特許第6694898号(P6694898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6694898
(24)【登録日】2020年4月22日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20200511BHJP
【FI】
   B60T7/12 A
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-557511(P2017-557511)
(86)(22)【出願日】2016年11月28日
(86)【国際出願番号】IB2016057151
(87)【国際公開番号】WO2017109611
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2018年5月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-250581(P2015-250581)
(32)【優先日】2015年12月22日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】根本 宣穂
【審査官】 羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−315663(JP,A)
【文献】 特開平10−044949(JP,A)
【文献】 特開平09−104328(JP,A)
【文献】 特開2007−246051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12−8/1769
B60T 8/32−8/96
B62L 1/00−5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターサイクルにブレーキ力を発生させるブレーキ機構を制御する制御装置であって、
前記ブレーキ機構を操作する第1の操作部の操作を検出する第1の検出部と、
少なくとも、勾配のある路面において停止している前記モーターサイクルの搭乗者が前記第1の操作部を解放した状況下で、前記ブレーキ力を保持できるヒルホールド制御を実行する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記ヒルホールド制御で前記ブレーキ力を保持しているときに、前記第1の検出部の検出信号に基づいて前記第1の操作部の操作としての、ハンドルレバーを握る動作又はフットペダルを踏む動作が行われる操作がされたと判定した場合には、前記ブレーキ力の保持を解除する、
制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記ヒルホールド制御を開始してから、前記ブレーキ力の保持が解除されないまま、規定時間が経過した場合には、前記第1の操作部の操作がされたか否かに関わらず、前記ブレーキ力の保持を解除する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1の操作部とは異なる第2の操作部の操作がされていない場合には、前記第1の操作部の操作がされていても、前記ブレーキ力の保持を解除せず、
前記第1の操作部の操作及び前記第2の操作部の操作のいずれもされている場合に、前記ブレーキ力の保持を解除する、
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第2の操作部は、
前記モーターサイクルに取り付けられたボタンである、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第2の操作部の操作を検出する第2の検出部を備え、
前記第2の操作部は、
前記モーターサイクルに設けられたアクセルグリップである、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項6】
少なくとも、勾配のある路面において停止しているモーターサイクルの搭乗者が、前記モーターサイクルにブレーキ力を発生させるブレーキ機構を操作するための第1の操作部を解放した状況下で、前記ブレーキ力を保持できるヒルホールド制御を実行する前記モーターサイクルの制御方法であって、
制御装置が、前記ヒルホールド制御で前記ブレーキ力を保持するステップと、
