特許第6694710号(P6694710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通テン株式会社の特許一覧

特許6694710駐車支援装置、駐車支援方法、及び、駐車支援システム
<>
  • 特許6694710-駐車支援装置、駐車支援方法、及び、駐車支援システム 図000002
  • 特許6694710-駐車支援装置、駐車支援方法、及び、駐車支援システム 図000003
  • 特許6694710-駐車支援装置、駐車支援方法、及び、駐車支援システム 図000004
  • 特許6694710-駐車支援装置、駐車支援方法、及び、駐車支援システム 図000005
  • 特許6694710-駐車支援装置、駐車支援方法、及び、駐車支援システム 図000006
  • 特許6694710-駐車支援装置、駐車支援方法、及び、駐車支援システム 図000007
  • 特許6694710-駐車支援装置、駐車支援方法、及び、駐車支援システム 図000008
  • 特許6694710-駐車支援装置、駐車支援方法、及び、駐車支援システム 図000009
  • 特許6694710-駐車支援装置、駐車支援方法、及び、駐車支援システム 図000010
  • 特許6694710-駐車支援装置、駐車支援方法、及び、駐車支援システム 図000011
  • 特許6694710-駐車支援装置、駐車支援方法、及び、駐車支援システム 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6694710
(24)【登録日】2020年4月22日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】駐車支援装置、駐車支援方法、及び、駐車支援システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 99/00 20090101AFI20200511BHJP
   B60W 30/06 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   B60R99/00 350
   B60W30/06
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-253558(P2015-253558)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-114391(P2017-114391A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(72)【発明者】
【氏名】山本 智春
(72)【発明者】
【氏名】露梨 真史
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0065293(US,A1)
【文献】 特開平04−055168(JP,A)
【文献】 米国特許第09135580(US,B1)
【文献】 特開2008−296640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 99/00
B60R 21/00
B60W 30/06
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駐車を支援する駐車支援装置であって、
前記車両の駐車条件に応じた駐車手法を示す駐車手法モデルを取得する取得手段と、
前記車両に対するユーザの駐車手法が前記駐車手法モデルと異なるか否かを判断する判断手段と、
前記ユーザの駐車手法が前記駐車手法モデルと異なる場合に、前記車両の駐車支援を開始するか否かをユーザに問い合わせる通知手段と、
前記ユーザが支援することを承認した場合に、前記ユーザが行う駐車操作の支援と前記ユーザの操作を介さずに駐車する自動運転の何れか一方を行う支援手段と、
を備えることを特徴とする駐車支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駐車支援装置において、
駐車場における車両の駐車手法を収集する収集手段と、
前記収集手段が収集した駐車手法と該駐車手法による駐車が行われた駐車場の種別とに基づき、前記駐車手法モデルを生成する生成手段と、
をさらに備えることを特徴とする駐車支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の駐車支援装置において、
前記駐車条件は、前記駐車場の種別を含むことを特徴とする駐車支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の駐車支援装置において、
前記駐車条件は、駐車の時刻、前記車両の乗員数、駐車場内の歩行者数、駐車領域の向き、対向車の有無、後続車の有無、及び、駐車領域に対する前記車両の進行方向のいずれかをさらに含むことを特徴とする駐車支援装置。
【請求項5】
車両の駐車を支援する駐車支援方法であって、
(a)前記車両の駐車条件に応じた駐車手法を示す駐車手法モデルを取得する工程と、
(b)前記車両に対するユーザの駐車手法が前記駐車手法モデルと異なるか否かを判断する工程と、
(c)前記ユーザの駐車手法が前記駐車手法モデルと異なる場合に、前記車両の駐車支援を開始するか否かをユーザに問い合わせる工程と、
(d)前記ユーザが支援することを承認した場合に、前記ユーザが行う駐車操作の支援と前記ユーザの操作を介さずに駐車する自動運転の何れか一方を行う工程と、
を備えることを特徴とする駐車支援方法。
【請求項6】
車両の駐車を支援する駐車支援装置とサーバとを含む駐車支援システムであって、
前記駐車支援装置は、
前記車両の駐車に関する駐車条件を取得する取得手段と、
前記駐車条件を前記サーバに送信する第1送信手段と、
前記駐車条件に応じた駐車手法を示す駐車手法モデルを前記サーバから受信する第1受信手段と、
前記車両に対するユーザの駐車手法が前記駐車手法モデルと異なるか否かを判断する判断手段と、
前記ユーザの駐車手法が前記駐車手法モデルと異なる場合に、前記車両の駐車支援を開始するか否かをユーザに問い合わせる通知手段と、
前記ユーザが支援することを承認した場合に、前記ユーザが行う駐車操作の支援と前記ユーザの操作を介さずに駐車する自動運転の何れか一方を行う支援手段と、
を備え、
前記サーバは、
駐車場における車両の駐車手法を収集する収集手段と、
前記収集手段が収集した駐車手法と該駐車手法による駐車が行われた駐車場の種別とに基づき、前記駐車手法モデルを生成する生成手段と、
前記駐車条件を前記駐車支援装置から受信する第2受信手段と、
前記駐車条件に応じた前記駐車手法モデルを前記駐車支援装置に送信する第2送信手段と、
