特許第6694827号(P6694827)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6694827MDM2阻害剤及びそれを使用する治療方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6694827
(24)【登録日】2020年4月22日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】MDM2阻害剤及びそれを使用する治療方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/10 20060101AFI20200511BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200511BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200511BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20200511BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   C07D487/10CSP
   A61P43/00 111
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61K31/407
【請求項の数】21
【全頁数】58
(21)【出願番号】特願2016-562752(P2016-562752)
(86)(22)【出願日】2015年4月16日
(65)【公表番号】特表2017-511360(P2017-511360A)
(43)【公表日】2017年4月20日
(86)【国際出願番号】US2015026098
(87)【国際公開番号】WO2015161032
(87)【国際公開日】20151022
【審査請求日】2018年3月28日
(31)【優先権主張番号】61/980,747
(32)【優先日】2014年4月17日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512255103
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シャオメン
(72)【発明者】
【氏名】アギラー,アンジェロ
(72)【発明者】
【氏名】リュー,リュー
(72)【発明者】
【氏名】ル,ジャンフェン
(72)【発明者】
【氏名】マックイーチャーン,ドナ
【審査官】 谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/121361(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/155066(WO,A2)
【文献】 特表2009−530236(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/033974(WO,A1)
【文献】 Sanjeev SHANGARY et al,"Small-Molecule Inhibitors of the MDM2-p53 Protein-Protein Interaction to Reactivate p53 Function: A Novel Approach for Cancer Therapy,ANNU. REV. PHARMACOL. TOXICOL.,2009年,vol.49,p.223-41
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/20
C07D 487/10
A61K 31/407
A61K 31/437
A61K 45/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式:
【化1】
を有する化合物であって、式中、
【化2】
が、
【化3】
であり
Bが、
【化4】
あり、
が、Hまたは非置換C1−4アルキルであり、
nが、0、1、または2であり、
、R、R、R、R、R、R、及びR10が独立して、H、F、Cl及びCHらなる群から選択され、
が、
【化5】
であり、
が、水素または非置換C1−4アルキルであり、
が、水素または非置換C1−4アルキルであり、
及びRが、環Bの1つの炭素原子上の置換基であって、
が、H、C1−3アルキル、C1−3アルキレンOR、OR、またはハロゲンであり、
が、H、C1−3アルキル、C1−3アルキレンOR、OR、またはハロゲンであり、
が、−C(=O)OR、−C(=O)NR、もしくは−C(=O)NHSOCHである、化合物、または
その薬学的に許容される塩。
【請求項2】
nが、0または1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、HまたはCHである、請求項に記載の化合物。
【請求項4】
−(CH−Rが、H、CH、またはCHCHである、請求項1〜のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
が、Hである、請求項1〜のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
が、クロロである、請求項1〜のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
が、Hである、請求項1〜のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
が、Hである、請求項1〜のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
及びRが、Hである、請求項1〜のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
が、フルオロである、請求項1〜のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
、R、及びR10の各々が、Hである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
及びRが個別に、H、CH、またはCHCHである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
及びRが個別に、H、ハロゲン、OH、CH、CHCH、またはCHOHである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
及びRが、FとF、HとH、OHとCH、OHとH、CHとCH、CHとOH、HとOH、CHCHとCHCH、またはCHOHとCHOHである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
及びRが、環Bと共に
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】
及び
【化11】
を形成する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
が、−C(=O)OH、−C(=O)NH、または−C(=O)NHSOCHである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
【化12】
及び
【化13】
からなる群から選択される、化合物。
【請求項18】
(a)請求項1に記載の化合物、ならびに(b)賦形剤及び/または薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項19】
過剰増殖疾患の治療薬であって、請求項1に記載の化合物を有効成分として含む、治療薬。
【請求項20】
前記過剰増殖疾患が、癌である、請求項19に記載の治療薬。
【請求項21】
過剰増殖疾患の治療のための薬剤の製造における、請求項1〜17のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MDM2及びMDM2関連タンパク質の阻害剤、ならびにMDM2及びMDM2関連タンパク質の阻害が利益を提供する状態及び疾患を治療する治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
侵襲性癌細胞表現型は、細胞内シグナル伝達経路の調節解除につながる様々な遺伝的及び後成的変化の結果である(Ponder,Nature 411:336(2001))。癌細胞は典型的には、アポトーシスのプログラムを実行できず、正常なアポトーシス機序における欠陥に起因する適切なアポトーシスの欠如が癌の特徴である(Lowe et al.,Carcinogenesis 21:485(2000))。正常なアポトーシス機序における欠陥に起因する癌細胞のアポトーシスのプログラムの実行不能は、化学療法、放射線、または免疫療法により誘導されるアポトーシスに対する耐性の増加にしばしば関連する。アポトーシスの欠陥に起因する、異なる起源のヒト癌の、現在の治療プロトコルに対する初回または獲得耐性は、現在の癌治療における主な問題である(Lowe et al.,Carcinogenesis 21:485(2000)、Nicholson,Nature 407:810(2000))。したがって、癌患者の生存及び生活の質を改善するための新しい分子標的特異的抗癌治療の設計及び開発を目的とする現在及び今後の取り組みは、アポトーシスに耐性の癌細胞を特異的に標的とする戦略を含まなければならない。
【0003】
p53腫瘍抑制因子は、細胞周期の進行、老化、アポトーシスを制御する際に中心的役割を果たす(Vogelstein et al.,Nature 408:307(2000)、Goberdhan,Cancer Cell 7:505(2005))。MDM2及びp53は自己調節フィードバックループの一部である(Wu et al.,Genes Dev.7:1126(1993))。MDM2はp53により転写活性化され、MDM2は、少なくとも3つの機構によりp53活性を阻害する(Wu et al.,Genes Dev.7:1126(1993))。第1に、MDM2タンパク質はp53トランス活性化ドメインに直接結合し、それによりp53媒介トランス活性化を阻害する。第2に、MDM2タンパク質は核外輸送シグナル配列を含有し、p53への結合時にp53の核外輸送を誘導し、p53が標的DNAに結合するのを阻止する。第3に、MDM2タンパク質はE3ユビキチンリガーゼであり、p53への結合時にp53の分解を促進することができる。
【0004】
MDM2の高親和性ペプチド系阻害剤が過去に成功裏に設計されたが(Garcia−Echeverria et al.,Med.Chem.43:3205(2000))、これらの阻害剤は、それらの不十分な細胞透過性及びインビボ生物学的利用能のため、好適な治療用分子ではない。ここ数年、強力な非ペプチド小分子MDM2阻害剤の発見が報告されている。例えば、米国特許第7,851,626号、第8,088,815号、第7,759,383号、第7,737,174号、及び第8,629,141号、米国特許出願公開第2012/0046306号、第2010/0152190号、第2011/0112052号、第2012/0122947号、国際特許出願公開第WO2011/153509号、第WO2013/049250号、文献Vassilev et al.Science 2004,303,844−48、Vu,et al.ACS Med.Chem.Lett.,2013,4(5),466−69、Zhang,et al.ACS Med.Chem.Lett.,2014,5(2),124−27、Ding et.al.,J.Med.Chem.,2013,56(14),5979−83、Shu,et al.Org.Process Res.Dev.,2013,17(2),247−56、Zhao,et al.J.Med.Chem.,2013,56(13),5553−61、Zhao,et al.J.Am.Chem.Soc.,2013,135(19),7223−34、Sun et al.J.Med.Chem.,2014,57(4),1454−72、Turiso et al.,J.Med.Chem.,2013,56(10),4053−70、及びRew et al.J.Med.Chem.,2012,55(11),4936−54)を参照されたい。これらの主な進歩にもかかわらず、治療用途において阻害剤の使用を可能にする好適な生理化学的及び薬理学的特性を有する強力な非ペプチドMDM2阻害剤を特定する必要性が尚も存在する。
【0005】
本発明はMDM2−p53相互作用を阻害し、したがって治療用途のためにp53及びp53関連タンパク質の機能を活性化するように設計された化合物を提供する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、MDM2及びMDM2関連タンパク質の阻害剤、これらの阻害剤を含む組成物、ならびにMDM2及びMDM2関連タンパク質活性の阻害が利益を提供する状態及び疾患の治療処置において阻害剤を使用する方法を目的とする。
【0007】
したがって、本発明は、化学溶液安定性における改善を示すだけでなく、ヒト骨肉腫の動物モデルにおける完全な腫瘍縮小の達成を含む、予想外の改善された抗腫瘍活性も呈する構造式(I)の化合物を提供する。
【0008】
より具体的には、本発明は、構造式(I):
【化1】
【0009】
を有する化合物であって、式中、
【0010】
【化2】
が、
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】
、及び
【化7】
からなる群から選択され、
【0011】
Bが、C4−7炭素環であり、
【0012】
が、H、置換もしくは非置換C1−4アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、OR、またはNRであり、
【0013】
nが、0、1、または2であり、
【0014】
、R、R、R、R、R、R、及びR10が独立して、H、F、Cl、CH、及びCFからなる群から選択され、
【0015】
が、
【化8】
または
【化9】
であり、
【0016】
が、水素または置換もしくは非置換C1−4アルキルであり、
【0017】
が、水素または置換もしくは非置換C1−4アルキルであり、
【0018】
及びRが、環Bの1つの炭素原子上の置換基であり、
【0019】
が、H、C1−3アルキル、C1−3アルキレンOR、OR、またはハロであるか、
【0020】
が、H、C1−3アルキル、C1−3アルキレンOR、OR、またはハロであるか、あるいは
【0021】
及びRが、それらが結合する炭素と共に、任意に酸素原子を含有する4〜6員スピロ置換基を形成し、
【0022】
が、−C(=O)OR、−C(=O)NRもしくは−C(=O)NHSOCHである、化合物、または
【0023】
その薬学的に許容される塩を目的とする。
【0024】
一実施形態では、本発明は、治療有効量の構造式(I)の化合物を、それを必要とする個体に投与することにより状態または疾患を治療する方法を提供する。関心の疾患または状態、例えば癌または過剰増殖障害は、MDM2及びMDM−2関連タンパク質を阻害することにより治療可能である。
【0025】
構造式(I)の化合物は、p53またはp53関連タンパク質とMDM2またはMDM2関連タンパク質との間の相互作用を阻害する。したがって、別の実施形態では、細胞を構造式(I)の化合物と接触させることを含む、機能性p53またはp53関連タンパク質を含有する細胞において老化、細胞周期停止、及び/またはアポトーシスを誘導するための方法が提供される。
【0026】
また別の実施形態は、構造式(I)の化合物を患者に投与することを含む、患者の過剰増殖疾患、例えば癌、例えば副腎皮質癌、進行癌、肛門癌、再生不良性貧血、胆管癌、膀胱癌、骨癌、骨転移、成人脳/CNS腫瘍、小児脳/CNS腫瘍、乳癌、男性乳癌、小児癌、原発不明癌、キャッスルマン病、子宮頸癌、結腸/直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング腫瘍、眼癌、胆嚢癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、妊娠性絨毛性疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭及び下咽頭癌、成人の急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、小児白血病、肝臓癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肺カルチノイド腫瘍、皮膚リンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔及び副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、小児非ホジキンリンパ腫、口腔及び中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、成人軟組織癌肉腫、基底及び扁平細胞皮膚癌、黒色腫皮膚癌、小腸癌、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ワンデンストレーム高ガンマグロブリン血症、またはウィルムス腫瘍を治療、寛解、または阻止する方法を提供することである。
【0027】
本発明の別の実施形態は、(a)構造式(I)のMDM2阻害剤、ならびに(b)賦形剤及び/または薬学的に許容される担体を含む、組成物を提供することである。
【0028】
本発明の別の実施形態は、構造式(I)の化合物及び第2の治療活性剤を含む組成物を、MDM2及びMDM2関連タンパク質の阻害が利益を提供する疾患または状態に関して個体を治療する方法に利用することである。
【0029】
別の実施形態では、化学療法薬及び治療の毒性副作用から哺乳類の正常な(例えば、非過剰増殖)細胞を保護する方法が提供される。この方法は、哺乳類に、または治療有効量の構造式(I)の1つ以上の化合物を投与することを含む。
【0030】
更なる実施形態では、本発明は、関心の疾患または状態、例えば癌を治療するための薬剤の製造業者に、構造式(I)のMDM2阻害剤を含む組成物及び任意の第2の治療薬の使用を提供する。
【0031】
本発明のまた別の実施形態は、(a)容器、(b1)構造式(I)のMDM2阻害剤を含むパッケージ化された組成物、及び任意に(b2)関心の疾患または状態の治療に有用な第2の治療薬を含むパッケージ化された組成物、ならびに(c)疾患または状態の治療において、同時にまたは順次投与される、組成物の使用方法を含むパッケージ添付文書を含むヒト薬学的用途のためのキットを提供することである。
【0032】
構造式(I)のMDM2阻害剤及び第2の治療薬、例えば抗癌剤は、単一単位用量として一緒にまたは複数単位用量として別個に投与することができ、構造式(I)のMDM2阻害剤は第2の治療薬の前に投与されるか、またはその逆も同様である。1用量以上の構造式(I)のMDM2阻害剤及び/または1用量以上の第2の治療薬が投与され得ることが想定される。
【0033】
一実施形態では、構造式(I)のMDM2阻害剤及び第2の治療薬は同時投与される。関連する実施形態では、構造式(I)のMDM2阻害剤及び第2の治療薬は、単一組成物からまたは別個の組成物から投与される。更なる実施形態では、構造式(I)のMDM2阻害剤及び第2の治療薬は順次投与される。本発明において使用されるとき、構造式(I)のMDM2阻害剤は、用量当たり約0.005〜約500ミリグラム、用量当たり約0.05〜約250ミリグラム、または用量当たり約0.5〜約100ミリグラムの量で投与され得る。
【0034】
本発明のこれら及び他の実施形態ならびに特徴は、以下の好ましい実施形態の詳細な説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1A】1:1のCHCN/HOにおける化合物AA−MI−061、化合物番号2、化合物番号7、及び化合物番号8の%純度対時間(日数)のグラフを示す。
図1B】1:1のMeOH/HOにおける化合物AA−MI−061、化合物番号2、化合物番号7、及び化合物番号8の%純度対時間(日数)のグラフを示す。
図1C】細胞培養培地における化合物AA−MI−061、化合物番号2、化合物番号7、及び化合物番号8の%純度対時間(日数)のグラフを示す。
図2A】SJSA−1異種移植片モデルにおける腫瘍縮小に関する様々な試験化合物の有効性を示す平均腫瘍体積(mm)対時間(日数)のグラフを示す。
図2B】SJSA−1異種移植片モデルにおける腫瘍縮小に関する様々な試験化合物の有効性を示す平均腫瘍体積(mm)対時間(日数)のグラフを示す。
図3】SJSA−1異種移植片モデルにおける腫瘍縮小に関する化合物番号8の様々な用量及び用量スケジュールの有効性を示す平均腫瘍体積(mm)対時間(日数)のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
