(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6694842
(24)【登録日】2020年4月22日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】ロール成型板状体、その製造方法および製造設備列
(51)【国際特許分類】
B21D 5/08 20060101AFI20200511BHJP
B21D 28/24 20060101ALI20200511BHJP
E04C 2/08 20060101ALI20200511BHJP
E04C 2/30 20060101ALN20200511BHJP
【FI】
B21D5/08 N
B21D28/24 A
B21D5/08 S
E04C2/08 Z
!E04C2/30 S
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-62548(P2017-62548)
(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2018-164920(P2018-164920A)
(43)【公開日】2018年10月25日
【審査請求日】2019年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000200323
【氏名又は名称】JFE鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真部 貴行
(72)【発明者】
【氏名】清水 彬
【審査官】
山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−244427(JP,A)
【文献】
特開平11−244961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/00 − 9/18
B21D 28/24
E04C 2/00 − 2/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板コイルから払い出された板材を、該板材を挟み込むロール対のロール相互間を1回または複数回にわたり通板させることによって該ロール対のロール表面に形成されたカリバーと同等の形状からなる断面形状が付与されたロール成型板状体であって、該板状体は、幅方向の一端から他端に向けて形成され、その部位を基点とする屈曲にて定尺板状体に切り離し可能な少なくとも1本の破断予定線を有することを特徴とするロール成型板状体。
【請求項2】
前記破断予定線は、前記板材と同等の厚さを有し、その部位の屈曲により破断可能な少なくとも1つの幅狭片と、該幅狭片に隣接して形成された少なくとも1つ切り欠きからなる、ことを特徴とする請求項1に記載したロール成型板状体。
【請求項3】
前記板材と同等の厚さを有しその部位を屈曲させることにより破断可能な少なくとも1つの幅狭片と、該幅狭片に隣接して形成され、該板材の厚さ方向に向けて貫通する少なくとも1つの貫通開孔とからなる、ことを特徴とする請求項1または2に記載したロール成型板状体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載したロール成型板状体を製造する方法において、鋼板コイルから払い出された板材に破断予定線を形成し、次いで、該板材を挟み込むロール対を備えたロール成型機にて1回または複数回にわたり通板させることによって該ロール対のロール表面に形成されたカリバーと同等の形状からなる断面形状を付与することを特徴とするロール成型板状体の製造方法。
【請求項5】
鋼板コイルから払い出された板材を挟み込む少なくとも一組のロール対を備え、該ロール対のロール相互間を1回または複数回にわたり通板させることによって該ロール対のロール表面に形成されたカリバーと同等の形状からなる断面形状を付与するロール成型機と、該ロール成型機の入側に設置され、鋼板コイルから払い出された板材を該ロール成型機に通板させるに先立って該板材に破断予定線を形成するパンチャーからなる、ことを特徴とするロール成型板状体の製造設備列。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造物を構築する際に使用される内装板、外装板等のパネルあるいは屋根材に適したロール成型板状体、その製造方法および製造設備列に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築構造物を構築する際に使用される内装板、外装板等のパネルや屋根材等は、鋼板コイルから払い出された板材を、ロール表面にカリバーが形成された複数のロール対の相互間を通板させ、該カリバーと同等の形状を板材に付与する、ロール成型機を使用して製造されているのが一般的であり、この点に関する先行技術としては、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−161921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、かかるロール成型機を使用して、例えば、長さが極端に短いものを成型する場合(長さが1m未満のもの)にあっては、ロール対からロール対への板材の受け渡しが困難になることから、予め長さの長い板材を用いて成型し、その後、研磨ディスクによる高速切断機あるいはプラズマ切断機を用いた切断作業を経て所望の長さにしている。