前記ヒルホールド制御で前記ブレーキ力を保持しているときに、前記制御装置が、前記第1の操作部操作としての、ハンドルレバーを握る動作又はフットペダルを踏む動作が行われる操作がされたと判定した場合には、前記ブレーキ力の保持を解除するステップと、
を備えた、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーターサイクルの制御装置及び制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の制御装置として、車両の搭乗者がブレーキペダル等を解放しても、ブレーキ機構のブレーキ力を保持するヒルホールド制御を実行するものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の制御装置では、ヒルホールド制御で保持されているブレーキ力を緩めるには、搭乗者のアクセル操作が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−246051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、モーターサイクルのアクセル操作は、ハンドルに設けられたアクセルグリップを回す動作によって行われる。アクセルグリップを回す動作では、手首をひねる動作が必要になる。モーターサイクルのヒルホールド制御において、保持されているブレーキ力を緩めるときの操作をアクセル操作とすると、状況によっては搭乗者が操作しにくくなる場合がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を背景としてなされたものであり、ヒルホールド制御で保持していたブレーキ力を緩めるときの操作性を向上させることができる制御装置及び制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る制御装置は、モーターサイクルにブレーキ力を発生させるブレーキ機構を制御する制御装置であって、ブレーキ機構を操作する第1の操作部の操作を検出する検出部と、勾配のある路面においてブレーキ力を保持するヒルホールド制御を実行する制御部と、を備え、制御部は、ヒルホールド制御でブレーキ力を保持しているときに、検出部の検出信号に基づいて第1の操作部の操作がされたと判定した場合には、ブレーキ力の保持を解除するものである。
【0007】
本発明に係る制御方法は、勾配のある路面においてブレーキ機構のブレーキ力を保持するヒルホールド制御を実行するモーターサイクルの制御方法であって、ヒルホールド制御でブレーキ力を保持するステップと、ブレーキ機構を操作する第1の操作部が操作されたか否かを判定するステップと、第1の操作部が操作されたと判定した場合には、ヒルホールド制御において保持しているブレーキ力の保持を解除するステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る制御装置及び制御方法では、ヒルホールド制御で保持されているブレーキ力を緩めるか否かを、ブレーキ機構を操作する第1の操作部の操作で判定しているため、ヒルホールド制御で保持していたブレーキ力を緩めるときの操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1に係る制御装置を含むモーターサイクルを模式的に示す図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る制御装置を含む液圧制御システムの、概要構成図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る制御装置を含む液圧制御システムの、各種センサ、制御部及び各種アクチュエータの機能ブロック図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る制御装置の制御部の機能ブロック図である。
図5】本発明の実施の形態1に係る制御装置の制御フローの一例である。
図6】本発明の実施の形態2に係る制御装置の制御部の機能ブロック図である。
図7】本発明の実施の形態2に係る制御装置の制御フローの一例である。
図8】本発明の実施の形態2の変形例に係る制御装置の制御部の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る制御装置及び制御方法について、図面を用いて説明する。以下で説明する構成、動作等は、一例であり、本発明に係る制御装置及び制御方法は、そのような構成、動作等である場合に限定されない。例えば、本発明に係る制御装置及び制御方法は、ブレーキ制御以外の動作を行うものであってもよい。