スピロ−オキシインドール系拮抗薬は、p53−MDM2相互作用の阻害剤のクラスであり、米国特許第7,759,383号、第7,737,174号、及び第8,629,141号に記載されている。一部のスピロ−オキシインドールMDM2阻害剤はプロトン性溶液中で1つのジアステレオマーから3つの他のジアステレオマーに迅速に変換される(Zhao,et al.J Am Chem Soc.2013,135(19):7223−34)。米国特許第8,629,141号に説明されるものなど、スピロ−オキシインドールMDM2阻害剤の化学安定性を改善するための取り組みがなされた。例えば、スキーム1に示される化合物は、米国特許第8,629,141号のMDM2阻害剤のように、あまり強力ではないジアステレオマーから、より強力で化学的により安定したジアステレオマーに迅速に異性化することが示された。
【化10】
【0037】
スキーム1.MDM2に対してあまり強力ではないジアステレオマーからのMDM2に対してより強力なジアステレオマーへの変換
【0038】
AA−MI−061などにあるように、カルボキサミド置換基Rが安息香酸である場合、化合物は、SJSA−1異種移植片を保有するSCIDマウスにおいて、MDM2に対して高結合親和性、SJSA−1細胞において強力な細胞成長阻害、及び90%腫瘍縮小(100mg/kg、1回、毎日投薬)を示した(図2A)。安息香酸カルボキサミド置換基を含有するいくつかの他のクラスのスピロ−オキシインドール化合物(米国特許出願公開2011,第US20110130398号、Shu et al.Org.Process Res.Dev.,2013,17(2),247−56、及びZhang et al.ACS Med.Chem.Lett.,2014,5(2),124−27)及びピロリジン(Ding et.al J.Med.Chem.,2013,56(14),5979−83及び米国特許出願公開第US20100152190号、2010)は、MDM2に対して高結合親和性、動物において良好な経口薬物動態、及びヒト癌の動物モデルにおいて強い抗腫瘍活性を示した。これらは我々に新しいMDM2阻害剤設計のための安息香酸基の代わりを探究することを促した(スキームII)。
【化11】
【0039】
スキーム2.安息香酸基の代わりを用いて設計された新しいMDM2阻害剤
【0040】
本発明によると、AA−MI−061におけるカルボキサミドの安息香酸置換基は、それぞれ、化合物番号1及び化合物番号2を生成したビシクロ[1.1.1]ペンタン−1−カルボン酸基またはビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボン酸基などの非古典的安息香酸の生物学的等価体で置換された(J.Med.Chem.2012,55,3414)(スキーム2)。化合物番号1はMDM2タンパク質に対して高結合親和性を維持したが、AA−MI−061と比較して、SJSA−1細胞において細胞成長阻害活性の効力が減少した。一方、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボン酸基を含有する化合物番号2は、MDM2タンパク質に対して高結合親和性、及びSJSA−1細胞においてAA−MI−061に関して得られた効力と類似する強力な細胞成長阻害活性を維持した。しかしながら、化合物番号2は依然として適度な抗腫瘍活性のみを示し、腫瘍縮小を達成することなくSJSA−1異種移植片腫瘍を保有するマウスにおける成長を単に阻害したにすぎなかった(図2B)。
【0041】
動物における化合物番号2の抗腫瘍活性を改善する取り組みにおいて、ピロリジン窒素のアルキル化は化合物番号7及び8を含む一連の化合物を生成した。化合物番号7及び番号8はMDM2に対して高結合親和性を維持し、溶液中で安定していた(図1)。意外にも、化合物番号7及び番号8は、SJSA−1異種移植片腫瘍を保有するマウスにおいて、化合物番号2よりも非常に強い抗腫瘍活性を示した。具体的には、化合物番号7及び番号8は、SJSA−1異種移植片腫瘍を保有するマウスにおいて、完全かつ持続的腫瘍縮小を示した(図2B)。
【0042】
したがって、本明細書において、p53またはp53関連タンパク質とMDM2またはMDM2関連タンパク質との間の相互作用を阻害する構造式(I)の化合物が提供される。MDM2またはMDM2関連タンパク質のp53またはp53関連タンパク質に対する負の作用を阻害することにより、本化合物はアポトーシス及び/または細胞周期停止の誘導因子に対して細胞を感作させる。一実施形態では、本化合物はアポトーシス及び/または細胞周期停止を誘導する。したがって、本明細書において、アポトーシス及び/または細胞周期停止の誘導因子に対して細胞を感作させる方法、ならびに細胞においてアポトーシス及び/または細胞周期停止を誘導する方法も提供される。本方法は、単独でまたは追加の薬剤、例えばアポトーシスの誘導因子または細胞周期攪乱物質との組み合わせのいずれかで、構造式(I)を有する1つ以上の化合物と細胞を接触させることを含む。
【0043】
本明細書で使用されるとき、用語「MDM2関連タンパク質」は、MDM2と少なくとも25%配列相同性を有し、p53またはp53関連タンパク質と相互作用し、それを阻害するタンパク質を指す。MDM2関連タンパク質の例としてはMDMXが挙げられるが、これに限定されない。
【0044】
本明細書で使用されるとき、用語「機能性p53」は、正常、高い、または低いレベルで発現された野生型p53、及び野生型p53の活性の少なくとも約5%、例えば、野生型活性の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%以上を維持するp53の突然変異体または対立遺伝子変異体を指す。
【0045】
本明細書で使用されるとき、用語「p53関連タンパク質」は、p53と少なくとも25%配列相同性を有する、腫瘍抑制因子活性を有する、及びMDM2またはMDM2関連タンパク質との相互作用により阻害されるタンパク質を指す。p53関連タンパク質の例としてはp63及びp73が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
用語「疾患」または「状態」は、概して、病理学的状態または機能と見なされ、特定の徴候、症状、及び/または機能不全の形態で自身を顕在化することができる障害及び/または異常を意味する。以下に示されるように、構造式(I)の化合物は、p53及びp53関連タンパク質とMDM2及びMDM2関連タンパク質との間の相互作用の強力な阻害剤であり、このような阻害が利益を提供する疾患及び状態を治療する際に使用され得る。
【0047】
用語「MDM2またはMDM2関連タンパク質の阻害が利益を提供する疾患または状態」は、p53またはp53関連タンパク質とMDM2及びMDM2関連タンパク質との間の相互作用の阻害が、例えば、その疾患もしくは状態、またはMDM2もしくはMDM2関連タンパク質阻害剤により治療されることが既知である疾患もしくは状態の発症、進行、発現に重要または必要である状態に関係がある。このような状態の例としては癌が挙げられるが、これに限定されない。当業者は、例えば、特定の化合物の活性を評価するために便宜上使用することができるアッセイにより、任意の特定の細胞型に関して、化合物がMDM2もしくはMDM2関連タンパク質により媒介された疾患または状態を治療するかを容易に決定することができる。
【0048】
本明細書で使用されるとき、用語「過剰増殖疾患」は、動物における増殖中の局所細胞集団が正常な成長の通常の限界により支配されない任意の状態を指す。過剰増殖障害の例としては、腫瘍、新生物、リンパ腫、白血病などが挙げられる。新生物は、浸潤または転移を受けない場合良性であり、これらのいずれかを受ける場合悪性と言われる。「転移性」細胞は、細胞が隣接する身体構造を浸潤することができることを意味する。過形成は、構造または機能において顕著な変化なしに組織または臓器の細胞数の増加を伴う細胞増殖の形態である。異形成は、ある種類の完全に分化した細胞が別の種類の分化した細胞と置き換わる制御された細胞成長の形態である。
【0049】
活性化リンパ球系細胞の病理学的成長は、多くの場合、自己免疫障害または慢性炎症状態を引き起こす。本明細書で使用されるとき、用語「自己免疫障害」は、生物が生物の自身の分子、細胞、もしくは組織を認識する抗体または免疫細胞を生成する任意の状態を指す。自己免疫障害の非限定的な例としては、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、ベルジェ病もしくはIgA腎症、セリアック病、慢性疲労症候群、クローン病、皮膚筋炎、線維筋痛、移植片対宿主病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、特発性血小板減少性紫斑病、扁平苔癬、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、リウマチ熱、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎、白斑などが挙げられる。
【0050】
本明細書で使用されるとき、用語「老化」は、非癌性二倍体細胞が分裂する能力を失い、一部テロメア機能不全または短縮を特徴とする現象を指す。
【0051】
本明細書で使用されるとき、用語「感作させる」及び「感作」は、第1の治療薬(例えば本明細書に提供される化合物)の投与によって、動物または動物内の細胞を、第2の治療薬の生物学的作用に対してより感受性またはより応答性にする(例えば、細胞分裂、細胞成長、増殖、浸潤、血管新生、壊死、もしくはアポトーシスを含むがこれらに限定されない細胞機能の態様の促進または遅延)ことを指す。第1の薬剤の標的細胞に対する感作作用は、第1の薬剤の投与を伴うまたは伴わずに、第2の薬剤の投与時に観察される意図される生物学的作用(例えば、細胞成長、増殖、浸潤、血管新生、もしくはアポトーシスを含むがこれらに限定されない細胞機能の態様の促進または遅延)における相違として測定され得る。感作した細胞の応答は、第1の薬剤の不在化における応答に対して少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約450%、または少なくとも約500%増加し得る。
【0052】
本明細書で使用されるとき、用語「アポトーシスの調節障害」は、細胞がアポトーシスを介した細胞死を受ける能力(例えば素因)における任意の異常を指す。アポトーシスの調節障害は様々な状態に関連するか、またはそれにより誘導され、その非限定的な例としては、自己免疫障害(例えば、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、移植片対宿主病、重症筋無力症、またはシェーグレン症候群)、慢性炎症状態(例えば、乾癬、喘息、またはクローン病)、過剰増殖障害(例えば、腫瘍、B細胞リンパ腫、またはT細胞リンパ腫)、ウイルス感染(例えば、ヘルペス、パピローマ、またはHIV)、ならびに変形性関節症及びアテローム性動脈硬化症などの他の状態が挙げられる。調節障害がウイルス感染により誘導されるか、またはそれに関連する場合、ウイルス感染は、調節障害が生じるか、または観察される時点で検出可能な場合も、検出不可能な場合もある。つまり、ウイルス誘導性調節障害はウイルス感染の症状が消失した後でも生じ得る。
【0053】
本明細書で使用されるとき、用語「新生物疾患」は、良性(非癌性)または悪性(癌性)のいずれかである細胞の任意の異常成長を指す。
【0054】
本明細書で使用されるとき、用語「正常な細胞」は、異常成長または分裂を受けていない細胞を指す。正常な細胞は非癌性であり、いずれの過剰増殖疾患または障害の一部ではない。
【0055】
本明細書で使用されるとき、用語「抗新生物剤」は、標的(例えば悪性)新生物の増殖、成長、または拡大を遅延する任意の化合物を指す。
【0056】
本明細書で使用されるとき、用語「アポトーシス調節剤」は、アポトーシスを調節する(例えば、阻害、減少、増加、促進)際に関与する薬剤を指す。アポトーシス調節剤の例としては、限定されないが、Fas/CD95、TRAMP、TNF RI、DR1、DR2、DR3、DR4、DR5、DR6、FADD、及びRIPなどのデスドメインを含むタンパク質が挙げられる。アポトーシス調節剤の他の例としては、TNFα、Fasリガンド、Fas/CD95に対する抗体、及び他のTNFファミリー受容体、TRAIL(Apo2リガンドまたはApo2L/TRAILとしても知られる)、TRAIL−R1またはTRAIL−R2に対する抗体、Bcl−2、p53、BAX、BAD、Akt、CAD、PI3キナーゼ、PP1、及びカスパーゼタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。調節剤は広くTNFファミリー受容体及びTNFファミリーリガンドの作動薬及び拮抗薬を含む。アポトーシス調節剤は可溶性であるか、または膜結合(例えばリガンドまたは受容体)されてもよい。アポトーシス調節剤は、TNFまたはTNF関連リガンド、特にTRAMPリガンド、Fas/CD95リガンド、TNFR−1リガンド、またはTRAILなどのアポトーシスの誘導因子であるものを含む。
【0057】
用語「第2の治療薬」は、構造式(I)のMDM2阻害剤とは異なり、関心の疾患または状態を治療することが既知である治療薬を指す。例えば、癌が関心の疾患または状態である場合、第2の治療薬は抗癌剤であり得る。
【0058】
本明細書で使用されるとき、用語「抗癌剤」は、癌などの過剰増殖疾患の治療に使用される(例えば哺乳類、特にヒトにおいて)任意の治療薬(例えば、化学療法剤化合物及び/または分子治療化合物)、アンチセンス療法、放射線療法、または外科的介入を指す。
【0059】
本明細書で使用されるとき、用語「治療する」「治療(treating)」、「治療(treatment)」などは、それに関連する疾患もしくは状態、及び/または症状の排除、減少、あるいは寛解を指す。除外されないが、疾患または状態の治療はそれに関連する疾患、状態、または症状が完全に排除されることを必要としない。本明細書で使用されるとき、用語「治療する」「治療(treating)」、「治療(treatment)」などは、疾患もしくは状態の再発症、または疾患もしくは状態の再発を有しないが、そのリスクにあるか、またはそれに感受性である対象における、疾患もしくは状態の再発症、または以前に制御された疾患もしくは状態の再発の確率の減少を指す、「予防治療」を含み得る。用語「治療する」及び同義語は、治療有効量の本発明の化合物を、このような治療を必要とする個体に投与することを想到する。
【0060】
本発明の意味の範囲内で、「治療」は、再発予防または段階予防、ならびに急性もしくは慢性の徴候、症状、及び/または機能不全の治療も含む。治療は、例えば症状を抑制するために、症候的に適応され得る。治療は、例えば維持療法の文脈内で、短期間にわたってもたらされ得る、中期にわたって適応され得る、または長期治療であり得る。
【0061】
本明細書で使用されるとき、用語「治療有効量」または「有効量」は、本発明の方法により投与されたとき、関心の状態または疾患の治療のための活性成分を、それを必要とする個体に有効に送達するのに十分である活性成分の量を指す。癌または他の増殖障害の場合、治療有効量の薬剤は、望ましくない細胞増殖を減少させる(すなわち、ある程度遅延させ、好ましくは停止させる)、癌細胞の数を減少させる、腫瘍のサイズを減少させる、抹消臓器中への癌細胞浸潤を阻害する(すなわち、ある程度遅延させ、好ましくは停止させる)、腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度遅延させ、好ましくは停止させる)、腫瘍成長をある程度阻害する、p53及びp53関連タンパク質とのMDM2及びMDM2関連タンパク質の相互作用を減少させる、ならびに/またはある程度癌と関連する症状の1つ以上を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%軽減することができる。投与した化合物または組成物が既存の癌細胞の成長を阻止する、及び/またはそれを死滅させる範囲において、細胞増殖抑制性及び/または細胞毒性であり得る。
【0062】
用語「容器」は、任意の収容部及び密閉部を意味し、したがって、薬学的生成物の保管、輸送、調剤及び/または分配に好適である。
【0063】
用語「添付文書」は、医師、薬剤師、及び患者が生成物の使用に関して情報に基づいた決定を行うことを可能にするために必要とされる安全性及び有効性データと共に、生成物をどのように投与するかの説明を提供する薬学的生成物に付随する情報を意味する。パッケージ添付文書は一般的に、薬学的生成物の「ラベル」と見なされる。
【0064】
「並行投与」、「組み合わせで投与される」、「同時投与」、及び類似する句は、2つ以上の薬剤が治療される対象に並行して投与されることを意味する。「並行して」とは、各薬剤が同時にまたは順次に、異なる時間点で任意の順番で投与されることを意味する。しかしながら、同時投与されない場合、それらは所望の治療作用を提供するように順番にかつ十分に近い時間で個別に投与され、同時に作用することができることを意味する。例えば、構造式(I)のMDM2阻害剤は、第2の治療薬と同時にまたは異なる時間点で任意の順番で順次投与され得る。本MDM2阻害剤及び第2の治療薬は、任意の適切な形態で、及び任意の好適な経路により別個に投与され得る。本MDM2阻害剤及び第2の治療薬が並行して投与されない場合、それらは任意の順番でそれを必要とする対象に投与され得ることを理解する。例えば、本MDM2阻害剤は、それを必要とする個体に第2の治療薬の治療法(例えば放射線療法)を施す前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前)、それと同時に、またはその後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間後)に投与され得る。様々な実施形態では、構造式(I)のMDM2阻害剤及び第2の治療薬は、1分間隔、10分間隔、30分間隔、1時間未満の間隔、1時間間隔、1時間〜2時間間隔、2時間〜3時間間隔、3時間〜4時間間隔、4時間〜5時間間隔、5時間〜6時間間隔、6時間〜7時間間隔、7時間〜8時間間隔、8時間〜9時間間隔、9時間〜10時間間隔、10時間〜11時間間隔、11時間〜12時間間隔、24時間以下の間隔、または48時間以下の間隔で投与される。一実施形態では、併用療法の構成成分は1分〜24時間間隔で投与される。
【0065】
本明細書で使用されるとき、用語「パルス投与」、「パルス用量投与」、または「パルス投薬」は、構造式(I)の化合物を患者に間欠投与(すなわち、連続的ではない)することを指す。本開示において有用なパルス用量投与レジメンは、治療有効量の構造式(I)の化合物を、それを必要とする患者に提供する任意の不連続投与レジメンを包含する。パルス投薬レジメンは、連続投薬レジメンに使用されるであろう構造式(I)の化合物の用量と等しい、それより低い、または高い用量を使用することができる。構造式(I)の化合物のパルス用量投与の利点は、安全性の改善、毒性の減少、曝露の増加、有効性の増加、及び患者のコンプライアンスの増加を含むが、これらに限定されない。これらの利点は、構造式(I)の化合物が単一薬剤として投与されるとき、または1つ以上の追加の抗癌剤と組み合わせて投与されるときに理解され得る。構造式(I)の化合物が患者に投与される予定の日に、投与は、例えば1日1回、1日2回、1日3回、1日4回以上の単一用量で、または分割用量で生じ得る。一実施形態では、構造式(I)のものを有する化合物は、投与される予定の日に、1回(QD)または2回(BID)投与される。
【0066】
本発明を説明する文脈における用語「a」、「an」、「the」、及び類似する指示対象の使用(特に、特許請求の範囲の文脈において)は、別途記載のない限り、単数形及び複数形の両方を網羅すると解釈されるものとする。本明細書における値の範囲の詳細説明は、別途記載のない限り、その範囲内に入る各別個の値を単に個別に指す簡略方法として機能し、各別個の値はそこに個別に列挙されるかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に提供される任意の及び全ての例または例示的な用語(例えば「など」)の使用は、別途主張されない限り、本発明をより良く図示することが意図され、本発明の範囲に対する制限ではない。本明細書における用語は、任意の主張されない要素を本発明の実践に必須であると示すものとして解釈されるべきではない。
【0067】
研究は、小分子阻害剤を使用するp53−MDM2相互作用の標的指向が実行可能な癌治療戦略であることを確立した。MDM2阻害剤の先の発見及び初期のデータは、MDM2−p53相互作用の非ペプチド小分子阻害剤が、MDM2及びMDM2関連タンパク質が役割を有する疾患及び状態の治療に多大な治療可能性を有することを示した。
【0068】
本発明は、MDM2−p53相互作用の新しいクラスの強力かつ特異的な阻害剤を目的とする。本化合物は、MDM2−p53相互作用の強力な拮抗薬として機能する。したがって、本発明のMDM2阻害剤は、このような治療を必要とする対象における、癌を含む様々な疾患及び状態の治療に有用である。治療有効量の本化合物を、このような治療を必要とする対象に投与することを含む、望ましくない過剰増殖細胞を有する対象を治療する方法も提供される。治療有効量の構造式(I)の化合物を、望ましくない増殖している細胞を特徴とする状態を発症するリスクにある対象に投与するステップを含む、対象における癌などの望ましくない増殖している細胞の増殖を阻止する方法も提供される。
【0069】
本発明は、構造式(I):
【化12】
【0070】
を有するMDM2阻害剤であって、式中、
【0071】
【化13】
が、
【化14】

