(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
乳脂肪源、乳蛋白質源、及び水を含み、pHが6.1〜6.4である原料組成物に、脂肪分解酵素及び蛋白質分解酵素を添加して酵素反応を行った後、酵素を失活させて、遊離脂肪酸および遊離アミノ酸を含む酵素処理組成物を得る工程と、
前記酵素処理組成物を用いて呈味組成物を製造する工程を有し、
前記原料組成物は、乳脂肪の含有量が35〜60質量%、かつ乳蛋白質の含有量が3〜10質量%であり、
前記脂肪分解酵素が微生物由来のリパーゼであり、前記蛋白質分解酵素が微生物由来のプロテアーゼであり、
前記遊離脂肪酸が、炭素数4の脂肪酸、炭素数6の脂肪酸および炭素数8の脂肪酸からなる群から選ばれる1種以上の短鎖脂肪酸、ならびに炭素数16の飽和脂肪酸、炭素数18の飽和脂肪酸および炭素数18の1価の不飽和脂肪酸からなる群から選ばれる1種以上の長鎖脂肪酸を含み、短鎖脂肪酸の合計の含有量に対する長鎖脂肪酸の合計の含有量の質量比を表す(C16+18)/(C4+6+8)が9〜10であり、
前記遊離アミノ酸が、下記アミノ酸(A)から選ばれる1種以上および下記アミノ酸(C)から選ばれる1種以上を含み、アミノ酸(A)の合計の含有量に対するアミノ酸(C)の合計の含有量の質量比を表すアミノ酸(C)/アミノ酸(A)が9〜13.5である、呈味組成物の製造方法。
アミノ酸(A):アスパラギン酸(Asp)およびグルタミン酸(Glu)。
アミノ酸(C):イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)、メチオニン(Met)、ヒスチジン(His)およびアルギニン(Arg)。
前記遊離アミノ酸が、さらに、下記アミノ酸(B)から選ばれる1種以上を含み、アミノ酸(A)の合計の含有量に対する、アミノ酸(B)の合計の含有量の質量比を表すアミノ酸(B)/アミノ酸(A)が3〜7である、請求項1または2に記載の呈味組成物の製造方法。
アミノ酸(B):スレオニン(Thr)、セリン(Ser)、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、プロリン(Pro)およびリジン(Lys)。
前記遊離脂肪酸が、さらに、炭素数が10または12である脂肪酸からなる群から選ばれる1種以上の中鎖脂肪酸を含み、中鎖脂肪酸の合計の含有量に対する前記長鎖脂肪酸の合計の含有量の質量比を表す(C16+18)/(C10+12)が10〜14である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の呈味組成物の製造方法。
前記原料組成物が、さらに、発酵乳、クエン酸、および乳酸からなる群から選ばれる1種以上のpH調整成分を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の呈味組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<遊離脂肪酸の測定方法>
本発明における遊離脂肪酸の組成および総遊離脂肪酸量は、以下の方法で得られる値である。
すなわち、下記の方法でガスクロマトグラフィー分析を行って、試料中の酪酸(C4)、カプロン酸(C6)、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリル酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、パルミトレイン酸(C16:1)、ステアリン酸(C18)、およびオレイン酸(C18:1)をそれぞれ同定して定量する。これらの合計を総遊離脂肪酸量とする。
本明細書において、風味への影響の観点から遊離脂肪酸をグループ分けし、炭素数4、6または8の遊離脂肪酸を短鎖脂肪酸、炭素数10または12の遊離脂肪酸を中鎖脂肪酸、炭素数16または18の飽和脂肪酸もしくは炭素数18の1価の不飽和脂肪酸を長鎖脂肪酸という。
なお、本発明において、ミリスチン酸(C14)は中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸との中間的な風味を示し、パルミトレイン酸(C16:1)は含有量が少なく風味への影響が小さいため、いずれのグループにも含まれないものとする。
【0010】
[ガスクロマトグラフィー分析]
50mLの遠沈管に試料1.0gを精秤し、これに純水10mL、エタノール10mL、エーテルとヘプタンの混合液(体積比1:1)15mL、濃硫酸1mL、内部標準溶液(吉草酸(C5)、ヘプタン酸(C7)、トリデカン酸(C13)、ヘプタデカン酸(C17))1mLを加え、10分間振とうし、更に3000rpmにて10分間遠心分離する。遠心分離後、上層を100mL三角フラスコに採取しておく。
