(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
腹側部と股下部と背側部とが長手方向に沿って順次配置された吸収物品体を具備し、この吸収物品体は、前記腹側部および前記背側部において幅方向に伸張可能な弾性体が配設された外装シートと、少なくとも股下部に配置される吸収本体とを備え、前記吸収本体が内側となるように前記腹側部と前記背側部とを対向させた状態でこれら腹側部および背側部の両側部同士を接合することにより、ウエスト開口部と1対の脚周り開口部とが形成された状態で使用される使い捨て吸収性物品において、
前記吸収本体は、表面側に位置する透液性の表面シートと、裏面側に位置する不透液性の裏面シートと、これら表面シートと裏面シートとの間に位置する吸収体とを有し、
前記腹側部をウエスト開口部から股下部側へ向かって順に腹側上部、腹側中部および腹側下部とし、前記背側部をウエスト開口部から股下部側へ向かって順に背側上部、背側中部および背側下部とした場合に、
前記腹側上部および前記背側上部は、着用者の腸骨稜の上方の箇所に対応する領域であり、
前記腹側部では、前記腹側下部の伸張応力が前記腹側上部および前記腹側中部の伸張応力より大きく、
前記背側部では、前記背側上部の伸張応力が前記背側下部および前記背側中部の伸張応力より大きく、
前記腹側部および前記背側部では、前記腹側下部の伸張応力が他の部分の伸張応力より大きい
ことを特徴とする使い捨て吸収性物品。
脚周り開口部は、この脚周り開口部における腹側部側の箇所に沿って伸縮可能な前側脚周り弾性体が配設された前側レッグギャザーと、前記脚周り開口部における背側部側の箇所に沿って伸縮可能な後側脚周り弾性体が配設された後側レッグギャザーとを有し、
前記前側レッグギャザーの伸張応力は、後側レッグギャザーの伸張応力より大きい
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の使い捨て吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施の形態の構成について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1において、1は使い捨て吸収性物品を示す。この使い捨て吸収性物品1は、例えば大人用あるいは失禁用等のパンツ型の使い捨ておむつ等である。
【0018】
使い捨て吸収性物品1は、展開状態にて長手方向および幅方向を有する吸収物品体2を備えている。
【0019】
この吸収物品体2は、腹側部3と、股下部4と、背側部5とが長手方向に沿って順次配置されている。
【0020】
また、吸収物品体2は、略矩形状の吸収本体6が少なくとも股下部4に配置されるように幅方向の略中央部に配置され、この吸収本体6における着用者の衣服側となる裏面側に外装シート7が配設されている。
【0021】
そして、吸収物品体2は、吸収本体6が内側になるように腹側部3と背側部5とを対向させた状態で、これら腹側部3および背側部5の幅方向の両端部同士が接合されることによって、
図2に示すように、上部に1つのウエスト開口部8が形成され、下部に1対の脚周り開口部9が形成されたパンツタイプ形状となる。
【0022】
このような使い捨て吸収性物品1は、
図1に示す展開状態から
図2に示すパンツタイプ形状にして、着用者の胴周りにおける腹部、股下および背部に亘って身体に沿って装着される。すなわち、使い捨て吸収性物品1を着用した状態では、腹側部3が着用者の腹部に対応して配置され、股下部4が着用者の股下に対応して配置され、背側部5が着用者の背部に対応して配置される。
【0023】
吸収本体6は、着用者側である表面側に位置する略矩形状の表面シート11と、着用者の衣服側である裏面側に位置する略矩形状の裏面シート12とを有している。また、これら表面シート11と裏面シート12との間には吸収体13が配設されている。
【0024】
また、吸収本体6は、表面シート11と裏面シート12との間に吸収体13が挟まれた状態にて、表面シート11と裏面シート12とを例えば接着剤等にて接合することにより封着されている。
【0025】
すなわち、吸収本体6は、
図3に示すように表面シート11と吸収体13と裏面シート12とが断面方向に順次積層されている。
【0026】
表面シート11は、例えば尿等の排泄液を透過可能な液透過性(透液性)のシートであり、例えば織布、不織布、フィルムおよび合成樹脂等のシート材にて適宜形成される。