を備えることを特徴とする駐車支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駐車を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両を駐車場に駐車させる際、自動でステアリング等を操作し、運転者の駐車操作を支援する駐車支援装置が知られている。また、過去の駐車操作を駐車場毎に蓄積し、蓄積した駐車操作の情報に基づき、駐車場に入場した運転者にとって最も適切な駐車操作を実行する駐車支援システムが提供されている。このような駐車支援の制御を利用することで、複数のステアリング操作を要する縦列駐車や隣接車両との間隔の狭い駐車領域であっても正確に車両を駐車でき、特に運転初心者や高齢者ドライバーにとって有用な技術となっている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−237930号公報
【特許文献2】特開2014−125195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような駐車支援の制御は、運転者がシフトレバーをリバースに入力する毎に運転支援を実行していた(例えば、特許文献2)。運転者は自ら操作して駐車可能と判断する場合には、このような運転支援はむしろ煩わしい。このため、運転者によっては、駐車支援装置を起動不能にする場合もあった。したがって、このような駐車支援は、運転者が円滑に駐車できない場合等、真に駐車支援が望まれる場合に実行されることが望ましい。
【0005】
本発明はかかる課題に鑑み、運転者の駐車操作を適切に支援する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、車両の駐車を支援する駐車支援装置であって、前記車両の駐車条件に応じた駐車手法を示す駐車手法モデルを取得する取得手段と、前記車両に対するユーザの駐車手法が前記駐車手法モデルと異なるか否かを判断する判断手段と、前記ユーザの駐車手法が前記駐車手法モデルと異なる場合に、前記車両の駐車支援を開始するか否かをユーザに問い合わせる通知手段と、
前記ユーザが支援することを承認した場合に、前記ユーザが行う駐車操作の支援と前記ユーザの操作を介さずに駐車する自動運転の何れか一方を行う支援手段と、を備える。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の駐車支援装置において、駐車場における車両の駐車手法を収集する収集手段と、前記収集手段が収集した駐車手法と該駐車手法による駐車が行われた駐車場の種別とに基づき、前記駐車手法モデルを生成する生成手段と、をさらに備える。
【0008】
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の駐車支援装置において、前記駐車条件は、前記駐車場の種別を含む。
【0009】
また、請求項4の発明は、請求項3に記載の駐車支援装置において、前記駐車条件は、駐車の時刻、前記車両の乗員数、駐車場内の歩行者数、駐車領域の向き、対向車の有無、後続車の有無、及び、駐車領域に対する前記車両の進行方向のいずれかをさらに含む。
【0010】
また、請求項5の発明は、車両の駐車を支援する駐車支援方法であって、(a)前記車両の駐車条件に応じた駐車手法を示す駐車手法モデルを取得する工程と、(b)前記車両に対するユーザの駐車手法が前記駐車手法モデルと異なるか否かを判断する工程と、(c)前記ユーザの駐車手法が前記駐車手法モデルと異なる場合に、前記車両の駐車支援を開始するか否かをユーザに問い合わせる工程と、(d)前記ユーザが支援することを承認した場合に、前記ユーザが行う駐車操作の支援と前記ユーザの操作を介さずに駐車する自動運転の何れか一方を行う工程と、を備える。
【0011】
また、請求項6の発明は、車両の駐車を支援する駐車支援装置とサーバとを含む駐車支援システムであって、 前記駐車支援装置は、前記車両の駐車に関する駐車条件を取得する取得手段と、前記駐車条件を前記サーバに送信する第1送信手段と、前記駐車条件に応じた駐車手法を示す駐車手法モデルを前記サーバから受信する第1受信手段と、前記車両に対するユーザの駐車手法が前記駐車手法モデルと異なるか否かを判断する判断手段と、前記ユーザの駐車手法が前記駐車手法モデルと異なる場合に、前記車両の駐車支援を開始するか否かをユーザに問い合わせる通知手段と、前記ユーザが支援することを承認した場合に、前記ユーザが行う駐車操作の支援と前記ユーザの操作を介さずに駐車する自動運転の何れか一方を行う支援手段と、を備え、前記サーバは、駐車場における車両の駐車手法を収集する収集手段と、前記収集手段が収集した駐車手法と該駐車手法による駐車が行われた駐車場の種別とに基づき、前記駐車手法モデルを生成する生成手段と、前記駐車条件を前記駐車支援装置から受信する第2受信手段と、前記駐車条件に応じた前記駐車手法モデルを前記駐車支援装置に送信する第2送信手段と、を備える。

【発明の効果】
【0012】
請求項1ないし6の発明によれば、ユーザが支援することを承認した場合に、前記車両の駐車操作を支援するので、無用な駐車操作の支援を防止できる。
【0013】
また、特に請求項2の発明によれば、車両のユーザは、車両の駐車手法と駐車場の種別とに基づいて生成された駐車手法モデルを利用するので、適切な駐車手法モデルを利用できる。
【0014】
また、特に請求項3の発明によれば、駐車場の種別に応じた適切な駐車手法モデルを選択できる。
【0015】
また、特に請求項4の発明によれば、より適切な駐車手法モデルを選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、駐車支援システムの概要を示す。
図2図2は、駐車支援の要否を判断する方法を説明する図である。
図3図3は、駐車支援システムの構成を示す。
図4図4は、ディスプレイの表示例を示す。
図5図5は、サーバの構成を示す。
図6図6は、駐車手法モデルの例を示す。
図7図7は、駐車支援装置の処理工程を示す。
図8図8は、駐車支援装置の処理工程を示す。
図9図9は、駐車支援装置の処理工程を示す。
図10図10は、サーバの処理工程を示す。
図11図11は、第2の実施の形態に係る駐車支援システムの構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
<1.第1の実施の形態>
<1−1.概要>
図1は、駐車支援システム1の概要を示す。駐車支援システム1は、運転者(ユーザ)が車両2を適切に駐車領域PAに駐車できるよう支援するシステムである。
【0019】
駐車の支援とは、運転者が車両2を駐車領域PAに駐車させる際、どのようにステアリングやアクセル等を操作すべきかインジケータや音声等で運転者に指示することである。運転者は、インジケータ等の指示に従ってステアリング等を操作することで、適切に車両2を駐車領域PAに駐車できる。特に、運転者の運転経験の少ない場合や、駐車領域PAが狭い場合、夜間等で駐車領域PA周辺の見通しが悪い場合等であっても、運転者は安全に車両2を駐車領域PAに駐車できる。
【0020】
しかし、運転者によっては、慣れた駐車場等では必ずしも駐車支援を必要としない。この場合、駐車支援システム1は、車両2が駐車場に入場する毎にインジケータの点灯や音声の出力を行うと、駐車支援を欲しない運転者には煩わしいシステムとなる。
【0021】
そこで、運転者が駐車操作に苦慮している場合等、運転者が駐車支援を欲している場合に駐車支援を実行することが望ましい。すなわち、運転者が行っている駐車手法が一般的又は理想的な駐車手法と異なる場合に、駐車支援を欲しているか否か問い合わせることで、適切な時機に駐車支援を実行できる。
