(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る貨幣処理装置を図面を参照して以下に説明する。以下の説明における「前」は貨幣処理装置の操作者側、「後」は貨幣処理装置の操作者とは反対側、「左右」は貨幣処理装置の操作者から見て左右である。
【0013】
図1は、本実施形態に係る貨幣処理装置10を含む現金処理システム310を示すものである。この現金処理システム310は、金融機関の窓口に設置されて2名のテラー(窓口操作員)によって一台が共用されるテラーズマシンである。
【0014】
現金処理システム310は、左右2名のテラーA,Bに対して設けられた左右2台の窓口機311A,311Bと、これら左右2台の窓口機311A,311Bにインターフェースを介して接続され左右2名のテラーA,Bで1台が共用される本実施形態に係る貨幣処理装置10とを有している。貨幣処理装置10は、窓口機311A,311Bのいずれか一方によって占有されて使用されるもので、窓口機311Aに占有された状態では窓口機311A,311Bのうちの窓口機311Aの指令のみを受け付ける状態となり、窓口機311Bに占有された状態では窓口機311A,311Bのうちの窓口機311Bの指令のみを受け付ける状態になる。
【0015】
左側のテラーA用の左側の窓口機311Aおよび右側のテラーB用の右側の窓口機311Bは、いずれもパーソナルコンピュータからなるもので、左側の窓口機311Aは、左側のテラーAに対して設けられた左側のカウンタ314Aの上に設置され、右側の窓口機311Bは、右側のテラーBに対して設けられた右側のカウンタ314Bの上に設置される。左側のテラーAは、基本的に、左側のカウンタ314Aの下方近傍にある椅子313Aに座って左側の窓口機311Aを操作したり、貨幣処理装置10を操作したりする。同様に、右側のテラーBは、基本的に、右側のカウンタ314Bの下方近傍にある椅子313Bに座って右側の窓口機311Bを操作したり、貨幣処理装置10を操作したりする。
【0016】
これら窓口機311A,311Bは、それぞれが、対応するテラーにより操作入力が行われるキーボード等からなる窓口機操作部315と、対応するテラーに対し表示を行う液晶モニタ等からなる窓口機表示部316と、窓口機操作部315からの信号に基づいて、窓口機表示部316の表示画面を制御し入金指示信号および出金指示信号等を貨幣処理装置10に送信する窓口機制御部318を含む窓口機本体317とを有している。これら窓口機311A,311Bは、他の図示略の窓口操作機とともに図示略の店舗内サーバに接続されている。
【0017】
図2に示すように、貨幣処理装置10は、前方に開口する直方体の箱状の筐体11と、筐体11に対し水平前方への引き出しおよび水平後方への押し込みが可能な貨幣処理ユニット12とを有している。よって、貨幣処理ユニット12の引き出し方向前方は、貨幣処理装置10の前方と一致する。貨幣処理ユニット12は、その前部が常時露出して貨幣処理装置10の前部を構成する装置前部構成部21となっており、その前後方向の中間部から後部が通常は筐体11内に収納され筐体11に覆われる
図3および
図4に示す内部ユニット部22となっている。内部ユニット部22は、
図3および
図4に示すように筐体11から引き出されて外部に露出する。
【0018】
貨幣処理ユニット12は上部が硬貨の入出金処理を行う硬貨処理部31となっており、上下方向の中間部から下部が紙幣の入出金処理を行う紙幣処理部32となっている。よって、装置前部構成部21も、硬貨処理部31を構成する硬貨処理部前部構成部34と、紙幣処理部32を構成する紙幣処理部前部構成部35とに分けられる。また、内部ユニット部22も、硬貨処理部31を構成する硬貨処理部内部構成部37と、紙幣処理部32を構成する紙幣処理部内部構成部38とからなっている。硬貨処理部内部構成部37の前部には、硬貨を収納する
図3に示す硬貨カセット39が着脱可能に設けられており、紙幣処理部内部構成部38の前部には、紙幣を収納する紙幣カセット40が着脱可能に設けられている。
【0019】
装置前部構成部21の上面つまり硬貨処理部前部構成部34の上面には、外部から入金硬貨が投入される硬貨投入部41が設けられている。硬貨処理部前部構成部34と紙幣処理部前部構成部35との間には、前面から後方に凹む載置凹部42が形成されており、この載置凹部42には、硬貨処理部31から放出された出金硬貨を受け入れる
図1に示すカルトン320が挿入されて載置される。載置凹部42には、カルトン320を載置凹部42から取り出し不可にロックしたり、取り出し可能にロック解除したりするカルトンロック部321が設けられている。
【0020】
図2に示すように、紙幣処理部前部構成部35の上部の前面には、外部から入金紙幣が投入されるとともに外部に出金紙幣を取り出し可能に出金する紙幣入出金部43が、載置凹部42よりも下側に設けられている。紙幣入出金部43は、開閉可能なシャッタ322を有している。貨幣処理ユニット12内には、貨幣処理装置10を制御する装置制御部44(制御手段)が設けられている。
【0021】
また、筐体11の上部の前端部には、入出力装置45が取り付けられている。入出力装置45には、操作者に向け画面表示を行うとともに操作者による操作入力を受け付けるタッチパネル式の操作表示部46と、操作者に向け報知等の音声出力を行う音声出力部47とが設けられている。
【0022】
貨幣処理ユニット12の上面の前端部には、左端部に操作ボタン325A(操作手段)が設けられており、右端部にも操作ボタン325B(操作手段)が設けられている。操作ボタン325A,325Bは、貨幣処理装置10が窓口機311Aに占有された状態では、操作者による操作ボタン325Aの操作入力のみを受け付ける状態となり、貨幣処理装置10が窓口機311Bに占有された状態では、操作者による操作ボタン325Bの操作入力のみを受け付ける状態になる。操作ボタン325A,325Bは、貨幣処理装置10が貨幣処理を開始するためのスタート操作が入力されるスタートボタンである。つまり、貨幣処理装置10は、窓口機311Aに占有された状態では、操作ボタン325Aが押下操作されると貨幣処理を開始する一方、操作ボタン325Bが押下操作されても貨幣処理を開始することはない。同様に、貨幣処理装置10は、窓口機311Bに占有された状態では、操作ボタン325Bが押下操作されると貨幣処理を開始する一方、操作ボタン325Aが押下操作されても貨幣処理を開始することはない。
【0023】
貨幣処理ユニット12の上面の前端部には、左端部の操作ボタン325Aの前方に、操作者に報知を行うLEDランプ326Aが設けられており、右端部の操作ボタン325Bの前方にも、操作者に報知を行うLEDランプ326Bが設けられている。
【0024】
貨幣処理ユニット12の前面には、載置凹部42の左方に前方検知センサ331A(検知手段)が設けられており、載置凹部42の右方にも前方検知センサ331B(検知手段)が設けられている。左右に設けられたこれらの前方検知センサ331A,331Bは、互いに高さ方向位置を合わせており、載置凹部42と高さ方向位置を合わせている。
【0025】
貨幣処理ユニット12の前面には、紙幣入出金部43のシャッタ322の左方に前方検知センサ332A(検知手段)が設けられており、シャッタ322の右方に前方検知センサ332B(検知手段)が設けられている。左右に設けられたこれらの前方検知センサ332A,332Bは、互いに高さ方向位置を合わせており、閉状態のシャッタ322とも高さ方向位置を合わせている。よって、前方検知センサ331A,331Bよりも、前方検知センサ332A,332Bの方が下側に配置されている。
【0026】
ここで、貨幣処理ユニット12の前面は、紙幣処理部前部構成部35の下部が、貨幣処理ユニット12において最も前方に位置する最先端部335となっており、紙幣処理部前部構成部35と硬貨処理部前部構成部34との境界位置近傍が、最先端部335よりも後方に位置している。そして、このように、貨幣処理ユニット12の前面の最先端部335よりも後方に位置する部分に、載置凹部42の前端開口部と、シャッタ322と、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bとが設けられている。つまり、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bは、貨幣処理ユニット12の前面の最先端部335よりも後方に配置されている。
【0027】
4つの前方検知センサ331A,331B,332A,332Bは、貨幣処理ユニット12の前方にある外部の物体を検知するものであり、光を発光し、物体からの反射光を測定して物体の有無を検知するものである。前方検知センサ331A,331B,332A,332Bとしては、例えば、前方の物体の有無に加えてその動きの方向を検知するジェスチャーセンサ(モーションセンサ)が用いられている。前方検知センサ331A,331B,332A,332Bは、貨幣処理ユニット12の引き出し方向の移動時に、貨幣処理ユニット12の引き出し方向前方にある障害物を検知する。
【0028】
前方検知センサ331A,331B,332A,332Bは、共通部品であり、それぞれの検知範囲が同等となっている。前方検知センサ331A,331B,332A,332Bは、それぞれの検知範囲が、いずれも、前方検知センサを頂点として、30°の角度で広がる円錐状となっており、検知範囲の最大検知距離が同等となっている。前方検知センサ331A,331B,332A,332Bは、それぞれの検知範囲が貨幣処理ユニット12の前方に向くように貨幣処理ユニット12に取り付けられている。前方検知センサ331A,331B,332A,332Bは、上記したように、貨幣処理ユニット12の前面の最先端部335よりも、奥まった位置に配置されており、最先端部335からの前後方向の距離が、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bの最大検知距離と同程度で、最大検知距離よりも若干短くなっている。例えば、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bの最大検知距離は100mm強であり、最先端部335から前方検知センサ331A,331B,332A,332Bまでの前後方向の距離は100mm弱となっている。