残液についてはエーテル・ヘプタン混液(1:1)15mLを加え、10分間振とう後、更に3000rpmにて10分間遠心分離し、上層を採取する。採取した上層部に硫酸ナトリウムを6g加える。
固相(Biotage社製、ISOLUTE NH2 500mg 3mL SPE Columns)に10mLのヘプタンを通液後、上層部を通液して固相吸着する。固相にクロロホルムと2−プロパノール混合液(体積比2:1)を5mL通液させ洗浄し、その後2質量%ギ酸含有エーテルにて抽出して検液とする。
検液はバイアル瓶に移してガスクロマトグラフィーにて分析する。ガスクロマトグラフィーはカラム(VARIAN CP−FFAP CB for free faty acid(25m×0.32mm ID.0.3μm膜厚)、キャリアーガスHe、オーブン温度条件(40℃1分間保持後、10℃/minにて昇温、210℃からは5℃/minにて昇温、240℃にて10分間保持)、FID検出機を用いて行う。
【0011】
<遊離アミノ酸の測定方法>
本発明における総遊離アミノ酸量および組成は、以下の方法で得られる値である。
本明細書において、アスパラギン酸(Asp)およびグルタミン酸(Glu)からなる群をアミノ酸(A);
スレオニン(Thr)、セリン(Ser)、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、プロリン(Pro)およびリジン(Lys)からなる群をアミノ酸(B);
イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)、メチオニン(Met)、ヒスチジン(His)およびアルギニン(Arg)からなる群をアミノ酸(C);という。
アミノ酸(A)はうま味に寄与し、アミノ酸(B)は甘味に寄与し、アミノ酸(C)は苦味に寄与する。なお、本発明において、アスパラギン(Asn)とグルタミン(Gln)は風味への影響が小さいため、いずれのグループにも含まれないものとする。
アミノ酸(A)、(B)、(C)、アスパラギン(Asn)およびグルタミン(Gln)の合計を総遊離アミノ酸量とする。
【0012】
[遊離アミノ酸の定量方法]
試料1gに20質量%スルホサリチル酸溶液を添加し、スルホサリチル酸が蛋白質と同量になるようにし、水で10mLに定容する。よく撹拌し、30分間静置後3000rpmで15分間遠心分離を行う。上澄み液を注射筒で約1.5mL取り、ミクロフィルターでろ過し、試料を除蛋白する。その試料中に存在する遊離アミノ酸の質量を以下の方法で定量する。
トリプトファン、システイン及びメチオニン以外のアミノ酸については、試料を6N塩酸で110℃、24時間加水分解し、トリプトファンについては、水酸化バリウムで110℃、22時間アルカリ分解し、システイン及びメチオニンについては、過ギ酸処理後、6N塩酸で110℃、18時間加水分解し、それぞれアミノ酸分析機(日立製作所製、835型)により分析し、各遊離アミノ酸の質量を測定する。
【0013】
<総脂肪量の測定方法>
本発明における総脂肪量の測定は、レーゼゴットリーブ法(食品衛生検査指針 理化学編 2005 p.48−49 厚生労働省監修)にて行う。以下に具体的な測定方法を示す。
詳細には、試料約1g(試料質量は0.1mgの単位まで測定する)をビーカーに採取し、温水約10mLを用いてビーカー内を洗いながら、抽出管に移す。その抽出管にアンモニア水2mLとフェノールフタレイン試薬を1滴加え、栓をし、良く混合する。その後、エタノール10mLを用いて、試料を採取したビーカーを洗いながら抽出管に加え、栓をして良く混ぜ合わせる。次に、エーテル25mL加え栓をして30秒間激しく振り混ぜる。最後に石油エーテルを25mL加え、栓をして、30秒間激しく振り混ぜる。上層が透明になるまで静置した後、あらかじめ恒量したディッシュにエーテル層をこぼさないようにデカンテーションして、有機溶媒を回収する。このディッシュを100℃〜105℃の蒸気乾燥機中で1時間置き、有機溶媒を蒸発させる。このディッシュの質量を測ることで、抽出脂肪量が測定できる。
総脂肪量は、これらの測定値から以下の式にて算出できる。
総脂肪量[mg/100g]=(抽出脂肪量[mg]/使用試料量[g])×100
【0014】
<総蛋白質量の測定方法>
本発明における総蛋白質量の測定は、セミ・ミクロケルダール法(第十四改正日本薬局方解説書 通則 製造総則 一般試験法 2001B−370〜B374)にて行う。以下に具体的な測定方法を示す。