【0022】
図2は、運転者が駐車操作に苦慮している場合等、運転者が駐車支援を欲しているか否か判断する方法を説明する図である。
【0023】
車両2が駐車場に入場すると、駐車支援装置3は、駐車場の種別(ショッピングセンターやサービスエリア等)や時間帯等の駐車条件をサーバ10へ送信する。
【0024】
サーバ10は、駐車支援装置3から送信された駐車条件に適合する駐車手法モデルを選択し、駐車支援装置3へ送信する。駐車手法モデルとは、車両2が置かれた駐車条件における一般的又は理想的な駐車の手法を示す運転手順のモデルである。駐車手法モデルには、例えば「後進・左旋回」等のモデルデータが入力される。サーバ10は、駐車支援装置3を搭載した車両から予め様々な駐車条件における駐車手法を収集し、複数の駐車手法モデルを生成・蓄積しておく。これにより、サーバ10は、どのような駐車条件であっても、適合する駐車手法モデルを選択し、駐車支援装置3へ送信できる。
【0025】
駐車支援装置3は、サーバ10から送信された駐車手法モデルを受信すると、駐車手法モデルを「いつもの駐車手法」として駐車支援装置3に設定する。すなわち、駐車支援装置3は、駐車手法モデルを運転者が通常行う一般的又は理想的な駐車手法として認識する。
【0026】
駐車支援装置3は、運転者が実際に行っている駐車手法を検出し、検出した現実の駐車手法と「いつもの駐車手法」、すなわち駐車手法モデルとを対比し、相違の度合いを判定する。相違の度合いが一定基準より大きい場合、運転者の行う現実の駐車手法は一般的又は理想的な駐車手法から乖離している、すなわち運転者は駐車操作に苦慮していると判定できる。このような場合に、駐車支援を欲しているか否か問い合わせることで、適切な時機に駐車支援を実行できる。
【0027】
なお、以下において、駐車支援装置3が運転者の行う駐車操作(駐車手法)を支援することを「駐車支援」と述べる。また、駐車支援装置3が運転者の操作を介在させずに車両2を動作、特に駐車させることを「自動運転」と述べる。また、車両が後進する際の「左旋回」とは、車両を上方から見た際の時計回りとする。以下、このような駐車支援システム1における駐車支援装置3について、詳細に説明する。
【0028】
<1−2.構成>
図3は、駐車支援システム1の構成を示すブロック図である。駐車支援システム1は、駐車支援装置3を備える車両2、及びサーバ10を含む。
【0029】
車両2は、運転者によって運転される自動車である。車両2は、自家用自動車の他、バスやトラック等の事業用自動車でもよい。車両2は、運転者によって駐車領域PAに駐車される車両であればよい。車両2は、駐車支援装置3、カメラ4、ソナー5、インジケータ6、ディスプレイ7、ナビゲーション装置8、及び駆動制御装置9を備える。
【0030】
駐車支援装置3は、運転者が車両2を駐車させる運転作業を支援する電子制御装置である。駐車支援装置3は、車両2に備わるカメラ4により駐車位置を認識し、ソナー5により障害物との距離を検出し、インジケータ6の点灯等を行うことで運転者の駐車操作を支援する。駐車支援装置3は、制御部31、送受信機32、及び記憶部33を備える。
【0031】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を備えたマイクロコンピュータである。制御部31は、駐車支援装置3の全体を制御する。制御部31の備える各機能は後述する。
【0032】
送受信機32は、ネットワークを介してサーバ10とデータの送受信を行う通信機である。例えば、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)やLTE(Long Term Evolution)等を利用した無線通信機である。
【0033】
記憶部33は、データを記憶する記憶媒体である。例えば、EEPROM(Electrical Erasable Programmable Read-Only memory)や、フラッシュメモリ、磁気ディスクを備えたハードディスクドライブ等の不揮発性メモリである。記憶部33は、運転者データ33a、乗員データ33b、履歴データ33c、及びプログラム33dを記憶している。
【0034】
運転者データ33aは、車両2を運転する運転者に関するデータである。運転者データ33aは、運転者の性別、年齢、及び運転経験等である。運転者データ33aは、車両2の運転開始前に運転者により駐車支援装置3へ入力される。
【0035】
乗員データ33bは、車両2に乗車する乗員数を示すデータである。乗員データ33bは、座席に設けられたセンサ(図示せず)により検出された乗員数に基づき、更新される。
【0036】
履歴データ33cは、車両2の運転者の駐車履歴に基づく駐車支援が不要である旨を示すデータである。すなわち、運転者は、自宅駐車場や利用頻度の高い駐車場では、駐車操作に慣れているため、必ずしも駐車支援を必要としない。したがって車両2が駐車場に入場した場合、履歴データ33cが参照され、駐車支援の実行の要否が判断される。
【0037】
プログラム33dは、制御部31により読み出され、制御部31が駐車支援装置3を制御するために実行されるファームウェアである。
【0038】
カメラ4は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを備えたビデオカメラである。カメラ4は、例えば車両2のフロントグリル、左右のサイドミラー、及びリアゲートに設置され、車両2周囲の被写体を撮影する。カメラ4は、被写体を撮影すると画像信号を生成し、生成した画像信号を制御部31に送信する。
【0039】
ソナー5は、車両2周辺に超音波を発信し、車体から数十センチに所在する物体との距離を検知する超音波センサである。ソナー5は、物体を検知すると、物体データを制御部に送信する。
【0040】
インジケータ6は、灯火(ランプ)の点滅で運転者に運転操作の指示を行う点灯式指示器である。インジケータ6は、インナーパネル内に複数配置される。例えば、運転者にステアリングホイール(ハンドル)を右方向に回転すべき指示を行う場合、運転者から見て右方向に配置されたインジケータ6が点滅する。なお、インジケータの点灯に加え、ブザー等を鳴動させてもよい。
【0041】
ディスプレイ7は、画像等を表示する表示装置である。例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイである。ディスプレイ7は、タッチパッド7aを備える。
【0042】
タッチパッド7aは、ディスプレイ7に表示された文字や記号等を示す領域にユーザが手指で接触して圧力を加えると、接触した画面位置の位置データを取得する。タッチパッド7aは、取得した画面上の位置データを制御部31へ送信する。なお、ディスプレイ7とタッチパッド7aとでタッチパネルと称される場合もある。
【0043】
ナビゲーション装置8は、車両2の現在位置を地図上に表示し、ユーザに目的地までの経路を案内する経路案内装置である。ナビゲーション装置8は、地図データ8a及び位置導出部8bを備える。
【0044】