また、各図において、詳細部分の図示が適宜簡略化又は省略されている。また、重複する説明が、適宜簡略化又は省略されている。
【0011】
実施の形態1.
<液圧制御システム100の全体構成>
図1は、本実施の形態1に係る制御装置を含むモーターサイクルを模式的に示す図である。図2は、本実施の形態1に係る制御装置を含む液圧制御システムの、概要構成図である。
液圧制御システム100は、モーターサイクル200に搭載され、車輪W(前輪20及び後輪30)にブレーキ力を発生させる制御装置1を備えている。
モーターサイクル200は、車輪W及び車体Bと制御装置1とを合わせたものである。車体Bには、モーターサイクル200から制御装置1及び車輪Wを除いたものが全て含まれる。また、本実施の形態では、モーターサイクル200が自動二輪車であるものとして説明するが、それに限定されるものではなく自動三輪車でもよい。モーターサイクル200のハンドルには、アクセルグリップ70が設けられている。
【0012】
モーターサイクル200は、前輪20及び後輪30と、搭乗者が操作するハンドルレバー24及びフットペダル34とを備えている。このハンドルレバー24を操作すると前輪20のブレーキ力が変化し、フットペダル34を操作すると後輪30のブレーキ力が変化する。
【0013】
液圧制御システム100は、前輪20のブレーキ力の発生に利用されるブレーキ液が流れる前輪液圧回路C1と、後輪30のブレーキ力の発生に利用されるブレーキ液が流れる後輪液圧回路C2とを含む。
【0014】
液圧制御システム100は、前輪20に付設されるフロントブレーキパッド21と、フロントブレーキパッド21を動かすフロントブレーキピストン(図示省略)が摺動自在に設けられているフロントホイールシリンダ22と、フロントホイールシリンダ22に接続されたブレーキ液管23とを備えている。
液圧制御システム100は、ハンドルレバー24に付設される第1マスターシリンダ25と、ブレーキ液を貯留する第1リザーバ26と、第1マスターシリンダ25に接続されたブレーキ液管27とを備えている。なお、第1マスターシリンダ25には、マスターシリンダピストン(図示省略)が摺動自在に設けられている。ハンドルレバー24が操作されると、第1マスターシリンダ25内のマスターシリンダピストンが動く。
【0015】
液圧制御システム100は、後輪30に付設されるリアブレーキパッド31と、リアブレーキパッド31を動かすリアブレーキピストン(図示省略)が摺動自在に設けられているリアホイールシリンダ32と、リアホイールシリンダ32に接続されたブレーキ液管33とを備えている。
液圧制御システム100は、フットペダル34に付設される第2マスターシリンダ35と、ブレーキ液を貯留する第2リザーバ36と、第2マスターシリンダ35に接続されたブレーキ液管37とを備えている。なお、第2マスターシリンダ35には、マスターシリンダピストン(図示省略)が摺動自在に設けられている。フットペダル34が操作されると、第2マスターシリンダ35内のマスターシリンダピストンが動く。
【0016】
<制御装置1の構成説明>
制御装置1は、ブレーキ液が流れる内部流路4と、内部流路4内のブレーキ液を第1マスターシリンダ25及び第2マスターシリンダ35側に搬送するのに用いられるポンプ装置2とを含む。なお、内部流路4は、前輪液圧回路C1の一部を構成する内部流路4Aと、後輪液圧回路C2の一部を構成する内部流路4Bとを含む。
【0017】
また、制御装置1は、開閉自在の調整弁3を含む。なお、調整弁3は、第1増圧弁3A及び第1減圧弁3Bと、第2増圧弁3C及び第2減圧弁3Dとを含む。調整弁3は、例えば、ABS(Antilock Brake System)制御等のブレーキ制御を実行するときに、開閉する弁である。
また、制御装置1は、開度調整自在の切替弁10と、開閉自在の吸入弁11とを含む。切替弁10は、前輪液圧回路C1に設けられた切替弁10Aと、後輪液圧回路C2に設けられた切替弁10Bとを含む。切替弁10Aが閉じることで、フロントホイールシリンダ22のブレーキ液の液圧が保持され、前輪20のブレーキ力の保持が実現される。また、切替弁10Bが閉じることで、リアホイールシリンダ32のブレーキ液の液圧が保持され、後輪30のブレーキ力の保持が実現される。
【0018】