試料約1g(試料質量は0.1mgの単位まで測定する)を採取し、セミ・ミクロケルダール法にて試料中の窒素量を定量する。詳細には、試料を分解瓶に入れ、硫酸カリウム:硫酸銅=10:1の配合の分解促進剤を1g、さらに濃硫酸7mL加え、加熱分解する。加熱分解後、試料を水蒸気蒸留にかけ、蒸留されたものを20mMの硫酸水溶液20mL中に受ける。蒸留が終了したら、蒸留水を受けた、20mMの硫酸水溶液を、40mMの水酸化ナトリウムにて滴定する。そのときの滴定量をb(mL)とする。試料を含まないブランク試験を行い、そのときの滴定量をa(mL)とすると、試料中の蛋白質量は以下の式にて計算される。
蛋白質量[質量%]=(0.56×(b−a)×6.38)/試料の質量[g]/1000×100
式中の0.56は40mMの水酸化ナトリウム1mLに対する試料の窒素量であり、6.38は窒素量を乳製品の蛋白質に換算する係数である。
【0015】
<乳酸換算の酸度の測定方法>
本発明における乳酸換算の酸度の値(以下、単に酸度ということもある。)は、以下の方法で測定して得られる値である。
すなわち、一定質量の試料中に含まれる酸性物質を中和するのに必要なアルカリ消費量を以下の手順で求める。試料9gを100mLビーカーに採り、蒸留水9mLを加え希釈した後、濃度1%のフェノールフタレイン試液0.5mLを加え、0.1mol/LのNaOHで滴定する。終末点は同一試料に濃度3%の硫酸コバルト溶液0.5mLをピペットで加えたものと同じ色になる点とする。下記式(1)より乳酸換算の酸度(単位:質量%)を求める。
酸度(乳酸換算:質量%)=(v×f×L×0.1)/m …(1)
v:滴定量(mL)
f:滴定液のファクター
L:濃度換算係数=9mg/mL(0.1mol/LのNaOHの1mL=9mg乳酸)
m:試料の質量(g)
【0016】
<pH>
本発明においてpHの値は、特に断りが無い限り36℃における値である。
【0017】
<呈味組成物の製造方法>
本発明の呈味組成物の製造方法では、原料組成物に脂肪分解酵素及び蛋白質分解酵素を添加して酵素反応を行って酵素処理組成物を得、該酵素処理組成物を有効成分として含む呈味組成物を製造する。酵素処理組成物をそのまま呈味組成物としてもよい。
呈味組成物とは、食品等の風味を改良するために、食品等に添加して用いられる組成物である。
【0018】
[原料組成物]
本発明において原料組成物は酵素反応に供される組成物であり、酵素反応後に添加される添加剤は含まれない。
本発明では少なくとも乳脂肪源、乳蛋白質源、および水を含有する液を原料組成物として用いる。必要に応じてpH調整成分を含有させる。
【0019】
(乳脂肪源)
乳脂肪源は、乳脂肪を固形分に対して70質量%以上含む原料である。乳由来の成分のみからなるものが好ましい。
乳脂肪源としては、クリーム、バター、バターオイルおよびクリームチーズからなる群から選択される1種以上が好ましい。
クリームは、食品衛生法の乳及び乳製品の成分規格等に関する省令で規定されるクリーム(生乳、牛乳、特別牛乳から脂肪分以外の成分を除去したもの)であって、乳脂肪分を18質量%以上含むものであり、添加物を一切加えていないものを意味する。
バターは、乳脂肪分を80質量%以上含むものであり、食品衛生法の乳及び乳製品の成分規格等に関する省令で規定されるバター(生乳、牛乳、特別牛乳から得られた脂肪粒を練圧したもの)を意味する。
バターオイルは、バターから水分を除去して、ほとんど乳脂肪分のみとした(乳脂肪99.3%以上)油状のものである。
クリームチーズは、生乳とクリームを混合し、脂肪率を10〜20%とした調乳液を乳酸菌で発酵させたもの(pH4.2〜5.0)である。
脂肪率の調整が容易である点および風味が良好となる点で、バター及び/又はバターオイルと、クリームとを併用することが好ましい。
バターとして発酵バターを用いてもよい。発酵バターは、原料となるクリームを乳酸菌で発酵させる工程を経て製造されたバターである。発酵バターのpHは4.5〜5.8程度であり、原料組成物のpHを下げる効果も有する。
【0020】
(乳蛋白質源)
乳蛋白質源は乳蛋白質を固形分に対して30質量%以上含み、pHが6.1以上の原料である。乳由来の成分のみからなるものが好ましい。
乳蛋白質源の乳脂肪含有量は固形分に対して1質量%以下が好ましい。乳蛋白質源のpHは6.5以上が好ましい。
乳蛋白質源としては、脱脂粉乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、カゼイン、酸カゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカルシウム、カゼインカリウム、乳清蛋白質、乳清蛋白質濃縮物、乳清蛋白質分離物、および乳蛋白質濃縮物からなる群から選択される1種以上が好ましい。
脱脂粉乳は、食品衛生法の乳及び乳製品の成分規格等に関する省令で規定される脱脂粉乳(生乳、牛乳、特別牛乳の乳脂肪分を除去したものからほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたもの)である。
