(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記配管本体が、芳香族ポリエーテルケトン、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、及び液晶ポリマーよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の樹脂を含有する、請求項2に記載の帯電防止性配管。
フィルム基材の一方の面に導電性高分子分散液を塗工し、乾燥させて導電層を形成する工程(D−1)と、前記導電層の前記フィルム基材とは反対側の面に導電性粘着剤塗工液を塗工し、乾燥させて導電性粘着剤層を形成する工程(D−2)とを有し、
前記フィルム基材として、芳香族ポリエーテルケトン、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、及び液晶ポリマーよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の樹脂を含有する樹脂フィルムを使用し、
前記導電性高分子分散液として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸を含む導電性複合体と、分散媒とを含有する分散液を使用し、
前記導電性粘着剤塗工液として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸を含む導電性複合体と、粘着剤と、分散媒とを含有する分散液を使用し、
前記粘着剤は、架橋されたアクリル重合体を含有するアクリル系粘着剤を含み、
前記導電性粘着剤塗工液に含まれる前記ポリスチレンスルホン酸のアニオン基の一部にエポキシ基含有化合物が反応して疎水性置換基が形成されている、導電性フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<導電性フィルム>
本発明の一態様の導電性フィルムは、フィルム基材と、前記フィルム基材の少なくとも一方の面に形成された導電層とを備える。
導電性フィルムの形状としては特に制限はなく、例えば、多角形状(例えば、三角形状四角形状等)、帯状、テープ状、円形状等が挙げられる。
本態様の導電性フィルムにおいては、導電層が粘着剤を含有して導電性粘着剤層になっていてもよい。
本態様の導電性フィルムは、フィルム基材及び導電層とは別に、粘着剤層又は導電性粘着剤層をさらに備えてもよい。
【0010】
本態様の導電性フィルムの実施形態としては、例えば、下記の第一実施形態、第二実施形態、第三実施形態、及び第四実施形態が挙げられる。但し、本態様の導電性フィルムは、以下の実施形態に限定されない。
第一実施形態:
図1に示すように、第一実施形態の導電性フィルム1は、フィルム基材10と、フィルム基材10の一方の面11のみに形成された導電層20とを備える。
第二実施形態:
図2に示すように、第二実施形態の導電性フィルム2は、フィルム基材10と、フィルム基材10の一方の面11のみに形成された導電層20と、導電層20のフィルム基材10とは反対側の面21に形成された粘着剤層30とを備える。
第三実施形態:
図3に示すように、第三実施形態の導電性フィルム3は、フィルム基材10と、フィルム基材10の一方の面11のみに形成された導電性粘着剤層40とを備える。本実施形態における導電性粘着剤層40は、導電層であり且つ粘着剤層である。
第四実施形態:
図4に示すように、第四実施形態の導電性フィルム4は、フィルム基材10と、フィルム基材10の一方の面11のみに形成された導電層20と、導電層20のフィルム基材10とは反対側の面21に形成された導電性粘着剤層40とを備える。本実施形態における導電性粘着剤層40は、導電層であり且つ粘着剤層である。
【0011】
(フィルム基材)
本態様の導電性フィルムを構成するフィルム基材は、スーパーエンジニアリングプラスチックを主成分として含有する樹脂フィルムである。
本態様において使用されるスーパーエンジニアリングプラスチックは、芳香族ポリエーテルケトン、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、及び液晶ポリマーよりなる群から選ばれる1種又は2種以上である。前記スーパーエンジニアリングプラスチックのなかでも、フィルムを作製しやすいことから、芳香族ポリエーテルケトン、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドよりなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、芳香族ポリエーテルケトンがより好ましい。
【0012】
芳香族ポリエーテルケトンは、エーテル結合を介してベンゼン環同士を結合した構造と、ケトン基を介してベンゼン環同士を結合した構造とを有するポリマーである。
芳香族ポリエーテルケトンとしては、例えば、化学式(1)で表される化学構造を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、化学式(2)で表される化学構造を有するポリエーテルケトン(PEK)、化学式(3)で表される化学構造を有するポリエーテルケトンケトン(PEKK)、化学式(4)で表される化学構造を有するポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、化学式(5)で表される化学構造を有するポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)が挙げられる。芳香族ポリエーテルケトンは1種単独でもよいし、2種以上でもよい。
芳香族ポリエーテルケトンのなかでも、フィルム成形性に優れることから、ポリエーテルエーテルケトンが好ましい。
【0014】
前記化学式(1)〜(5)の各々のnは、機械的物性の観点から、10以上が好ましく、20以上がより好ましい。一方、芳香族ポリエーテルケトンを容易に製造できる点では、nは5000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましい。すなわち、10以上5000以下が好ましく、20以上1000以下がより好ましい。
芳香族ポリエーテルケトンは、本発明の効果を損なわない範囲において、エーテルサルホン等の他の共重合可能な単量体とのブロック共重合体、ランダム共重合体又は変性体であってもよい。
芳香族ポリエーテルケトンは、前記化学式(1)〜(5)のいずれかで表されるポリエーテルケトン単位の割合が、芳香族ポリエーテルケトン100モル%に対し、50モル%以上100モル%以下であることが好ましく、70モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、80モル%以上100モル%以下であることがさらに好ましく、100モル%であることが最も好ましい。芳香族ポリエーテルケトンにおいて前記芳香族ポリエーテルケトン単位の割合が前記下限値以上であれば、耐熱性及び機械的物性をより向上させることができる。
【0015】
フィルム基材には、前記スーパーエンジニアリングプラスチック以外の熱可塑性樹脂が含まれてもよい。
スーパーエンジニアリングプラスチック以外のその他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、脂肪族ポリアミド等が挙げられる。
しかし、導電性フィルムの耐熱性を維持する点からは、フィルム基材におけるその他の熱可塑性樹脂の含有量ができるだけ少ないことが好ましい。
【0016】
フィルム基材におけるスーパーエンジニアリングプラスチックの含有量は、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、80質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。フィルム基材を構成する樹脂の全てがスーパーエンジニアリングプラスチックでもよい。フィルム基材におけるスーパーエンジニアリングプラスチックの含有量が前記下限値以上であれば、導電性フィルムの耐熱性をより向上させることができる。
【0017】
フィルム基材は、単層であってもよいし、多層であってもよい。フィルム基材が多層である場合、導電性フィルムの耐熱性低下を防ぐために、全ての層にスーパーエンジニアリングプラスチックが含まれることが好ましい。
フィルム基材の表面には、後述する表面処理によって、カルボキシ基、ヒドロキシ基等の親水基が形成されていてもよい。
【0018】
前記フィルム基材の平均厚さとしては、5μm以上5000μm以下であることが好ましく、10μm以上1000μm以下であることがより好ましく、10μm以上500μm以下であることがさら好ましい。フィルム基材の平均厚さが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