地図データ8aは、道路、駐車場種別、建物、鉄道、行政区画、海岸線、及び河川・湖沼等の位置を網羅したベクトル形式及びラスタ形式の地形図である。道路等は住所や緯度及び経度と関連付けられている。
【0045】
位置導出部8bは、衛星測位システムを利用して地球上における現在位置を測定する測定器である。衛星測位システムは、例えばグローバル・ポジショニング・システム(Global Positioning System;GPS)やグロナス(Global Navigation Satellite System;GLONASS)である。位置導出部8bは、図示しない受信機で複数の衛星から送信される信号を受信し、受信した信号に基づき現在位置を測定する。現在位置は、例えば緯度及び経度で示される位置である。位置導出部8bは、現在位置を測定すると、位置データとして制御部31へ送信する。
【0046】
駆動制御装置9は、車両2に備わる図示しない駆動機構(操舵装置、原動機、及び制動装置)を制御し、車両2の動作を制御する電子制御装置である。また、駆動制御装置9は、運転者により入力されたシフトポジションやステアリングの操作量等を示す駆動機構の状態を制御部31に送信する。駆動制御装置9は、シフト部9a、ステアリング部9b、スロットル部9c、及びブレーキ部9dを備える。
【0047】
シフト部9aは、図示しないシフトポジションセンサと接続され、運転者により入力されたシフトポジションを検出する。
【0048】
ステアリング部9bは、車両2に備わる操舵装置(ステアリング)を制御する。ステアリング部9bは操舵装置を制御して車両2の進行方向を変更する。
【0049】
スロットル部9cは、車両2に備わる原動機(エンジン)を制御する。スロットル部9cは原動機を制御し、車両2を走行させる。原動機は、内燃機関や電気モータである。
【0050】
ブレーキ部9dは、車両2に備わる制動装置(ブレーキ及びパーキングブレーキ)を制御する。ブレーキ部9dは制動装置を制御して車両2に制動をかけ、車両2を減速及び停止させる。また、ブレーキ部9dは、制動装置の制動状態を検出する。
【0051】
サーバ10は、情報ネットワーク上で他のコンピュータとデータ等を送受信する大規模演算処理装置である。サーバ10は、車両2や他の車両に搭載された駐車支援装置から駐車条件や駐車手法を示すデータを受信し、蓄積する。サーバ10の構成は、後に詳述する。
【0052】
次に、前述の駐車支援装置3の制御部31の備える機能について説明する。制御部31は、取得部31a、判断部31b、通知部31c、支援部31d、送信部31e、記録部31f、及び表示制御部31gを備える。
【0053】
取得部31aは、車両2に備わるセンサやデータから後述の駐車条件データを取得する。また、取得部31aは、サーバ10から後述の駐車手法モデルを受信する。取得部31aは駐車手法モデルを受信すると、受信した駐車手法モデルを判断部31bに設定する。なお、取得部31aは、本発明において、取得手段として機能する。
【0054】
判断部31bは、車両2の駐車操作が開始したか否か判断する。この際、判断部31bは、カメラ4から送信される映像に基づき、車両2が空いた駐車領域PAに接近しているか否かにより、車両2の駐車操作が開始したか否か判断する。これにより、判断部31bは、車両2が後進して駐車する場合のみならず、前進して駐車する場合であっても、車両2の駐車操作が開始したか否か判断できる。なお、判断部31bは、本発明において、判断手段として機能する。
【0055】
また、判断部31bは、車両2が駐車場から退場したか否か判断する。この際、判断部31bは、ナビゲーション装置8から車両2の現在位置を取得し、車両2が駐車場から退場したか否か判断する。
【0056】
また、判断部31bは、運転者による駐車操作が判断部31bに設定された駐車手法モデルと異なるか否か判断する。例えば、判断部31bは、駐車手法モデルが「後進・左旋回」を示す場合、運転者による駐車操作が「前進」又は「右旋回」であると、駐車操作は駐車手法モデルと異なると判断する。
【0057】
また、判断部31bは、駐車操作が完了したか否か判断する。この際、判断部31bは、カメラ4の映像及び駆動制御装置9の示すデータにより駐車操作が完了したか否か判断する。例えば、判断部31bは、カメラ4の映像により車両2が駐車領域に収まり、ブレーキ部9dの信号によりパーキングブレーキが掛けられたと判断した場合に、駐車操作が完了したと判断する。
【0058】
通知部31cは、運転者に駐車支援の要否を問い合わせる。通知部31cは、例えば、「駐車支援を開始しますか?」のメッセージをディスプレイ7に表示させる。また、通知部31cは、メッセージへの回答となる画像、例えば「はい」及び「いいえ」を示す画像をディスプレイ7に表示させる。なお、通知部31cは、本発明において、通知手段として機能する。
【0059】
図4は、通知部31cが運転者へ駐車支援を開始するか否か問い合わせるメッセージの表示例である。通知部31cは、運転者が駐車手法モデルと異なる駐車操作を行った場合、すなわち駐車操作に苦慮している場合、ディスプレイ7に駐車支援を開始するか否か問い合わせるメッセージMQを表示させる。メッセージMQは、例えば、「駐車支援を開始しますか?」である。また、ディスプレイ7には、タッチパッド7aに対応したボタンが表示される。表示されるボタンは、「はい」ボタンMK及び「いいえ」ボタンMNである。運転者は「はい」ボタンMK又は「いいえ」ボタンMNをタッチすることで、メッセージMQに対し、駐車支援を欲するか否か自らの意思を入力できる。
【0060】
再度図3を参照し、制御部31の備える機能を説明する。支援部31dは、カメラ4及びソナー5による駐車領域の配置及び車両2周辺の障害物の位置に基づき、インジケータ6を点灯させ、運転者による車両2の運転操作を支援する。すなわち、支援部31dは、車両2が円滑に駐車領域に駐車されるようなステアリングの操作方向等を運転者に示す。また、支援部31dは、駆動制御装置9を制御して、車両2を運転者の操作を介さずに駐車する、いわゆる自動運転を行ってもよい。支援部31dが車両2の駐車を自動的に制御することで、運転者がステアリング(ハンドル)、スロットル(アクセル)、及びブレーキを操作せずとも、車両2は駐車領域PAへ駐車される。なお、支援部31dは、本発明において、支援手段として機能する。
【0061】
送信部31eは、送受信機32を制御して、駐車支援装置3の外部に備わる装置等とデータの送受信を行う。例えば、送信部31eは、取得部31aが取得した駐車条件データをサーバ10に送信する。
【0062】
記録部31fは、車両2の駐車手法を記録する。記録部31fは、運転者による車両2の駐車操作の開始後のシフトポジション、ステアリング、スロットル、及びブレーキの動きを駐車手法データとして記録する。記録部31fの記録した駐車手法を解析することで、車両2がどのような手法で駐車されたか判別できる。例えば、車両2が後進しつつ左旋回で駐車されたと判別できる。記録部31fが記録した駐車手法データは、送信部31eによりサーバ10に送信され、駐車手法モデルの生成の元データとされる。
【0063】
