(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
本発明は、高分子フィルムを含んでなる包装容器内にレタスを含む青果物を収納してなる包装体であって、内部二酸化炭素濃度が1〜98体積% である 、上記包装体である。すなわち、本発明の包装体は、少なくとも、包装容器と、そこに収納された青果物と、を有するものである。
【0010】
包装容器
本発明の包装体を構成する包装容器は、高分子フィルムを含んでなるものである。ここで「高分子フィルムを含んでなる」とは、包装容器の全部が高分子フィルムで構成されている場合、及び蓋材等包装容器の一部が高分子フィルムで構成されている場合、の双方を含む趣旨である。
従って、上記包装容器は、全部又は主要部が可撓性の高分子フィルムで構成された可撓性の包装容器、いわゆる包装袋であってもよく、可撓性の高分子フィルムとコーティング紙等のそれ以外の可撓性の部材を組み合わせた可撓性の包装容器であってもよく、あるいは可撓性の高分子フィルムと剛直な部材とを組み合わせた包装容器、例えば、蓋材としての高分子フィルムと、トレー、カップ等の剛直な部材とを組み合わせた形態のものであってもよい。
【0011】
包装容器がいわゆる包装袋である実施形態においては、例えば、2枚の高分子フィルムを互いに重ね合わせた状態、または1枚の高分子フィルムを折り重ねた状態で、3辺または2辺を熱シールにより融着させる等して包装袋を形成することができる。残る1辺は、青果物等の内容物を包装袋内に配置した後、同様に熱シールにより融着させるなどして封止することができる。
なお、このような包装袋は、その平面視での形状は円形、三角形、四角形、四角形以上の多角形でもよいが、加工性や取扱いの容易さの観点から長方形をなすことが好ましい。
【0012】
本発明で用いる包装容器は、以上説明した様に高分子フィルムを含んでなるものであり、その酸素透過度には特に限定は無いが、酸素透過度が20℃、90%RHにおいて、20000
mL/m
2/atm/
24hr以下である包装容器を用いることが望ましい。
酸素透過度が上記範囲にある包装容器を用いることで、内部ガス、とりわけ二酸化炭素の流出、外気、とりわけ酸素の流入等による内部ガス組成の変動が抑制、又は緩和され、レタスを含む青果物の鮮度保持に適した環境の維持が容易となる。包装容器の酸素透過度は、15000
mL/m
2/atm/
24hr以下であることがより好ましく、12000
mL/m
2/atm/
24hr以下であることが特に好ましい。
包装容器の酸素透過度には特に下限は存在しないが、レタスを含む青果物にある程度の呼吸を許容し、異臭の発生を一層効果的に防止する観点からは、500
mL/m
2/atm/
24hr以上であることが好ましく、800
mL/m
2/atm/
24hr以上であることが特に好ましい。また、コスト等を考慮して、通常入手可能な高分子フィルムを用い、比較的単純な構造で包装容器を構成する限り、その酸素透過度は、500
mL/m
2/atm/
24hr以上となることが一般的である。
【0013】
包装容器の酸素透過度は、例えば以下の方法により測定することができる。
まず、次の方法で内寸a(cm)×b(cm)の袋を形成する。
1枚のフィルムをほぼ均等に2つ折りにし約5mm幅で、インパルスシーラー(富士インパルス社製、品番Fi−200−10WK)で加熱条件の目盛を3に設定してヒートシールを行い、当該ヒートシール辺がほぼ中央にくるようにヒートシール辺とほぼ垂直をなす辺の一方の全体を、他方の辺の一方の連通部となる端部約2cmを除く全体をヒートシールして、内寸a(cm)×b(cm)の袋を形成する。
次に前記連通部から窒素ガスを注入し、袋内が飽和状態になれば袋内のガスを連通部からほぼすべて排出する。この操作を5回繰り返した後、窒素ガスを注入して袋内を窒素ガスで飽和させて連通部を前記インパルスシーラーで同様の条件でヒートシールする。窒素ガスを飽和させた袋を22℃、相対湿度40%の空気中(1気圧、酸素濃度:21%、窒素濃度:79%)の室内に6時間放置する。
次にサンプリング針チューブで約20ccサンプリングして食品包装用ジルコニア酸素濃度計(東レエンジニアリング社製、型番LC−750F)にて袋中の酸素濃度を測定する。さらに、袋中の気体の体積を測定し、下記の式から酸素透過度を算出する。
(式) 酸素透過度=内部酸素濃度変化(%)/100×体積(cm
3)×24×60/時間(360分)×10000cm
2/面積(2×a×b×cm
2)/酸素の分圧(0.21atm)
包装容器の酸素透過度は、包装容器を構成する高分子フィルムの材質、厚み、層構成、コーティングの有無、種類、適用面積などを適宜選択、調整することで、所望の範囲に調整することができる。高分子フィルムの詳細については、後述する。
また、高分子フィルムに開口部を設ける(或いは設けない)ことによっても、包装容器の酸素透過度を適宜調整することができる。酸素透過度は、この開口部の、大きさ、形状、個数によっても適宜調整することができる。開口部の詳細についても、後述する。
【0014】
青果物
本発明の包装体は、上記包装容器内にレタスを含む青果物を収納してなる。ここで、同青果物がレタスを「含む」とは、当該青果物の全部がレタスで構成されている場合、及び当該青果物の一部がレタスで構成されている場合、の双方を包含する趣旨である。従って、包装容器内に収納される青果物は、レタス以外の野菜、果物等を含んでいてもよく、含んでいなくともよい。更には、レタスを含んでいる限りにおいては、青果物以外の成分、例えば青果物以外の食品、調味料、食品添加物等を含んでいてもよい。
【0015】
本発明の包装体を構成する(包装容器に収納される)「レタス」は、キク科アキノノゲシ属チシャ種に属する野菜一般を包含する概念であり、「レタス」の名称そのもので流通する野菜には限定されない。
すなわち、ここでいう「レタス」は、サンチュなどに代表される、掻きチシャまたはカッティングレタスと呼ばれるもので茎から葉を掻き採るタイプ;ロメインレタスなどに代表される、葉がほとんど巻かず立っている立ちチシャと呼ばれるタイプ;サニーレタスやグリーンリーフなどに代表される、非結球のリーフレタス(葉チシャ);及び一般的にレタスと呼ばれるものに代表される、結球する玉レタス(玉チシャ);の全てを包含する概念である。
