特許第6694744号(P6694744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイカ工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6694744
(24)【登録日】2020年4月22日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】多層型粘着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20200511BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20200511BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20200511BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J133/04
   C09J4/02
   B32B27/00 M
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-70672(P2016-70672)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-179193(P2017-179193A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉 龍司
(72)【発明者】
【氏名】窪田 大輔
【審査官】 高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/118182(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着層として少なくとも下記(A)層および(B)層を含み、両表層はいずれも(A)層であり、(B)層が実質的に無機充填材を含有しないことを特徴とする多層型粘着剤。
(A)アミド基含有単量体を含み、カルボキシル基含有単量体を含まない、(メタ)アクリル系単量体組成物の重合体であるアクリルポリマー(a)、および光重合開始剤(d)を含有する粘着層。
(B)(メタ)アクリル系単量体組成物重合体であるアクリルポリマー(b)、多官能(メタ)アクリル系単量体(c)、および光重合開始剤(d)を含有する粘着層。
【請求項2】
請求項記載の多層型粘着剤が使用されていることを特徴とする粘着シート。
【請求項3】
前記粘着層(A)および前記粘着層(B)の各成分を溶媒中で調製し、基材に塗布、乾燥することにより各粘着層を形成し、各粘着層を積層後に紫外線を照射することを特徴とする請求項記載の多層型粘着剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組成が異なる複数の粘着層により形成される多層型粘着剤、これを用いた粘着シートおよび多層型粘着剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルなどの透光性部材の製造に用いられる粘着剤には、高温高湿下においても透明性や接着性を維持できる耐久性が要求されている。また、貼り合わせ時には部材の段差に追従して空隙を埋められる柔軟性が要求されているが、これらは相反する特性であるため、両立させるために様々な手法が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
例えば、特許文献1では、粘着剤を段差部分に適用後に硬化させる方法が提案されている。他方、貼り合わせ工程において空気層が混入するなどの不具合が生じた際、粘着剤を剥離したうえで部材を再利用する必要があるが、剥離強度が高かったり、部材側に粘着剤が残ったりすると作業性が低下するため、再剥離性に優れることも要求されている。
【特許文献1】特開2014-152294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、高温高湿下においても透明性や接着性を維持できる耐久性、部材の段差に追従して空隙を埋められる柔軟性、および再剥離性に優れる粘着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は2以上の粘着層を有する多層型粘着剤であって、粘着層として少なくとも下記(A)および(B)を含むことを特徴とする多層型粘着剤である。
(A)アミド基含有単量体を含み、カルボキシル基含有単量体を含まない、(メタ)アクリル系単量体組成物の重合体であるアクリルポリマー(a)、および光重合開始剤(d)を含有する粘着層。(B)(メタ)アクリル系単量体組成物重合体であるアクリルポ
リマー(b)、多官能(メタ)アクリル系単量体(c)、および光重合開始剤(d)を含有する粘着層。
【発明の効果】
【0006】
