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロメチルブタンスルホン酸カリウム等;
脂肪族スルホン酸金属塩としては、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルポコハク酸ナトリウム等;ジアリールスルホンスルホン酸金属塩としては、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、4,4Lジブロモジフェニルースルホン−3−スルホン酸カリウム、4−クロロ−4‘−ニトロジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸カリウム等;アルキル硫酸金属塩としてはドデシル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0067】
<金属塩の金属>
前記金属塩の金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム等が好ましく、ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、セシウムがより好ましく、ナトリウム、カリウムが特に好ましい。
【0068】
<(F2)金属酸化物>
前記(F2)金属酸化物としては、酸化チタン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等が挙げられる。
【0069】
<(F3)シリコーン化合物>
前記(F3)シリコーン化合物としては、分子量、及びそれを構成するM単位、D単位、T単位及びQ単位を適宜調整したものを使用することが好ましく、そのためにジオルガノジクロロシラン、モノオルガノトリクロロシラン、及びテトラクロロシランや、それらの部分加水分解縮合物の適量を有機溶剤中に溶解し、水を添加して加水分解して、部分的に縮合することでシリコーン化合物を形成し、さらにトリオルガノクロロシランを添加して反応させることによって、重合を終了させ、その後、溶媒を蒸留等で分離することで得られるものが挙げられる。
【0070】
<(F4)アンチモン系難燃助剤>
前記(F4)アンチモン系難燃助剤としては、三酸化二アンチモン、四酸化二アンチモン、五酸化二アンチモン等が挙げられるが、好ましくは三酸化二アンチモンであり、より好ましくは、アルコキシシランで表面処理を施した三酸化二アンチモンである。
【0071】
<(F5)金属水酸化物>
前記(F5)金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等が挙げられる。
【0072】
<エポキシ基含有化合物、カルボジイミド含有化合物の添加>
(C)熱可塑性樹脂として、加水分解性の樹脂、例えば、PLA樹脂などのポリヒドロキシアルカノエート樹脂を用いる場合には、(C)熱可塑性樹脂の加水分解を抑制する為に、エポキシ基含有化合物やカルボジイミド含有化合物を配合してもよい。
【0073】
<(X)その他配合剤>
本発明の樹脂組成物には、通常使用される配合剤を適宜添加することができる。そのような添加剤としては、繊維強化剤、充填剤、酸化防止剤、着色剤、顔料、導電性付与剤、伝熱性付与剤、加水分解抑制剤、増粘剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、流動性改良剤、離型剤、相溶化剤、充填剤とマトリックス樹脂とのカップリング剤、熱安定剤、摺動性付与剤等が挙げられる。
【0074】
<混合方法>
本発明の樹脂組成物の各成分の混合は、公知の混練機械によって行なうことができる。このような混練機械としてはミキシングロール、カレンダーロール、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、ニーダー、押出機、ブロー成形機、インフレーション成形機等を挙げることができる。
【0075】
<成形品>
本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、住宅・建材用途、電気・電子用途、自動車用途等の部材として適宜使用できるが、耐衝撃性や難燃性、耐久性に優れることから、好ましくは電子機器筐体、電子機器内部部品、自動車構造部材、自動車内装部品、及び光反射板に使用される。
【0076】
<成型法>
本発明の樹脂組成物の成形法としては、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法、回転成形法などを適用することができる。
【実施例】
【0077】
以下では、本発明をより具体的に表す実施例を説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。なお、以下における測定および試験はつぎのように行った。
(重合転化率)
得られたラテックスの一部を採取・精秤し、130℃の熱風乾燥器中で1時間乾燥後の固形分量を精秤することでラテックス中の固形成分比率を求めた。
(体積平均粒子径)
シードポリマー、ポリオルガノシロキサン粒子およびグラフト共重合体の体積平均粒子径をラテックスの状態で測定した。測定装置として、日機装株式会社製のMICROTRACUPA150を用いて体積平均粒子径(μm)を測定した。
(耐衝撃性)
ASTMD−256に準じて、1/8バーを用いてアイゾット試験により評価した。
(耐熱性)
ASTM D648に準じ、測定荷重1.8MPaで評価した。また試験は1/4バーを使用して実施した。
(難燃性)
UL94 V試験に準拠した垂直燃焼試験法にて、5サンプルの総燃焼時間を測定して評価した。
(成形加工性)
メルトフローインデックスを260℃、5kg/cm2荷重で測定した。
(湿熱老化)
1/8バーを90℃95%RH環境下で放置し、一定時間経過後にアイゾット試験により耐衝撃性を評価した。
【0078】
(製造例1)
イオン交換水200重量部、アルキル基の平均鎖長が12のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)1重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸
