(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
<第1実施形態>
【0012】
第1実施形態に係る医療デバイス10は、急性下肢虚血や深部静脈血栓症において、血管内に挿入され、血栓を破壊して除去する処置に用いられる。本明細書では、デバイスの血管に挿入する側を「遠位側」、操作する手元側を「近位側」と称することとする。なお、除去する物体は、必ずしも血栓、プラーク、石灰化病変に限定されず、生体管腔内に存在し得る物体は、全て該当し得る。
【0013】
医療デバイス10は、
図1〜3に示すように、長尺であって回転駆動される駆動シャフト20と、駆動シャフト20を収容する外管30と、血栓を切削する切削部40と、駆動シャフト20内に配置される抵抗体50とを備えている。医療デバイス10は、さらに、外管30の近位側端部に設けられる操作部60と、駆動シャフト20を回転させる回転駆動部90と、操作部60の内部で駆動シャフト20に連結される吸引用管体70と、操作部60に接続されるシリンジ100とを備えている。
【0014】
駆動シャフト20は、回転力を切削部40に伝達するとともに、駆動シャフト20の内腔に入り込む物体を近位側へ搬送するための部位である。駆動シャフト20は、
図2〜7に示すように、長尺な管状の駆動管21と、駆動管21の内周面に設けられている螺旋状の搬送体22と、駆動管21と回転駆動部90を接続する接続シャフト23とを備えている。
【0015】
駆動管21は、外管30を貫通し、遠位部に切削部40が固定されている。駆動管21の近位部は、操作部60の内部の収容空間61に位置している。駆動管21は、接続シャフト23を介して回転駆動部90により回転駆動される。駆動管21は、収容空間61に位置する近位部の側面に、導出孔24を有している。駆動管21は、遠位側端部に、血栓が入り込む入口部25を有している。駆動管21の近位側端部は、内腔が塞がれており、接続シャフト23が固定されている。導出孔24は、駆動管21の内部に入口部25から入った血栓が排出される出口である。
【0016】
駆動管21は、柔軟で、かつ近位側から作用する回転の動力を遠位側に伝達可能な特性を持つ。駆動管21は、例えば、複数の線材を並べて螺旋状に巻回して連結した遠位側駆動管21Aと、遠位側駆動管21Aの近位側に連結された管体である近位側駆動管21Bとを有している(
図7を参照)。遠位側駆動管21Aは、隣接する線材の間に、内周面から外周面へ貫通するスリット(隙間)を有する。線材の螺旋の巻回方向は、搬送体22の螺旋の巻回方向と逆方向であることが好ましいが、これに限定されない。線材の螺旋の巻回方向が、搬送体22の螺旋の巻回方向と逆方向であれば、異なる螺旋が互いに補強し合うことで強度が向上するとともに、動作の異方性が低減されて操作性が向上する。なお、駆動管の構成は、特に限定されない。例えば、駆動管は、螺旋状のスリットがレーザー加工等により形成された管体であってもよい。
【0017】
駆動管21の構成材料は、例えば、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。また、複数の材料によって構成されてもよく、線材などの補強部材が埋設されてもよい。
【0018】
駆動管21の内径は、適宜選択可能であるが、例えば0.5〜3.0mmである。駆動管21の外径は、適宜選択可能であるが、例えば0.8〜4.0mmである。駆動管21の軸方向の長さは、適宜選択可能であるが、例えば150〜2000mmである。
【0019】
接続シャフト23は、遠位側端部が駆動管21に固定されている。接続シャフト23は、近位側に、回転駆動部90と連結して回転の動力を受け取る連結軸23Aを有している。接続シャフト23の構成材料は、回転動力を伝達できれば特に限定されず、例えばステンレスである。回転駆動部90は、駆動管21と直接的に接続されていてもよい。その場合、駆動管21の近位側は切り欠きを有し、その切り欠きと回転駆動部90は連結する。このとき、導出孔24より駆動管21の基端側の内腔は封止されている。
【0020】
搬送体22は、駆動管21の内周面に設けられ、駆動管21により回転駆動される螺旋状の部位である。搬送体22は、回転することで、駆動管21の内腔に入り込んだ血栓に、近位側へ向かう力を作用させ、血栓を近位側へ移動させる。また、駆動管21の内腔は、近位側から作用する吸引力を遠位側に作用させるためのルーメンとしての役割をも有する。搬送体22は、駆動管21の遠位部の内部に配置される第1の搬送体26と、駆動管21の内部の第1の搬送体26よりも近位側に配置される第2の搬送体27を有している。第1の搬送体26は、第2の搬送体27よりも、螺旋のピッチ間距離が長い。ピッチ間距離とは、螺旋が周方向に360度巻回する際の軸方向への移動距離である。ピッチ間距離が第2の搬送体27よりも長い第1の搬送体26は、一回転で搬送できる距離が長くなるため、血栓の搬送量が多い。このため、駆動管21の遠位部にピッチ間距離の長い第1の搬送体26が設けられることで、血栓が入り込む入口側(遠位側)の内腔を、常に血栓が詰まっていない状態で維持できる。なお、このようなピッチ間距離が長い第1の搬送体26は、搬送する血栓から受ける反力も大きくなり、ある程度の強度が必要である。このため、本実施形態では、第1の搬送体26は、線材を巻回したコイルではなく、レーザー加工により製造される。なお、第1の搬送体は、強度を確保でき、かつ外管30内で回転可能であれば、線材を巻回して製造されてもよい。または、搬送体22は、駆動管21の遠位部の内部に配置される第2の搬送体27と、駆動管21の内部の第2の搬送体27よりも近位側に配置される第1の搬送体26を有していてもよい。このため、ピッチ間の距離が第1の搬送体26よりも短い第2の搬送体27が遠位側に位置する。これによって、駆動シャフト20の遠位部が柔軟になり、医療デバイス10の切削する物体への到達性が向上する。
【0021】
