【課題を解決するための手段】
【0015】
出願人は今や、工業的に実施可能で、かつ先行技術の欠点を示さない、式(II)すなわちCF
3−CX(Z)
n−CHX(Z)
nであり、式中Xは独立して水素、フッ素または塩素原子を表わし、Zは独立して水素またはフッ素原子を表わし、n=0または1である式の少なくとも1つの化合物の製造方法を完成させた。より厳密には、本発明は、式(I)すなわちCX(Y)
2−CX(Y)
m−CH
mXYであり、式中XおよびYは独立して水素、フッ素または塩素原子を表わし、m=0または1である式の少なくとも1つの化合物から、式(II)の少なくとも1つの化合物を製造する方法を提供している。
【0016】
本発明に係る方法は、式(I)の少なくとも1つの化合物が、フッ素化触媒の存在下で気相にてHFと反応して、式(II)の少なくとも1つの化合物を提供する少なくとも1つの工程を含み、触媒が、共金属としてのニッケルと少なくとも1つの希土類金属を含むオキシフッ化クロム系のものであることを特徴とする。
【0017】
式(II)の化合物としては、特に、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HCFO−1233zd)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HCFO−1233xf)、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパン(HCFC−243db)、2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)、1−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)を挙げることができる。
【0018】
好ましくは、式(II)の化合物は、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HCFO−1233zd)の中から選択される。
【0019】
式(I)の化合物としては、特にテトラクロロプロペン、詳細には1,1,2,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230xa)、2,3,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230xf)、1,1,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230za)および1,3,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230zd)、ペンタクロロプロパン、詳細には1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240db)、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)および1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240aa)を挙げることができる。
【0020】
本発明の一実施形態によると、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、式CX
3CHClCH
2XおよびCX
3CFXCH
3のハロプロパン、式CX
3CCl=CH
2、CClX
2CCl=CH
2およびCX
2=CClCH
2Xのハロプロペンから製造され、式中Xは独立してフッ素または塩素原子を表わす。
【0021】
好ましくは、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、1,1,2,3−テトラクロロプロペン、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパン、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパンおよび/または2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンから製造される。
【0022】
この態様によると、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンは有利には、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンおよび/または2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンから製造される。
【0023】
本発明の別の実施形態によると、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン、1,1,3,3−テトラクロロプロペン、1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンおよび/または1−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンから製造される。
【0024】
この態様によると、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは好ましくは、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンおよび/または1−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンから製造される。
【0025】
本発明の別の実施形態によると、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、詳細にはトランス異性体は、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンおよび/または1,1,3,3−テトラクロロプロペンから製造される。
【0026】
本発明に係る方法において使用される触媒の組成に入る希土類金属としては、特に、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、イットリウムおよびスカンジウムを挙げることができる。
【0027】
触媒の調製には、再利用された希土類金属が適切であり得る。
【0028】
好ましい希土類金属は、セリウム、ランタンおよびプラセオジムである。
【0029】
触媒中の1つまたは複数の希土類金属/クロムの原子比は、好ましくは0.001〜0.1、有利には0.001〜0.02である。
【0030】
触媒中のニッケル共金属/クロムの原子比は、好ましくは0.5〜5、有利には0.7〜2である。
【0031】
本発明の実施形態の如何に関わらず、フッ素化工程の温度は、100〜500℃、好ましくは180〜420℃、そして有利には280〜420℃であり得る。反応すべき式(I)の化合物全体との関係におけるHFのモル比は、好ましくは5〜40、有利には10〜25である。
