特許第6694810号(P6694810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6694810
(24)【登録日】2020年4月22日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】気相でのフッ素化方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/20 20060101AFI20200511BHJP
   B01J 27/132 20060101ALI20200511BHJP
   B01J 37/26 20060101ALI20200511BHJP
   C07C 17/25 20060101ALI20200511BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20200511BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20200511BHJP
【FI】
   C07C17/20
   B01J27/132 Z
   B01J37/26
   C07C17/25
   C07C21/18
   !C07B61/00 300
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-516923(P2016-516923)
(86)(22)【出願日】2014年9月17日
(65)【公表番号】特表2016-533328(P2016-533328A)
(43)【公表日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】FR2014052309
(87)【国際公開番号】WO2015044558
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2017年4月3日
【審判番号】不服2019-1124(P2019-1124/J1)
【審判請求日】2019年1月29日
(31)【優先権主張番号】1359143
(32)【優先日】2013年9月24日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ワンドランジェ,ロラン
【合議体】
【審判長】 瀬良 聡機
【審判官】 冨永 保
【審判官】 中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−525925(JP,A)
【文献】 特開平9−268140(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/098420(WO,A1)
【文献】 特表2013−520421(JP,A)
【文献】 特開2012−116830(JP,A)
【文献】 特開2019−89803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C,C07B61/00
CAplus,REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンがフッ素化触媒の存在下で気相にてHFと反応する少なくとも1つの工程を含む2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法において、触媒が、ランタンと共金属としてのニッケルとを少なくとも含むオキシフッ化クロム系のものであることを特徴とする方法。
【請求項2】
触媒中のランタン/クロムの原子比が0.001〜0.1、好ましくは0.001〜0.02であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒中のニッケル共金属/クロムの原子比が0.5〜5、好ましくは0.7〜2であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
触媒が担持触媒であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
担体が、炭素、マグネシウム誘導体、アルミナまたはアルミニウム誘導体の中から選択されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
反応すべき化合物に対するHFのモル比が5〜40、好ましくは10〜25であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
フッ素化温度が180〜420℃、好ましくは280〜420℃であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
触媒が、HFを含むストリームを用いた少なくとも1つの活性化工程に付されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の存在下における気相でのフッ素化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)は、その低い地球温暖化係数(Global Warming Potential)のため、自動車用空調においてHFC−134aの代替となる潜在的可能性を有する一候補とみなされている。
【0003】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)から、水素化触媒の存在下で水素とHFO−1225yeとを反応させて、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)を提供し、こうして形成されたHFC−245ebは次に、水酸化カリウムの存在下での脱フッ化水素化工程に付されることにより得ることができる(Knunyantsら、Journal of Academy of Sciences of the USSR、1312〜1317頁、1960年8月)。
【0004】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンは同様に、触媒の存在下でHFと2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)を反応させて、第1段階で2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)を提供し、その後HCFC−244bbは、第2の触媒上で脱塩化水素化されることによって得られる(国際公開第2007/079431号)。
【0005】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、同様に、ペンタクロロプロパンまたはテトラクロロプロペンから、中間体として2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを経由して得ることもできる。
【0006】