【0029】
前方検知センサ331A,331B,332A,332Bは、貨幣処理ユニット12の前面の最先端部335よりも若干前方の検知限度位置およびこれよりも近くに物体があると、この物体を検知する一方、検知限度位置よりも前方つまり貨幣処理ユニット12とは反対側に物体があっても、この物体を検知することはない。よって、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bは、貨幣処理ユニット12の引き出し方向の移動時に、その前面の最先端部335の直前の検知限度位置に物体が迫ると、それまで検知していなかったこの物体を検知する。
【0030】
筐体11と、貨幣処理ユニット12の内部ユニット部22とは、図示略のスライドレールで連結されており、これにより、貨幣処理ユニット12は筐体11に対し水平前後方向にスライド可能となるように連結されている。
【0031】
貨幣処理ユニット12は、筐体11に最も押し込まれた
図2に示す所定の収納位置にあるとき、装置前部構成部21が筐体11の前面に当接し内部ユニット部22の全体が筐体11に覆われている。また、貨幣処理ユニット12は筐体11から最も引き出された
図4に示す所定の最大引出位置にあるとき、筐体11との連結状態を維持したまま、内部ユニット部22を最大限露出させる。筐体11には、貨幣処理ユニット12が収納位置にあるか否かを検出する収納位置検出センサ48が設けられている。収納位置検出センサ48は、貨幣処理ユニット12が収納位置に位置するとオンされ、貨幣処理ユニット12が収納位置にないとオフされるリミットスイッチである。
【0032】
筐体11の下部には、前方に延出するようにラックギア51が取り付けられており、貨幣処理ユニット12の下部には、このラックギア51に沿って電動で移動する移動駆動部52が取り付けられている。移動駆動部52がラックギア51に沿って移動することにより、移動駆動部52と一体に設けられた貨幣処理ユニット12が筐体11に対し引き出し方向に移動し、押し込み方向にも移動する。
【0033】
移動駆動部52とラックギア51とが、貨幣処理ユニット12を筐体11に対して
図2に示す収納位置から
図3に示す所定の切替引出位置まで電動で引き出し方向つまり前方に移動させる移動機構53を構成している。切替引出位置は、貨幣処理ユニット12の筐体11に対する移動可能全範囲である収納位置と
図4に示す最大引出位置との間の位置となっている。
【0034】
移動機構53は、
図3に示す切替引出位置よりも若干後側の切替押込位置から
図2に示す収納位置までの範囲にある貨幣処理ユニット12を筐体11に対して
図2に示す収納位置まで電動で押し込み方向に移動させる。切替押込位置も、収納位置と最大引出位置との間の位置となっている。
【0035】
図5に示すように、移動駆動部52は、電動の引出・押込駆動モータ61と、電動のロック・噛合切替モータ62と、ロック・噛合切替モータ62で駆動されて支持軸64を中心に回動する作動部材65とを有している。引出・押込駆動モータ61は、貨幣処理ユニット12の走行駆動用のモータである。作動部材65は、支持軸64と平行をなす作動ピン66を有している。作動部材65は、ロック・噛合切替モータ62で駆動されて作動ピン66を支持軸64を中心に旋回させる。移動駆動部52は、
図6に示すように作動ピン66に係合するロック部材71を有している。
【0036】
ロック部材71は、板材から形成されており、作動部材65の支持軸64を中心に回動する。ロック部材71は、前後方向に延在しており、後端部に鉤状部73が形成されている。鉤状部73には支持軸64とは反対側に面取り74が形成されている。ロック部材71には、支持軸64の鉤状部73とは反対側に、支持軸64を中心とする円弧状の押圧溝75が形成されており、この押圧溝75に作動部材65の作動ピン66が挿入されている。ロック部材71には、押圧溝75の支持軸64とは反対側に支持軸64を中心とする円弧状の規制溝76が形成されており、この規制溝76には、貨幣処理ユニット12に位置固定で設けられたストッパピン77が挿入されている。ロック部材71には、鉤状部73とは反対側の端部に前方に突出する突起部78が形成されている。
【0037】
図2に示すように貨幣処理ユニット12が収納位置にあるとき、
図6に示すようにロック部材71は、全体として前後方向に沿う姿勢であり、鉤状部73の先端側にあって側方に突出するロック片部79が、筐体11側に位置固定で設けられたロックピン81(係合部)の後側に位置している。これにより、ロック部材71は、鉤状部73でロックピン81に係合して貨幣処理ユニット12の前方への移動を規制するロック状態となる。言い換えれば、貨幣処理ユニット12に回動可能に設けられたロック部材71は、ロックピン81に係合して貨幣処理ユニット12を筐体11にロックする。ロック部材71には、鉤状部73をロックピン81に係合させる方向に付勢力を付与するロック部材付勢バネ82の一端が係止されている。ロック部材71は、ロック部材付勢バネ82で付勢されて規制溝76のラックギア51とは反対側の端部をストッパピン77に当接させている。ロック部材71は、この位置が、前後方向に沿いロック片部79および面取り74の左右方向の位置をロックピン81に合わせるロック位置となる。このときのロック部材71の状態がロック状態である。
【0038】
作動部材65には、支持軸64の作動ピン66とは反対側に長穴85が形成されており、
図7および
図8に示すように、この長穴85に連結ピン86が挿入されている。この連結ピン86は、移動駆動部52に設けられており、同じく移動駆動部52に設けられたL字状のカム部材91の一端に固定されている。カム部材91には、連結ピン86とは反対の他端にカム92が固定されている。カム部材91は、連結ピン86とカム92との間が、
図7に示すロック・噛合切替モータ62の駆動軸93に固定されており、この駆動軸93を中心にこれと一体に回動する。その結果、上記した作動部材65は、ロック・噛合切替モータ62によってカム部材91を介して駆動される。カム部材91には
図8に示すように検出片部94が設けられている。
【0039】
移動駆動部52には、
図7に示す引出・押込駆動モータ61の駆動により支持軸101を中心に回転する駆動ギア102が設けられている。移動駆動部52には、カム部材91および駆動ギア102の隣に回動部材105が設けられている。回動部材105は、駆動ギア102を支持する支持軸101を中心に回動するように支持されている。回動部材105は、支持軸106を中心に回転可能に設けられたピニオンギア107と、カム部材91側に配置されてカム92に当接するカムフォロア108とを有している。
【0040】
図示は略すが、駆動ギア102には、外周部に円形に配列された歯が形成されており、ピニオンギア107にも、外周部に円形に配列された歯が形成されている。ピニオンギア107は、駆動ギア102に常時動力伝達可能に噛み合っており、よって、引出・押込駆動モータ61で駆動されて支持軸106を中心に回転する。言い換えれば、引出・押込駆動モータ61がピニオンギア107を回転させる。
【0041】
図示は略すが、ラックギア51にも、前後方向に直線状に配列された歯がピニオンギア107側の側部に形成されている。ピニオンギア107は、回動部材105の回動によりラックギア51に対し近接および離間可能となっており、
図7および
図8に示す離間時にはラックギア51に噛み合うことはない。他方、ピニオンギア107は、
図9に示す近接時には動力伝達可能にラックギア51に噛み合う。回動部材105は、カムフォロア108を常時カム92に当接させるように図示略の回動部材付勢バネによってカム部材91の方向に付勢されている。
【0042】
カム部材91は、
図7,
図8に示す位置が待機位置となっており、カム部材91がこの待機位置にあるとき、これに連動するように連結された作動部材65も待機位置にある。このとき、
図8に示すようにカム部材91の検出片部94が待機位置センサ111で検出されている。カム部材91が待機位置にあるとき、回動部材105は、図示略の回動部材付勢バネの付勢力でピニオンギア107をラックギア51から離間させている。この位置が回動部材105の待機位置となっている。
図6〜
図8に示すように作動部材65が待機位置にある状態で、ロック部材71が
図6に示すようにロック位置にあるとき、作動部材65の作動ピン66は、ロック部材71の押圧溝75の中間位置に位置する。このため、ロック部材71は、ロック片部79をロックピン81の真後からラックギア51側に退避させるように回動可能となっている。
【0043】
カム部材91は、
図7に示すロック・噛合切替モータ62の駆動で待機位置から回動させられると、そのカム92でカムフォロア108を押圧する。これにより、カムフォロア108を有する回動部材105が支持軸101を中心にラックギア51の方向に回動し、
図9に示すようにそのピニオンギア107をラックギア51に噛み合わせる。これと並行して、カム部材91に連結ピン86を介して連結された作動部材65が、待機位置に位置する状態から支持軸64を中心に回動して、
図10に示すように、その作動ピン66をロック部材71の押圧溝75のラックギア51とは反対側の端部に近接させる。つまり、
図9に示すようにカム部材91が回動部材105のピニオンギア107をラックギア51に噛み合わせると、その時点で、
図10に示すように作動ピン66が押圧溝75のラックギア51とは反対側の端部に所定の距離まで近づく。このときの、カム部材91、作動部材65および回動部材105の位置がピニオンギア107をラックギア51に噛み合わせるギア噛合位置となる。
図9に示すように、カム部材91、作動部材65および回動部材105がギア噛合位置にあるとき、カム部材91の検出片部94がギア噛合位置センサ112で検出されることになる。
【0044】
