(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
型開きと共に、前記複数のスライド部材を外周方向へスライドさせ、型締めと共に、前記複数のスライド部材を中心へスライドさせ、型締め状態において前記複数のスライド部材の移動を規制する複数のロック部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の金型装置。
前記複数のスライド部材は、前記ロック部材を挿入するための凹部を有するスライド本体と、前記スライド本体に着脱可能な先端部とから構成されていることを特徴とする請求項3に記載の金型装置。
前記キャビティにて成形された成形品を、前記固定金型及び前記可動金型が離間した状態にて、前記可動金型から前記固定金型側へ押し出す押出機構をさらに備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の金型装置。
前記溝は、複数の波状又はジグザグ状の線からなる短円筒状リングを軸方向に一体に連結する複数の連結部により連結された円筒形網状構造の成形品を形成する形状をなすことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の金型装置。
前記複数のスライド部材のうち少なくとも1つの前記スライド部材の先端面には、他の前記スライド部材と異なるパターンの前記溝が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の金型装置。
前記溝は、複数の波状又はジグザグ状の線からなる少なくとも1つの短円筒状リングと少なくとも1つの切り欠き部を有する短円筒状リングとを軸方向に一体に連結する複数の連結部により連結された切り欠き部を有する円筒形網状構造の成形品を形成する形状をなすことを特徴とする請求項7に記載の金型装置。
複数の異なる形状の成型品を、接着剤又は体内吸収性繊維を用いてY字形、T字形又は十字形に連結し分岐ステントを形成する連結工程をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載のステントの製造方法。
【背景技術】
【0002】
ステントは、人体の管状の部分(血管、気管、食道等)の狭窄部に挿入し、管腔内部から広げて空間を確保するための医療器具であり、従来から金属製の網目の筒状のものが一般的に用いられている。金属製のステントの場合、一度体内に留置されると体外へ取り除くことが不可能であり、また、金属製のステントに対する金属アレルギーを惹起する恐れがある。
【0003】
そのため、近年、生体内分解吸収性高分子材料からなるステントが提案されている(例えば、特許文献1)。このようなステントであれば、ステント留置直後は十分な血管内腔を確保し、ステント留置部の血管が血管内皮細胞によって覆われて新たな血栓等の狭窄を促進する反応が起こらなくなるような期間の経過後、生体内に分解吸収され体内にいつまでも残存することはなくなる。また、金属アレルギーの患者にもステント治療を実施することが可能となる。
【0004】
特許文献1に提案されているステントは、複数の剛性部と、それら各剛性部を相互に接続する複数の可撓性部とを備えている。剛性部により治療対象箇所を拡張した状態で維持するための剛性の機能が果たされ、可撓性部により治療対象箇所への留置を行う上で要求される可撓性の機能が果たされる。この場合に、剛性部及び可撓性部は、いずれも生分解性材料を用いて形成されている。そして、可撓性部を形成する生分解性材料は、剛性部を形成する生分解性材料よりも剛性の低い材料に形成されている。
【0005】
また、特許文献1に提案されているステントは、専用金型を用いて射出成形により形成されている。専用金型は、対向する第1外周部と、第2外周部と、軸部とを備えている。第1外周部と第2外周部とにより専用金型の外側部分が構成され、これら第1外周部と第2外周部とを組み合わせることにより円柱状の空洞を有する箱が形成される。この空洞部分に円柱状の軸部が収容されている。また、第1外周部及び第2外周部の内周面にはそれぞれ、ステントの形状に対応した溝が形成されている。また、第1外周部及び第2外周部には剛性部及び可撓性部に対応させて注入用孔が内外に貫通させて形成されている。専用金型を組み立てた状態において、剛性部用のシリンダから溶融状態の剛性部用材料を専用金型内に射出すると共に、可撓性部用のシリンダから溶融状態の可撓性部用材料を専用金型内に射出する。