【0032】
実施形態の如何に関わらず、フッ素化工程は、酸化剤の存在下で実施されてよく、式(I)の単数または複数の化合物との関係における酸化剤のモル比は好ましくは0.005〜2である。
【0033】
フッ素化工程は概して、0.1〜20バール、好ましくは1〜7バールの圧力で実施される。
【0034】
酸化剤は、酸素、塩素および空気の中から選択されてよい。
【0035】
使用される触媒は、バルク触媒でも担持触媒でもあり得る。
【0036】
触媒の担体としては、炭素またはマグネシウム誘導体、特にハロゲン化物、例えばMgF
2、またはオキシハロゲン化マグネシウム、例えばオキシフッ化物、または場合によって活性化されているアルミナ、またはアルミニウム誘導体、特にハロゲン化物、例えばAlF
3、またはオキシハロゲン化アルミニウム、例えばオキシフッ化物を挙げることができる。
【0037】
本発明において使用される触媒は、場合によって担体の存在下で、クロム、ニッケルおよび希土類金属系の対応する塩の共沈によって調製されてもよい。
【0038】
触媒は同様に、対応する酸化物の同時粉砕によって調製されてもよい。フッ素化反応に先立ち、触媒はHFによる活性化工程に付される。
【0039】
HFでの処理の温度は、1〜50時間の持続時間で、100〜450℃、好ましくは200〜300℃であってよい。
【0040】
別の一実施形態によると、触媒の活性化は、HFと酸化剤の混合物での処理を伴う少なくとも1つの工程で実施されてよい。酸化剤は、HFと酸化剤の混合物との関係において、2〜98モル%を占めることができ、活性化温度は、10〜200時間の持続時間で200〜450℃の間で変動し得る。
【0041】
活性化工程は、大気圧下あるいは20バールまでの圧力下で実施可能である。
【0042】
担体は、高多孔率のアルミナから調製され得る。第1の工程において、アルミナは、空気およびフッ化水素酸を用いたフッ素化によって、フッ化アルミニウムまたはフッ化アルミニウムとアルミナとの混合物に変換され、アルミナからフッ化アルミニウへの変換率は、本質的に、アルミナのフッ素化が実施される温度(一般に200℃〜450℃、好ましくは250℃〜400℃)によって左右される。担体はその後、クロム、ニッケルおよび希土類金属の塩の水溶液を用いて、または、クロム酸、ニッケル塩および希土類の塩または酸化物の水溶液およびメタノール(クロムの還元剤として役立つ)を用いて、含浸させられる。クロム、ニッケルおよび希土類金属の塩としては、塩化物または他の塩、例えば、担体が吸収可能な量の水の中で塩が可溶であるかぎりにおいて、ニッケルおよび希土類金属の重クロム酸塩、あるいはシュウ酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩および硫酸塩を使用することができる。
【0043】
触媒は、上述のクロム、ニッケルおよび希土類金属の化合物の溶液を用いた、(概して活性化されている)アルミナの直接含浸によって調製されてもよい。この場合、アルミナの少なくとも一部分(例えば70%以上)の、フッ化アルミニウムまたはオキシフッ化アルミニウムへの変換は、触媒の金属の活性化工程の際に実施される。
【0044】
触媒の調製に使用可能な活性アルミナは、市販されている周知の製品である。活性アルミナは概して、300℃〜800℃の温度でアルミナ水和物(水酸化アルミニウム)をか焼することによって調製される。アルミナ(活性または非活性アルミナ)は、高い含有量(最高1000ppm)のナトリウムを含み得るが、そのために触媒性能が損なわれることはない。
【0045】
好ましくは、触媒は、状態調節または活性化される、すなわちいわゆる予備活性化作業により(反応条件において)活性かつ安定な成分へと変換される。この処理は、(フッ素化反応装置内で)「インサイチュで」か、または活性化条件に耐えるように設計された適切な装置内で実施可能である。
【0046】
担体の含浸後、触媒は、空気または窒素の存在下で、100℃〜350℃、好ましくは220℃〜280℃の温度で乾燥させられる。
【0047】
乾燥した触媒は、次に、場合によって酸化剤の存在下で、フッ化水素酸で1つまたは2つの工程において活性化される。フッ素化によるこの活性化工程の持続時間は6〜100時間であってよく、温度は300〜400℃であってよい。
【0048】
本発明に係る方法は、連続的または不連続的に実施されてよい。
【0049】
本発明は、さらに、上述の触媒の存在下での異性化またはデヒドロハロゲン化方法を提供する。
【0050】
異性化の例として、特に1,3,3,3−テトラフルオロプロペンからの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの獲得およびその逆反応、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンからの2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンの獲得およびその逆反応、シス異性体からの1−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンのトランス異性体の獲得、およびシス異性体からの1,3,3,3−テトラフルオロプロペンのトランス異性体の獲得を挙げることができる。
【0051】
デヒドロハロゲン化の例としては、特に、2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパンおよび/または1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパンからの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの獲得、および1−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロパンおよび/または1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンからの1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの獲得を挙げることができる。
【0052】
式(I)の化合物としては、同様に、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパン、2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパン、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン、1−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロパンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンも挙げることができる。