【化15】

【化16】

【化17】
、及び
【化18】
からなる群から選択され、
【0072】
Bが、C4−7炭素環であり、
【0073】
が、H、置換もしくは非置換C1−4アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、OR、またはNRであり、
【0074】
nが、0、1、または2であり、
【0075】
、R、R、R、R、R、R、及びR10が独立して、H、F、Cl、CH、及びCFからなる群から選択され、
【0076】
が、
【化19】
または
【化20】
であり、
【0077】
が、水素または置換もしくは非置換C1−4アルキルであり、
【0078】
が、水素または置換もしくは非置換C1−4アルキルであり、
【0079】
及びRが、環Bの1つの炭素原子上の置換基であり、
【0080】
が、H、C1−3アルキル、C1−3アルキレンOR、OR、またはハロであるか、
【0081】
が、H、C1−3アルキル、C1−3アルキレンOR、OR、またはハロであるか、あるいは
【0082】
及びRが、それらが結合する炭素と共に、任意に酸素原子を含有する4〜6員スピロ置換基を形成し、
【0083】
が、−C(=O)OR、−C(=O)NR、または−C(=O)NHSOCHである、MDM2阻害剤または
【0084】
その薬学的に許容される塩を目的とする。
【0085】
構造式(I)の化合物は、MDM2−p53相互作用を阻害し、様々な疾患及び状態の治療に有用である。特に、構造式(I)の化合物は、MDM2及びMDM2関連タンパク質の阻害が利益を提供する疾患または状態、例えば癌及び増殖性疾患の治療方法に有用である。本方法は、治療有効量の構造式(I)の化合物を、それを必要とする個体に投与することを含む。本方法は、構造式(I)の化合物に加えて、第2の治療薬を個体に投与することも包含する。第2の治療薬は、それを必要とする個体を冒している疾患または状態の治療に有用である薬物、例えば特定の癌の治療に有用であることが知られている抗癌剤から選択される。
【0086】
本明細書で使用されるとき、用語「アルキル」は、直鎖及び分枝鎖飽和C1−10炭化水素基を指し、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、及び2−エチルブチルを含むが、これらに限定されない。用語Cm−nは、アルキル基が「m」〜「n」個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。用語「アルキレン」は、置換基を有するアルキル基を指す。アルキル(例えばメチル)またはアルキレン(例えば−CH−)基は、例えば、独立して選択されたハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、ニトロ、シアノ、アルキルアミノ、またはアミノ基のうちの1つ以上、典型的には1〜3つで置換され得る。
【0087】
本明細書で使用されるとき、用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードと定義される。
【0088】
用語「ヒドロキシ」は−OHと定義される。
【0089】
用語「アルコキシ」は−ORと定義され、Rはアルキルである。
【0090】
用語「アミノ」は−NHと定義され、用語「アルキルアミノ」は−NRと定義され、少なくとも1つのRはアルキルであり、第2のRはアルキルまたは水素である。
【0091】
用語「カルバモイル」は−C(=O)NRと定義される。
【0092】
用語「カルボキシ」は−C(=O)OHと定義されるか、またはその塩である。
【0093】
用語「ニトロ」は−NOとして定義される。
【0094】
用語「シアノ」は−CNと定義される。
【0095】
用語「トリフルオロメチル」は−CFと定義される。
【0096】
用語「トリフルオロメトキシ」は−OCFと定義される。
【0097】
本明細書で使用されるとき、
【化21】
などの基は
【化22】
の省略形である。
【0098】
本明細書で使用されるとき、用語「アリール」は、単環式または多環式芳香族基、好ましくは単環式または二環式芳香族基を指す。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、フルオレニル、アズレニル、アンスリル、フェナンスリル、ピレニル、ビフェニル、及びテルフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。アリールは、二環式及び三環式炭素環も指し、ここで、1つの環は芳香族であり、他は飽和、部分的に不飽和、または芳香族、例えば、ジヒドロナフチル、インデニル、インダニル、またはテトラヒドロナフチル(テトラリニル)である。別途記載のない限り、アリール基は、置換されないか、または例えば、ハロ、アルキル、アルケニル、−OCF、−NO、−CN、−NC、−OH、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、−COH、−COアルキル、−OCOアルキル、アリール、及びヘテロアリールから独立して選択される1つ以上、特に1〜4つの基で置換され得る。
【0099】
本明細書で使用されるとき、用語「複素環式」は、ヘテロアリール及びヘテロシクロアルキル環系を指す。
【0100】
本明細書で使用されるとき、用語「ヘテロアリール」は、1つまたは2つの芳香族環を含有し、芳香族環に少なくとも1つの窒素、酸素、もしくは硫黄原子を含有する、単環式または二環式環系を指す。ヘテロアリール基の各環は、1個もしくは2個のO原子、1個もしくは2個のS原子、及び/または1〜4個のN原子を含有し得るが、但し、各環のヘテロ原子の総数が4個以下であり、各環が少なくとも1個の炭素原子を含有するものとする。ある特定の実施形態では、ヘテロアリール基は、5〜20個、5〜15個、または5〜10個の環原子を有する。単環式ヘテロアリール基の例としては、フラニル、イミダゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、テトラゾリル、トリアジニル、及びトリアゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。二環式ヘテロアリール基の例としては、ベンゾフラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾイソキサゾリル、ベンゾピラニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾキサゾリル、フロピリジル、イミダゾピリジニル、イミダゾチアゾリル、インドリジニル、インドリル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソベンゾチエニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、ナフチリジニル、オキサゾロピリジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピリドピリジニル、ピロロピリジル、キノリニル、キノキサリニル、キアゾリニル、チアジアゾロピリミジル、及びチエノピリジルが挙げられるが、これらに限定されない。別途記載のない限り、ヘテロアリール基は、置換されないか、または例えば、ハロ、アルキル、アルケニル、−OCF、−NO、−CN、−NC、−OH、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、−COH、−COアルキル、−OCOアルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択される1つ以上、特に1〜4つの置換基で置換され得る。
【0101】
本明細書で使用されるとき、用語「シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルを含む、3〜8個の炭素原子を含有する単環式もしくは二環式の飽和または部分的に不飽和の環系を意味し、任意に、例えば、独立して選択されたハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、ニトロ、シアノ、アルキルアミノ、またはアミノ基のうちの1つ以上、典型的には1〜3つで置換される。
【0102】
本明細書で使用されるとき、用語「ヘテロシクロアルキル」は、原子のうちの1〜5個が窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択され、残りの原子が炭素である、4〜12個の総原子を含有する単環式もしくは二環式の飽和または部分的に不飽和の環系を意味する。ヘテロシクロアルキル基の非限定的な例は、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ジヒドロピロリル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロピリジニル、オキサシクロヘプチル、ジオキサシクロヘプチル、チアシクロヘプチル、ジアザシクロヘプチルであり、各々は任意に、環の原子上で独立して選択されたハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、シアノ、アミノ、カルバモイル、ニトロ、カルボキシ、C2−7アルケニル、C2−7アルキニルなどのうちの1つ以上、典型的には1〜3つで置換される。
【0103】
いくつかの好ましい実施形態では、
【化23】

