(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板部の前記第2の表面側における、前記第1の表面側に設けられた前記支柱に対応する位置に、前記支柱の内部に向かって凹設され、他の一の保持部材の前記支柱を収納する凹部をさらに備える請求項6に記載の保持部材。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。なお、各図において共通する構成には同一の符号を付し、重複説明を省略することがある。
【0015】
<保持部材>
図1A〜E(以下、これらをまとめて
図1と記載することがある。)は、本発明の一実施形態の保持部材10を表す図である。
図1Aは、基板部20の第1の表面20a側からみた保持部材10の平面図である。
図1Bは、基板部20の第2の表面20b側からみた保持部材10の平面図(底面図)である。
図1Cは、保持部材10の正面図(背面図も同一に表れる)である。
図1Dは、保持部材10の右側面図(左側面図も同一に表れる)である。
図1Eは、保持部材10の斜視図である。
【0016】
図1に示すように、保持部材10は、第1の表面20a及び第2の表面20bを有する板状の基板部20を備える。また、保持部材10は、基板部20の第1の表面20a及び第2の表面20bを貫通して第1の表面20a側に向かって筒状に突出し、その筒状内に薬品容器用部品が格納される複数の格納部30を備える。
【0017】
保持部材10は、格納部30の筒状内(内部)に薬品容器用部品(本明細書において、単に「部品」と記載することがある。)が格納されることにより、その格納部30の数に応じた複数個の部品を保持することが可能なものである。このような保持部材10は、ネストとも称されている。保持部材10における格納部30のそれぞれには、部品を出し入れ可能に格納することができる。
【0018】
保持部材10によって、複数個の部品を保持した状態で、当該部品の保管、搬送、滅菌処理、及び薬品容器の組み立て等を行うことができる。そのため、それらの際に、部品に対する損傷及び汚染等を抑制することができる。例えば、保持部材10における各格納部30に部品を格納した状態で、滅菌処理や、薬品容器の組み立てのための他の部品との組み立て等を行うことができる。滅菌処理としては、例えば、電子線及びγ線等による放射線照射滅菌、オートクレーブを用いた高圧蒸気滅菌、並びにエチレンオキサイドガス等を用いたガス滅菌等を挙げることができる。また、他の部品との組み立てとしては、例えば、アイソレータ内で自動組み立て機を用い、保持部材10における各格納部30に格納された部品の全部を一度に打ち抜いて、他の部品に組み付ける方法等を挙げることができる。
【0019】
薬品容器用部品としては、部品全体が保持部材10における格納部30に収まる大きさの薬品容器用部品や、滅菌処理がなされる部品、エラストマー製の部品等が好適である。例えば、薬品容器としての注射器及びバイアル等の部品が挙げられる。その部品の好適な具体例としては、キャップ、栓、蓋、及び注射器用ピストン等を挙げることができ、これらのうち、注射器用ピストンがさらに好適である。
【0020】
基板部20と格納部30とは、別の材料で形成されていてもよいが、同じ樹脂や同じ金属等の同じ材料で一体に形成されていることが好ましい。樹脂材料、中でも熱可塑性樹脂を成形することにより保持部材10を製造すれば、簡易かつ低コストで、基板部20と格納部30とを同じ樹脂材料で一体に形成することができる。
【0021】
保持部材10(基板部20及び格納部30)を形成する樹脂材料は、特に限定されず、好適な樹脂材料として、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を挙げることができる。保持部材10の成形方法も特に限定されず、例えば、射出成形、真空成形、及び圧空成形等の公知の成形方法を採用することができ、射出成形がより好適である。なお、両端が開口した格納部30を別途作製しておき、所定の間隔を隔てて複数の貫通孔が穿設された基板部20の各貫通孔に、別途作製した格納部30を設けてもよい。
【0022】