(DBSA)1重量部、平均分子量2000の末端ジヒドロキシポリジメチルシロキサン(DHPDMS)97.5重量部、及びγ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン(DSMA)2.5重量部からなる混合物を、ホモミキサーにより10000rpmで5分間撹搾後、高圧ホモジナイザーに500barの圧力下で3回通過させてシロキサンエマルジョンを調製した。このエマルジョンを速やかに撹搾機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5ロフラスコに一括して仕込んだ。系を撹搾しながら、30℃で6時間反応させた。その後、23℃に冷却して20時間放置後、系のpHを3重量%炭酸水素ナトリウム水溶液で6.8にして重合を終了し、ポリオルガノシロキサン粒子を含むラテックスを得た。重合転化率は97%、ポリオルガノシロキサン粒子のラテックスの体積平均粒子径は0.28μm、ポリオルガノシロキサン粒子の重量平均分子量は23万であった。
【0079】
撹搾機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口および温度計を備えた5ロフラスコに、イオン交換水240重量部(オルガノシロキサン粒子を含むラテックスからの持ち込み分を含む)、及び上記ポリオルガノシロキサン粒子のラテックスを固形分相当で83.5重量部を仕込み、系を撹搾しながら窒素気流下に重合である温度60℃まで昇温した。その温度に到達してから1時間後に、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.25重量部、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(EDTA)0.002重量部、及び硫酸第一鉄0.0005重量部を添加したのち、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)2重量部、及びクメンハイドロパーオキサイド(CHP)0.05重量部からなるグラフト単量体の混合物を一括で追加し、30分間撹搾を続けた。
【0080】
その後、さらにクメンハイドロパーオキサイドを0.04重量部添加して30分間撹搾した後、メチルメタクリレート(MMA)14.5重量部、2−エチルヘキシルチオグリコレート(2EHTG)0.06重量部、及びCHP0.145重量部からなるグラフト単量体の混合物を20重量部/時間の追加速度で滴下追加した。追加終了後、さらに2時間撹搾を続け、さらにCHP0.05重量部を添加してから30分間撹搾を続けることによってポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体(A−1)のラテックスを得た。グラフト成分すべての重合転化率は100%であり、ラテックスの体積平均粒子径は0.30μmであった。
【0081】
70℃に加温しミスト状に噴霧した前記ラテックスに、90℃に加温しミスト状に噴霧した10重量%塩化カルシウム水溶液を固形分で4重量部相当となるように接触させて、凝固スラリーを得た。得られた凝固スラリーを125℃まで加熱し、2分間保持した後、50℃まで冷却して脱水、樹脂量の15倍の水で2回洗浄した。続いて、洗浄後の樹脂(ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体100重量部を含む)に、pH緩衝剤であるリン酸水素二カリウムとリン酸二水素ナトリウムを43/57重量%の比率で混合した7%水溶液7.85重量部(pH緩衝剤0.55重量部を含む)を添加した。その後、乾燥させて、ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体(A−1)100重量部および(B)pH緩衝剤0.55重量部からなる組成物の粉体を得た。なお、(B)pH緩衝剤0.55重量部は、リン酸水素二カリウム0.24重量部とリン酸二水素ナトリウム0.31重量部の混合物からなる。
【0082】
(製造例2)
テトラエトキシシラン1.9部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン0.5部およびオクタメチルシクロテトラシロキサン97.6部を混合し、シロキサン混合物100部を得た。ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびドデシルベンゼンスルホン酸をそれぞれ1部を溶解した蒸留水200部に上記混合シロキサン100部を加え、ホモミキサーにて10,000rpmで予備攪拌した後、ホモジナイザーにより300kg/cm2 の圧力で乳化、分散させ、オルガノシロキサンラテックスを得た。この混合液をコンデンサーおよび攪拌翼を備えたセパラブルフラスコに移し、混合攪拌しながら80℃で5時間加熱した後20℃で放置し、48時間後に水酸化ナトリウム水溶液でこのラテックスのpHを7.4に中和し、重合を完結しポリオルガノシロキサン粒子を含むラテックスを得た。得られたポリオルガノシロキサン粒子の重合率は89.5%であり、ポリオルガノシロキサン粒子の平均粒子径は0.18μmであった。
【0083】
上記ポリオルガノシロキサン粒子を含むラテックスを固形分で80部採取し攪拌機を備えたセパラブルフラスコにいれ、蒸留水100部を加え、窒素置換をしてから50℃に昇温し、n−ブチルアクリレート9.8部、アリルメタクリレート0.2部およびtert−ブチルヒドロペルオキシド0.56部の混合液を仕込み30分間攪拌し、この混合液をポリオルガノシロキサン粒子に浸透させた。次いで、硫酸第1鉄0.002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.006部、ロンガリット0.26部および蒸留水5部の混合液を仕込み、ラジカル重合を開始させ、その後内温70℃で2時間保持し重合を完了して複合ゴムラテックスを得た。この複合ゴムラテックスを一部採取し、複合ゴムの平均粒子径を測定したところ0.22μmであった。
【0084】