【0027】
裏面シート12は、排泄液を透過させない液不透過性(不透液性)のシート体である。
【0028】
また、裏面シート12は、吸収体13側に位置する裏面内側シート14と、この裏面内側シート14の外側に積層された裏面外側シート15とを有している。
【0029】
これら裏面内側シート14および裏面外側シート15は、それぞれ不透液性であり、例えば織布、不織布、フィルムおよび合成樹脂等のシート材にて適宜形成される。
【0030】
吸収体13は、長手方向の略中央部が幅方向の内側へ向かって円弧状に切り欠かれて括れた形状、いわゆる略砂時計型形状である。
【0031】
また、吸収体13は、例えばパルプ等の吸収性繊維および高吸水性ポリマ等の吸水性材料にて形成され、排泄液を十分に吸収可能である。
【0032】
さらに、吸収体13は、着用者側である表面が表面ティッシュ16で覆われ、着用者の衣服側である裏面が裏面ティッシュ17で覆われた状態で表面シート11と裏面シート12との間に設けられている。
【0033】
吸収本体6は、長手方向の両端部に吸収体13が存在しないフラップ部18を有している。
【0034】
このフラップ部18は、表面シート11および裏面シート12における吸収体13より長手方向の外側へ延出した部分で構成されている。
【0035】
そして、着用者の排泄液は、表面シート11を透過して吸収体13に吸収され、吸収された排泄液が着用者の衣服側である裏面側へ漏出しないように裏面シート12にて保持される。
【0036】
また、裏面シート12における裏面外側シート15は、吸収体13、表面シート11および裏面内側シート14より幅方向外側へ延出した延出部21を有している。
【0037】
この延出部21は、表面シート11側へ折り返されており、延出部21の幅方向の両端部には、フラップ弾性体22が延出部21の長手方向に沿って伸張した状態で配設される。
【0038】
そして、フラップ弾性体22が収縮することで、折り返された延出部21の内側の端部が表面シート11から離間するように立ち上がって立体ギャザー23となり、吸収本体6から外側への排泄液の漏出を防止する。
【0039】
外装シート7は、吸収本体6の裏面シート12における着用者の衣服側である外側に配設されている。すなわち、吸収本体6および外装シート7は、断面方向に積層されている。
【0040】
また、外装シート7は、着用者側(吸収本体6側)に位置する外装内面シート24と、着用者の衣服側に位置する外装外面シート25とを有している。
【0041】
これら外装内面シート24および外装外面シート25は、例えば織布や不織布等のシートで形成され、排泄液の着衣への漏れを防止するために不透液性であることが好ましい。なお、外装内面シート24および外装外面シート25は、シート自体が伸縮性を有するように複合シートで形成された構成にしてもよい。
【0042】
このような外装シートは、長手方向の略中央部が幅方向の内側へ向かって円弧状に切り欠かれて括れた、いわゆる略砂時計型である。
【0043】
そして、外装シート7は、長手方向の略中央部の括れた部分が吸収本体6とともに股下部4を構成し、括れた部分より長手方向の一端部側が腹側部3を構成し、括れた部分より長手方向の他端部側が背側部5を構成する。
【0044】
また、外装シート7における外装内面シート24の表面には、長手方向の両端部から吸収本体6の長手方向の端部に重なるように押えシート26が配設されている。すなわち、吸収本体6の長手方向の端縁部は押えシート26によって表面が覆われている。
【0045】
さらに、外装シート7は、外装外面シート25の長手方向の長さが外装内面シート24の長手方向の長さより長く、外装外面シート25がウエスト開口部8で押えシート26および外装内面シート24の端縁部を覆うように折り返されている。
【0046】
腹側部3および背側部5において、外装シート7の外装内面シート24と外装外面シート25との間には、複数の糸状の弾性体としての胴周り弾性体27が、着用者の胴周り、すなわち吸収物品体2の幅方向に伸張した状態で配設されている。
【0047】
そして、これら胴周り弾性体27は、使い捨て吸収物品体2の使用状態において、吸収物品体2の幅方向すなわち着用者の横方向に伸縮可能である。そのため、着用する際には、ウエスト開口部8を広げることで胴周り弾性体27が伸張し、着用した状態においては胴周り弾性体27が収縮して腹側部3および背側部5が着用者の胴周りに密着する。
【0048】