脱脂乳は、食品衛生法の乳及び乳製品の成分規格等に関する省令で規定される脱脂乳(生乳、牛乳または特別牛乳からほとんどすべての乳脂肪分を除去したもの)であり、無脂乳固形分8.0%以上、乳脂肪分0.5%未満である。
【0021】
(pH調整成分)
本発明で使用されるpH調整成分は、pHが6.1未満の食品または添加剤である(前記乳脂肪源に該当するものは除く)。例えば、発酵乳、クエン酸、および乳酸からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。pH調整成分のpHは5以下が好ましい。
原料組成物はpHが6.1〜6.4となるように、必要に応じてpH調整成分が添加される。原料組成物のpHがこの範囲内であるとコク味の付与効果および塩味感の付与効果に優れる酵素処理組成物が得られる。原料組成物のpHはpH調整成分の添加量で調整できる。
【0022】
(水)
原料組成物は水を含有する。これにより、水分を含有しており、食品中の水相との親和性が得られやすい呈味組成物が得られる。呈味組成物は水中油型(O/W型)エマルションであることが、食品等の水分に溶解しやすく、作業性の点で好ましい。
原料組成物中の水分含量は、30〜70質量%が好ましく、40〜60質量%がより好ましく、40〜50質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、呈味組成物を水中油型(O/W型)エマルションの状態に乳化しやすい。上記範囲の上限値以下であると、本発明において好ましい遊離脂肪酸組成および遊離アミノ酸組成が得られやすい。
【0023】
原料組成物に対する乳脂肪の含有量は35〜60質量%が好ましく、35〜50質量%がより好ましく、40〜50質量%がさらに好ましい。前記下限値以上であると、本発明において好ましい遊離脂肪酸組成を有する酵素処理組成物が得られやすい。前記上限値以下であると、呈味組成物における油浮きや離水が生じにくい。
原料組成物に対する乳蛋白質の含有量は3〜10質量%が好ましく、3〜8質量%がより好ましく、3〜6質量%がさらに好ましい。前記下限値以上であると、本発明において好ましい遊離アミノ酸組成を有する酵素処理組成物が得られやすい。前記上限値以下であると、他の成分とのバランスが良くて良好な風味が得られやすい。
【0024】
[添加剤]
本発明の呈味組成物は、乳化剤を含むことが好ましい。呈味組成物は水中油型(O/W型)エマルションの状態にあることが好ましく、乳化剤を含有させることで呈味組成物における油浮きや離水を抑制できる。
乳化剤はHLB値が5以下であるものが好ましい。該HLB値が5以下であると呈味組成物における油浮きや離水が抑制されやすい。
HLB値が5以下である乳化剤の例としては、モノグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、シュガーエステル等が挙げられる。乳化剤は2種以上を併用してもよい。
乳化剤の添加量は、多すぎても少なすぎても呈味組成物における油浮きや離水を抑制する効果が充分に得られない。好ましい添加量は乳化剤の種類によって異なるが、呈味組成物に対して0.01〜1質量%の範囲内が好ましい。
【0025】
本発明の呈味組成物は、安定剤を含むことが好ましい。安定剤を含有させることで呈味組成物における油浮きや離水を抑制できる。
安定剤は、キサンタンガム、ジェランガム、グアガム、およびローカストビーンガムからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
安定剤の添加量は少なすぎると添加効果が充分に得られず、多すぎると粘度が高くなりすぎて取扱い難くなるため、これらの不都合が生じない範囲に設定することが好ましい。
好ましい添加量は安定剤の種類によって異なるが、呈味組成物に対して0.01〜3質量%の範囲内が好ましい。
【0026】
本発明の呈味組成物は、炭水化物(糖質)を含むことが好ましい。呈味組成物中の炭水化物は、乳脂肪源、乳蛋白質源またはpH調整成分に由来する炭水化物であってもよく、これら以外の炭水化物源を原料組成物に含有させてもよい。乳製品中の炭水化物の多くは乳糖である。乳糖は本発明の呈味組成物の風味に寄与する。炭水化物源として乳糖を含む食品または添加剤を用いることが好ましい。
【0027】
[原料組成物調製工程]
本発明の呈味組成物の製造方法は、まず、少なくとも、乳脂肪源、乳蛋白質源および水を混合して、pHが6.1〜6.4である原料組成物を調製する。必要に応じてpH調整成分を添加する。これらのほかに炭水化物源を加えて混合してもよい。
混合後、得られた原料組成物を加熱殺菌して、冷却することが好ましい。加熱殺菌条件は特に限定されないが、例えば加熱温度は63〜140℃、好ましくは80〜120℃の範囲で設定することができる。