第1の搬送体26は、螺旋状の螺旋部26Aと、螺旋部26Aの遠位側に位置する遠位側リング部26Bと、螺旋部26Aの近位側に位置する近位側リング部26Cとを有している。遠位側リング部26Bおよび近位側リング部26Cは、360度にわたって途切れない管体である。第1の搬送体26は、遠位側リング部26Bおよび近位側リング部26Cにより、駆動管21の内周面に固定されている。第1の搬送体26は、駆動管21に対して、例えば溶接や接着によって固定される。または、第1の搬送体26は、駆動管21に対して、嵌め合い(摩擦力)により固定されてもよい。第1の搬送体26は、駆動管21に対して一部で固定されることで、固定されない部分(本実施形態では螺旋部26A)が柔軟に変形可能である。これにより、第1の搬送体26は、搬送する血栓から受ける力によって一時的に変形することができ、破損を抑制できる。なお、第1の搬送体26の駆動管21に対する固定位置や、固定場所の数は、特に限定されない。例えば、第1の搬送体26の外周面の全体が、駆動管21に固定されてもよい。または、第1の搬送体26の遠位側およぎ近位側の一方のみが、駆動管21に固定されてもよい。螺旋部26A、遠位側リング部26Bおよび近位側リング部26Cは、内径および外径が一致する。遠位側リング部26Bおよび近位側リング部26Cは、第1の搬送体26の端部に、360度にわたって滑らかな内周面を提供する。このため、遠位側リング部26Bおよび近位側リング部26Cは、内部に位置して相対的に回転する抵抗体50と滑らかに接触して干渉せず、破損を抑制できる。遠位側リング部26Bは、設けられなくてもよい。この場合、螺旋状の螺旋部26Aが、さらに遠位側へ螺旋状に延長する。この場合、螺旋状の螺旋部26Aの遠位側端部の近傍が、駆動管21に溶接等によって接合される。これにより、第1の搬送体26の占有体積を減らし、駆動シャフト20の内腔の空間を広くすることができる。このため、多くの物体をより円滑に駆動シャフト20の内腔へ誘導し、搬送することが可能となる。螺旋状の螺旋部26Aが第1の搬送体26の遠位側端部を構成する場合、螺旋部26Aの遠位側端部は、切削部40の遠位側端部の位置付近に配置される。これにより、切削部40により切削された物体を、螺旋部26Aへ連続的に誘導できる。このため、駆動シャフト20の内腔で血栓Tを近位側へ送りやすく、内腔が詰まりにくい。
【0022】
第2の搬送体27は、第1の搬送体26よりもピッチ間距離が短い螺旋状の部材である。第2の搬送体27は、例えばコイルである。第2の搬送体27の一部(例えば、遠位側端部および近位側端部)は、駆動管21の内周面に固定されている。第2の搬送体27は、駆動管21に対して、例えば溶接や接着によって固定される。または、第2の搬送体27は、駆動管21に対して、嵌め合い(摩擦力)により固定されてもよい。第2の搬送体27は、駆動管21に対して一部で固定されることで、固定されない部分が柔軟に変形可能である。これにより、第2の搬送体27は、搬送する血栓から受ける力によって一時的に変形することができ、破損を抑制できる。なお、第2の搬送体27の駆動管21に対する固定位置や、固定場所の数は、特に限定されない。例えば、第2の搬送体27の外周面の全体が、駆動管21に固定されてもよい。または、第2の搬送体27の遠位側およぎ近位側の一方のみが、駆動管21に固定されてもよい。コイルである第2の搬送体27は、長くても製造が容易であり、コストを低減できる。また、コイルである第2の搬送体27は、駆動管21の内部へ挿入して配置することが容易である。第2の搬送体27の中心軸に垂直な断面の形状は、特に限定されず、例えば正方形、長方形、平行四辺形、台形、円形、楕円形等である。
【0023】
第1の搬送体26および第2の搬送体27の構成材料は、物体を搬送できるように、ある程度の強度を有することが好ましく、例えば、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。形状記憶合金としては、Ni−Ti系、Cu−Al−Ni系、Cu−Zn−Al系またはこれらの組み合わせなどが好ましく使用される。第1の搬送体26および第2の搬送体27は、形状記憶合金により製造されれば、血栓から受ける反力によって一時的に変形した後、元の形状へ良好に戻ることができるため、破損を抑制しつつ、機能を維持できる。第1の搬送体26および第2の搬送体27の構成材料は、異なってもよい。
【0024】
第1の搬送体26の中心軸に対する螺旋の傾斜角度αは、適宜設定可能であるが、例えば10〜75度、好ましくは15〜40度、より好ましくは25〜35度である。第2の搬送体27の中心軸に対する螺旋の傾斜角度β(ねじれ角)は、第1の搬送体26の螺旋の傾斜角度αよりも大きく、例えば25〜80度、好ましくは30〜60度、より好ましくは35〜45度である。傾斜角度が大きいと、ピッチ間距離が短くなり、1回転での搬送距離が短くなるが、搬送するために必要な力を低減でき、破損を抑制して安全性を向上できる。傾斜角度が小さいと、ピッチ間距離が長くなり、1回転での搬送距離が長くなるが、搬送するために必要な力が大きくなり、破損を抑制するために剛性や柔軟性を高めることが必要となる。
【0025】
第1の搬送体26および第2の搬送体27の内径は、適宜選択可能であるが、例えば0.4〜2.8mmである。第1の搬送体26および第2の搬送体27の外径は、第1の搬送体26および第2の搬送体27が駆動管21に内壁面に接触し、かつ駆動管21に挿入できるように、駆動管21の内周面に対して所定のクリアランスを有することが好ましい。第1の搬送体26および第2の搬送体27の外径は、例えば0.49〜2.99mmである。第1の搬送体26の内径は、第2の搬送体27の内径と異なってもよい。また、第1の搬送体26の外径は、第2の搬送体27の外径と異なってもよい。第1の搬送体26
【0026】
の軸方向の長さは、適宜選択可能であるが、例えば5〜300mmである。第2の搬送体27の軸方向の長さは、適宜選択可能であるが、例えば301〜1995mmである。搬送体22は、第1の搬送体26だけでもよい。その場合、第1の搬送体26の軸方向の長さは、1〜2000mmでもよい。
