【文献】
中前 勝彦,弾性率および粘弾性,高分子,日本,高分子学会,1988年11月 1日,37巻 11号,p.826-p.829,[2019年12月18日検索],インターネット,,URL,https://www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/37/11/37_11_826/_pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
人造グラファイトを含む前記複合材料における前記人造グラファイト粉末の質量分率は、0.5mass%以上40mass%以下である、請求項1に記載された製造方法。
前記人造グラファイト粉末を含む前記ポリアミド酸フィルムのイミド化を行うステップにおいて、前記人造グラファイト粉末を含む前記ポリアミド酸フィルムは、150℃以上250℃以下の温度で25分以上35分以下加熱されて、人造グラファイトを含む前記複合材料が形成される、請求項1に記載された製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の詳細な説明において、説明を目的として、開示された実施形態の完全な理解のために多くの形態の詳細について説明する。一以上の実施形態はこれらの詳細がなくても実施することができるのは自明である。他の例では、図面を単純化するために、一般的な構造及びデバイスが図式的に示されている。
【0018】
図1は、本開示の一実施形態に係る人造グラファイトを含む複合材料の製造方法を示すフローチャートである。一実施形態において、人造グラファイトを含む複合材料の製造方法は、ステップS101〜S104を含む。
【0019】
ステップS101において、グラファイト分散溶液を得るために、人造グラファイト粉末と第1溶媒とが混合される。当該人造グラファイト粉末の粒子サイズは50μm未満である。
【0020】
具体的には、人造グラファイト粉末を得るために、人造グラファイトのバルクが粉砕され、すりつぶされる。次に、当該人造グラファイト粉末はろ過され、粒子サイズが50μmより大きい人造グラファイト粉末が除去される。一実施形態において、人造グラファイト粉末は、グラファイト分散溶液を得るためにボールミル分散によって第1溶媒と混合される。
【0021】
グラファイト分散溶液は大きいグラファイト粉末を除去するためにろ過されてもよい。グラファイト分散溶液がろ過された後に、当該グラファイト分散溶液の中の人造グラファイト粉末の質量比は10mass%以下である。したがって、大きい人造グラファイト粉末のクラスタを避けることができ、これによって、高いろ過効率を維持することができる。ろ過されたグラファイト分散溶液は、グラファイト分散溶液の中の人造グラファイト粉末の均一な分散を実現することができる。第1溶媒は、好ましくは、極性を有する溶媒であるといいが、本開示はこれに限定されない。いくつかの実施形態において、第1溶媒が極性を有しない溶媒であってもよい。
【0022】
人造グラファイトの炭素原子間の特別な結合構造に起因して、sp
2ハイブリッド状態で、六方晶系の環状配列に配置された炭素原子の平面構造に沿って、高い機械強度、高い電気伝導率及び高い熱伝導率が観察される。本開示によると、人造グラファイトは完璧に近い平面的な層構造を含み、天然グラファイトよりも高い機械強度、高い電気伝導率及び高い熱伝導率を享受することができる。完璧な結晶性に基づいて、カーボンレイヤ(X−Y plane)の延長方向に沿ったグラファイトシートの熱伝導率は、700W/m・Kより大きい、好ましくは1000W/m・Kより大きい、より好ましくは1400W/m・Kより大きい、さらに好ましくは1700W/m・Kより大きい。同様に、カーボンレイヤの延長方向に沿ったグラファイトシートの電気伝導率は、9×10
5S/mより大きい、好ましくは1.3×10
6S/mより大きい、より好ましくは1.7×10
6S/mより大きい、さらに好ましくは2×10
6S/mより大きいであるとよい。
【0023】
一実施形態において、人造グラファイトは、天然グラファイトを含むポリイミドフィルムを炭化及び黒鉛化することによって得られる。他の実施形態において、人造グラファイトは、標準以下(低水準)のポリイミドフィルムを黒鉛化することによって得られる。さらに他の実施形態において、人造グラファイトは、廃棄された電子デバイス(電子機器廃棄物)の放熱部品(ヒートシンク)を粉砕することによって得られる。人造グラファイト粉末は、黒鉛化されたポリイミドフィルム又はポリイミドフィルムヒートシンクを粉砕することによって得られる。
【0024】
一実施形態において、低水準のポリイミドフィルムは、電子デバイスの素子として使用不可能な、クラック、欠陥、しわ、折り目、すじ、傷を含むポリイミドフィルムである。他の実施形態において、低水準のポリイミドフィルムは、フィルム切断工程の後の標準的なポリイミドフィルムからフィルムのかけらである。さらに他の実施形態において、低水準のポリイミドフィルムは、廃棄された電子デバイスに使用不可能なポリイミドフィルムである。