本明細書におけるフィルム基材の平均厚さは、マイクロメータを用いて、任意の10箇所以上について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。なお、導電性フィルムからフィルム基材のみを剥離して分離することは可能である。
【0019】
(導電層)
[導電性複合体]
本態様における導電層は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体を含有する。
前記ポリアニオンは前記π共役系導電性高分子に配位し、ポリアニオンのアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープするため、導電性を有する導電性複合体を形成する。
ポリアニオンにおいては、全てのアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープせず、余剰のアニオン基を有している。余剰のアニオン基は親水基であるため、導電性複合体は水分散性を有する。
【0020】
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
【0021】
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)が挙げられる。
前記π共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
導電性複合体に含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0022】
ポリアニオンとは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、又はカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリメタクリルオキシベンゼンスルホン酸等のスルホン酸基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等のカルボン酸基を有する高分子が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホン酸基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。ポリアニオンの質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて溶出時間を測定し、分子量既知のポリスチレン標準物質から予め得た、溶出時間対分子量の校正曲線に基づいて求めた質量基準の分子量のことである。
【0023】
導電性複合体中の、ポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上700質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上500質量部以下の範囲であることがさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなる傾向にあり、導電性がより高くなる。ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子を充分に含有させることができるから、充分な導電性を確保できる。
【0024】
〔エポキシ基含有化合物〕
本態様においては、前記ポリアニオンのアニオン基の一部に、特にπ共役系導電性高分子へのドープに関与しない余剰のアニオン基に、1分子中にエポキシ基を1つ以上有するエポキシ基含有化合物を反応させて疎水性置換基を形成してもよい。エポキシ基含有化合物によってポリアニオンに疎水性置換基を形成すれば、導電性複合体の親油性が高くなり、有機溶剤に対する導電性複合体の分散性を向上させることができる。したがって、導電性複合体が有機溶媒に分散している分散液を容易に調製できる。フィルム基材は疎水性が高いため、導電性複合体が有機溶剤分散液であれば、フィルム基材に対する導電層の密着性を向上させることができる。
また、後述する粘着剤は疎水性であることが多いため、後述する導電性粘着剤層を形成する場合には、ポリアニオンに疎水性置換基を形成して疎水化することが好ましい。導電性複合体のポリアニオンに疎水性置換基を形成すれば、導電性複合体と粘着剤との親和性を向上させることができる。そのため、導電性粘着剤層においては、導電性及び粘着性の両方を高めることができる。
なお、導電性複合体の詳細な分析は必ずしも容易ではないが、ポリアニオンのアニオン基とエポキシ基含有化合物との反応によって、−CH
2−CHOHR
1で示される疎水性置換基が形成されると推測される。前記R
1は後述するエポキシ基含有化合物に由来する置換基である。前記疎水性置換基は、アニオン基の酸素原子に結合する。
【0025】
エポキシ基含有化合物としては、1分子中にエポキシ基を1つ有する単官能エポキシ化合物、1分子中にエポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ化合物が挙げられる。凝集又はゲル化を防止する点では、エポキシ基含有化合物は、1分子中にエポキシ基を1つ有する化合物が好ましい。エポキシ基含有化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
単官能エポキシ化合物としては、例えば、プロピレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシテトラデカン、グリシジルメチルエーテル、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、エチルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、tert−ブチルグリシジルエーテル、1,2−エポキシエイコサン、2−(クロロメチル)−1,2−エポキシプロパン、グリシドール、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、ブチルグリシジルエーテル、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシ−9−デカン、2−(クロロメチル)−1,2−エポキシブタン、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−1H,1H,2H,2H,3H,3H−トリフルオロブタン、アリルグリシジルエーテル、テトラシアノエチレンオキサイド、グリシジルブチレート、1,2−エポキシシクロオクタン、グリシジルメタクリレート、1,2−エポキシシクロドデカン、1−メチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタデカン、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシ−1H,1H,2H,2H,3H,3H−ヘプタデカフルオロブタン、3,4−エポキシテトラヒドロフラン、グリシジルステアレート、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシコハク酸、グリシジルフェニルエーテル、イソホロンオキサイド、α−ピネンオキサイド、2,3−エポキシノルボルネン、ベンジルグリシジルエーテル、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3−[2−(パーフルオロヘキシル)エトキシ]−1,2−エポキシプロパン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−(3−グリシジルオキシプロピル)トリシロキサン、9,10−エポキシ−1,5−シクロドデカジエン、4−tert−ブチル安息香酸グリシジル、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、2−tert−ブチル−2−[2−(4−クロロフェニル)]エチルオキシラン、スチレンオキサイド、グリシジルトリチルエーテル、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−フェニルプリピレンオキサイド、コレステロール−5α,6α−エポキシド、スチルベンオキサイド、p−トルエンスルホン酸グリシジル、3−メチル−3−フェニルグリシド酸エチル、N−プロピル−N−(2,3−エポキシプロピル)ペルフルオロ−n−オクチルスルホンアミド、(2S,3S)−1,2−エポキシ−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−4−フェニルブタン、3−ニトロベンゼンスルホン酸(R)−グリシジル、3−ニトロベンゼンスルホン酸−グリシジル、パルテノリド、N−グリシジルフタルイミド、エンドリン、デイルドリン、4−グリシジルオキシカルバゾール、7,7−ジメチルオクタン酸[オキシラニルメチル]、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、C12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0027】
