(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6694798
(24)【登録日】2020年4月22日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】静止誘導機器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/02 20060101AFI20200511BHJP
【FI】
H01F27/02 A
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-217029(P2016-217029)
(22)【出願日】2016年11月7日
(65)【公開番号】特開2018-78131(P2018-78131A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2018年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】吉竹 一真
(72)【発明者】
【氏名】中ノ上 賢治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝平
【審査官】
井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−016740(JP,A)
【文献】
特開2004−281852(JP,A)
【文献】
実開昭48−111808(JP,U)
【文献】
実公昭03−012770(JP,Y1)
【文献】
実開昭53−059613(JP,U)
【文献】
実開昭52−020401(JP,U)
【文献】
特開2012−074553(JP,A)
【文献】
特開2011−077099(JP,A)
【文献】
実公昭44−012974(JP,Y1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0266934(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0089238(US,A1)
【文献】
実開昭60−004459(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/02
H05K 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心−コイル組立体を収容するタンクと、
前記タンクの上側を覆うカバーと、
前記タンクの上部の端面と前記カバーとの間に配置されるパッキンと、
カバー押え金具を備え、
前記タンクは上部にフランジを有さない構造であり、前記パッキンは前記タンクの上部の端面を覆うものであり、前記カバー押さえ金具が前記カバーを前記タンクの上部の端面に押しつけて密封し、
前記パッキンはU字型パッキンであり、前記タンクの上部の端面に前記U字型パッキンが取り付けられ、
前記カバーは、前記タンクの上部の端面に取り付けたパッキンが嵌り込む、前記カバーの厚さを減少した凹部を備える静止誘導機器。
【請求項2】
鉄心−コイル組立体を収容するタンクと、
前記タンクの上側を覆うカバーと、
前記タンクの上部の端面と前記カバーとの間に配置されるパッキンと、
カバー押え金具を備え、
前記タンクは上部にフランジを有さない構造であり、前記パッキンは前記タンクの上部の端面を覆うものであり、前記カバー押さえ金具が前記カバーを前記タンクの上部の端面に押しつけて密封し、
前記タンクの上部の端面は外側に丸めてカーリングされており、前記パッキンはカーリング部を覆うものであり、
前記カバーは、前記カーリング部を覆うパッキンが嵌り込む、前記カバーの厚さを減少した凹部を備える静止誘導機器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の静止誘導機器において、
前記カバーは、前記タンクの上部の端面に取り付けたパッキンに沿って、パッキンが加圧された際に接触するガイドを備えている静止誘導機器。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の静止誘導機器において、
前記タンクには、絶縁油が収容されている静止誘導機器。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の静止誘導機器において、
前記静止誘導機器は、変圧器またはリアクトルである静止誘導機器。
【請求項6】
絶縁油が収容されたタンクと、前記タンクの上側を覆うカバーを有する静止誘導機器であって、
前記タンクは、前記カバーに対向するタンクの上部の端面と、該対向するタンクの上部の端面の側面部とを有し、前記側面部には、外周側に突き出た複数のカバー押え金具取付座を有し、
前記カバーに対向するタンクの上部の端面と前記側面部の一部とを覆うパッキンが配置されており、
前記カバーには、前記カバーに対向するタンクの上部の端面に対応する位置に、前記カバーの厚さを減少した凹部が設けられ、
前記カバー押え金具取付座に取り付けたカバー押え金具が、前記カバーの上部を押さえつけている静止誘導機器。
【請求項7】
請求項6記載の静止誘導機器において、
前記パッキンは、U字型パッキンである静止誘導機器。
【請求項8】
請求項6記載の静止誘導機器において、
前記タンクの上部の端面は、外側に丸めてカーリングされている静止誘導機器。
【請求項9】
請求項6記載の静止誘導機器において、
前記カバーは、前記タンクに配置したパッキンに沿って、パッキンが加圧された際に接触するガイドを備えている静止誘導機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器やリアクトルなどの静止誘導機器のタンクを覆うカバー(蓋)の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば油入変圧器においては、鉄心−コイル組立体(本体)をタンクに入れ、絶縁油で浸し、絶縁油が外気と触れぬようにカバーで蓋をする。カバーにはパッキンが取り付けられており、外側から荷重を掛けてパッキンを押しつぶし、タンクのフランジとカバーとの隙間を無くして密封することにより、絶縁油の酸化や水分の混入を防止している。また、油入変圧器に限らず、本体を保護するために変圧器を密封構造とする必要がある。