【0025】
ボールミル分散において、溶媒中の人造グラファイト粉末は、例えば、4サイクルの多数のジルコニアビーズによってボールミルで処理される。ボールミル処理の各サイクルは50分であり、2つのサイクルの間に10分間停止される。ジルコニアビーズは人造グラファイト粉末をすりつぶし、精緻化する。ボールミル分散が終了した後に、ジルコニアビーズは、上記のグラファイト分散溶液を得るために除去される。
【0026】
グラファイト分散溶液を希釈するために、人造グラファイト粉末のクラスタを抑制するために、希釈されたグラファイト分散溶液中の人造グラファイト粉末の質量比が適切になるように、ポリアミド酸溶液及び希釈されたグラファイト分散溶液が、より容易に均一に混合されるように、付加的な溶媒が追加されてもよく、それによってポリアミド酸フィルムをより簡単に形成することができるようになり、ポリアミド酸フィルム中の人造グラファイト粉末の不均一な分布を抑制できるようになる。いくつかの実施形態において、ボールミル分散及びグラファイト分散溶液の希釈が行われる間は、極性を有する溶媒が用いられることが好ましいが、極性を有しない溶媒が用いられてもよい。
【0027】
一実施形態において、希釈されたグラファイト分散溶液中の人造グラファイト粉末の質量比は、10mass%以下である。他の実施形態において、希釈されたグラファイト分散溶液中の人造グラファイト粉末の質量比は、7mass%、5.5mass%、4.5mass%又は2.5mass%であってもよい。希釈されたグラファイト分散溶液中の人造グラファイト粉末の質量比が10mass%以下の場合、人造グラファイト粉末のクラスタを避けるために、人造グラファイト粉末の分散をより高めることができる。したがって、希釈されたグラファイト分散溶液が他の溶媒と混合される場合、人造グラファイト粉末は溶液中でより早く均一に分散される。
【0028】
第1溶媒が極性を有する溶媒の場合、第1溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン(GBL)及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。ただし、第1溶媒は上記のものに限定されない。
【0029】
ステップS102において、混合液を得るために、グラファイト分散溶液及びポリアミド酸(PAA)溶液が混合される。
【0030】
一実施形態において、ステップS102では、混合液を得るために、グラファイト分散溶液、第2溶媒、ジアミン及び二無水物化合物が混合される。当該混合液における二無水物化合物に対するジアミンのモル比は、0.98:1から1.05:1である。
【0031】
具体的には、第2溶媒は希釈されたグラファイト分散溶液に追加される。第2溶媒が極性を有する溶媒の場合、第2溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン(GBL)及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。ただし、第2溶媒は上記のものに限定されない。好ましくは、第2溶媒はグラファイト分散溶液の溶媒と同じであってもよい。第2溶媒とグラファイト分散溶液とが混合され、攪拌された場合、グラファイト分散溶液に溶解され、人造グラファイト粉末と均一に混合されるようにジアミンが追加されてもよい。二無水物化合物が、ジアミンと反応してポリアミド酸を生成し、混合液を得るように、ジアミンを含むグラファイト分散溶液に追加されてもよい。
【0032】
他の実施形態において、まずポリアミド酸溶液を得るために、第2溶媒、ジアミン及び二無水物化合物が互いに混合されてもよい。次に、混合液を得るためにグラファイト分散溶液がポリアミド酸溶液に追加されてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、溶媒と、人造グラファイト粉末、ジアミン、二無水物化合物、ポリアミド酸及び触媒のような他の成分との間の化学反応がなくてもよい。ただし、人造グラファイト粉末が溶媒中に溶解され、当該溶媒がジアミン、二無水物化合物及びポリアミド酸と混合可能であってもよい。溶媒は、熱によって混合液から揮発及び除去可能であってもよい。
【0034】
ジアミンは、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、4,4’−オキシジアニリン(ODA)、3,4’−オキシジアニリン、4,4’−メチレンジアニリン、N,N−ジフェニルエチレンジアミン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ナフタレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニル硫化物、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1’,3,3’−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1’,3,3’−テトラフェニルジシロキサン、1,3−ビス(アミノプロピル)−ジメチルジフェニルジシロキサン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0035】