【化24】
または
【化25】
である。
【0104】
他の実施形態では、Bは
【化26】
または
【化27】
である。
【0105】
様々な実施形態では、nは0または1であり、RはHまたはCHである。様々な実施形態では、−(CH−Rは、H、CH、またはCHCHである。
【0106】
様々な実施形態では、RはHである、他の実施形態では、Rはハロ、好ましくはクロロである。また別の実施形態では、RはHであるか、RはHであるか、またはR及びRの両方はHである。
【0107】
いくつかの好ましい実施形態では、Rはハロであり、より好ましくはフルオロである。
【0108】
いくつかの実施形態では、R、R、及びR10の各々はHである。
【0109】
様々な実施形態では、R及びRは個別に、H、CH、またはCHCHである。
【0110】
他の実施形態では、R及びRは個別に、H、ハロ、OH、CH、CHCH、またはCHOHである。いくつかの実施形態では、R及びRは、FとF、HとH、OHとCH、CHとCH、CHとOH、HとOH、CHCHとCHCH、及びCHOHとCHOHである。
【0111】
他の実施形態では、R及びRは、環Bと共にスピロ部分、例えば、
【化28】

【化29】

【化30】

【化31】
、及び
【化32】
を形成する。
【0112】
他の実施形態では、R及びRは、環Bと共に
【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【化44】
、または
【化45】
を形成する。
【0113】
いくつかの実施形態では、Rは、−C(=O)OH、−C(=O)NH、または−C(=O)NHSOCHである。
【0114】
様々な実施形態では、Rは、
【化46】