【0027】
外管30は、駆動シャフト20を回転可能に収容する外シース31と、外シース31の遠位部の外周面に固定される延長部32と、延長部32と抵抗体50を固定する固定部33と、延長部32に固定される先端チューブ34とを備えている。
【0028】
外シース31は、筒体であり、近位側端部が操作部60に固定されている。外シース31の遠位側端部は、切削部40の近位側に位置している。外シース31と駆動管21の間の隙間の断面積は、吸引用管体70の内部の断面積よりも十分に小さいことが好ましい。これにより、吸引用管体70から駆動管21の内部に作用する吸引力が、駆動管21の線材の間のスリットを通って外シース31と駆動管21の間の空間に拡散することを抑制できる。
【0029】
延長部32は、外シース31の遠位部の外周面の一部に固定され、外シース31よりも遠位側へ延在している。延長部32は、外シース31に対して抵抗体50および先端チューブ34を固定するための部材である。延長部32は、切削部40による血栓の切削を阻害しないように、外シース31の外周面の周方向の一部にのみ設けられる。延長部32は、例えば板材であるが、形状は限定されず、例えば線材であってもよい。
【0030】
固定部33は、延長部32の遠位側の部位と抵抗体50とを固定するための部材である。固定部33は、延長部32の切削部40よりも遠位側に位置する。固定部33は、離れて位置する延長部32と抵抗体50の距離を埋める役割を果たす。したがって、固定部33は、延長部32に対して、抵抗体50を適切な位置に配置できる大きさを有する。固定部33は、例えば線材であるが、形状は限定されない。固定部33は、例えば延長部32や抵抗体50と一体的な構成であってもよい。
【0031】
先端チューブ34は、延長部32に固定されている。先端チューブ34は、内部にガイドワイヤを挿入可能なガイドワイヤルーメン35を有している。
【0032】
外シース31の構成材料は、特に限定されないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、もしくは各種エラストマー、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。また、外シース31は、複数の材料によって構成されてもよく、線材などの補強部材が埋設されてもよい。
【0033】
外シース31の内径は、適宜選択可能であるが、例えば0.9〜4.1mm、より好ましくは1.2〜1.9mmである。外シース31の外径は、適宜選択可能であるが、例えば1.0 〜4.5mm、より好ましくは1.3〜2.0mmである。
【0034】
延長部32および固定部33の構成材料は、ある程度の強度を有することが好ましく、例えば、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。形状記憶合金としては、Ni−Ti系、Cu−Al−Ni系、Cu−Zn−Al系またはこれらの組み合わせなどが好ましく使用される。
【0035】
延長部32の軸方向の長さは、適宜選択可能であるが、例えば0.3〜50mm、より好ましくは1〜5mmである。延長部32の厚さ(外シース31の径方向に沿う長さ)は、適宜選択可能であるが、例えば0.05〜1mmである。延長部32の幅(外シース31の周方向に沿う長さ)は、適宜選択可能であるが、例えば0.1〜2mmである。
【0036】
先端チューブ34の構成材料は、特に限定されないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせなどが好適に使用できる。
【0037】
先端チューブ34の内径は、適宜選択可能であるが、例えば0.3〜1.0mmである。先端チューブ34の外径は、適宜選択可能であるが、例えば0.4〜1.4mmである。先端チューブ34の軸方向の長さは、適宜選択可能であるが、例えば5〜100mmである。
【0038】
切削部40は、血栓を切削するための部位であり、駆動管21の遠位部の外周面に固定されている。切削部40は、駆動管21よりも遠位側へ突出する円筒である。切削部40の遠位側端部は、外径が遠位側に向かって内径と一致するまで縮径することで、リング状の鋭利な刃41を備えている。
【0039】
切削部40の構成材料は、血栓を切削できる程度の強度を有することが好ましく、例えば、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W、形状記憶合金などが好適に使用できる。切削部40の構成材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのエンジニアリングプラスチック等の樹脂でもよい。切削部40は、表面にコーティング処理が施されていてもよい。
【0040】
切削部40の内径は、接触する駆動管21の外径と略一致することが好ましく、例えば0.8〜40mmである。切削部40の外径は、外シース31の外径と略一致することが好ましく、例えば1.0〜4.5mmである。切削部40の軸方向の長さは、適宜選択可能であるが、例えば0.5〜4.0mmである。
【0041】