飽和および不飽和ハイドロフルオロカーボンの製造においては、触媒または触媒前躯体として、一部の金属酸化物が使用される。こうして、酸化クロム、詳細にはクロム(III)は、高温でHFの存在下において、フッ素原子(C−F)による少なくとも1つの塩素原子(C−Cl)の置換反応で極めて活性を示す、フッ化クロムとオキシフッ化クロムの混合物を提供する。この置換は、ハイドロクロロカーボンのフッ素化方法の大部分における主要工程である。
【0007】
気相でのフッ素化反応における酸化クロム系触媒は、三酸化クロム(VI)の還元またはクロム(III)塩の塩基による析出によって調製可能である。
【0008】
酸化クロムおよび/またはオキシフッ化クロム以外にフッ素化触媒は、少なくとも1つの他の金属、例えば亜鉛、ニッケル、マグネシウムおよびコバルトを含むことができる。
【0009】
フッ素化触媒は同様に、担持触媒であり得る。
【0010】
国際公開第2010/123154号は、場合によってフッ素化されている式CrOm(1.5<m<3)の酸化クロム触媒を用いて、酸素の存在下でHFとHCFO−1233xfを反応させることによるHFO−1234yfの製造方法について記載している。この文書は、HFO−1234yfでの良好な選択性を得るためには、HCFO−1233xfに対する酸素モル比を0.1〜1としてかつHCFO−1233xfに対するHFモル比を4〜30とした状態で、0.08〜0.2MPaの圧力において反応温度は330〜380℃でなければならない、ということを教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2007/079431号
【特許文献2】国際公開第2010/123154号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Knunyantsら、Journal of Academy of Sciences of the USSR、1312〜1317頁、1960年8月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
国際公開第2010/123154号は、非常に短い反応時間(最大45時間)についてのHFO−1234yfの選択性にしか関心を示していない。したがって、45時間の反応の後、転換は、実施例3において6.2%にすぎない。
【0014】
ところで、1つの方法が工業的に実現性のあるものとなるためには、選択性のみならず転換率も高くなければならない。その上、性能は、経時的にほぼ恒常でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
出願人は今や、工業的に実施可能で、かつ先行技術の欠点を示さない、式(II)すなわちCF3−CX(Z)n−CHX(Z)nであり、式中Xは独立して水素、フッ素または塩素原子を表わし、Zは独立して水素またはフッ素原子を表わし、n=0または1である式の少なくとも1つの化合物の製造方法を完成させた。より厳密には、本発明は、式(I)すなわちCX(Y)2−CX(Y)m−CHmXYであり、式中XおよびYは独立して水素、フッ素または塩素原子を表わし、m=0または1である式の少なくとも1つの化合物から、式(II)の少なくとも1つの化合物を製造する方法を提供している。
【0016】
本発明に係る方法は、式(I)の少なくとも1つの化合物が、フッ素化触媒の存在下で気相にてHFと反応して、式(II)の少なくとも1つの化合物を提供する少なくとも1つの工程を含み、触媒が、共金属としてのニッケルと少なくとも1つの希土類金属を含むオキシフッ化クロム系のものであることを特徴とする。
【0017】
式(II)の化合物としては、特に、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HCFO−1233zd)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HCFO−1233xf)、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパン(HCFC−243db)、2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)、1−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)を挙げることができる。
【0018】
好ましくは、式(II)の化合物は、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HCFO−1233zd)の中から選択される。
【0019】
式(I)の化合物としては、特にテトラクロロプロペン、詳細には1,1,2,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230xa)、2,3,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230xf)、1,1,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230za)および1,3,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230zd)、ペンタクロロプロパン、詳細には1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240db)、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)および1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240aa)を挙げることができる。
【0020】
本発明の一実施形態によると、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、式CX3CHClCH2XおよびCX3CFXCH3のハロプロパン、式CX3CCl=CH2、CClX2CCl=CH2およびCX2=CClCH2Xのハロプロペンから製造され、式中Xは独立してフッ素または塩素原子を表わす。
【0021】
好ましくは、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、1,1,2,3−テトラクロロプロペン、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパン、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパンおよび/または2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンから製造される。
【0022】