本発明の多層型粘着剤およびこれを用いた粘着シートは、高温高湿下においても透明性や接着性を維持できる耐久性、部材の段差に追従して空隙を埋められる柔軟性、および再剥離性に優れる。したがって、タッチパネルなどの光学部材の製造用途に適する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の多層型粘着剤は、(A)アミド基含有単量体を含み、カルボキシル基含有単量体を含まない、(メタ)アクリル系単量体組成物の重合体であるアクリルポリマー(a)、および光重合開始剤(d)を含有する粘着層、を含む。(A)層は多層型粘着剤の両表層、即ち被着体と接する層を構成する。
【0008】
アクリルポリマー(a)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体およびこれらと共重合可能な単量体を重合させることにより得られる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソミスチリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、イソウンデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、イソペンタデシル(メタ)アクリレート、イソヘキサデシル(メタ)アクリレート、イソヘプタデシル(メタ)アクリレートなどのアルキル基含有単量体やスチレン、酢酸ビニル、アクリルニトリルが挙げられるが、粘着力を確保するために2−エチルヘキシルアクリレートおよび/またはn−ブチルアクリレートを(メタ)アクリル系単量体組成物全体に対して50重量%以上用いることが好ましく、60重量%以上用いることがより好ましい。
【0009】
アクリルポリマー(a)を構成する単量体として、アミド基含有単量体を用いる必要がある。アミド基含有単量体を用いることにより、高温高湿下の耐久性および再剥離性を向上できる。アミド基含有単量体としては(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、ジアセトン(メタ)アクリルアミドが挙げられる。単量体全体に対して、アミド基含有単量体を1重量%以上用いることで高温高湿下の耐久性および再剥離性が顕著に向上し、15重量%以下とすることで段差に追従できる柔軟性を付与できる。
【0010】
また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有単量体を用いてもよい。
【0011】
なお、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有単量体を含有する場合、静電容量式タッチパネルにおいてITO膜の抵抗値が変化し、感度に影響を及ぼすおそれがあるため好ましくない。
【0012】
従来公知の溶液重合や乳化重合、塊状重合などの重合方法によりアクリルポリマー(a)を調整することができるが、得られるポリマーの分子量や粘着シートへの加工性を考慮すると溶液重合が好ましい。
【0013】
溶液重合に用いる溶媒としては酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、n−ヘキサン、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレンカーボネートなど有機溶剤が挙げられる。ただし、これら以外の溶媒を使用しても何ら差し支えなく、また、2種以上の溶媒を併用してもよい。
【0014】
重合開始剤として熱分解型重合開始剤を用いることが好ましい。2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メトキシプロピオンアミド]、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、[1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)]、などのアゾ系化合物、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、エチルメチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジクミルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノイルパーオキサイド等の有機化酸化物系化合物等を使用することができる。また、過酸化物系化合物はN,N−ジメチルトルイジン、N,N−ジエチルトルイジン等の還元剤を併用することによりレドックス重合を行うことも可能である。
【0015】
重合開始剤は、単量体100重量部に対して0.05〜3重量部使用される。重合開始剤の使用量を増加させれば得られるポリマーの分子量を小さくなり、重合開始剤の使用量を減少させれば得られるポリマーの分子量は大きくなる傾向にある。
【0016】
粘着層(A)は、さらに光重合開始剤(d)を含有する。光重合開始剤は特に限定されず、例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤などを用いることができる。
【0017】
例えば、アセトフェノン系光重合開始剤としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(例として、BASFジャパン社製、商品名DAROCUR2959)、α−ヒドロキシ−α、α'−ジメチルアセトフェノン(