抵抗体50は、駆動シャフト20の内腔に配置され、駆動シャフト20に対して相対的に回転可能である長尺な部位である。抵抗体50は、駆動シャフト20の内部に入り込んだ血栓が、駆動シャフト20とともに回転することを抑制する。抵抗体50の少なくとも一部の中心軸に垂直な断面の形状は、非真円である。抵抗体50は、抵抗体50の遠位側に位置する第1の抵抗体51と、抵抗体50の近位側に位置する第2の抵抗体52とを備えている。第1の抵抗体51と第2の抵抗体52は、中心軸に垂直な断面の形状が異なる。第1の抵抗体51の中心軸に垂直な断面の形状は真円であり、第2の抵抗体52の中心軸に垂直な断面の形状は略長方形である。このような抵抗体50は、断面形状が真円の線材の一部のそのままに残して第1の抵抗体51とし、他の部位を型で挟んで潰して平板状の第2の抵抗体52とすることで、容易に製造できる。平板とは、断面形状が直交する2方向において1方向へ相対的に長く、概して反対を向く2つの面を有する形状を意味する。なお、第1の抵抗体51と第2の抵抗体52は、異なる部材を接合して製造されてもよい。抵抗体50の遠位側端部は、切削部40よりも遠位側で、固定部33に固定されている。抵抗体50の遠位部の中心軸に垂直な断面の形状が真円の第1の抵抗体51であることで、外表面の抵抗が小さく、血栓が切削部40および駆動シャフト20の内部に入りやすい。第1の抵抗体51と第2の抵抗体52の連結部は、搬送体22の内部に位置する。このため、外表面の抵抗の小さい第1の抵抗体51に沿って、血栓を搬送体22の内部まで誘導することができる。第2の抵抗体52の近位側の端部は、搬送体22よりも近位側に位置する。これにより、第2の抵抗体52は、搬送体22の近位側の端部まで、血栓が駆動シャフト20とともに回転することを抑制し、高い搬送力を維持できる。搬送体22の近位側の端部は、吸引用管体70の内部に位置するが、吸引用管体70の内部に位置しなくてもよい。抵抗体50の近位側の端部は、第1の搬送体26よりも近位側であって、第2の搬送体27の近位側端部よりも遠位側に位置してもよい。これにより、高い搬送力が要求される遠位側の第1の搬送体26の位置において、高い搬送力を維持することができる。
【0042】
第2の抵抗体52の中心軸に垂直な断面の形状が非真円であるため、相対的に回転する駆動シャフト20の内周面との間に、必ず第2の空間を有する。また、第1の抵抗体51も、駆動シャフト20の内周面との間、および切削部40の内周面との間に、第1の空間を有する。抵抗体50と駆動シャフト20の間の空間、および抵抗体50と切削部40の間の空間は、近位側から吸引力を作用させるために有効に作用する。
【0043】
第1の抵抗体51は、軸方向の全範囲で、中心軸に垂直な断面の形状が等しい。このため、第1の抵抗体51は、表面が軸方向に沿って平滑である。これにより、第1の抵抗体51に沿って、血栓等を円滑に滑らせることができる。第2の抵抗体52は、軸方向の全範囲で、中心軸に垂直な断面の形状が等しい。このため、第2の抵抗体52は、表面が軸方向に沿って平滑である。これにより、第2の抵抗体52に沿って、血栓等を円滑に滑らせることができる。
【0044】
抵抗体50の構成材料は、血栓の回転を抑制できる程度の強度を有することが好ましく、例えば、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W、Nitinol(登録商標)などの形状記憶合金などが好適に使用できる。
【0045】
操作部60は、手技者が把持して操作する部位である。操作部60は、
図3に示すように、内部に収容空間61を有するケーシング62と、駆動シャフト20の外周面に接する第1のシール部63と、接続シャフト23の外周面と接する第2のシール部64とを備えている。
【0046】
ケーシング62は、駆動管21が貫通する遠位側通孔65と、接続シャフト23が貫通する近位側通孔66と、シリンジ100を連結可能な吸引孔67とを備えている。遠位側通孔65、近位側通孔66および吸引孔67は、収容空間61に連通している。遠位側通孔65は、駆動管21が貫通するとともに、外シース31の遠位部が連結されている。また、遠位側通孔65は、駆動管21の外周面と接する第1のシール部63が配置される。第1のシール部63は、駆動管21の回転を許容しつつ、駆動管21と外シース31の間の空間を、収容空間61から封止する。第1のシール部63は、収容空間61の陰圧を維持する役割を有する。また、第1のシール部63は、駆動管21と外シース31の間の陰圧が、収容空間61に逃げることを抑制する。近位側通孔66は、接続シャフト23が貫通するとともに、接続シャフト23の外周面と接する第2のシール部64が配置される。第2のシール部64は、接続シャフト23の回転を許容しつつ、収容空間61を外部から封止する。第2のシール部64は、収容空間61の陰圧を維持する役割を有する。吸引孔67は、シリンジ100を連結可能である。吸引孔67に連結したシリンジ100により吸引することで、吸引孔67に連通する収容空間61に陰圧を生じさせることができる。第1のシール部63および第2のシール部64は、例えばOリングである。
【0047】
吸引用管体70は、収容空間61の陰圧を、駆動管21の内部の所定の位置まで導くための管体である。吸引用管体70の遠位側開口部72は、駆動管21の内部の第2の搬送体27の近位側に位置する。吸引用管体70の遠位側端部の外周面は、駆動管21の内周面に対して液密に密着している。このため、吸引用管体70を収容する駆動管21が、線材によって構成されて複数のスリット(隙間)を有しても、吸引用管体70の遠位側端部までは、陰圧を効果的に作用させることができる。吸引用管体70の近位側開口部73が設けられる近位側の部位は、駆動管21の導出孔24から外部へ導出されている。吸引用管体70は、駆動管21の外部に位置する振れ回り部71を備える。振れ回り部71は、導出孔24から近位側に向かうほど駆動管21から離れるように傾斜している。したがって、吸引用管体70の近位側開口部73は、駆動管21の外表面から離れている。駆動管21が回転すると、吸引用管体70の振れ回り部71が振れ回る。振れ回り部71が振れ回ると、振れ回り部71の内部の物質に遠心力が作用し、近位側開口部73に向かって移動する。このため、吸引用管体70の内部に陰圧が発生する。したがって、シリンジ100による吸引力が作用しない場合であっても、駆動管21の回転により、吸引用管体70と連通する駆動管21の内部に陰圧を発生させることができる。また、振れ回り部71が駆動管21に対して傾斜しているため、駆動管21と直角である場合と比較して、回転半径が限定される収容空間61の内部に長い振れ回り部71を配置できる。このため、振れ回り部71が振れ回る際に遠心力が作用する物質の体積が増加し、陰圧を良好に発生させることができる。さらに、振れ回り部71が駆動管21に対して傾斜しているため、駆動管21と直角である場合と比較して、吸引用管体70を流れる物質が円滑に流れ、陰圧を良好に発生させることができる。