また、股下部4において、幅方向の中央部には長手方向に伸縮可能な複数(例えば3つ)の中央弾性体28が配設されている。
【0049】
これら中央弾性体28は、伸張した状態で吸収物品体2の幅方向に等間隔で離間するように、裏面内側シート14と裏面外側シート15との間に配設される。
【0050】
そして、中央弾性体28は、使い捨て吸収性物品1の使用状態において長手方向に伸縮可能であり、収縮することで、吸収本体6が内側(着用者側)へ隆起するように変形して着用者の股下に密着する。
【0051】
ここで、腹側部3は、使い捨て吸収物品体2における長手方向において、腹側部3の略中央部に位置する腹側中部31と、この腹側中部31よりウエスト開口部8側に位置する腹側上部32と、腹側中部31より股下部4側に位置する腹側下部33とを有している。すなわち、腹側部3は、ウエスト開口部8から股下部4側へ向かって順に、腹側上部32、腹側中部31および腹側下部33という各領域に区分されている。
【0052】
また、背側部5は、使い捨て吸収物品体2における長手方向において、背側部5の略中央部に位置する背側中部34と、この背側中部34よりウエスト開口部8側に位置する背側上部35と、背側中部34より股下部4側に位置する背側下部36とを有している。すなわち、背側部5は、ウエスト開口部8から股下部4側へ向かって順に、背側上部35、背側中部34および背側下部36という各領域に区分されている。
【0053】
なお、腹側上部32および背側上部35は、着用者の腸骨稜の上方の箇所に対応し、腹側中部31および背側中部34は、着用者の腸骨稜から上前腸骨棘周辺に対応し、腹側下部33および背側下部36は、上前腸骨棘より下方の箇所に対応する領域を目安として区分されている。
【0054】
より具体的には、例えばウエスト開口部8から下方に3cmの領域を腹側上部32および背側上部35とし、これら腹側上部32および背側上部35の下端部から下方に8.5cmの領域を腹側中部31および背側中部34とし、これら腹側中部31および背側中部34の下端部から下方に5cmの領域を腹側下部33および背側下部36とする。
【0055】
また、吸収本体6の長手方向の腹側部3側の端部は、平面視で腹側下部33と重なるように配置され、吸収本体6の長手方向の背側部5側の端部は、平面視で背側下部36と重なるように配置されている。すなわち、吸収本体6は、腹側部3の一部から背側部5の一部にわたって配置されている。
【0056】
なお、吸収本体6の長手方向において吸収体13が存在しないフラップ部18が、平面視で腹側下部33および背側下部36と重なるように配置される構成が好ましい。すなわち、吸収体13の長手方向の両端部が腹側下部33と重ならず、フラップ部18のみが腹側下部33および背側下部36と重なる構成が好ましい。
【0057】
胴周り弾性体27は、腹側上部32に配設された腹側上部弾性体37と、腹側中部31に配設された腹側中部弾性体38と、腹側下部33に配設された腹側下部弾性体39と、背側上部35に配設された背側上部弾性体40と、背側中部34に配設された背側中部弾性体41と、背側下部36に配設された背側下部弾性体42とを有している。
【0058】
腹側部3では、腹側上部弾性体37の収縮力に基づいて腹側上部32に伸張応力が付与され、腹側中部弾性体38の収縮力に基づいて腹側中部31に伸張応力が付与され、腹側下部弾性体39の収縮力に基づいて腹側下部33に伸張応力が付与される。
【0059】
また、背側部5では、背側上部弾性体40の収縮力に基づいて背側上部35に伸張応力が付与され、背側中部弾性体41の収縮力に基づいて背側中部34に伸張応力が付与され、背側下部弾性体42の収縮力に基づいて背側下部36に伸張応力が付与される。
【0060】
そして、腹側部3では、腹側下部33の伸張応力が、腹側上部の伸張応力および腹側中部の伸張応力のいずれよりも大きくなるように設定されている。
【0061】
背側部5では、背側上部35の伸張応力が、背側下部36の伸張応力および背側中部34の伸張応力のいずれより大きくなるように設定されている。
【0062】
腹側部3および背側部5では、腹側下部33の伸張応力が他の領域の伸張応力のいずれより大きくなるように設定されている。
【0063】
また、腹側部3および背側部5では、腹側下部33の伸張応力が最も大きく、次いで背側上部35の伸張応力が大きい構成が好ましい。
【0064】