ここでいう「レタス」の好ましい具体例としては、レタス(玉レタス)、グリーンリーフ、ロメインレタス(コスレタス)、サニーレタス、シルクレタス、ピンクロウスター、サラダ菜、ブーケレタス、グリーンオークリーフ(サラノバレタス)、フリルレタス、(チマ)サンチュ、茎レタス(ステムレタス)等を挙げることができるが、これらには限定されない。
【0016】
本発明において包装容器内に、レタスとともに収納することができるレタス以外の青果物には特に制限は無く、レタスとともに食用に供され得る、非加熱又は加熱の青果物を適宜収納することができる。その様な青果物の具体例としては、バナナ、マンゴー、ウメ、リンゴ、イチゴ、ミカン、ブドウ、和梨、西洋梨のような果実類、ダイコン、ニンジン、ナガイモ、ゴボウのような根菜類、トマト、キュウリ、ナス、ピーマン、エダマメ、オクラのような果菜類、緑豆モヤシ、大豆モヤシ、トウミョウのような芽物類、シイタケ、シメジ、エリンギ、マイタケ、マツタケのような菌茸類(キノコ類)、ブロッコリー、ホウレンソウ、コマツナ、チンゲンサイ、キャベツ、アスパラガスのような葉茎菜類、花卉または苗を挙げることができるが、これらには限定されない。酸素濃度を制御し、これにより保持するという本実施形態の作用からは、実質的に呼吸を行っている形態の青果物の鮮度保持に特に有効である。
【0017】
本発明において包装容器に収納され鮮度保持されるレタスを含む青果物の形態にも特に制限は無い。従って、レタスを含む青果物は、収穫されたままのものであってもよく、外葉等を除去したいわゆる前処理済みのものであってもよく、カット済みのいわゆるカット野菜(カットレタス)であってもよい。また、青果物は、洗浄、冷却、脱水等の処理のいずれか又は全てを行ったものであってもよく、またこれらの処理のいずれも行わないものであってもよい。
なお、収納され鮮度保持されるレタスがカットされたレタスの場合には、カット、洗浄、脱水および/または乾燥処理を行い、適正な水分量に調整されていることが好ましい。より具体的には、例えばカットされたレタスを「大量調理施設衛生管理マニュアル」(厚生省)に基づき80〜120ppm、10〜20分の次亜塩素酸洗浄後に「栄養表示基準における栄養表示等の分析方法」(消費者庁)に基づき70℃で5時間の減圧乾燥をおこなったときの重量減少を元に測定した水分量が20〜30%未満の範囲にすることが、臭気発生の防止および褐変等外観の劣化の防止のバランスの観点から特に好ましい。
【0018】
カット野菜は、簡便に食事に供することができることなどから近年需要が増加しており、高い経済的価値を有する。カットレタスは、カット野菜の代表的なものであり、そのままサラダ等として簡便に食事に供することができるので、特に高い経済的価値を有する。一方、野菜、特にレタスはカットされることにより呼吸作用や代謝反応が急激に活発化し、品質が急激に低下する傾向がある。本実施形態は、この様なカットレタスの鮮度保持に有効に用いることができるので、特に高い経済的価値を有する。
【0019】
レタス(及び存在する場合にはレタスとともに収納される青果物)の種類及び形態により、鮮度保持に好ましい二酸化炭素濃度は、本発明の範囲内である程度異なり、それに伴い好ましい二酸化炭素透過度を間接的に規定する酸素透過度、並びにその様な酸素透過度を与える高分子フィルムの態様も異なるが、これらを適切に設定することで、上記レタス(及び存在する場合にはレタスとともに収納される青果物)のいずれについても、本発明によって有効に鮮度保持を行うことができる。
【0020】
包装体
本発明の包装体の、内部二酸化炭素酸素濃度は1〜98体積%であり、内部酸素濃度は1〜19体積%である。内部二酸化炭素酸素濃度が1〜98体積%であることによって、褐変の抑制に適した低酸素濃度環境にある包装容器内に収容された青果物中のレタスからの異臭の発生を有効に防止し、レタスを含む青果物の褐変の抑制と異臭の防止とを、従来技術の限界を超えた高いレベルで両立することができる。
包装体内の酸素濃度を所定範囲内に調整することで、包装体内に収納された青果物の褐変等の外観の劣化を抑制し得ることは、従来から知られていた。しかし、酸素濃度を所定値以下とすると、青果物の無酸素呼吸により、アルコール臭等の異臭が発生するという問題があった。青果物のなかでもレタスは特に褐変が生じ易く、その抑制のための低酸素濃度の要請が強いため、レタスを含む青果物の鮮度保持においては、褐変の抑制と異臭の防止とを両立させることは、従来特に困難であった。
本発明においては、レタスを含む青果物を収納した包装体において、二酸化炭素を導入し、内部二酸化炭素濃度を所定範囲内とすることで、褐変の抑制と異臭の防止とを、従来技術の限界を超えて高いレベルで両立させるという、驚くべき効果が実現される。
本発明において、内部二酸化炭素酸素濃度が所定範囲内であることによって、包装容器内に収容された青果物中のレタスの褐変の抑制と異臭の防止とを、従来技術の限界を超えた高いレベルで両立できるメカニズムは必ずしも明らかではないが、通常呼吸の生成物である二酸化炭素量を過剰とすることで、レタスを含む青果物の呼吸に関する平衡状態に何らかの影響を与え得ることと、なんらかの関係があるものと推定される。
【0021】
包装体の内部二酸化炭素濃度は3体積%以上であることが好ましく、5体積%以上であることが好ましく、10体積%以上であることがより好ましい。
包装体の内部二酸化炭素濃度は、50体積%以下であることが、より好ましい。
包装体の内部二酸化炭素濃度は、包装直後の二酸化炭素濃度を調整することで、所望の範囲に調整することが可能である。より具体的には、包装体を作製する際に、包装容器内に充填するガス中の二酸化炭素濃度を調整することで、適宜調整することが可能である。例えば、包装体を作製する際に、包装容器内に充填するガス中の二酸化炭素濃度を、50体積%以上とすることが好ましく、70体積%以上とすることがより好ましく、90体積%以上とすることが特に好ましい。
また、包装体の内部二酸化炭素濃度は、包装体外に流出する二酸化炭素量、及び/又は包装体内のレタスを含む青果物の呼吸により発生する二酸化炭素量を調整することでも、所定の濃度に調整することが可能である。より具体的には、包装容器のガス透過度を調整することで、包装体外に流出する二酸化炭素量を調整することが可能であり、包装容器に収納する青果物の量及び/または包装容器内に充填する酸素の量を調整することで、青果物の呼吸により発生する二酸化炭素量を調整することが可能である。