二無水物化合物は、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボキシル基二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボキシル基二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボキシル基二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボキシル基二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボキシル基二無水物、ナフタレンテトラカルボキシル基二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、1,3−ビス(4’−無水フタル酸)−テトラメチルジシロキサン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0036】
一実施形態において、混合液の粘度が10,000cps以上50,000cps以下(つまり、100poise(ps)以上500ps以下)に達する場合、二無水物化合物の追加及び混合液の撹拌は止められる。したがって、混合液がポリアミド酸フィルムを形成する基板の上で拡散しすぎてしまうような、混合液の粘性が過剰に高くなってしまうことを抑制することができる。好ましくは、混合液の粘度は20,000cps以下であるとよい。
【0037】
一実施形態において、混合液中のジアミン及び二無水物化合物の合計(ジアミンの質量+二無水物化合物の質量)に対する人造グラファイト粉末の質量の比は、0.5:100から50:100である。だが、本開示はこれに限定されない。他の実施形態において、混合液中のジアミン及び二無水物化合物の合計に対する人造グラファイト粉末の質量の比は、0.5:100から15:100であってもよい。さらに他の実施形態において、混合液中のジアミン及び二無水物化合物の合計に対する人造グラファイト粉末の質量の比は、15:100から25:100であってもよい。さらに他の実施形態において、混合液中のジアミン及び二無水物化合物の合計に対する人造グラファイト粉末の質量の比は、25:100から50:100であってもよい。
【0038】
いくつかの実施形態において、混合液は人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムの化学的イミド化をフォローアップするための触媒を含んでもよい。
【0039】
ステップS103において、混合液は、人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムを得るために加熱される。
【0040】
具体的には、混合液は基板の上に拡げられ、混合液を含む基板が120℃以上200℃以下の温度で加熱される。混合液の溶媒は、加熱によって蒸発し、混合液から除去され、それによって人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムが得られる。ポリアミド酸フィルムはその後のプロセスのために基板から分離される。溶媒の除去温度は、当該溶媒の沸点とすることができる。一実施形態において、溶媒を除去する温度は120℃以上200℃以下であるが、本開示はこれに限定されない。
【0041】
ステップS104において、人造グラファイトを含む複合材料を得るために、人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムのイミド化が行われる。
【0042】
具体的には、人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムが、混合液から溶媒を除去するための温度よりも高い、250℃以上400℃以下の温度で加熱される。ポリアミド酸フィルムのイミド化は、ポリアミド酸フィルムが加熱されたときに起きる。イミド化は脱水及びイミドの閉環反応をもたらし、ポリイミドフィルムを得ることができる。均一に分布された人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムは、イミド化され、人造グラファイト粉末を含むポリイミドフィルムを得ることができ、人造グラファイト粉末を含むポリイミドフィルムは人造グラファイトを含む複合材料である。一実施形態において、人造グラファイトを含む複合材料における人造グラファイト粉末の質量分率は、0.5mass%以上40mass%以下である。他の実施形態において、人造グラファイトを含む複合材料における人造グラファイト粉末の質量分率は、0.5mass%以上36mass%以下であってもよい。
【0043】
sp