さらに、吸入弁11は、前輪液圧回路C1に設けられた吸入弁11Aと、後輪液圧回路C2に設けられた吸入弁11Bとを含む。吸入弁11Aはフロントホイールシリンダ22を増圧するときに開かれ、吸入弁11Bはリアホイールシリンダ32を増圧するときに開かれる。なお、調整弁3、切替弁10及び吸入弁11は、例えば、ソレノイドを備えた電磁弁である。
【0019】
また、制御装置1は、調整弁3、切替弁10及び吸入弁11の開閉等を制御する制御部7を含む。なお、制御部7の一部又は全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
また、制御装置1は、制御部7に検出信号を出力する検出機構8を含む。検出機構8は、路面の勾配値を取得するのに用いられる加速度センサ8A(図3参照)と、ハンドルレバー24の操作を検出するのに用いられる第1の検出部8B1(図3参照)と、フットペダル34の操作を検出するのに用いられる第1の検出部8B2(図3参照)と、モーターサイクル200の前輪20の車輪速及び後輪30の車輪速を算出するのに用いられる前輪速度センサ8C1(図3参照)及び後輪速度センサ8C2(図3参照)と、内部流路4のブレーキ液の液圧を検出する圧力センサ8Dとを含む。例えば、第1の検出部8B1はハンドルレバー24に設けられた位置検出センサであり、第1の検出部8B2はフットペダル34に設けられた位置検出センサである。
【0020】
制御装置1は、ブレーキ液管23等の対応する液管に接続される各種ポートPを含む。また、制御装置1は、内部流路4を流れるブレーキ液の流量を規制するフロートリストリクタ5と、ブレーキ液を貯留可能なアキュムレータ6とを含む。
【0021】
内部流路4Aには、切替弁10A、吸入弁11A、第1増圧弁3A及び第1減圧弁3B等が設けられている。内部流路4Aは、ポートPを介してブレーキ液管23及びブレーキ液管27に接続されている。内部流路4Bには、切替弁10B、吸入弁11B、第2増圧弁3C及び第2減圧弁3D等が設けられている。内部流路4Bは、ポートPを介してブレーキ液管33及びブレーキ液管37に接続されている。
【0022】
ポンプ装置2は、例えばDCモーター等で構成することができる駆動機構2Aと、駆動機構2Aによって駆動力が与えられる2つのポンプエレメント2Bとを含む。駆動機構2Aは、固定子及び回転子等を含み、回転数が制御部7によって制御される。一方のポンプエレメント2Bは、前輪液圧回路C1内のブレーキ液の搬送に用いられ、内部流路4Aに設けられている。他方のポンプエレメント2Bは、後輪液圧回路C2内のブレーキ液の搬送に用いられ、内部流路4Bに設けられている。
【0023】
制御部7は、一定の条件の下、ヒルホールド制御を実行する。ヒルホールド制御では、勾配のある路面でモーターサイクル200が停止している状態で、モーターサイクル200の搭乗者がハンドルレバー24及びフットペダル34を解放した場合に、モーターサイクル200のブレーキ力が一定時間保持される。制御部7は、一定時間が経過する前であっても、搭乗者の操作に応じて、ブレーキ力の保持を解除してブレーキ力を緩める。
【0024】
<制御部7の構成例>
図3は、本実施の形態1に係る制御装置を含む液圧制御システムの、各種センサ、制御部及び各種アクチュエータの機能ブロック図である。図4は、本実施の形態1に係る制御装置の制御部の機能ブロック図である。図3及び図4を参照して、制御部7の構成例について説明する。
【0025】
なお、以下の説明において、第1増圧弁3A及び第2増圧弁3Cは開であり、第1減圧弁3B及び第2減圧弁3Dは閉である。また、前輪速度センサ8C1及び後輪速度センサ8C2を併せて車輪速センサWSとも称する。また、ハンドルレバー24及びフットペダル34を併せて第1の操作部BR1とも称する。また、第1の検出部8B1及び第1の検出部8B2を併せて第1の検出部SWとも称する。
また、ブレーキ機構とは、モーターサイクル200にブレーキ力を発生させる構成を指す。ブレーキ機構には、例えば、切替弁10、吸入弁11A及びポンプ装置2等が該当する。
【0026】
制御部7は、検出機構8からの信号を受ける入力部7Aと、各種の判定等をするプロセッサ部7Bと、各種データが格納される記憶部7Cとを含む。
【0027】
(入力部7A)
入力部7Aは、例えば検出機構8からの信号を受ける入力回路等を含む回路で構成されるものである。入力部7Aで受けた信号は、プロセッサ部7Bに出力される。
【0028】
(プロセッサ部7B)