カム部材91は、ロック・噛合切替モータ62の駆動でギア噛合位置からさらに回動しても、カム92の形状により、回動部材105をギア噛合位置に維持する。カム部材91が、ギア噛合位置からさらに回動すると、これに連動する作動部材65は、
図11に示すように、作動ピン66を押圧溝75のラックギア51とは反対側の端部に当接させて、押圧溝75つまりロック部材71を押圧して、これをロック部材付勢バネ82の付勢力に抗して回動させる。回動させられたロック部材71は、ロック片部79をロックピン81の真後から退避させて鉤状部73のロックピン81への係合を解除することになり、貨幣処理ユニット12の筐体11へのロックを解除するロック解除状態となる。
【0045】
以上により、ロック・噛合切替モータ62は、カム部材91および回動部材105を介してピニオンギア107を移動させてピニオンギア107とラックギア51とを噛み合わせたり、噛み合いを解除したりする。また、ロック・噛合切替モータ62は、カム部材91および作動部材65を介してロック部材71を回動させて、ロック部材71とロックピン81とを係合させたり、係合を解除したりする。
【0046】
図11に示すようにロック解除状態にあるときの作動部材65およびロック部材71の位置と、作動部材65およびロック部材71をロック解除状態とする
図12および
図13に示すカム部材91の位置とが、貨幣処理ユニット12の筐体11へのロックを解除するロック解除位置となる。
図12および
図13に示すようにカム部材91がロック解除位置に位置すると、カム部材91の検出片部94が、
図13に示すようにロック解除位置センサ113で検出されることになる。なお、カム部材91がギア噛合位置からロック解除位置まで回動しても、上述したように、カム92の形状により、回動部材105はギア噛合位置に維持される。
【0047】
ここで、
図10に示すように作動部材65がギア噛合位置にあり、ロック部材71がロック位置にあるとき、作動部材65の作動ピン66は、ロック部材71の押圧溝75のラックギア51とは反対側に位置する。この状態で、一旦引き出された貨幣処理ユニット12が筐体11に対し押し込み方向に移動すると、収納位置に位置する手前で、ロック部材71が面取り74を筐体11側のロックピン81に当接させる。すると、ロック部材71が、貨幣処理ユニット12の移動にともなって、面取り74の傾斜によりロック部材付勢バネ82の付勢力に抗して回動し、鉤状部73のロック片部79をロックピン81から側方に逃がす。そして、ロック片部79がロックピン81よりも後側に位置すると、ロック部材71がロック部材付勢バネ82の付勢力によってストッパピン77を規制溝76のラックギア51とは反対側の端部に当接させるロック位置に戻り、ロック状態となる。
【0048】
図7に示すロック・噛合切替モータ62、カム部材91、作動部材65、
図6に示すロック部材71、ストッパピン77およびロック部材付勢バネ82が、筐体11に押し込まれた収納位置で貨幣処理ユニット12を筐体11に対してロック状態とし、このロック状態を電動により解除するロック機構115(ロック手段)を構成している。
【0049】
図14に示すように、貨幣処理ユニット12には、ロック機構115によるロック状態を手動により解除する手動ロック解除機構121(手動ロック解除手段)が設けられている。手動ロック解除機構121は、回動片部122を有するキーシリンダ123と、キーシリンダ123とは別体であり、対応するキーシリンダ123に差し込まれると回転可能となり、回転時に回動片部122を一体に回転させるキー124とを有している。
【0050】
また、手動ロック解除機構121は、支持軸127で貨幣処理ユニット12の側面に回動可能に中間部が支持され、前端部が回動片部122に下側から当接可能な前後方向に沿う基端アーム128を有している。また、手動ロック解除機構121は、この基端アーム128の後端部に上端部が連結軸129で回転可能に連結されて貨幣処理ユニット12の側面に沿って下方に延出する中間アーム130を有している。また、手動ロック解除機構121は、支持軸131で貨幣処理ユニット12の側面に回動可能に支持されるとともに中間アーム130の下端部に後部が連結軸132で連結される回動体133と、中間アーム130を回動体133の方向に付勢するアーム付勢バネ134とを有している。回動体133には、下方に延出する押圧片部135が形成されている。
【0051】
また、手動ロック解除機構121は、支持軸140で貨幣処理ユニット12の下面に回動可能に支持される水平回動体142を有している。水平回動体142は、そのラックギア51とは反対側の端部にある当接部141が回動体133の押圧片部135に後側から当接可能に対向している。水平回動体142には、そのラックギア51側の端部に長穴143が形成されており、その後部に係合ピン144が設けられている。
【0052】
また、手動ロック解除機構121は、水平回動体142のラックギア51側にあって支持軸147で貨幣処理ユニット12の下面に回動可能に支持される水平回動体149を有している。水平回動体149は、そのラックギア51とは反対側の端部の連結ピン148が長穴143に挿入されている。水平回動体149には、ラックギア51側の端部に当接ピン150が設けられており、この当接ピン150がロック部材71の突起部78のラックギア51側に配置されている。
【0053】
また、手動ロック解除機構121は、水平回動体149をその当接ピン150がロック部材71の突起部78から離れる方向に付勢する回動体付勢バネ153を有しており、水平回動体142の後側にあって係合ピン144に係合する係合凹部154が形成された規制部材155を有している。規制部材155には、左右方向に延在する二箇所の長穴158が形成されており、これら長穴158には貨幣処理ユニット12の下面のガイドピン159が挿入されている。規制部材155は、左右方向に移動することになり、長穴158によってガイドピン159つまり貨幣処理ユニット12に対する移動許容範囲が決められている。
【0054】
手動ロック解除機構121は、キーシリンダ123からキー124が抜かれた待機状態にあるとき、
図14に示すように、中間アーム130がアーム付勢バネ134の付勢力によって押し下げられており、その結果、この中間アーム130に連結軸129を介して連結された基端アーム128が前端部をキーシリンダ123の回動片部122に下側から当接させて停止している。加えて、中間アーム130に連結軸132を介して連結された回動体133は、押圧片部135を前側に位置させている。この状態での位置が、基端アーム128、中間アーム130および回動体133の待機位置となっている。
【0055】
また、手動ロック解除機構121が待機状態にあるとき、水平回動体149が回動体付勢バネ153の付勢力で、待機位置にあるロック部材71の突起部78に当接ピン150を当接または近接させる待機位置にある。また、水平回動体149の連結ピン148に連結された水平回動体142は、当接部141を待機位置にある回動体133の押圧片部135に近接させる待機位置にある。さらに、水平回動体142は、規制部材155をロック部材71から離間させる待機位置に位置させている。
【0056】
このような待機状態から、キーシリンダ123に差し込まれたキー124で回動片部122が回動させられて下がると、支持軸127に支持された基端アーム128の前部を下方に押し下げ、後部を上方に押し上げる。すると、基端アーム128がこれに連結軸129で連結された中間アーム130をアーム付勢バネ134の付勢力に抗して引き上げる。すると、中間アーム130に連結軸132を介して連結された回動体133が支持軸131を中心として押圧片部135を後方に移動させるように回動する。
【0057】
すると、押圧片部135が、
図15に示すように水平回動体142の当接部141を後側に押圧し、その結果、水平回動体142は、ラックギア51側の長穴143を前側に移動させるように支持軸140を中心に回動する。これにより、水平回動体142の長穴158に連結ピン148で係合する水平回動体149が、連結ピン148を前側に移動させることになり、支持軸147を中心として当接ピン150をラックギア51とは反対側に移動させるように回動体付勢バネ153の付勢力に抗して回動する。この回動で、当接ピン150は、ロック部材71の突起部78をラックギア51とは反対側に押圧することになり、ロック部材71を支持軸64を中心に回動させる。すると、ロック部材71がロック解除位置となり、貨幣処理ユニット12の筐体11へのロックを解除する。このとき、規制部材155は、長穴158がガイドピン159に対し移動可能な範囲でラックギア51側に移動することになり、ガイドピン159に当接してそれ以上の移動が規制される。これにより、水平回動体142,149つまりロック部材71の必要以上の回動を規制する。
【0058】
以上の手動ロック解除状態から、
図14に示すキーシリンダ123に差し込まれたキー124で回動片部122が逆方向に回動させられて上がると、これに追従して基端アーム128が回動可能になる。その結果、アーム付勢バネ134の付勢力によって、中間アーム130が引き下げられて待機位置に戻り、中間アーム130に連結軸129で連結された基端アーム128が、後端部を下げ、前端部を上げる待機位置に戻る。また、この中間アーム130の下降により、これに連結軸132を介して連結された回動体133が支持軸131を中心として押圧片部135を前方に移動させるように回動して待機位置に戻る。
【0059】
すると、押圧片部135による押圧が解除された水平回動体142およびこれに連結された水平回動体149が、回動体付勢バネ153の付勢力で戻される。これにより、水平回動体149が、ロック部材71の突起部78への当接ピン150の押圧を解除し、ロック部材71をロック部材付勢バネ82の付勢力で待機位置に戻しつつ、待機位置に戻る。また、水平回動体142が待機位置に戻り、規制部材155を待機位置に戻す。
【0060】
図3に示すように、筐体11に設けられたラックギア51の長さは、貨幣処理ユニット12を切替引出位置まで引き出し方向に移動させることができる長さであって、