板状の基板部20の平面視形状、大きさ及び厚さ等は、特に限定されない。基板部20の第1の表面20a及び第2の表面20bの平面視形状としては、図示するような略矩形状のほか、略円形状、略楕円形状、略多角形状等であってもよい。保持部材10は、後述する箱型容器に収容されて搬送等されることが好ましいことから、基板部20及び保持部材10の平面視形状は、箱型容器の平面視形状に対応していることが好ましく、箱型容器に対応した略矩形状であることがより好ましい。基板部20の平面視形状が略矩形状である場合、基板部20の大きさとしては、例えば、一辺が100〜500mm程度のものが挙げられる。また、基板部20の厚さは、軽量で使用に耐え得る強度を備えた保持部材10を構成する観点から、0.5〜5mm程度であることが好ましい。
【0023】
格納部30は、格納部30に格納される薬品容器用部品の形状に対応した筒形状であることが好ましい。例えば、部品が略円柱状や略円筒状である場合、格納部30を円筒状に形成することができ、部品が略角柱状や略角筒状である場合、格納部30を角筒状に形成することができる。
図1では、円筒状の格納部30を備える保持部材10が例示されている。
【0024】
保持部材10において、複数の格納部30は、隣接する各格納部30と所定の間隔を隔てて、概ね等間隔で設けられていることが好ましく、基板部20に対して、千鳥配列されているか(
図1A及びB参照)、又は格子配列されていること(図示せず)がより好ましい。そのような保持部材10によって、複数の部品を同一水準の平面上に規則的に整列させた状態で保持することができる。基板部20に対して複数の格納部30を千鳥配列することが、格納部30を多数設け易いことからさらに好ましい。
【0025】
保持部材10における格納部30の数は、一つの保持部材10が保持することが可能な部品の数に対応し、これらの数は、特に限定されない。一括して多数の部品に対して滅菌処理や搬送等を行える方が効率的であるという観点から、格納部30を、例えば、好ましくは20個(例えば4×5の配列)以上設けることができる。例えば、格納部30を30個(例えば5×6の配列)、42個(例えば6×7の配列)、64個(例えば8×8の配列)、100個(例えば10×10の配列)、160個(例えば10×16の配列)等設けることができる。
図1A及びBでは、格納部30が、基板部20に対して、縦10個×横10個で千鳥配列されて、100個設けられている形態が例示されている。
【0026】
図2は、
図1Aに示すA−A’線の断面図であり、保持部材10における格納部30に薬品容器用部品1が格納された状態を表す。部品1としては、好適な注射器用ピストン(以下、単に「ピストン」と記載することがある。)1が図示されている。
【0027】
図2に示すように、格納部30は、格納部30の突出先端に部品1の出し入れ口を形成する第1の開口端部31と、格納部30の基端に基板部20の第2の表面20bで形成された第2の開口端部32と、第1の開口端部31側の格納部30の内壁面30aが筒状内側に膨出した膨出部33とを備える。
【0028】
第1の開口端部31によって形成される出し入れ口は、格納部30内への部品1の挿入口であるとともに、格納部30内に挿入された部品1の取り出し口でもある。格納部30は、第1の開口端部31と第2の開口端部32とを備え、両端が開口し、連通した筒形状であるため、滅菌処理に使用され得る蒸気、ガス、及び放射線等が格納部30内に入り込みやすく、格納部30に格納された部品1に対して滅菌処理が可能となっている。また、前述した自動組み立て機を用いて、格納部30に格納された部品1を、第2の開口端部32の開口から第1の開口端部31の出し入れ口へ向かって打ち抜くことができる。
【0029】
膨出部33は、格納部30の内壁面30aに、周方向に環状に連続して形成された膨出部33のほか、非連続に形成された膨出部33であってもよい。これらのうち、周方向に環状に連続して形成された膨出部33が好ましい。
【0030】