【化47】

【化48】

【化49】

【化50】
、または
【化51】
である。
【0115】
加えて、本化合物の塩も本発明に含まれ、本明細書において開示される方法において使用され得る。本発明は更に、構造式(I)の化合物の全ての可能な立体異性体及び幾何異性体を含む。本発明は、ラセミ化合物及び任意に活性異性体の両方を含む。構造式(I)の化合物が単一エナンチオマーとして望ましい場合、最終生成物の分割により、または異性体的に(isomerically)純粋な出発原料もしくはキラル補助試薬の使用のいずれかからの立体特異的合成のいずれかにより得ることができ、例えば、Z.Ma et al.,Tetrahedron:Asymmetry,8(6),pages 883−888(1997)を参照されたい。最終生成物の分割、中間体、または出発原料は、当該技術分野において既知の任意の好適な方法により達成することができる。加えて、構造式(I)の化合物の互変異性体が可能な場合において、本発明は化合物の全ての互変異性形態を含むことが意図される。
【0116】
本開示の化合物のいくつかは、立体異性体、すなわち、光学異性体及び配座異性体(または立体構造異性体)を含む、原子の空間配置においてのみ異なる異性体として存在し得る。本開示は、純粋な個々の立体異性体調製物として及び各々の富化調製物の両方、及びこのような立体異性体のラセミ混合物ならびに当業者に周知の方法により分離され得る個々のジアステレオマー及びエナンチオマーの両方の全ての立体異性体を含む。
【0117】
本明細書で使用されるとき、用語「実質的に〜を含まない」は、当業者により日常的に使用される従来の分析方法を用いて確立されるとき、化合物が約25%未満の他の立体異性体、例えばジアステレオマー及び/またはエナンチオマーを含むことを意味する。一実施形態では、他の立体異性体の量は、約24%未満、約23%未満、約22%未満、約21%未満、約20%未満、約19%未満、約18%未満、約17%未満、約16%未満、約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、または約0.5%未満である。
【0118】
約95%以上の所望の立体異性体、例えば約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上を含有する立体異性的に富化した化合物は、本明細書において「実質的に純粋な立体異性体」と称される。
【0119】
約99%以上の所望の立体異性体を含有する立体異性的に富化された化合物は、本明細書において、「純粋な」立体異性体」と称される。任意の立体異性的に富化された化合物の純度は、例えば順相HPLC、逆相HPLC、キラルHPLC、ならびにH及び13C NMRなどの従来の分析方法を用いて決定することができる。
【0120】
本発明の化合物は塩として存在し得る。本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、多くの場合、本発明の方法において好ましい。本明細書で使用されるとき、用語「薬学的に許容される塩」は、構造式(I)の化合物の塩または双性イオン形態を指す。式(I)の化合物の塩は、化合物の最終単離及び精製中に、または別個に、化合物を、限定されないがアルカリ及びアルカリ土類金属イオン、例えばNa、K、Ca2+、及びMg2+などの好適なカチオン、ならびに限定されないがアンモニウム及び置換アンモニウムイオン、例えばNH、NHMe、NHMe、NHMe、及びNMeなどの有機カチオンを有する酸と反応させることにより調製することができる。一価及び二価の薬学的に許容されるカチオンの例としては、例えばBerge et al.J.Pharm.Sci.,66:1−19(1997)に論じられている。
【0121】
構造式(I)の化合物の薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される酸を用いて形成された酸付加塩であり得る。薬学的に許容される塩を形成するために利用され得る酸の例としては、硝酸、ホウ酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、及びリン酸などの無機酸、ならびにシュウ酸、マレイン酸、コハク酸、及びクエン酸などの有機酸が挙げられる。本発明の化合物の塩の非限定的な例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素塩、硫酸塩、重硫酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳硫酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ギ酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、アスコルビン酸塩、イセチオン酸塩、サリチル酸塩、メタンスルホン酸塩、メシチレンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチネート(pectinate)、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンジスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、及びp−トルエンスルホン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、本発明の化合物中に存在する利用可能なアミノ基は、メチル、エチル、プロピル、及びブチルの塩化物、臭化物、及びヨウ化物;ジメチル、ジエチル、ジブチル、及びジアミル硫酸塩;デシル、ラウリル、ミリスチル、及びステリルの塩化物、臭化物、及びヨウ化物;ならびにベンジル及びフェネチル臭化物で四級化され得る。前述を考慮すれば、本明細書に示される本発明の化合物に対するいずれの参照は、構造式(I)の化合物ならびにその薬学的に許容される塩を含むことが意図される。
【0122】
本発明の特定の化合物は以下に記載される構造を有する化合物を含むが、これらに限定されない。
【化52】
【化53】
【0123】
本発明は、構造式(I)の化合物により例示されるように、MDM2及びMDM−2関連タンパク質の阻害が有益な作用を有する様々な疾患及び状態の治療のためのMDM2阻害剤を提供する。一実施形態では、本発明は、治療有効量の構造式(I)の化合物を、それを必要とする個体に投与することを含む、MDM2及びMDM2関連タンパク質の阻害が利益を提供する疾患または状態に罹患する個体を治療する方法に関する。
【0124】
本方法は、癌に罹患する動物または患者の、p53及びp53関連タンパク質(例えばp63、p73)の機能を増加させる治療有効量の薬物(例えば小分子)への曝露が癌細胞または支持細胞の成長を阻害することを想到する。本明細書に提供される本MDM2阻害剤は、p53またはp53関連タンパク質とMDM2またはMDM2関連タンパク質(例えばMDMX)との間の相互作用を阻害する。p53またはp53関連タンパク質とMDM2またはMDM2関連タンパク質との間の相互作用を阻害することによって、癌細胞または支持細胞の成長を阻害し、かつ/または集団としてのこのような細胞を、癌治療薬もしくは放射線療法の細胞死誘導活性に対してより感受性にする。一実施形態では、本明細書に提供されるMDM2阻害剤は、通常はp53の分解を促進するであろうp53−MDM2の相互作用に干渉することによってp53の半減期を延長する。本明細書に提供される化合物は、癌細胞における老化、細胞成長阻害、アポトーシス、及び/もしくは細胞周期停止を誘導するための単一療法として投与されるとき、あるいは癌治療薬もしくは放射線療法単独でのみ治療される動物または患者において、対応する割合の細胞と比較して、大きな割合の癌細胞もしくは支持細胞をアポトーシスプログラムの実行に対して感受性にするように、他の細胞死を誘導するもしくは細胞周期を中断する癌治療薬または放射線療法などの追加の薬剤との時間的関連において投与されるとき(併用療法)のいずれかのとき、複数の癌種類の治療に関する未対応のニーズを満たす。
【0125】
一実施形態では、治療有効量の構造式(I)の1つ以上の化合物及び1つ以上の抗癌剤で患者を治療することにより、化合物または抗癌薬/放射線単独で治療された患者と比較して、このような患者においてより大きな抗腫瘍活性及び臨床利益をもたらす。交互に記述すると、本化合物はp53またはp53関連タンパク質を発現する細胞のアポトーシス閾値を低下させるため、抗癌薬/放射線のアポトーシス誘導活性に応答してアポトーシスプログラムを成功裏に実行する細胞の割合は、本化合物のうちの1つ以上と組み合わせて使用されるときに増加するだろう。したがって、構造式(I)の化合物は、従来の用量の抗癌薬/放射線単独と同じ腫瘍応答/臨床利益をもたらすために、より低い、したがって、より低い毒性及びより忍容される用量の抗癌薬及び/または放射線の投与を可能にするために使用され得る。承認済み抗癌薬及び放射線治療の用量は既知であるため、本明細書に提供される化合物、組成物、及び方法は、1つ以上の承認済み抗癌剤薬及び/または放射線治療と共に使用され得る。また、構造式(I)の化合物は、少なくとも一部、アポトーシス促進性及び/またはp53及びp53関連タンパク質の細胞周期阻害活性を刺激することにより作用することができるため、癌細胞及び支持細胞の治療有効量のこれらの化合物への曝露は、抗癌薬または放射線療法に応答して、細胞がアポトーシスプログラムを実行する試みと一致するように一時的に関連付けられ得る。よって、一実施形態では、他の既知の抗癌薬と組み合わせた本明細書に提供される化合物または薬学的組成物の投与は、特に効果的な治療実践を提供する。
【0126】
一実施形態では、構造式(I)のp53またはp53関連タンパク質とMDM2及びMDM2関連タンパク質との間の相互作用の阻害は、おそらく阻害剤の、正常な細胞の細胞周期停止を誘導する能力により、正常な(例えば非過剰増殖)細胞をある特定の化学療法薬及び放射線の毒性作用から保護することができる。例えば、本明細書に提供されるMDM2阻害剤は、野生型もしくは機能性p53(及び/または野生型もしくは機能性p53関連タンパク質)を含むが、変異した、欠失した、またはさもなければ非機能性もしくはあまり機能性ではないp53(及び/または変異した、欠失した、またはさもなければ非機能性もしくはあまり機能性ではないp53関連タンパク質)を含む癌細胞に対して作用がない、またはあまり作用がない細胞において細胞周期停止をもたらし得る。この特異的な保護作用は、本明細書に提供される阻害剤と組み合わせて投与されるとき、高用量のもしくはより長い化学療法薬の治療、またはこのような治療の毒性副作用を増大することのない治療の使用を可能にすることにより、癌のより有効な治療を可能にすることができる。
【0127】
本明細書において、老化、アポトーシス、及び/または細胞周期停止の誘導因子などの追加の薬剤に対して細胞を感作させるための構造式(I)の化合物を使用する方法も提供される。構造式(I)の化合物は、化学療法薬で治療する前に細胞周期停止の誘導により、正常な細胞の化学防護を提供するように使用することもできる。一実施形態では、細胞を構造式(I)の1つ以上の化合物と接触させることを含む、正常な細胞を化学療法薬または治療に対して耐性にする方法が提供される。別の実施形態では、構造式(I)の化合物を動物に投与することを含む、過剰増殖疾患を有する動物の正常な細胞を化学療法薬または治療の毒性副作用から保護する方法が提供される。本明細書において、化学療法を受ける動物に構造式(I)の化合物を投与することを含む、化学療法薬を正常な細胞に投与することにより生じる障害、副作用、または状態を治療、寛解、または阻止するための方法も提供される。化学療法により生じるこのような障害及び状態の例としては、粘膜炎、口内炎、口内乾燥症、胃腸障害、及び脱毛症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
構造式(I)の化合物は、アポトーシス細胞死の誘導に応答性のものなどの障害、例えば、癌などの過剰増殖疾患を含むアポトーシスの調節障害を特徴とする障害の治療、寛解、または阻止に有用である。一実施形態では、これらの化合物は、癌療法に対する耐性を特徴とする癌(例えば、化学療法耐性、放射線耐性、ホルモン耐性などの癌細胞)を治療または寛解するために使用され得る。別の実施形態では、本化合物は、機能性p53またはp53関連タンパク質の発現を特徴とする過剰増殖疾患を治療するために使用され得る。別の実施形態では、本化合物は、正常(例えば非過剰増殖)細胞を、それらの細胞において細胞周期停止を誘導することにより化学療法薬及び治療の毒性副作用から保護するために使用され得る。
【0129】
一実施形態では、構造式(I)の化合物は、細胞周期停止及び/またはアポトーシスを誘導し、また単独でまたは追加のアポトーシス誘導シグナルに応答してのいずれかで、細胞周期停止及び/もしくはアポトーシスの誘導を増強させる。したがって、本化合物は細胞周期停止及び/またはアポトーシスの誘導に対して細胞(このような誘導刺激に耐性の細胞を含む)を感作させることが想到される。p53またはp53関連タンパク質とMDM2またはMDM2関連タンパク質との間の相互作用を阻害することにより、本化合物は、アポトーシスの誘導により治療、寛解、または阻止され得る任意の障害においてアポトーシスを誘導するために使用され得る。一実施形態では、構造式(I)の化合物は、機能性p53またはp53関連タンパク質を含む細胞におけるアポトーシスを誘導するために使用され得る。
【0130】
構造式(I)の化合物は、アポトーシスを調節するために1つ以上の追加のアポトーシス調節剤(例えば抗癌剤)と組み合わせて。アポトーシス調節剤の例としては、Fas/CD95、TRAMP、TNF RI、DR1、DR2、DR3、DR4、DR5、DR6、FADD、RIP、TNFα、Fasリガンド、TRAIL、TRAIL−R1またはTRAIL−R2に対する抗体、Bcl−2、p53、BAX、BAD、Akt、CAD、PI3キナーゼ、PP1、及びカスパーゼンタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。アポトーシスの開始、判断、及び分解期に関与する他の薬剤も含まれる。アポトーシス調節剤の例としては、対象のアポトーシスを調節することができる薬剤、活性、存在、またはその濃度の変更を含む。アポトーシス調節剤は、TNFまたはTNF関連リガンド、特にTRAMPリガンド、Fas/CD95リガンド、TNFR−1リガンド、またはTRAILなどのアポトーシスの誘導因子であるものを含む。
【0131】
本明細書の化合物、組成物、及び方法は、動物(例えばヒト及び獣医学動物を含むが、これらに限定されない哺乳類患者)の疾患状態にある細胞、組織、臓器、または病理学的状態及び/もしくは疾患段階を治療するために使用される。これに関して、様々な疾患及び病理は、本方法及び組成物を使用する治療または予防に適している。これらの疾患及び状態の非限定的な例としては、乳癌、前立腺癌、リンパ腫、皮膚癌、膵臓癌、結腸癌、黒色腫、悪性黒色腫、卵巣癌、脳癌、原発性脳癌腫、頭頸部癌、神経膠腫、神経膠芽腫、肝臓癌、膀胱癌、非小細胞肺癌、頭部または頸部の癌腫、乳癌腫、卵巣癌腫、肺癌腫、小細胞肺癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌腫、精巣癌腫、膀胱癌腫、膵臓癌腫、胃癌腫、結腸癌腫、前立腺癌腫、尿生殖器癌腫、甲状腺癌腫、食道癌腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、副腎癌腫、腎細胞癌腫、子宮内膜癌腫、副腎皮質癌腫、悪性膵島細胞腺腫、悪性カルチノイド癌腫、絨毛癌、菌状息肉腫、悪性高カルシウム血症、子宮頚部過形成、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)(B−CLLを含む)、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性顆粒球性白血病、有毛細胞白血病、神経芽細胞腫、肉腫(脂肪肉腫、悪性線維性組織球腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、及び横紋筋肉腫など)、カポジ肉腫、真性赤血球増加症、本能性血小板増加症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、軟組織肉腫(脂肪腫及び悪性神経鞘腫、骨原性肉腫、原発性マクログロブリン血症、及び網膜芽細胞腫など)、T及びB細胞媒介自己免疫疾患;炎症性疾患;感染;過剰増殖疾患;AIDS;変性状態、血管疾患などが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、治療される癌細胞は転移性である。別の実施形態では、治療される癌細胞は他の抗癌剤に対して耐性である。
【0132】
本明細書の化合物、組成物、及び方法は、機能性もしくは野生型p53またはp53関連タンパク質を発現する癌を治療するために使用される。一実施形態では、本明細書に提供される化合物、組成物、及び方法は、上昇したレベルのMDM2またはMDM2関連タンパク質を発現する癌を治療するために使用される。
【0133】
本発明の化合物、組成物、及び方法は、例えば脂肪肉腫、悪性線維性組織球腫、骨肉腫、及び横紋筋肉腫を含む肉腫を有する患者を治療するために使用され得る。別の実施形態では、本明細書に提供される化合物、組成物、及び方法は、例えばユーイング肉腫、平滑筋肉腫、脂肪腫、及び悪性神経鞘腫を含む軟組織腫瘍を有する患者を治療するために使用され得る。別の実施形態では、本明細書に提供される化合物、組成物、及び方法は、肺癌、乳癌、肝臓癌、または結腸癌を有する患者を治療するために使用され得る。別の実施形態では、本明細書に提供される化合物、組成物、及び方法は、B細胞慢性リンパ性白血病及び急性骨髄性白血病を有する患者を治療するために使用され得る。
【0134】
本明細書に提供される化合物、組成物、及び方法は、黒色腫、肺癌、肉腫、結腸癌、前立腺癌、絨毛癌、乳癌、網膜芽細胞腫、胃癌腫、急性骨髄性白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、または白血病を有する患者を治療するためにも使用され得る。
【0135】
本明細書に提供される化合物、組成物、及び方法は、脂肪肉腫または黒色腫を有する患者を治療するためにさらに使用され得る。
【0136】
本明細書の化合物、組成物、及び方法を用いて治療するのに好適な感染は、ウイルス、細菌、真菌、マイコプラズマ、プリオンなどにより生じる感染を含むが、これに限定されない。
【0137】
構造式(I)の本化合物または構造式(I)の化合物を含む薬学的組成物は、癌などの過剰増殖疾患の治療に有用である。
【0138】
本方法は、少なくとも1つの第2の治療薬(化学療法抗新生物剤、アポトーシス調節剤、抗微生物剤、抗ウイルス薬、抗真菌剤、及び抗炎症剤を含むが、これらに限定されない)及び/または治療技法(例えば、外科的介入及び/もしくは放射線療法)と組み合わせて、有効量の構造式(I)の化合物を投与するために提供される。好ましい実施形態では、第2の治療薬は抗癌剤である。
【0139】
いくつかの第2の好適な治療薬または抗癌剤が本方法における使用のために想到される。実際、本明細書に提供される方法は、アポトーシスを誘導する薬剤;ポリヌクレオチド(例えばアンチセンス、リボザイム、siRNA)、ポリペプチド(例えば酵素及び抗体)、生物学的模倣物(例えばゴシポールまたはBH3模倣物)、BaxなどのBcl−2ファミリータンパク質と結合する(オリゴマー形成するまたは複合体を形成する)薬剤;アルカロイド;アルキル化剤;抗腫瘍抗生物質;代謝拮抗薬;ホルモン;白金化合物;モノクローナルまたはポリクローナル抗体(例えば抗癌薬、毒素、デフェンシンと共役する抗体)、毒素;放射性核種;生物学的応答修飾物質(例えばインターフェロン(例えばIFN−α)及びインターロイキン(例えばIL−2));養子免疫療法薬;造血成長因子;腫瘍細胞分化を誘導する薬剤(例えば全トランス型レチノイン酸);遺伝子療法試薬(例えばアンチセンス療法試薬及びヌクレオチド)、腫瘍ワクチン;血管新生阻害剤;プロテオソーム阻害剤:NF−КB調節因子;抗CDK化合物;HDAC阻害剤などの多くの治療薬の投与を含み得るが、これに限定されない。開示される化合物との同時投与に好適な化学療法薬化合物及び抗癌療法などの治療薬の多くの他の例は当業者に既知である。
【0140】
抗癌剤はアポトーシスを誘導または刺激する薬剤を含む。アポトーシスを誘導または刺激する薬剤は、例えば、DNAに挿入する、それを架橋する、アルキル化する、ないしは別の方法で損傷させる、または化学的に修飾するなどにより、DNAと相互作用する、またはそれを修飾する薬剤を含む。アポトーシスを誘導する薬剤は、放射線(例えばX線、γ線、UV)、腫瘍壊死因子(TNF)関連因子(例えば、TNFファミリー受容体タンパク質、TNFファミリーリガンド、TRAIL、TRAIL−R1またはTRAIL−R2に対する抗体)、キナーゼ阻害剤(例えば上皮成長因子受容体(EGFR)キナーゼ阻害剤を含むが、これらに限定されない。追加の抗癌剤は、血管成長因子受容体(VGFR)キナーゼ阻害剤、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)キナーゼ阻害剤、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)キナーゼ阻害剤、及びBcr−Ablキナーゼ阻害剤(GLEEVECなど));アンチセンス分子;抗体(例えばHERCEPTIN、RITUXAN、ZEVALIN、及びAVASTIN);抗エストロゲン薬(例えばラロキシフェン及びタモキシフェン);抗アンドロゲン薬(例えばフルタミド、ビカルタミド、フィナステリド、アミノグルテタミド、ケトコナゾール、及びコルチコステロイド);シクロオキシゲナーゼ2(COX−2)阻害剤(例えばセレコキシブ、メロキシカム、NS−398、及び非ステロイド系抗炎症薬(NSAID));抗炎症薬(例えばブタゾリジン、DECADRON、DELTASONE、デキサメタゾン、デキサメタゾンインテンソール、DEXONE、HEXADROL、ヒドロキシクロロキン、METICORTEN、ORADEXON、ORASONE、オキシフェンブタゾン、PEDIAPRED、フェニルブタゾン、PLAQUENIL、プレドニゾロン、プレドニゾン、PRELONE、及びTANDEARIL);ならびに癌化学療法薬(例えばイリノテカン(CAMPTOSAR)、CPT−11、フルダラビン(FLUDARA)、ダカルバジン(DTIC)、デキサメタゾン、メトキサントロン、MYLOTARG、VP−16、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、5−FU、ドキソルビシン、ゲムシタビン、ボルテゾミブ、ゲフィチニブ、ベバシズマブ、TAXOTERE、またはTAXOL);細胞シグナル伝達分子;セラミド及びサイトカイン;スタウロスポリンなどを含む。
【0141】
本明細書の組成物及び方法は、構造式(I)の1つ以上化合物及び少なくとも1つの抗過剰増殖剤もしくは抗癌剤、例えばアルキル化剤、代謝拮抗薬、及び天然生成物(例えば薬草及び他の植物ならびに/または動物由来の化合物)を含む。
【0142】
本組成物及び方法において使用するのに好適なアルキル化剤は、1)ナイトロジェンマスタード(例えばメクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L−サルコリシン)、及びクロラムブシル、2)エチレンイミン及びメチルメラミン(例えばヘキサメチルメラミン及びチオテパ)、3)スルホン酸アルキル(例えばブスルファン)、4)ニトロソ尿素(例えばカルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル−CCNU)、及びストレプトゾシン(ストレプトゾトシン))、ならびに5)トリアゼン(例えばダカルバジン(DTIC;ジメチルトリアゼノイミド−アゾレカルボキサミド)を含むが、これらに限定されない。
【0143】
本組成物及び方法において使用するのに好適な代謝拮抗薬は、1)葉酸類似体(例えばメトトレキサート(アメトプテリン))、2)ピリミジン類似体(例えばフルオロウラシル(5−フルオロウラシル;5−FU)、フロクスウリジン(フルオロデ−オキシウリジン;FudR)、及びシタラビン(シトシンアラビノシド))、ならびに3)プリン類似体(例えばメルカプトプリン(6−メルカプトプリン;6−MP)、チオグアニン(6−チオグアニン;TG)、及びペントスタチン(2’−デオキシコホルマイシン))を含むが、これらに限定されない。
【0144】
本組成物及び方法において使用するのに好適な化学療法薬は、1)ビンカアルカロイド(例えばビンプラスチン(VLB)、ビンクリスチン)、2)エピポドフィロトキシン(例えばエトポシド及びテニポシド)、3)抗体(例えばダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、及びマイトマイシン(マイトマイシンC))、4)酵素(例えばL−アスパラギナーゼ)、5)生物学的応答修飾物質(例えばインターフェロン−α)、6)白金配位錯体(例えばシスプラチン(cis−DDP)及びカルボプラチン)、7)アントラセンジオン(例えばミトキサントロン)、8)置換尿素(例えばヒドロキシ尿素)、9)メチルヒドラジン誘導体(例えばプロカルバジン(N−メチルヒドラジン;MIH))、10)副腎皮質抑制剤(例えばミトタン(o,p’−DDD)及びアミノグルテチミド)、11)副腎皮質ステロイド(例えばプレドニゾン)、12)プロゲスチン(例えばカプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、及び酢酸メゲストロール)、13)エストロゲン(例えばジエチルスチルベストール及びエチニルエストラジオール)、14)抗エストロゲン薬(例えばタモキシフェン)、15)アンドロゲン(例えばプロピオン酸テストステロン及びフルオキシメステロン)、16)抗アンドロゲン薬(例えばフルタミド)、ならびに17)性腺刺激ホルモン放出ホルモン類似体(例えばロイプロリド)を含むが、これらに限定されない。
【0145】
癌療法の文脈において日常的に使用される任意の抗癌剤は本発明の組成物及び方法において用途を見出す。表1は例示的な抗新生物剤のリストを提供する。当業者は全ての米国承認済み化学療法薬に要求される「製品ラベル」が例示的な薬剤に関して承認適応、投薬情報、毒性データなどを記載することを理解する。
【表1-1】