さらに、腹側下部33の伸張応力が最も大きく、次いで背側上部35の伸張応力が大きく、腹側中部31の伸張応力が背側上部35の伸張応力より小さくかつ腹側上部32の伸張応力以上で、背側中部34の伸張応力が腹側上部32より小さくかつ背側下部36の伸張応力以上である構成がより好ましい。すなわち、腹側部3および背側部5における伸張応力は、腹側下部33>背側上部35>腹側中部31≧腹側上部32>背側中部34≧背側下部36で示す関係がより好ましい。
【0065】
なお、このような腹側部3および背側部5における伸張応力の違いは、弾性体37,38,39,40,41,42として断面積の異なる弾性材を用いること、各弾性体37,38,39,40,41,42として伸張応力の異なる弾性材を用いること、各弾性体37,38,39,40,41,42を固定する際の延伸倍率の調整、各弾性体37,38,39,40,41,42の長手方向の配置間隔の調整、および、各弾性体37,38,39,40,41,42が配設される外装シート7に別のシート体を積層すること等によって変化させて適宜設定される。
【0066】
例えば、腹側上部32と腹側中部31と背側中部34と背側下部36には、470dtexのポリウレタン弾性体(東レ・オペロンテックス株式会社製、商品名:ライクラファイバー)を、腹側上部弾性体37、腹側中部弾性体38、背側中部弾性体41および背側下部弾性体42として配設し、腹側下部33および背側上部35には、940dtexの同種の弾性体を腹側下部弾性体39および背側上部弾性体40として配設する。
【0067】
そして、各弾性体37,38,39,40,41,42を固定する際の腹側下部弾性体39の延伸倍率を2.5倍とし、背側上部弾性体40の延伸倍率を2.3倍とする等して、
図4に示すように、腹側部3および背側部5における各領域の伸張応力が調整される。
【0068】
なお、
図4には、腹側部3および背側部5の各領域の伸張応力を引張試験機により測定した結果を示す。この
図4では、Aが腹側下部33の伸張応力を示し、Bが背側上部35の伸張応力を示し、Cが腹側中部31の伸張応力を示し、Dが腹側上部32の伸張応力を示し、Eが背側下部36の伸張応力を示し、Fが背側中部34の伸張応力を示す。
【0069】
この伸張応力の測定では、腹側上部32、腹側中部31、腹側下部33、背側上部35、背側中部34および背側下部36を、腹側部3および背側部5からウエスト開口部8の縁部(吸収物品体2における長手方向端部)に平行に切断して各領域のサンプルとした。
【0070】
また、サンプルの両端部(吸収物品体2における幅方向の両端部)に位置する接合部をそれぞれ試験機の固定具に固定し、接合部間の領域で伸縮が可能となるように試験機にサンプルを設置した。
【0071】
このような状態で、サンプル非伸張時の固定具間の離間距離を100%とし、離間距離が160%となるまで引張速度300mm/分で引っ張って各サンプルを伸張させた。その後、離間距離が130%になるまで収縮させた際の応力を伸張応力とした。
【0072】
なお、押えシート26が積層された領域は積層状態での伸張応力とした。また、その他に外装シート7以外のシート等が積層される場合には、着用状態に対応した伸張応力とする。
【0073】
そして、130%まで収縮させた場合には、腹側上部32の伸張応力は0.24N/cmで、腹側中部31の伸張応力は0.26N/cmで、腹側下部33の伸張応力は0.47N/cmで、背側上部35の伸張応力は0.43N/cmで、背側中部34の伸張応力は0.18N/cmで、背側下部36の伸張応力は0.16N/cmであった。すなわち、腹側下部33の伸張応力が最も大きく、次いで背側上部35の伸張応力が大きかった。
【0074】
腹側上部32は、外装外面シート25ウエスト開口部8で折り返されているため、収縮が抑制されている。また、背側下部36が背側中部34より伸張応力が低いのは、背側下部36が押えシート26や吸収本体6が積層される領域を有しているため、収縮力が抑制されているためである。
【0075】
腹側部3に配設された弾性体である腹側上部弾性体37、腹側中部弾性体38および腹側下部弾性体39の伸張率は、背側部5に配設された弾性体である背側上部弾性体40、背側中部弾性体41および背側下部弾性体42の伸張率より高い構成が好ましい。
【0076】
具体的には、各弾性体37,38,39,40,41,42の自然長をlとし、伸張して外装シート7に固定する際の各弾性体37,38,39,40,41,42の長さをLとした場合に、伸張率はL/lで表される。