包装容器内の酸素濃度および二酸化炭素濃度は、例えば、Dansensor製食品包装用O
2/CO
2分析計Check Mate 3により測定することができる。
【0022】
包装体の内部酸素濃度の上限は19体積%であるが、レタスを含む青果物の褐変等の外観の劣化を一層有効に抑制するなどの観点からは、18.5体積%以下であることが、より好ましい。
包装体の内部酸素濃度の下限は1体積%であるが、レタスを含む青果物の最低限の呼吸を許容し、無酸素呼吸による異臭を一層効果的に抑制する観点等から、1.2体積%以上であることが好ましく、1.3体積%以上であることが、より好ましい。
包装体の内部酸素濃度は、包装直後の酸素濃度を調整することで、所望の範囲に調整することが可能である。より具体的には、包装体を作製する際に、包装容器内に充填するガス中の酸素濃度を調整することで、適宜調整することが可能である。例えば、包装体を作製する際に、包装容器内に充填するガス中の酸素濃度を、19体積%以下とすることが好ましい。
また、包装体の内部酸素濃度は、包装体外に流出し、若しくは包装体外から流入する酸素量、及び/又は包装体内のレタスを含む青果物の呼吸により消費される酸素量を調整することでも、所定の濃度に調整することが可能である。より具体的には、包装容器の酸素透過度を調整することで、包装体外に流出し、若しくは包装体外から流入する酸素量を調整することが可能であり、包装容器に収納する青果物の量及び/又は包装容器内に充填する酸素の量を調整することで、青果物の呼吸により消費される酸素量を調整することが可能である。
【0023】
本発明の包装体においては、レタスを含む青果物の褐変、及び異臭の発生を、包装体の封止後10℃で保持した場合、72時間にわたって抑制することが好ましい。
この好ましい実施形態は、レタスを含む青果物の褐変、及び異臭の発生を、包装体の封止後72時間にわたって抑制することで、流通上十分と考えられる長期間にわたって、レタスを含む青果物の鮮度を高いレベルで維持することができるので、実用上、経済上高い価値を有する。
この好ましい実施形態においては、レタスを含む青果物の褐変、及び異臭の発生を、包装体の封止後10℃で保持した場合、96時間にわたって抑制することがより好ましく、包装体の封止後120時間にわたって抑制することが更に好ましく、包装体の封止後144時間にわたって抑制することが特に好ましい。
【0024】
本発明の包装体の、包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部二酸化炭素濃度は、6〜90体積%であることが好ましい。封止後10℃で72時間保持した後における内部二酸化炭素濃度が6〜90体積%であることによって、包装容器内に収容された青果物中のレタスの褐変の抑制と異臭の防止とを、長期間にわたって一層高いレベルで両立することができる。
本発明の包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部二酸化炭素濃度は6.5〜90体積%であることがより好ましく、6.8〜89体積%であることが特に好ましい。
ここで、「包装体の封止後」とは、包装容器内にレタスを含む青果物を収納した後、包装容器を封止してからの経過時間をいう。すなわち、「包装体の封止後10℃で72時間保持した後」とは、包装容器内にレタスを含む青果物を収納した後、包装容器を封止してから10℃の条件下で72時間保持した直後の状態をいう。
【0025】
本発明の包装体においては、内部二酸化炭素濃度が、大気の二酸化炭素濃度よりも高いいため、外部への二酸化炭素の流出により、内部二酸化炭素濃度が経時的に減少する場合が多い。従って、封止後10℃で72時間保持した後における内部二酸化炭素濃度が6体積%以上である本実施形態においては、封止後0から72時間にわたって、内部二酸化炭素濃度が6体積%以上である可能性が高い。この様な二酸化炭素濃度の履歴は、青果物中のレタスの褐変及び異臭の発生を一層有効に抑制するうえで、特に好ましい。
【0026】
包装体封止後10℃で72時間保持した後における内部二酸化炭素濃度は、包装直後の二酸化炭素濃度を調整することで、所望の範囲に調整することが可能である。より具体的には、包装体を作製する際に、包装容器内に充填するガス中の二酸化炭素濃度を調整することで、適宜調整することが可能である。例えば、包装体を作製する際に、包装容器内に充填するガス中の二酸化炭素濃度を、50体積%以上とすることが好ましい。
また、包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部二酸化炭素濃度は、包装体外に流出する二酸化炭素量、及び/又は包装体内のレタスを含む青果物の呼吸により発生する二酸化炭素量を調整することでも、所定の濃度に調整することが可能である。より具体的には、包装容器のガス透過度を調整することで、包装体外に流出する二酸化炭素量を調整することが可能であり、包装容器に収納する青果物の量及び/または包装容器内に充填する酸素の量を調整することで、青果物の呼吸により発生する二酸化炭素量を調整することが可能である。
【0027】
本発明の包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度は19体積%以下であることが好ましい。封止後10℃で72時保持した後間における内部酸素濃度が19体積%以下であることによって、包装容器内に収容された青果物中のレタスからの異臭の発生が長期間にわたって一層有効に抑制される。
本発明の包装体の、封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度は18体積%以下であることがより好ましく、17体積%以下であることが特に好ましい。
本発明の包装体の、封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度は、1体積%以上であることが好ましく、2体積%以上であることがより好ましく、3体積%以上であることが特に好ましい。
【0028】
