(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6694848
(24)【登録日】2020年4月22日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】ジオポリマー用添加剤及びジオポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 24/26 20060101AFI20200511BHJP
C04B 28/26 20060101ALI20200511BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20200511BHJP
C04B 103/30 20060101ALN20200511BHJP
【FI】
C04B24/26 B
C04B24/26 E
C04B24/26 F
C04B24/26 H
C04B28/26
C08F290/06
C04B103:30
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-89502(P2017-89502)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2018-188319(P2018-188319A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2019年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】南 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】梶田 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文則
(72)【発明者】
【氏名】太田 健司
(72)【発明者】
【氏名】吉丸 将司
(72)【発明者】
【氏名】山崎 未希
【審査官】
小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2015−516480(JP,A)
【文献】
特開2017−043517(JP,A)
【文献】
特開2016−005994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 24/26
C04B 28/26
C08F 290/06
C04B 103/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に下記の構成単位1、構成単位2及び構成単位3を有し、且つ構成単位1、構成単位2及び構成単位3の合計100質量%に対し、構成単位1を1〜99質量%、構成単位2を1〜99質量%及び構成単位3を0〜30質量%の割合で有するビニル共重合体を含有して成
り、フィラーとケイ酸アルカリ溶液又はアルカリ溶液とを原料とするジオポリマー用のものであることを特徴とするジオポリマー用添加剤。
構成単位1:下記の単量体Aから形成された構成単位
構成単位2:分子中にビニル基を有するカルボン酸単量体から形成された構成単位
構成単位3:前記の単量体A及び前記のカルボン酸単量体と共重合可能な単量体から形成された構成単位
単量体A:下記の化1で示される不飽和(ポリ)アルキレングリコール
【化1】
(化1において、
R
1,R
2,R
3:水素原子、メチル基又は−(CH
2)
rCOOMで示される有機基(但し、R
1、R
2、R
3のうちで少なくとも一つは水素原子又はメチル基)
R
4:水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基
R
5O:炭素数2〜4のオキシアルキレン基
p:0〜5の整数
q:0又は1
m:1〜300の整数
r:0〜2の整数
M:水素原子又は金属原子)
【請求項2】
請求項1記載のジオポリマー用添加剤と、フィラーとケイ酸アルカリ溶液又はアルカリ溶液とを原料とするジオポリマーと、骨材とを含有するジオポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオポリマー用添加剤及びジオポリマー組成物に関する。近年、一般に使用されているコンクリート組成物(炭酸カルシウムを主成分とする石灰石を原料としたコンクリート組成物)に代えて、CO