剛性部用材料及び可撓性部用材料が固まった後に、第1外周部、第2外周部及び軸部を分解することで、ステントが得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に提案されているステントの製造方法では、専用金型が複数のシリンダを有する射出装置を必要とするため、成形装置の構成が複雑となり、コストが高いという問題点があった。また、ステントの外周面(人体の管腔内壁面に接触する面)に複数のゲート部が存在するため、ステントを金型から取り出し、ゲート部分で不要な樹脂をカットした後、表面を平滑に処理しなければならず、多くの工数を要する。また、金型からステントの取り外し作業が困難であるという問題点があった。
【0008】
また、異なる直径のステントを製造する場合は、専用金型全体を交換しなければならないなど、製造装置に関する経済的費用負担が大きいという問題点があった。
【0009】
従って、本発明は従来技術の上述した問題点を解消するものであり、本発明の目的は、より簡単な構成を有し、異なる直径のステントを製造する場合にも金型全体を交換する必要のない金型装置を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、より高精度のステントを製造可能なステントの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、樹脂注入口を有する固定金型とキャビティを有する可動金型とを備えた金型装置において、可動金型の中心部に配置され、成形品の内径を規定する円筒形の内径ピンと、内径ピンの周りに配置され、可動金型の中心から放射方向に向かって形成された複数のスライド溝に沿ってスライド可能な複数のスライド部材とを備え、複数のスライド部材の先端面と内径ピンの外周面との間にキャビティを形成するように構成されている。
【0012】
金型装置が、内径ピンと、内径ピンの周りに配置され、可動金型の中心から放射方向に向かって形成された複数のスライド溝に沿ってスライド可能な複数のスライド部材とを備え、複数のスライド部材の先端面と内径ピンの外周面との間にキャビティを形成することにより、簡単な構成で、異なる直径のステントを製造する場合、内径ピンとスライド部材の先端を交換することが可能となり、金型全体を交換する必要がない。
【0013】
内径ピンの固定金型側に位置する先端部には、複数のゲートが形成されていることが好ましい。これにより、ステントの外周面(人体の管腔内壁面に接触する面)にゲート部がなく、従来のようにステントの外周面のゲート部分で不要な樹脂をカットした後、表面を平滑に処理する作業が不要となる。
【0014】
型開きと共に、複数のスライド部材を外周方向へスライドさせ、型締めと共に、複数のスライド部材を中心へスライドさせ、型締め状態において複数のスライド部材の移動を規制する複数のロック部材をさらに備えていることが好ましい。これにより、複数のスライド部材を簡単に開き、閉め及び固定することができる。
【0015】
複数のスライド部材は、ロック部材を挿入するための凹部を有するスライド本体と、スライド本体に着脱可能な先端部とから構成されていることが好ましい。これにより、異なる直径のステントを製造する場合、スライド部材の先端部を容易に交換することができる。
【0016】
キャビティにて成形された成形品を、固定金型及び可動金型が離間した状態にて、可動金型から固定金型側へ押し出す押出機構をさらに備えていることが好ましい。これにより、成形品の離型作業が容易にできる。
【0017】
複数のスライド部材の先端面には、凹形円弧状で波状の線を形成するための溝が形成されていることが好ましい。
【0018】
上述した溝は、複数の波状又はジグザグ状の線からなる短円筒状リングを軸方向に一体に連結する複数の連結部により連結された円筒形網状構造の成形品を形成する形状をなすことがより好ましい。
【0019】
複数のスライド部材のうち少なくとも1つのスライド部材の先端面には、他のスライド部材と異なるパターンの溝が形成されていることがより好ましい。
【0020】
上述した溝は、複数の波状又はジグザグ状の線からなる少なくとも1つの短円筒状リングと少なくとも1つの切り欠き部を有する短円筒状リングとを軸方向に一体に連結する複数の連結部により連結された切り欠き部を有する円筒形網状構造の成形品を形成する形状をなすことがより好ましい。
【0021】