【0048】
吸引用管体70の構成材料は、特に限定されないが、例えばシリコーン樹脂、各種エラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせなどが好適に使用できる。
【0049】
吸引用管体70の外径は、適宜選択可能であるが、例えば 〜 mmである。吸引用管体70の内径は、適宜選択可能であるが、例えば 〜 mmである。振れ回り部71の長さは、適宜選択可能であるが、例えば 〜 mmである。振れ回り部71の駆動管21に対する傾斜角度は、適宜選択可能であるが、0〜90度、好ましくは 〜 度、より好ましくは 〜 度である。
【0050】
回転駆動部90は、
図1に示すように、モータ等の駆動源91を備え、駆動シャフト20を回転させる部位である。回転駆動部90は、接続シャフト23が接続される回転可能な回転軸92を備えている。なお、回転駆動部90は、本実施形態では、操作部60に対して連結および離脱可能な外部装置であるが、操作部60に固定されてもよい。回転駆動部90は、さらに、図示しないスイッチやバッテリ等を備えている。
【0051】
次に、第1実施形態に係る医療デバイス10の使用方法を、血管内の血栓、石灰化病変等を破壊して吸引する場合を例として説明する。
【0052】
初めに、回転駆動部90を操作部60に連結し、接続シャフト23を回転軸92に連結した医療デバイス10を準備する(
図1を参照)。医療デバイス10は、回転駆動部90を操作することで、駆動シャフト20を回転可能な状態となっている。次に、医療デバイス10のガイドワイヤルーメン35にガイドワイヤ110の近位側端部を挿入する。この後、ガイドワイヤ110をガイドとして、医療デバイス10を血栓Tの遠位側へ到達させる。
【0053】
次に、回転駆動部90を操作して駆動シャフト20を回転させる。この後、駆動シャフト20を遠位側へ移動させる。これにより、
図9、10に示すように、切削部40の刃41が血栓Tに接触し、回転する刃41によって血栓Tが切削させる。切削された血栓Tは、筒状の切削部40の内腔を介して、駆動管21の内部に入り込む。このとき、切削部40の内部に、中心軸と垂直な断面の形状が真円の第1の抵抗体51が位置している。このため、血栓Tは、抵抗の少ない第1の抵抗体51の外表面に沿って円滑に駆動管21へ誘導される。医療デバイス10を押し込むことで、切削された血栓Tを筒状の切削部40の内腔を介して、駆動管21の内部に入り込みやすくすることもできる。
【0054】
駆動管21に導かれた血栓Tは、回転する第1の搬送体26に接触する。これにより、血栓Tは、第1の搬送体26から、近位方向へ向かう力と、回転方向へ向かう力を受ける。このとき、血栓Tは、第1の搬送体26の内部を貫通して回転しない第2の抵抗体52により、第1の搬送体26とともに回転することが抑制されている。このため、血栓Tは、回転する第1の搬送体26から受ける力と、第2の抵抗体52から受ける反力により、第2の抵抗体52に沿って近位側へ効率よく直線的に移動する。また、第1の搬送体26は、第2の搬送体27よりもピッチ間距離が長いため、一回転での搬送量が多い。このため、切削部40および駆動シャフト20の血栓Tが入り込む入口側の内腔を、常に血栓Tが詰まっていない状態で維持できる。
【0055】
さらに、駆動管21が回転することで、吸引用管体70の振れ回り部71が振れ回る。これにより、振れ回り部71の内部の物質に遠心力が作用し、近位側開口部73に向かって移動する。このため、吸引用管体70の内部に陰圧が発生する。このとき、振れ回り部71が傾斜しているため、振れ回り部71が振れ回る際に遠心力が作用する物質の体積が増加し、陰圧を良好に発生させることができる。さらに、振れ回り部71が傾斜しているため、吸引用管体70を流れる物質が円滑に流れ、陰圧を良好に発生させることができる。さらに、吸引孔67に連結したシリンジ100の押し子を引くと、操作部60の収容空間61が陰圧となり、吸引用管体70の近位側開口部73を介して、吸引用管体70の内部が陰圧となる。陰圧の発生源として、シリンジ100を用いることもできるが、吸引ポンプ等に接続することもできる。
【0056】
吸引用管体70の内部が陰圧となると、吸引用管体70と連通する駆動管21の内部も陰圧となる。このとき、駆動管21の近位部は、内部に吸引用管体70が配置されている。このため、駆動管21の線材の隙間であるスリットから、陰圧が逃げることを抑制できる。なお、吸引用管体70よりも遠位側の領域では、搬送体22により血栓を搬送できるため、吸引用管体70がなく陰圧が多少逃げても問題ない。これにより、駆動管21の搬送体22が設けられる範囲に、陰圧を良好に作用させることができる。駆動管21の内部に陰圧が作用すると、駆動管21の内部の血栓Tは、近位側へ移動する。このとき、回転する駆動シャフト20は、搬送路となる空間の外側に位置する。また、回転する搬送体22の内側に位置する抵抗体50は、中心軸に垂直な断面の形状が非真円であるため、搬送体22の内周面と抵抗体50の間に、空間が設けられる。このため、陰圧によって発生する駆動管21の内部の吸引力を、血栓Tに効果的に作用させることができる。このように、血栓Tは、第1の搬送体26による力と吸引力の両方によって、近位側へ向かって直線的に移動し、効果的に搬送される。なお、シリンジ100による吸引は、行っても行わなくてもよい。また、第1の搬送体26は、部分的に駆動管21に固定されており、変形可能であるため、例えば血栓Tが大きい場合であっても変形でき、破損が抑制されて安全性が高い。また、第1の搬送体26は、形状記憶合金などの弾性的に変形可能な材料により構成されていれば、変形した後に元の形状に戻ることができるため、性能を維持できる。
【0057】