包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度は、包装直後の酸素濃度を調整することで、所望の範囲に調整することが可能である。より具体的には、包装体を作製する際に、包装容器内に充填するガス中の酸素濃度を調整することで、適宜調整することが可能である。例えば、包装体を作製する際に、包装容器内に充填するガス中の酸素濃度を、20体積%以下とすることが好ましい。
また、包装体の封止後10℃で72時間保持した後における内部酸素濃度は、包装体外に流出し、若しくは包装体外から流入する酸素量、及び/又は包装体内のレタスを含む青果物の呼吸により消費される酸素量を調整することでも、所定の濃度に調整することが可能である。より具体的には、包装容器の酸素透過度を調整することで、包装体外に流出し、若しくは包装体外から流入する酸素量を調整することが可能であり、包装容器に収納する青果物の量及び/又は包装容器内に充填する酸素の量を調整することで、青果物の呼吸により消費される酸素量を調整することが可能である。
【0029】
上述した所望の内部二酸化炭素濃度、及び内部酸素濃度を実現する観点から、包装容器内には、更に窒素等の他のガスを封入してもよい。包装容器の封止時に窒素等の他のガスをともに封入することで、内部二酸化炭素濃度、及び内部酸素濃度を独立に調整することができるからである。
【0030】
高分子フィルム
また、本発明に用いる包装容器において上述した好ましい酸素透過度を実現するためには、酸素透過度が所定値以下である高分子フィルムを用いて、包装容器を構成することが望ましい。
すなわち、本発明において用いる高分子フィルムの酸素透過度は、20℃、90%RHにおいて、20000
mL/m
2/atm/
24hr以下であることが好ましい。20℃、90%RHにおける酸素透過度が上記値以下である高分子フィルムを用いることによって、好ましい実施形態である、酸素透過度が20℃、90%RHにおいて、20000
mL/m
2/atm/
24hr以下である包装容器を、比較的簡単な構成及び製法で、比較的低コストで製造することができる。
本発明において用いる高分子フィルムの酸素透過度は、20℃、90%RHにおいて、15000
mL/m
2/
atm/24hr以下であることがより好ましく、12000
mL/m
2/atm/
24hr以下であることが特に好ましい。
高分子フィルムの酸素透過度には特に下限は存在しないが、ガスバリアコーティング等を行っていない、通常の高分子フィルムを使う限りにおいて、20℃、90%RHにおいて、500
mL/m
2/atm/
24hr以上となることが一般的である。
また、収納された青果物からの異臭の発生を一層効果的に防ぐ観点からは、高分子フィルムは、青果物の最低限度の呼吸が可能な程度の酸素透過率を有することが好ましい。この観点からは、高分子フィルムの酸素透過度は、20℃、90%RHにおいて、750
mL/m
2/atm/
24hr以上であることが好ましく、900
mL/m
2/atm/
24hr以上であることが特に好ましい。
【0031】
本発明で用いる高分子フィルムの酸素透過度の測定方法は、例えば包装容器の酸素透過度の測定方法に関して上記で説明した方法と同様の方法により、測定することができる。
【0032】
高分子フィルムの材質、厚さ、加工方法等を適宜選択することで、高分子フィルムの酸素透過度を適宜調節することができる。例えば、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムの場合には、厚みを10μm以上とすることで、20℃、90%RHにおける酸素透過度を、5000
mL/m
2/atm/
24hr以下とすることができるので好ましい。機械的強度等も併せて考慮すれば、高分子フィルムの厚みは、15〜45μmであることがより好ましく、20〜40μmであることが特に好ましい。
【0033】
上述の様に、高分子フィルムの酸素透過度は、高分子フィルムの材質、厚さ、加工方法等を適宜線多雨することで、調節することができるので、必ずしも、酸素透過度の調節のために高分子フィルムに開口部を設けることを要しない。特に、本発明の好ましい実施形態における、20℃、90%RHにおける20000
mL/m
2/
24hr以下の酸素透過度のうち比較的低い酸素透過度は、高分子フィルムに開口部を設けることなしに実現することができる。
高分子フィルムに開口部を設ける必要が無ければ、製造プロセスがより簡便、低コストなものとなり、また開口部の大きさ、形状等を精密に制御することも不要となる。
高分子フィルム中に開口部が存在しないことは、例えば、包装容器を構成する高分子フィルムが、インク洩れチェッカーで確認できる貫通孔を有さないことにより、確認することができる。
【0034】
一方で、本発明の一実施形態においては、20℃、90%RHにおける20000
mL/m
2/
24hr以下の酸素透過度のうち比較的高い酸素透過度を実現する必要がある場合や、厚い高分子フィルムや、酸素透過度の低い高分子素材を使用する必要がある場合等に、所望の酸素透過度を実現するために、高分子フィルムに設けた開口部を併用しても良い。開口部の形状には特に限定は無く、円形、略円形であってもよく、スリット状であってもよい。円形、略円形の開口部は、加工が容易である点等において好ましく、スリット状での開口部は、異物の侵入を有効に防止できる点等において好ましい。
個々の開口部の大きさと、開口部の個数は、高分子フィルムの酸素透過度が適切な限りにおいて、適宜設定、変更可能であり、その際には、高分子フィルムの有効面積に占める開口部の数が指針となる。例えば2mmの長さのスリット状の開口部であって、閉じた状態では光学顕微鏡(オリンパス社製、型式SZH−131)にて倍率4倍による観察では貫通口としての幅は視認することができないものを設ける場合、200mm×200mmの包装容器に対して1つ存在するごとに約1000
mL/m
2/
24hr/atmの酸素透過度を上げる効果があり、この様な知見に基づき必要とされる包装容器全体の酸素透過度からスリット開口部の数を決めることが好ましい。
【0035】
本実施形態で用いる高分子フィルムの厚みには特に制限は無く、好適な酸素透過度、包装容器を形成した際の可撓性、強度、透明性、経済性、開口部によってもたらされる酸素透過量、開口部の形成の際の精度や容易性、等の観点から、高分子フィルムを形成する材料との関係において適宜好適な厚みを選択すればよい。典型的には、高分子フィルムの厚みは、10から50μmであることが好ましく、15〜45μmであることがより好ましく、20〜40μmであることが特に好ましい。