加熱殺菌後の冷却温度は、次の酵素処理工程における反応温度と同じ程度が好ましい。
【0028】
[酵素処理工程]
次いで、原料組成物に脂肪分解酵素及び蛋白質分解酵素を添加して酵素反応を行う。その後、酵素を失活させて酵素処理組成物を得る。酵素反応中は原料組成物(酵素処理組成物)の温度を所定の反応温度に保持する。
脂肪分解酵素による酵素反応を行うと、原料組成物中の脂肪が加水分解されて遊離脂肪酸とグリセリンが生成する。酵素反応が進行するにしたがって、酵素処理組成物中の遊離脂肪酸の量が増す。該遊離脂肪酸は炭素数が異なる遊離脂肪酸の混合物である。
また蛋白質分解酵素による酵素反応を行うと、原料組成物中の蛋白質が加水分解されて遊離アミノ酸とペプチドが生成する。酵素反応が進行するにしたがって、酵素処理組成物中の遊離アミノ酸の量が増す。該遊離アミノ酸は種類が異なる遊離アミノ酸の混合物である。
【0029】
酵素処理工程における反応温度は、用いる脂肪分解酵素及び蛋白質分解酵素の種類等に応じて、酵素が効率良く作用しやすい温度に設定することが好ましい。例えば25〜50℃が好ましく、30〜40℃がより好ましい。
【0030】
酵素処理組成物の酸度は、酵素処理組成物中の遊離脂肪酸および遊離アミノ酸の含有量に相関し、該酸度が高いほどこれらの生成量が多いことを意味する。
酵素処理組成物の酸度は3.5〜4.5質量%が好ましく、3.7〜4.2質量%がより好ましい。該酸度がこの範囲であるとコク味の付与効果および塩味感の付与効果に優れる。
具体的には、原料組成物に脂肪分解酵素及び蛋白質分解酵素を添加した後の酵素処理組成物の酸度を経時的に測定し、酵素処理組成物の酸度が所望の値に達したら、直ちに酵素処理組成物の加熱を開始し、所定の温度(保持温度)に保持して酵素を失活させる。加熱条件は、酵素を失活させることができる保持温度および保持時間であればよく、適宜設定できる。例えば保持温度は80〜140℃程度が好ましく、80〜120℃がより好ましい。
【0031】
酵素処理工程において酵素を添加してから、酵素失活のために昇温を開始するまでの時間を総反応時間とする。総反応時間は、特に限定されないが、生産性の点からは96時間以下が好ましく、48時間以下がより好ましく、30時間以下がさらに好ましく、4時間以下が特に好ましい。総反応時間の下限値は、酵素反応を停止させたときの酸度の値が安定しやすい点で2時間以上が好ましく、3時間以上がより好ましい。
【0032】
酵素処理工程において、脂肪分解酵素と蛋白質分解酵素は同時に添加してもよく、一方を先に添加してもよい。蛋白質分解酵素による脂肪分解酵素の分解を抑制する点から脂肪分解酵素を先に添加することが好ましい。
例えば、脂肪分解酵素を先に添加し、脂肪分解酵素のみによる酵素反応を所定時間行った後に、蛋白質分解酵素を添加して両方の酵素による酵素反応を行うことが好ましい。この場合、脂肪分解酵素のみによる酵素反応時間が、総反応時間に対して5〜50%であることが好ましく、10〜25%がより好ましい。
【0033】
酵素処理工程では、酵素処理組成物中の遊離脂肪酸において、短鎖脂肪酸の合計に対する長鎖脂肪酸の質量比を表す(C16+18)/(C4+6+8)が9〜10であり、かつ酵素処理組成物中の遊離アミノ酸において、アミノ酸(A)の合計に対する、アミノ酸(C)の合計の質量比を表すアミノ酸(C)/アミノ酸(A)が9〜13.5となるように酵素反応を行う。
遊離脂肪酸の組成および遊離アミノ酸の組成が上記範囲であるとコク味の付与効果および塩味感の付与効果に優れる。
【0034】
酵素処理組成物中の遊離アミノ酸において、アミノ酸(A)の合計に対する、アミノ酸(B)の合計の質量比を表すアミノ酸(B)/アミノ酸(A)が3〜7であることが好ましい。
酵素処理組成物中の遊離脂肪酸において、中鎖脂肪酸の合計に対する長鎖脂肪酸の質量比を表す(C16+18)/(C10+12)が10〜14であることが好ましい。
酵素処理組成物中の総脂肪量に対する総遊離脂肪酸量の割合は5〜15質量%が好ましく、8〜12質量%がより好ましい。
酵素処理組成物中の総蛋白質量に対する総遊離アミノ酸量の割合は15〜37質量%が好ましく、15〜30質量%がより好ましく、19〜25質量%がより好ましい。
【0035】
脂肪分解酵素は微生物由来のリパーゼが好ましい。上記の遊離脂肪酸の好ましい組成が得られやすい点で、ペニシリウム(Penicillium)属の微生物由来のリパーゼ、アスペルギルス(Aspergillus)属の微生物由来のリパーゼが好ましい。
蛋白質分解酵素は微生物由来のプロテアーゼが好ましい、上記の遊離アミノ酸の好ましい組成が得られやすい点で、アスペルギルス(Aspergillus)属の微生物由来のプロテアーゼが好ましい。
【0036】