本発明によれば、上記の金型装置を用いてステントを成形するステント製造方法であって、固定金型と可動金型とを閉止して、固定金型と可動金型とを加熱する加熱工程と、可動金型の中心部に配置された円筒形の内径ピンと、内径ピンの周りに配置され、可動金型の中心から放射線方向に形成された複数のスライド溝に沿ってスライド可能な複数のスライド部材とから形成されたキャビティ内に溶融樹脂を充填する充填工程と、キャビティ内に充填された樹脂を固化させる固化工程と、固定金型と可動金型とを分離すると共に、スライド溝に沿って前記複数のスライド部材を外周方向へスライドさせる型開き工程と、エジェクタピンを可動金型の中心部に配置された内径ピンの中に挿入し、成型品を押し出す離型工程とを備えているステントの製造方法が提供される。
【0022】
これにより、異なる直径のステントを製造する場合、金型全体を交換する必要がなく、かつより高精度のステントを得ることができ、かつ金型からステントの取り外し作業を容易に行うことができる。
【0023】
複数の異なる形状の成型品を、接着剤又は体内吸収性繊維を用いてY字形、T字形又は十字形に連結し分岐ステントを形成する連結工程をさらに備えることがより好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、簡単な構成で、異なる直径のステントを製造する場合、内径ピンとスライド部材の先端部との取替えにより対応でき、金型全体を交換する必要がなく、製造装置に関する経済的費用負担を軽減することができる。
【0025】
また、内径ピンとスライド部材の先端部分のみを交換できる金型ユニットを用いることで、より高精度のステントを得ることができ、かつ金型からステントの取り外し作業を容易に行うことができる。また、ステントの形状を自在にデザインすることができる。
【0026】
また、複数の異なる形状の成型品をY字形、T字形又は十字形に連結し、分岐ステントを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態における金型装置の構成を概略的に示す一部断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態における金型装置の固定金型及び可動金型の構成を概略的に示す展開斜視図である。
【
図3】
図1の実施形態における金型装置の可動金型の構成を概略的に示す平面図である。
【
図4】
図1の実施形態における金型装置の固定金型の構成を概略的に示す断面図である。
【
図5】
図1の実施形態における金型装置のスライド部材の構成を概略的に示す平面図である。
【
図6】
図1の実施形態における金型装置のスライド部材の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図7】スライド部材の波状の線を形成するための溝のパターン(円筒形網状構造用)を示す平面図である。
【
図8】スライド部材の波状の線を形成するための溝のパターン(切り欠き部を有する円筒形網状構造用)を示す平面図である。
【
図9】スライド部材の他の構成例を示す斜視図である。
【
図10】
図1の実施形態における金型装置の内径ピンの構成を概略的に示す斜視図である。
【
図11】内径ピンの構成を概略的に示す端面図及び断面図である。
【
図12】型開き及び型締めの際、スライド部材のスライド状態を説明する一部断面図である。
【
図13】離型時成形品の押し出し状態を概略的に示す一部断面図である。
【
図14】
図1の実施形態における金型装置によって製造されるステントの構成を概略的に示す斜視図である。
【
図16】ステントを湾曲させる際に、連結部を切断する個所を示す平面図である。
【
図17】分岐ステントの構成を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る金型装置及びステントの製造方法の実施形態を、図を参照して説明する。
【0029】
図1〜
図11は本発明の一実施形態における金型装置100の構成を示している。ただし、
図1は金型装置100の構成を正面から見た一部断面を示しており、
図2は金型装置100の固定金型10及び可動金型20の構成を展開して示しており、
図3は可動金型20を
図2のA方向から見た構成を示しており、
図4は可動金型20を
図2のB−B線断面で示している。
図5はスライド部材40の構成を示しており、同図(a)はスライド部材40の側面図であり、同図(b)は平面図であり、同図(c)は先端から見た図であり、同図(d)は先端部40bの平面図である。