図4に示す最大引出位置までは移動させることができない長さに設定されている。つまり、貨幣処理ユニット12が
図3に示す切替引出位置まで移動した時点で、
図16(a)に示すようにピニオンギア107はラックギア51の前端位置に噛み合っている。貨幣処理ユニット12には、ラックギア51の背面に接触するリミットスイッチ161(位置検出手段)が設けられている。リミットスイッチ161は、貨幣処理ユニット12の筐体11に対する位置を検出するものである。
【0061】
ラックギア51の前端位置の背面にはピニオンギア107側に凹む切欠部162が形成されており、その結果、切欠部162以外の背面を構成する主体部163は、切欠部162よりもピニオンギア107とは反対側に位置している。貨幣処理ユニット12が収納位置から切替引出位置までの範囲にあるとき、リミットスイッチ161は主体部163に接触してオンされており、貨幣処理ユニット12が引き出し方向に移動して切替引出位置に位置すると、リミットスイッチ161は切欠部162に接触してオフされることになる。つまり、貨幣処理ユニット12の引き出し方向の移動中に、リミットスイッチ161がオンからオフされる位置が切替引出位置となる。
図2に示す収納位置から
図4に示す最大引出位置までが、貨幣処理ユニット12の筐体11に対する移動可能な全範囲である移動可能全範囲となっており、切替引出位置は、この移動可能全範囲の中間位置となっている。
【0062】
貨幣処理ユニット12が
図4に示す最大引出位置あるいはその近傍から押し込み方向に移動するとき、
図16に示すリミットスイッチ161はラックギア51に接触せずにオフされており、所定の切替押込位置に位置すると、リミットスイッチ161は主体部163に乗り上げてオンされることになる。つまり、貨幣処理ユニット12の押し込み方向の移動中にリミットスイッチ161がオフからオンされる位置が切替押込位置となる。
【0063】
図17に示すように、貨幣処理ユニット12には、筐体11に対する貨幣処理ユニット12の押し込み方向の移動時に、収納位置の手前で貨幣処理ユニット12の移動に抵抗を発生させるダンパ171が設けられている。ダンパ171は、シリンダ172とシリンダ172内で摺動するピストン173と、ピストン173に連結されてシリンダ172から突出するロッド174を有しており、ロッド174が後方に延出する姿勢で貨幣処理ユニット12にシリンダ172において取り付けられている。シリンダ172内には高圧ガスが充填されており、このガスの圧力でロッド174がシリンダ172から突出する方向に付勢されている。ダンパ171は、筐体11に対する貨幣処理ユニット12の押し込み方向の移動時に、収納位置の手前で、
図17に示すようにロッド174が筐体11の内壁に当接してピストン173とともに停止することになり、貨幣処理ユニット12とともに移動するシリンダ172に対して相対移動する。この相対移動により、ピストン173がガスを圧縮することになり、ガスからの反力で貨幣処理ユニット12の移動に抵抗を発生させて速度を低下させる。
【0064】
次に、貨幣処理装置10の作動について説明する。
【0065】
貨幣処理装置10は貨幣処理を行う通常使用状態では、貨幣処理ユニット12が
図2に示すように収納位置にある。また、
図6に示すように、ロック部材71がロック部材付勢バネ82の付勢力で、規制溝76のラックギア51とは反対側の端部をストッパピン77に当接させるロック位置にある。ロック位置にあるロック部材71は、鉤状部73のロック片部79が筐体11に位置固定で設けられたロックピン81に係合して貨幣処理ユニット12の前方への移動を規制するロック状態となっている。
【0066】
また、この通常使用状態では、
図7,
図8に示すように、カム部材91、作動部材65および回動部材105が待機位置にある。これにより、カム部材91および回動部材105が、ラックギア51とピニオンギア107との噛み合いを解除している。待機位置にある作動部材65は、
図6に示すように、作動ピン66をロック位置にあるロック部材71の押圧溝75の中間位置に位置させている。また、
図8に示すように、待機位置にあるカム部材91は、その検出片部94が待機位置センサ111で検出されている。
図6〜
図8に示す状態が、移動機構53の待機状態となっている。加えて、通常使用状態では、手動ロック解除機構121が
図14に示す待機状態にあり、水平回動体149の当接ピン150がロック部材71を押圧しない状態となっている。
【0067】
この状態から、貨幣処理ユニット12の引き出しを行う場合、操作者は、
図2に示す操作表示部46に、貨幣処理ユニット12の引き出しを行うために必要な所定の引き出し指示操作入力を行う。操作表示部46は、貨幣処理装置10が貨幣処理を行っていないことを条件に、この引き出し指示操作入力を受け付ける。装置制御部44は、操作表示部46がこの引き出し指示操作入力を受け付けると、操作表示部46に、所定の引き出し操作である操作ボタン325A,325Bの同時押下状態の維持操作を促す表示を表示させる。
【0068】
この状態から、操作ボタン325A,325Bの同時押下状態の維持操作が入力されると、言い換えれば、操作ボタン325A,325Bに所定の引き出し操作が入力されると、装置制御部44は、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bのそれぞれで貨幣処理ユニット12の前方の物体を検知させる。前方検知センサ331A,331B,332A,332Bのいずれでも物体を検知しない場合に、装置制御部44は、ロック・噛合切替モータ62を正回転させて、それまで
図8に示すように待機位置にあって検出片部94が待機位置センサ111で検出されていた状態のカム部材91を、
図13に示すように検出片部94がロック解除位置センサ113で検出されるまで回転させる。すると、カム部材91は、
図9に示すようにそのカム92でカムフォロア108を押圧して、カムフォロア108を有する回動部材105を回動させて、回動部材105のピニオンギア107をラックギア51に噛み合わせるギア噛合位置となる。
【0069】
カム部材91および作動部材65は、上記のギア噛合位置を越えてさらに回動する。このとき、カム部材91は、そのカム92の形状によって回動部材105を回動させず、ピニオンギア107をラックギア51に適正に噛み合う状態に維持する。一方で、カム部材91とともに
図10に示すギア噛合位置を越えてさらに回動する作動部材65は、
図11に示すように作動ピン66を押圧溝75のラックギア51とは反対側の端部に当接させて、ロック部材71を押圧してロック部材付勢バネ82の付勢力に抗して回動させる。
【0070】
このように回動させられたロック部材71は、ロック片部79をロックピン81の真後から退避させて鉤状部73のロックピン81への係合を解除することになり、貨幣処理ユニット12の筐体11へのロックを解除するロック解除状態となる。つまり、
図13に示すように検出片部94がロック解除位置センサ113で検出されるまでカム部材91を回動させると、作動部材65がロック部材71をロック解除状態とする。
図11〜
図13に示す状態が、移動機構53のロック解除状態となっている。
【0071】
次に、装置制御部44は、移動機構53の
図12に示す引出・押込駆動モータ61を駆動してピニオンギア107を正回転させる。すると、ピニオンギア107が、筐体11に取り付けられているラックギア51に噛み合っていることから、ラックギア51に沿って前方に移動することになり、ピニオンギア107を含む移動駆動部52が取り付けられた貨幣処理ユニット12が筐体11に対して引き出し方向に移動する。
図3に示すように貨幣処理ユニット12が筐体11に対して切替引出位置まで移動すると、
図16に示すリミットスイッチ161が主体部163に接触するオン状態から、
図16(a)に示すように切欠部162に接触するオフ状態となる。
【0072】
このリミットスイッチ161のオン状態からオフ状態への切り替わりで、装置制御部44は、貨幣処理ユニット12が切替引出位置に位置したことを検出し、引出・押込駆動モータ61を停止させる。すると、貨幣処理ユニット12の筐体11に対する引き出し方向の移動が停止させられる。
【0073】
ここで、装置制御部44は、操作ボタン325A,325Bが同時に押下操作された後、貨幣処理ユニット12が筐体11に対して切替引出位置に位置するまで、自動引き出し中であることを操作者へ認識させ注意を促すため、音声出力部47を駆動して、貨幣処理ユニット12が自動引き出し中である旨の報知音声を発生させると共に、LEDランプ326A,326Bを点滅または点灯させて貨幣処理ユニット12が自動引き出し中である旨の報知表示を行う。
【0074】
また、装置制御部44は、操作ボタン325A,325Bが同時に押下操作された後、貨幣処理ユニット12が筐体11に対して切替引出位置に位置する前に、操作ボタン325A,325Bのうちの少なくともいずれか一方の押下操作が解除されると、その時点で引出・押込駆動モータ61を停止させ、貨幣処理ユニット12の筐体11に対する引き出し方向の移動を停止させる。
【0075】
また、装置制御部44は、操作ボタン325A,325Bが同時に押下操作された後、この同時押下状態が維持されていても、貨幣処理ユニット12が筐体11に対して切替引出位置に位置する前に、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bの少なくともいずれか一つで物体を検知すると、その時点で引出・押込駆動モータ61を停止させ、貨幣処理ユニット12の筐体11に対する引き出し方向の移動を停止させる。
【0076】
つまり、装置制御部44は、引き出し操作として、操作ボタン325A,325Bに同時押下状態の維持操作が入力されると、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bが物体を検知しない状態では、引出・押込駆動モータ61を含む移動機構53によって貨幣処理ユニット12を前方に移動させる一方、操作ボタン325A,325Bに同時押下状態の維持操作が入力されても、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bが物体を検知する状態では、移動機構53による貨幣処理ユニット12の前方移動を規制する。