2ハイブリッド状態における六方晶系の環状配列に配置された炭素原子の平面構造に沿った人造グラファイトの熱伝導率が高いため、人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムの熱は、ポリアミド酸フィルムの表面からポリアミド酸フィルムの内部に急速に移動する。したがって、人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムは均一に加熱されるため、イミド化の時間が短縮される。さらに、人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムのイミド化によって得られたポリイミドフィルムは、連続して配置、整列されたポリイミド分子を含む。未加工の材料としてポリイミドフィルムが用いられることによって得られるグラファイトシートの製造方法において、連続して配置、整列されたポリイミド分子は、連続して配置、整列された炭素原子を含む層ごとの構造を形成するために、炭化及び黒鉛化され、グラファイトシートは高い熱伝導度及び高い電気移動度を有する。
【0044】
人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムを加熱する温度は高くなり、ポリアミド酸フィルムのイミド化は早くなる。いくつかの実施形態において、人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムは、270℃以上450℃以下の温度で加熱される。いくつかの実施形態において、人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムは、270℃以上350℃以下の温度で加熱されてもよい。さらに他の実施形態において、人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムは、150℃以上270℃以下の温度で加熱されてもよい。イミド化の時間は25分以上35分以下である。人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムは、150℃以上250℃以下の温度で加熱されることが好ましい。
【0045】
さらに、一実施形態において、人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムは、固定剤によって固定され、加熱されてイミド化するが、本開示はこれに限定されない。他の実施形態において、人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムは一軸伸長され、加熱されてイミド化してもよい。
【0046】
混合液が触媒を含む場合、ポリアミド酸フィルムのイミド化は化学的イミド化及び熱イミド化を含む。化学的イミド化において、ポリアミド酸は、脱水及びイミド閉環反応を引き起こす触媒とイミド化し、それによってポリイミドを形成する。熱イミド化において、ポリアミド酸は、脱水及びイミド閉環反応を引き起こすために加熱され、それによってポリイミドを形成する。化学的イミド化及び熱イミド化の組み合わせは、より急速にポリイミドフィルムを形成する。いくつかの実施形態において、触媒はピリジンを伴う無水酢酸であってもよい。いくつかの他の実施形態において、触媒は、ポリアミド酸フィルムのイミド化がより低温で行われるような3級アミンであってもよい。
【0047】
人造グラファイトの炭素原子間の特別な結合構造によると、sp
2ハイブリッド状態における六方晶系の環状配列に配置された炭素原子の平面構造に沿って、高い機械的強度が確認される。その結果、混合液中に均一に拡散された人造グラファイト粉末は、複合材料の機械的強度を改善する補強材となり、複合材料の信頼性を向上させる。
【0048】
天然グラファイトと比較すると、人造グラファイトは高い格子完全性及びπ電子軌道の長い距離を備え、例えば人造グラファイトは天然グラファイトよりも高い電子移動度を有する。複合材料がグラファイト粉末の同一質量を含む場合、人造グラファイト粉末を含む複合材料は、天然グラファイト粉末を含む複合材料よりも電気抵抗が小さい。複合材料の中の人造グラファイト粉末が多ければ、複合材料の表面抵抗が小さくなる。表面抵抗が小さくなることで、人造グラファイト粉末を含む複合材料は、帯電防止及び電磁妨害の低減に適用することができる。
【0049】
帯電防止として、人造グラファイトを含む複合材料の表面抵抗が小さいことで、静電気の帯電を低減することができる。特に、複合材料の表面上の電子は容易に除去することができ、静電気の耐電を抑制することができる。したがって、人造グラファイト粉末を含む複合材料は、静電気消散及びESD保護に適用することができる。
【0050】
電磁妨害の低減として、従来の電磁妨害を低減する方法では、複合材料の表面上に金属膜を形成する又は導電ペイントをしていたが、金属膜や導電ペイントは簡単に剥がれてしまっていた。本開示によると、人造グラファイト粉末は複合材料の中に均一に分散されており、金属膜や導電ペイントの剥がれによる電磁妨害の悪化を抑制することができる。