第1の搬送体26よりも近位側へ移動した血栓Tは、駆動管21の内部の第2の搬送体27が設けられる位置に到達する。これにより、血栓Tは、第2の搬送体27から、近位方向へ向かう力と、回転方向へ向かう力を受ける。このとき、血栓Tは、第2の搬送体27の内部を貫通して回転しない第2の抵抗体52により、第2の搬送体27とともに回転することが抑制されている。このため、血栓Tは、回転する第2の搬送体27から受ける力と、第2の抵抗体52から受ける反力により、第2の抵抗体52に沿って近位側へ効率よく直線的に移動する。
【0058】
また、駆動管21の内部の第2の搬送体27が設けられる位置に到達した血栓Tは、第1の搬送体26が設けられる位置にあった場合と同様に、吸引用管体70からの吸引力を受ける。これにより、血栓Tは、第2の搬送体27による力と吸引力の両方によって、近位側へ向かって直線的に移動し、効果的に搬送される。なお、シリンジ100による吸引は、行っても行わなくてもよい。また、第2の搬送体27は、部分的に駆動管21に固定されており、変形可能であるため、例えば血栓Tが大きい場合であっても変形でき、破損が抑制されて安全性が高い。また、第2の搬送体27は、形状記憶合金などの弾性的に変形可能な材料により構成されていれば、変形した後に元の形状に戻ることができるため、性能を維持できる。そして、抵抗体50が、第1の搬送体26および第2の搬送体27よりも近位側まで位置しているため、第1の搬送体26および第2の搬送体27による搬送が、良好に行われる。
【0059】
第2の搬送体27よりも近位側へ到達した血栓Tは、吸引用管体70の内部に吸引され、吸引用管体70の内部を近位側へ移動する。この後、吸引用管体70の内部の血栓Tは、近位側開口部73から収容空間61の内部に到達する。収容空間61の内部に到達した血栓Tは、吸引孔67を介して、シリンジ100の内部に排出される。なお、血栓Tは、シリンジ100の内部に排出されずに、収容空間61の内部に保持される場合もある。
【0060】
また、外シース31と駆動管21の間の隙間の断面積が、吸引用管体70の内部の断面積よりも十分に小さいため、吸引用管体70から駆動管21の内部に作用する吸引力が、外シース31と駆動管21の間の空間に逃げることを抑制できる。
【0061】
また、シリンジ100により収容空間61に陰圧を生じさせた際に、収容空間61が、第1のシール部63および第2のシール部64により密封されているため、駆動管21の内部へ効果的に陰圧を作用させることができる。
【0062】
そして、切削部40を軸方向へ往復運動させつつ移動させて血栓Tを切削し、搬送および吸引を継続することで、血栓Tを迅速に除去することができる。このとき、切削部40の入口に吸引力が作用するため、切削した血栓Tをできるだけ逃さずに吸引できる。
【0063】
血栓Tの切削、搬送および吸引が完了した後、駆動シャフト20の回転運動を停止する。次に、医療デバイス10を血管から抜去し、処置が完了する。
【0064】
以上のように、第1実施形態に係る医療デバイス10は、血管(生体管腔)内の血栓T(物体)を除去するための医療デバイス10であって、回転可能な管状であり、近位部に開口する導出孔24を有する駆動シャフト20と、駆動シャフト20の遠位側に設けられて駆動シャフト20とともに回転して血栓Tを切削する切削部40と、遠位部と近位部を有する吸引用管体70と、を有し、吸引用管体70の遠位部は、駆動シャフト20の内部に位置し、吸引用管体70の近位部は、駆動シャフト20の外部に位置し、径方向の外側へ離れる方向へ延在する。上記のように構成した医療デバイス10は、切削部40を回転させるために駆動シャフト20を回転させると、吸引用管体70の近位部が振れ回る。これにより、吸引用管体70の近位部の内部の物質に、回転する駆動シャフト20の径方向外側へ向かう遠心力が作用し、吸引用管体70の内部に近位側へ向かう吸引力が発生する。このため、切削部40を回転させる駆動シャフト20の回転を利用して、駆動シャフト20の内部に吸引力を作用させて血栓Tを搬送でき、血管内の血栓Tを効果的に除去できる。
【0065】
また、医療デバイス10は、駆動シャフト20の導出孔24が設けられる部位および導出孔24から導出されている吸引用管体70を収容する収容空間61を備える操作部60を有し、操作部60は、外部から収容空間61へ吸引力を作用させることができる吸引孔67を有する。これにより、吸引孔67から吸引力を作用させることで、操作部60の内部で振れ回る吸引用管体70の近位側開口部73に、吸引力を作用させることができる。
【0066】
また、導出孔24は、駆動シャフト20の側部に位置する。これにより、吸引用管体70を駆動シャフト20から径方向の外側へ容易に導出できる。
【0067】
また、吸引用管体70は、駆動シャフト20とともに回転する。これにより、駆動シャフト20を回転させると、吸引用管体70の近位部が振れ回る。このため、吸引用管体70の近位部の内部の物質に、回転する駆動シャフト20の径方向外側へ向かう遠心力が作用し、吸引用管体70の内部に近位側へ向かう吸引力が発生する。
【0068】
また、駆動シャフト20は、管状の駆動管21と、当該駆動管21の内表面に設けられる螺旋状の搬送体22と、を有する。これにより、駆動シャフト20が回転することで搬送体22により駆動シャフト20の内腔の血栓Tに力を作用させて、近位側へ搬送できる。このとき、螺旋状の搬送体22の内側に広い空間が確保されるため、吸引用管体70から作用する吸引力を妨げずに、搬送体22によって血栓Tに力を作用させることができる。
【0069】
また、医療デバイス10は、駆動シャフト20の内腔に配置されて駆動シャフト20に対して相対的に回転可能であり、断面形状が非真円の長尺な抵抗体50を有する。これにより、切削部40により切削されて駆動シャフト20の内腔に導かれた血栓Tの回転を抵抗体50により抑制しつつ搬送体22を回転させることで、駆動シャフト20の内腔の血栓Tを抵抗体50に沿って望ましい方向へ移動させることができる。このとき、抵抗体50の断面が非真円であるために、血栓Tの回転を抑制しつつ、抵抗体50と搬送体22との間に広い空間を確保できる。このため、駆動シャフト20の内腔により、多くの血栓Tを迅速に搬送でき、血管内の血栓Tを効果的に除去できる。さらに、搬送体22と抵抗体50の間に広い空間を確保できるため、吸引用管体70による吸引力が妨げられず、搬送体22による搬送力と吸引力の両方を血栓Tに対して有効に作用させることができる。