この態様によると、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンは有利には、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンおよび/または2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンから製造される。
【0023】
本発明の別の実施形態によると、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン、1,1,3,3−テトラクロロプロペン、1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンおよび/または1−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンから製造される。
【0024】
この態様によると、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは好ましくは、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンおよび/または1−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンから製造される。
【0025】
本発明の別の実施形態によると、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、詳細にはトランス異性体は、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンおよび/または1,1,3,3−テトラクロロプロペンから製造される。
【0026】
本発明に係る方法において使用される触媒の組成に入る希土類金属としては、特に、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、イットリウムおよびスカンジウムを挙げることができる。
【0027】
触媒の調製には、再利用された希土類金属が適切であり得る。
【0028】
好ましい希土類金属は、セリウム、ランタンおよびプラセオジムである。
【0029】
触媒中の1つまたは複数の希土類金属/クロムの原子比は、好ましくは0.001〜0.1、有利には0.001〜0.02である。
【0030】
触媒中のニッケル共金属/クロムの原子比は、好ましくは0.5〜5、有利には0.7〜2である。
【0031】
本発明の実施形態の如何に関わらず、フッ素化工程の温度は、100〜500℃、好ましくは180〜420℃、そして有利には280〜420℃であり得る。反応すべき式(I)の化合物全体との関係におけるHFのモル比は、好ましくは5〜40、有利には10〜25である。
【0032】
実施形態の如何に関わらず、フッ素化工程は、酸化剤の存在下で実施されてよく、式(I)の単数または複数の化合物との関係における酸化剤のモル比は好ましくは0.005〜2である。
【0033】
フッ素化工程は概して、0.1〜20バール、好ましくは1〜7バールの圧力で実施される。
【0034】
酸化剤は、酸素、塩素および空気の中から選択されてよい。
【0035】
使用される触媒は、バルク触媒でも担持触媒でもあり得る。
【0036】
触媒の担体としては、炭素またはマグネシウム誘導体、特にハロゲン化物、例えばMgF2、またはオキシハロゲン化マグネシウム、例えばオキシフッ化物、または場合によって活性化されているアルミナ、またはアルミニウム誘導体、特にハロゲン化物、例えばAlF3、またはオキシハロゲン化アルミニウム、例えばオキシフッ化物を挙げることができる。
【0037】
本発明において使用される触媒は、場合によって担体の存在下で、クロム、ニッケルおよび希土類金属系の対応する塩の共沈によって調製されてもよい。
【0038】
触媒は同様に、対応する酸化物の同時粉砕によって調製されてもよい。フッ素化反応に先立ち、触媒はHFによる活性化工程に付される。
【0039】
HFでの処理の温度は、1〜50時間の持続時間で、100〜450℃、好ましくは200〜300℃であってよい。
【0040】
別の一実施形態によると、触媒の活性化は、HFと酸化剤の混合物での処理を伴う少なくとも1つの工程で実施されてよい。酸化剤は、HFと酸化剤の混合物との関係において、2〜98モル%を占めることができ、活性化温度は、10〜200時間の持続時間で200〜450℃の間で変動し得る。
【0041】
活性化工程は、大気圧下あるいは20バールまでの圧力下で実施可能である。
【0042】
担体は、高多孔率のアルミナから調製され得る。第1の工程において、アルミナは、空気およびフッ化水素酸を用いたフッ素化によって、フッ化アルミニウムまたはフッ化アルミニウムとアルミナとの混合物に変換され、アルミナからフッ化アルミニウへの変換率は、本質的に、アルミナのフッ素化が実施される温度(一般に200℃〜450℃、好ましくは250℃〜400℃)によって左右される。担体はその後、クロム、ニッケルおよび希土類金属の塩の水溶液を用いて、または、クロム酸、ニッケル塩および希土類の塩または酸化物の水溶液およびメタノール(クロムの還元剤として役立つ)を用いて、含浸させられる。クロム、ニッケルおよび希土類金属の塩としては、塩化物または他の塩、例えば、担体が吸収可能な量の水の中で塩が可溶であるかぎりにおいて、ニッケルおよび希土類金属の重クロム酸塩、あるいはシュウ酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩および硫酸塩を使用することができる。
【0043】
触媒は、上述のクロム、ニッケルおよび希土類金属の化合物の溶液を用いた、(概して活性化されている)アルミナの直接含浸によって調製されてもよい。この場合、アルミナの少なくとも一部分(例えば70%以上)の、フッ化アルミニウムまたはオキシフッ化アルミニウムへの変換は、触媒の金属の活性化工程の際に実施される。
【0044】
触媒の調製に使用可能な活性アルミナは、市販されている周知の製品である。活性アルミナは概して、300℃〜800℃の温度でアルミナ水和物(水酸化アルミニウム)をか焼することによって調製される。アルミナ(活性または非活性アルミナ)は、高い含有量(最高1000ppm)のナトリウムを含み得るが、そのために触媒性能が損なわれることはない。
【0045】
好ましくは、触媒は、状態調節または活性化される、すなわちいわゆる予備活性化作業により(反応条件において)活性かつ安定な成分へと変換される。この処理は、(フッ素化反応装置内で)「インサイチュで」か、または活性化条件に耐えるように設計された適切な装置内で実施可能である。
【0046】
担体の含浸後、触媒は、空気または窒素の存在下で、100℃〜350℃、好ましくは220℃〜280℃の温度で乾燥させられる。
【0047】
乾燥した触媒は、次に、場合によって酸化剤の存在下で、フッ化水素酸で1つまたは2つの工程において活性化される。フッ素化によるこの活性化工程の持続時間は6〜100時間であってよく、温度は300〜400℃であってよい。