表示制御部31gは、ディスプレイ7に画像等の表示、及び表示の停止を行う。表示制御部31gがディスプレイ7に表示させる画像は、例えば、経路案内用の地図画像や車両後方等の周辺映像のほか、文字や図形である。
【0064】
次に、サーバ10の構成を説明する。サーバ10は、大規模な記憶領域及び高い演算処理機能を備え、複数の運転者により利用されるホスティングサーバである。図5は、サーバ10の構成を示すブロック図である。サーバ10は、制御部101、送受信機102、及びデータベース103を備える。
【0065】
制御部101は、CPU、RAM、及びROMを備えたコンピュータである。制御部101は、サーバ10の全体を制御する。制御部101の備える各機能は後述する。
【0066】
送受信機102は、ネットワークを介して駐車支援装置3とデータの送受信を行う通信機である。例えば、WiMAXやLTE等を利用した無線通信機である。
【0067】
データベース103は、データを記憶する記憶媒体である。例えば、EEPROMや、フラッシュメモリ、磁気ディスクを備えたハードディスクドライブ等の不揮発性メモリである。データベース103は、駐車手法モデル103a及び駐車条件データ103bを蓄積(記憶)する。
【0068】
駐車手法モデル103aは、所定の駐車条件において、駐車支援装置3を備えた車両2を運転する運転者が、実際に車両を駐車領域PAに駐車させた手法を収集したデータである。例えば、「後進・左旋回」を示すデータである。駐車手法モデル103aは、データベース103に複数記憶される。
【0069】
駐車条件データ103bは、車両2が駐車する際の複数の条件を示すデータ群である。駐車条件データ103bは、駐車場種別、運転者情報、時刻等を示す。駐車条件データ103bは、駐車手法モデル103aが示す運転手法が行われた際の駐車条件である。したがって、駐車条件データ103bと駐車手法モデル103aとは、互いに関連付けられている。
【0070】
図6は、データベース103に入力されている駐車手法モデル103a及び駐車条件データ103bの例を示す。駐車手法モデル103aと駐車条件データ103bとは、互いに関連付けられ、データベース103に複数入力されている。
【0071】
駐車手法モデル103aは、前述の通り、駐車条件データ103bに示す条件下において、実際に駐車領域PAへ適切に駐車された手法を記録したデータである。したがって、駐車手法モデル103aは、駐車条件データ103bに示す条件下における一般的又は理想的な駐車手法を示す。なお、かかる駐車手法で車両を運転した運転者は、必ずしも同一者とは限らない。駐車手法モデル103aは、様々な運転者が行った駐車手法に基づいて、サーバ10で生成されるからである。
【0072】
また、運転者が駐車に苦慮している場合等、駐車支援を欲する場合に、かかる運転者の状況に合致した又は類似した駐車条件に関連付けられた駐車手法モデル103aが、データベース103から選択される。例えば、選択された駐車手法モデル103aが「後進・左旋回」の駐車手法を示す場合、駐車支援装置3は、車両2の運転者に対し、駐車領域PAへ後進しつつ左旋回で駐車するよう支援する。
【0073】
駐車条件データ103bは、車両2が駐車する際の条件を示す複数のデータ群Dである。具体的には、駐車条件データ103bは、駐車場種別D1、運転者情報(性別)D2、運転者情報(年齢)D3、運転者情報(経験)D4、時間帯D5、乗員数D6、歩行者数D7、駐車領域PAの向きD8、対向車D9、後続車D10、及び進行方向D11である。
【0074】
駐車場種別D1は、「ショッピングセンター駐車場」や「サービスエリア」等である。運転者情報(性別)D2は、「男性」又は「女性」の別である。運転者情報(年齢)D3は、「50歳代」等の年代である。運転者情報(経験)D4は、「初心者」、「経験者」又は「熟練者」の別である。時間帯D5は、「早朝」、「昼間」、「夕方」、「夜間」又は「深夜」の時間帯である。乗員数D6は、車両2に乗車する乗員の数である。歩行者数D7は、車両2が入場した駐車場内を歩行する歩行者の数である。駐車領域PAの向きD8は、「直交」、「平行」又は「傾斜」である。対向車D9は、車両2に対向する車両の有無である。後続車D10は、車両2に後続する車両の有無である。進行方向D11は、車両2の進行する方向であり、「直進」又は「後進」である。
【0075】
再度図5を参照し、サーバ10の制御部101の備える機能を説明する。制御部101は、収集部101a、生成部101b、選択部101c、及び送信部101dを備える。
【0076】
収集部101aは、送受信機102を介して、駐車支援装置3から送信される駐車条件データ及び駐車手法データを収集する。収集部101aは、運転者が駐車手法モデルを利用せずに駐車操作を行っている場合の駐車条件データと、運転者が駐車支援を希望した場合の駐車条件データとを収集する。なお、運転者が駐車手法モデルを利用せずに駐車操作を行っている場合の駐車条件データは、新たな駐車手法モデルの生成に利用され、運転者が駐車支援を希望した場合の駐車条件データは既に生成された駐車手法モデルの選択に利用される。なお、収集部101aは、本発明において、収集手段として機能する。
【0077】
生成部101bは、駐車手法モデルを生成する。すなわち、生成部101bは、収集部101aが受信した駐車条件データ及び駐車手法データを解析し、どのような駐車条件においてどのような駐車手法が採られたかを認識する。例えば、生成部101bは、駐車条件として「歩行者数15人のショッピングセンター駐車場において50歳代の男性・熟練者が夕方に乗員2名で自車両と直交する駐車領域を直進し、対向車がなく後続車がある」場合に、運転者が「後進・左旋回」で駐車を完了すると、これら駐車条件に関連した駐車手法モデルとして「後進・左旋回」を生成する。生成部101bは、駐車手法モデルを生成すると、データベース103に蓄積する。なお、生成部101bは、本発明において、生成手段として機能する。
【0078】
選択部101cは、データベース103を参照し、収集部101aが受信した駐車条件データに合致する駐車条件データと関連付けられた駐車手法モデルを選択する。なお、駐車条件データは、完全に合致する必要はない。11項目の駐車条件データ(D1〜D11)のうち、一定項目以上、例えば6項目以上が合致すればよい。この場合に選択された駐車手法モデルであっても、駐車操作に苦慮する運転者にとって有用な駐車手法だからである。
【0079】
送信部101dは、選択部101cが選択した駐車手法モデルを送受信機102を介して駐車支援装置3へ送信する。これにより、駐車支援装置3は、サーバ10で選択された最適な駐車手法モデルを受信し、運転者に駐車支援を実行できる。
【0080】
<1−3.工程>
次に、駐車支援装置3の処理工程を説明する。図7ないし図9は、駐車支援装置3の処理工程を示すフローチャートである。図7は、駐車支援装置3のメインルーチンとなる処理工程を示すフローチャートである。処理工程は、所定周期で繰り返し実行される。なお、ステップS11及びステップS12は、処理工程開始初期の処理となる初期処理である。ステップS13からステップS16は、駐車手法モデルを駐車支援装置3に設定する処理工程となる駐車支援モデル設定処理である。ステップS17からステップS26は、駐車支援を実行する処理工程となる支援実行処理である。