【0070】
また、駆動シャフト20は、内表面から外表面へ貫通するスリットを有する。これにより、スリットにより駆動シャフト20に柔軟性を付与しつつ、駆動シャフト20の内腔の吸引用管体70によって、スリットから陰圧が逃げることを抑制し、吸引力を維持することができる。
【0071】
また、吸引用管体70は、近位側へ向かって徐々に駆動シャフト20から離れる。これにより、吸引用管体70の近位部の内部に、遠心力が作用する物質を多く収容でき、吸引用管体70に発生する吸引力を高めることができる。
【0072】
また、操作部60は、駆動シャフト20の外周面と摺動する第1のシール部63を有する。これにより、収容空間61の内部の陰圧を保持できる。
【0073】
また、本発明は、前述の医療デバイス10を使用して血管(生体管腔)内の病変部の血栓T(物体)を除去するための処置方法をも提供する。当該処置方法は、医療デバイス10を血管内に挿入するステップと、駆動シャフト20により切削部40を回転させて血管内の血栓Tを切削し、切削された血栓Tを駆動シャフト20の内腔に導くステップと、駆動シャフト20とともに回転する吸引用管体70により吸引力を発生させて駆動シャフト20の内部の血栓Tを吸引するステップと、前記医療デバイス10を血管内から抜去するステップと、を有する。上記のように構成した処置方法は、切削部40を回転させるために駆動シャフト20を回転させることで吸引用管体70の内部の物質に生じる遠心力により、駆動シャフト20の内部に吸引力を作用させることができる。このため、切削部40を回転させる駆動シャフト20の回転を利用して、血管内の血栓Tを吸引力によって効果的に除去できる。
<第2実施形態>
【0074】
第2実施形態に係る医療デバイスは、第2の切削部210が設けられる点のみが、第1実施形態に係る医療デバイス10と異なる。なお、第1実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0075】
第2の切削部210は、
図11、12に示すように、第1の搬送体26の遠位側リング部26Bの外周面に固定されている。第2の切削部210は、螺旋状の2つの切削刃211を有している。2つの切削刃211は、第1の搬送体26の中心軸に対して回転対称な形状である。2つの切削刃211は、第1の搬送体26の螺旋部26Aと同じ角度(または異なる角度)で傾斜する第1の端面214を有する。
【0076】
第2の切削部210の第2の刃216は、第1の搬送体26の中心軸に対して傾斜しているため、回転することで血栓Tに食い込み、血栓Tを削り取ることができる。このため、第2の切削部210は、遠位側へ押し込むことで血栓Tを切り取るように作用する切削部40と異なる。切削部40は、押し込むことで血栓Tを切り取るため、比較的柔らかい血栓Tを大量に切り取ることができる。これに対し、第2の切削部210は、回転力により血栓Tを削り取るため、硬い血栓Tを破壊できる。このように、医療デバイスは、切削部40と第2の切削部210の両方を備えることで、多様な血栓Tを切削可能となる。
【0077】
また、第2の切削部210は、螺旋状の第1の端面214を備えるため、切削した血栓Tを第1の搬送体26へ円滑に導くことができる。第1の端面214の傾斜角が、第1の搬送体26の螺旋の傾斜角と等しい場合、血栓Tをより円滑に第1の搬送体26へ導くことができる。したがって、第2の切削部210は、搬送体としても機能する。なお、第2の切削部210は、搬送体としても機能するため、血栓Tを切削するための第2の刃216を有しなくても、効果を有する。
【0078】
また、第2の切削部210は、第1の搬送体26の内周面と切削部40の内周面の間のギャップに位置する。このため、第2の切削部210がない場合と比較して、血栓Tが第1の搬送体26の内部に円滑に入りやすい。
【0079】
以上のように、第2実施形態に係る医療デバイスは、切削部40(第1の切削部)の内側に配置される第2の切削部210を有する。これにより、特性の異なる切削部40および第2の切削部210によって血栓Tを切削できるため、材質、硬さ、粘度、形状などの特性が異なる種々の血栓Tを、1つのデバイスで良好に切削できる。
【0080】
また、第2の切削部210は、回転することで回転方向に向かって血栓Tを切削する第2の刃216を有する。これにより、第2の切削部210は、回転力により血栓Tを切削するため、押し込むことで切削する場合と比較して、高い切削力を発生させることができる。このため、例えば硬い血栓Tであっても、第2の切削部210によって効果的に切削できる。
【0081】
また、第2の切削部210の第2の刃216は、第1の切削部40の刃41よりも近位側に位置する。これにより、押し込むことで切削できる血栓Tを第1の切削部40によって迅速に切削しつつ、切削部40により切削された血栓Tを、回転する第2の切削部210により細かく切削できる。このため、血栓Tを、駆動シャフト20の内腔に入りやすくすることができる。
<第3実施形態>
【0082】
第3実施形態に係る医療デバイスは、抵抗体310の構造のみが、第2実施形態に係る医療デバイスと異なる。なお、第1、第2実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0083】
第3実施形態において、
図13に示すように、抵抗体310の中心軸に垂直な断面の形状が真円の第1の抵抗体311は、第2の切削部210よりも遠位側に位置する。すなわち、中心軸に垂直な断面の形状が非真円の第2の抵抗体312の遠位側端部は、第1の切削部40の刃41よりも近位側であって、第2の切削部210の第2の刃216よりも遠位側に位置する。このため、第2の切削部210の内部に、血栓Tの回転を抑制する第2の抵抗体312が位置する。第2の切削部210は、回転力により血栓Tを切削するため、第2の切削部210の内部の血栓Tの回転が抑制されることで、血栓Tを良好に切削できる。また、第2の切削部210は、螺旋状の第1の端面214を備える搬送体でもあるため、内部の血栓Tの回転が第2の抵抗体312により抑制されることで、血栓Tを駆動管21の内腔へ円滑に導くことができる。