多官能エポキシ化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,7−オクタジエンジエポキシド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2:3,4−ジエポキシブタン、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、イソシアヌル酸トリグリシジルネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,2:3,4−ジエポキシブタン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート等が挙げられる。
【0028】
エポキシ基含有化合物は、有機溶剤への溶解性が高くなることから、分子量が50以上2,000以下であることが好ましく、炭素数が10以上30以下のものが好ましい。
【0029】
〔アミン化合物〕
本態様においては、前記ポリアニオンのアニオン基の一部に、特にπ共役系導電性高分子へのドープに関与しない余剰のアニオン基に、アミン化合物を反応させて疎水性置換基を形成してもよい。アミン化合物によってポリアニオンに疎水性置換基を形成すれば、導電性複合体の親油性が高くなり、有機溶剤に対する導電性複合体の分散性を向上させることができる。したがって、導電性複合体が有機溶媒に分散した分散液を容易に調製できる。
なお、導電性複合体の詳細な分析は必ずしも容易ではないが、ポリアニオンのアニオン基とアミン化合物との反応によって、−HNR
2R
3R
4で示される疎水性置換基が形成されると推測される。前記R
2,R
3,R
4は、後述するアミン化合物に由来する置換基である。例えば、R
2,R
3,R
4の少なくとも1つは炭化水素基(但し、その炭化水素基の水素原子の少なくとも一つがアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基等で置換されていてもよい。)である。R
2,R
3,R
4のうち炭化水素基でないものは水素原子である。
前記疎水性置換基は、アニオン基の酸素原子に結合する。
【0030】
アミン化合物は、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。アミン化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
第一級アミンとしては、例えば、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、エタノールアミン等が挙げられる。
第二級アミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、ジナフチルアミン等が挙げられる。
第三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリナフチルアミン等が挙げられる。
前記アミン化合物のうち、導電性複合体を容易に疎水化できることから、第三級アミンが好ましく、トリブチルアミン及びトリオクチルアミンの少なくとも一方がより好ましい。
【0031】
[バインダ樹脂]
導電層は、層の強度を向上させるために、バインダ樹脂をさらに含有してもよい。
バインダ樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらのなかでも、低コストである点では、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。
導電層におけるバインダ樹脂の含有量は、前記導電性複合体100質量部に対して、100質量部以上100000質量部以下が好ましく、300質量部以上60000質量部以下がより好ましく、600質量部以上30000質量部以下がより好ましい。バインダ樹脂の含有量が前記下限値以上であると、導電層の強度がより高くなり、前記上限値以下であると、充分な導電性を確保できる。
【0032】
[高導電化剤]
導電層は、導電性をより向上させるために、高導電化剤を含んでもよい。ここで、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン及びバインダ樹脂は、高導電化剤に分類されない。
高導電化剤は、糖類、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物、1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
導電性高分子分散液に含有される高導電化剤は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
導電層における高導電化剤の含有量は、導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上5000質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上2500質量部以下であることがさらに好ましい。導電層における高導電化剤の含有量が前記下限値以上であれば、高導電化剤添加による導電性向上効果が充分に発揮され、前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下を防止できる。
【0033】
[添加剤]
導電層には、公知のその他の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。但し、添加剤は、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、バインダ樹脂及び高導電化剤以外の化合物からなる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、エポキシ基、ビニル基又はアミノ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
導電層が前記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
【0034】
[導電層の厚さ]
前記導電層の平均厚さとしては、0.01μm以上20μm以下であることが好ましく、0.2μm以上10μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上5μm以下であることがさらに好ましい。導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、充分に高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層を容易に形成できる。
本明細書における導電層の平均厚さは、導電性フィルムから、導電層以外の層、すなわちフィルム基材及び後述の粘着剤層を分離することにより求める。
具体的には、導電性フィルムからフィルム基材を分離し、粘着剤層を備える場合には、粘着剤層を溶剤に溶解させて除去する。これにより得られた導電層について、マイクロメータを用いて、任意の10箇所以上にて厚さを測定し、その測定値を平均して、導電層の平均厚さを求める。
【0035】
(導電性粘着剤層、粘着剤層)
導電性粘着剤層は、導電性複合体と粘着剤とを含有する。すなわち、導電性粘着剤層は、導電層と粘着剤層を兼ねる層である。導電性粘着剤層は、導電層に含まれてもよい高導電化剤、添加剤を含有してもよい。前述したように、導電性粘着剤層に含まれる導電性複合体のポリアニオンは、アニオン基の一部にエステル基含有化合物が反応して疎水性置換基が形成されていることが好ましい。
粘着剤層は、粘着剤を含有し、導電性複合体を含有しない。粘着剤層は、導電層に含まれてもよい添加剤を含有してもよい。
【0036】
[粘着剤]
前記粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、ブタジエンゴム系粘着剤、イソプレン系粘着剤、クロロプレン系粘着剤等が挙げられる。前記粘着剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記粘着剤のなかでも、粘着性が高く、低コストであることから、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0037】