【0077】
言い換えれば、装置制御部44は、引き出し指示操作入力を受け付けた後、貨幣処理ユニット12が筐体11に対して切替引出位置に位置するまで、操作ボタン325A,325Bが同時に押下操作された状態であり、かつ、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bの全てが物体を検知しない状態であるという条件が満足されると、引出・押込駆動モータ61を駆動して、貨幣処理ユニット12を筐体11に対して引き出し方向の前方へ移動させる。
【0078】
また、この間、上記条件が満足されない状態になって、引出・押込駆動モータ61を停止させ、貨幣処理ユニット12を筐体11に対して停止させても、再び、上記条件が満足される状態になれば、引出・押込駆動モータ61を駆動して、貨幣処理ユニット12を筐体11に対して引き出し方向へ移動させる。つまり、操作ボタン325A,325Bの少なくともいずれか一方が押下操作されなくなったり、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bの少なくともいずれか一つが物体を検知する状態になって、貨幣処理ユニット12を筐体11に対して停止させても、その後、操作ボタン325A,325Bが同時に押下操作された状態であり、かつ、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bのいずれも物体を検知しない状態であるという条件が満足されると、貨幣処理ユニット12を筐体11に対して引き出し方向へ移動させる。
【0079】
ここで、操作ボタン325A,325Bの少なくともいずれか一方が押下操作されなくなると、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bのいずれも物体を検知しない状態であれば、装置制御部44は、操作表示部46に、操作ボタン325A,325Bの同時押下状態の維持操作を行うように誘導するガイダンス表示を行う。
【0080】
また、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bのいずれかが物体を検知する状態になった後、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bのいずれも物体を検知しない状態になると、装置制御部44は、操作表示部46に、操作ボタン325A,325Bの同時押下状態の維持操作を行うように誘導するガイダンス表示を行う。
【0081】
ここで、操作者が一人で操作ボタン325A,325Bを同時に押下操作する場合、貨幣処理装置10の前方に立って行う場合と、貨幣処理装置10の左側から椅子313Aに着座した姿勢で行う場合と、貨幣処理装置10の右側から椅子313Bに着座した姿勢で行う場合とが想定される。これらのうちのいずれの場合であっても、操作者の両腕は、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bの全部よりも上方にあり、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bのいずれの検知範囲にも入り込むことはない。
【0082】
操作者の身体部分が前方検知センサ331A,331B,332A,332Bのいずれかの検知範囲に入るのは、操作者が一人で操作ボタン325A,325Bを同時に押下操作する場合であって、操作者が、貨幣処理装置10の前面に近づき過ぎた場合となる。このような場合に、貨幣処理ユニット12が前方移動を停止することになって操作者への接触を回避することになり、よって、貨幣処理装置10は、貨幣処理ユニット12の前進する際の操作者への接触を抑制することができる。
【0083】
また、貨幣処理装置10の前方に何らかの障害物がある状態でも、貨幣処理ユニット12を筐体11に対して前進させている最中に、この障害物が前方検知センサ331A,331B,332A,332Bのいずれかの検知範囲に入ると、貨幣処理ユニット12が前方移動を停止することになって、接触を回避することになり、よって、貨幣処理装置10は、貨幣処理ユニット12が引き出し方向に移動する際に、障害物に接触するのを防ぐことが可能となる。よって、貨幣処理ユニット12が傷付いたり破損したりする損傷の発生を抑制することができる。
【0084】
図3に示すように、貨幣処理ユニット12が筐体11に対して切替引出位置まで移動すると、硬貨を収納する硬貨カセット39が、硬貨処理部内部構成部37から外部に取り外し可能となり、外部から硬貨処理部内部構成部37に装填可能となる。また、紙幣を収納する紙幣カセット40が、紙幣処理部内部構成部38から外部に取り外し可能となり、外部から紙幣処理部内部構成部38に装填可能となる。つまり、切替引出位置は、少なくとも貨幣処理ユニット12内の硬貨カセット39および紙幣カセット40が取り出し可能となる位置となっている。
【0085】
上記のように切替引出位置で引出・押込駆動モータ61を停止させると、装置制御部44は、ロック・噛合切替モータ62を逆回転させて、それまで
図13に示すように検出片部94がロック解除位置センサ113で検出されていた状態のカム部材91を、
図8に示すように検出片部94が待機位置センサ111で検出されるまで回動させて待機位置に戻す。すると、カム部材91と連動して回動する作動部材65が、
図6に示すようにロック部材71の押圧を解除してロック部材71をロック部材付勢バネ82の付勢力でロック位置に戻し、その後、カム部材91が
図7に示すようにそのカム92によるカムフォロア108の押圧を解除して、回動部材105を図示略の回動部材付勢バネの付勢力で回動させる。すると、
図16(b)に示すように、回動部材105のピニオンギア107がラックギア51から離れる。つまり、ピニオンギア107とラックギア51との噛み合いが解除される。
【0086】
この状態で、貨幣処理ユニット12は、筐体11に対して手動で
図4に示す最大引出位置までの移動が可能となる。上記のように貨幣処理ユニット12が切替引出位置に位置した時点でピニオンギア107をラックギア51から離間させていることから、貨幣処理ユニット12が
図3に示す切替引出位置から
図4に示す最大引出位置に向けて引き出されても、引出・押込駆動モータ61の負荷を一切受けることはない。つまり、切替引出位置からの貨幣処理ユニット12の引き出しの操作力を軽減できる。
【0087】
一方、上記した待機状態にある移動機構53のロック部材71に対して手動でロックを解除する場合、操作者は、
図14に示すキーシリンダ123にキー124を差し込んで、
図14に矢印で示すように回転させる。すると、回動片部122が基端アーム128の前端部を下方に押し下げ後端部を上方に押し上げて、中間アーム130をアーム付勢バネ134の付勢力に抗して引き上げる。これにより、回動体133が押圧片部135を後方に移動させるように回動する。すると、
図15に示すように、押圧片部135で当接部141が押圧されて、水平回動体142がラックギア51側の端部を前側に移動させるように回動し、水平回動体149が当接ピン150をラックギア51から離すように回動する。当接ピン150は、ラックギア51から離れるように移動すると、ロック部材71の突起部78をラックギア51から離す方向に押圧することになる。その結果、ロック部材71をその鉤状部73がラックギア51に近づくように回動させることになって、鉤状部73によるロックピン81への係合を解除する。
図15に示す状態が、移動機構53の手動ロック解除状態となっている。
【0088】
これにより、筐体11から貨幣処理ユニット12が手動で引き出し可能となる。この手動によるロック解除時に、ロック・噛合切替モータ62を回転させることはなく、カム部材91、作動部材65および回動部材105は待機位置に位置する。このため、
図15に示すように、ピニオンギア107とラックギア51とが噛み合うことはなく、引出・押込駆動モータ61が手動による引き出しおよび押し込みの負荷とはならない。この手動によるロック解除時についても、装置制御部44は、筐体11からの貨幣処理ユニット12の引き出し位置を、収納位置検出センサ48およびリミットスイッチ161により検出する。
【0089】
貨幣処理ユニット12が、筐体11に対して、上記のように切替引出位置まで電動で移動させられた後、切替引出位置からそのまま手動で押し込まれたり、必要により切替引出位置から最大引出位置までの範囲で手動で引き出されてから手動で押し込まれたり、あるいは、手動によるロック解除後に、手動で切替引出位置から最大引出位置までの範囲に引き出されてから手動で押し込まれたりすると、貨幣処理ユニット12が、切替引出位置よりも押し込み方向奥側の切替押込位置を通過することになる。
【0090】
このような通過時に、貨幣処理ユニット12が切替押込位置に位置すると、
図16に示すリミットスイッチ161が、切欠部162に接触するオフ状態から主体部163に接触するオン状態となる。このリミットスイッチ161のオフ状態からオン状態への切り替わりで、装置制御部44は、貨幣処理ユニット12が切替押込位置に位置したことを検出し、その後、リミットスイッチ161のオン状態が維持されている場合に限り、貨幣処理ユニット12の押し込みを行うために必要な所定の押し込み指示操作入力を操作表示部46にて受け付ける状態となる。そして、電動による押し込み方向移動が可能である旨を、操作表示部46に表示させる。
【0091】
ここで、手動によるロック解除時に、装置制御部44は、筐体11から貨幣処理ユニット12が引き出されたことが収納位置検出センサ48で検出されると、その後、リミットスイッチ161がオン状態からオフ状態に切り替わらなくても、つまり貨幣処理ユニット12が切替引出位置まで引き出されなくても、操作表示部46への所定の押し込み指示操作入力を受け付ける状態となり、電動による押し込み方向移動が可能である旨を、操作表示部46に表示させる。