図6はスライド部材40の構成を示しており、同図(a)はスライド部材40の先端部40bの斜視図であり、同図(b)はスライド部材40のスライド本体40aの斜視図であり、同図(c)はスライド本体40aと先端部40bとの装着状態の斜視図である。
図7はスライド部材40の波状の線を形成するための溝のパターン(円筒形網状構造用)を示しており、同図(a)は波状の線からなる短円筒状リングの1つの場合の溝のパターンであり、同図(b)は波状の線からなる短円筒状リングの2つの場合の溝のパターンであり、同図(c)は波状の線からなる短円筒状リングの4つの場合の溝のパターンであり、同図(d)は波状の線からなる短円筒状リングの8つの場合の溝のパターンである。
図8はスライド部材40の波状の線を形成するための溝のパターン(切り欠き部を有する円筒形網状構造用)を示しており、同図(a)はY字形分岐ステント用(その1)の場合の溝のパターンであり、同図(b)はY字形分岐ステント用(その2)の場合の溝のパターンであり、同図(c)はT字形分岐ステント用の場合の溝のパターンであり、同図(d)は十字形分岐ステント用の場合の溝のパターンである。
図9はスライド部材40の他の構成例を示しており、同図(a)はスライド部材40の先端部40bの斜視図であり、同図(b)はスライド部材40のスライド本体40aの斜視図であり、同図(c)はスライド本体40aと先端部40bとの装着状態の斜視図である。
図10は内径ピン30の形状を示す斜視図である。
図11は内径ピン30の構成を示しており、同図(a)は端面の平面図であり、同図(b)は断面図である。
図12はスライド部材のスライド状態を示しており、同図(a)は型締めの際のスライド状態を示す一部断面図であり、同図(b)は型開きの際のスライド状態を示す一部断面図である。
図13は離型時成形品の押し出し状態を示す一部断面図である。
【0030】
図1〜
図13に示すように、本実施形態における金型装置100は、樹脂注入口10aを有する固定金型10と、キャビティ20aを有する可動金型20とを備えている。可動金型20は、内径ピン30と複数(6個)のスライド部材40とを備え、複数のスライド部材40の先端面と内径ピン30の外周面との間にキャビティ20aを形成するように構成されている。
【0031】
固定金型10は、主に、固定型板11と、断熱板12と、固定金型ホルダ13とから構成されている。固定型板11は、断熱板12を介して固定金型ホルダ13に取り付けている。固定型板11の中心部に樹脂注入口10aを有している。また、固定金型10の中心部にホットランナーHが支持リングRを介して装着されている。また、固定型板11には、加熱用のヒータを設置するためのヒータ装着穴11aが設けられている。固定金型ホルダ13には、冷却用の冷却器を設置するための冷却器装着穴13aが設けられている。固定型板11のパーティング面PLには、スライド部材40の移動を規制する複数のロック部材50が設けられている。また、固定金型10は、左右の外側面には取付け用溝10bが設けられている。また、固定型板11の対向する一対の角部にそれぞれ金型位置決めピン14が設けられている。
【0032】
可動金型20は、主に、可動型板21と、断熱板22と、可動金型ホルダ23と、内径ピン30と、複数のスライド部材40とから構成されている。可動型板21は、断熱板22を介して可動金型ホルダ23に取り付けている。また、可動型板21の中心部に固定部材31を介して内径ピン30が配置されている。また、可動型板21には中心から放射方向に向かって形成された複数のスライド溝21Aが設けられている。スライド溝21Aの数は、図示の例では6つであるが、一般的には3〜12である。また、可動型板21には、加熱用のヒータを設置するためのヒータ装着穴21aが設けられている。可動金型ホルダ23には、冷却用の冷却器を設置するための冷却器装着穴23aが設けられている。また、可動金型20は、左右の外側面には取付け用溝20bが設けられている。可動型板21の対向する角部にそれぞれ金型位置決ピン14が挿嵌される位置決め孔24が設けられている。また、可動金型20には、金型内のキャビティ20aに成型された成型品を押し出すための押出機構として押出板25及びエジェクタピンEPが設けられている。
【0033】
内径ピン30は、中心に貫通孔32を有し、外表面が成形品の内径を規定する円筒形に形成されており、先端にランナー33とゲート34とが形成されている。貫通孔32は、エジェクタピンEPを挿入することができる。なお、内径ピン30は、成形するステントの寸法に合わせて選択し取り替えることができる。