【0051】
人造グラファイトを含む複合材料は、帯電防止、電磁妨害の低減又は電気伝導のためのフィルムとして用いることができるため、特に携帯電子装置のような光学電子機器及び通信機器に広く適用可能である。
【0052】
図2は、本開示の一実施形態に係る人造グラファイトを含む複合材料から形成されたグラファイトシートの製造方法を示すフローチャートである。一実施形態において、グラファイトシートの製造方法はステップS201及びS202を含む。
【0053】
ステップS201において、人造グラファイトを含む複合材料は、炭化された複合材料を得るために炭化温度で炭化される。
【0054】
具体的には、低圧雰囲気、窒素雰囲気又は不活性ガス雰囲気において、人造グラファイトを含む複合材料は、800℃以上1500℃以下の炭化温度で加熱され、複合材料の中のポリイミドが炭化され、それによって炭化された複合材料が得られる。例えば、人造グラファイトを含む複合材料は、圧力が1.0atm未満のチャンバ内に配置され、炭化のために加熱される、又は、人造グラファイトを含む複合材料は、窒素雰囲気のチャンバ内に配置され、炭化のために加熱される。炭化温度は900℃以上1500℃以下であることが好ましい。
【0055】
人造グラファイトを含む複合材料は、一実施形態において、グラファイトシートを製造するための原材料として用いられる。人造グラファイトを含む複合材料は、上記の
図1の方法、又は廃棄された電子デバイスの中の人造グラファイトを含む部品から得ることによって容易に製造することができる。廃棄された電子デバイスの中の人造グラファイトを含む複合材料は、放熱部品、静電放電保護部品及び電磁波シールド部品であってもよい。いくつかの実施形態において、放熱部品、静電放電保護部品及び電磁波シールド部品は、人造グラファイト粉末を得るために、粉砕され、随意的に黒鉛化されてもよい。
【0056】
放熱部品は、例えば、ヒートシンク、フィン付きチューブ、カーボンナノチューブを含む金属板又はグラファイトシートである。静電放電保護部品は、例えば、バリスタ、半導体ダイオード又はポリマー発光ダイオードである。電磁波シールド部品は、例えば、電気コネクタに用いられるスリーブ又はガスケットである。
【0057】
一実施形態において、人造グラファイトを含む複合材料は人造グラファイトシートを原材料としたスクラップを用いて製造することができる。当該スクラップは、人造グラファイトシートのカッティング又はスタンプによって生成することができる。
【0058】
ステップS202において、炭化された複合材料は、グラファイトシートを得るために、黒鉛化温度で黒鉛化される。黒鉛化温度は炭化温度よりも高い。
【0059】
具体的には、低圧雰囲気又は不活性ガス雰囲気で炭化された複合材料が、2500℃以上3000℃以下の黒鉛化温度で加熱され、炭化された複合材料の中の炭化されたポリイミドが黒鉛化され、それによってグラファイトシートが得られる。例えば、炭化された複合材料が、窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気のチャンバ内に配置されて加熱されることで黒鉛化が行われてもよい。
【0060】
いくつかの実施形態において、人造グラファイトを含む複合材料の炭化、及び炭化された複合材料の黒鉛化は、異なる加熱チャンバで行われてもよいが、本開示はこれに限定されない。いくつかの他の実施形態において、炭化及び黒鉛化の両方は、単一の加熱チャンバで行われてもよい。特に、加熱チャンバ内の温度は、炭化のための炭化温度に設定され、続いて黒鉛化のための黒鉛化温度に設定される。
【0061】
一実施形態において、sp
2ハイブリッド状態で、六方晶系の環状配列に配置された炭素原子の平面構造に沿った、グラファイトシートの熱伝導率は700W/m・Kよりも大きく、グラファイトシートの熱拡散率は4.0cm
2/secよりも大きい。また、六方晶系の環状配列に配置された炭素原子の平面構造に沿って、高い機械的強度及び高い電気伝導率が得られる。したがって、本開示の方法によって製造されたグラファイトシートは、電子デバイスに適用することができる。特に、当該グラファイトシートは、電子デバイス中の放熱部品、静電放電保護部品又は電磁波シールド部品に利用することができる。
【0062】
また、上記の段落に記載された方法で製造されたグラファイトシートは、新たな複合材料を製造するための人造グラファイト粉末を得るために粉砕されてもよい。よって、グラファイトシートは、本開示の方法によって、新たな複合材料及び新たなグラファイトシートに再利用することができ、グリーンサプライチェーンの取り組みにおける要求に適合する。
【実施例】
【0063】
本開示の上記の記載によると、以下の実施例は人造グラファイト粉末を含む複合材料の特性に関するさらなる説明を提供する。
【0064】
[第1実施例]
ステップ1:人造グラファイト粉末を得るために、人造グラファイトのバルクが粉砕され、すりつぶされる。
【0065】
ステップ2:10gの人造グラファイト粉末、200gのジルコニアビーズ及び50gのDMAcが混合され、グラファイト分散溶液を得るために、人造グラファイト粉末はボールミル分散によって精緻化される。