2排出量を抑制すると共に、産業廃棄物を再利用して環境負荷を低減することが可能なジオポリマーが注目されている。本発明は、ジオポリマーの流動性を向上させることができるジオポリマー用添加剤及びかかるジオポリマー用添加剤を用いたジオポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ジオポリマーとは、フィラーと称される鉱物質紛体を、珪酸アルカリ溶液又はアルカリ溶液で処理して得られる無機ポリマーであり、フィラーには、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、下水焼却汚泥、カオリン等がある。かかるジオポリマーを用いたジオポリマー組成物の作製方法が種々提案されており、これには例えば、フィラーとアルカリ活性剤と骨材とを原料とするジオポリマー組成物であって、フィラーとしてフライアッシュを含み、アルカリ活性剤をして水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムのいずれかを含んでいるもの(例えば、特許文献1参照)、珪酸ナトリウム水溶液と生のカオリン質紛体を混合して型枠に流し込み、常温でそのまま固定させるジオポリマー組成物について、固化反応を促成させる薬剤として、珪弗化カリウム又は高炉水砕スラグを含有するもの(例えば、特許文献2参照)、珪酸ナトリウム水溶液とフライアッシュを混合して型枠に流し込み、常温でそのまま固化させるか又は蒸気養生により固化させるもの(例えば、特許文献3参照)、下水汚泥溶解スラグ粉末をジオポリマー液で固化した固化体であって、ジオポリマーのモノマー源のシリケートモノマーが下水汚泥溶融スラグ由来の金属イオンにより縮重合して固化したマトリックス構造体中に、下水汚泥溶融スラグ粉末が分散している構造を有するもの(例えば、特許文献4参照)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−239446号公報
【特許文献2】特開平8−301638号公報
【特許文献3】特開平8−301639号公報
【特許文献4】特開2010−143774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の提案はいずれも、もともとがジオポリマー組成物から硬化体を得る方法に関するものであることもあって、ジオポリマー組成物の流動性には考慮されていない。ジオポリマー組成物の流動性は、これに含まれるアルカリ成分の比率(Na量とK量の比率)や活性度の異なるフィラーを組み合わせることである程度コントロールすることができる。しかし、アルカリ成分の比率やフィラーの活性度は、得られる硬化体の圧縮強度と高い相関性を示すため、単にこれらの組み合わせだけではジオポリマー組成物の流動性と得られる硬化体の圧縮強度を同時にコントロールすることは困難である。本発明が解決しようとする課題は、得られる硬化体の圧縮強度を損なうことなく、流動性の高いジオポリマー組成物を調製することができるジオポリマー用添加剤及びかかるジオポリマー用添加剤を用いたジオポリマー組成物を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
しかして本発明者らは、前記の課題を解決するべく鋭意研究した結果、特定のビニル共重合体がジオポリマー用添加剤として好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、分子中に下記の構成単位1、構成単位2及び構成単位3を有し、且つ構成単位1、構成単位2及び構成単位3の合計100質量%に対し、構成単位1を1〜99質量%、構成単位2を1〜99質量%及び構成単位3を0〜30質量%の割合で有するビニル共重合体を含有して成
り、フィラーとケイ酸アルカリ溶液又はアルカリ溶液とを原料とするジオポリマー用のものであることを特徴とするジオポリマー用添加剤に係る。
【0007】
構成単位1:下記の単量体Aから形成された構成単位
構成単位2:分子中にビニル基を有するカルボン酸単量体から形成された構成単位
構成単位3:前記の単量体A及び前記のカルボン酸単量体と共重合可能な単量体から形成された構成単位
【0008】
単量体A:下記の化1で示される不飽和(ポリ)アルキレングリコール
【0009】
【化1】
【0010】
化1において、
R
1,R
2,R
3:水素原子、メチル基又は−(CH
2)
rCOOMで示される有機基(但し、R
1、R
2、R
3のうちで少なくとも一つは水素原子又はメチル基)
R
4:水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基
R
5O:炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合系
p:0〜5の整数
q:0又は1
m:1〜300の整数
r:0〜2の整数
M:水素原子又は金属原子
【0011】
本発明に係るジオポリマー用添加剤(以下、本発明の添加剤という)は、単量体Aから形成された構成単位1及びカルボン酸単量体から形成された構成単位2を特定割合で有するビニル共重合体、又は単量体Aから形成された構成単位1、カルボン酸単量体から形成された構成単位2及び前記の単量体A及び前記のカルボン酸単量体と共重合可能な単量体から形成された構成単位3を特定割合で有するビニル共重合体を含有するものである。
【0012】
ビニル共重合体の構成単位1を形成することとなる単量体Aは、化1で示される不飽和(ポリ)アルキレングリコールである。かかる化1において、R
1、R
2及びR
3は水素原子、メチル基又は−(CH
2)
rCOOMで示される有機基であり、R
1、R
2及びR