前述の通り、保持部材10は、ピストン用の保持部材10としてより好適である。一般的に、ピストン1には、プランジャーが挿入されてプランジャーと固定するための固定孔(より好適には螺合孔)が設けられていることがある。また、ピストン1の外周面における周方向には、プランジャーに固定されたピストン1がバレル(注射筒)内の壁面を円滑に摺動するための窪みや凸部が設けられていることがある。保持部材10の格納部30にピストン1を挿入する際には、格納部30の第1の開口端部31で形成される出し入れ口に、ピストン1の固定孔1a側からピストンを挿入することが好ましい。すなわち、格納部30にピストン1が格納された際、格納部30の第2の開口端部32側にピストン1の固定孔1aが位置し、格納部30の第1の開口端部31側にピストン1の接液部1b(注射器内で薬液に接触する部分)が位置することが好ましい。
【0031】
前述した特許文献1に記載されているような従来のピストンネストでは、格納部に格納されるピストンの外周面の周方向に沿って形成された窪みと、格納部の内壁面に形成された膨出部との係合により、ピストンを格納部に保持する手段がとられている。これに対し、上記保持部材10は、以下に述べる格納部30を備えることによって、窪みがないピストンや窪みが非常に小さいピストン等の部品1に対しても、部品1を格納部30に保持することができ、格納部30からの部品1の意図しない脱離を抑制することが可能である。すなわち、保持部材10における格納部30は、以下に述べる第一の態様及び第二の態様のいずれか一方又は双方の構成をとり、双方の構成をとることが好ましい。
図2では、第一の態様及び第二の態様の双方の構成を有する格納部30を備える保持部材10が例示されている。
【0032】
第一の態様の格納部30は、格納部30自体の形状的な構成態様である。すなわち、
図2に示すように、第一の態様の格納部30は、第1の開口端部31側の格納部30の内壁面30aが第1の開口端部31から連続して筒状内側に膨出していることで、第1の開口端部31に向かって末広がり状の開口を形成する膨出部33と、第2の開口端部32側の格納部30の内壁面30aが第2の開口端部32に向かって尻窄まり状に形成された尻窄み部34とを備える。
【0033】
第一の態様の格納部30では、第1の開口端部31側の格納部30の内壁面30aが筒状内側に膨出した膨出部33が、第1の開口端部31から連続して設けられていることで、第1の開口端部31に向かう末広がり状の開口を形成している。そのため、第1の開口端部31によって形成される出し入れ口が広がることとなり、格納部30への部品1の出し入れを容易にすることが可能となる。膨出部33は、格納部30の突出先端である第1の開口端部31側にあるため、格納部30に部品1が出し入れされる際には、部品1が膨出部33を筒状外側に押して、格納部30を僅かに撓ませ得る。
【0034】
また、第一の態様の格納部30では、膨出部33と尻窄み部34を備えるため、格納部30内に部品1全体が納まるように部品1が格納された際に、膨出部33と、尻窄み部34や第2の開口端部32とで、部品1のストッパーとして機能する。これにより、格納部30からの部品1の意図しない脱離を抑制することが可能となる。さらに、この格納部30は、部品1のストッパーとして機能する膨出部33と尻窄み部34を備えるため、格納部30の筒軸方向Zにおける膨出部33と尻窄み部34との間の部分においては、格納部30の内壁面30aと部品1との間に僅かな間隙を生じさせ得る寸法にすることができる。これにより、滅菌処理に使用され得る蒸気及びガス等が部品1の周囲に拡散するため、部品1に対して滅菌処理を十分有効に行うことができる。
【0035】
第一の態様の格納部30の構成とすることにより、以下に述べる第二の態様の構成を満たす格納部30を容易に得ることもできる。
【0036】
第二の態様の格納部30は、格納部30に格納される薬品容器用部品との関係の観点からみた格納部30の構成態様である。すなわち、
図2に示すように、格納部30の筒軸方向Zに直交する方向XYの寸法において、第1の開口端部31の内寸法D
31、及び膨出部33と第2の開口端部32との間の中間部35の内寸法D
35が、部品1の外寸法D
1よりも大きく構成されている。なおかつ、膨出部33が設けられた位置の内寸法(以下、「膨出部の内寸法」と記載することがある。)D
33、及び第2の開口端部32の内寸法D
32が、部品1の外寸法D
1よりも小さく構成されている格納部30である。
【0037】
上記の各内寸法D
31,D
32,D
33,D
35及び部品1の外寸法D