【0092】
操作表示部46が押し込み指示操作入力を受け付ける状態で、貨幣処理ユニット12の押し込み方向の移動を電動により行わせる場合、操作者は、操作表示部46に、押し込み指示操作入力を行う。装置制御部44は、操作表示部46がこの押し込み指示操作入力を受け付けると、それまで
図8に示すように待機位置にあって検出片部94が待機位置センサ111で検出されていた状態のカム部材91を、
図9に示すように検出片部94がギア噛合位置センサ112で検出されるまで、ロック・噛合切替モータ62を正回転させる。すると、カム部材91が、そのカム92でカムフォロア108を押圧して、カムフォロア108を有する回動部材105を回動させて、ギア噛合位置となり、
図9および
図10に示すように回動部材105のピニオンギア107をラックギア51に噛み合わせる。つまり、装置制御部44は、操作表示部46が押し込み指示操作入力を受け付ける前には、ラックギア51とピニオンギア107との噛み合いを解除しており、操作表示部46が押し込み指示操作入力を受け付けるとラックギア51とピニオンギア107とを噛み合わせる。
【0093】
次に、装置制御部44は、移動機構53の引出・押込駆動モータ61を駆動してピニオンギア107を逆回転させる。すると、ピニオンギア107が、筐体11に取り付けられているラックギア51に噛み合っていることから、ラックギア51に沿って後方に移動することになり、ピニオンギア107を含む移動駆動部52が取り付けられた貨幣処理ユニット12が、筐体11に対して押し込み方向に電動により移動する。
図9および
図10に示す状態が、移動機構53の押し込み中状態となっている。
【0094】
電動で押し込み方向に移動する貨幣処理ユニット12が筐体11に対して収納位置まで移動すると、貨幣処理ユニット12を収納位置検出センサ48が検出する。すると、装置制御部44は、引出・押込駆動モータ61を停止させる。これにより、貨幣処理ユニット12の筐体11に対する押し込み方向の移動が停止させられる。ここで、移動機構53により貨幣処理ユニット12の押し込み方向の移動を行っている最中は、装置制御部44が音声出力部47を駆動して、貨幣処理ユニット12が自動押し込み中である旨の報知音声を音声出力部47により発生させる。
【0095】
ここで、貨幣処理ユニット12が、リミットスイッチ161のオフからオンへの切り替わりで検出される切替押込位置から、収納位置検出センサ48で検出される収納位置を含まない押し込み方向奥側の範囲にあることを、リミットスイッチ161のオン、かつ、収納位置検出センサ48のオフで検出している場合に限り、操作表示部46が、押し込み指示操作入力を受け付ける状態となる。このため、貨幣処理ユニット12は、切替押込位置から収納位置の所定距離手前までのいずれの位置にあっても引出・押込駆動モータ61の電動による押し込み方向の移動が可能となっている。
【0096】
他方、貨幣処理ユニット12は、一旦、電動で切替引出位置まで引き出されると、それ以後、押し込み指示操作入力が入力されなければ、収納位置まで手動での押し込みも可能となっている。また、貨幣処理ユニット12は、手動で引き出された場合には、引き出しの位置に拘わらず手動での押し込みが可能となっている。このように手動での押し込みが可能な状態では、押し込み指示操作入力が入力されなければ、
図16(b)に示すように、ピニオンギア107をラックギア51から離間させていることから、引出・押込駆動モータ61の負荷を受けずに貨幣処理ユニット12の移動が可能となる。つまり、引き出しおよび押し込みの操作力を軽減できる。
【0097】
電動および手動のいずれであっても、
図10に電動の場合を示すように、収納位置に向けて貨幣処理ユニット12が筐体11に押し込まれると、収納位置に位置する手前で、貨幣処理ユニット12と一体に移動するロック部材71が面取り74を筐体11側のロックピン81に当接させる。すると、ロック部材71が、貨幣処理ユニット12の移動にともなって、面取り74の傾斜によりロック部材付勢バネ82の付勢力に抗して回動し、ロック片部79をロックピン81から逃がす。そして、ロック片部79がロックピン81よりも後側に位置すると、ロック部材71がロック部材付勢バネ82の付勢力によってロック位置に戻り、貨幣処理ユニット12が収納位置に位置すると同時に、ロック片部79がロックピン81の真後に位置するロック状態となる。
【0098】
電動で押し込まれて貨幣処理ユニット12が収納位置に位置した場合、装置制御部44は、ロック・噛合切替モータ62を逆回転させて、それまで
図9に示すように検出片部94がギア噛合位置センサ112で検出されていた状態のカム部材91を、
図8に示すように検出片部94が待機位置センサ111で検出されるまで回動させて待機位置に戻す。すると、カム部材91が、
図76および
図8に示すようにそのカム92によるカムフォロア108の押圧を解除して、回動部材105を図示略の回動部材付勢バネの付勢力で回動させて待機位置に戻す。すると、回動部材105のピニオンギア107がラックギア51から離れ、これらの噛み合いが解除される。
【0099】
なお、貨幣処理ユニット12を筐体11に押し込むと、貨幣処理ユニット12は、収納位置に位置する所定距離手前で、ダンパ171を筐体11に当接させて、押し込みに対する抵抗を発生させる。これにより、電動および手動のいずれにおいても、貨幣処理ユニット12を筐体11に押し込む場合に、収納位置の手前で、貨幣処理ユニット12の速度を低下させることができ、貨幣処理ユニット12が収納位置に位置する際に筐体11に衝突することにより生じる衝突音を抑制することができる。
【0100】
前方検知センサ331A,331B,332A,332Bは、モーションセンサであり、それぞれの検知範囲での物体の有無に加えて物体の動きを検知することができる。つまり、物体が操作者の手である場合、検知範囲内での、この手の有無に加えて動きを検知することができる。装置制御部44は、前方検知センサ331A,332Aの少なくともいずれか一方が、貨幣処理装置10の幅方向の外側から中央側へ物体が移動していることを検知すると、左側のテラーAの手が載置凹部42および紙幣入出金部43に近づいていると判定する。また、装置制御部44は、前方検知センサ331B,332Bの少なくともいずれか一方が、貨幣処理装置10の幅方向の外側から中央側へ物体が移動していることを検知すると、右側のテラーBの手が載置凹部42および紙幣入出金部43に近づいていると判定する。
【0101】
装置制御部44は、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bの検知結果に基づいて、貨幣処理装置10の貨幣処理である出金処理および入金処理を制御する。つまり、左側のテラーAの占有状態での貨幣処理時に、左側の前方検知センサ331A,332Aのいずれかで検知範囲に入った物体を検知すると貨幣処理を行い、右側の前方検知センサ331B,332Bのいずれかの検知範囲に物体が入っても貨幣処理を行うことはない。また、右側のテラーBの占有状態での貨幣処理時に、右側の前方検知センサ331B,332Bのいずれかで検知範囲に入った物体を検知すると貨幣処理を行い、左側の前方検知センサ331A,332Aのいずれかの検知範囲に物体が入っても貨幣処理を行うことはない。ここでは、その制御内容の要部について、貨幣処理装置10が窓口機311Aに占有された状態を例にとり説明する。なお、貨幣処理装置10が窓口機311Bに占有された状態については、以下のテラーAをテラーBに、テラーBをテラーAに、窓口機311Aを窓口機311Bに、窓口機311Bを窓口機311Aに、それぞれ読み替えればよい。
【0102】
例えば、貨幣処理装置10が窓口機311Aに占有された状態でこの窓口機311Aからの、硬貨および紙幣の両方の出金処理が含まれる出金指示に基づいて出金処理を行う際に、装置制御部44は、硬貨処理部31によって、カルトンロック部321でロックされて待機状態にあるカルトン320内に出金硬貨を繰り出させると共に、紙幣処理部32によって、シャッタ322が閉じられて待機状態にある紙幣入出金部43内に出金紙幣を繰り出させる。
【0103】
出金硬貨のカルトン320への繰り出しおよび出金紙幣の紙幣入出金部43内への繰り出しが完了すると、装置制御部44は、前方検知センサ331A,332Aで物体の移動を検知する。この検知によって、例えば、前方検知センサ331Aが、貨幣処理装置10の幅方向の外側から中央側へ物体が移動していることを検知すると、占有している左側の窓口機311Aに対応する左側のテラーAの手が載置凹部42に近づいていると判定し、出金処理の一部であるカルトンロック部321によるカルトン320のロック解除処理を行う。すると、操作者は、カルトン320を載置凹部42から引き出して出金硬貨を取り出すことになる。
【0104】
このとき、占有している左側の窓口機311Aに対応しない右側のテラーBの手が載置凹部42に近づいても、前方検知センサ331Bがその検知を行うことはなく、カルトンロック部321によるカルトン320のロック解除処理を行うこともない。つまり、左側の窓口機311Aに占有された状態でのカルトンロック部321によるカルトン320のロック解除処理は、左側のテラーAの手の載置凹部42の方向の移動を前方検知センサ331Aが検知したことを動作トリガとしており、他の前方検知センサ331B,332A,332Bは、ロック解除動作には影響を与えず、無反応となる。これにより、占有している左側の窓口機311Aに対応しない右側のテラーBによる、カルトン320からの出金硬貨の誤った取り出し、つまり出金硬貨の取り間違えを抑制する。
【0105】
ここで、上記した前方検知センサ331Aの検知と並行して、前方検知センサ331Bでも検知を行い、前方検知センサ331Bが、占有している左側の窓口機311Aに対応しない右側のテラーBの手が載置凹部42に近づいたことを検知した場合や、前方検知センサ331A,331Bが、左右両側のテラーA,Bの手が同時に載置凹部42に近づいたことを検知した場合に、操作表示部46にアラーム表示を表示させたり、音声出力部47でアラーム音を発生させたりしても良い。