【0081】
処理が開始すると、判断部31bが、車両2が駐車場に入場したか否か判断する(ステップS11)。判断部31bは、ナビゲーション装置8から車両2の現在位置及び場所を取得し、かかる判断を行う。
【0082】
判断部31bが車両2は駐車場に入場していないと判断する場合(ステップS11でNo)、処理は終了する。駐車支援は、駐車場内において実行される制御だからである。
【0083】
判断部31bが車両2は駐車場に入場したと判断する場合(ステップS11でYes)、支援部31dが、記憶部33の履歴データ33cを参照し、車両2が入場した駐車場における駐車支援の要否を判断する(ステップS12)。すなわち、運転者は日常的に利用する等の慣れた駐車場では必ずしも駐車支援を必要としない。この場合、運転者は特定の駐車場に対して駐車支援が不要である旨を予め駐車支援装置3に入力しておくことで、かかる駐車場に入場する度に駐車支援が実行されることを防止できる。したがって、運転者が駐車支援は不要である旨を駐車場と対応付け、記憶部33の履歴データ33cに記憶している場合がある。
【0084】
支援部31dが駐車支援を不要と判断すると(ステップS12でYes)、処理は終了する。運転者が駐車支援を不要としている以上、駐車支援を実行する必要がないからである。
【0085】
一方、支援部31dが駐車支援を不要でない判断すると(ステップS12でNo)、取得部31aが、車両2が現在置かれている駐車条件を取得する(ステップS13)。
【0086】
図8は、取得部31aが駐車条件を取得する処理工程(ステップS13)の詳細を示すフローチャートである。
【0087】
ステップS13が実行されると、取得部31aは、ナビゲーション装置8から車両2が入場した駐車場の種別データを取得する(ステップS13a)。
【0088】
取得部31aは、駐車場の種別データを取得すると、記憶部33の運転者データ33aを参照し、運転者情報を取得する(ステップS13b)。取得部31aが取得する運転者情報は、運転者の性別、年代、及び運転経験である。
【0089】
取得部31aは、運転者情報を取得すると、ナビゲーション装置8から現在の時間帯を取得する(ステップS13c)。例えば、取得部31aが取得する時間帯は、「夕方」等である。
【0090】
取得部31aは、現在の時間帯を取得すると、車両2の各座席に備えられた座席センサ(図示せず)から車両2の乗員数を取得する(ステップS13d)。
【0091】
取得部31aは、車両2の乗員数を取得すると、カメラ4が駐車場内を撮影した画像に基づき、駐車場内を歩行する歩行者数を取得する(ステップS13e)。なお、パターンマッチング等の既知の画像処理手法を用いることで、駐車場内を撮影した画像から歩行者数を検知できる。
【0092】
取得部31aは、歩行者数を取得すると、カメラ4が駐車場内を撮影した画像に基づき、車両2に最も接近しかつ他の車両が駐車していない駐車領域PAの向きを取得する(ステップS13f)。なお、白線検知処理等の既知の画像処理手法を用いることで、駐車場内を撮影した画像から駐車領域PAの向きを検知できる。
【0093】
取得部31aは、駐車領域PAの向きを取得すると、車両2の前後に設けられたカメラ4の撮影した画像に基づき、車両2の対向車及び後続車の有無を取得する(ステップS13g及びステップS13h)。前述のパターンマッチング等の既知の画像処理手法を用いることができる。
【0094】
取得部31aは、対向車及び後続車の有無を取得すると、シフト部9aの示すシフトポジションに基づき、車両2の進行方向を取得する(ステップS13i)。取得部31aは、シフト部9aの示すシフトポジションが「Drive」である場合、車両2の進行方向は「前進」と判別できる。一方、取得部31aは、シフト部9aの示すシフトポジションが「Reverse」である場合、車両2の進行方向は「後進」と判別できる。
【0095】
取得部31aが各データを取得すると、処理は、図7に示すメインルーチンに戻る。
【0096】
再度図7を参照し、駐車支援装置3の処理工程を説明する。取得部31aが各データを取得すると(ステップS13)、送信部31eが、取得部31aが取得した各データを送受信機32によりサーバ10に送信する。
【0097】
送信部31eが駐車条件データをサーバ10に送信すると、駐車支援装置3は、サーバ10が駐車手法モデル103aを返信するまで待機する。
【0098】
サーバ10が駐車手法モデル103aを駐車支援装置3へ送信すると、取得部31aが、駐車手法モデル103aを受信する(ステップS15)。
【0099】
取得部31aは、駐車手法モデル103aを受信すると、受信した駐車手法モデル103aを判断部31bに設定する(ステップS16)。
【0100】
取得部31aが駐車手法モデル103aを判断部31bに設定すると、判断部31bは、車両2の駐車操作が開始したか否か判断する(ステップS17)。判断部31bは、カメラ4から送信される映像に基づき、車両2が空いた駐車領域PAに接近しているか否かにより、車両2の駐車操作が開始したか否か判断する。このように、判断部31bは、映像に基づいて駐車操作の開始有無を判断することが望ましい。車両2は後進して駐車する場合のみならず前進して駐車する場合もあるため、判断部31bはシフトポジションのみから駐車操作が開始したか否か必ずしも判断できないからである。
【0101】
判断部31bは、車両2の駐車操作が開始しないと判断すると(ステップS17でNo)、車両2が駐車場から退場したか否か判断する(ステップS18)。
【0102】
判断部31bは、車両2が駐車場から退場しないと判断すると(ステップS18でNo)、車両2が駐車場から退場するまで繰り返しステップS17の駐車操作の開始の有無を判断する。
【0103】
一方、判断部31bが車両2は駐車場から退場したと判断すると(ステップS18でYes)、処理は終了する。車両2が駐車場から退場した以上、駐車支援はもはや不要だからである。
【0104】
ステップS17において判断部31bは、車両2の駐車操作が開始したと判断すると(ステップS17でYes)、駆動制御装置9からステアリング等の動作を取得し、運転者による駐車操作が判断部31bに設定された駐車手法モデルと異なるか否か判断する(ステップS19)。
【0105】
判断部31bは、駐車操作が駐車手法モデルと異ならないと判断すると(ステップS19でNo)、駐車操作が完了したか否か判断する(ステップS20)。判断部31bは、カメラ4の映像及び駆動制御装置9の示すデータにより駐車操作が完了したか否か判断する。
【0106】
判断部31bが駐車操作は完了したと判断すると(ステップS20でYes)、処理は、終了する。車両2の駐車操作が完了した以上、駐車支援はもはや不要だからである。
【0107】
一方、判断部31bが駐車操作は完了していないと判断すると(ステップS20でNo)、処理はステップS19に戻り、判断部31bが運転者による駐車操作が駐車手法モデルと異なるか否か再度判断する。
【0108】