アクリル系粘着剤は、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を有するアクリル重合体を主成分として含有する。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の総称である。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のなかでも、アクリル系粘着剤の粘着性をより高くできることから、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
【0038】
アクリル系粘着剤を構成するアクリル重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位に加えて、架橋性アクリル単量体単位を有してもよい。アクリル系粘着剤を構成するアクリル重合体が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位に加えて、架橋性アクリル単量体単位を有すると、架橋剤による架橋が容易になる。アクリル系粘着剤を構成するアクリル重合体を架橋させると、粘着剤層又は導電性粘着剤層の耐熱性を向上させることができる。また、アクリル重合体を架橋させると、導電性粘着剤層又は粘着剤層の凝集力が高くなり、剥離時の凝集破壊を防ぐことができる。そのため、導電性粘着剤層又は粘着剤層に再剥離性を生じさせることができる。
架橋性アクリル単量体としては、ヒドロキシ基含有アクリル単量体、カルボキシ基含有アクリル単量体、アミノ基含有アクリル単量体、グリシジル基含有アクリル単量体等が挙げられる。架橋性アクリル単量体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記架橋性アクリル単量体のなかでも、ヒドロキシ基含有アクリル単量体が好ましい。
ヒドロキシ基含有アクリル単量体を有するアクリル重合体は、後述する多官能イソシアネート化合物によってアクリル重合体を容易に架橋できる。
【0039】
ヒドロキシ基含有アクリル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルが挙げられる。ヒドロキシ基含有アクリル単量体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
カルボキシ基アクリル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グラタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸やその無水物などが挙げられる。
アミノ基含有アクリル単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
グリシジル基含有アクリル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
【0040】
アクリル重合体が前記架橋性アクリル重合体単位を有する場合、アクリル重合体おける架橋性アクリル単量体単位の含有量は、全単量体単位100質量%に対して、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。架橋性アクリル単量体単位の含有量が前記下限値以上であれば、充分に架橋でき、粘着剤層の耐熱性を向上させることができ、前記上限値以下であれば、充分な粘着力を確保できる。
【0041】
アクリル重合体が架橋性アクリル単量体単位を有する場合、アクリル系粘着剤は、アクリル重合体が架橋剤によって架橋されてもよい。
架橋剤としては、例えば、1分子中にイソシアネート基を2つ以上有する多官能イソシアネート化合物、1分子中にエポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ化合物等が挙げられる。架橋剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ヒドロキシ基含有アクリル単量体単位を有するアクリル重合体を架橋する場合、アクリル重合体を架橋させやすいことから、架橋剤は多官能イソシアネート化合物が好ましい。
【0042】
多官能イソシアネート化合物としては、脂肪族多官能イソシアネート、脂環族多官能イソシアネート及び芳香族多官能イソシアネートが挙げられる。
多官能イソシアネートの具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、4,4’−ジシクロメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタトリイソシアネート、トリメチルへキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
多官能イソシアネートは、前記ジイソシアネートを、NCO/OHモル比が2/1以上となるように変性した変性多官能イソシアネートより形成した変性ジイソシアネートであってもよい。変性ポリイソシアネートとしては、例えば、前記多官能イソシアネートを多価アルコールと反応させて得られるポリウレタンポリイソシアネート、多官能イソシアネートを重合させることによって得られる、イソシアヌレート環を含んだポリイソシアネート、多官能イソシアネートと水と反応させて得られる、ビュレット結合を含んだポリイソシアネート等が挙げられる。
多官能イソシアネート化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
アクリル重合体の組成は、ガラス転移点が好ましくは80℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは0℃以下になる組成とすることが好ましい。このガラス転移点は、示差走査熱量測定(DSC)により求めた値である。ガラス転移点が80℃以下であれば、粘着性がより高くなる。
アクリル重合体の組成は、ガラス転移点が−80℃以上になる組成が好ましい。ガラス転移点−80℃以上のアクリル重合体であれば、容易に製造できる。
アクリル重合体のガラス転移点を低くすることのできるアクリル単量体としては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。アクリル重合体において、これらモノマー由来の単量体単位の割合が多くなる程、ガラス転移点が低くなる。
【0044】
アクリル重合体の質量平均分子量は1万以上200万以下であることが好ましく、3万以上100万以下であることがより好ましい。アクリル重合体の質量平均分子量が前記下限値以上であれば、粘着剤層又は導電性粘着剤層の耐熱性をより高くできる。アクリル重合体の質量平均分子量が前記上限値以下であれば、粘着剤層又は導電性粘着剤層の粘着力をより向上させることができる。
【0045】
アクリル系粘着剤におけるアクリル重合体の含有量は、アクリル系粘着剤100質量%に対して、70質量%以上100質量%以下であることが好ましく、80質量%100質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましい。アクリル系粘着剤におけるアクリル重合体の含有量が前記下限値以上であれば、充分に高い粘着力を確保できる。
【0046】
[粘着力調整剤]
アクリル系粘着剤は、粘着付与剤、無機粒子、有機粒子等の粘着力調整剤を含有してもよい。
粘着付与剤としては、例えば、石油樹脂、ロジン、テルペン系樹脂等が挙げられる。
無機粒子としては、例えば、タルク、ガラスビーズ、シリカ粒子、炭酸カルシウム等が挙げられる。
有機粒子としては、例えば、前記アクリル系粘着剤とは異なるアクリル樹脂粒子、ポリスチレン粒子、ポリウレタン粒子等が挙げられる。
アクリル系粘着剤における粘着力調整剤の含有量は、アクリル系粘着剤100質量%に対して、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.2質量%10質量%以下であることがより好ましい。アクリル系粘着剤における粘着力調整剤の含有量が前記下限値以上であれば、粘着力調整剤によって粘着力を容易に調整できる。アクリル系粘着剤における粘着力調整剤の含有量が前記上限値以下であれば、充分に高い粘着力を確保できる。
【0047】
[粘着剤層の厚さ、導電性粘着剤層の厚さ]
導電性フィルムが粘着剤層を備える場合、粘着剤層の平均厚さは、1μm以上1000μm以下であることが好ましく、5μm以上500μm以下であることがより好ましく、10μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。粘着剤層の平均厚さが前記下限値以上であれば、充分な粘着性を確保でき、前記上限値以下であれば、容易に粘着剤層を形成できる。