【0048】
本発明に係る方法は、連続的または不連続的に実施されてよい。
【0049】
本発明は、さらに、上述の触媒の存在下での異性化またはデヒドロハロゲン化方法を提供する。
【0050】
異性化の例として、特に1,3,3,3−テトラフルオロプロペンからの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの獲得およびその逆反応、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンからの2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンの獲得およびその逆反応、シス異性体からの1−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンのトランス異性体の獲得、およびシス異性体からの1,3,3,3−テトラフルオロプロペンのトランス異性体の獲得を挙げることができる。
【0051】
デヒドロハロゲン化の例としては、特に、2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパンおよび/または1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパンからの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの獲得、および1−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロパンおよび/または1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンからの1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの獲得を挙げることができる。
【0052】
式(I)の化合物としては、同様に、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパン、2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパン、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン、1−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロパンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンも挙げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
実験セクション
使用される装置は、管状炉によって加熱される内径19mmのINCONEL(登録商標)600製の管状反応装置を含む。反応装置には、圧力および温度の制御装置が備わっている。試薬は予熱され、静的ミキサーによって混合され、その後反応装置の上部部分内に気相で導入される。
【0054】
反応装置の出口において、反応生成物の試料を採取し、この試料をガスクロマトグラフィによりオンラインで分析する。分析は、50m×0.32mm×5μmの寸法のCP Sil 8CBカラムおよび長さ5mの60/80メッシュ、1% SP1000/Carbopack Bの充填カラムを用いて実施する。炉の温度プログラミングは、以下の通りである:10分間40℃、その後250℃に至るまで毎分10℃の勾配、および20分間40℃、その後180℃に至るまで毎分10℃の勾配。
【0055】
接触時間は、温度および圧力実験条件における合計体積流量に対する触媒床の体積の比として定義づけされる。HFモル比は、HFモル流量とHCFO−1233xfのモル流量の比として定義される。反応は空気の存在下で実施される。酸素モル比は、酸素モル流量とHCFO−1233xfのモル流量の間の比として定義される。
【0056】
実施例1:HCFO−1233xfのフッ素化
使用される触媒は、以下のように調製されたNi−Cr/AlF3触媒である。
【0057】
空気およびフッ化水素酸(空気中におけるこの酸の体積濃度は5〜10%)を用いて約280℃でGRACE HSAアルミナを固定床でフッ素化することにより先行する工程において得た担体343gを、回転蒸発器内に投入する。出発GRACE HSAアルミナは、以下のような物理化学特性を示す。直径0.5〜2mmのビーズ、BET表面積=220m2/g、多孔性体積=1.3cm3/g。
【0058】
その上、次の別個の2種類の水溶液を調製する。
(a)以下のものを含有する塩化ニッケルを添加したクロム酸溶液:
− 無水クロム酸CrO3=55g
− 塩化ニッケル六水和物NiCl2・6H2O=130g
− 水=63g
(b)以下のものを含有するメタノール溶液:
− メタノール=81g
− 水=8g
【0059】
これら2つの溶液を、40℃の温度、大気圧下で、約2時間かけて、撹拌しながら担体上に同時に導入する。窒素下での熟成工程の後、触媒を窒素下で、その後真空下において65℃で、次に約90℃で6時間、乾燥させる。
【0060】
HCFO−1233xfのフッ素化は、AlF3上に担持されたNi−Cr触媒73cm3を装填して上述の反応装置内で実施する。
【0061】
装填後、固体を、フッ化水素酸と窒素の混合物(窒素中におけるこの酸の体積濃度は5〜10%)の存在下で、320℃〜390℃の温度で処理する。
【0062】
活性化プロセスは、その後以下の作業を5サイクル含む。
− 以下で述べる条件下で6〜30時間フッ素化反応を実施することによる触媒のフッ素化、
− 毎時1.5L、370℃での空気中における64時間の処理。
【0063】
反応は、大気圧下、350℃の温度で、毎時3.4gの無水HFと毎時1.0gのHCFO−1233xfに連続補給して実施する。こうして、接触時間は29秒であり、HFモル比は22である。酸素量は、HCFO−1233xfの量との関係において8モル%である。
【0064】
結果を、下表に示す。
【0065】
比較の実施例2:HCFO−1233xfのフッ素化
使用した触媒は、前述の通りに調製したNi−Cr−La/AlF3触媒であり、塩化ニッケルおよび塩化ランタンを添加したクロム酸溶液は、以下のものを含有する:
− 無水クロム酸CrO3=55g
− 塩化ニッケル六水和物NiCl2・6H2O=130g
− 塩化ランタン六水和物LaCl3・6H2O=2g
− 水=63g
【0066】
HCFO−1233xfのフッ素化は、AlF3上に担持されたNi−Cr−La触媒73cm3を装填して上述の反応装置内で実施する。
【0067】
活性化プロセスは同一であり、反応は、同様に大気圧下、350℃の温度で、毎時3.4gの無水HFと毎時1.0gのHCFO 1233xfに連続補給して実施する。酸素量は、HCFO−1233xfの量との関係において8モル%である。
【0068】
全結果を、下表に示す。
【0069】
【表1】