酵素処理組成物に乳化剤を含有させて、酵素失活後に乳化することが好ましい(乳化工程)。乳化剤を添加するタイミングは、乳化工程の前であればよく、特に限定されない。乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステルを用いる場合は、リパーゼによる乳化剤の分解が生じるのを防止するために、酵素失活工程の後、酵素処理組成物に乳化剤を添加し(乳化剤添加工程)、その後に乳化工程を行うことが好ましい。
呈味組成物に安定剤を含有させる場合は、酵素反応の終了時(酵素失活のための昇温開始時)から、酵素失活工程の終了前までに添加することが好ましい。
【0037】
乳化工程は公知の方法を適宜用いて行うことができる。例えば乳化剤が添加された酵素処理組成物を酵素失活工程に引き続いて所定の温度に保持しながら、撹拌することによって乳化状態を得ることが好ましい。
また乳化工程における保持温度および乳化時間を、殺菌効果が得られる条件に設定することによって、乳化工程が加熱殺菌工程を兼ねることができる。
例えば保持温度は80℃以上が好ましい。また酵素処理組成物の構成成分の熱変性が生じにくい点で140℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。
乳化工程終了後、必要に応じて酵素処理組成物のろ過等の後処理を行い、冷却する。
【0038】
こうして、酵素処理組成物を有効成分(呈味成分)として含む呈味組成物が得られる。
本発明の呈味組成物の有効成分である酵素処理組成物は、遊離脂肪酸および遊離アミノ酸を特定の組成で含有することにより、食品にコク味を付与するとともに、塩味感の付与効果に優れる
なお、酵素処理組成物における遊離脂肪酸の組成または遊離アミノ酸の組成と、呈味組成物の遊離脂肪酸の組成または遊離アミノ酸の組成とは、その間に酵素分解処理を行わない限りそれぞれ同じとみなすことができる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0040】
<蛋白質分解物の重量平均分子量の測定方法>
酵素処理組成物中の蛋白質分解物の分子量分布を以下の方法で測定した。また、重量平均分子量は分子量分布より求めた。
試料を40℃で1時間静置することにより、脂肪を融解して分離させる。その後、4℃、遠心力3000×g、30分間の条件で遠心分離をし、脂肪層、中間層、沈殿槽に分離する。この中間層を凍結乾燥し粉末化する。粉末1〜10mgを計量し、GPC緩衝液(20mM NaCl、50mM蟻酸水溶液)1mLに分散させる。分散液をMillex−GVフィルター(ミリポア社製)でろ過したものを測定用サンプルとする。
得られた測定用サンプルについて、島津社製サイズ排除クロマトグラフィー(LC−20AD Liquid Chromatograph)にて分子量分布を測定する。検量線用スタンダードとして、イムノグロブリンG(Sigma)、ラクトパーオキシダーゼ(Sigma)、オボアルブミン(太陽化学)、キモトリプシノーゲンA(和光純薬)、リボヌクレアーゼA(Pharmacia)、牛インシュリン(和光純薬)、バシトラシン(Sigma)、オキシトシン(Bachem)、エンケファリンアミド(Bioproducts)、メチオニン(協和発酵)、グルタミン(協和発酵)を用いる。分子量分布解析には島津社製 LC solution GPC解析ソフトを用いる。また、重量平均分子量も本ソフトを用いて求める。
【0041】
<評価方法>
[塩味感の評価方法(1):官能スコア]
(ホワイトソースの調製方法(1))
鍋にサラダオイル7質量部を入れ40℃に加温した後、薄力粉5.8質量部を加え、撹拌しながら120℃まで加熱する。その後、牛乳87.2質量部を加え、さらに10分煮詰めてホワイトソース87質量部を得る。
上記以外の原料をさらに加える場合は、牛乳と置換した配合とする。
【0042】
前記ホワイトソースの調製方法(1)において、さらに食塩0.3質量部を加えたものを基準品とする。
前記ホワイトソースの調製方法(1)において、さらに食塩0.3質量部と各例の呈味組成物1質量部を加えたものを評価対象品とする。
訓練を受けたパネラー10名が評価対象品と基準品を試食して比較し、下記の基準で評価する。10名の平均値を官能スコアとする。官能スコアの値が高いほど塩味感の付与効果が高い。
1:基準品と比べて塩味感が弱い。
2:基準品と比べて塩味感がやや弱い。
3:基準品と塩味感が同等。
4:基準品と比べて塩味感がやや強い。
5:基準品と比べて塩味感が強い。
【0043】
[塩味感の評価方法(2):強さ相対評価]
前記ホワイトソースの調製方法(1)において、さらに食塩0.3質量部と各例の呈味組成物の所定量を加えたものを評価対象品とする。