本明細書における粘着剤層の平均厚さは、導電性フィルムから粘着剤層を除去することにより求める。
具体的には、導電性フィルムについて、マイクロメータを用いて、任意の10箇所以上にて厚さを測定し、その測定値を平均して、導電性フィルムの平均厚さを求める。次いで、導電性フィルムの粘着剤層を溶剤に溶解させて除去する。これにより得た残留フィルムについて、マイクロメータを用いて、任意の10箇所以上にて厚さを測定し、その測定値を平均して、残留フィルムの平均厚さを求める。導電性フィルムの平均厚さと残留フィルムの平均厚さとの差分より、粘着剤層の平均厚さを求める。
導電性フィルムが導電性粘着剤層を備える場合、導電性粘着剤層の好ましい平均厚さは粘着剤層の好ましい平均厚さと同様である。導電性粘着剤層の平均厚さの測定方法も、粘着剤層の平均厚さの測定方法と同様である。
【0048】
(導電性フィルムの製造方法)
本態様の導電性フィルムを製造する方法としては、フィルム基材の少なくとも一方の面に導電層を形成する工程を有する。
以下に、前述した、第一実施形態の導電性フィルム、第二実施形態の導電性フィルム、第三実施形態の導電性フィルム、及び第四実施形態の導電性フィルムを製造する製造例を示す。但し、各実施形態の導電性フィルムの製造方法は、以下の製造例に限定されない。
【0049】
第一実施形態の導電性フィルム1の製造例は、下記の工程(A−1)を有する。
工程(A−1):フィルム基材10の一方の面に導電性高分子分散液を塗工し、乾燥させて導電層20を形成する工程。
【0050】
第二実施形態の導電性フィルム2の製造例は、下記の工程(B−1)と工程(B−2)とを有する。
工程(B−1):フィルム基材10の一方の面11に導電性高分子分散液を塗工し、乾燥させて導電層20を形成する工程。
工程(B−2):導電層20のフィルム基材10とは反対側の面21に粘着剤塗工液を塗工し、乾燥させて粘着剤層30を形成する工程。
【0051】
第三実施形態の導電性フィルム3の製造例は、下記の工程(C−1)を有する。
工程(C−1):フィルム基材10の一方の面11に導電性粘着剤塗工液を塗工し、乾燥させて導電性粘着剤層40を形成する工程。
【0052】
第四実施形態の導電性フィルム4の製造例は、下記の工程(D−1)と工程(D−2)とを有する。
工程(D−1):フィルム基材10の一方の面11に導電性高分子分散液を塗工し、乾燥させて導電層20を形成する工程。
工程(D−2):導電層20のフィルム基材10とは反対側の面21に導電性粘着剤塗工液を塗工し、乾燥させて導電性粘着剤層40を形成する工程。
【0053】
[フィルム基材の表面処理]
前記導電性フィルムの製造例において、フィルム基材に導電性高分子分散液又は導電性粘着剤塗工液を塗布する前には、フィルム基材の表面に表面処理を施すことが好ましい。フィルム基材の表面に表面処理を施せば、導電層又は導電性粘着剤層の密着性を向上させることができる。
表面処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等が挙げられる。フィルム基材に表面処理を施すと、フィルム基材の表面に親水基(ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボニル基等)を形成させることができる。フィルム基材の表面に形成させた親水基により、導電層及び導電性粘着剤層の密着性を向上させることができる。
表面処理のなかでも、フィルム基材の表面に簡便に親水基を導入できることから、コロナ放電処理が好ましい。
【0054】
[導電性高分子分散液]
工程(A−1),(B−1),(D−1)で使用する前記導電性高分子分散液は、導電性複合体と分散媒とを含有する。導電性高分子分散液は、高導電化剤、バインダ樹脂、添加剤等を含有してもよい。
分散媒としては、水、有機溶剤、水と有機溶剤との混合液が挙げられる。フィルム基材に対して、導電性高分子分散液の濡れ性を向上させる点では、分散媒が有機溶剤を含むことが好ましい。
有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
窒素原子含有化合物系溶剤としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。
前記有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
後述するように、導電性複合体は水分散体として得られるから、導電性高分子分散液においても分散媒は水を含有してもよい。導電性高分子分散液に有機溶剤が含まれる場合、導電性高分子分散液を構成する全分散媒における水の含有割合は、例えば、1質量%以上99質量%以下の範囲で適宜選択される。
導電性高分子分散液に含まれる導電性複合体の含有量としては、導電性高分子分散液の総質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.3質量%以上5質量%以下が好ましく、0.5質量%以上4質量%以下がより好ましい。
【0056】
導電性高分子分散液を調製する方法としては、例えば、ポリアニオンの水溶液中で、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを化学酸化重合して、導電性複合体水分散体からなる導電性高分子分散液を得る方法が挙げられる。
前記化学酸化重合には、公知の触媒を適用してもよい。例えば、触媒及び酸化剤を用いることができる。触媒としては、例えば、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。酸化剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩が挙げられる。酸化剤は、還元された触媒を元の酸化状態に戻すことができる。
導電性高分子分散液に有機溶剤を含有させる場合には、得られた前記水分散体に有機溶剤を添加すればよい。有機溶剤を添加する場合には、有機溶剤と共にアミン化合物を添加して、ポリアニオンの一部のアニオン基を疎水化することが好ましい。
また、導電性高分子分散液は市販のものを使用しても構わない。
【0057】
[導電性粘着剤塗工液]
工程(C−2),(D−2)で使用する前記導電性粘着剤塗工液は、導電性複合体と粘着剤と分散媒とを含有する。導電性粘着剤塗工液は、高導電化剤、添加剤等を含有してもよい。
粘着剤は疎水性であることが多いため、導電性粘着剤塗工液に含まれる分散媒は、有機溶剤を含有することが好ましい。導電性粘着剤塗工液に含まれる有機溶剤は、前記導電性高分子分散液に含まれてもよい有機溶剤と同様の溶剤を使用できる。
有機溶剤は、導電性複合体及び粘着剤の両方を容易に分散できることから、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が好ましく、ケトン系溶剤がより好ましい。また、ケトン系溶剤のなかでも、メチルエチルケトンが特に好ましい。
また、本態様では、導電性複合体の製造過程では水を使用するため、導電性粘着剤塗工液には水が少量含まれてもよい。有機溶剤と水の合計に対する水の含有量は50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。導電性粘着剤塗工液には水が含まれていなくてもよい。
【0058】
〔導電性粘着剤塗工液の調製方法〕
導電性粘着剤塗工液は、例えば、下記の導電性粘着剤塗工液の第1の調製方法又は導電性粘着剤塗工液の第2の調製方法により得られる。
導電性粘着剤塗工液の第1の調製方法は、析出工程と回収工程と粘着剤添加工程とを有する。
導電性粘着剤塗工液の第2の調製方法は、乾燥工程と粘着剤添加工程とを有する。
【0059】
・析出工程
第1の調製方法における析出工程は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体水分散体にエポキシ基含有化合物を添加し、前記導電性複合体を析出させて析出物を形成させる工程である。導電性複合体水分散体は、前記導電性高分子分散液に使用するものと同様である。
前記導電性高分子水分散体にエポキシ基含有化合物を添加すると、前記導電性複合体を構成するポリアニオンの一部のアニオン基、具体的にはπ共役系導電性高分子へのドープに関与しないアニオン基にエポキシ基含有化合物のエポキシ基が反応して疎水性置換基を形成する。これにより、アニオン基が消失するため、導電性複合体が疎水化される。
但し、π共役系導電性高分子へのドープに関与しないアニオン基の全てにエポキシ基含有化合物が反応しなくてもよく、ドープに関与しないアニオン基が一部残留してもよい。
疎水化された導電性複合体は、水分散体中で分散することができないため、析出して析出物となる。
【0060】