【0066】
ステップ3:付加的なDMAcが、グラファイト分散溶液を希釈するために追加され、希釈されたグラファイト分散溶液中の人造グラファイト粉末の質量分率が10mass%になる。
【0067】
ステップ4:1.05gの希釈されたグラファイト分散溶液(1.05gの希釈されたグラファイト分散溶液中の人造グラファイト粉末の合計は0.105g)は、101.70gの付加的なDMAcと混合される。希釈されたグラファイト分散溶液の混合液及びDMAcは撹拌され、ODAが人造グラファイト粉末を溶解するために追加され、続いてPMDAが追加される。人造グラファイト粉末、DMAc及びポリアミド酸を含む混合液を得るために、これらの部材が均一に混合される。なお、ポリアミド酸はODA及びPMDAの化学反応によって生成される。当該混合液の粘度が10,000cps以上50,000cps以下(つまり、100ps以上500ps以下)に達する場合、PMDAの追加及び混合液の撹拌は停止される。要求された粘度を有する混合液は、混合液中のPMDAとODAとのモル比が1:1である。混合液中のPMDA及びODAの合計に対する人造グラファイト粉末の質量比は0.5:100である。
【0068】
ステップ5:当該混合液は、基板の上に拡散され、混合液を含む基板は、人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムを得るために、120℃で10分間加熱される。ポリアミド酸フィルムは基板上に拡散される。
【0069】
次に、人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムは、イミド化されるために、320℃で10分間加熱される。ポリアミド酸フィルムのイミド化は、人造グラファイト粉末を含むポリイミドフィルムを生成する。人造グラファイト粉末を含むポリイミドフィルムは、第1実施例における人造グラファイト粉末を含む複合材料である。人造グラファイト粉末の熱伝導率は、1300W/m・K以上である。
【0070】
[第2実施例]
第2実施例は第1実施例と類似しているが、いくつかの点において相違する。第2実施例では、ステップ4において2.09gの希釈されたグラファイト分散溶液が用いられ、希釈されたグラファイト分散溶液は101.29gのDMAcと混合される。要求された粘度を有する混合液における、混合液中のPMDA及びODAの合計に対する人造グラファイト粉末の質量比は1.0:100である。
【0071】
[第3実施例]
第3実施例は第1実施例と類似しているが、いくつかの点において相違する。第3実施例において、ステップ4において11.5gの希釈されたグラファイト分散溶液が用いられ、希釈されたグラファイト分散溶液は97.39gのDMAcと混合される。要求された粘度を有する混合液における、混合液中のPMDA及びODAの合計に対する人造グラファイト粉末の質量比は5.5:100である。
【0072】
[第4実施例]
第4実施例は第1実施例と類似しているが、いくつかの点において相違する。第4実施例において、ステップ4において31.38gの希釈されたグラファイト分散溶液が用いられ、希釈されたグラファイト分散溶液は89.21gのDMAcと混合される。要求された粘度を有する混合液における、混合液中のPMDA及びODAの合計に対する人造グラファイト粉末の質量比は15:100である。
【0073】
[第5実施例]
第5実施例は第1実施例と類似しているが、いくつかの点において相違する。第5実施例において、ステップ4において52.30gの希釈されたグラファイト分散溶液が用いられ、希釈されたグラファイト分散溶液は80.60gのDMAcと混合される。要求された粘度を有する混合液における、混合液中のPMDA及びODAの合計に対する人造グラファイト粉末の質量比は25:100である。
【0074】
[第6実施例]
第6実施例は第1実施例と類似しているが、いくつかの点において相違する。第5実施例において、ステップ4において104.59gの希釈されたグラファイト分散溶液が用いられ、希釈されたグラファイト分散溶液は59.06gのDMAcと混合される。要求された粘度を有する混合液における、混合液中のPMDA及びODAの合計に対する人造グラファイト粉末の質量比は50:100である。
【0075】
[第1比較例]
第1実施例と第1比較例との間の相違点は、第1比較例ではポリイミドフィルムがグラファイト粉末を含まない点である。
【0076】
[第2比較例]
第1実施例と第2比較例との間の相違点は、グラファイト分散溶液が天然グラファイト粉末を含む点である。当該天然グラファイト粉末の熱伝導率は、300W/m・K未満である。
【0077】
[第3比較例]
第2実施例と第3比較例との間の相違点は、グラファイト分散溶液が天然グラファイト粉末を含む点である。
【0078】
[第4比較例]
第3実施例と第4比較例との間の相違点は、グラファイト分散溶液が天然グラファイト粉末を含む点である。
【0079】
[第5比較例]