【0036】
高分子フィルムの材質には、特に制限は無いが、従来の青果物包装用のフィルムに用いられる高分子を適宜使用することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ナイロン(ポリアミド)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリ乳酸等を挙げることができる。また、例えば、セロハン等の天然高分子を用いることもできる。更にこれらのうちのいずれかの材質を単独で用いても良く、これらの複数をブレンドして、及び/又はラミネートして用いてもよい。
【0037】
加工の容易さやコストの観点からは、上記高分子フィルムの材質は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。該熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル・1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレンなどのエチレン系重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体などのプロピレン系重合体、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル・1−ペンテンなどのポリオレフィンが挙げられる。また、該熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の生分解性樹脂、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、該熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等が剛性、透明性に優れるため好ましい。また、該熱可塑性樹脂としては、エチレン系重合体、プロピレン系重合体が軽量でフィルム加工性に優れるためより好ましく、柔軟性、透明性の観点からプロピレン系重合体がさらに好ましい。
【0038】
<プロピレン系重合体>
前記プロピレン系重合体としては、ポリプロピレンの名称で製造、販売されているプロピレン単独重合体(ホモPPとも呼ばれている)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(ランダムPPとも呼ばれている)、プロピレン単独重合体と、低結晶性または非晶性のプロピレン・エチレンランダム共重合体との混合物(ブロックPPとも呼ばれている)などのプロピレンを主成分とする結晶性の重合体が挙げられる。また、プロピレン系重合体は、分子量が異なるプロピレン単独重合体の混合物であってもよく、プロピレン単独重合体と、プロピレンとエチレン又は炭素数4から10のα−オレフィンとのランダム共重合体との混合物であってもよい。
【0039】
前記プロピレン系重合体としては、具体的には、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ペンテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・1−オクテン共重合体などのプロピレンを主要モノマーとし、これとエチレン及び炭素数4から10のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種類以上との共重合体が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0040】
前記プロピレン系重合体の密度は、0.890〜0.930g/cm
3であることが好ましく、0.900〜0.920g/cm
3であることがより好ましい。また、前記プロピレン系重合体のMFR(ASTM D1238 荷重2160g、温度230℃)は、0.5〜60g/10分が好ましく、0.5〜10g/10分がより好ましく、1〜5g/10分がさらに好ましい。
【0041】
<エチレン系重合体>
前記エチレン系重合体としては、エチレンの単独重合体、エチレンを主要モノマーとし、それと炭素数3から8のα−オレフィンの少なくとも1種類以上との共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、そのケン化物及びアイオノマーが挙げられる。具体的には、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体などのエチレンを主要モノマーとし、これと炭素数3から8のα−オレフィンの少なくとも1種類以上との共重合体が挙げられる。これらの共重合体中のα−オレフィンの割合は、1〜15モル%であることが好ましい。
【0042】
また、前記エチレン系重合体としては、ポリエチレンの名称で製造・販売されているエチレンの重合体が挙げられる。具体的には、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましく、LLDPEがより好ましい。LLDPEは、エチレンと、少量のプロピレン、ブテン−1、ヘプテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチル−ペンテン−1等との共重合体である。また、前記エチレン系重合体は、エチレンの単独重合体であってもよく、LLDPE等のエチレンを主体とする重合体であってもよい。
【0043】
前記エチレン系重合体の密度は0.910〜0.940g/cm
3が好ましく、0.920〜0.930g/cm
3がより好ましい。該密度が0.910g/cm
3以上であることにより、ヒートシール性が向上する。また、該密度が0.940g/cm
3以下であることにより、加工性および透明性が向上する
【0044】
なお、ブレンド、及び/又はラミネートは、上記の高分子のうちのいずれか同士のブレンド、及び/又はラミネートであってもよく、また上記の高分子のうちのいずれかと、高分子以外の材料とのブレンド、及び/又はラミネートであってもよい。すなわち、高分子フィルムは、高分子以外の素材、例えば耐熱安定剤(酸化防止剤)、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料等の他、タルク、シリカ、珪藻土などの各種フィラー類を含んでいてもよいし、高分子フィルムと金属箔、紙、不織布等とのラミネートであってもよい。