訓練を受けたパネラー10名が、2例の評価対象品を試食して比較し、どちらが塩味を強く感じるかを回答する。強く感じたと回答した人数が多い方が塩味感の付与効果が高い。
【0044】
[塩味感の評価方法(3):0.5%同等濃度]
前記ホワイトソースの調製方法(1)において、さらに食塩0.5質量部を加えたものを基準品とする。
前記ホワイトソースの調製方法(1)において、評価対象の呈味組成物を1質量部加え、さらに食塩を0.3質量部、0.35質量部、0.4質量部、または0.45質量部それぞれ加え、食塩の濃度が異なる4種の評価対象品を調製する。
訓練を受けたパネラー10名が4種の評価対象品と基準品を試食し、4種の評価対象品のうち基準品と同じ塩味であるものを1つ選ぶ。選ばれた評価対象品の食塩の添加量の平均値を求める。数値が低いほど呈味組成物による塩味感の付与効果が高い。
【0045】
[コク味の評価方法(1):官能スコア]
(ホワイトソースの調製方法(2))
前記ホワイトソースの調製方法(1)において、サラダオイルの代わりにバターを使用する。
すなわち、鍋にバター7質量部を入れ40℃に加温した後、薄力粉5.8質量部を加え、撹拌しながら120℃まで加熱する。その後、牛乳87.2質量部を加え、さらに10分煮詰めてホワイトソース87質量部を得る。
【0046】
前記ホワイトソースの調製方法(2)で調製したもの(バター使用)を基準品とする。
前記ホワイトソースの調製方法(1)において、さらに各例の呈味組成物1質量部を加えたものを評価対象品とする。
訓練を受けたパネラー10名が評価対象品と基準品を試食して比較し、下記の基準で評価する。10名の平均値を官能スコアとする。官能スコアの値が高いほどコク味の付与効果が高い。
1:基準品と比べてコクが弱い。
2:基準品と比べてコクがやや弱い。
3:基準品とコクが同等。
4:基準品と比べてコクがやや強い。
5:基準品と比べてコクが強い。
【0047】
[コク感の評価方法(2):強さ相対評価]
前記ホワイトソースの調製方法(1)において、各例の呈味組成物の所定量を加えたものを評価対象品とする。
訓練を受けたパネラー10名が、2例の評価対象品を試食して比較し、どちらがコクを強く感じるかを回答する。強く感じたと回答した人数が多い方がコク味の付与効果が高い。
【0048】
各例で用いた原料は以下の通りである。
[原料]
クリーム(乳脂肪源):乳脂肪含有量42質量%(固形分に対して89質量%)、蛋白質含有量1.8質量%。
バター(1)(乳脂肪源):乳脂肪含有量83質量%(固形分に対して98質量%)、蛋白質含有量0.5質量%。
バター(2)(乳脂肪源):発酵バター、乳脂肪含有量83質量%(固形分に対して98質量%)、蛋白質含有量0.5質量%、pH5.2。
脱脂粉乳(乳蛋白質源):乳脂肪含有量1質量%、蛋白質含有量34質量%(固形分に対して35質量%)。
発酵乳(1)(pH調整成分):液状タイプのヨーグルト(商品名;ヨープ、森永乳業株式会社製)、蛋白質含有量4質量%(固形分に対して30質量%)、pH4.2。
安定剤(1):キサンタンガム。
乳化剤(1):モノグリセリン脂肪酸エステル、HLB 3.8。
脂肪分解酵素(1):Penicillium roqueforti由来のリパーゼ(天野エンザイム社製)。
脂肪分解酵素(2):キャンディダ属の微生物由来のリパーゼ(天野エンザイム社製)。
蛋白質分解酵素(1):Aspergillus oryzae由来のプロテアーゼ(天野エンザイム社製)。
【0049】
[例1(実施例)]
表1に示す配合で呈味組成物を製造した。
まず、クリーム、水、バター(1)、脱脂粉乳、発酵乳を混合し、原料組成物を調製した。原料組成物のpHは、6.3であった。この原料組成物を80℃で1分間加熱して殺菌した後、36℃に冷却した。反応器内で、加熱殺菌後の原料組成物に、脂肪分解酵素(1)0.5kgを添加し、36℃に保持しながら30分間酵素反応を行った。その後、蛋白質分解酵素(1)を反応器内に添加してから、さらに1.5時間酵素反応を行った。
得られた酵素処理組成物を加熱して85℃まで昇温してから、安定剤を添加した。85℃に達してから30分間、温度を保持しつつ撹拌を継続して酵素を失活させた。失活後の酵素処理組成物に、乳化剤を添加して、さらに30分間温度を保持しつつ撹拌を継続して乳化させた。その後、乳化させた酵素処理組成物を10℃以下まで冷却したものを呈味組成物とした。
酵素処理組成物の乳酸換算の酸度は3.9であった。
遊離脂肪酸の組成を測定し、(C16+18)/(C4+6+8)の値を求めた。また総脂肪量に対する総遊離脂肪酸量の含有量(単位:質量%)を求めた。
遊離アミノ酸の組成を測定し、アミノ酸(C)/アミノ酸(A)の値を求めた。また総蛋白質量に対する総遊離アミノ酸量の含有量(単位:質量%)を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0050】