【表1-2】

【表1-3】

【表1-4】
【表1-5】

【表1-6】

【表1-7】

【表1-8】
【0146】
抗癌剤は、抗癌活性を有すると特定されている化合物を更に含む。例としては、3−AP、12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート、17AAG、852A、ABI−007、ABR−217620、ABT−751、ADI−PEG 20、AE−941、AG−013736、AGRO100、アラノシン、AMG 706、抗体G250、アンチネオプラストン、AP23573、アパジコン、APC8015、アチプリモド、ATN−161、アトラセンテン(atrasenten)、アザシチジン、BB−10901、BCX−1777、ベバシズマブ、BG00001、ビカルタミド、BMS 247550、ボルテゾミブ、ブリオスタチン−1、ブセレリン、カルシトリオール、CCI−779、CDB−2914、セフィキシム、セツキシマブ、CG0070、シレンジタイド、クロファラビン、コンブレタスチンA4ホスフェート、CP−675,206、CP−724,714、CpG 7909、クルクミン、デシタビン、DENSPM、ドキセルカルシフェロール、E7070、E7389、エクチナサイジン743、エファプロキシラル、エフロルニチン、EKB−569、エンザスタウリン、エルロチニブ、エクシスリンド、フェンレチニド、フラボピリドール、フルダラビン、フルタミド、ホテムスチン、FR901228、G17DT、ガリキシマブ、ゲフィチニブ、ゲニステイン、グルホスファミド、GTI−2040、ヒストレリン、HKI−272、ホモハリントニン、HSPPC−96、hu14.18−インターロイキン−2融合タンパク質、HuMax−CD4、イロプロスト、イミキモド、インフリキシマブ、インターロイキン−12、IPI−504、イロフルベン、イクサベピロン、ラパチニブ、レナリドミド、レスタウルチニブ、リュープロリド、LMB−9免疫毒素、ロナファルニブ、ルニリキシマブ(luniliximab)、マホスファミド、MB07133、MDX−010、MLN2704、モノクローナル抗体3F8、モノクローナル抗体J591、モテクサフィン、MS−275、MVA−MUC1−IL2、ニルタミド、ニトロカンプトテシン、ノラトレキセド二塩酸塩、ノルバデックス、NS−9、O6−ベンジルグアニン、オブリメルセンナトリウム、ONYX−015、オレゴボマブ、OSI−774、パニツブマブ、パラプラチン、PD−0325901、ペメトレキセド、PHY906、ピオグリタゾン、ピルフェニドン、ピクサントロン、PS−341、PSC 833、PXD101、ピラゾロアクリジン、R115777、RAD001、ランピルナーゼ、レベッカマイシン類似体、 rhuアンギオスタチンタンパク質、rhuMab 2C4、ロシグリタゾン、ルビテカン(rubitecan)、S−1、S−8184、サトラプラチン、SB−、15992、SGN−0010、SGN−40、ソレフェニブ、SR31747A、ST1571、SU011248、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、スラミン、タラボスタット、タラムパネル(talampanel)、タリキダル、テムシロリムス、TGFa−PE38免疫毒素、サリドマイド、チマルファシン、ティピファニブ、チラパザミン、TLK286、トラベクテジン、グルクロン酸トリメトレキサート、TroVax、UCN−1、バルプロ酸、ビンフルニン、VNP40101M、ボロシキシマブ、ボリノスタット、VX−680、ZD1839、ZD6474、ジロートン、及びゾスキダル三塩酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0147】
抗癌剤及び他の療法薬のより詳細な説明に関して、当業者は、Physician’s Desk Reference及びGoodman and Gilman’s “Pharmaceutical Basis of Therapeutics” tenth edition,Eds.Hardman et al.,2002を含むが、これらに限定されない任意の数の教示的説明書を参照する。
【0148】
本明細書に提供される方法は、放射線療法と組み合わせて、構造式(I)の1つ以上の化合物を投与することを含む。本明細書に提供される方法は、種類、量、または放射線の治療線量を動物に送達するために使用される送達及び投与系によって限定されない。例えば、哺乳類は、光子放射線療法、粒子線放射連療法、他の種類の放射線療法、及びこれらの組み合わせを受けることができる。一実施形態では、放射線は線形加速器を用いて動物に送達される。別の実施形態では、放射線はガンマナイフを用いて送達される。
【0149】
放射線源は哺乳類の外部または内部であってよい。外部放射線療法が最も一般的であり、高エネルギー放射線の光線を、例えば線形加速器を用いて皮膚を通して腫瘍部位に指向することを伴う。放射線の光線は腫瘍部位に局限されるが、正常で健康な組織への曝露を回避することはほぼ不可能である。しかしながら、外部放射線は通常哺乳類に良好に忍容される。内部放射線療法は、特異的に癌細胞を標的とする送達系の使用(例えば、癌細胞結合リガンドに結合された粒子の使用)を含む、ビーズ、ワイヤ、ペレット、カプセル、粒子などの放射線放出源を腫瘍部位もしくはその近くの身体内部に移植することを伴う。このような移植片は治療後に取り除かれるか、または不活性で体内に残すことができる。内部放射線療法の種類は、近距離照射療法、組織内照射、体腔内照射、放射線免疫療法などを含むが、これらに限定されない。
【0150】
哺乳類は、任意に、放射線感作物質(例えばメトロニダゾール、ミソニダゾール、動脈内Budr、静脈内ヨードデオキシウリジン(IudR)、ニトロイミダゾール、5−置換−4−ニトロイミダゾール、2H−イソインドールジオン、[[(2−ブロモエチル)−アミノ]メチル]−ニトロ−1H−イミダゾール−1−エタノール、ニトロアニリン誘導体、DNA−親和性低酸素選択性細胞毒、ハロゲン化DNAリガンド、1,2,4ベンゾトリアジンオキシド、2−ニトロイミダゾール誘導体、フッ素含有ニトロアゾール(nitroazole)誘導体、ベンズアミド、ニコチンアミド、アクリジン介入物、5−チオトレトラゾール誘導体、3−ニトロ−1,2,4−トリアゾール、4,5−ジニトロイミダゾール誘導体、ヒドロキシル化テキサフィリン、シスプラチン、ミトマイシン、チリパザミン(tiripazamine)、ニトロソ尿素、メルカプトプリン、メトトレキサート、フルオロウラシル、ブレオマイシン、ビンクリスチン、カルボプラチン、エピルビシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンデシン、エトポシド、パクリタキセル、熱(温熱)など)、放射線防御剤(例えばシステアミン、アミノアルキル二水素ホスホロチオエート、アミホスチン(WR 2721)、IL−1、IL−6など)を受けることができる。放射線感作物質は腫瘍細胞の死滅を強化する。放射線防御剤は有害な放射線作用から健康な組織を保護する。
【0151】
放射線の線量が許容できない負の副作用なしに哺乳類によって忍容される限り、あらゆる種類の放射線を施すことができる。好適な放射線の種類は、例えば電離(電磁)放射線療法(例えばX線またはγ線)、または粒子線放射線療法(例えば高線形エネルギー放射線)を含む。電離放射線は、電離、すなわち、電子の増加または損失を生成するのに十分なエネルギーを有する粒子または光子を含む放射線と定義される(例えば参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第U.S.5,770,581号に記載される)。放射線の作用は少なくとも一部医師により制御され得る。一実施形態では、放射線の線量は標的細胞の曝露を最大にし、毒性を減少させるために分割される。
【0152】
一実施形態では、動物に施される放射線の総線量は約.01グレイ(Gy)〜約100Gyである。別の実施形態では、約10Gy〜約65Gy(例えば、約15Gy、20Gy、25Gy、30Gy、35Gy、40Gy、45Gy、50Gy、55Gy、または60Gy)が治療過程にわたって施される。いくつかの実施形態では、全放射線線量が1日の過程にわたって施され得るが、総線量は理想的には数日にわたって分割され、施される。望ましくは、放射線療法は、少なくとも約3日、例えば少なくとも5、7、10、14、17、21、25、28、32、35、38、42、46、52、または56日(約1〜8週間)の過程にわたって施される。したがって、放射線の日用量は、約1〜5Gy(例えば約1Gy、1.5Gy、1.8Gy、2Gy、2.5Gy、2.8Gy、3Gy、3.2Gy、3.5Gy、3.8Gy、4Gy、4.2Gy、または4.5Gy)または1〜2Gy(例えば1.5〜2Gy)を含む。放射線の日用量は標的細胞の破壊を誘導するのに十分であるべきである。一実施形態では、一定期間にわたって引き延ばされる場合、放射線は毎日施されず、それにより哺乳類は休息することができ、また療法の作用がもたらされる。例えば、放射線は望ましくは、治療の各週の間、連続5日間施され、2日間施されず、それにより週に2日休息することが可能である。しかしながら、放射線は、哺乳類の応答性及び任意の副作用の可能性により、1日/週、2日/週、3日/週、4日/週、5日/週、6日/週、または全7日/週施され得る。放射線療法は治療期間のいつでも開始することができる。一実施形態では、放射線は1週目または2週目に開始され、治療期間の残余期間施される。例えば、放射線は、例えば固形腫瘍を治療するための6週間を含む、治療期間の1〜6週目または2〜6週目に施される。別の方法としては、放射線は、5週間を含む治療期間の1〜5週目または2〜5週目に施される。しかしながら、これらの例示的な放射線療法の施行スケジュールは本明細書に提供される方法に限定されることを意図しない。
【0153】
抗微生物治療薬も構造式(I)の化合物と組み合わせて治療薬として使用され得る。微生物体の機能を死滅、阻害、ないしは別の方法で抑制することができる任意の薬剤、ならびにこのような活性を有すると想到される任意の薬剤が使用され得る。抗微生物剤は、単独でまたは組み合わせで使用される、天然及び合成の抗生物質、抗体、阻害タンパク質(例えばデフェンシン)、アンチセンス核酸、膜破壊剤などを含むが、これらに限定されない。実際、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤などを含むが、これらに限定されない任意の種類の抗生物質が使用され得る。
【0154】
本方法において、構造式(I)の1つ以上の化合物はそれを必要とする哺乳類に投与される。本方法の別の実施形態では、1つ以上の化合物及び1つ以上の第2の治療薬(すなわち、抗癌剤として)は、以下の条件のうちの1つ以上により、例えば異なる周期で、異なる期間で、異なる濃度で、異なる投与経路により、それを必要とする哺乳類に投与される。一実施形態では、構造式(I)の化合物は、治療薬または抗癌剤の前、例えば第2の治療薬または抗癌剤の投与の0.5、1、2、3、4、5、10、12、もしくは18時間、1、2、3、4、5、もしくは6日、または1、2、3、もしくは4週間前に投与される。別の実施形態では、構造式(I)の化合物は、第2の治療薬または抗癌剤の後、例えば抗癌剤の投与の0.5、1、2、3、4、5、10、12、もしくは18時間、1、2、3、4、5、もしくは6日、または1、2、3、もしくは4週間後に投与される。別の実施形態では、構造式(I)の化合物及び第2の治療薬または抗癌剤は、並行するが、異なるスケジュールで投与され、例えば化合物は毎日投与されるが、第2の治療薬または抗癌剤は1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回投与される。別の実施形態では、本化合物は1週間に1回投与され、第2の治療薬または抗癌剤は毎日、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回投与される。
【0155】
一実施形態では、患者の癌を治療または寛解させる方法は、治療有効量の構造式(I)の化合物を患者にパルス投与することを含む。
【0156】
構造式(I)の化合物の毒性及び治療有効性は、例えば動物において毒性をもたらさない最高用量と定義される化合物の最大耐量(MTD)を決定するために、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順により決定することができる。最大耐量と治療作用(例えば腫瘍成長の阻害)との間の用量比は治療指数である。投薬量は利用される剤形及び用いられる投与経路により、この範囲内で変動し得る。治療有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳述される開示を考慮すれば、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0157】
療法で使用するのに必要とされる構造式(I)の化合物の治療有効量は、治療される状態の性質、活性が所望される時間の長さ、ならびに患者の年齢及び状態により変動し、最終的には従事する医師によって決定される。投薬量及び間隔は、所望の治療作用を維持するのに十分なMDM2阻害剤の血漿レベルをもたらすように個別に調節され得る。所望の用量は便宜上、単一用量で、または適切な間隔で、例えば1日1回、2回、3回、4回以上の分割用量で投与される複数用量として投与され得る。多くの場合、複数用量が所望されるか、または必要とされる。例えば、本MDM2阻害剤は、4日間隔で1日当たり1用量として送達される4用量(q4d×4)、3日間隔で1日当たり1用量として送達される4用量(q3d×4)、5日間隔で1日当たり1用量送達(qd×5)、3週間の間1週間当たり1用量(qwk3)、5回の日用量、2日間の休息、そして更に5回の日用量(5/2/5)の頻度で、または状況に適切であるように決定された任意の用量レジメンで投与され得る。
【0158】
本明細書に提供される薬学的組成物は、その意図される目的を達成するのに有効な量で、構造式(I)の1つ以上の化合物を含む。個人のニーズは変動するが、各構成成分の有効量の最適な範囲の決定は当該技術分野の技術の範囲内である。典型的には、化合物は、アポトーシスの誘導に応答する障害に関して治療される哺乳類の体重の1日当たり0.0025〜50mg/kgの用量で、または等量のその薬学的に許容される塩で、経口的に哺乳類、例えばヒトに投与され得る。一実施形態では、約0.01〜約25mg/kgが障害を治療または寛解させるために経口投与される。筋肉注射に関して、用量は一般的に、経口用量の約半分である。例えば、好適な筋肉内用量は、約0.0025〜約25mg/kg、または約0.01〜約5mg/kgである。
【0159】
単位経口用量は、約1〜約2000mg、例えば約100〜約1000mgの本化合物を含み得る。単位用量は、各々約5〜約500mg、便宜上約50〜250mgの化合物またはその塩を含有する1つ以上の錠剤またはカプセルとして1回以上毎日投与され得る。
【0160】
局所製剤において、化合物は担体の1グラム当たり約0.01〜100mgの濃度で存在し得る。一実施形態では、化合物は、約5〜100mg/mlの濃度で存在する。
【0161】
熱化学物質として化合物を投与することに加えて、構造式(I)の化合物は薬学的調製物または組成物の構成成分として投与され得る。薬学的組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤、及び/または助剤を含む。1つ以上の担体、賦形剤、及び助剤は、構造式(I)の化合物を薬学的に使用され得る調製物に加工するのを容易にする。組成物、特に、錠剤、糖衣錠、徐放性ロゼンジ、及びカプセルなどのある種類の投与に使用され得る経口もしくは局所投与され得る組成物、口内洗浄剤及びうがい薬、ゲル、液体懸濁液、毛髪洗浄剤、ヘアゲル、シャンプー、及びまた坐剤などの直腸投与され得る調製物、ならびに点滴静注、注射、局所、または経口による投与に好適な溶液は、1つ以上の担体、賦形剤、及び/または助剤と共に、約0.01〜99パーセント、または約0.25〜75パーセントの構造式(I)の化合物を含有する。
【0162】
本明細書に提供される薬学的組成物は、構造式(I)の化合物の有益な作用を受け得るあらゆる患者に投与され得る。このような患者の中でも一番は哺乳類、例えばヒトであるが、本明細書に提供される方法及び組成物はそのように限定されることを意図しない。他の患者は獣医学動物(ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコなど)を含む。
【0163】
構造式(I)の化合物及びその薬学的組成物は、それらの意図される目的を達成する任意の手段により投与され得る。構造式(I)の化合物は、任意の好適な経路により、例えば経口、頬、吸入、舌下、直腸、膣、腰椎穿刺による槽内もしくはクモ膜下、経尿道、鼻、経皮的、すなわち、経皮、または非経口(静脈内、筋肉内、皮下、冠内、皮内、乳房内、腹腔内、関節内、髄腔内、球後、肺内注射、及び/または特定の部位での外科的植込を含む)投与により投与され得る。非経口投与は針及び注射器を用いて、または高圧法を用いて達成され得る。別の方法としては、または並行して、投与は経口経路によってもよい。投与される投薬量は、レシピエントの年齢、健康、及び体重、あれば並行治療の種類、治療頻度、ならびに所望される作用の性質に依存する。
【0164】
本薬学的組成物及び調製物は、従来の混合、顆粒化、糖衣錠作製、溶解、または凍結乾燥プロセスにより製造される。経口使用のための薬学的組成物は、本化合物を固形賦形剤と混合し、任意に、錠剤または糖衣錠コアを得るために、所望する場合または必要な場合、好適な助剤を添加した後、得られた混合物を粉砕し、顆粒の混合物を加工することにより得ることができる。
【0165】
好適な賦形剤は、例えば、糖類(例えばラクトースもしくはスクロース、マンニトール、またはソルビトール)、セルロース調製物及び/もしくはリン酸カルシウム(例えばリン酸三カルシウムまたはリン酸水素カルシウム)などの充填剤、ならびに例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/もしくはポリビニルピロリドンを使用するデンプンペーストなどの結合剤を含む。所望する場合、上述のデンプン、及びまたカルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤が添加され得る。助剤は好適な流動調節剤及び滑沢剤であり得る。好適な助剤は、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸もしくはその塩(ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウムなど)、及び/またはポリエチレングリコールを含む。糖衣錠コアは、所望する場合、胃液に耐性である好適なコーティングと共に提供される。この目的に関して、任意にアラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、及び/または二酸化チタン、ラッカー溶液及び好適な有機溶媒もしくは溶媒混合物を含有し得る濃縮糖溶液が使用され得る。胃液に耐性であるコーティングを生成するために、フタル酸アセチルセルロースまたはフタル酸ヒドロキシプロピルメチル−セルロースなどの好適なセルロース調製物の溶液が使用される。染料及び色素は、例えば識別のために、または活性化合物用量の組み合わせを特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加され得る。
【0166】
経口使用され得る他の薬学的調製物は、ゼラチン製のプッシュフィットカプセル(push−fit capsules)、ならびにゼラチン及びグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤で作製された軟質密封カプセルを含む。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ならびに任意に安定化剤と混合され得る、顆粒形態の活性化合物を含有することができる。軟質のカプセルでは、活性化合物は、脂肪油または液体パラフィンなどの適切な液体に溶解または懸濁され得る。加えて、安定化剤が添加され得る。
【0167】
直腸使用され得る可能な薬学的調製物は、例えば活性化合物のうちの1つ以上と坐剤基剤の組み合わせからなる坐剤を含む。好適な坐剤基剤は、例えば天然もしくは合成のトリグリセリド、またはパラフィン系炭化水素である。加えて、活性化合物と基剤の組み合わせからなるゼラチン直腸カプセルの使用も可能である。可能な基剤材料は、例えば液体トリグリセリド、ポリエチレングリコール、またはパラフィン系炭化水素を含む。
【0168】
非経口投与に好適な製剤は、水溶性形態、例えば水溶性塩及びアルカリ溶液中の活性化合物の水溶液を含む。加えて、適切な油状注射懸濁液としての活性化合物の懸濁液が投与され得る。好適な親油性溶媒またはビヒクルは、脂肪油、例えばごま油、または合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチル、またはトリグリセリド、またはポリエチレングリコール−400を含む。水性注射懸濁液は、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及び/またはデキストランを含む、懸濁液の粘度を増加させる物質を含有し得る。任意に、懸濁液は安定化剤も含有し得る。
【0169】
局所用組成物は、一実施形態において、適切な担体の選択により、油、クリーム、ローション、軟膏などとして製剤化される。好適な担体は、植物油もしくは鉱油、白色ワセリン(白色軟質パラフィン)、分枝鎖脂肪もしくは油、動物脂、及び高分子量アルコール(C12を超える)を含む。担体は、活性成分が可溶性であるものであり得る。乳化剤、安定化剤、湿潤剤、及び抗酸化剤、ならびに所望する場合、色または芳香を付与する薬剤も含まれてよい。加えて、経皮浸透エンハンサーがこれらの局所製剤に利用され得る。このようなエンハンサーの例は、米国特許第3,989,816号及び第4,444,762号に見出すことができ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0170】
軟膏は、温軟質パラフィンと共にアーモンド油などの植物油に活性成分の溶液を混合し、混合物を冷却させることにより製剤化され得る。このような軟膏の典型的な例は、約30重量%のアーモンド油と約70重量%の白色軟質パラフィンを含むものである。ローションは便宜上、活性成分を、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどの好適な高分子量アルコールに溶解することにより調製される。
【0171】
以下の例は本明細書に提供される化合物、組成物、及び方法の図示的なものであり、制限されない。臨床療法において通常直面する、及び当業者に明らかである様々な条件及びパラメータの他の好適な修正及び適応は、本明細書に提供される方法、化合物、及び組成物の主旨及び範囲内である。
【0172】
構造式(I)の化合物、ならびに任意にMDM2及びMDM2関連タンパク質の阻害が利益を提供する疾患及び状態の治療に有用な、別個にまたは一緒にパッケージ化される第2の治療薬、ならびにこれらの活性剤を使用するための説明を有する添付文書を含むキットが更に提供される。
【0173】
多くの実施形態では、構造式(I)の化合物は、MDM2及びMDM2関連タンパク質の阻害が利益を提供する疾患または状態の治療に有用な第2の治療薬と併用して投与される。第2の治療薬は構造式(I)の化合物とは異なる。構造式(I)の化合物及び第2の治療薬は、所望の作用を達成するために同時にまたは順次投与され得る。加えて、構造式(I)の化合物及び第2の治療薬は、単一組成物から、または2つの別個の組成物から投与され得る。
【0174】
第2の治療薬はその所望の治療作用をもたらす量で投与される。各第2の治療薬の有効投薬量の範囲は当該技術分野において既知であり、第2の治療薬はこのような確立された範囲内でそれを必要とする個体に投与される。
【0175】
構造式(I)の化合物及び第2の治療薬は、単一単位用量として一緒にまたは複数単位用量として別個に投与することができ、構造式(I)の化合物は第2の治療薬の前に投与されるか、またはその逆も同様である。1用量以上の構造式(I)の化合物及び/または1用量以上の第2の治療薬が投与され得る。構造式(I)の化合物は、したがって、1つ以上の第2の治療薬、例えば限定されないが、抗癌剤と併用して使用され得る。
【0176】
更なる実施形態として、本発明は、本発明の方法を実践するためにそれらの使用を容易にする方法でパッケージ化された1つ以上の化合物または組成物を含むキットを含む。単純な一実施形態では、キットは、容器に添付されたラベルを有する、または本発明の方法を実践するために化合物または組成物の使用を記載するキットに含まれる密封された瓶または器などの容器にパッケージ化された、方法の実践に有用であると本明細書に記載される化合物または組成物(例えば構造式(I)の化合物を含む組成物及び任意の第2の治療薬)を含む。好ましくは、化合物または組成物は単位投薬形態でパッケージ化される。キットは、意図される投与経路により組成物を投与するのに好適なデバイスを更に含み得る。
【0177】
以下に論じられるように、MDM2阻害剤は、治療薬としてのそれらの開発に支障をきたした特性を有した。本発明の重要な特徴によると、構造式(I)の化合物は、MDM2の阻害剤及びMDM2関連タンパク質として合成され、評価された。例えば、本発明の化合物は典型的には、MDM2に対して50nM未満、25nM未満、10nM未満、及び5nM未満の結合親和性(IC50)を有する。