1はいずれも、格納部30の筒軸方向Zに直交する方向XYの寸法である。内寸法は内側の寸法を意味し、外寸法は外側の寸法を意味する。第1の開口端部31の内寸法D
31は、第1の開口端部31によって形成される出し入れ口の寸法と同義である。第2の開口端部32の内寸法D
32は、基板部20の第2の表面20bに形成された開口の寸法と同義である。膨出部33が設けられた位置の内寸法D
33は、膨出部33における筒状内側に最も膨らみ出た位置の内寸法を意味する。膨出部33と第2の開口端部32との間の中間部35は、格納部30の筒軸方向Zにおいて、膨出部33における第2の開口端部32側の根元(又は裾、若しくは麓と称してもよい。)に相当する部分から、部品1の外寸法よりも小さい寸法とされた第2の開口端部32側の部分(上記尻窄み部34である場合を含む。)までの領域部分を意味する。この領域部分の内寸法の最大値から最小値までの範囲における中央値を、中間部35の内寸法D
35とする。
【0038】
図1及び
図2に示す保持部材10における格納部30は円筒状であることから、この場合、上記の各「内寸法」は、「内径」を意味するが、格納部30は例えば角筒状等であってもよいことから、本明細書では、「内寸法」と記載することがある。また、
図2に示す部品(注射器用ピストン)1は略円柱状であることから、この場合、上記の「部品の外寸法」は、「部品の外径」を意味するが、部品1は例えば角柱状等であってもよいことから、本明細書では、「部品の外寸法」と記載することがある。さらに、部品1には、外周面に窪みが形成されている場合等、外寸法が一定でない場合があるが、その場合、上記の「部品の外寸法」は、格納部30の筒軸方向Zに直交する方向XYの寸法における、部品1の最大の外寸法を意味する。
【0039】
第二の態様の格納部30では、格納部30の突出先端に部品1の出し入れ口を形成する第1の開口端部31の内寸法D
31が、部品1の外寸法D
1よりも大きいため、格納部30に部品1を出し入れしやすい。膨出部33の内寸法D
33は、部品1の外寸法D
1よりも小さいが、格納部30の突出先端である第1の開口端部31側に膨出部33が設けられていることで、格納部30に部品1が出し入れされる際には、部品1で膨出部33が筒状外側に押されることで格納部30を僅かに撓ませることができる。そのため、格納部30への部品1の出し入れを容易にすることが可能となる。
【0040】
また、第二の態様の格納部30では、格納部30における膨出部33と第2の開口端部32との間の中間部35の内寸法D
35は、部品1の外寸法D
1よりも大きいため、格納部30内に部品1全体が納まるように部品1が格納された際に、中間部35において、格納部30の内壁面30aと部品1との間に僅かな間隙を生じさせることができる。これにより、滅菌処理に使用され得る蒸気、及びガス等が部品1の周囲に拡散するため、部品1に対して滅菌処理を十分有効に行うことができる。
【0041】
さらに、第二の態様の格納部30では、膨出部33の内寸法D
33、及び第2の開口端部32の内寸法D
32は、部品1の外寸法D
1よりも小さいため、格納部30内に部品1全体が納まるように部品1が格納された際に、膨出部33及び第2の開口端部32が部品1のストッパーとして機能する。これにより、格納部30に格納された部品1の意図しない脱離を抑制することができる。
【0042】
第二の態様の格納部30における膨出部33は、第一の態様の格納部30における膨出部33のように、第1の開口端部31側の格納部30の内壁面30aが第1の開口端部31から連続して筒状内側に膨出していることで、第1の開口端部31に向かって末広がり状の開口を形成することが好ましい。これにより、格納部30の筒軸方向Zに直交する方向XYの寸法において、部品1の外寸法D
1よりも大きい内寸法D
31を有する第1の開口端部31が得られやすい。
【0043】
また、第二の態様の格納部30は、第一の態様の格納部30のように、第2の開口端部32側の格納部30の内壁面30aが第2の開口端部32に向かって尻窄まり状に形成された尻窄み部34を備えることが好ましい。これにより、格納部30の筒軸方向Zに直交する方向XYの寸法において、部品1の外寸法D
1よりも小さい内寸法D