図1は例1で得られた酵素処理組成物(呈味組成物)について、蛋白質分解物の分子量分布を測定した結果を示すグラフである。横軸は分子量、縦軸は最大ピークを100%とした時の相対濃度である。グラフより蛋白質分解物の重量平均分子量は670であった。
【0051】
[例2〜4]
例2は実施例、例3、4は比較例である。
例1において、pH調整成分(発酵乳、クエン酸)の添加量を変えることによって原料組成物のpHを変更した以外は、例1と同様にして呈味組成物を得、表1に示す各項目の測定を行った。
【0052】
[例5(比較例)]
例1において酵素として脂肪分解酵素(1)のみを用いて得られた酵素処理組成物と、例1において酵素として蛋白質分解酵素(1)のみを用いて得られた酵素処理組成物とをそれぞれ調製し、これらを混合して呈味組成物とした。
脂肪分解酵素(1)のみによる酵素反応時間は2時間、蛋白質分解酵素(1)のみによる酵素反応時間は1.5時間とした。
【0053】
[例6(比較例)]
特許文献1に記載されている方法(リパーゼを用いプロテアーゼを用いない方法)で酵素処理組成物を製造した。
表1に示す配合でクリーム、水、バター(2)、脱脂粉乳を混合し、原料組成物を調製した。原料組成物のpHは、6.3であった。原料組成物を80℃で1分間加熱して殺菌した後、37℃に冷却した。反応器内で、加熱殺菌後の原料組成物に、脂肪分解酵素(2)を添加し、36℃に保持しながら2時間酵素反応を行った。
得られた酵素処理組成物を加熱して85℃まで昇温してから、安定剤を添加した。85℃に達してから30分間、温度を保持しつつ撹拌を継続して酵素を失活させた。失活後の酵素処理組成物に、乳化剤を添加して、さらに30分間温度を保持しつつ撹拌を継続して乳化させた。その後、乳化させた酵素処理組成物を10℃以下まで冷却したものを呈味組成物とした。
【0054】
下記の通り評価を行った。結果を表1に示す。
[塩味感評価(1)]
例1〜4で得られた呈味組成物について、上記塩味感の評価方法(1)で官能評価を行った。
[塩味感評価(2)]
例1で得られた呈味組成物1質量部を添加した評価対象品と、例5で得られた呈味組成物2質量部を添加した評価対象品について、上記塩味感の評価方法(2)で相対評価した。
例5で得られた呈味組成物の2質量部は、脂肪分解酵素(1)のみを用いて得られた酵素処理組成物1質量部と、蛋白質分解酵素(1)のみを用いて得られた酵素処理組成物1質量部の混合物を用いた。
[塩味感評価(3)]
例1で得られた呈味組成物と、例6で得られた呈味組成物をそれぞれ評価対象として、上記塩味感の評価方法(3)で評価した。
【0055】
[コク味評価(1)]
例1〜4で得られた呈味組成物について、上記コク味の評価方法(1)で官能評価を行った。
[コク味評価(2)]
例1で得られた呈味組成物1質量部を添加した評価対象品と、例5で得られた呈味組成物2質量部を添加した評価対象品について、上記コク味の評価方法(2)で相対評価した。例5で得られた呈味組成物として、脂肪分解酵素(1)のみを用いて得られた酵素処理組成物1質量部と、蛋白質分解酵素(1)のみを用いて得られた酵素処理組成物1質量部を添加した。
また、例1で得られた呈味組成物1質量部を添加した評価対象品と、例6で得られた呈味組成物1質量部を添加した評価対象品とについて、上記コク味の評価方法(2)で相対評価した。
【0056】
【表1】
【0057】
表1の結果より、例1、2は、例3、4に比べてコク味の官能スコアおよび塩味感の官能スコアが高く、コク味と塩味感の付与効果に優れる。
例1は、例5、6に比べてコク味と塩味感の付与効果に優れる。
これらの結果から、原料組成物のpHを6.1〜6.4として、脂肪分解酵素による酵素反応と蛋白質分解酵素による酵素反応を同時に行うことにより、塩味感の付与効果に優れた呈味組成物が得られることがわかる。
【0058】
(例11〜16)
例1において、脂肪分解酵素(1)を添加してから蛋白質分解酵素(1)を添加するまでの時間と温度を表2に示す通りに変更した以外は、例1と同様にして酵素処理組成物を得、表2に示す各項目の測定を行った。
【0059】
(例17)
例14において、原料組成物の配合(単位は質量部)を下記の通りに変更した以外は、例14と同様にして酵素処理組成物を得、表2に示す各項目の測定を行った。
クリーム33.3、バター(1)29.2、脱脂粉乳6.7、発酵乳1.7、水27.1、脂肪分解酵素(1)0.8、蛋白質分解酵素(1)0.8、安定剤0.1、乳化剤0.3、合計100。
原料組成物の水分含量51質量%、乳脂肪含有量38質量%、乳蛋白質含有量3質量%。
【0060】
【表2】
【0061】
表2に示す例11〜17の呈味組成物においても、コク味の付与効果と塩味感の付与効果が得られた。