【0034】
複数のスライド部材40は、それぞれ、複数のスライド溝21Aに沿ってスライド可能に可動型板21に装着されている。各スライド部材40は、ロック部材50が嵌入する凹部41を有するスライド本体40aと、スライド本体40aに着脱可能な先端部40bとから構成されている。複数のスライド部材40の先端面42と内径ピン30の外周面との間にキャビティ20aを形成されるように構成されている。先端部40bの平面角度は、120度(3分割)〜30度(12分割)であることが好ましい。本実施形態において、先端部40bの平面角度は、60度(6分割)である。先端部40bの先端面42には、凹形円弧状で波状の線を形成するための溝(模様)が形成されている。この溝はステントの外形を形成するものである。凹部41は、ロック部材50の形状に対応する傾斜側面41a及び41bを有している。
【0035】
直筒形網状構造のステントを作成する際に、
図7に示すように、形成するステントの長さによって、複数のスライド部材40の波状の線を形成するための溝のパターンが異なる。同図(a)は波状の線からなる短円筒状リングの1つの場合の溝のパターンを示している。同図(b)は波状の線からなる短円筒状リングの2つの場合の溝のパターンを示している。同図(c)は波状の線からなる短円筒状リングの4つの場合の溝のパターンを示している。同図(d)は波状の線からなる短円筒状リングの8つの場合の溝のパターンを示している。また、円筒形網状構造の場合、複数のスライド部材40が同様の溝のパターンを有している。
【0036】
分岐スタントを作成する際に、
図8に示すように、分岐スタントの形状によって、複数(本実施形態では6つ)のスライド部材40の波状の線を形成するための溝は、複数の波状の線からなる少なくとも1つの短円筒状リングと少なくとも1つの切り欠き部を有する短円筒状リングとを軸方向に一体に連結する複数の連結部により連結された切り欠き部を有する円筒形網状構造の成形品を形成する形状をなす。即ち、複数のスライド部材40の溝のパターンがそれぞれ異なる。又は、複数のスライド部材40のうちの一部が異なる溝のパターンを有し、他のスライド部材40が同様の溝のパターンを有する。
【0037】
図9は円筒形状のステントを作成する際の複数のスライド部材40の構成を示している。この場合、複数のスライド部材40の先端面42は、波状の線を形成するための溝が形成されず、凹形円弧状である。
【0038】
複数のロック部材50は、固定型板11のPL面において、樹脂注入口10aの周りに配置されており、それぞれ外周方向へ傾斜する傾斜面50a及び50bを有するように形成されている。傾斜面50a及び50bは、スライド部材40の凹部41に嵌合する嵌合面として機能する。固定金型10と可動金型20とを型締めする際に、
図12(a)に示すように、ロック部材50の傾斜面50aが、スライド部材40の凹部41の傾斜側面41aに当接し、スライド部材40を中心(図中矢印)へ移動させ、そして、凹部41に完全に嵌合すると、スライド部材40の移動を規制するように構成されている。固定金型10と可動金型20とを型開きする際に、
図12(b)に示すように、ロック部材50の傾斜面50bが、スライド部材40の凹部41の傾斜側面41bに当接し、スライド部材40をスライド溝21aに沿って複数のスライド部材40を外周方向(図中矢印)へスライドさせるように構成されている。これにより、型開き状態になり、エジェクタピンEPを可動金型20の中心部に配置された内径ピン30の中に挿入し、ランナー33、ゲート34及び成型品(ステント)Sを一緒に押し出し、離型させることができる。
【0039】
また、金型装置100には、型開閉機構及び射出機構が設けられている(図示せず)。型開閉機構は、油圧シリンダ等からなり、可動金型20を固定金型10に対して進退することにより金型を開閉させるものである。射出機構は、加熱筒、スクリュ、及びプランジャ等を備えており、ホッパから投入された可塑性の材料を加熱筒の熱で可塑化し、スクリュで混練圧送しながらプランジャの動きに応じてホットランナーHから射出する。
【0040】
型開閉機構を駆動して固定金型10と可動金型20とを型締めする際に、固定型板11の金型位置決めピン14が可動型板21の位置決め孔24に挿嵌して、固定金型10に対する可動金型20が位置合せされ、固定金型10及び可動金型20を当接させて本固定することになる。型締め状態で、溶融樹脂をキャビティ20a内に注入した後、固化させ、そして、固定金型10と可動金型20とを分離させ、型開き状態で、エジェクタピンEPを可動金型20の中心部に配置された内径ピン30の中に挿入し、成型品(ステントS)を押し出し、離型させることができる。