【0003】
油入変圧器のカバーの取付構造として、特許文献1がある。特許文献1に記載の取付構造を
図7に示す。タンク1に上部フランジ2を設け、カバー3と上部フランジ2とでパッキン4を挟み、ボルトとナットで締め付けを行うことでカバー3を取り付ける。
【0004】
また、特許文献2には、ケース本体の環状のフランジ部と蓋部材との間に環状のシールパッキンを挟持し、シールパッキンに設けた係合部をフランジ部の縁部に係合させて、フランジ部に取り付け、シールパッキンの複数の突部で二重シールを構成した密封容器(要約参照)、が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−18909号公報
【特許文献2】特開平11−121245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の油入変圧器においては、タンクにフランジを設けることで、カバーとの十分な接触面積を確保し、安定した取り付けが可能となる。しかし、フランジを設けると、フランジ分のスペースや材料を必要とすることから、変圧器のサイズの拡大、重量化、コストの増大などの課題がある。
【0007】
また、特許文献2には、ケース本体の端部を折り曲げてフランジ部を形成した密封容器が記載されているが、円形や多角形形状のタンクでは、ケース本体の端部を折り曲げてフランジ部を形成することは困難である。
【0008】
本発明は、タンクの上部フランジ部分をなくし、タンク端面とカバーとでパッキンを潰すことで密着性を維持し、カバーを取り付け可能とする静止誘導機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な静止誘導機器は、タンクの上部にフランジを設けることなく、タンクの端面にパッキンを取り付け、カバー押え金具でカバーを押しつけて、密封したものである。
【0010】
本発明の「静止誘導機器」の一例を挙げるならば、鉄心−コイル組立体を収容するタンクと、前記タンクの上側を覆うカバーと、前記タンクの
上部の端面と前記カバーとの間に配置されるパッキンと、カバー押え金具を備え、前記タンクは上部にフランジを有さない構造であり、前記パッキンは前記タンクの
上部の端面を覆うものであり、前記カバー押さえ金具が前記カバーを前記タンクの
上部の端面に押しつけて密封し、前記パッキンはU字型パッキンであり、前記タンクの
上部の端面に前記U字型パッキンが取り付けられ、前記カバーは、前記タンクの
上部の端面に取り付けたパッキンが嵌り込む、前記カバーの厚さを減少した凹部を備える静止誘導機器である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タンクの端面にパッキンを配置し、カバー押え金具をタンクに備えることにより、フランジレス構造のタンクを採用することができる。これにより、静止誘導機器の小型化や製造の際の工数低減、材料削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2A】本発明の実施例1のカバー取付構造を示す図。
【
図2B】
図2Aのカバー取付構造において、締め付けを行い、パッキンを潰した様子を示す図。
【
図3A】本発明の実施例2のカバー取付構造を示す図。
【
図3B】
図3Aのカバー取付構造において、締め付けを行い、パッキンを潰した様子を示す図。
【
図4】本発明の実施例3のカバー取付構造を示す図。
【
図5A】本発明の実施例4のカバー取付構造を示す図。
【
図5B】
図5Aのカバー取付構造において、締め付けを行い、パッキンを潰した様子を示す図。
【
図6】本発明の実施例5のカバー取付構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。なお、実施例を説明するための各図において、同一の構成要素には同一の名称、符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
【実施例1】
【0014】
図1〜
図2Bを用いて、本発明の実施例1の変圧器を説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施例1の油入変圧器を示す概略斜視図である。油入変圧器101は、タンク103を有し、タンク103には鉄心−コイル組立体(本体)を収容し、絶縁油が満たされ、カバー(蓋)102で蓋をされている。そして、本発明の実施例1の取付部104により、カバー102の複数個所をタンク103の側面部の上部に押し付け、タンク内部を密封している。
【0016】
図2Aに、実施例1のカバー取付構造を示す。変圧器は上部フランジを有さないフランジレスタンク構造を備えており、タンク5の端部は上方を向いている。タンク5の端面に、端部を囲むようにU字型パッキン6を取り付ける。U字型パッキン6の上方には、タンク5を覆うようにカバー(蓋)7を配置する。カバー7の取り付けは、タンク5に溶接等で接続したカバー押え金具取付座8、および、カバー7をU字型パッキン6に向けて押えるカバー押え金具9を配置し、ボルト10を用いてカバー7を押えることで加圧し、締め付けを行う。
図2Bに、カバー押え金具9でカバー7を押さえ、U字型パッキン6を加圧した状態を示す。U字型パッキン6が変形し、カバー7と広範囲で密着することにより、タンク5とカバー7とが密封される。
【0017】