例として、BASFジャパン社製、商品名DAROCUR1173)、メトキシアセトフェノン、2,2'−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(例として、BASFジャ
パン社製、商品名IGACURE651)、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン(例として、BASF社ジャパン製、商品名IGACURE184)等が挙げられる。
【0018】
光重合開始剤の使用量は特に限定されないが、アクリルポリマー(a)100重量部に対して0.01〜5重量部(好ましくは0.05〜3重量部)の範囲から選択することができる。
【0019】
本発明の多層型粘着剤は、(B)(メタ)アクリル系単量体組成物重合体であるアクリルポリマー(b)、多官能(メタ)アクリル系単量体(c)、および光重合開始剤(d)を含有する粘着層、を含む。(B)層は多層型粘着剤の両表層以外の層、即ち中間層を構成する。
【0020】
アクリルポリマー(b)を合成する単量体としては、前記アクリルポリマー(a)と同様の単量体が挙げられる。具体的にはアルキル基含有単量体が挙げられるが、同様に粘着力を確保するために2−エチルヘキシルアクリレートおよび/またはn−ブチルアクリレートを(メタ)アクリル系単量体組成物全体に対して50重量%以上用いることが好ましく、60重量%以上用いることがより好ましい。
【0021】
高温高湿下の耐久性および再剥離性を向上させるため、同様にアミド基含有単量体を用いることが好ましい。なお、アクリルポリマー(b)を含む(B)層は被着体と直接接しないため、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有単量体を含有してもよい。(メタ)アクリル系単量体組成物全体に対して、アミド基含有単量体および/またはカルボキシル基含有単量体の合計として1〜15重量%用いることが好ましい。
【0022】
(B)層は多官能(メタ)アクリル系単量体(c)を含有する。多官能(メタ)アクリル系単量体はメタ(アクリロイル)基を複数有する化合物であり、高温高湿下の耐久性および再剥離性を向上できる。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。多官能(メタ)アクリル系単量体の配合量は、アクリルポリマー(b)100重量部に対して、5〜25重量部が好ましい。
【0023】
(B)層はさらに光重合開始剤(d)を含有するが、具体的な種類や配合量については、前記(A)層で用いる光重合開始剤(d)と同様である。
【0024】
(A)層および(B)層は、それぞれ紫外線吸収剤、近赤外吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、粘着付与樹脂、可塑剤、消泡剤及び濡れ性調整剤等の各種添加剤が含まれていても良い。
【0025】
本発明の多層型粘着剤の製造方法は特に限定されないが、(A)層を溶液状態で離型性を有する基材に塗布して溶媒を乾燥後、さらに(B)層をその上に塗布、乾燥させ、その後、塗布、乾燥後の(A)層を貼り合わせる方法が簡便である。紫外線などの活性エネルギー線の照射によって多層型粘着剤は硬化し、実用的な粘着シートとなる。得られた粘着シートを透明部材に貼り合わせて使用されるが、貼り合わせ後に紫外線などの活性エネルギー線を照射してさらに硬化させても良い。
【0026】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。なお、部数は全て重量部である。
【実施例】
【0027】
アクリルポリマーの合成
単量体として、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)82部、酢酸ビニル(VAc)15部、アクリルアミド(AAm)3部、重合開始剤としてアゾビスジメチルバレロニトリル0.05部、溶媒として酢酸エチル25部、メチルエチルケトン(MEK)35部を混合溶解して単量体混合液を調製した。撹拌機、還流冷却機を備えたセパラブルフラスコに溶媒として酢酸エチル15部を添加して65℃に昇温し、30分以上窒素ガスを導入し、重合系内の酸素を除去した。次いで65±1℃に保ったまま3時間かけて前記単量体混合液を滴下し、さらに65±1℃に保ったまま3時間反応させた。その後、反応温度を78℃に昇温して78±1℃にて2時間保つことにより重合反応を完結させた。反応終了後、冷却し、淡黄色透明の粘性液体であるアクリルポリマー1を得た。粘度は2000mPa・s、固形分は55%、重量平均分子量は200,000であった。
【0028】
アクリルポリマー1の合成で用いた材料の他、単量体としてブチルアクリレート(BA)、メチルメタクリレート(MMA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)、ジアセトンアクリルアミド(DAAM)、ジメチルアクリルアミド(DMAAm)、アクリル酸(AA)を用い、単量体組成を表1記載のように変更した他はアクリルポリマー1の合成と同様に行い、アクリルポリマー2〜6を得た。