化合物の合成
【0178】
本発明の化合物は以下のように調製された。以下の合成スキームは、構造式(I)の化合物合成するために使用された反応の表示である。以下に示される合成における適切な試薬及び薬剤の置換による本発明のMDM2阻害剤を調製するための修正及び代替えスキームは、容易に当業者の能力の範囲内である。
【0179】
溶媒及び試薬は商業的に得、更に精製することなく使用された。NMRスペクトルの化学シフトは(δ)は内標準に対して低磁場のδ値(ppm)として報告され、多重度は通常の方法で報告された。
【0180】
別途記載のない限り、全ての温度は摂氏度である。
【0181】
合成方法、例において、及び本明細書を通して、省略形は以下の意味を有する。
【表2】
【0182】
最終化合物はトリフルオロ酢酸塩の形態である。
【0183】
構造式(I)の化合物は、米国特許第7,759,383号及び第7,737,174号(各々参照により本明細書に組み込まれる)、ならびにDing et al.,J.Am.Chem.Soc.127:10130−10131(2005))に記載される、不斉合成方法により調製することもできる。不斉合成の場合、構造式(I)の化合物は、当該技術分野において周知のキラル分割方法、例えば、キラルカラムクロマトグラフィーにより分離され得る。キラル分割において使用するのに好適なキラルカラムは、例えばDaicel CHIRALCEL(登録商標)OD−H、Daicel CHIRAKPAK(登録商標)AD−H、及びRegis Technologies ULMOキラルカラムを含む。他のキラル分割方法も可能である。
【化54】
【0184】
HATU(616mg、1.62mmol)、DIEA(0.550mL、3.24mmol)を、DCM(15mL)中の酸I(500mg、1.08mmol)の懸濁液に添加し、攪拌した。10分後、メチル4−アミノビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボキシレート(396mg、2.16mmol)及びDMAP(132mg、1.08mmol)を反応物に添加した。一晩後、溶媒を真空中で除去し、未精製物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、549mgの中間体IIを得た。
【0185】
LiOH.HO(110mg、2.62mmol)及び水酸化ナトリウム(105mg、2.62mmol)を、THF(3mL)、HO(3mL)、及びMeOH(3mL)の混合物に溶解した中間体II(549mg、0.873mmol)の溶液に添加した。TLCにより決定される、加水分解が完了した後、反応物をTFA(3mL)でクエンチし、攪拌した。5分後、溶液を真空中で濃縮し(乾燥状態にではない)、得られた油をCHCN及びHO(1:1)に再溶解し、溶液を分取HPLCにより精製した。精製画分を混合し、真空中で濃縮し、HOに再溶解し、冷凍し、凍結乾燥させ、白色粉末として化合物番号2(TFA塩)を得た。H−NMR(300MHz,CDOD)δ ppm 7.63(t,J=6.84Hz,1H)、7.45(d,J=6.76Hz,1H)、7.35(t,J=7.21Hz,1H)、7.18−7.04(m,2H)、6.77(dd,J=1.26Hz,1H)、4.68(d,J=10.61Hz,1H)、2.73−2.48(m,1H)、2.16−1.98(m,1H)、1.98−1.43(m,18H)、1.27−1.02(m,2H);ESI−MS m/z 614.92(M+H)
【化55】
【0186】
化合物番号2に記載される同じ合成戦略を用いて化合物番号1を得た。H−NMR(300MHz,CDOD)δ ppm 7.61(t,J=6.55Hz,1H)、7.49(dd,J=2.34,8.20Hz,1H)、7.39(t,J=6.90Hz,1H)、7.15(t,J=8.53Hz,1H)、7.10(dd,J=1.94,8.22Hz,1H)、6.78(d,J=1.88Hz,1H)、4.98(d,J=10.87Hz,1H)、4.78(d,J=10.92Hz,1H)、2.84−2.71(m,1H)、2.26(s,6H)、2.14(d,J=13.90Hz,1H)、2.02−1.67(m,5H)、1.60−1.38(m,1H)、1.31−1.10(m,2H);ESI−MS m/z 572.25(M+H)
【化56】
【0187】
化合物番号2に記載される同じ合成戦略を用いて化合物番号3を得た。H−NMR(300MHz,CDOD)δ ppm 7.71(s,1H)、7.63(t,J=6.61Hz,1H)、7.50(dd,J=2.08,8.18Hz,1H)、7.36(t,J=7.54Hz,1H)、7.18−7.05(m,2H)、6.79(d,J=1.83Hz,1H)4.96(d,J=10.48Hz,1H)、4.71(d,J=10.51Hz,1H)、2.78(d,J=14.25Hz,1H)、2.59−1.91(m,6H)、1.91−1.70(m,12H)、1.53−1.33(m,1H);ESI−MS m/z 650.92(M+H)
【化57】
【0188】
化合物番号4:CDI(49mg、0.303mmol)、DIEA(88μL、0.505mmol)、及びDMAP(cat.)を、1,2−ジクロロエタン(10mL)中の化合物番号2(62mg、0.101mmol)の溶液に添加し、反応物を40℃に加熱した。20分後、メタンスルホンアミド(96mg、1.01mmol)を添加し、反応物を還流した。一晩後、溶媒を真空中で除去し、未精製物を分取HPLCにより精製し、白色固体として化合物番号4(TFA塩)を得た。H−NMR(300MHz,CDOD)δ ppm 7.64(t,J=7.23Hz,1H)、7.45(dd,J=1.93,8.22Hz,1H)、7.36(t,J=7.23Hz,1H)、7.18−7.04(m,2H)、6.77(d,J=1.66Hz,1H)、4.69(d,J=10.70Hz,1H)、3.19(s,3H)、2.75−2.52(m,1H)、2.21−1.99(m,1H)、1.99−1.44(m,17H)、1.41−1.27(m,1H)、1.27−1.03(m,2H);ESI−MS m/z 691.42(M+H)
【化58】
【0189】
化合物番号2に記載される同じ合成戦略を用いて化合物番号5を得た。H−NMR(300MHz,CDOD)δ ppm 7.69−7.60(m,2H)、7.48(,dd,J=2.09,8.23Hz,1H)、7.40(t,J=6.93Hz,1H)、7.16(t,J=8.05Hz,1H)、7.09(dd,J=1.91,8.21Hz,1H)、6.79(d,J=1.87Hz,1H)、5.07(d,J=11.01Hz,1H)、4.72(d,J=11.08Hz,1H)、2.60(d,J=12.07Hz,1H)、2.30(dt,J=4.11,13.45Hz,1H)、2.11−1.93(m,2H)、1.92−1.52(m,16H)、1.25(s,3H);ESI−MS m/z 644.25(M+H)
【化59】
【0190】
化合物番号2に記載される同じ合成戦略を用いて化合物番号6を得た。H−NMR(300MHz,CDOD)δ ppm 7.70(s,1H)、7.62(t,J=7.05Hz,1H)、7.52(dd,J=2.08,8.21Hz,1H)、7.38(t,J=7.41Hz,1H)、7.15(d,J=7.93Hz,1H)、7.10(dd,J=1.76,8.19Hz,1H)、6.79(d,J=1.83Hz,1H)、4.99(d,J=11.35Hz,1H)、4.70(d,J=11.00Hz,1H)、2.76−2.59(m,1H)、2.22−1.91(m,3H)、1.89−1.19(m,16H)、1.03(s,3H);ESI−MS m/z 644.75(M+H)
【化60】
【0191】
パラホルムアルデヒド(15mg、0.506mmol)を、AcOH(1mL)に溶解した化合物番号2(20mg、0.028mmol)の溶液に添加した。15分後、トリアセトキシホウ水素化ナトリウム(59mg、0.28mmol)を添加し、一晩反応させた後、反応物を飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル溶媒を真空中で除去し、得られた油をアセトニトリル及び水(1:1、0.1%TFAを含む)の溶液に再溶解し、分取HPLCにより精製した。純粋な化合物番号7の画分を混合し、真空中で濃縮し、水(最小限の量のアセトニトリルを含む)に再溶解し、冷凍し、凍結乾燥させ、白色粉末として化合物番号7(TFA塩)を得た。H−NMR(300MHz,CDOD)δ ppm 7.94(s,1H)、7.61−7.52(m,2H)、7.40(t,J=7.32Hz,1H)、7.19−7.08(m,2H)、6.78(d,J=1.56Hz,1H)、4.99(d,J=11.86Hz,1H)、4.63(d,J=12.06Hz,1H)、3.27(s,3H)、2.61−2.48(m,1H)、2.32−2.14(m,2H)、1.88−1.40(m,18H)、1.37−1.12(m,1H);ESI−MS m/z 628.83(M+H)
【化61】
【0192】
化合物番号7に記載される同じ合成戦略を用いて化合物番号8を得た。H−NMR(300MHz,CDOD)δ ppm 7.63(t,J=7.04Hz,1H)、7.56−7.48(m,2H)、7.42(t,J=7.39Hz,1H)、7.18(t,J=7.96Hz,1H)、7.10(d,J=8.06Hz,1H)、6.79(s,1H)、5.08−4.96(m,1H)、4.57(d,J=11.85Hz,1H)、4.18−3.99(m,1H)、3.87−3.69(m,1H)、2.70−2.54(m,1H)、2.36−2.13(m,2H)、1.94−1.45(m,18H)、1.39(t,J=6.65Hz,3H)、1.32−1.14(m,1H);ESI−MS m/z 642.50(M+H)
【化62】
【0193】
化合物番号4に記載される同じ合成戦略を用いて化合物番号9を得た(水酸化アンモニウム溶液がメタンスルホンアミドの代わりに添加された)。H−NMR(300MHz,CDOD)δ ppm;ESI−MS m/z 627.58(M+H)
【0194】
本MDM2阻害剤がMDM2タンパク質に結合する能力を示すために、競合FP結合アッセイを実施した。本MDM2阻害剤を用いて、SJSA−1異種移植片モデルにおいて安定性試験、細胞成長アッセイ、薬物動態研究、及びインビボ有効性研究も実施された。
蛍光偏光MDM2結合アッセイ
【0195】
本明細書に開示されるMDM2阻害剤の結合親和性は、組換えヒトHisタグMDM2タンパク質(残基1〜118)及び蛍光性付加p53系ペプチドを使用して、蛍光偏光に基づく(FPに基づく)結合アッセイを用いて決定された。
【0196】
蛍光プローブの設計は、PMDM6−Fと呼ばれる以前に報告された高親和性p53系ペプチド模倣化合物に基づいた(Garcia−Echeverria et al.,J.Med.Chem.43:3205−3208(2000))。組換えMDM2タンパク質を伴うPMDM6−FのK値は飽和曲線から決定された。MDM2タンパク質はDynex 96ウェル黒色丸底プレート中で連続的に2倍希釈され、PMDM6−Fペプチドは1nM濃度で添加された。アッセイは緩衝液:100mMリン酸カリウム(pH7.5)、100μg/mLウシγグロブリン、0.02%アジ化ナトリウム、0.01% Triton X−100)中で実施され、偏光値は、ULTRA READER(Tecan U.S.Inc.,Research Triangle Park,NC)を用いて、3時間のインキュベーション後に測定された。IC50値は、mP値を非線形回帰によるシグモイド型用量応答曲線(変数勾配)に適合させることにより得、1.40nM±0.25であると決定された。K値は方程式:K値=IC50−L0/2を用いて計算された。L0/2は遊離リガンド(PMDM6−F)の濃度である。PMDM6−Fは1nMの最終濃度で使用されたため、L0/2は0.5nMであった。
【0197】
用量依存競合結合実験はDMSOに試験化合物を連続希釈することにより実施された。5μLの試験化合物の試料、ならびにアッセイ緩衝液(100mMリン酸カリウム(pH7.5)、100μg/mLウシγグロブリン、0.02%アジ化ナトリウム、0.01%Triton X−100)中の事前インキュベートしたMDM2タンパク質(10nM)及びPMDM6−Fペプチド(1nM)を、Dynex 96ウェル黒色丸底プレートに添加し、125μLの最終容量を得た。各アッセイに関して、対照はMDM2タンパク質及びPMDM6−F(0%阻害に等しい)、PMDM6−Fペプチドのみ(100%阻害に等しい)を含んだ。偏光値は3時間のインキュベーション後に測定された。IC50値、すなわち、50%の結合ペプチドが置換される阻害剤濃度は非線形最小二乗法を用いて勾配から決定された。曲線の適合はGRAPHPAD PRISMソフトウェア(GraphPad Software,Inc.,San Diego,CA)を用いて実施された。このアッセイの結果は表2に要約される。
細胞成長アッセイ
【0198】
同系HCT−116結腸癌細胞系はBert Vogelstein教授(Johns Hopkins,Baltimore,MD)からの寄贈であり、10%FBSを含有するマッコイ5A培地中で維持された。SJSA−1細胞系はATCC(Manassas,VA)から得、10%FBSを含有するRPMI−1640培地中で維持された。
【0199】
化合物と共に細胞を、2〜3×10細胞/ウェルの密度で96ウェル平底細胞培養プレート中に播種し、4日間インキュベートした。試験化合物の濃度を増加しながら処置した後の細胞成長阻害速度は、WST−8(2−(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム一ナトリウム塩(Dojindo Molecular Technologies Inc.,Gaithersburg,Maryland)により決定された。WST−8を各ウェルに10%の最終濃度で添加し、次いでプレートを37℃で2〜3時間インキュベートした。試料の吸光度はTECAN ULTRA読取機を用いて450nmで測定された。細胞成長を50%(IC50)阻害した化合物の濃度はGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software,La Jolla,CA 92037,USA)を用いて、未処置細胞及び化合物で処置された細胞の吸光度を比較することにより計算された。このアッセイの結果は表2に示される。
【表3-1】
【表3-2】
SJSA−異種移植片モデルを用いたインビボ有効性研究
【0200】
SJSA−1(骨肉腫)腫瘍細胞をトリプシン(0.05%)−EDTA(0.53mM)(GIBCO(商標)、Invitrogen Corp.)で回収し、成長培地を添加し、細胞を氷上に設置した。細胞試料をトリパンブルー(GIBCO(商標)、Invitrogen Corp.)と1:1混合し、生存/死滅細胞の数を決定するために血球計数器上で数えた。細胞を1X PBS(GIBCO(商標)、Invitrogen Corp.)で1回洗浄し、PBSに再懸濁した。マトリゲル注射に関して、PBS中で洗浄した後、5mg/mlの最終マトリゲルタンパク質濃度のために、細胞を1:1のPBS及びマトリゲル(BD Biosciences,Invitrogen Corp.)の氷冷混合物に再懸濁した。SJSA−1腫瘍を、マトリゲルと共に0.1ml中5×10細胞でC.B−17 SCIDマウスに接種した。27ゲージ針を用いて、各マウスの側腹領域中に細胞をs.c.注射した。
【0201】
マウスにおいて成長する腫瘍の大きさはキャリパーを用いて2次元で測定された。腫瘍体積(mm)=(AxB)/2であり、式中、A及びBは、それぞれ、腫瘍の長さ及び幅(mmで)である。処置中、腫瘍体積及び体重は週に3回測定された。処置を停止した後、腫瘍体積及び体重は週に少なくとも1回測定された。腫瘍成長及び毒性を更に観察するために、マウスを更に60日間保持した。化合物番号1、番号7、及び番号8の抗腫瘍活性は図2に示される。異なる用量で、及び異なる投薬スケジュール(3週間、週に1回(qw*3wks)、3週間2日に1回、3週間、週のうち3日間毎日(qd1−3/w*3wks)、及び2週間毎日(qd*14d)を含む)による化合物番号8(経口経管栄養を介して投与された)の抗腫瘍活性は図3に示される。
【0202】
本明細書に提供される化合物のインビボ投与に好適なビヒクルは、限定されないが、10%PEG 400:3%Cremophor:87%PBS;98%PEG 200:2%ポリソルベート80;98%PEG 200:2%TPGS;及び0.5%ポリソルベート80:0.6%メチルセルロース:98.9%水を含む。