【0041】
このように本実施形態において、金型装置100は、樹脂注入口10aを有する固定金型10と、キャビティ20aを有する可動金型20とを備え、可動金型20の中心部に成形品の内径を規定する円筒形の内径ピン30が配置され、内径ピン30の周りに可動金型20の中心から放射方向に向かって形成された複数のスライド溝21Aに沿ってスライド可能な複数のスライド部材40が配置されている。複数のスライド部材40の先端面42と内径ピン30の外周面との間にキャビティ20aを形成するように構成されている。
【0042】
これにより、異なる直径のステントを製造する場合に、内径ピン30とスライド部材40の先端部40bとを交換するのみで良く、金型全体を交換する必要がない。しかも、そのための構成が非常に簡単である。
【0043】
内径ピン30の固定金型10側に位置する先端部に複数のゲート33が形成されているため、ステントSの外周面(人体の管腔内壁面に接触する面)にゲート部を形成する必要がなくなり、従来のようにステントの外周面のゲート部分で不要な樹脂をカットした後、表面を平滑に処理する作業が不要となる。
【0044】
型開きと共に、複数のスライド部材40を外周方向へスライドさせ、型締めと共に、複数のスライド部材を中心へスライドさせ、型締め状態において複数のスライド部材40の移動を規制する複数のロック部材50をさらに備えていることで、複数のスライド部材40をより簡単に開き、閉め及び固定させることができる。
【0045】
複数のスライド部材40が、ロック部材50を挿入するための凹部41を有するスライド本体40aと、スライド本体40aに着脱可能な先端部40bとから構成されているため、異なる直径のステントSを製造する場合には、スライド部材40の先端部40bのみを交換すれば良い。
【0046】
キャビティ20aにて成形された成形品を、固定金型10及び可動金型20が離間した状態にて、可動金型20から固定金型10側へ押し出す押出機構をさらに備えていることにより、成形品の離型作業が容易にできる。
【0047】
また、本実施形態における金型装置100を用いたステントの製造方法は、固定金型10と可動金型20とを閉止し加熱する加熱工程と、可動金型20の中心部に配置された円筒形の内径ピン30と、内径ピン30の周りに配置され、可動金型20の中心から放射方向に向かって形成された複数のスライド溝21Aに沿ってスライド可能な複数のスライド部材40とから形成されたキャビティ20a内に溶融樹脂を充填する充填工程と、キャビティ20a内に充填された樹脂を固化させる固化工程と、固定金型10と可動金型20とを分離すると共に、スライド溝21Aに沿って複数のスライド部材40を外周方向へスライドさせる型開き工程と、エジェクタピンEPを可動金型20の中心部に配置された内径ピン30の中に挿入し、成型品を押し出す離型工程とを備えている。
【0048】
加熱工程において、固定型板11及び可動型板21に配置されたヒータで固定型板11及び可動型板21を所定温度に加熱する。この場合、ステントSを形成する樹脂材料によって、加熱温度が異なる。例えば、ピーク(Peek)材料の場合、180〜230℃に加熱する。ポリ乳酸(PLA)材料の場合、40〜70℃に加熱する。
【0049】
充填工程において、射出機構が、ホッパから投入された可塑性の材料を加熱筒の熱で可塑化し、スクリュで混練圧送しながらホットランナーHから射出し、キャビティ20a内に溶融樹脂を充填する。
【0050】
固化工程において、キャビティ20a内に溶融樹脂を充填した後、固定型板11及び可動型板21の温度を所定温度(例えば、ピーク材料の場合、180〜230℃、ポリ乳酸材料の場合、ブレンドするモノマーによって40〜70℃)に保ち、結晶化することで、キャビティ20a内に充填された樹脂を固化させる。
【0051】
型開き工程において、型開閉機構を駆動して固定金型10と可動金型20とを分離させる。固定金型10と可動金型20とを分離する(型開き)際に、複数のスライド部材40がスライド溝21Aに沿って外周方向(
図12(b)参照)へスライドするようになる。これにより、キャビティ20aの外周面が離れ、ステントSが露出される。
【0052】