プロセッサ部7Bは、演算部T1と、アクチュエータ制御部T2とを含む。演算部T1は、判定部7B1と、計時部7B2と、算出部7B3とを含む。プロセッサ部7Bは、例えばマイクロコントローラ等で構成することができる。
【0029】
判定部7B1は、ヒルホールド制御を実行するか否かを判定する。ここで、ヒルホールド制御には、保持モード及び解除モードが含まれる。保持モードは、モーターサイクル200のブレーキ力を保持するモードである。解除モードは、保持モードにおけるブレーキ力の保持を解除し、ブレーキ力を緩めていくモードである。したがって、ヒルホールド制御で保持していたブレーキ力を緩め始めるタイミングは、保持モードから解除モードへの移行時である。
【0030】
判定部7B1は、路面の勾配値が規定値より大きいか否かを判定し、また、モーターサイクル200が停止しているか否かを判定し、さらに、第1の操作部BR1が解放されたか否かを判定する。
判定部7B1は、路面の勾配値が規定値より大きいと判定し、且つ、モーターサイクル200が停止していると判定し、且つ、第1の操作部BR1が解放されたと判定すると、ヒルホールド制御の保持モードを実行すると判定する。
なお、路面の勾配値が規定値より大きいか否かの判定には、加速度センサ8Aの検出信号に基づいて算出部7B3が算出した勾配値を用いる。また、モーターサイクル200が停止しているか否かの判定には、算出部7B3が算出した車輪速を用いる。さらに、第1の操作部BR1が解放されたか否かの判定には、第1の検出部SWの検出信号を用いる。
【0031】
また、判定部7B1は、計時部7B2からの信号に基づいて、保持モードを開始してから一定時間が経過したか否かを判定する。該一定時間が経過すると、制御部7は、保持モードから解除モードに移行する。該一定時間は、例えば数秒程度に設定される。
【0032】
また、判定部7B1は、保持モードを実行しているときにおいて、第1の操作部BR1の操作があったか否かを判定する。ここでの第1の操作部BR1の操作の内容としては、例えば、ハンドルレバー24及びフットペダル34の一方を連続的に動かすポンピング動作、押し続ける長押し動作等を採用することができる。また、異なる動作を複数組み合わせた動作を採用することもできる。例えば、ポンピング動作と長押し動作との組み合わせを採用してもよいし、ハンドルレバー24の動作とフットペダル34の動作との組み合わせを採用してもよい。第1の操作部BR1の操作があったか否かを判定は、第1の検出部SWの検出信号を用いる。第1の操作部BR1の操作の内容が、モーターサイクル200の搭乗者等によって自由に設定されてもよい。
【0033】
第1の操作部BR1の操作がされると、例えば、第1マスターシリンダ25及び第2マスターシリンダ35の圧力が変化する。また、フロントホイールシリンダ22及びリアホイールシリンダ32の圧力も変化する。このため、上述した、第1の操作部BR1が解放されたか否かの判定及び第1の操作部BR1の操作があったか否かの判定には、圧力センサ8Dの検出信号に基づいて算出部7B3が算出した圧力を用いることもできる。
【0034】
また、判定部7B1は、解除モードを実行している場合において、算出部7B3が算出したシリンダー圧力が、規定圧力よりも小さいか否かを判定する。なお、該判定は、解除モードを終了するタイミングを取得するのに用いられる。
【0035】
計時部7B2は、例えば、保持モードを開始してから一定時間が経過するまでの期間等を計時する。
【0036】
算出部7B3は、車輪速センサWSの検出信号に基づいて車輪速を算出する。また、算出部7B3は、圧力センサ8Dの検出信号に基づいて、シリンダー圧力を算出する。また、算出部7B3は、圧力センサ8Dの検出信号に基づいて、第1マスターシリンダ25及び第2マスターシリンダ35の圧力の算出も行うことができる。
【0037】
アクチュエータ制御部T2は、駆動機構制御部7B4と、弁制御部7B5とを含む。
駆動機構制御部7B4は、駆動機構2Aの回転数を制御する。
弁制御部7B5は、調整弁3、切替弁10及び吸入弁11の開閉動作を制御する。弁制御部7B5は、判定部7B1がヒルホールド制御を実行すると判定すると切替弁10を閉じ、モーターサイクル200のブレーキ力の保持を行う。また、弁制御部7B5は、判定部7B1が保持モードを開始してから一定時間が経過したと判定すると、切替弁10の開閉を行い、ブレーキ力を徐々に緩めていく。
【0038】
(記憶部7C)
記憶部7Cには、例えば、検出機構8の検出信号に関するデータ等が格納されている。記憶部7Cは、例えばRAM(Random Access Memory)等で構成することができる。