3のうちで少なくとも一つは水素原子又はメチル基である。R
4は、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基である。かかる炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等が挙げられる。R
5Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。かかるオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基等の単独系又は混合系が挙げられる。混合系の場合はランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。pは0〜5の整数である。qは0又は1である。mは1〜300の整数である。Mは水素原子または金属原子である。
【0013】
化1で示される不飽和(ポリ)アルキレングリコールとしては、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレン(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノアリルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、(ポリ)エチレングリコールモノ(3−メチル−ブテニル)エーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)ブチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0014】
ビニル共重合体の構成単位2を形成することとなる分子中にビニル基を有するカルボン酸単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、フマル酸及びこれらの塩が挙げられる。かかる塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、(ヒドロキシ)アルキルアミン、アンモニウム、(ヒドロキシ)アルキルアンモニウム等が挙げられる。
【0015】
本発明においては、以上説明したような単量体A及びカルボン酸単量体以外にも、ビニル共重合体の構成単位3を形成することとなるその他の共重合可能な単量体を用いることができる。かかる共重合可能な単量体は、単量体A及びカルボン酸単量体と共重合可能であれば特に制限はないが、例えば、リン酸エステル系単量体,スルホン酸系単量体、ポリアルキレンポリアミン系単量体等が挙げられる。これらの単量体は1種又は2種以上を用いることができる。
【0016】
本発明の添加剤に供するビニル共重合体は、公知のラジカル重合反応により得ることができる。例えば、前記の単量体と分子量調整剤とを含む水溶液に重合開始剤を添加し、反応温度50〜90℃で4〜8時間ラジカル重合反応させて、ビニル重合体を得ることができる。反応系内の圧力は特に問わないが、常圧が好ましい。
【0017】
本発明に係るジオポリマー用添加剤は以上説明したビニル共重合体を含有して成るものであり、フィラーとケイ酸アルカリ溶液又はアルカリ溶液とを原料とするジオポリマーに適用した場合にその効果の発現が著しい。
【0018】
最後に、本発明に係るジオポリマー組成物(以下、本発明のジオポリマー組成物という)について説明する。本発明のジオポリマー組成物は、以上説明した本発明の添加剤、フィラーとケイ酸アルカリ溶液又はアルカリ溶液とを原料とするジオポリマー、及び骨材を含有する組成物である。本発明のジオポリマー組成物は、フィラーをケイ酸アルカリ溶液やアルカリ溶液で活性化し、重合固化させることにより硬化させることができる。すなわち、フィラーから溶出したアルミニウム等の金属がシリカ成分を含む溶液と接触すると、ケイ酸錯体(SiO
4)が架橋されてポリマー化することにより、硬化体を得ることができる。
【0019】
本発明のジオポリマーやジオポリマー組成物に供するフィラーとしては、フライアッシュ、高炉スラグ、下水焼却汚泥、カオリン、もみ殻灰、都市ごみ焼却灰溶融スラグ、クリンカアッシュ、シリカフューム、溶鉄予備処理スラグ、一般廃棄物溶融スラグ、製紙スラッジ焼却灰、模擬乾燥スラッジ等を使用することができる。フライアッシュ、高炉スラグ、下水焼却汚泥等は、ガラス成分を含む産業廃棄物であり、これらを再利用することにより環境負荷を低減することができる。
【0020】
フライアッシュは、石炭火力発電所において焼却副産物として排出される石炭灰であり、二酸化ケイ素(SiO
2)及びアルミナ(A
2O
3)を主成分としている。高炉スラグは、銑鉄製造工程で発生する産業廃棄物であり、石灰(CaO)及び二酸化ケイ素(SiO
2)を主成分とし、アルミナ(A
2O
3)やマグネシア(MgO)を含んでいる。下水焼却汚泥は、下水処理において発生する汚泥を焼却したもので、二酸化ケイ素(SiO
2)及びアルミナ(Al
2O
3)を主成分とし、五酸化二リン(P
2O
5)を含んでいる。カオリン(Al
2Si
2O
5(OH)