【0077】
また、腹側部3と背側部5との各領域によって伸張率を変える場合には、腹側部3の各領域が、対向する背側部5の各領域より伸張率が高くなるように設定することが好ましく、腹側部3の各領域の弾性体の伸張率が、背側部5のどの領域の弾性体の伸張率よりも高いとより好ましい。
【0078】
さらに、着用者は、一般的に下部胴囲より上部胴囲の方が周長が短い傾向にあるため、腹側上部32と背側上部35の伸張率合計は、腹側下部33と背側下部36の伸張率合計より高いと好ましい。
【0079】
脚周り開口部9は、この脚周り開口部9を構成する外装シート7の切り欠かれた円弧状の部分に沿って前側脚周り弾性体43および後側脚周り弾性体44が配設されて、前側レッグギャザー45と後側レッグギャザー46とが構成されている。
【0080】
すなわち、前側レッグギャザー45は、脚周り開口部9における腹側部3側の開口(円弧)に沿って伸縮可能な前側脚周り弾性体43が配設され、後側レッグギャザー46は、脚周り開口部9における背側部5側の開口(円弧)に沿って伸縮可能な後側脚周り弾性体44が配設されている。
【0081】
前側脚周り弾性体43および後側脚周り弾性体44は、脚周り開口部9の縁部の円弧に沿って複数(3本)が互いに等間隔で離間して配設されている。
【0082】
そして、前側レッグギャザーの伸張応力は、後側レッグギャザー46の伸張応力より大きくなるように設定されている。すなわち、前側レッグギャザーの伸張応力が後側レッグギャザー46の伸張応力より大きくなるように、前側脚周り弾性体43の伸張率を後側脚周り弾性体44の伸張率より高くしている。
【0083】
次に、上記第1の実施の形態の作用および効果を説明する。
【0084】
一般的に、腹部は呼吸や食事による膨張、および、立位や座位の体勢変化等の様々な要因によって膨張および収縮を繰り返す。
【0085】
そこで、使い捨て吸収物品体2は、腹側部3および背側部5において、着用者の腸骨稜の上方に対応する腹側上部32、および、腸骨稜から上前腸骨棘周辺に対応する腹側中部31の伸張応力が、上前腸骨棘の下方に対応する腹側下部33の伸張応力より小さく設定されることで、着用者の腹部を締め付けすぎず、着用者の腹部の膨縮変化に伴って吸収物品体2の腹側部3が伸縮するため、着用した状態での適切なフィット性を維持できる。
【0086】
また、一般的に腸骨稜の上方や腸骨稜から上前腸骨棘周辺に比べて腹部の膨縮変化が少ない上前腸骨棘に対応する腹側下部33は、腹側上部32および腹側中部31よりも伸張応力を大きくして伸縮しにくくしても、着用感が悪化しにくいため、腹側下部33の伸張応力を大きく設定することで、吸収物品体2を着用者の胴周りにしっかりフィットさせることができる。
【0087】
このように腹側上部32および腹側中部31よりも股下部4に近い領域である腹側下部33を着用者にしっかりとフィットさせることで、吸収本体6を着用者に対する適切な位置に安定的に保持でき、位置ずれを防止できる。
【0088】
また、腹側下部33の伸張応力が大きいことにより、例えば別体のパッドタイプ使い捨て吸収性物品を併用する場合等に、そのパッドタイプ使い捨て吸収性物品の前側部を着用者側へ押さえつけるように保持できるため、パッドタイプ使い捨て吸収性物品の位置ずれも防止できる。
【0089】
一般的に背部は、腹部とは異なり呼吸や食事による膨縮が非常に少なく、体勢変化による変動も少ないので、吸収物品体2の背側部5は、着用中の伸縮があまりなく、着用時のフィット性を保つために伸張応力を低く設定する必要がない。
【0090】
また、一般的に着用者の腸骨稜の上方に位置する上部胴囲周長は、腸骨稜の下方の胴囲周長より短い。
【0091】
そこで、腹側上部32の伸張応力を小さく設定しても、背側上部35の伸張応力を大きくすることで、上部胴囲全体としての伸張応力を高めることができるため、吸収物品体2のずれ落ちを防止できる。
【0092】
また、上部領域の基準となる腸骨稜は骨盤の最上部であるため、その上方である上部胴囲の伸張応力を大きくすることで、着用時に吸収物品体2が下方へずれそうな場合でも骨盤に対して引っ掛かるように保持でき、吸収物品体2のずれ落ちを防止できる。
【0093】
さらに、一般的に加齢とともに下腹部の腹囲が大きくなる傾向があり、着用者の下腹部には使い捨て吸収性物品1との隙間が生じやすくなる。また、腹側下部33と腹側中部31との胴囲の周長差が大きいと腹側中部31の伸張に影響されて、腹側下部33が着用者に追従されずに隙間が生じたままとなる可能性がある。