【0039】
<実施の形態1の制御フロー例>
図5は、本実施の形態1に係る制御装置の制御フローの一例である。図5を参照して、制御装置1の制御部7が実行するヒルホールド制御について説明する。
【0040】
(ステップS0:スタート)
制御部7は、ヒルホールド制御を含む制御フローを実行する。
【0041】
(ステップS1:ヒルホールド制御の実行許可に関する判定)
制御部7の判定部7B1は、モーターサイクル200が勾配のある路面上にいるか否かを判定する。
勾配のある路面上にいると判定された場合には、ステップS2に移る。
勾配のある路面上にいないと判定された場合には、ステップS1を繰り返す。
【0042】
(ステップS2:モーターサイクル200の停止に関する判定)
制御部7の判定部7B1は、算出部7B3が算出した車輪速に基づいて、モーターサイクル200が停止しているか否かを判定する。
モーターサイクル200が停止していると判定した場合には、ステップS3に移る。
モーターサイクル200が停止していないと判定した場合には、ステップS1に戻る。
【0043】
(ステップS3:第1の操作部BR1に関する判定)
制御部7の判定部7B1は、第1の検出部SWの検出信号に基づいて、第1の操作部BR1が解放されたか否かを判定する。
第1の操作部BR1が解放されたと判定した場合には、ステップS4に移る。
第1の操作部BR1が解放されていないと判定した場合には、ステップS1に戻る。
【0044】
(ステップS4:ヒルホールド制御の保持モードの実行)
制御部7は、ヒルホールド制御の保持モードを実行する。制御部7は、モーターサイクル200のブレーキ力が保持されるように、一定時間、切替弁10を閉とする。
【0045】
(ステップS5:第1の操作部BR1の操作に関する判定)
制御部7の判定部7B1は、ヒルホールド制御の保持モードの実行中に、第1の操作部BR1の操作があったか否かを判定する。
第1の操作部BR1の操作があったと判定した場合にはステップS6に移る。
第1の操作部BR1の操作があったと判定していない場合にはステップS7に移る。
【0046】
(ステップS6:ヒルホールド制御の解除モードの実行)
制御部7は、ヒルホールド制御の解除モードを実行する。つまり、制御部7は、保持モードにおけるブレーキ力の保持を解除する。具体的には、制御部7は、例えば、ブレーキ力の時間当たりの緩め量が一定になるように、切替弁10を制御する。
【0047】
(ステップS7:保持モードを開始してからの時間に関する判定)
制御部7の判定部7B1は、計時部7B2からの信号に基づいて、保持モードを開始してから一定時間が経過したか否かを判定する。
一定時間が経過したと判定した場合にはステップS6に移る。
一定時間が経過したと判定していない場合にはステップS5に戻る。
【0048】
(ステップS8:シリンダー圧力に関する判定)
制御部7の判定部7B1は、シリンダー圧力が規定圧力より小さいか否かを判定する。
規定圧力より小さいと判定した場合には、ステップS9に移る。
規定圧力よりも小さくないと判定した場合には、ステップS6に戻る。
【0049】
(ステップS9:エンド)
制御部7は、ヒルホールド制御を含む制御フローを終了する。
【0050】
なお、本実施の形態1では、図5に示すステップS1〜ステップS3で説明した判定をした後に、ヒルホールド制御に移行する場合について説明したが、それに限定されるものではない。例えば、ヒルホールド制御に移行するか否かの判定には、モーターサイクル200がローギアであるか否か等の判定があってもよい。
【0051】
<本実施の形態1に係る制御装置1の有する効果>
本実施の形態1に係る制御装置1の制御部7は、ヒルホールド制御でブレーキ力を保持しているときに、第1の検出部SWの検出信号に基づいて第1の操作部BR1の操作がされたと判定した場合には、ブレーキ力の保持を解除する。つまり、本実施の形態1に係る制御装置1では、ヒルホールド制御を実行してブレーキ力を保持している最中であっても、搭乗者が、ポンピング操作等の予め設定された操作を第1の操作部BR1で行うことで、ブレーキ力の保持を解除する。
【0052】
例えば、ブレーキ力の保持を解除する操作をアクセル操作とすると、アクセルグリップを回す動作が必要となる。アクセルグリップを回す動作は、状況によっては操作しにくくなる場合がある。一方、本実施の形態1に係る制御装置1では、例えば、ハンドルレバー24を握る動作でよいので、基本的には腕を振る動作は必要なく、ヒルホールド制御で保持していたブレーキ力を緩めるときの操作性が向上している。