4)は、天然に産出するケイ酸塩鉱物の1種である。
【0021】
本発明のジオポリマーやジオポリマー組成物に供するケイ酸アルカリ溶液又はアルカリ溶液の作製には、シリカ又はシリカ化合物(例えば、微粉末シリカ、シリカフューム、珪酸塩類(メタ珪酸ナトリウム・9水塩、メタ珪酸ナトリウム・5水塩、メタ珪酸ナトリウム・無水塩、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等))とアルカリ溶液(例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アルミン酸ナトリウム等の溶液)を用いることができる。
【0022】
本発明のジオポリマー組成物に供する骨材としては、特に制限はないが、例えば、川砂、海砂、山砂、陸砂、砕砂、スラグ細骨材(高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、銅スラグ細骨材、電気炉酸化スラグ骨材)、再生骨材、川砂利、砕石、石灰砕石、軽量骨材、スラグ骨材(高炉スラグ骨材、フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ骨材、電気炉酸化スラグ骨材)、再生骨材、溶融スラグ骨材、人工骨材が挙げられる。
【0023】
本発明のジオポリマー組成物は、混和材料、発泡剤、繊維等を含むこともできる。かかる混和剤としては、無水石膏、二水石膏、ケイ酸カルシウム系無機混和材、ゼオライト、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。発泡剤としては、金属アルミ粉末、金属シリコン粉末等が挙げられる。繊維としては、無機繊維(金属繊維、鋼繊維、ステンレス繊維)、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、合成繊維(アラミド繊維、ナイロン繊維、PVA繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維)、半合成繊維、再生繊維、植物繊維、動物繊維、鉱物繊維等が挙げられる。
【0024】
通常、質量換算で、フィラー100に対して、ケイ酸アルカリ溶液又はアルカリ溶液(X)を10<X≦100の割合となるように調合し、またフィラー100に対して、ジオポリマー用添加剤(Y)を0<Y≦10の割合となるように調合したペースト部に、骨材を加えることで、一般的にモルタルやコンクリートと呼ばれるジオポリマー組成物を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、得られる硬化体の圧縮強度を損なうことなく、流動性の高いジオポリマー組成物を調製することができる。
【0026】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例に限定されるというものではない。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【実施例】
【0027】
試験区分1(ジオポリマー用添加剤としてのビニル共重合体の合成)
・実施例1(ビニル共重合体(p−1)の合成)
イオン交換水214.0部、メトキシポリ(オキシエチレン単位数が23、以下n=23とする)エチレングリコールメタクリレート147.1部、メタクリル酸34.4部、アクリル酸メチル9.6g及び3−メルカプトプロピオン酸1.5部を反応容器に仕込み、撹拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換した。反応系内の温度を温水浴にて60℃に保ち、10%加硫酸ナトリウム水溶液27.7部を4時間かけて投入し、ラジカル共重合反応をおこなった。更に60℃で2時間保持して、ラジカル共重合反応を終了した。その後、30%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH6に調整し、イオン交換水にて濃度40%に調整して、実施例1のビニル共重合体(p−1)の40%水溶液を得た。
【0028】
・実施例2(ビニル共重合体(p−2)の合成)
無水マレイン酸147部及びポリ(n=50)エチレングリコールモノアリルエーテル1527部を反応容器に仕込み、撹拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換した。反応系の温度を温水浴にて80℃に保ち、アゾビスイソブチロニトリル10.0部を投入してラジカル共重合反応を開始した。1時間後、更にアゾビスイソブチロニトリル5.0部を投入し、その1時間後、更にアゾビスイソブチロニトリル5.0部を投入して5時間ラジカル共重合反応を行った後、反応系にイオン交換水300部を加えてラジカル共重合反応を停止した。その後、30%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH5に調整し、イオン交換水にて濃度を40%に調整して、実施例2のビニル共重合体(p−2)の40%水溶液を得た。