第5実施例と第5比較例との間の相違点は、グラファイト分散溶液が天然グラファイト粉末を含む点である。
【0080】
[第6比較例]
第6実施例と第6比較例との間の相違点は、グラファイト分散溶液が天然グラファイト粉末を含む点である。
【0081】
第1〜第6実施例における人造グラファイト粉末を含むポリイミドフィルムを製造するための部材の量は表1−1、表1−2に示す通りである。
【0082】
【表1-1】
【0083】
【表1-2】
【0084】
第1〜第6実施例及び第1〜第6実施例の詳細なデータは表2−1、表2−2及び
図3に示す通りである。引張試験に対する試料は、厚さが50μm、長さが20cm、幅が1cmである。引張試験装置はパーフェクトインターナショナルインスツルメンツ社製のPT−VAモデルである。
【0085】
【表2-1】
【0086】
【表2-2】
【0087】
表2−1、表2−2及び
図3によると、複合材料(ポリイミドフィルム)中の人造グラファイト粉末の増加は、人造グラファイト粉末を含む複合材料のヤング率を向上させることができる。
【0088】
PMDA+ODAに対するグラファイト粉末の質量比が25:100の場合、人造グラファイト粉末を含む複合材料(第5実施例)は、天然グラファイト粉末を含む複合材料(第5比較例)よりも小さい電気抵抗を有する。複合材料中の人造グラファイト粉末の増加は、ヤング率を向上させ、電気抵抗を低下させることができる。
【0089】
表2−1、表2−2及び
図3に示すように、第5実施例における人造グラファイト粉末を含む複合材料のヤング率は、第1比較例におけるグラファイト粉末を含まない複合材料のヤング率よりも3.2倍大きい。第5実施例における人造グラファイト粉末を含む複合材料のヤング率は、第5比較例における天然グラファイト粉末を含む複合材料のヤング率よりも2倍大きい。
【0090】
第1比較例における複合材料のヤング率を基準として、第5実施例における人造グラファイト粉末を含む複合材料のヤング率は3.21倍に増加しているが、第5比較例における天然グラファイト粉末を含む複合材料のヤング率は1.52倍に過ぎない。第6実施例における人造グラファイト粉末を含む複合材料のヤング率は4.59倍に増加しているが、第6比較例における天然グラファイト粉末を含む複合材料のヤング率は1.92倍に過ぎない。
【0091】
以下の実施例を用いて、人造グラファイト粉末を含む複合材料のヤング率及び引張強度の両方におけるイミド化温度の影響について説明する。
【0092】
[第7実施例]
第7実施例は、第4実施例に類似しているが、いくつかの点において相違する。第7実施例では、人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムは、イミド化するために150℃で30分間加熱される。ポリアミド酸フィルムのイミド化は、人造グラファイト粉末を含むポリイミドフィルムを生成する。
【0093】
[第8実施例]
第8実施例は、第4実施例に類似しているが、いくつかの点において相違する。第8実施例では、人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムは、イミド化するために200℃で30分間加熱される。ポリアミド酸フィルムのイミド化は、人造グラファイト粉末を含むポリイミドフィルムを生成する。
【0094】
[第9実施例]
第9実施例は、第4実施例に類似しているが、いくつかの点において相違する。第9実施例では、人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムは、イミド化するために250℃で30分間加熱される。ポリアミド酸フィルムのイミド化は、人造グラファイト粉末を含むポリイミドフィルムを生成する。
【0095】
[第10実施例]
第10実施例は、第4実施例に類似しているが、いくつかの点において相違する。第10実施例では、人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムは、イミド化するために300℃で30分間加熱される。ポリアミド酸フィルムのイミド化は、人造グラファイト粉末を含むポリイミドフィルムを生成する。
【0096】
[第11実施例]
第11実施例は、第4実施例に類似しているが、いくつかの点において相違する。第11実施例では、人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムは、イミド化するために350℃で30分間加熱される。ポリアミド酸フィルムのイミド化は、人造グラファイト粉末を含むポリイミドフィルムを生成する。
【0097】
[第7比較例]
第7実施例と第7比較例との間の相違点は、第7比較例ではポリイミドフィルムがグラファイト粉末を含まない点である。
【0098】
[第8比較例]
第8実施例と第8比較例との間の相違点は、第8比較例ではポリイミドフィルムがグラファイト粉末を含まない点である。
【0099】
[第9比較例]
第9実施例と第9比較例との間の相違点は、第9比較例ではポリイミドフィルムがグラファイト粉末を含まない点である。