【0045】
本発明において包装容器を構成する高分子フィルムは、無延伸フィルム、延伸フィルムのいずれであってもよい。
機械的強度等の観点からは、各種高分子の延伸フィルムを好適に用いることができる。
特に、プロピレン系重合体を用いた延伸フィルム(延伸ポリプロピレンフィルム)は、機械的強度、透明性、耐熱性等に優れるため、本発明に用いる包装容器において、特に好ましく使用することができる。
また、エチレン系重合体を用いたフィルム(ポリエチレン系フィルム)も、無延伸フィルム、延伸フィルムのいずれであってもよいが、ヒートシール性等の観点から、無延伸のものを、特に好ましく使用することができる。
本発明において包装容器を構成する高分子フィルムとして特に好適なものの例として、延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン系フィルム、及び延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体を挙げることができる。
【0046】
<延伸ポリプロピレンフィルム>
本発明において好ましく用いられる延伸ポリプロピレンフィルムは少なくとも一方向に延伸されたフィルムから構成されていてもよいし、延伸ポリプロピレンフィルム自体が少なくとも一方向に延伸されていてもよい。また、延伸ポリプロピレンフィルムとして二軸延伸フィルムを得る場合には、例えば逐次、あるいは同時二軸延伸することにより容易に製造することも可能である。延伸ポリプロピレンフィルムとして二軸延伸フィルムを得る場合には、通常、縦方向に5〜8倍延伸し、続いて横方向にテンター機構を用いて8〜10倍延伸し、フィルムの厚さを最終的に20〜40μmとする方法、あるいは、縦方向及び横方向に夫々5〜10倍(面倍率で25〜100倍)延伸することにより製造することができる。
<ポリエチレン系フィルム>
本発明において好ましく用いられるポリエチレン系フィルムは、前記エチレン系重合体を含むフィルムである。ポリエチレン系フィルムは種々の公知の成型方法を用いることができるが、エクストルーダーによる押出によるキャスト成型が、生産効率の観点から好ましい。
【0047】
<延伸フィルム>
ナイロン6、ナイロン66等からなるポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルからなるフィルム、ポリカーボネートフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン及びポリL乳酸、ポリD乳酸、またはポリL乳酸とポリD乳酸を精密に配位したステレオコンプレックス晶ポリ乳酸からなる一軸あるいは二軸延伸フィルムである。
【0048】
<延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体>
本発明において好ましく用いられる延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体は上記ポリエチレン系フィルムの層と延伸フィルムの層を積層して得られる。ポリエチレン系フィルムは一方向または二方向に延伸されていてもよいが、包装袋の機械的強度の安定性の観点から、無延伸フィルムであることが好ましい。
予め作製された延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとを接着剤により貼着させるドライラミネーションを行うが、ここで接着剤を塗布する延伸フィルム表面にはコロナ処理をしておくことが接着安定性の観点から好ましい。具体的には、コロナ処理後のフィルム表面の表面張力が接着安定性の観点から、35mN/m以上が好ましく、40mN/m以上がより好ましい。
【0049】
また、これらの高分子フィルムは、延伸加工、防曇加工や印刷が施されていてもよく、銀、銅のような無機系抗菌剤や、キチン、キトサン、アリルイソチオシアネートのような有機系抗菌剤が塗布されたものであってもよいし、これらがフィルム中に練り込まれているものであってもよい。
青果物等の内容物の鮮度保持の観点からは、上記高分子フィルムが、少なくとも1種の抗菌剤を含有することが好ましい。
また、上記高分子フィルムの表面に特定の界面活性剤が特定量存在し、又は上記高分子フィルムが特定の界面活性剤を特定量含むことで、抗菌機能を有していてもよい。例えば、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物が、上記高分子フィルムの少なくとも一方の表面に存在することが好ましく、当該少なくとも1種の化合物が0.002〜0.5g/m
2存在することが特に好ましい。あるいは、上記高分子フィルムが、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびグリセリンモノカプレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有していることが好ましく、0.001〜3質量部含有していることが特に好ましい。
上記高分子フィルムの表面に特定の界面活性剤が特定量存在し、又は上記高分子フィルムが特定の界面活性剤を特定量含むことで、該高分子フィルムの表面での結露が抑制され、雑菌の繁殖が抑制されることにより、結露(ドリップ)中での雑菌の増殖が抑制され、抗菌機能が発揮される。
【0050】
透明性、可撓性、コスト等の観点からは、従来当該技術分野において広く用いられていた延伸ポリプロピレンフィルム、又は延伸ポリプロピレンフィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体を高分子フィルムとして用いることが特に好ましい。これらのフィルムは一般にヒートシール性に優れるので、包装容器の製造において生産性が良好である。
この場合、延伸プロピレンフィルム単体で用いる場合は、その厚さが10〜100μmであることが好ましく、延伸ポリプロピレンフィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体を用いる場合には、前者の厚さが10〜50μm、後者の厚さが10〜120μmであることが好ましい。