U字型パッキン6は、輪状とすることで、接続部の隙間を生じることなく、良好に気密を保つことが可能である。輪状でない場合でもシール材で接続部の隙間をパテ埋めすることで、気密を保つことが可能である。また、多角的なタンク形状に適用する場合は、単純輪状のU字型パッキン6ではなく、タンク外形に合わせたU字型パッキン6とすることで、コーナー部における応力の偏りが解消され、弛みなく取り付けることができる。U字型パッキン6の材質については、変圧器仕様によりU字型パッキン6に要求される性能に差異はあるが、一般的に耐油性および耐熱性、機械的強度が必要であるため、ニトリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムが適している。
【0018】
本実施例によれば、タンク5の上部にフランジを設けなくても、気密性に問題なくカバー7の取り付けを行うことができる。そして、タンクの上部にフランジを設ける必要がないため、変圧器の小型化や製造の際の工数低減、材料削減が可能となり、コストを低減することができる。また、フランジが無いため、円形や多角形形状のタンクを安価に製造することができ、種々の形状の静止誘導機器を提供できる。
【実施例2】
【0019】
図3Aおよび
図3Bを用いて、本発明の実施例2の変圧器を説明する。
【0020】
図3Aは、本実施例のフランジレスのタンク5に、凹部を有するカバー11を配置した変圧器のカバー取付部を示している。タンク5の端面に、端部を囲むようにU字型パッキン6を取り付ける。タンク5に接続したカバー押え金具取付座8、カバー11を押えるカバー押え金具9、ボルト10を用いてカバー11を取り付ける構造は、実施例1と同様である。
【0021】
本実施例のカバー11は、U字型パッキン6との接触部に凹部12を備えており、凹部12にU字型パッキン6が嵌り込む。
図3Bに、カバー押え金具9でカバー11を押え、U字型パッキン6を加圧した状態を示す。U字型パッキン6が変形し、凹部12内でカバー11と広範囲で密着することにより、タンク5とカバー11とが密封される。
【0022】
本実施例によれば、凹部12が無い場合と比較して、U字型パッキン6に加わる圧力を分散することができるため、U字型パッキン6の損傷や破断を防止することができる。また、U字型パッキン6とカバー11の接触面積が拡大することから、U字型パッキン6の密着性が改善され、より安定した気密を保つことが可能となる。さらに、凹部12にU字型パッキン6が嵌り込むことにより、タンク5に対するカバー11の位置合わせが容易になる。
【実施例3】
【0023】
図4を用いて、本発明の実施例3の変圧器を説明する。
【0024】
図4は、本実施例の変圧器のカバー取付部を示している。フランジレスのタンク15の端面は、タンク15の端部を外側に丸めてカーリング加工を施している。カーリング部13を覆うようにパッキン14が設けられている。そして、カバー11の凹部12にパッキン14で覆われたカーリング部13を配置している。カーリング加工を施したタンク15に接続したカバー押え金具取付座8、カバー11を押えるカバー押え金具9、ボルト10を用いてカバー11を取り付ける構造は、実施例1と同様である。
【0025】
本実施例のフランジレスのタンク15は、端面にカーリング加工を施しており、カーリング部13を覆うパッキン14を取り付けている。そして、カバー11のパッキン接触部を凹構造12とすることで、実施例2の構成と比較して、よりパッキン14に加わる圧力を分散し、接触面積を拡大することができる。これにより、さらに密着性が改善され、より安定した気密を保つことが可能となる。
【実施例4】
【0026】
図5Aおよび
図5Bを用いて、本発明の実施例4の変圧器を説明する。
【0027】
図5Aは、本実施例のフランジレスのタンク5の端面にU字型パッキン6を取り付け、カバー16にガイド17を設けた変圧器のカバー取付部を示している。タンク5に接続したカバー押え金具取付座8、カバー16を押えるカバー押え金具9、ボルト10を用いてカバー16を取り付ける構造は、実施例1と同様である。
【0028】
本実施例のカバー16は、カバー16の外側の端部が下方、すなわちタンク5の方向に向かって折り曲げられている。そして、U字型パッキン6の内側には、U字型パッキン6に沿ってガイド17が設けられている。
図5Bに、カバー押え金具9でカバー16を押え、U字型パッキン6を加圧した状態を示す。加圧によりU字型パッキン6が変形するが、潰れたU字型パッキン6の側面をガイド17が支えることで、U字型パッキン6に加わる圧力を分散し、カバー16との接触面積を拡大することができる。これにより、さらに密着性が改善され、より安定した気密を保つことが可能となる。
【実施例5】
【0029】
図6を用いて、本発明の実施例5の変圧器を説明する。
【0030】
図6は、本実施例のカバー7に凹部19を備える板状パッキン18を貼り付け、板状パッキン18の凹部19にフランジレスのタンク5の端面を配置した変圧器のカバー取付部を示している。タンク5に接続したカバー押え金具取付座8、カバー7を押えるカバー押え金具9、ボルト10を用いてカバー16を取り付ける構造は、実施例1と同様である。
【0031】
本実施例によれば、板状パッキン18に凹部19を設けることでフランジレスのタンク端面との密着性を改善することができる。また、タンク5の端面に対する、板状パッキン18やカバー7の位置決めが容易になる。
【0032】
なお、各実施例においては、油入変圧器を例に説明したが、本発明は、絶縁油を用いない変圧器にも適用することができる。また、変圧器に限らず、本発明は、リアクトルなどの静止誘導機器全般に用いることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 タンク
2 上部フランジ
3 カバー(蓋)
4 パッキン
5 タンク
6 U字型パッキン
7 タンクカバー(蓋)
8 カバー押え金具取付座
9 カバー押え金具
10 ボルト
11 凹部を備えたカバー
12 凹部
13 カーリング部
14 カーリング部を覆うパッキン
15 カーリング加工を施したタンク
16 ガイド付きカバー
17 ガイド
18 凹部を備える板状パッキン
19 パッキンの凹部
101 油入変圧器
102 カバー(蓋)
103 タンク
104 カバー取付部