【0106】
上記した出金硬貨のカルトン320への繰り出しおよび出金紙幣の紙幣入出金部43内への繰り出し完了後の前方検知センサ331A,332Aでの物体の移動検知中に、前方検知センサ332Aが、貨幣処理装置10の幅方向の外側から中央側へ物体が移動していることを検知すると、占有している左側の窓口機311Aに対応する左側のテラーAの手が紙幣入出金部43に近づいていると判定し、出金処理の一部であるシャッタ322の開放処理を行う。すると、操作者は、紙幣入出金部43から出金紙幣を取り出すことになる。
【0107】
このとき、占有している左側の窓口機311Aに対応しない右側のテラーBの手が紙幣入出金部43に近づいても、前方検知センサ332Bがその検知を行うことはなく、シャッタ322の開放処理を行うこともない。つまり、左側の窓口機311Aに占有された状態でのシャッタ322の開放処理は、左側のテラーAの手の紙幣入出金部43の方向の移動を前方検知センサ332Aが検知したことを動作トリガとしており、他の前方検知センサ331A,331B,332Bは、シャッタ322の開放処理には影響を与えず、無反応となる。これにより、占有している左側の窓口機311Aに対応しない右側のテラーBによる、紙幣入出金部43からの出金紙幣の誤った取り出し、つまり出金紙幣の取り間違えを抑制する。
【0108】
ここで、上記した前方検知センサ332Aの検知と並行して、前方検知センサ332Bでも検知を行い、前方検知センサ332Bが、占有している左側の窓口機311Aに対応しない右側のテラーBの手が紙幣入出金部43に近づいたことを検知した場合や、前方検知センサ332A,332Bが、左右両側のテラーA,Bの手が同時に紙幣入出金部43に近づいたことを検知した場合に、操作表示部46にアラーム表示を表示させたり、音声出力部47でアラーム音を発生させたりしても良い。
【0109】
また、例えば、貨幣処理装置10が窓口機311Aに占有された状態でこの窓口機311Aからの、硬貨の出金処理のみが含まれる出金指示に基づいて出金処理を行う際に、装置制御部44は、硬貨処理部31によって、カルトンロック部321でロックされて待機状態にあるカルトン320内に出金硬貨を繰り出させる。
【0110】
出金硬貨のカルトン320への繰り出しが完了すると、装置制御部44は、前方検知センサ331Aで物体の移動を検知する。この検知によって、前方検知センサ331Aが、貨幣処理装置10の幅方向の外側から中央側へ物体が移動していることを検知すると、占有している左側の窓口機311Aに対応する左側のテラーAの手が載置凹部42に近づいていると判定し、出金処理の一部であるカルトンロック部321によるカルトン320のロック解除処理を行う。すると、操作者は、カルトン320を載置凹部42から引き出して出金硬貨を取り出すことになる。
【0111】
このとき、占有している左側の窓口機311Aに対応しない右側のテラーBの手が載置凹部42に近づいても、前方検知センサ331Bがその検知を行うことはなく、カルトンロック部321によるカルトン320のロック解除処理を行うこともない。つまり、左側の窓口機311Aに占有された状態でのカルトンロック部321によるカルトン320のロック解除処理は、左側のテラーAの手の載置凹部42の方向の移動を前方検知センサ331Aが検知したことを動作トリガとしており、他の前方検知センサ331B,332A,332Bは、ロック解除動作には影響を与えず、無反応となる。これにより、占有している左側の窓口機311Aに対応しない右側のテラーBによる、カルトン320からの出金硬貨の誤った取り出し、つまり出金硬貨の取り間違えを抑制する。
【0112】
ここで、上記した前方検知センサ331Aの検知と並行して、前方検知センサ331Bでも検知を行い、前方検知センサ331Bが、占有している左側の窓口機311Aに対応しない右側のテラーBの手が載置凹部42に近づいたことを検知した場合や、前方検知センサ331A,331Bが、左右両側のテラーA,Bの手が同時に載置凹部42に近づいたことを検知した場合に、操作表示部46にアラーム表示を表示させたり、音声出力部47でアラーム音を発生させたりしても良い。
【0113】
また、例えば、貨幣処理装置10が窓口機311Aに占有された状態でこの窓口機311Aからの、紙幣の出金処理のみが含まれる出金指示に基づいて出金処理を行う際に、装置制御部44は、紙幣処理部32によって、シャッタ322が閉じられて待機状態にある紙幣入出金部43内に出金紙幣を繰り出させる。
【0114】
出金紙幣の紙幣入出金部43への繰り出しが完了すると、装置制御部44は、前方検知センサ332Aで物体の移動を検知する。この検知によって、前方検知センサ332Aが、貨幣処理装置10の幅方向の外側から中央側へ物体が移動していることを検知すると、占有している左側の窓口機311Aに対応する左側のテラーAの手が紙幣入出金部43に近づいていると判定し、出金処理の一部であるシャッタ322の開放処理を行う。すると、操作者は、紙幣入出金部43から出金紙幣を取り出すことになる。
【0115】
このとき、占有している左側の窓口機311Aに対応しない右側のテラーBの手が紙幣入出金部43に近づいても、前方検知センサ332Bがその検知を行うことはなく、シャッタ322の開放処理を行うこともない。つまり、左側の窓口機311Aに占有された状態でのシャッタ322の開放処理は、左側のテラーAの手の紙幣入出金部43の方向の移動を前方検知センサ332Aが検知したことを動作トリガとしており、他の前方検知センサ331A,331B,332Bは、ロック解除動作には影響を与えず、無反応となる。これにより、占有している左側の窓口機311Aに対応しない右側のテラーBによる、紙幣入出金部43からの出金紙幣の誤った取り出し、つまり出金紙幣の取り間違えを抑制する。
【0116】
ここで、上記した前方検知センサ332Aの検知と並行して、前方検知センサ332Bでも検知を行い、前方検知センサ332Bが、占有している左側の窓口機311Aに対応しない右側のテラーBの手が紙幣入出金部43に近づいたことを検知した場合や、前方検知センサ332A,332Bが、左右両側のテラーA,Bの手が同時に紙幣入出金部43に近づいたことを検知した場合に、操作表示部46にアラーム表示を表示させたり、音声出力部47でアラーム音を発生させたりしても良い。
【0117】
また、例えば、貨幣処理装置10が窓口機311Aに占有された状態でこの窓口機311Aからの、紙幣の入金処理が含まれる入金指示に基づいて入金処理を行う際に、装置制御部44は、前方検知センサ332Aで物体の移動を検知する。この検知によって、前方検知センサ332Aが、貨幣処理装置10の幅方向の外側から中央側へ物体が移動していることを検知すると、占有している左側の窓口機311Aに対応する左側のテラーAの手が紙幣入出金部43に近づいていると判定し、入金処理の一部であるシャッタ322の開放処理を行う。すると、操作者は、紙幣入出金部43に入金紙幣を投入することになる。
【0118】
このとき、占有している左側の窓口機311Aに対応しない右側のテラーBの手が紙幣入出金部43に近づいても、前方検知センサ332Bがその検知を行うことはなく、シャッタ322の開放処理を行うこともない。つまり、左側の窓口機311Aに占有された状態でのシャッタ322の開放処理は、左側のテラーAの手の紙幣入出金部43の方向の移動を前方検知センサ332Aが検知したことを動作トリガとしており、他の前方検知センサ331A,331B,332Bは、ロック解除動作には影響を与えず、無反応となる。これにより、占有している左側の窓口機311Aに対応しない右側のテラーBによる、紙幣入出金部43への入金紙幣の誤った投入を抑制する。
【0119】
ここで、上記した前方検知センサ331Aの検知と並行して、前方検知センサ332Bでも検知を行い、前方検知センサ332Bが、占有している左側の窓口機311Aに対応しない右側のテラーBの手が紙幣入出金部43に近づいたことを検知した場合や、前方検知センサ332A,332Bが、左右両側のテラーA,Bの手が同時に紙幣入出金部43に近づいたことを検知した場合に、操作表示部46にアラーム表示を表示させたり、音声出力部47でアラーム音を発生させたりしても良い。
【0120】
以上に述べた本実施形態によれば、操作ボタン325A,325Bに、同時押下状態の維持操作という引き出し操作が入力されると、装置制御部44は、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bのいずれも貨幣処理ユニット12の引き出し方向前方の物体を検知しない状態では、移動機構53によって貨幣処理ユニット12を筐体11に対して電動で所定の切替引出位置まで引き出し方向に移動させることになる。よって、貨幣処理ユニット12を筐体11から所定の切替引出位置まで引き出す必要がある保守作業の作業負荷軽減を図ることができる。一方で、操作ボタン325A,325Bに、同時押下状態の維持操作という引き出し操作が入力されても、装置制御部44は、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bのいずれかが貨幣処理ユニット12の引き出し方向前方の物体を検知する状態では、移動機構53による貨幣処理ユニット12の所定の切替引出位置までの引き出し方向の移動を規制することになる。これにより、貨幣処理ユニット12の引き出し方向前方の物体への衝突を抑制することができ、損傷の発生を抑制することができる。
【0121】
また、装置制御部44は、左側のテラーの占有状態での貨幣処理時に、左側の前方検知センサ331A,332Aで物体を検知すると貨幣処理を行い、右側のテラーの占有状態での貨幣処理時に、右側の前方検知センサ331B,332Bで物体を検知すると貨幣処理を行うため、左右の前方検知センサ331A,332Aおよび前方検知センサ331B,332Bが、貨幣処理ユニット12の前方移動時の障害物検知と、テラーの操作検知との両方を行うことになる。したがって、部品点数を低減でき、コストを低減することができる。