【0051】
なお、ヒートシールに必ずしも適さない高分子フィルムを用いる場合には、該高分子フィルムの全部又は一部にシーラント層をラミネートあるいはコーティングすることで形成すればよい。例えば、アクリル樹脂をコーティングしたセロハンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)に線状低密度ポリエチレン(LLDPE)ポリスチレンとEVAをラミネートしたフィルムが挙げられ、これらを好適な高分子フィルムとして用いることができる。
【0052】
包装体の製造方法、及び鮮度保持方法
レタスを含む青果物を本発明の包装容器に収納し、その内部二酸化炭素濃度を適宜調整することで、本発明の包装体を製造することができ、また本発明の一実施形態である青果物の鮮度保持方法を実施することができる。
以下、本発明の包装体の製造方法を、包装容器内に収納するレタスを含む青果物がカットレタスである場合を例に説明する。
【0053】
まず前処理工程において、手作業で外葉を取り除き、2〜4分割し、芯を取り除くなどしたレタスをコンベヤーに供給する。コンベヤーで搬送されたレタスは、スライサーでカットされ、冷水を満たした洗浄槽で冷却を兼ねて「大量調理施設衛生管理マニュアル」(厚生省)に基づき80〜120ppm、10〜20分の次亜塩素酸で洗浄され、水切り後遠心脱水機等で脱水される。脱水されたカットレタスは、本実施形態で用いる高分子フィルムを含んでなる包装容器(一辺が封止されていないもの)に詰められ、計量後包装容器が封止され、カットレタスの鮮度保持用包装体が製造される。
【0054】
カットレタスの鮮度保持の観点からは、切れ味の良い刃を用い、切断面に生ずる傷をより少なくすることが好ましい。
また、カット幅が狭いほど、切断面積が増加し、鮮度保持がより困難になるため、鮮度保持の観点からは、需要の形態に適合する限りにおいてカット幅が広い方が好ましい。
更に、カットレタスに当初から雑菌が多く付着していると、鮮度保持がより困難になるため、カットレタスをよく洗浄するなどして、雑菌の付着をできるだけ低減することが好ましい。洗浄は、雑菌の付着を低減するばかりか、活性の高い酵素等を含み変色等の原因となりうる細胞液等を除去する効果もあるため、鮮度保持のために特に有効である。
加えて、洗浄後にカットレタス表面に付着した水分を十分に除去することが、鮮度保持のために重要である。
これは水分を適正にすることで余分に付着した微小水滴中での雑菌の増殖が抑制できるからである。より具体的には、例えば「大量調理施設衛生管理マニュアル」(厚生省)に基づき80〜120ppm、10〜20分の次亜塩素酸洗浄後に「栄養表示基準における栄養表示等の分析方法」(消費者庁)に基づき70℃で5時間の減圧乾燥をおこなったときの重量減少を元に測定した水分量を20%以上30%未満の範囲とすることが好ましい。洗浄後静置して水切りを行っても、カットレタス表面にはなお多くの水が付着している場合が多いので、遠心脱水機等を用いて水分を除去し、ドライエアをあてて乾燥することが有効である。
【0055】
なお、本実施形態の青果物鮮度保持用包装体の製造にあたっては、レタスを含む青果物の収納後に、所定の組成のガス、例えば二酸化炭素濃度50体積%以上のガスを導入してから封止を行ってもよい。所定の組成のガスの導入を行うことにより、包装容器の所望の二酸化炭素濃度に速やかに到達することが可能となり、鮮度保持に有利である。
上記実施形態において導入されるガスの二酸化炭素濃度は、70体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることが特に好ましい。上記所定の組成のガスの酸素濃度には特に制限は無いが、レタスを含む青果物の外観保持等に有利であることから、15体積%以下であることが好ましく、10体積%以下であることがより好ましく、5体積%以下であることが更に好ましく、1体積%以下であることが一層好ましく、0.5体積%以下であることが特に好ましい。上記実施形態において導入されるガスのそれ以外の成分には特に限定は無いが、入手のし易さや、人体、青果物等への影響の小ささなどの観点から、窒素を用いることが好ましい。
また、流通の過程での効率向上やスペース節約、特定の気体の排除等の観点から、包装容器の封止前、又は封止の際に脱気を行ってもよい。
【0056】
本発明の包装体は、包装容器中にレタスを含む青果物のみが収納されていてもよいし、更にそれ以外の部材が収納されていてもよい。
例えば、青果物に加えて、吸湿剤、及び/又は抗菌剤が包装容器中に収納されていてもよい。
吸湿剤には特に限定は無く、吸湿効果または調湿効果を有する公知又は市販の材料を使用することができる。吸湿剤として好適に用いられるものとしては、例えば、活性炭、シリカゲル、アルミナゲル、シリカアルミナゲル、無水硫酸マグネシウム、ゼオライト、合成ゼオライト、酸化カルシウム、塩化カルシウム、及び、焼ミョウバン、又はこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの中でも、青果物への影響や食品である青果物等の近くで使用することに関する懸念の比較的少ない活性炭を用いることが特に好ましい。活性炭は粉末状、粒状どちらでも何ら差し支えなく、原料はヤシ殻、おがくず、木炭、竹炭、褐炭、泥炭、ほね、石油ピッチなどどんなものでも差し支えない。また活性炭は不織布、セロファン、紙などなどで使用単位毎に包装してあることが望ましいが、活性炭自体が繊維状になったものでも差し支えない。活性炭の包材としては、合成樹脂からなる不織布のように、ヒートシール性を有するものが好ましいが、水蒸気透過性を有しかつ活性炭がこぼれないもので有れば、紙、天然繊維などでも何ら問題ない。
【0057】
抗菌剤には特に限定は無く、抗菌作用を有する物質を適宜使用することができるが、青果物への影響や食品である青果物等の近くで使用することに関する懸念の比較的少ない天然性抗菌剤を好ましく使用することができる。より具体的には、天然性抗菌剤であるキトサン、アリルイソチオシアネート、ヒノキチオール、リモネン等を、包装容器内に収納することができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例/比較例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はいかなる意味においても、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0059】