【0053】
また、ブレーキ力の保持を解除する操作をアクセル操作とすると、より多くの動作を行う必要がある。具体的には、搭乗者は、アクセルグリップに手を添え、アクセルグリップを握り、さらに、アクセルグリップを回すという3つのステップの動作が必要となる。一方、本実施の形態1に係る制御装置1では、ハンドルレバー24に手を添え、ハンドルレバー24を握るという2つのステップの動作、又は、フットペダル34に脚を添え、フットペダル34を踏み込むという2つのステップの動作でヒルホールド制御のブレーキ力の保持を解除することができる。このため、本実施の形態1に係る制御装置1では、ヒルホールド制御で保持していたブレーキ力を緩めるときの操作性が向上される。
【0054】
また、ポンピング操作等の予め設定された操作を第1の操作部BR1で行うことで、ブレーキ力の保持を解除するので、ヒルホールド制御の保持モード中に、搭乗者が意図せずに、ブレーキ力の保持を解除してしまうことを防止することができる。
【0055】
さらに、ヒルホールド制御の保持モード中に、搭乗者が意図的に、ブレーキ力の保持を解除したいと考える場合に、ブレーキ力の保持を解除する操作をアクセル操作としてしまうと、エンジン音が発生してしまう。本実施の形態1に係る制御装置1の制御部7は、ヒルホールド制御の保持モードのブレーキ力の保持を解除するにあたって、第1の操作部BR1の操作を用いるので、騒音が発生することがない。
【0056】
好ましくは、本実施の形態1に係る制御装置1の制御部7は、ヒルホールド制御を開始してから、ブレーキ力の保持が解除されないまま、規定時間が経過した場合には、ブレーキ力の保持を解除する。
ヒルホールド制御では、ワイヤーケーブルを用いたパーキングブレーキとは異なり、ブレーキ力を長時間保持し続けることが困難である。制御部7が、規定時間が経過した場合に切替弁10を開いてブレーキ力を緩めことにより、第1の操作部BR1を操作すること、又は降車して平坦な路面へ移動すること等を搭乗者に促すことができる。
【0057】
実施の形態2.
以下では、実施の形態1と重複する説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0058】
図6は、本実施の形態2に係る制御装置の制御部の機能ブロック図である。図6を参照して、実施の形態2について説明する。
【0059】
実施の形態1ではヒルホールド制御のブレーキ力の解除の条件が第1の操作部BR1の操作であったが、実施の形態2では第1の操作部BR1の操作だけでなく第2の操作部BR2の操作もヒルホールド制御のブレーキ力の解除の条件となっている。
つまり、制御部7は、第1の操作部BR1とは異なる第2の操作部BR2の操作がされていない場合には、第1の操作部BR1の操作がされていても、ヒルホールド制御中のブレーキ力の保持を解除しない。そして、制御部7は、第1の操作部BR1の操作及び第2の操作部BR2の操作のいずれもされている場合に、ヒルホールド制御中のブレーキ力の保持を解除する。ここで、第2の操作部BR2は、モーターサイクル200に取り付けされたボタン8Eである。
【0060】
判定部7B1は、保持モードを実行しているときにおいて、第2の操作部BR2の操作があったか否かを判定する。第2の操作部BR2の操作の内容としては、第2の操作部BR2を設定回数(1回又は複数回)だけ押す動作、第2の操作部BR2を押し続ける長押し動作等を採用することができる。第2の操作部BR2の操作があったか否かの判定には、ボタンである第2の操作部BR2のオンオフ信号が用いられる。
【0061】
<実施の形態2の制御フロー例>
図7は、本実施の形態2に係る制御装置の制御フローの一例である。図7は、ステップS26が加わっている点で、図5とは異なる。図7のステップS20〜ステップS25及びステップS27〜ステップS30は、図5のステップS0〜ステップS5及びステップS6〜ステップS9と同様であるので説明を省略する。
【0062】
(ステップS26:第2の操作部BR2の操作に関する判定)
制御部7の判定部7B1は、ヒルホールド制御の保持モードの実行中に、第2の操作部BR2の操作があったか否かを判定する。
第2の操作部BR2の操作があったと判定した場合にはステップS27に移る。
第2の操作部BR2の操作があったと判定していない場合にはステップS28に移る。
【0063】