エポキシ基含有化合物の添加量は、導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上100000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上50000質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上10000質量部以下であることがさらに好ましい。エポキシ基含有化合物の添加量が前記下限値以上であれば、導電性複合体の疎水性を充分に向上させることができ、前記上限値以下であれば、導電性粘着剤層の導電性低下を防止できる。
【0061】
導電性高分子水分散体にエポキシ基含有化合物を添加する前、添加と同時又は添加した後には、有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。水溶性有機溶剤を含む場合、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
導電性高分子水分散体にエポキシ基含有化合物を添加する前、添加している最中、又は添加した後には、加熱してもよい。特に、アニオン基とエポキシ基との反応を促進するために、加熱することが好ましい。加熱温度は、40℃以上100℃以下が好ましい。
【0062】
・回収工程
第1の調製方法における回収工程は、疎水化された導電性複合体からなる前記析出物を回収する工程である。
析出物を、水分散体から分取して回収する方法としては、例えば、ろ過、沈殿、抽出等の公知の分取方法を適用できる。これらの分取方法のなかでも、ろ過が好ましく、導電性複合体の形成に用いたポリアニオンがろ液とともに通過する程度に粗い目のフィルターを用いてろ過することが好ましい。このろ過方法によれば、析出物を分取するとともに、導電性複合体を形成していない余剰のポリアニオンをろ液側に残して、析出物と余剰のポリアニオンとを分離することができる。余剰のポリアニオンを除くことにより、析出物の導電性を高めることができる。
【0063】
ろ過に使用するフィルターとしては、化学分析分野で用いられるろ紙が好ましい。このろ紙としては、例えば、アドバンテック社製ろ紙、保留粒子径7μm等が挙げられる。ここで、ろ紙の保留粒子径は目の粗さの目安であり、JIS P 3801〔ろ紙(化学分析用)〕で規定された硫酸バリウムなどを自然ろ過したときの漏えい粒子径により求められる。ろ紙の保留粒子径は、例えば2μm以上10μm以下とすることができる。この保留粒子径は、余剰のポリアニオンを透過させて容易に分離できることから、5μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0064】
回収工程によって得られる析出物の水分量はできるだけ少ないことが好ましく、水分を全く含まないことが最も好ましいが、実用の観点からは、水分を10質量%以下の範囲で含んでも構わない。
水分量を少なくする方法としては、例えば、有機溶剤で析出物を洗い流す方法、析出物を乾燥する方法等が挙げられる。
【0065】
・粘着剤添加工程
第1の調製方法における粘着剤添加工程は、回収した析出物に粘着剤及び有機溶剤を添加する工程である。析出物に添加する粘着剤は、固形物であってもよいし、粘着剤が有機溶剤に溶解又は分散した液状物であってもよい。
粘着剤の固形分添加量は、導電性複合体100質量部に対して1質量部以上100000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上50000質量部以下であることがより好ましく、100量部以上10000質量部以下であることがさらに好ましい。粘着剤の固形分添加量を前記下限値以上にすれば、導電性粘着剤層が粘着性を充分に発揮でき、前記上限値以下にすれば、導電性粘着剤層の導電性を充分に確保できる。
【0066】
粘着剤添加工程における有機溶剤の添加は、粘着剤添加の前でもよいし、粘着剤添加の後でもよいし、粘着剤添加と同時でもよい。粘着剤の有機溶剤溶液を添加することにより、粘着剤と有機溶剤とを同時添加してもよい。
有機溶剤の添加量は、導電性粘着剤塗工液100質量%に対して導電性複合体の含有量が0.1質量%以上10質量%以下になる量とすることが好ましい。導電性複合体の含有量が前記下限値以上になるように有機溶剤を添加すれば、導電性粘着剤層の導電性を容易に確保できる。導電性複合体の含有量が前記上限値以下になるように有機溶剤を添加すれば、導電性粘着剤塗工液の塗工性が向上し、塗工面に対してムラなく均一に塗布することが容易になる。
【0067】
析出物に有機溶剤を添加した後には、得られた液を攪拌して分散処理を施してもよい。
攪拌の方法は特に制限されず、スターラー等の剪断力が弱い攪拌であってもよいし、高剪断力の分散機(ホモジナイザ等)を用いて攪拌してもよい。有機溶剤への析出物の分散性を高くできる点では、分散処理において、加圧可能な高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
【0068】
粘着剤が、架橋性アクリル単量体単位を有するアクリル重合体を含むアクリル系粘着剤である場合、粘着剤添加工程において、アクリル系粘着剤と共に架橋剤を添加してもよい。
架橋剤の好ましい添加量は、アクリル重合体に含まれる架橋性アクリル単量体単位の含有量に応じて選択される。
例えば、架橋剤の固形分添加量は、アクリル系重合体100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下とすることが好ましく、0.5質量部以上10質量部以下とすることがより好ましい。架橋剤の固形分添加量を前記下限値以上にすれば、アクリル系重合体を充分に架橋でき、前記上限値以下にすれば、過度の架橋によるゲル化を抑制できる。
【0069】
高導電化剤、添加剤等を導電性粘着剤塗工液に含有させる場合には、粘着剤添加工程において、高導電化剤、添加剤等を添加すればよい。
【0070】
・乾燥工程
第2の調製方法における乾燥工程は、導電性高分子水分散体を乾燥して導電性複合体の乾燥物を得る工程である。
前記乾燥工程における乾燥方法としては、凍結乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥、風乾、温風乾燥、加熱乾燥等の公知方法が適用できる。
凍結乾燥では、前記導電性高分子水分散体中の水分を凍結させ、真空乾燥する。
凍結乾燥の際の温度は、−60〜60℃とすることが好ましく、−40〜40℃とすることがより好ましい。凍結乾燥温度が前記下限値以上であれば、温度調整しやすく、前記上限値以下であれば、導電性高分子水分散体を容易に凍結乾燥できる。
真空乾燥の際には、分散媒を充分に揮発させるために、前記凍結乾燥温度にした後に、例えば40℃以上に加熱してもよい。
噴霧乾燥では、前記導電性高分子水分散体を真空容器中に噴霧することにより水分を蒸発させて乾燥する。
噴霧乾燥の際の温度は、−20〜40℃とすることが好ましく、0〜30℃とすることがより好ましい。噴霧乾燥温度が前記下限値以上であれば、導電性高分子水分散体を容易に乾燥でき、前記上限値以下であれば、導電性複合体の熱劣化を防止できる。
乾燥工程によって得られる乾燥物の水分量はできるだけ少ないことが好ましく、水分を全く含まないことが最も好ましいが、実用の観点からは、水分を10質量%以下の範囲で含んでも構わない。
水分量を少なくするためには、例えば、乾燥時間を長く、乾燥温度を高く、真空度を高くすればよい。
【0071】
第2の調製方法における粘着剤添加工程は、前記乾燥物にエポキシ基含有化合物と粘着剤と有機溶剤とを添加する工程である。粘着剤添加工程では、アミン化合物を添加してもよい。
エポキシ基含有化合物と有機溶剤との添加の順序は特に制限はなく、エポキシ基含有化合物と有機溶剤とを同時に添加してもよい。また、エポキシ基含有化合物よりも有機溶剤を先に添加してもよいし、有機溶剤よりもエポキシ基含有化合物を先に添加してもよい。
粘着剤と有機溶剤との添加の順序は特に制限はなく、粘着剤と有機溶剤とを同時に添加してもよい。また、粘着剤よりも有機溶剤を先に添加してもよいし、有機溶剤よりも粘着剤を先に添加してもよい。粘着剤の有機溶剤溶液を添加することにより、粘着剤と有機溶剤とを同時添加してもよい。
該工程では、乾燥物にエポキシ基含有化合物を添加することで、ポリアニオンのアニオン基とエポキシ基含有化合物とを反応させてエステルを形成することができる。これにより、導電性複合体を疎水化できる。
エポキシ基含有化合物を添加した際には、アニオン基との反応を促進させるために加熱してよい。加熱温度は、40℃以上100℃以下とすることが好ましい。
【0072】
[塗工方法]
工程(A−1),(B−1)において、フィルム基材に導電性高分子分散液を塗工する方法としては、例えば、スリットコーター、スプレーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた塗工方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