32を有する第2の開口端部32が得られやすい。さらに、第一の態様の格納部30のように、第2の開口端部32側の格納部30の内壁面30aを第2の開口端部32に向かって尻窄まり状に形成することにより、保持部材10を射出成形等によって製造する際に用いる金型を、膨出部33の最も膨らみ出た位置で金型が分割するような複雑な構造にする必要がないという製造上の利点もある。
【0044】
なお、第二の態様の格納部30における膨出部33は、第1の開口端部31側の格納部30の内壁面30aが第1の開口端部31から連続していなくてもよく、第1の開口端部31に向かって末広がり状の開口を形成していなくてもよい。また、第二の態様の格納部30は、上述した尻窄み部34を備えなくてもよい。これらのような格納部36を備える保持部材11の構成を、第二の態様の格納部30の変形例に係る構成の一例として、
図3に示す。
図3に示す格納部36は、第1の開口端部31Aと、第1の開口端部31A側に第1の開口端部31Aからは不連続に形成された膨出部33Aと、第2の開口端部32Aとを備え、格納部36の内壁面36aが第1の開口端部31Aから第2の開口端部32Aに向かってテーパー状(格納部36が逆テーパー状)に形成されている。
【0045】
本発明の一実施形態の保持部材10では、格納部30の筒軸方向Zに直交する方向XYの寸法において、第1の開口端部31の内寸法(内径)D
31は、膨出部33と第2の開口端部32との間の中間部35の内寸法(内径)D
35よりも大きいことが好ましい。また、格納部30の筒軸方向Zに直交する方向XYの寸法において、第2の開口端部32の内寸法(内径)D
32は、膨出部33が設けられた位置の内寸法(内径)D
33と同等又はそれよりも小さいことが好ましい。
【0046】
保持部材10における格納部30に格納される部品1がピストンである場合を例に挙げると、膨出部33の内寸法D
33は、当該ピストンの外寸法D
1の公差の最小値よりも、0.01〜0.5mm(より好ましくは0.02〜0.4mm、さらに好ましくは0.05〜0.2mm)小さいことが好ましい。また、膨出部33の高さは、中間部35の内寸法D
35に対応する位置での内壁面30aを基準として、0.1〜0.5mmであることが好ましく、0.1〜0.3mmであることがさらに好ましい。
【0047】
図1及び
図2に示すように、保持部材10は、格納部30の筒状外側に複数の格納部30における隣接する格納部30同士を互いに連結する連結リブ40をさらに備えることが好ましい。
図1に例示された連結リブ40は、基板部20の平面視形状において、基板部20の一辺に平行な方向に隣接する格納部30同士を互いに連結する平行連結リブ41と、斜め方向に隣接する格納部30同士を互いに連結する傾斜連結リブ42とを有する。
【0048】
連結リブ40は、格納部30の外壁面30bと一体に形成されており、格納部30と同様、基板部20の第1の表面20aに対して略垂直に設けられていることが好ましい。また、連結リブ40は、隣接する格納部30同士をそれらの外壁面30bで互いに連結していれば、基板部20の第1の表面20aから離れて設けられていてもよく、図示されるように、基板部20の第1の表面20aに立設されていてもよい。
【0049】
前述の通り、保持部材10は、複数の格納部30のそれぞれに部品1を保持した状態のまま、搬送、滅菌処理、及び薬品容器の組み立て等に供されることがあるため、保持部材10には荷重がかかることがある。これに対して、保持部材10に連結リブ40を設ければ、保持部材10全体の強度を高めることができ、保持部材10の変形(歪み)を抑えることができる。そのため、例えば、自動組み立て機を用いて格納部30に格納されている部品1を打ち抜く際にも、スムーズに部品1を打ち出すことができ、他の部品と組み合わせて薬品容器をスムーズに組み立てることができる。
【0050】
上述の連結リブ40の効果を維持しつつ、前述の通り、格納部30への部品1の出し入れの際に格納部30が僅かに撓むことが可能なように、連結リブ40は、基板部20の第1の表面20aから格納部30の膨出部33の位置までの高さよりも低い位置に形成されていることが好ましい。このような高さの連結リブ40としておくことで、保持部材10を射出成形等によって得る際に、その製品(保持部材10)を金型から離型しやすくもなる。
【0051】