<第4実施形態>
【0084】
第4実施形態に係る医療デバイスは、第2の切削部410の軸方向の長さのみが、第3実施形態に係る医療デバイスと異なる。なお、第1〜第3実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0085】
第4実施形態において、
図14に示すように、第2の切削部410の最も遠位側に位置する第2の刃216は、切削部40の刃41よりも遠位側に位置する。このため、第2の切削部410は、切削部40により切削される前の血栓Tを効果的に切削できる。このため、硬い血栓Tを第2の切削部410により効果的に切削して、駆動管21の内部に導くことができる。したがって、第4実施形態に係る医療デバイスは、硬い血栓Tが多い場合に有効である。なお、第2の切削部410の第2の刃216の位置は、切削部40の刃41の位置と軸方向に同じであってもよい。この場合、医療デバイスは、第1の切削部40と第2の切削部410の両方を血栓Tに同時に作用させることができ、多様な血栓Tをバランスよく切削できる。
【0086】
第4実施形態において、第2の切削部410の第2の刃216は、切削部40(第1の切削部)の刃41よりも遠位側に位置する。これにより、切削部40による切削の前に、回転する第2の切削部410により血栓Tを切削できる。このため、押し込むだけでは切削が困難な血栓Tを、第2の切削部410によって効果的に切削できる。このため、例えば硬い血栓を含む多様な血栓Tをバランスよく切削できる。
<第5実施形態>
【0087】
第5実施形態に係る医療デバイスは、第2の切削部510の形状のみが、第4実施形態に係る医療デバイスと異なる。なお、第1〜第4実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0088】
第5実施形態において、
図15に示すように、第2の切削部510の内径が、遠位側の刃へ向かってテーパ状に大きくなっている。すなわち、第2切削部510の第2の刃216は、遠位側に向かって薄くなっている。このため、第2の切削部510の内部に入り込む血栓Tが受ける切削力が、第2の切削部510に対して遠位側へ移動するにつれて徐々に大きくなる。したがって、血栓Tを第2の切削部510および第1の切削部40の内部に、小さな抵抗で円滑に導くことができる。
【0089】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、医療デバイスが挿入される生体管腔は、血管に限定されず、例えば、脈管、尿管、胆管、卵管、肝管等であってもよい。したがって、破壊する物体は、血栓でなくてもよい。
【0090】
また、抵抗体は、中心軸に垂直な断面の形状が真円の部位を有さなくてもよい。例えば、
図16に示す変形例のように、抵抗体610の第1の抵抗体611と第2の抵抗体612の中心軸に垂直な断面の形状が、いずれも長方形であり、各々の断面の長軸が直交してもよい。
【0091】
また、
図17に示す他の変形例のように、抵抗体710は、捩れていてもよい。捩れの回転方向は、搬送体の螺旋の回転方向と同じであるが、異なってもよい。捩れのピッチ間距離は、搬送体のピッチ間距離よりも長いことが好ましい。これにより、搬送体から回転力を受ける血栓Tを、抵抗体710に沿ってある程度回転方向へ逃がしつつ軸方向へ搬送することができる。このため、血栓Tに効率よく力を伝達でき、最適なルートで血栓Tを搬送できる。
【0092】
また、
図18に示す変形例のように、吸引用管体810は、近位側開口部811に向かって内部の断面積が大きくなるようにテーパ状に広がってもよい。吸引用管体810は、駆動シャフト20の径方向の外側に位置する近位側開口部811へ向かって延在する。これにより、回転半径が大きく遠心力が強く作用する吸引用管体810の近位部の内部に、流体を多く収容でき、吸引用管体810に発生する吸引力を高めることができる。
【0093】
また、
図19に示す他の変形例のように、吸引用管体820は、近位側開口部821に向かって内部の断面積が大きくなるように段階的に広がってもよい。吸引用管体820は、駆動シャフト20の径方向の外側に位置する近位側開口部821へ向かって延在する。これにより、回転半径が大きく遠心力が強く作用する吸引用管体820の近位部の内部に、流体を多く収容でき、吸引用管体820に発生する吸引力を高めることができる。
【0094】
また、
図20に示すさらに他の変形例のように、吸引用管体830は、近位側開口部831に向かって近位側へ螺旋状に延在してもよい。吸引用管体830は、駆動シャフト20の中心軸から径方向の外側へ向かって離れつつ、近位側へ向かって螺旋状に延在する。近位側へ向かって螺旋が巻回する方向は、駆動シャフト20の回転方向の逆方向である。これにより、駆動シャフト20とともに吸引用管体830が回転すると、吸引用管体830の内部の流体は、遠心力を受けるとともに、吸引用管体830の内壁面から、近位側へ押し出す力を受ける。これにより、吸引用管体830に発生する吸引力を高めることができる。
【0095】
また、吸引用管体が導出される駆動管の導出孔は、駆動管の側面に設けられる側孔でなくてもよく、例えば駆動管の遠位側端部に設けられる開口部であってもよい。
【0096】
また、上述した実施形態における搬送体22は、第1の搬送体26および第2の搬送体27を有しているが、いずれか一方のみを有してもよい。また、搬送体は、第1の搬送体26および第2の搬送体27と異なるさらに他の搬送体を1つ以上有してもよい。
【0097】
また、抵抗体の中心軸に垂直な断面の形状は、非真円であれば特に限定されず、例えば楕円形、三角形、四角以上の多角形であってもよい。