【0094】
そこで、腹側下部33の伸張応力を大きくすることで、下腹部の腹囲が大きい着用者であっても腹側下部33が着用者に追従されやすく、様々な体型の着用者に対しても、腹側下部33との間に隙間が生じないように胴周りにフィットしやすい。
【0095】
また、一般的に加齢とともに臀部が下がり膨らみがなくなるため、着用者においては、上部胴囲と中部胴囲との周長差より下部胴囲と中部胴囲との周長差が大きくなる傾向がある。
【0096】
そこで、背側上部35の伸張応力よりも腹側下部33の伸張応力を大きくすることで、様々な体型の着用者に対しても、胴周りにフィットしやすくできる。
【0097】
このように、腹側部3では、腹側下部33の伸張応力が腹側上部32および腹側中部31の伸張応力より大きく、背側部5では、背側上部35の伸張応力が背側下部36および背側中部34の伸張応力より大きく、腹側部3および背側部5では、腹側下部33の伸張応力が他の領域の伸張応力より大きいことにより、腹側上部32および腹側中部31の伸縮性を確保して締め付けすぎることなく腹部の膨縮に対応できるとともに、腹側下部33と背側部5とが着用者に密着した状態を保持して位置ずれを防止できるため、着用感を向上できる。
【0098】
また、腹側部3および背側部5では、腹側下部33の伸張応力が最も大きく、次いで背側上部35の伸張応力が他の領域の伸張応力より大きくすること、すなわち、腹側上部32および腹側中部31の伸張応力を背側上部35の伸張応力より小さくすることにより、呼吸や食事等での腹部の膨縮による胴周りの体型変化に対応しやすくフィットした状態を維持できるとともに、吸収物品体2がずり下がることを防止できる。
【0099】
さらに、腹側部3および背側部5は、腹側下部33の伸張応力が最も大きく、次いで背側上部35の伸張応力が大きく、腹側中部31の伸張応力が背側上部35の伸張応力より小さく腹側上部32の伸張応力以上で、背側中部34の伸張応力が腹側上部32より小さく背側下部36の伸張応力以上である構成(腹側下部33>背側上部35>腹側中部31≧腹側上部32>背側中部34≧背側下部36)とすることにより、着用者において周長が長くなる傾向のある中部領域で最も伸張応力が小さくなり伸縮しやすいので、着用者にフィットしやすく着用感を向上でき、かつ、背側上部35と腹側下部33の伸張応力が大きいので、着用者において中部領域よりも周長が短くなる傾向にある上部領域と下部領域とで着用者への密着性を向上させて適切な装着位置を保つことができる。
【0100】
なお、このような使い捨て吸収性物品1を着用する際には、ウエスト開口部8を広げてウエスト開口部8から脚周り開口部9に脚を挿入するが、ウエスト開口部8近傍の上部領域は把持されやすいので広げやすいが、ウエスト開口部8から離れた中部領域や下部領域では開口を広げる力が伝わりにくい。
【0101】
そのため、一般的には、中部領域や下部領域の伸張応力を上部領域より低くすることで、中部領域および下部領域も広がりやすくなり、ウエスト開口部8から挿入した脚を吸収物品体2の胴周り部分に引っ掛けることなく脚周り開口部9に通しやすくするが、使い捨て吸収性物品1では、腹側下部33の伸張応力が大きいので、背側下部36の伸張応力を小さくすることで、下部胴囲としての伸張応力をある程度低くでき、装着しやすくできる。
【0102】
吸収本体6は、腹側部3側の端部が平面視で腹側下部33と重なるように配置されていることにより、腹側下部33の収縮により吸収本体6を着用者に密着させて適切な位置に保持できる。
【0103】
また、吸収本体6の腹側部3側の端部を着用者に密着できるため、吸収本体6より腹側部3側への排泄物の拡散を防止できる。
【0104】
さらに、吸収体13の長手方向における腹側部3側の端部が腹側下部33に重ならず、吸収体13が存在しないフラップ部18のみが腹側下部33と重なる構成とすることにより、吸収体13が腹側下部弾性体39の伸縮に影響されにくくできる。
【0105】
また、別体のパッドタイプ使い捨て吸収性物品を併用する場合に、一般的にそのパッドタイプ使い捨て吸収性物品を配置する際には吸収本体6の位置を目安にされるため、パッドタイプ使い捨て吸収性物品の腹側部3側の端部も同様に着用者に密着でき、位置ずれしにくく、漏れを防止できる。
【0106】
さらに、吸収本体6の背側部5側の端部も同様に背側下部36に重なるように配置されることにより、背側においても同様に吸収体13や別体のパッドタイプ使い捨て吸収性物品を適切な位置に保持できる。