【0029】
・実施例3(ビニル共重合体(p−3)の合成)
イオン交換水99.6部及びポリ(n=57)エチレングリコールモノ(3−メチル−ブテニル)エーテル185.7部を反応容器に仕込み、撹拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換した。3−メルカプトプロピオン酸0.8部、L−アスコルビン酸0.8部及びイオン交換水32.4部を撹拌して均一にしたものを第1溶液とした。また、アクリル酸11.9部及びイオン交換水48.2部を撹拌して均一にしたものを第2溶液とした。更に35%過酸化水素水0.8部およびイオン交換水18.1部を撹拌して均一にしたものを第3溶液とした。反応系の温度を温水浴にて70℃に保ち、第1溶液、第2溶液及び第3溶液を同時に180分間で滴下し、ラジカル共重合反応をおこなった。更に70℃で1時間保持して、ラジカル共重合反応を終了した。その後、30%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH5に調整し、イオン交換水にて濃度を40%に調整して、実施例3のビニル重合体(p−3)の40%水溶液を得た。
【0030】
以上で合成したビニル共重合体の内容を表1にまとめて示した。
【0031】
【表1】
【0032】
表1において、
1−1:メトキシポリ(n=23)エチレングリコールメタクリレートから形成された構成単位
1−2:ポリ(n=50)エチレングリコールモノアリルエーテルから形成された構成単位
1−3:ポリ(n=57)ポリエチレングリコールモノ(3−メチルーブテニル)エーテルから形成された構成単位
2−1:メタクリル酸から形成された構成単位
2−2:マレイン酸から形成された構成単位
2−3:アクリル酸から形成された構成単位
3−1:アクリル酸メチルから形成された構成単位
【0033】
試験区分2(ジオポリマー組成物としてのモルタルの調製)
・実施例4〜10及び比較例1〜4
ハイパワーミキサー(丸東製作所社製の商品名CB−34)を用い、表2及び表3に記載の内容で、フィラー、アルカリ活性剤、細骨材及び試験区分1で調製したジオポリマー用添加剤としてのビニル共重合体の水溶液を順次投入し、180秒間練り混ぜてモルタルを調製した。
【0034】
【表2】
【0035】
表2において、
f−1:前記のフライアッシュ100容量部に対し、高炉スラグ微粉末(JIS A 6206適合品)を21容量部の割合となるよう混合したもの
f−2:フライアッシュ(JIS A 6201適合品、原粉)
a−1:水ガラス(JIS3号水ガラス)100部に対して、48%水酸化ナトリウム溶液52.6部及び蒸留水47.0部の割合で混合したもの
a−2:水ガラス(JIS3号水ガラス)100部に対して、48%水酸化ナトリウム溶液129.7部及び蒸留水143.8部の割合で混合したもの
細骨材:珪砂56号
【0036】
試験区分3(モルタルの物性評価)
試験区分2で調製した各例のモルタルについて、モルタルフロー値、空気量、流下時間及び圧縮強度等を下記のように測定すると共に、流動性を評価し、結果を表3にまとめて示した。
【0037】
・モルタルフロー(mm):練混ぜ直後のモルタルについてJIS R 5201に準拠して測定した。
・空気量(容積%):練混ぜ直後のモルタルについて、400mlの金属製円筒容器を用い、JIS A 1116の5に準拠して単位容積質量を求め、JIS A 1116の5によって算出した。
・流下時間(秒):充填モルタル流動性試験方法(JSCE−F 541)に準拠してJ
14ロートを用いて測定した。
・圧縮強度(N/mm
2):モルタルを直径50mm×高さ100mmの円筒状容器に充填し、加温養生(80℃,12時間相当)した、円柱状供試体について、モルタル又はセメントペーストの圧縮強度試験方法(案)(JSCE−G 503)に準拠して測定した。
【0038】
【表3】
【0039】
表3について、
配合条件:表2記載の配合条件
ビニル共重合体の種類:表1記載のビニル共重合体の種類
ビニル共重合体の添加量:フィラー100質量部に対するビニル共重合体の固形分としての質量部
*1:有機酸系誘導体及び芳香族高分子化合物(竹本油脂社製のコンクリート用AE減水剤、商品名チューポールEX20N)
*2:アルキルアリルスルホン酸塩高縮合物(竹本油脂社製のコンクリート用高性能減水剤、商品名ポールファイン510AN)
評価:実施例4〜6については、(各例の流下時間/比較例1の流下時間)×100で求めた値に基づいて下記の基準で評価し、また実施例7〜10及び比較例3,4については、(各例の流下時間/比較例2の流下時間)×100で求めた値に基づいて下記の基準で評価した。
【0040】
流動性の評価基準
E:95%超
D:90%超〜95%以下
C:80%超〜90%以下
B:50%超〜80%以下
A:50%以下
【0041】
表1及び表2に対応する表3の結果からも明らかなように、本発明の添加剤によると、得られる硬化体の圧縮強度に悪影響を及ぼすことなく、ジオポリマー組成物の流動性を向上させることができる。