工程(C−1),(D−1)において、導電層に導電性粘着剤塗工液を塗工する方法としては、工程(A−1),(B−1)においてフィルム基材に導電性高分子分散液を塗工する方法と同様の方法を適用できる。
工程(B−2)において、導電層に粘着剤塗工液を塗工する方法としては、工程(A−1),(B−1)においてフィルム基材に導電性高分子分散液を塗工する方法と同様の方法を適用できる。
工程(D−2)において、導電層に導電性粘着剤塗工液を塗工する方法としては、工程(A−1),(B−1)においてフィルム基材に導電性高分子分散液を塗工する方法と同様の方法を適用できる。
【0073】
[乾燥処理]
フィルムに塗工した導電性高分子分散液又は導電性粘着剤塗工液には、乾燥処理を施して、導電層又は導電性粘着剤層を形成することが好ましい。
導電層に塗工した粘着剤塗工液又は導電性粘着剤塗工液には、乾燥処理を施して、粘着剤層又は導電性粘着剤層を形成することが好ましい。
乾燥処理としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。乾燥速度が速くなる点では、乾燥処理のなかでも加熱乾燥が好ましい。特に、粘着剤塗工液又は導電性粘着剤塗工液が架橋剤を含有する場合には、粘着剤の架橋を促進するために、加熱乾燥することが好ましい。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱等の通常の方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は50℃以上150℃以下の範囲であり、好ましくは60℃以上130℃以下、より好ましくは70℃以上120℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。
また、充分に分散媒を除去する点で、乾燥時間は30秒以上であることが好ましい。
【0074】
(作用効果)
本態様の導電性フィルムは、フィルム基材に設けられた導電層及び導電性粘着剤層の少なくとも一方を備えるため、導電性を発揮する。具体的に、本態様の導電性フィルムにおいては、例えば、抵抗率計で測定した表面抵抗値が1×10
3Ω/□以上1×10
10Ω/□以下の範囲となる導電性を発揮することができる。
本態様の導電性フィルムは、フィルム基材がスーパーエンジニアリングプラスチックを含有しており、耐熱性が高い。そのため、本態様の導電性フィルムは、高温環境下において使用しても導電性フィルムの変形等が起こり難く、導電性を維持できる。
【0075】
<帯電防止性配管>
本発明の一態様の帯電防止性配管は、配管本体と、前記配管本体の外面に設けられた前記態様の導電性フィルムとを備える。本態様の帯電防止性配管に使用される導電性フィルムは、帯電防止材として機能する。
本態様における導電性フィルムは、少なくとも1か所でアースに接続される。
【0076】
本態様の帯電防止性配管は、配管本体が樹脂製である場合に好適である。樹脂製の配管本体の内部に液体が流れる際には、配管本体の内面に液体が擦れることによって静電気が生じやすい。そのため、樹脂製の配管本体に前記態様の導電性フィルムを取り付けて帯電防止することが好ましい。
【0077】
配管本体は、芳香族ポリエーテルケトン、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、液晶ポリマーよりなる群から選ばれる1種又は2種以上のスーパーエンジニアリングプラスチックを含有することが好ましい。配管本体が前記スーパーエンジニアリングプラスチックを含有すれば、高温(例えば50℃以上)の液体に対しても対応できる。また、配管本体が前記スーパーエンジニアリングプラスチックを含有すれば、耐久性が向上するため、長期間の使用にも耐えうる。
前記スーパーエンジニアリングプラスチックのなかでも、汎用的であることから、芳香族ポリエーテルケトン、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドよりなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、芳香族ポリエーテルケトンがより好ましく、ポリエーテルエーテルケトンがさらに好ましい。芳香族ポリエーテルケトンは、耐薬品性が高く、配管本体の内部を流れる液体を汚染しにくい点でも、配管本体の材質として好ましい。さらに、芳香族ポリエーテルケトンは、耐加水分解性に優れる。したがって、芳香族ポリエーテルケトンを含有する配管本体は、イオン交換水用の配管として適している。
配管本体に含まれてもよい樹脂としては、フィルム基材に含まれてもよい樹脂と同様の樹脂が挙げられる。
【0078】
配管本体におけるスーパーエンジニアリングプラスチックの含有量は、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、80質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。配管本体におけるスーパーエンジニアリングプラスチックの含有量が前記下限値以上であれば、帯電防止性配管の耐熱性及び耐久性を向上させることができる。
【0079】
配管本体の形状に特に制限はなく、例えば、ストレート、エルボ、T字、クロス等のいずれであってもよい。配管本体の外径及び内径は特に制限はなく、用途に応じて適宜選択すればよい。
【0080】
本態様の帯電防止性配管は、配管本体に前記態様の導電性フィルムが取り付けられて帯電防止性を有しているから、配管本体内部に液体が流れて配管本体に静電気が生じた際には除電できる。
液体のなかでも、イオン交換水又は有機溶剤は電荷を有さないため、配管本体内部に流したときに静電気が発生しやすい傾向にある。しかし、本態様の帯電防止性配管であれば、イオン交換水又は有機溶剤を流した際にも帯電防止できる。
本態様の帯電防止性配管にあっては、配管本体に取り付けられた導電性フィルムの耐熱性が優れるため、配管本体の内部に高温の液体が流れる場合でも導電性フィルムの変形が防止されている。そのため、配管本体の内部に高温の液体が長時間流れても、導電性フィルムによる帯電防止性を維持できる。
帯電防止性配管に使用する導電性フィルムとして、フィルム基材の両面に導電層又は導電性粘着剤層を設けたものを使用した場合には、配管本体に取り付けた際に導電層が露出するため、アースを接続しやすいという利点を有する。
配管本体の材質としてポリエーテルエーテルケトンを選択した場合には、本態様の帯電防止性配管は、高温のイオン交換水用として特に適している。高温のイオン交換水は、医療用などに使用されることがある。医療用イオン交換水は、殺菌のために加熱され、例えば、65℃以上、好ましく85℃以上に加熱される。
【実施例】
【0081】
(製造例1)
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法によりポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000ml溶液を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。前記の限外ろ過操作を3回繰り返した。さらに、得られたポリスチレンスルホン酸溶液に約2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
【0082】
(製造例2)
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合させた。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、1.2%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSS水分散液)溶液を得た。なお、PEDOT−PSS固形分に対するPSSの含有量は75質量%である。
【0083】
(製造例3)
製造例2のPEDOT−PSS水分散液15gにメタノール15gを添加し、次いで、トリオクチルアミン0.16g及びメチルエチルケトン59.84gの混合液を添加した。さらに、メチルメタクリレート重合体溶液(質量平均分子量50000、固形分濃度30%)を添加して、導電性高分子分散液を得た。
【0084】
(製造例4)