しかしながら、かかる切断作業では、切断部位を確定する位置決め工程が不可欠であり、切断そのものに時間がかかる不具合があり、また、バリの発生も避けられないことからその処理も必要であって効率的な製造が行えるとはいえない。しかも、成型にかかわる板材が複雑な断面形状を有している場合には、切断時に断面形状が変形することが懸念されるため、ロール成型機を使った板材の成型に制限を受けることもあり、未だ改善の余地が残されている。
【0005】
本発明の課題は、上述したような不具合を起すことなしに効率よく製造することができるロール成型板状体、その製造方法およびその製造設備列を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、鋼板コイルから払い出された板材を、該板材を挟み込むロール対のロール相互間を1回または複数回にわたり通板させることによって該ロール対のロール表面に形成されたカリバーと同等の形状からなる断面形状が付与されたロール成型板状体であって、該板状体は、幅方向の一端から他端に向けて形成され、その部位を基点とする屈曲にて定尺板状体に切り離し可能な少なくとも1本の破断予定線を有することを特徴とするロール成型板状体である。
【0007】
前記破断予定線は、前記板材と同等の厚さを有し、その部位の屈曲により破断可能な少なくとも1つの幅狭片と、該幅狭片に隣接して形成された少なくとも1つ切り欠きからなるものとするか、また、前記板材と同等の厚さを有しその部位を屈曲させることにより破断可能な少なくとも1つの幅狭片と、該幅狭片に隣接して形成され、該板材の厚さ方向に向けて貫通する少なくとも1つの貫通開孔とからなるものとするのが好ましい。
【0008】
また、本発明は、ロール成型板状体を製造する方法において、鋼板コイルから払い出された板材に破断予定線を形成し、次いで、該板材を挟み込むロール対を備えたロール成型機にて1回または複数回にわたり通板させることによって該ロールのロール表面に形成されたカリバーと同等の形状からなる断面形状を付与することを特徴とするロール成型板状体の製造方法である。
【0009】
さらに、本発明は、鋼板コイルから払い出された板材を挟み込む少なくとも一組のロール対を備え、該ロール対のロール相互間を1回または複数回にわたり通板させることによって該ロールのロール表面に形成されたカリバーと同等の形状からなる断面形状を付与するロール成型機と、該ロール成型機の入側に設置され、鋼板コイルから払い出された板材を該ロール成型機に通板させるに先立って該板材に破断予定線を形成するパンチャーからなる、ことを特徴とするロール成型板状体の製造設備列である。
【発明の効果】
【0010】
本発明よれば、破断予定線を基点に屈曲させるだけで定尺板状体に切り離すことが可能であり、製造効率の低下を伴うような切断作業は不要となる。
【0011】
また、本発明によれば、破断予定線を形成する間隔を適宜変更することで、長さが極端に短いロール成型板状体を製造する場合にも容易に対応し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明にしたがうロール成型板状体の実施の形態を模式的に示した外観斜視図である。
【
図2】(a)は、
図1の平面図、(b)は、
図1の正面図である。
【
図3】
図1に示したロール成型板状体を、破断予定線から切り離した状態を示した図である。
【
図4】本発明にしたがうロール成型板状体を製造するのに好適な製造設備列の一例を模式的に示した図である。
【
図5】
図1に示したロール成型板状体の成型前の平面を示した図である。
【
図6】本発明にしたがうロール成型板状体の成型前の平面を示した図である。
【
図7】本発明にしたがうロール成型板状体の成型前の平面を示した図である。
【
図8】本発明にしたがうロール成型板状体の成型前の平面を示した図である。
【
図9】本発明にしたがうロール成型板状体の成型前の平面を示した図である。
【
図10】本発明にしたがうロール成型板状体の成型前の平面を示した図である。
【
図11】本発明にしたがうロール成型板状体の成型前の平面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明にしたがうロール成型板状体の実施の形態を、幅方向の端部に上ハゼ、下ハゼを備えた嵌合式屋根材(立平葺屋根材)を例として示した外観斜視図であり、
図2(a)は、
図1の平面図、(b)は
図1の正面図である。ロール成型板状体は、具体的には、厚さ0.3〜1.2mm程度の亜鉛めっき鋼板、アルミニウム亜鉛合金めっき鋼板、ステンレス鋼板、銅板、アルミニウム板あるいはそれらの塗装または被覆鋼板等の金属製部材で構成されたものが適用される。
【0014】