【0100】
[第10比較例]
第10実施例と第10比較例との間の相違点は、第10比較例ではポリイミドフィルムがグラファイト粉末を含まない点である。
【0101】
[第11比較例]
第11実施例と第11比較例との間の相違点は、第11比較例ではポリイミドフィルムがグラファイト粉末を含まない点である。
【0102】
第7〜第11実施例及び第7〜第11実施例の詳細なデータは表3及び
図4に示す通りである。引張試験に対する試料は、厚さが50μm、長さが20cm、幅が1cmである。引張試験装置はパーフェクトインターナショナルインスツルメンツ社製のPT−VAモデルである。
【0103】
【表3】
【0104】
表3及び
図4に示すように、イミド化温度が150℃を超えると第7実施例における人造グラファイト粉末を含むポリイミドフィルムは、高いヤング率を有し、優れた機械特性及び信頼性を備える。
【0105】
第7〜第11実施例において、イミド化温度の上昇に伴い、人造グラファイト粉末を含むポリイミドフィルムの引張強度は、200℃未満の温度範囲では徐々に大きくなり、200℃を超える温度範囲では徐々に低下する。複合材料におけるポリイミド酸に対するポリイミドの比が高くなると、当該複合材料の引張強度は大きくなる。よって、200℃を超える温度範囲における引張強度の緩やかな上昇は、ほとんどのポリイミド酸が完全にイミド化してポリイミドになったことを示す。
図4によると、人造グラファイト粉末を含むポリアミド酸フィルムのイミド化は、より低いイミド化温度で実現され、これによって人造グラファイト粉末を含むポリイミドフィルム(人造グラファイト粉末を含む複合材料)を得ることができる。これに対して、第7〜第11比較例では、イミド化温度の上昇に伴い、グラファイト粉末を含まないポリイミドフィルムの引張強度は、300℃未満の温度範囲では徐々に大きくなり、300℃を超える温度範囲では徐々に低下する。これは、300℃を超える温度では、ほとんどのポリイミド酸が完全にイミド化してポリイミドになったことを示す。したがって、人造グラファイト粉末を含む複合材料は、より低いイミド化温度で完全にイミド化することができ、炭素の排出の低減と同様に製造コストの低減を実現することができる。
【0106】
本開示によると、複合材料は均一に分散された人造グラファイト粉末を含み、当該人造グラファイト粉末は、当該複合材料の機械的強度を改善し、当該複合材料の信頼性を高くすることができる。
【0107】
さらに、複合材料における人造グラファイト粉末の分布によると人造グラファイトを含む複合材料の表面抵抗が小さくなることで、静電帯電を低減することができる。複合材料の表面の電子を容易に除去することができるので、静電放電を抑制することができる。よって、人造グラファイト粉末を含む複合材料は、帯電防止、ESD保護及び電磁妨害シールドに用いることができる。人造グラファイトを含む複合材料は、帯電防止、電磁妨害の低減又は電気伝導として用いることができるため、光学電子機器及び通信機器に広く適用可能である。
【0108】
さらに、複合材料における人造グラファイト粉末の分布は、複合材料の表面の膜やペイントの剥がれに起因した汚染を抑制することができる。
【0109】
さらに、人造グラファイトを含む、標準以下(低水準)の複合材料を、人造グラファイトシートを製造するためにリサイクル及びリユースすることができ、当該人造グラファイトシートを、製造コストを低減するために、本開示のグラファイトシートとして用いることができる。したがって、本開示の人造グラファイトを含む複合材料は工業上利用の可能性がある。
【0110】
本開示によると、人造グラファイトを含む、リサイクルされた複合材料は、本開示の方法によって、グラファイトシートの製造に再処理することができる。当該グラファイトシートは、新たな複合材料を製造するための人造グラファイト粉末を得るために、粉砕される。換言すると、当該人造グラファイト粉末は、廃棄された電子デバイスから得られた人造グラファイトを含む複合材料の再処理によって得られ、当該人造グラファイト粉末は、新たな電子デバイスに適用可能な新たな複合材料を製造することができる。したがって、人造グラファイトを含む複合材料、グラファイトシート及びこれらの製造方法は、グリーンサプライチェーンの取り組みにおける要求に適合する。
【0111】
本開示によると、人造グラファイトを含む複合材料は、低いイミド化温度でイミド化することによる、低い製造コスト及び炭素の排出の低減などを享受することができ、それによって環境保護の要求に適合する。
【0112】
上述の記載を、説明の目的のために、実施形態を参照して説明した。しかし、実施形態は、本開示の原理及びその実用的な応用を説明し、それにより、当業者が本開示及び種々の実施形態を活用する、特定の用途に適した様々な変更を利用することを可能にするために、実施形態を選択及び記載した。上記に示された実施形態及び添付の図面は例示的なものであり、網羅的であり、本開示の範囲を開示された限定的な形態に限定するものではない。上記の教示を考慮して,変更及び変形が可能である。