【0029】
【表1】
【0030】
粘着剤組成物の調製
アクリルポリマー1の樹脂分100部に対して、光重合開始剤としてIRGACURE754(BASFジャパン社製、商品名)1重量部を加え、実施例1のA層用粘着剤組成物を調製した。
【0031】
アクリルポリマー1の樹脂分100部に対して、光重合開始剤としてIRGACURE754(BASFジャパン社製、商品名)1.4重量部、IRGACURE184(BASFジャパン社製、商品名)0.1重量部、多官能(メタ)アクリル系単量体としてトリメチロールプロパントリアクリレート(商品名KAYARAD TMPTA、日本化薬社製)10重量部を加え、実施例1のB層用粘着剤組成物を調製した。
【0032】
実施例1で用いた材料の他、光重合開始剤としてIRGACURE500(BASFジャパン社製、商品名)、4−メチルベンゾフェノン、LucirinTPO(BASFジャパン社製、商品名)、多官能(メタ)アクリル系単量体としてペンタ
エリスリトールトリアクリレートおよびペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物である(商品名KAYARAD PET−30、日本化薬製)を用いて表2記載の配合にて実施例2〜5、比較例1〜5の各粘着剤組成物を調製した。
【0033】
多層型粘着剤の作製
各A層用粘着剤組成物を離型フィルム(シリコーン処理を施したPETフィルム)上に乾燥後の厚さが35μmとなるように塗布し、90℃で2分間加熱乾燥後、さらに別の離型フィルムを貼り合わせることにより、基材レスのA層シートを作成した。
【0034】
A層シートの離型フィルムの片面を剥がし、A層の上にB層用粘着剤組成物を乾燥後の厚さが105μmとなるように塗布し、90℃で10分間加熱乾燥後、離型フィルムを片面剥がした別のA層シートを貼り合わせることにより、基材レスである実施例1の多層型粘着剤シートを作成した。このシートにブラックライトを用いて1mW/cmの照度強度の紫外線を5分間照射し、高圧水銀ランプを用いて150mW/cmの照射強度の紫外線を1000mJ/cm照射することにより、実施例1の多層型粘着剤シートを得た。
【0035】
実施例1の多層型粘着剤シートの作製と同様に実施例2〜5、比較例1〜5の各多層型粘着剤シートを調製し、以下の方法により評価した。なお、比較例5については、B層を単独で用いている。
【0036】
剥離強度およびリワーク性
各多層型粘着剤シートの離型フィルムの片面を剥がし、PETフィルム(東洋紡績社製、商品名A4100、厚さ50μm)に貼り合わせ、幅25mm、長さ100mmのフィルム片を作成した。フィルム片の離型フィルムを剥がし、23℃、50%RH雰囲気にてガラス上に、ラミネーターを用いて貼着し、23℃、相対湿度50%RHの雰囲気中に1日放置した後、引張り速度300mm/分で180°方向に引張り、その中心値を剥離強度とした。この際、糊残りが見られなかったものはリワーク性良好(○)、糊残りが見られたものは(×)と評価した。リワーク性良好で剥離強度が10N/25mm以上であれば使用中に剥がれることがなく、十分な接着力を有している。
【0037】
段差追従性
ガラス上に、銀インキを用いてシルクスクリーンコーターにて幅1cmで段差が30μmになるように印刷し、段差追従試験用フィルムを作製した。各多層型粘着剤シートの剥離ライナーを剥がし、23℃、50%RH雰囲気にて当該フィルム(サイズ40mm×長さ100mm)の印刷面にラミネーターを用いて貼着した。これをオートクレーブ内で50℃、0.5MPaで20分間処理した後、23℃、50%RH環境下にて24時間放置した直後、以下の基準で目視評価した。段差が埋まっていれば段差追従性良好(○)とし、段差が埋まっていなければ段差追従性不良(×)とした。
【0038】
耐湿熱試験
各多層型粘着剤シートの離型フィルムの片面を剥がし、PETフィルム(東洋紡績社製、商品名A4100、厚さ50μm)に貼り合わせ、幅25mm、長さ100mmのフィルム片を作成した。フィルム片の離型フィルムを剥がし、23℃、50%RH雰囲気にてガラス上に、ラミネーターを用いて貼着した。これを85℃、85%RH環境下で400時間放置し、23℃、50%RHにて1時間冷却した後のヘーズの測定および発泡の有無を確認した。なお、ヘーズは東洋精機製作所(株)製HAZE−GARDIIを用いて測定した。評価基準は以下の通りである。
○:ヘーズが1.5未満
×:ヘーズが1.5以上
【0039】
ITO抵抗値変化
各多層型粘着剤シートを用いて、PETフィルムの片面にITO膜が設けられた積層体のITO膜面と、ポリエチレンテレフタレートとを貼り合わせて、透明積層体を得た。次いで、得られた透明積層体のITO膜の抵抗値を測定した後、温度85℃、85%RH環境下で400時間放置した後のITO膜の抵抗値を測定し、(処理後の抵抗値/処理前の抵抗値)×100によって算出した値から、ITO膜抵抗値の上昇率を求めた。
【0040】
【表2】
【0041】
実施例の各粘着剤組成物は高温高湿下においても透明性、接着性を維持できる耐久性やITO抵抗値変化の抑制、さらに部材の段差に追従して空隙を埋められる柔軟性、および再剥離性に優れていた。