【0107】
腹側部3に配設された弾性体である腹側上部弾性体37、腹側中部弾性体38および腹側下部弾性体39の伸張率は、背側部5に配設された弾性体である背側上部弾性体40、背側中部弾性体41および背側下部弾性体42の伸張率より高い構成にすることにより、伸張率が高い腹側部3では、背側部5より収縮状態における腹側上部弾性体37、腹側中部弾性体38および腹側下部弾性体39の伸縮方向の長さが短くなる。そのため、背側部5より腹側部3の方が伸縮変動範囲が広くなり、膨縮や体型の個人差により胴囲の変動が大きい腹部に対して適切にフィットできるとともに、胴囲の変動が少ない背側部5の伸張率を低くすることで、着用時の周方向の締め付けを抑えることができ、着用する際に引き上げやすい。
【0108】
股下部4は、幅方向の中央部に中央弾性体28が設けられた構成にすることにより、着用状態においてその中央弾性体28が収縮することで、吸収本体6を着用者の股下に密着できる。
【0109】
なお、着用した状態において吸収物品体2の腹側部3および背側部5が着用者の胴周りに対して適切な位置に配置されていても、着用者の体型によっては、股下部4が着用者の股下に対して適切な位置に配置されない可能性も考えられる。そのような場合であっても、中央弾性体28の収縮によって吸収本体6を隆起するように着用者の股下へ密着でき、吸収本体6が着用者の股下に対して適切な位置に配置されやすい。
【0110】
前側レッグギャザーの伸張応力は、後側レッグギャザー46の伸張応力より大きいことにより、脚周り開口部9が着用者の脚周りに密着しやすくできる。
【0111】
すなわち、脚周り開口部9において背側部5側(後側)に位置する部分は、腹側部3側(前側)に位置する部分より、立位状態や座位状態といった体勢変化による変動や変形が大きい。したがって、変動の少ない脚周り開口部9における前側の箇所に沿った前側レッグギャザー45の伸張応力を大きくし、変動の大きい脚周り開口部9における後側の箇所に沿った後側レッグギャザー46の伸張応力を小さくすることで、後側レッグギャザー46の方が伸縮しやすくなり、体勢が変化しても脚周り開口部9が着用者の脚周りにフィットした状態を維持でき、脚周り開口部9からの漏れを防止できる。
【0112】
なお、上記第1の実施の形態では、外装シート7は、長手方向の中央部が円弧状に切り欠かれた構成としたが、このような構成には限定されず、外装シート7の形状は適宜変更可能である。
【0113】
吸収本体6は、腹側部3の一部から背側部5の一部にわたって配置された構成としたが、このような構成には限定されず、少なくとも股下部4に配置されていればよい。
【0114】
また、吸収本体6は、吸収体13が表面ティッシュ16と裏面ティッシュ17とで覆われた状態で表面シート11と裏面シート12とで挟むように封着された構成としたが、このような構成には限定されず、表面シート11と裏面シート12との間に吸収体13が設けられた構成であればよい。
【0115】
さらに、吸収本体6は立体ギャザー23が設けられた構成には限定されず、立体ギャザー23が設けられていない構成にしてもよい。
【0116】
立体ギャザー23が設けられた構成では、不透液性であれば立体ギャザー23が裏面外側シート15の延出部21で形成された構成には限定されず、例えば、裏面内側シート14で形成された構成や、裏面内側シート14および裏面外側シート15で形成された構成や、表面シート11と裏面シート12とで形成された構成だけでなく、別体のシートで形成された構成等でもよい。
【0117】
腹側部3は、腹側上部32と腹側中部31と腹側下部33とを有する構成であれば、各領域の範囲は適宜設定できる。
【0118】
背側部5は、背側上部35と背側中部34と背側下部36とを有する構成であれば、各領域の範囲は適宜設定できる。
【0119】
腹側部3では、腹側下部33の伸張応力が腹側上部32および腹側中部31の伸張応力より大きい構成であればよく、腹側上部32および腹側中部31の伸張応力は適宜設計できる。
【0120】
背側部5では、背側上部35の伸張応力が背側下部36および背側中部34の伸張応力より大きい構成であればよく、背側下部36および背側中部34の伸張応力は適宜設計できる。
【0121】
腹側部3および背側部5では、腹側下部33の伸張応力が他の部分の伸張応力より大きければよく、上述の腹側部3および背側部5それぞれの伸張応力の関係を満たせば、各領域の伸張応力は適宜設定できる。