【0122】
以上の実施形態では、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bは、それぞれの検知範囲が同等となっている場合を例にとり説明した。これに対し、例えば、上側2カ所の前方検知センサ331A,331Bと、下側2カ所の前方検知センサ332A,332Bとで、検出範囲(距離)に違いをもたせても良い。つまり、上側2カ所の前方検知センサ331A,331Bを貨幣処理ユニット12の近傍にある物体検知用として、広範囲かつ近接して検知を行い、下側2カ所の前方検知センサ332A,332Bを貨幣処理ユニット12から遠距離にある物体検知用として、遠方をスポット的に検知しても良い。これにより、広範囲、かつ、遠距離の物体検知が可能となり、総合的な検知能力を高めることができる。但し、遠距離にある物体検知用の前方検知センサ332A,332Bの検知範囲としては、貨幣処理ユニット12に立ち、引き出し操作である操作ボタン325A,325Bの同時押下状態の維持操作を行っている操作者の身体部が、検知範囲にかからない範囲に留めておく必要がある。
【0123】
この場合、移動機構53による貨幣処理ユニット12の前方移動中、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bのいずれで物体を検知したかを、操作者へ伝えるため、例えば操作表示部46の画面に表示させるようにしても良い。例えば、左側の前方検知センサ331Aで物体を検知した場合、「装置手前 左側(近接)に障害物がないか確認してください。」と表示させ、右側の前方検知センサ331Bで物体を検知した場合、「装置手前 右側(近接)に障害物がないか確認してください。」と表示させ、左側の前方検知センサ332Aで物体を検知した場合、「装置手前 左側(遠方)に障害物がないか確認してください。」と表示させ、右側の前方検知センサ332Bで物体を検知した場合、「装置手前 右側(遠方)に障害物がないか確認してください。」と表示させて注意を促すようにしても良い。いずれの場合も、LEDランプ326A,326Bの点滅と音声出力部47による警告音発生を共に行って、より一層注意を促すようにすることが可能である。
【0124】
また、移動機構53による貨幣処理ユニット12の前方移動中、LEDランプ326A,326Bの点滅色および音声出力部47による警告音は、近距離にある物体検知用の上側2カ所の前方検知センサ331A,331Bが物体を検知した場合と、遠距離にある物体検知用の下側2カ所の前方検知センサ332A,332Bが物体を検知した場合とで、変化を持たせて、使いわけても良い。一例として、以下のように変化を持たせることができる。
【0125】
前方検知センサ331Aが物体を検知した場合に、左側のLEDランプ326Aのみを赤色で速く点滅させる。音声出力部47による警告音を、ピコ、ピコ、ピコと連続3回鳴らせて、以後これを繰り返す。
【0126】
前方検知センサ331Bが物体を検知した場合に、右側のLEDランプ326Bのみを赤色で速く点滅させる。音声出力部47による警告音を、ピコ、ピコ、ピコと連続3回鳴らせて、以後これを繰り返す。
【0127】
前方検知センサ332Aが物体を検知した場合に、左側のLEDランプ326Aのみを桃色で遅く点滅させる。音声出力部47による警告音を、ピコ、ピコと連続2回鳴らせて、以後これを繰り返す。
【0128】
前方検知センサ332Bが物体を検知した場合に、右側のLEDランプ326Bのみを桃色で遅く点滅させる。音声出力部47による警告音を、ピコ、ピコと連続2回鳴らせて、以後これを繰り返す。
【0129】
移動機構53による貨幣処理ユニット12の前方移動中、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bのいずれかで物体を検知すると、装置制御部44は、移動機構53による貨幣処理ユニット12の前方移動を停止させ、操作者へ異常状態の発生を伝えるため、音声出力部47によるアラーム音を上記とは異なるアラーム音に変化させ(例えば、「ピッ・ピッ・ピッ」から「ピー・ピー・ピー」へ音を変化させる)、LEDランプ326A,326Bの状態も変化(例えば、赤色で早い点滅状態に変える)させると同時に、操作表示部46、障害物を除去するように誘導するガイダンス表示を行う。
【0130】
操作者が異常状態に気づき、貨幣処理ユニット12の前方にある障害物を取り除くと、装置制御部44は操作表示部46に、操作者が再度、2つの操作ボタン325A,325Bを同時に押して、自動引出動作を再開するように誘導するガイダンス表示を行う。
【0131】
また、以上の実施形態では、移動機構53が、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの一方である筐体11にラックギア51を設け、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの他方である貨幣処理ユニット12に、ラックギア51に噛み合うピニオンギア107を設け、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの他方である貨幣処理ユニット12に、ピニオンギア107を回転させる引出・押込駆動モータ61を設ける場合を例にとり説明した。しかしながら、筐体11に対し貨幣処理ユニット12を移動できれば良いことから、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの他方である貨幣処理ユニット12にラックギア51を設け、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの一方である筐体11に、ラックギア51に噛み合うピニオンギア107を設け、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの一方である筐体11に、ピニオンギア107を回転させる引出・押込駆動モータ61を設ける構成とすることも可能である。
【0132】
実施形態のように、ラックギア51を筐体11側に、移動機構53のラックギア51以外のピニオンギア107およびこれを回転させる引出・押込駆動モータ61等の構成を貨幣処理ユニット12側に備える構成であると、ラックギア51の長さが制限されるため、貨幣処理ユニット12が、筐体11から一定距離以内に位置しているときにしか、電動による自動押し込み、自動引き出しができない。これに対して、ラックギア51を貨幣処理ユニット12に、移動機構53のラックギア51以外のピニオンギア107およびこれを回転させる引出・押込駆動モータ61等の構成を筐体11側に備える構成とすれば、ラックギア51を貨幣処理ユニット12の移動の全範囲をカバーするように設けることが可能となる。その結果、貨幣処理ユニット12の引出量の長短にかかわらず、どの位置に貨幣処理ユニット12があっても、電動による自動押し込み、自動引き出しが可能となる。
【0133】
また、以上の実施形態では、ロック機構115が、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの一方である筐体11にロックピン81を設け、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの他方である貨幣処理ユニット12に、ロックピン81に係合して貨幣処理ユニット12を筐体11に対しロックするロック部材71を回動可能に設け、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの他方である貨幣処理ユニット12に、ロック部材71を回動させるロック・噛合切替モータ62を設ける場合を例にとり説明した。しかしながら、筐体11に対し貨幣処理ユニット12を移動不可にロックできれば良いことから、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの他方である貨幣処理ユニット12にロックピン81を設け、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの一方である筐体11に、ロックピン81に係合して貨幣処理ユニット12を筐体11に対しロックするロック部材71を回動可能に設け、筐体11および貨幣処理ユニット12のうちの一方である筐体11に、ロック部材71を回動させるロック・噛合切替モータ62を設ける構成とすることも可能である。
【0134】
また、以上の実施形態では、硬貨処理部31および紙幣処理部32を有する貨幣処理ユニット12を筐体11から引き出し可能としたが、硬貨処理部31および紙幣処理部32をそれぞれ別々に筐体11から引き出し可能とする場合にも適用可能である。つまり、筐体11に対し硬貨処理部31を電動で前方に単独で移動させる移動機構を設け、筐体11に対し紙幣処理部32を電動で前方に単独で移動させる移動機構を設ける場合にも適用可能である。この場合、硬貨処理部31に前方検知センサ331A,331Bを設け、硬貨処理部31を単独で移動機構により筐体11から引き出す場合、前方検知センサ331A,331Bのいずれかで前方に物体を検知すると引き出しを停止させることになり、紙幣処理部32に前方検知センサ332A,332Bを設け、紙幣処理部32を単独で移動機構により筐体11から引き出す場合、前方検知センサ332A,332Bのいずれかで前方に物体を検知すると引き出しを停止させることになる。また、硬貨処理部31および紙幣処理部32の両方を同時に移動機構により筐体11から引き出す場合、前方検知センサ331A,331B,332A,332Bのいずれかで前方に物体を検知すると引き出しを停止させることになる。
【0135】
また、以上の実施形態においては、硬貨および紙幣を入出金させる貨幣処理装置10を例にとり説明したが、筐体11に対し貨幣処理ユニット12が引き出し可能となっている貨幣処理装置であれば、入金のみを行うもの、出金のみを行うもの、硬貨のみを取り扱うもの、紙幣のみを取り扱うもの等、他の種々の貨幣処理装置に適用可能である。