図1、2に示した嵌合式屋根材は、同じ断面形状をもち、長さ、平面形状が種々異なるものを複数枚用意し、下ハゼ同士、上ハゼ同士をその水上側、水下側で相互に連係させることによって建築構造物の軒から棟に向けて屋根材同士のつなぎ合わせを可能とする一方、上ハゼ、下ハゼを隣接配置される屋根材の下ハゼ、上ハゼに嵌合させることによって建築構造物の軒に沿う屋根材同士のつなぎ合わせを可能とするものであって、これらのつなぎ合わせ作業を繰り返すことによって屋根の葺きあげが行われる。
【0015】
図における符号1は、平板状をなす屋根材本体、2は、屋根材本体1の一方の幅方向の端部に設けられた下ハゼ、3は、屋根材本体1のもう一方の幅方向の端部に設けられた上ハゼである。また、4は、屋根材本体1の幅方向の一端から他端に向けて形成された破断予定線である。破断予定線4は、成型前の板材と同等の厚さを有しその部位を屈曲させることにより破断可能な幅狭片4aと、屋根材本体1の厚さ方向に向けて貫通する貫通開孔4bから構成されている。この破断可能な幅狭片4aの寸法は、対象とする屋根材の材質や厚み等の条件に応じて適宜決定される。たとえば厚さ0.3〜0.5mm程度の亜鉛めっき鋼板の場合は1〜20mm程度である。なお、破断予定線4は、幅狭片4aと貫通開孔4bを組み合わせたものを例として示しているが、幅狭片4aと切り欠き4c(
図8、
図10参照)、あるいは幅狭片4aと貫通開孔4bおよび切り欠き4cを適宜組み合わせることもできる。貫通開孔4bの開孔隙間tについても対象とする屋根材の材質や厚みに応じて適宜決定される。たとえば厚さ0.3〜0.5mm程度の亜鉛めっき鋼板の場合は1〜20mm程度である。
【0016】
上記の如き嵌合式屋根材等を、複数のロール対を備えた、例えば多段式のロール成型機を用いて製造する場合においては、長さが極端に短いものを成型対象とすると、板材の、ロール対からロール対への受け渡しが困難となるため、通常は、予め長さの長いものを成型し、その後、研磨ディスクによる高速切断機あるいはプラズマ切断機を用いた切断作業を経て所望の長さに調整する必要があり、かかる成型方式では効率的な製造が行い難いことは前述したとおりである。
【0017】
本発明のロール成型板状体は、ロール成型板状体の成型後に破断予定線4を基点にして板材そのものを屈曲させ、幅狭片4aを切断するだけで
図3に示すように長さの短い定尺板状体に切り離すものであり、切り離された板状体は、従来のような煩雑な切断作業は不要であり製品としてそのまま使用することができる。
【0018】
図4は、本発明にしたがうロール成型板状体を製造するのに好適な製造設備列の一例を模式的に示した図である。
【0019】
図4における符号5は、鋼板コイル、6は、鋼板コイル5を所定の長さに切断するカット装置、7は、ロール成型機である。
【0020】
ロール成型機7は、ここでは、ロール対7a〜7gを7つタンデムに配列したものを例として示してある。ロール対7a〜7gのロール表面には、それぞれ段階的に成型が進むカリバーが形成されており、鋼板コイル5から払い出された板材5′を、ロール成型機7を通過させることによって、該カリバーと同等の形状からなる断面形状が付与されるようになっている。
【0021】
また、符号8は、ロール成型機7の入側に配置され、板材5′に破断予定線4を形成するためのパンチャーである。パンチャー8は、例えば、打ち抜き型を備えたプレス式のものを使用することができるが、破断予定線4を効率よく形成できるものであれば、その形式についてはとくに限定されない。
【0022】
かかる製造設備列を用いて、上掲
図1に示すようなロール成型板状体を製造するには、鋼板コイル5から払い出された板材5′に対して、まず、パンチャー8により
図5に示すような破断予定線4を形成する。そして引き続き、該板材5′をロール成型機7に通板させて成型すればよい。
【0023】
破断予定線4は、ここでは、ロール成型板状体の切り離し後における端部形状が切っ先形状になるように傾斜角度を付けたものを例として示したが、破断予定線4は、
図6〜11に示すような線種、形状とすることも可能であり、破断予定線4の、幅狭片4aと貫通開孔4bとの配列形態や平面形状等については、製品として使用される板材の使用目的に応じて種々変更されるものであり、図示のものに限定されることはない。なお、
図9、11における符号4cは切り欠きを表示している。
【0024】
また、破断予定線4は、所望のロール成型板状体の長さに応じて任意に形成されることはいうまでもない。
【0025】
本発明にしたがうロール成型板状体は、複雑な断面形状を有していたり、短尺なものを成型対象としていても、効率的な製造が可能でありその有用性は非常に高い。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、効率的な製造が可能なロール成型板状体、その製造方法、製造設備列を提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 屋根材本体
2 下ハゼ
3 上ハゼ
4 破断予定線
4a 幅狭片
4b 貫通開孔
4c 切り欠き
5 鋼板コイル
5′ 板材
6 カット装置
7 ロール成型機
7a〜7g ロール対
8 パンチャー