離型工程において、エジェクタピンEPを可動金型20の中心部に配置された内径ピン30の中に挿入し、ランナー33に当接させ、成型品を押し出し、離型させることで、成型品を離型させることができる。最後に、ゲート部から切断し、ステント製品が得られる。
【0053】
図14は本実施形態における金型装置100によって製造されるステントSの構成を示す斜視図である。
図15はステントSの構成を説明しており、同図(a)はステントSを構成する基本形である短円筒状リングSrを示す斜視図であり、同図(b)は2つの基本形を連結して形成したステントSを示す斜視図であり、同図(c)は4つの基本形を連結して形成したステントSを示す斜視図である。
図16はステントSを湾曲させる際に、連結部を切断する個所を示す平面図である。
図17は分岐ステントの構成を示しており、同図(a)はY字形の分岐ステントを示しており、同図(b)はT字形の分岐ステントを示しており、同図(c)は十字形の分岐ステントを示している。
【0054】
図14及び
図15に示すように、ステントSは、金型装置100を用いて樹脂材料から成形される。樹脂材料として、例えば、結晶性の熱可塑性樹脂であるピーク(Peek)材料、又は体内吸収性樹脂であるポリ乳酸(PLA)等を用いることができる。このステントSは、円筒形網状構造をなし、網状構造は、複数の波状の線からなる短円筒状リング(基本形)Srを軸方向に一体に連結する複数の連結部Cにより連結された状態に成形されている。金型装置100の複数のスライド部材40の先端面42には、凹形円弧状で波状の線を形成するための溝が形成されており、これら溝は、複数の波状又はジグザグ状の線からなる短円筒状リングを軸方向に一体に連結する複数の連結部により連結された円筒形網状構造のステントSを形成する形状をなしている。また、複数の波状の頂点同士が連結部Cにより連結されているが、これら連結部Cは、切断可能に成形されている。これにより、ステントSを挿入しようとする体内の形状に合わせるために、ステントSの連結部Cを1乃至数個所で切断することで、ステントSを湾曲させることができる。なお、必要な曲がり角度によって連結部Cの切断数及び場所を適宜選ぶことが可能である。
図16は4個所を切断する際の切断箇所Pの例を示している。ステントSを湾曲させる際に、切断部と反対側に曲がることで、容易に実現できる。
【0055】
図17に示すように、複数の異なる形状の成型品を、接着剤又は体内吸収性繊維を用いてY字形、T字形又は十字形に連結し分岐ステントを形成することができる。
【0056】
本実施形態における金型装置100によって形成される複数のステントSをステントS本体と同一材料の糸又は体内吸収性繊維でつなぎ湾曲状にすることもできる。ここで、複数のステントSは、長さが異なる複数のステントSでも良い。このように同一材料の糸又は体内吸収性繊維でつなぎ湾曲状にする場合は、ステントSの連結部を切断することは不要である。
【0057】
本実施形態における金型装置100によって製造されるステントSは、円筒形網状構造をなし、網状構造は、複数の波状又はジグザグ状の線からなる短円筒状リングSrを軸方向に一体に連結する複数の連結部Cにより連結された状態に成形されている。また、複数の波状又はジグザグ状の頂点同士が連結部Cにより連結され、連結部Cは、切断可能に成形されていることで、必要に応じてステントSの長さを容易に調整することができる。また、樹脂製(例えば、人骨に近いピーク材料)のステントSの場合、MRI検査による影響及び金属アレルギー反応が起きる恐れがない。
【0058】
さらに、金型装置100を用いてステントを成形する場合、廃材を最小限にすることができ、高価な材料を使用する場合、材料を節約することができる。また、ステント製品の表面精度を鏡面まで上げることができる。
【0059】
なお、上述した実施形態において、金型装置100によって形成されるステントSは、円筒形網状構造をなし、網状構造は、複数の波状の線からなる短円筒状リングSrを軸方向に一体に連結する複数の連結部Cにより連結された状態に成形されている構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。他の形状、例えば、ジグザグ状の線からなる短円筒状リングを軸方向に一体に連結する複数の連結部により連結された状態に成形されている構成にしても良い。
【0060】
以上述べた実施形態は本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。