【0122】
胴周り弾性体27は、糸状のものに限定されず、帯状やフィルム状等から適宜選択できる。
【0123】
また、胴周り弾性体27は、腹側部3に配設された腹側上部弾性体37、腹側中部弾性体38および腹側下部弾性体39の伸張率が、背側部5に配設された背側上部弾性体40、背側中部弾性体41および背側下部弾性体42の伸張率より高い構成には限定されず、上述の腹側部3および背側部5での伸張応力の関係を満たせば適宜設定できる。
【0124】
脚周り開口部9には、前側レッグギャザー45と後側レッグギャザー46とが設けられた構成としたがこのような構成には限定されず、使用状態において1対の脚周り開口部9を有する構成であれば、適宜設計できる。
【0125】
また、前側レッグギャザー45と後側レッグギャザー46とが設けられた構成の場合には、前側レッグギャザー45の伸張応力が後側レッグギャザー46の伸張応力より大きい構成には限定されず、各伸張応力は適宜設計できる。
【0126】
股下部4は、幅方向の中央部に長手方向に伸縮可能な中央弾性体28が配設された構成としたが、このような構成には限定されず、中央弾性体28が設けられていない構成にしてもよい。
【0127】
また、中央弾性体28が設けられた構成の場合には、中央弾性体28が裏面シート12に配設された構成には限定されず、配設箇所は適宜変更できる。
【0128】
次に、第2の実施の形態を
図5を参照して説明する。なお、上記実施の形態と同一の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0129】
図5に示すように、この第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態に対して、腹側部51と背側部52とが別体のシートで形成されたものである。
【0130】
すなわち、腹側部51が外装シートしての腹側外装シート53で形成され、背側部52が外装シートとしての背側外装シート54で形成されている。
【0131】
また、股下部55に配置された吸収本体56の長手方向の一端部が腹側外装シート53に接合され、吸収本体56の長手方向の他端部が背側外装シート54に接合されている。
【0132】
腹側外装シート53および背側外装シート54の股下部55側の端部は、幅方向の中央部が股下部55側へ突出するように形成され、これら突出する部分を連結するように吸収本体56が配置されている。
【0133】
そして、腹側外装シート53および背側外装シート54の股下部55側の端部および吸収本体56の側縁部にて脚周り開口部9が構成される。
【0134】
また、腹側外装シート53の股下部55側の端部には、端部に沿って連続して前側脚周り弾性体58が配設され、背側外装シート54の股下部55側の端部には、端部に沿って連続して後側脚周り弾性体59が配設されている。
【0135】
すなわち、前側脚周り弾性体58および後側脚周り弾性体59は、吸収本体56の吸収体57の下側を通過して重なるように配設されている。
【0136】
そして、腹側外装シート53における前側脚周り弾性体58が配設された箇所にて前側レッグギャザー61が構成され、背側外装シート54における後側脚周り弾性体59が配設された箇所にて後側レッグギャザー62が構成される。
【0137】
また、前側レッグギャザー61の伸張応力は、後側レッグギャザー62の伸張応力より大きくなるように設定されている。
【0138】
次に、第3の実施の形態を
図6ないし
図9を参照して説明する。なお、上記実施の形態と同一の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0139】
図6ないし
図8に示すように、この第3の実施の形態は、第2の実施の形態に対して、前側脚周り弾性体68および後側脚周り弾性体69が、吸収本体56の吸収体57に重ならないように非連続に配設されている。
【0140】
すなわち、前側脚周り弾性体68および後側脚周り弾性体69は、腹側外装シート53および背側外装シート54の股下部4側の端部に沿って、幅方向の外側の端部から平面視で吸収体57より幅方向の外側の箇所まで配設されている。
【0141】
そして、腹側外装シート53における前側脚周り弾性体68が配設された箇所にて前側レッグギャザー61が構成され、背側外装シート54における後側脚周り弾性体69が配設された箇所にて後側レッグギャザー62が構成される。