図1に示すように、保持部材10は、基板部20の第1の表面20a側に、格納部30よりも高く突出して形成された複数の支柱50をさらに備えることが好ましい。支柱50は、保持部材10が後述する箱型容器に収容された際に箱型容器の底面に対して安定して立つことや、保持部材10の強度のバランス等を考慮した位置及び数(
図1では4本)で設けられることが好ましい。保持部材10が複数の支柱50を備えることにより、基板部20の第1の表面20a側を下向きにして保持部材10を置いた際に、保持部材10を置いた面に対して格納部30を非接触の状態にすることができる。そのため、その状態で格納部30に格納された部品1の滅菌処理をより有効に行うことができる。
【0052】
支柱50の構成をさらに説明するための図として、
図4に
図1Aに示す領域Bの拡大図を示し、
図5に
図4中のC−C’線の断面図を示す。また、
図6に、本発明の一実施形態の保持部材10を2つ積み重ねたときの支柱50近傍の状態を表す拡大断面図を示す。
【0053】
図4及び
図5に示すように、保持部材10は、基板部20の第2の表面20b側における、第1の表面20a側に設けられた支柱50に対応する位置に、支柱50の内部に向かって凹設された凹部51をさらに備えることが好ましい。
図6に示すように、この凹部51には、他の一の保持部材10の支柱50が収納される。支柱50及び凹部51を備える保持部材10によって、複数の保持部材10を容易に積み重ねることができ、1つの箱型容器内に複数の保持部材10を積み重ねて収容することができる。
【0054】
図4〜
図6に例示する支柱50は、基板部20から所定の高さまでの台座部52と、台座部52から先端までの連結部53とを備え、台座部52に前述の凹部51が設けられている。連結部53はクロス形の角柱状に形成されているが、連結部53の形状は特に限定されず、略円柱状、略楕円柱状、略矩形の角柱状等であってもよい。また、台座部52は略円柱状に形成されているが、台座部52の形状は特に限定されず、略楕円柱状、略角柱状であってもよい。
【0055】
支柱50の強度及び積み重ねやすさの観点から、支柱50の縦断面において、凹部51、台座部52、及び連結部53の断面形状は略台形状であることが好ましく、等脚台形状であることがより好ましい。連結部53の断面台形状としては、当該台形の脚と、基板部20に対する垂線とがなす角度θ
1が1〜10度であることが好ましく、2〜7度であることがより好ましい。凹部51及び台座部52の断面台形状としては、当該台形の脚と、基板部20に対する垂線とがなす角度θ
2が5〜30度であることが好ましく、10〜20度であることがより好ましい。
【0056】
図6に示すように、基板部20の第2の表面20bからの凹部51の深さH
51は、基板部20の第2の表面20bからの支柱50の高さH
50と、第2の表面20bからの格納部30の高さH
30との差(H
50−H
30)よりも小さい(H
51<H
50−H
30)ことが好ましい。これにより、支柱50及び凹部51にて複数の保持部材10を積み重ねた際に、一の保持部材10の格納部30を他の一の保持部材30に対して非接触の状態とし、それらの間に隙間を形成することができる。その隙間に蒸気やガスが流入しやすくなるため、複数の保持部材10を積み重ねた状態で滅菌処理をより有効に行うことができる。
【0057】
また、凹部51の深さH
51は、支柱50の高さH
50に対して、20〜50%(H
50の0.2〜0.5倍)であることが好ましく、30〜40%(H
50の0.3〜0.4倍)であることがより好ましい。さらには、凹部51の深さH
51は、支柱50の高さH
50と格納部30の高さH
30との差(H
50−H
30)に対して、60〜99%(前記差の0.6〜0.99倍)であることが好ましく、70〜95%(前記差の0.7〜0.95倍)であることがより好ましく、70〜90%(前記差の0.7〜0.9倍)であることがさらに好ましい。
【0058】
凹部51の深さH
51を、支柱50の高さH
50や格納部30の高さH