ステップS19において判断部31bが運転者による駐車操作は駐車手法モデルと異なると判断すると(ステップS19でYes)、通知部31cが、運転者へ駐車支援を開始するか否か問い合わせる(ステップS21)。運転者による駐車操作が駐車手法モデルと異なる場合は、運転者が車両2の駐車操作に苦慮している恐れがある場合である。すなわち、駐車手法モデルは一定の駐車条件下における一般的又は理想的な駐車手法を示すため、かかる駐車手法モデルから外れた駐車手法が行われる場合、運転者は駐車操作に苦慮していると判断できる。ステップS21における問い合わせは、前述の通り、通知部31cがディスプレイ7にメッセージを表示して実行する。
【0109】
通知部31cが運転者へ駐車支援を開始するか否か問い合わせると、表示制御部31gが、運転者が駐車支援の問い合わせを承認するか否か判断する(ステップS22)。表示制御部31gは、運転者のタッチパッド7aへの入力に基づき、かかる判断を行う。すなわち、運転者は、駐車支援を承認する場合には承認を示すディスプレイ7上のボタン(例えば、「はい」)をタッチし、承認しない場合には非承認を示すボタン(例えば、「いいえ」)をタッチするからである。
【0110】
表示制御部31gが運転者は駐車支援を承認しないと判断すると(ステップS22でNo)、記録部31fは、駐車支援を利用しない運転者による車両2の駐車手法を記録する(ステップS23)。記録部31fが駐車手法を記録すると、判断部31bが、駐車操作が完了したか否か判断する(ステップS24)。
【0111】
判断部31bが駐車操作は完了しないと判断すると(ステップS24でNo)、記録部31fは、判断部31bが駐車操作は完了したと判断するまで、駐車手法の記録を継続する(ステップS23)。
【0112】
一方、判断部31bが駐車操作は完了したと判断すると(ステップS24でYes)、送信部31eは、記録部31fが記録した駐車手法をサーバ10へ送信する(ステップS25)。このように、駐車支援を実行せずに運転者が自ら駐車した手法が、記録部31fにより記録され、サーバ10へ送信される。サーバ10に送信された駐車手法は、ステップS14において予め送信された駐車条件と関連付けられ、新たな駐車手法モデルを生成するデータとなる。送信部31eが駐車手法をサーバ10へ送信すると、処理は、終了する。駐車が完了しているからである。
【0113】
一方、表示制御部31gが運転者は駐車支援を承認したと判断すると(ステップS22でYes)、支援部31dは、駐車支援を開始する(ステップS26)。
【0114】
図9は、支援部31dが実行する駐車支援の処理の詳細を示すフローチャートである。駐車支援処理が開始すると、支援部31dが、「駐車支援」と「自動運転」とのいずれかが選択されているか判断する(ステップS26a)。かかる選択に際し、運転者は予めいずれかを選択して記憶部33に記憶させてもよいし、支援部31dが駐車支援処理の実行毎に運転者へ問い言わせてもよい。
【0115】
ステップS26bからステップS26eまでは駐車支援処理を示す。駐車支援処理は、駐車支援装置3が運転者の駐車操作を支援する処理である。
【0116】
支援部31dが「駐車支援」が選択されたと判断すると(ステップS26aで「駐車支援」)、表示制御部31gが、ディスプレイ7をオフする(ステップS26b)。すなわち、ディスプレイ7へ何ら画像及び映像の表示を行わない。これにより、運転者は、ディスプレイ7に車両2の周辺映像等が表示されないため、自ら車両2周辺の安全を積極的に確認する必要がある。したがって、表示制御部31gはディスプレイ7をオフすることで、運転者に対し、安全性のより高い目視による安全確認を促すことができる。
【0117】
表示制御部31gがディスプレイ7をオフすると、支援部31dが、カメラ4及びソナー5から送信されるデータに基づいてセンシングを実行する(ステップS26c)。すなわち、支援部31dは、カメラ4の送信する画像データから駐車領域を検出し、ソナー5の送信する物体データから駐車領域周辺の障害物を検出する。
【0118】
支援部31dは、センシングを実行すると、ステップS16で取得部31aに設定された駐車手法モデル103aに従って、インジケータ6を点灯させ、車両2が駐車領域PAに収まるよう運転者に駐車操作を指示する(ステップS26d)。すなわち、支援部31dは、駐車手法モデル103aが「後進・左旋回」を示す場合、シフトレバーをリバースに入力し、アクセルペダルを踏み、ハンドルを左方向に回転させるようインジケータ6で運転者に指示する。
【0119】
支援部31dがインジケータ6を点灯させて運転者に駐車操作を指示すると、判断部31bが、駐車操作が完了したか否か判断する(ステップS26e)。
【0120】
支援部31dは、判断部31bが駐車操作は完了しないと判断する間は(ステップS26eでNo)、繰り返しセンシング(ステップS26c)とインジケータ6による駐車操作の指示(ステップS26d)を実行する。
【0121】
一方、判断部31bが駐車操作は完了したと判断すると(ステップS26eでYes)、処理は図7に戻り、終了する。
【0122】
ステップS26fからステップS26iまでは自動運転処理を示す。自動運転処理は、駐車支援装置3が運転者の操作を介さず、自動で車両を駐車する処理である。
【0123】
ステップS26aにおいて、支援部31dが「自動運転」が選択されたと判断すると(ステップS26aで「自動運転」)、表示制御部31gが、ディスプレイ7に自動運転を開始する旨のメッセージを表示する(ステップS26f)。自動運転は運転者の操作を介さず車両2を制御するため、運転開始前に予め運転者に自動運転の開始を予告しておくことが安全上好ましい。例えば、表示制御部31gは、「自動運転による駐車を開始します。」とのメッセージをディスプレイ7に表示する。
【0124】
表示制御部31gがディスプレイ7にメッセージを表示すると、支援部31dが、センシングを実行し(ステップS26g)、ステップS16で判断部31bに設定された駐車手法モデル103aに従って、車両2が駐車領域PAに収まるよう駐車操作を実行する(ステップS26g)。
【0125】
支援部31dは、判断部31bが駐車操作は完了していないと判断する間は(ステップS26iでNo)、繰り返しセンシング(ステップS26g)と駐車操作とを実行(ステップS26h)する。
【0126】
判断部31bが駐車操作は完了したと判断すると(ステップS26iでYes)、処理は図7に戻り、終了する。
【0127】
次に、サーバ10の処理工程を説明する。図10は、サーバ10の処理工程を示すフローチャートである。サーバ10の処理工程は、所定周期で繰り返し実行される。なお、ステップS31からステップS33までは、駐車手法モデルを生成する処理工程を示すモデル生成処理である。また、ステップS34からステップS37までは、予め蓄積した駐車手法モデルからいずれかの駐車手法モデルを選択する処理工程を示すモデル選択処理である。モデル生成処理とモデル選択処理とは、必ずしも連続して実行される必要はなく、異なる時機に実行されてもよい。
【0128】
処理が開始すると、収集部101aが、駐車支援装置3から送信される駐車条件データを収集する(ステップS31)。
【0129】