この複合ゴムラテックスの固形分90重行部に対して、tert−ブチルヒドロペルオキシド0.06部とメチルメタクリレート10部との混合液を70℃にて15分間にわたり滴下し、その後70℃で4時間保持し、複合ゴムへのグラフト重合を完了した。メチルメタクリレートの重合率は、96.4%であった。得られたグラフト共重合体ラテックスを塩化カルシウム1.5重量%の熱水200部中に滴下し、凝固、分離し洗浄した。続いて、リン酸水素二カリウムとリン酸二水素ナトリウム(43/57重量%)からなるpH緩衝剤をグラフト共重合体に対して0.55重量部添加した後、乾燥させてポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体(A−2)100重量部および(B)pH緩衝剤0.55重量部からなる組成物の粉体を得た。
【0085】
(製造例3)
製造例1において、リン酸水素二カリウムとリン酸二水素ナトリウム(43/57重量%)からなるpH緩衝剤を0.05重量部添加したこと以外は製造例1と同様にして製造し、ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体(A−3)100重量部および(B)pH緩衝剤0.05重量部からなる組成物の紛体を得た。
【0086】
(製造例4)
製造例2において、リン酸水素二カリウムとリン酸二水素ナトリウム(43/57重量%)からなるpH緩衝剤を2.0重量部添加したこと以外は製造例1と同様にして製造し、ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体(A−4)100重量部および(B)pH緩衝剤2.0重量部からなる組成物の紛体を得た。
【0087】
(製造例5)
ポリオルガノシロキサン粒子を含むラテックスを固形分で80部から10部、n−ブチルアクリレートを9.8部から79.8部に変更した以外は製造例2と同様にしてポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体(A−5)100重量部および(B)pH緩衝剤0.55重量部からなる組成物を製造した。
【0088】
(製造例6)
撹拌機付耐圧容器に 純水200部、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム塩0.002部、硫酸第一鉄0.0012部、エチレンジアミンテトラ酢酸ジナトリウム塩0.008部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム0.025部、を仕込み、脱酸した後に、ブタジエン100部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.05部、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.2部、を添加し、それから6時間かけてポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウムを1.4部滴下した後、50℃で24時間保持し、転化率98重量%で、体積平均粒子径0.2μmのジエン系ゴムのラテックスを得た。
【0089】
前記ジエン系ゴムのラテックス(ジエン系ゴムの固形分78部)を60℃に保持しながら、単量体としてのメタクリル酸メチル17部、スチレン5部、を1時間にわたって添加した。また上記単量体の添加と同時に、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.07部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1部、の添加を開始し、温度を約60℃に保ちながら2時間かけて全量を添加した。さらに反応溶液を、約60℃で1時間保持して、体積平均粒子径0.22μmのブタジエン系ゴムグラフト共重合体のラテックスを得た。
【0090】
このブタジエン系ゴムのグラフト共重合体のラテックスに、フェノール系の抗酸化剤であるIRGANOX−1076〔n−オクタデシル−3−(3‘,5’,ジ−t−ブチル−4‘−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕2部を添加した後、塩化カルシウム水溶液で凝析を行い、水洗、脱水をした。続いて得られたウェット樹脂にリン酸水素二カリウムとリン酸二水素ナトリウムを43/57重量%の比率で混合した7%水溶液をグラフト共重合体100重量部に対して固形分で0.55重量部となるように添加した。その後、乾燥させてブタジエン系ゴムグラフト共重合体(A−6)100重量部および(B)pH緩衝剤0.55重量部からなる組成物の粉体を得た。
【0091】
表1に、ポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体組成物(A−1)〜(A−6)の組成についてまとめた。
【0092】
【表1】
【0093】
(実施例1,2、比較例1〜4)
製造例1〜5で得られたポリオルガノシロキサン粒子含有グラフト共重合体組成物、製造例6で得られたブタジエン系ゴムグラフト共重合体組成物、(C)熱可塑性樹脂としてポリカーボネート樹脂(出光興産株式会社製、商品名:タフロンA2200)、(D)ポリテトラフルオロエチレンとしてPTFE(ダイキン工業株式会社製、ポリフロンFA−500(登録商標))を表2に示す割合で配合して樹脂組成物を得た。
【0094】
得られた各々の樹脂組成物を2軸押出機(株式会社日本製鋼所製TEX44SS)で270℃にて溶融混錬し、ペレットを製造した。
得られたペレットを用いて、シリンダー温度280℃に設定した株式会社ファナック(FANUC)製のFAS100B射出成形機で、厚さ1/8インチの難燃性評価用試験片、耐衝撃性試験片、および厚さ1/4インチの耐熱性試験片を作製した。得られた試験片を用いて前記評価方法に従って評価した。結果を表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
表2に示すとおり、実施例は比較例に比べて、難燃性、耐熱性、湿熱老化性、耐衝撃性に優れることが分かる。