30との関係で上述したような構成とすることにより、支柱50及び凹部51にて複数の保持部材10を積み重ねた際に、一の保持部材10の格納部30と、他の一の保持部材10との隙間をより小さくできる。そのため、後述する箱型容器内に保持部材10を積み重ねて収容する際に、収容可能な保持部材10の数を増やすことが可能となり、一つの箱型容器内に保持部材10を7つ程度積み重ねることも可能となる。上記隙間は、具体的には、0.1〜4mmであることが好ましく、0.5〜3mmであることがより好ましく、1〜3mmであることがさらに好ましい。
【0059】
以上詳述した通り、本発明の一実施形態の保持部材10は、第一の態様及び第二の態様のいずれか一方又は双方の構成を有する格納部30を備えるため、格納部30に部品1を出し入れしやすく、かつ、格納部30からの部品1の不意の脱離を抑制することが可能である。また、この保持部材10を用いることによって、部品1の滅菌処理を有効に行うことも可能である。さらに、この保持部材10は、次に述べるように、格納部30において薬品容器用部品1を保持した状態で箱型容器に収容されたパッケージング構造として、薬品容器用部品1の保管、搬送、滅菌処理、及び薬品容器への組み立て等に供することができる。
【0060】
<薬品容器用部品のパッケージング構造>
図7は、本発明の一実施形態の薬品容器用部品のパッケージング構造に用いることが可能な箱型容器7の一例を表す斜視図である。
図8は、
図7に示す箱型容器7を用いたパッケージング構造100を箱型容器7の開口部7a側からみた平面図である。
図7及び
図8に示すように、本発明の一実施形態の薬品容器用部品のパッケージング構造100は、開口部7aを有する箱型容器7と、箱型容器7に収容される前述の実施形態に係る保持部材10と、保持部材10における格納部30に格納される薬品容器用部品1とを備える。
【0061】
パッケージング構造100を用いることにより、複数の部品1が保持部材10における格納部30に格納された状態で、複数の部品1を搬送や滅菌処理等に供することができる。箱型容器7の内部7bには蒸気やガス等を充満させることが可能となるため、箱型容器7を用いることにより、滅菌処理をより効果的に行うことも可能となる。
【0062】
箱型容器7の形状は、上部に保持部材10の取り入れ口及び取り出し口となる開口部7aを有し、内部7bに保持部材10を収容可能な箱(籠)型であれば特に限定されない。箱型容器7の平面形状は、通常、略矩形状であるが、略円形状、略楕円形状、及び略多角形状等であってもよい。また、箱型容器7の材質も特に限定されず、通常、合成樹脂製であるが、金属製や、金属及び合成樹脂等の複合材質でもよい。箱型容器7の強度を高めて変形を防止するために、箱型容器7の底部7cや側面7eに凹凸形状(膨らみ形状やくぼみ形状)を設けることが好ましい。
【0063】
箱型容器7内に保持部材10を収容する際には、保持部材10における基板部20の第1の表面20a側が箱型容器7の底面(底部7cの内面)に対向する向きで、箱型容器7内に保持部材10を収容することが好ましい。箱型容器7内には、複数(2以上)の保持部材10を積み重ねて収容することが好ましく、例えば2〜7つ程度の保持部材10を積み重ねて収容することが好ましい。保持部材10が前述の支柱50及び凹部51を備える場合、一の保持部材10の凹部51と他の一の保持部材10の支柱50とで組み合わせて複数の保持部材10を積み重ねることができるため、一つの箱型容器7内に保持部材10を7つ程度積み重ねることも可能である。
【0064】
また、2以上の保持部材10を積み重ねた際、前述の通り、保持部材10の格納部30を他の一の保持部材10に対して非接触の状態にすることができる。そのため、箱型容器7内に複数の保持部材10を収容した状態においても、格納部30に格納された部品1に対して、有効な滅菌処理を行うことが可能である。
【0065】
パッケージング構造100は、箱型容器7の開口部7aを封止するガス不透過性フィルム(不図示)をさらに備えることが好ましい。ガス不透過性フィルムは、例えば、箱型容器7の環状フランジ部7dに剥離可能にシールされていることにより、箱型容器7の上部の開口部7aを封止することができる。ガス不透過性フィルムとしては、高密度ポリエチレンフィルム、及びポリエチレンテレフタレートフィルム等、並びにそれらの少なくともいずれかを含む複数の樹脂フィルムの積層フィルム等を用いるこができる。
【0066】