収集部101aは、駐車条件データを収集すると、駐車支援装置3からかかる駐車条件における駐車手法データを受信する(ステップS32)。なお、本処理において収集部101aが受信する駐車手法データは、運転者が駐車支援を受けずに駐車操作を行った場合の駐車手法データである。かかる駐車手法データが、運転者が苦慮せず駐車を行ったと考えられる駐車手法を示すからである。
【0130】
収集部101aが駐車手法データを受信すると、生成部101bが、収集部101aが受信した駐車手法データに基づき、前述の通り駐車手法モデルを生成する(ステップS33)。
【0131】
生成部101bが駐車手法モデルを生成すると、収集部101aが、駐車条件データを駐車支援装置3から受信する(ステップS34)。なお、本処理において収集部101aが受信する駐車条件データは、ステップS31の場合とは異なり、運転者が駐車支援を希望した場合にサーバ10へ送信される駐車条件データである。
【0132】
収集部101aが駐車条件データを受信すると、選択部101cが、データベース103を参照する(ステップS35)。
【0133】
選択部101cは、データベース103を参照し、ステップS34で収集部101aが受信した駐車条件データに合致する駐車条件データ103bと関連付けられた駐車手法モデル103aを選択する(ステップS36)。
【0134】
選択部101cが駐車手法モデルを選択すると、送信部101dが、選択された駐車手法モデルを駐車支援装置3へ送信する(ステップS37)。これにより、駐車支援装置3は、サーバ10で選択された最適な駐車手法モデルを受信し、運転者に駐車支援を実行できる。
【0135】
送信部101dが駐車手法モデルを送信すると、サーバ10の処理工程は終了する。
【0136】
以上の通り、本実施の形態に係る駐車支援装置3は、所定の駐車条件での運転者の駐車手法が同じ駐車条件で生成された駐車手法を示す駐車手法モデルと異なる場合に、車両2の駐車操作を支援するか否かを運転者に問い合わせる。駐車支援装置3は、運転者が駐車支援を承認した場合に、車両2の駐車操作を支援する。
【0137】
これにより、運転者が望まない無用な駐車支援を防止し、運転者が望む真に必要な駐車支援を実行できる。
【0138】
また、運転者がシフトレバーをリバース(後進)に入力する毎に駐車支援を実行することを防止し、駐車支援装置3の処理を簡素化できる。
【0139】
また、運転者は駐車支援を望まない場合にシフトレバーをリバースに入力する毎に駐車支援を停止する必要がなく、駐車支援装置3に対する操作の煩わしさを防止できる。
【0140】
<2.第2の実施の形態>
<2−1.概要>
次に、第2の実施の形態について説明する。前述の第1の実施の形態は、サーバ10が駐車手法モデル103aの生成と選択を行った。これに対し、第2の実施の形態は、駐車支援装置3が駐車手法モデル103aの生成と選択を行う。すなわち、駐車支援装置3が、運転者への駐車支援に加えて、第1の実施の形態におけるサーバ10の機能をも実行する。これにより、駐車支援装置3は、サーバ10を介さずとも、駐車手法モデルを生成し、駐車条件に応じた駐車手法モデルを選択して運転者を駐車支援できる。
【0141】
<2−2.構成・工程>
図11は、第2の実施の形態における駐車支援システム1の駐車支援装置3の構成を示すブロック図である。第2の実施の形態における駐車支援装置3の制御部31は、第1の実施の形態における機能に加え、収集部31h、モデル生成部31i、及び選択部31jを備える。
【0142】
収集部31h、モデル生成部31i、及び選択部31jは、第1の実施の形態におけるサーバ10の備える収集部101a、生成部101b、及び選択部101cと同様に機能する。この際、収集部101aは、自車両2に備わる駐車支援装置3のみならず、他車両に備わる駐車支援装置からも駐車条件データ及び駐車手法データを収集する。
【0143】
駐車支援装置3は、第1の実施の形態における制御部31、送受信機32、及び記憶部33に加え、データベース34を備える。データベース34は、駐車手法モデル34a及び駐車条件データ34bを蓄積(記憶)する。
【0144】
データベース34、駐車手法モデル34a、及び駐車条件データ34bは、第1の実施の形態におけるデータベース103、駐車手法モデル103a、及び駐車条件データ103bと同様に機能する。
【0145】
また、第2の実施の形態における駐車支援装置3は、第1の実施の形態においてサーバ10が実行した処理工程を実行する。すなわち、駐車支援装置3は、図10に示したステップS31からステップS36を実行する。
【0146】
これにより、駐車支援装置3は、サーバ10を介さずとも、駐車手法モデルを生成し、駐車条件に応じた駐車手法モデルを選択して運転者を駐車支援できる。
【0147】
<3.変形例>
本発明は、上記実施の形態に限定されず、変形可能である。以下、本発明の変形例を説明する。なお、上記及び以下に説明する実施の形態は、適宜組み合わせできる。
【0148】
上記実施の形態では、駐車条件データの例として11項目(D1〜D11)を示した。しかし、駐車条件データは、上記実施の形態で示した11項目に限られない。他の項目を用いてもよい。例えば、小型車、中型車、又は大型車等の「車型」である。また、軽自動車、スポーツカー、又はファミリーカー等の「車種」である。
【0149】
また、駐車条件データは、駐車手法モデルの選択において必ずしも11項目の全てが考慮される必要はない。少なくとも1項目以上が考慮されればよい。
【0150】
また、上記実施の形態で一体構成として説明した構成は、必ずしも一体構成として実施される必要はない。一体構成として説明した構成を分散して実施してもよい。例えば、駐車支援装置3から記憶部を分離してもよい。
【0151】
また、上記実施の形態で複数構成として説明した構成は、必ずしも複数構成として実施される必要はない。複数構成として説明した構成を一体構成として実施してもよい。例えば、駐車支援装置3にカメラを内蔵し、両者を一体構成としてもよい。また、駐車支援装置3とナビゲーション装置8とを一体にし、両者を一体構成としてもよい。
【0152】
また、サーバ10が、車両2内の装置の備える構成及び駐車支援装置3の備える構成の一部を備えてもよい。また、サーバ10が、駐車支援装置3の備える機能の一部を実行してもよい。例えば、サーバ10が、運転者が行っている駐車手法が一般的又は理想的な駐車手法と異なるか否か判断してもよい。
【0153】
また、上記実施の形態でハードウェアとして説明した構成をソフトウェアで実現してもよい。一方、ソフトウェアとして説明した機能をハードウェアで実現してもよい。また、ハードウェア又はソフトウェアをハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで実現してもよい。また、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせをハードウェア又はソフトウェアのいずれかで実現してもよい。
【符号の説明】
【0154】
1 駐車支援システム
2 車両
3 駐車支援装置
4 カメラ
5 ソナー
6 インジケータ
7 ディスプレイ
8 ナビゲーション装置
9 駆動制御装置
10 サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11