以下の実施例/比較例において、各特性の評価は以下の方法で行った。
(開口部の有無)
赤色浸透液(三菱ガス化学株式会社製、商品名:エージレスシールチェックスプレー)を包装容器内に注入後、インパルスシーラーで加熱条件の目盛を3に設定し、約5mm幅でヒートシールして、紙(コクヨ PPC用紙 共用紙 A4)を押しあて、紙へのインクの転写の有無により、開口部の有無を確認した。
(酸素透過度)
まず、次の方法で内寸170mm×235mmの袋を形成した。
1枚のフィルムをほぼ均等に2つ折りにし約5mm幅で、インパルスシーラー(富士インパルス社製、品番Fi−200−10WK)で加熱条件の目盛を3に設定してヒートシールを行い、当該ヒートシール辺がほぼ中央にくるようにヒートシール辺とほぼ垂直をなす辺の一方の全体を、他方の辺の一方の連通部となる端部約2cmを除く全体をヒートシールして、内寸170mm×235mmの袋を形成した。
次に前記連通部から窒素ガスを注入し、袋内が飽和状態になってから袋内のガスを連通部からほぼすべて排出した。この操作を5回繰り返した後、窒素ガスを注入して袋内を窒素ガスで飽和させて連通部を前記インパルスシーラーで同様の条件でヒートシールした。窒素ガスを飽和させた袋を22℃、相対湿度40%の空気中(1気圧、酸素濃度:21%、窒素濃度:79%)の室内に6時間放置した。
次に、袋内のガスを約20ccサンプリングして食品包装用ジルコニア酸素濃度計(東レエンジニアリング社製、型番LC−750F)にて袋中の酸素濃度を測定した。さらに、袋中の気体の体積を測定し、下記の式から酸素透過度を算出した。
(式)酸素透過度=内部酸素濃度変化(%)/100×体積(cm
3)×24×60/時間(360分)×10000cm
2/面積(799cm
2)/0.21(酸素の分圧)
(二酸化炭素濃度・酸素濃度)
Dansensor製食品包装用O
2/CO
2分析計Check Mate 3により測定した。
(外観)
包装体の封を開けて、取り出した青果物を並べ、レタス断面を中心に全体的な褐変部分の面積を目視にてn=3で評価した。
評価基準は以下のとおり。
A:褐変が全くなく問題ない。
A×:褐変はないが断面の一部が薄く赤くなっているがほとんど目立たない状態
B:褐変はあるが断面全体の10%以下で少し目立つ状態
B×:褐変はあるが断面全体の20%以下で目立つ状態
C:褐変はあるが断面全体の30%以下であり、かなり目立つが販売可能な状態
D:褐変はあるが断面全体の50%以下であり、著しく目立ち消費者により販売不可能な状態
(異臭)
包装体の封を開けた時に顔を近づけて内部のにおいを嗅いでn=3で官能評価した。
評価基準は以下のとおり。
A:新鮮な状態で全く問題ない
B:やや臭いがあるが新鮮と言える状態
C:臭いが強いが市販と同じ状態であり、販売可能な状態
D:更に臭いが強く消費者が気にする状態
E:更に臭いが強く販売不可能な状態
なお、本願では、CとDとEの評価の場合に異臭が発生したと評価し、DとEの場合に商品価値を失う異臭が発生したと評価する。
【0060】
(比較例1)
厚さ40μmのOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルム2枚を重ね合わせて、3辺をヒートシールで封止のうえ切断して、1辺が未封止の包装袋(170mm×235mm、内寸の面積:799cm
2)を作製した。
フィルム中の開口部の有無を観察したところ、開口部が存在しないことが確認された。フィルムの酸素透過率は、1000
mL/m
2/atm/
24hrであった。
包装容器にカットレタス78gを封入し、窒素充填後、ヒートシールして包装体を作製した。該包装体を10℃で保管し、1日毎に内部酸素濃度、及び内部二酸化炭素濃度を測定し、カットレタスの異臭及び外観を評価した。
結果を表1に示す。
【0061】
(実施例1)
窒素に代えて、二酸化炭素を封入したことを除くほか、比較例1と同様にして包装体を作製し、評価を行った。
結果を表1に示す。
【0062】
(実施例2)
厚さ40μmのOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルムに代えて厚さ30μmのポリエチレンフィルムを使用したことを除くほか、実施例1と同様にして包装体を作製し、評価を行った。
フィルム中の開口部の有無を観察したところ、開口部が存在しないことが確認された。フィルムの酸素透過率は、5000
mL/m
2/atm/
24hrであった。
結果を表1に示す。
【0063】
(実施例3)
厚さ40μmのOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルムに直径300μmの孔を1個設けたことを除くほか、実施例1と同様にして包装体を作製し、評価を行った。
フィルムの酸素透過率は、10000
mL/m
2/atm/
24hrであった。
結果を表1に示す。
【0064】
(実施例4)
厚さ40μmのOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルムに直径300μmの孔を3個設けたことを除くほか、実施例1と同様にして包装体を作製し、評価を行った。
フィルムの酸素透過率は、15000
mL/m
2/atm/
24hrであった。
結果を表1に示す。
【0065】
(比較例2)
厚さ40μmのOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルムに直径300μmの孔を10個設けたことを除くほか、実施例1と同様にして包装体を作製し、評価を行った。
フィルムの酸素透過率は、30000
mL/m
2/atm/
24hrであった。
結果を表1に示す。
【表1】
【0066】
本発明所定の内部二酸化炭素濃度及び内部酸素濃度の条件を満たす、各実施例の包装体においては、封止後少なくとも72時間にわたって、カットレタスの褐変及び異臭の発生が有効に抑制され、異臭については144時間までその発生が抑制された。一方、比較例1においては、96時間経過時に異臭が発生し、比較例2においては、72時間経過時に外観が悪化し、いずれもカットレタスの商品価値が一部損なわれた。