溶液中の化合物の安定性
【0203】
化合物の安定性は、高速液体クロマトグラフィーを用いて、1:1のMeOH:HO、1:1のCHCN:HO、及び細胞培養培地において決定された。
【0204】
以下の表3、4、及び5は、化合物番号2、化合物番号7、及び化合物番号8のミクロソーム安定性、経口薬物動態、及び細胞成長阻害を示す追加の試験結果を要約する。
【表4】
【表5】
【表6】
【0205】
本発明は、構造式(I)の化合物及び構造式(I)の化合物を含む薬学的組成物ならびに薬学的に許容される担体を包含する。
【0206】
本発明は、治療有効量の構造式(I)の化合物を患者に投与することを含み、該患者は過剰増殖疾患を有し、癌などの過剰増殖疾患の細胞は機能性p53を発現する、患者を治療する方法も包含し、1つ以上の抗癌剤、例えば化学療法薬または放射線療法を患者に投与することを更に含む。
【0207】
本発明は、好ましい実施形態と共に説明される。しかしながら、本発明は開示される実施形態に限定されないことを理解するべきである。本明細書における本発明の実施形態の説明を考慮すれば、様々な修正が当業者によって行われ得ることを理解する。このような修正は以下の特許請求の範囲によって包含される。
図1
図2
図3