このように、ステップS25で第1の操作部BR1の操作がされたと判定され、さらに、ステップS26で第2の操作部BR2の操作がされたと判定されていると、ステップS27に移り、ブレーキ力の保持を解除する。
一方、ステップS25で第1の操作部BR1の操作がされたと判定されていても、ステップS26で第2の操作部BR2の操作がされたと判定されていないと判定されると、ステップS28に移る。保持モードを開始してから一定時間が経過していれば、ブレーキ力の保持は解除されるが、経過していなければステップS25に戻ることになる。
なお、ステップS25とステップS26とは順番が逆であってもよい。
【0064】
<本実施の形態2に係る制御装置1の有する効果>
好ましくは、制御部7は、第1の操作部BR1とは異なる第2の操作部BR2の操作がされていない場合には、第1の操作部BR1の操作がされていても、ブレーキ力の保持を解除せず、第1の操作部BR1の操作及び第2の操作部BR2の操作のいずれもされている場合に、ブレーキ力の保持を解除する。これにより、ヒルホールド制御の保持モード中に、搭乗者が意図せずに、ブレーキ力の保持を解除してしまうことが抑制される。
【0065】
<本実施の形態2の変形例>
図8は、本実施の形態2の変形例に係る制御装置の制御部の機能ブロック図である。本実施の形態2では第2の操作部BR2がボタン8Eであったが、変形例では第2の操作部BR2がモーターサイクル200のハンドルに設けられたアクセルグリップ70である(図1参照)。アクセルグリップ70には、第2の検出部8Fが設けられている。第2の検出部8Fは、例えば、モーターサイクル200のエンジンを操作するアクセルグリップ70の操作を検出するのに用いられる位置検出センサである。
【0066】
判定部7B1は、保持モードを実行しているときにおいて、第2の操作部BR2の操作があったか否かを判定する。第2の操作部BR2の操作は、アクセルグリップ70を回す動作を採用することができる。第2の操作部BR2の操作があったか否かの判定には、第2の検出部8Fのオンオフ信号が用いられる。
【0067】
本実施の形態2の変形例の制御フローは、図7と同様であるので説明を省略する。
【0068】
<本実施の形態2の変形例に係る制御装置1の有する効果>
本実施の形態2の変形例に係る制御装置1も、実施の形態2に係る制御装置1と同様の効果を有する。
【0069】
なお、実施の形態1と実施の形態2及びその変形例におけるヒルホールド制御の保持モードでは、前輪20及び後輪30のいずれか一方のブレーキ力の保持を実行するようにしてもよいし、前輪20及び後輪30の両方のブレーキ力の保持を実行するようにしてもよい。前輪20及び後輪30のいずれか一方とするか、又は両方とするかは、例えば、制御部7が取得した路面の勾配値に応じて切り替えてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 制御装置、2 ポンプ装置、2A 駆動機構、2B ポンプエレメント、3 調整弁、3A 第1増圧弁、3B 第1減圧弁、3C 第2増圧弁、3D 第2減圧弁、4 内部流路、4A 内部流路、4B 内部流路、5 フロートリストリクタ、6 アキュムレータ、7 制御部、7A 入力部、7B プロセッサ部、7B1 判定部、7B2 計時部、7B3 算出部、7B4 駆動機構制御部、7B5 弁制御部、7C 記憶部、8検出機構、8A 加速度センサ、8B1 第1の検出部、8B2 第1の検出部、8C1前輪速度センサ、8C2 後輪速度センサ、8D 圧力センサ、8E ボタン、8F 第2の検出部、10 切替弁、10A 切替弁、10B 切替弁、11 吸入弁、11A 吸入弁、11B 吸入弁、20 前輪、21 フロントブレーキパッド、22 フロントホイールシリンダ、23 ブレーキ液管、24 ハンドルレバー、25 第1マスターシリンダ、26 第1リザーバ、27 ブレーキ液管、30 後輪、31 リアブレーキパッド、32 リアホイールシリンダ、33 ブレーキ液管、34 フットペダル、35 第2マスターシリンダ、36 第2リザーバ、37 ブレーキ液管、70 アクセルグリップ、100 液圧制御システム、200 モーターサイクル、B 車体、BR1 第1の操作部、BR2 第2の操作部、C1 前輪液圧回路、C2 後輪液圧回路、P ポート、SW 第1の検出部、T1 演算部、T2 アクチュエータ制御部、W 車輪、WS車輪速センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8