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液100gに、メタノール300gとエポキシ基含有化合物(共栄社化学株式会社製、エポライトM−1230、C12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテル)25gを添加し、60℃で4時間加熱攪拌した。これにより、π共役系導電性高分子とポリアニオンとエポキシ基含有化合物とから形成された導電性複合体の析出物1.57gを得た。その析出物を315gのメチルエチルケトンに添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散処理して、固形分濃度0.5質量%の導電性高分子分散液を得た。
【0085】
(実施例1)
ポリエーテルエーテルケトンフィルム(信越ポリマー株式会社製、平均厚さ50μm)の表面にコロナ放電処理を施した。
コロナ放電処理を施した前記ポリエーテルエーテルケトンフィルムの一方の面に、No.12のバーコーターを用いて製造例3の導電性高分子分散液を塗工し、150℃、1分間乾燥させて、導電層を形成した。
アクリル重合体溶液(綜研化学株式会社製、SKダイン1720、トルエン酢酸エチル混合溶剤、固形分濃度47質量%)50gにメチルエチルケトン50gを添加し、さらに多官能イソシアネート化合物溶液(東ソー株式会社製、コロネートL−45E、酢酸エチル溶剤、固形分濃度45質量%)0.465gを添加して、粘着剤塗工液を得た。
得られた粘着剤塗工液を、No.12のバーコーターを用いて前記導電層の表面に塗工し、100℃、2分間乾燥させて粘着剤層を形成した。
前記粘着剤層の表面に、粘着剤層を保護するためのポリオレフィン製離型フィルムを貼り付け、23℃の環境下に7日間放置して、粘着剤を充分に架橋させた。これにより、導電性フィルムを得た。
得られた導電性フィルムを幅2cmに裁断してテープ状にした、そのテープ状の導電性フィルムから離型フィルムを剥離して粘着剤層を露出させ、その粘着剤層をポリエーテルエーテルケトン製の配管本体に密着させながら、テープ状の導電性フィルムを配管本体に巻き付けた。これにより、帯電防止性配管を得た。なお、導電性フィルムにはアースを取り付けた。
【0086】
(実施例2)
ポリエーテルエーテルケトンフィルムをポリエーテルケトンフィルム(信越ポリマー株式会社製、平均厚さ50μm)に変更した以外は実施例1と同様にして、帯電防止性配管を得た。
【0087】
(実施例3)
ポリエーテルエーテルケトンフィルムを芳香族ポリイミドフィルム(信越ポリマー株式会社製、平均厚さ50μm)に変更した以外は実施例1と同様にして、帯電防止性配管を得た。
【0088】
(実施例4)
ポリエーテルエーテルケトンフィルムを芳香族ポリアミドであるナイロン9Tフィルム(信越ポリマー株式会社製、平均厚さ50μm)に変更した以外は実施例1と同様にして、帯電防止性配管を得た。
【0089】
(比較例1)
ポリエーテルエーテルケトンフィルムに製造例3の導電性高分子分散液を塗工しなかった以外は実施例1と同様にして、配管を得た。
【0090】
(比較例2)
ポリエーテルエーテルケトンフィルムの代わりにポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT−60、平均厚さ50μm)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、配管を得た。
【0091】
(実施例5)
ポリエーテルエーテルケトンフィルム(信越ポリマー株式会社製、平均厚さ50μm)の表面にコロナ放電処理を施した。
アクリル重合体溶液(綜研化学株式会社製、SKダイン1720、トルエン酢酸エチル混合溶剤、固形分濃度47質量%)50gに製造例4の導電性高分子分散液50gを添加した。さらに多官能イソシアネート化合物溶液(東ソー株式会社製、コロネートL−45E、酢酸エチル溶剤、固形分濃度45質量%)0.465gを添加して、導電性粘着剤塗工液を得た。
コロナ放電処理を施した前記ポリエーテルエーテルケトンフィルムの一方の面に、No.12のバーコーターを用いて前記導電性粘着剤塗工液を塗工し、100℃、2分間乾燥させて導電性粘着剤層を形成した。
前記導電性粘着剤層の表面に、導電性粘着剤層を保護するためのポリオレフィン製離型フィルムを貼り付け、23℃の環境下に7日間放置して、粘着剤を充分に架橋させた。これにより、導電性フィルムを得た。
得られた導電性フィルムを幅2cmに裁断してテープ状にした、そのテープ状の導電性フィルムから離型フィルムを剥離して導電性粘着剤層を露出させ、その導電性粘着剤層をポリエーテルエーテルケトン製の配管本体に密着させながら、テープ状の導電性フィルムを配管本体に巻き付けた。これにより、帯電防止性配管を得た。
【0092】
(比較例3)
アクリル重合体溶液(綜研化学株式会社製、SKダイン1720、トルエン酢酸エチル混合溶剤、固形分濃度47質量%)50gに製造例4の導電性高分子分散液50gの代わりにメチルエチルケトン50gを添加して粘着剤塗工液を得た。この粘着剤塗工液を導電性粘着剤塗工液をポリエーテルエーテルケトンフィルムに塗工した以外は実施例5と同様にして、配管を得た。
【0093】
(比較例4)
ポリエーテルエーテルケトンフィルムの代わりにポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT−60、平均厚さ50μm)に変更したこと以外は実施例5と同様にして、配管を得た。
【0094】
(実施例6)
ポリエーテルエーテルケトンフィルム(信越ポリマー株式会社製、平均厚さ50μm)の表面にコロナ放電処理を施した。
コロナ放電処理を施した前記ポリエーテルエーテルケトンフィルムの一方の面に、No.12のバーコーターを用いて製造例3の導電性高分子分散液を塗工し、150℃、1分間乾燥させて、導電層を形成した。
アクリル重合体溶液(綜研化学株式会社製、SKダイン1720、トルエン酢酸エチル混合溶剤、固形分濃度47質量%)50gに製造例4の導電性高分子分散液50gを添加した。さらに多官能イソシアネート化合物溶液(東ソー株式会社製、コロネートL−45E、酢酸エチル溶剤、固形分濃度45質量%)0.465gを添加して、導電性粘着剤塗工液を得た。
得られた導電性粘着剤塗工液を、No.12のバーコーターを用いて前記導電層の表面に塗工し、100℃、2分間乾燥させて導電性粘着剤層を形成した。
前記導電性粘着剤層の表面に、導電性粘着剤層を保護するためのポリオレフィン製離型フィルムを貼り付け、23℃の環境下に7日間放置して、粘着剤を充分に架橋させた。これにより、導電性フィルムを得た。
得られた導電性フィルムを幅2cmに裁断してテープ状にした、そのテープ状の導電性フィルムから離型フィルムを剥離して導電性粘着剤層を露出させ、その導電性粘着剤層をポリエーテルエーテルケトン製の配管本体に密着させながら、テープ状の導電性フィルムを配管本体に巻き付けた。これにより、帯電防止性配管を得た。
【0095】
(比較例5)
ポリエーテルエーテルケトンフィルムの代わりにポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT−60、平均厚さ50μm)に変更したこと以外は実施例6と同様にして、配管を得た。
【0096】
<評価>
[フィルムの表面抵抗値]
各例で得たフィルムについて、表面抵抗値を、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリティック製ハイレスタ)を用い、印加電圧10Vの条件で測定した。測定結果を表1に示す。
【0097】
[配管の帯電圧]
各例の配管の内部にイオン交換水を流しながら、配管本体に巻き付けたフィルムの表面の帯電圧を、デジタル低電位測定器(春日電機株式会社製、KSD−3000)を用いて測定した。測定結果を表1に示す。
【0098】
[配管の耐熱性]
各例の配管を180℃の温度で8時間加熱し、加熱前との変化を目視により観察し、耐熱性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
導電層又は導電性粘着剤層を備える各実施例の導電性フィルムは、表面抵抗値が小さく、導電性を有していた。実施例の導電性フィルムを配管本体に巻き付けた配管は、静電気の発生が起こりやすいイオン交換水を流しても、帯電圧が小さく、帯電を充分に防止できた。実施例の導電性フィルムを配管本体に巻き付けた配管を加熱しても、導電性フィルムは変形しにくかった。したがって、実施例における導電性フィルム及び配管は耐熱性が高かった。
導電層及び導電性粘着剤層を備えない比較例1,3のフィルムは、表面抵抗値が大きく、導電性を有していなかった。比較例1,3の導電性フィルムを配管本体に巻き付けた配管は、イオン交換水を流した際の帯電圧が大きく、静電気を帯びていた。
フィルム基材としてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた比較例2,4,5においては、配管を加熱した際に導電性フィルムが変形して配管本体から剥がれた。したがって、比較例2,4,5における導電性フィルム及び配管は耐熱性が低かった。
なお、実施例1〜5は比較例である。