また、滅菌可能なフィルムが箱型容器7の環状フランジ部7dに剥離可能にシールされ、さらに箱型容器7全体をガス不透過性フィルムで覆い、バキュームすることにより、箱型容器7を包装し、開口部7aを封止することもできる。滅菌可能なフィルムは、ガス、蒸気等の滅菌用の気体類は透過するが菌は不透過のものであり、例えば、高密度ポリエチレン又はその他のポリマーのフィラメントより構成されたものである。滅菌可能なフィルムとしては、デュポン社製のTyvek(登録商標)等を使用することができる。
【0067】
以上の通り、本発明の一実施形態の保持部材は、以下の構成をとることが可能である。
[1]第1の表面及び第2の表面を有する板状の基板部と、前記基板部の前記第1の表面及び前記第2の表面を貫通して前記第1の表面側に向かって筒状に突出し、その筒状内に薬品容器用の部品が格納される複数の格納部と、を備え、前記格納部は、前記格納部の突出先端に前記部品の出し入れ口を形成する第1の開口端部と、前記第1の開口端部側の前記格納部の内壁面が前記第1の開口端部から連続して前記筒状内側に膨出していることで、前記第1の開口端部に向かって末広がり状の開口を形成する膨出部と、前記格納部の基端に前記基板部の前記第2の表面で形成された第2の開口端部と、前記第2の開口端部側の前記格納部の内壁面が前記第2の開口端部に向かって尻窄まり状に形成された尻窄み部と、を備える保持部材。
[2]第1の表面及び第2の表面を有する板状の基板部と、前記基板部の前記第1の表面及び前記第2の表面を貫通して前記第1の表面側に向かって筒状に突出し、その筒状内に薬品容器用の部品が格納される複数の格納部と、を備え、前記格納部は、前記格納部の突出先端に前記部品の出し入れ口を形成する第1の開口端部と、前記第1の開口端部側の前記格納部の内壁面が前記筒状内側に膨出した膨出部と、前記格納部の基端に前記基板部の前記第2の表面で形成された第2の開口端部と、を備え、前記格納部の筒軸方向に直交する方向の寸法において、前記第1の開口端部の内寸法、及び前記膨出部と前記第2の開口端部との間の中間部の内寸法は、前記部品の外寸法よりも大きく、かつ、前記膨出部が設けられた位置の内寸法、及び前記第2の開口端部の内寸法は、前記部品の外寸法よりも小さい、保持部材。
[3]前記膨出部は、前記第1の開口端部側の前記格納部の内壁面が前記第1の開口端部から連続して前記筒状内側に膨出していることで、前記第1の開口端部に向かって末広がり状の開口を形成する前記[2]に記載の保持部材。
[4]前記格納部は、前記第2の開口端部側の前記格納部の内壁面が前記第2の開口端部に向かって尻窄まり状に形成された尻窄み部を備える前記[2]又は[3]に記載の保持部材。
[5]前記格納部の筒軸方向に直交する方向の寸法において、前記第1の開口端部の内寸法は、前記膨出部と前記第2の開口端部との間の中間部の内寸法よりも大きい前記[1]〜[4]のいずれかに記載の保持部材。
[6]前記格納部の筒軸方向に直交する方向の寸法において、前記第2の開口端部の内寸法は、前記膨出部が設けられた位置の内寸法と同等又はそれよりも小さい前記[1]〜[5]のいずれかに記載の保持部材。
[7]前記格納部の筒状外側に前記複数の格納部における隣接する前記格納部同士を互いに連結する連結リブをさらに備えており、前記連結リブは、前記基板部の前記第1の表面から前記格納部の前記膨出部の位置までの高さよりも低い位置に形成されている前記[1]〜[6]のいずれかに記載の保持部材。
[8]前記基板部の前記第1の表面側に、前記格納部よりも高く突出して形成された複数の支柱をさらに備える前記[1]〜[7]のいずれかに記載の保持部材。
[9]前記基板部の前記第2の表面側における、前記第1の表面側に設けられた前記支柱に対応する位置に、前記支柱の内部に向かって凹設され、他の一の保持部材の前記支柱を収納する凹部をさらに備える前記[8]に記載の保持部材。
[10]前記部品が注射器用ピストンである前記[1]〜[9]のいずれかに記載の保持部材。
【0068】
また、本発明の一実施形態の薬品容器用部品のパッケージング構造は、以下の構成をとることが可能である。
[11]開口部を有する箱型容器と、前記箱型容器に収容される前記[1]〜[10]のいずれかに記載の保持部材と、前記保持部材における前記格納部に格納される薬品容器用の部品と、を備える、薬品容器用部品のパッケージング構造。