(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0013】
まず、添付の
図1には、本発明の一実施の形態になるヘッドアップディスプレイ装置であり、特に、自動車に搭載されてそのフロントガラスに映像等の情報を投射して人間の視野に、直接、当該情報を映し出す車両用のヘッドアップディスプレイ装置の概略構成が示されている。図において、ヘッドアップディスプレイ装置を構成する、例えば、反射防止膜からなる透明スクリーン410が、参照符号400で示されたフロントガラスの下辺部においてその内側表面に沿って取り付けられており、他方、ヘッドアップディスプレイ装置を構成する映像表示装置420は、当該フロントガラス400の下辺部においてステアリング404に隣接する位置に配置されたダッシュボード403の内部に取り付けられている。
【0014】
かかる構成になるヘッドアップディスプレイ装置では、映像表示装置420からの映像(情報)が指向性反射手段を施した透明スクリーン410上に投射して反射され、運転者用シート406及びヘッドレスト405上により支持された運転者(操縦者)407の目409に投影される。これにより、運転者407は、フロントガラス400介して目409に入る外部の視野と共に、その一部に同時に重畳されて表示さる運転に必要な各種の情報等を認識することができ、常に、外部の状況を判断しながらステアリング404を操作することができ、より安全な運転操作が可能となる。
【0015】
続いて、
図2及び3には、上記透明スクリーン410を含んだ映像表示装置420のより詳細な構成の一例を示す図であり、
図2はその側面図であり、
図3は上面図である。
【0016】
これらの図にも示すように、映像表示装置420は、以下にその詳細を説明するが、光の利用効率が高く、白色光を照射す、又は、所望の色(例えば、R(赤)、G(緑)、B(青))の光を選択的に照射することができる、例えば、LED光源やレーザ光源を利用した光源部421と、当該光源部421からの光を、外部からの映像信号に基づいて所望の映像光に変換する素子である、例えば、TFT型液晶パネルからなる光変調部(液晶パネル)422と、そして、当該光変調部422からの映像光を拡大して投写する、所謂、プロジェクションレンズ423と、そして、当該プロジェクションレンズ423からの光を、フロントガラス400の内面下方に取り付けられた透明スクリーン410に向けて照射(投写)する、例えば、フレネルレンズシートからなる光方向変換部424などにより構成されている。また、図の参照番号430は、外部からの映像信号に基づいて光変調部422(例えば、液晶パネル、反射型液晶パネル、DLP素子)を駆動する駆動回路を示している。なお、上記の
図2においては、広角の投射光のうち、上記透明スクリーン410の上端部に投射される光を上限光、そして、スクリーン410の下端部に投射される光を下限光として、それぞれ、参照番号412、413で示す。
【0017】
なお、添付の
図4(A)及び(B)には、上記光方向変換部424の具体的な構成が示されており、
図4(A)はフレネルレンズシートを光変調部(液晶パネル)422側から見た斜視図を、
図4(B)はG−G線に沿った断面図である。これらの図からも明らかなように、光方向変換部424には、複数の屈折型フレネルレンズ425が同心円状に形成されており、上記光変調部(液晶パネル)422から傾斜して投写された光は、これらのフレネルレンズ425の働きにより、ほぼ垂直方向に出射される(図の矢印を参照)。
【0018】
<<高効率固体光源装置>>
次に、上述した光の利用効率が高く、白色を含め、所望の色の光を選択的に照射することができる光源部421の詳細な構成について、添付の
図5〜9を参照しながら、以下に説明する。
【0019】
まず、
図5には、当該光源部421の全体構成が示されており、図からも明らかなように、光反射合成部20と、光合成部30と、そして、複数(本例では、例えば、4枚)の光源セル40とから構成されている。なお、この図では、その視点を理由として、2枚の光源セル40だけが示されている。なお、図の参照番号35は、光合成部30の光の出射面を示している。
【0020】
光反射合成部20は、
図6にも示すように、例えば、金属(アルミニウム等)製で熱伝導率が高く光に反射率を高めるために内面を研磨面とし、増反射コートした部材からなり、断面が四角形で、その先端部分を放物面状に形成した、その外形が略角錐形状の部材からなり、その底面部を除いた全表面に、例えば、AリットルやAリットルの表面に金属多層膜の増反射膜を成膜した反射面を形成したものである。
【0021】
光合成部30は、
図7(A)にも示すように、例えば、断面が三角形で、その底面が上面よりも大きな三角柱状の外形を有するダイクロイックプリズム31を4個、組み立て、もって、
図7(B)にも示すように、断面が四角形の角柱としたものである。なお、上記ダイクロイックプリズム31の各々は、組み立てた状態で外周面となる面32には反射面が、その他の二つの面33、34には、例えば、金属多層膜からなるダイクロイック特性を示す波長選択性の光学面(膜)が形成されている。
【0022】
ここで、再び
図5に戻り、上記光合成部30(又は、光反射合成部20でもよい)の各外周面には、それぞれ、光源セル40が取り付けられている。当該光合成部30の、光源セル40が取り付けられている部分の断面が、
図8に示されている。なお、本例では、
図8にも明らかなように、4個の光源セル40が取り付けられており、そして、それぞれの光源セル40は、光の3原色であるR(赤)光を発光する光源セル40R、G(緑)光を発光する光源セル40G、そして、B(青)光を発光する光源セル40Bとなっており、特に、G光を発光する光源セル40Gは、一般的に、R(赤)光を発光する光源セル40RやB(青)光を発光する光源セル40Bに比較して、大きな出力光が得難いことから、光合成部30の隣接する2つの外周面に取り付けられている。なお、光源セル40が取り付けられる部分は、表面に形成された反射面が取り除かれている。
【0023】
続いて、
図8には、4個のダイクロイックプリズム31a〜31dを組み立てて形成された光合成部30と、その外周面に取り付けられた光源セル40a〜40dが、断面により示されている(但し、各光源セル40が取り付けられる部分は、表面に形成された反射面が取り除かれている。)そして、各光合成部30の境界面には、上述したダイクロイック特性を示す波長選択性の光学面(膜)33a〜33dが配置されており、これにより、光源セル40a〜40dから出射した光は、当該波長選択性の光学面(膜)33a〜33dで反射又は通過し、更には、混色し、このことにより、白色を含む所望の色の光を取り出すことが可能となる。
【0024】
次に、
図9(A)〜(C)には、上述した波長選択性の光学面(膜)33a〜33dの反射特性の一例を示す。即ち、これらの図にも示すように、G光反射面は、G領域の波長の光を反射し、他の波長領域の光を透過する。同様に、B光反射面は、B領域の波長の光を反射し、R光反射面は、R領域の波長の光を反射する。
【0025】
ここで、
図8の光合成部30を一例として説明する。まず、光源セル40aと40bをG(緑)色光を発光する光源セル、光源セル40cをB(青)色光を発光する光源セル、そして、光源セル40dをR(赤)色光を発光する光源セルとし、また、波長選択性光学面(膜)33aをG光反射/R光透過性とし、波長選択性光学面(膜)33bをR光、B光反射/G光透過性とし、波長選択性光学面(膜)33cをG光反射/B光透過性とし、そして、波長選択性光学面(膜)33dをB光、R光反射/G光透過性とする。これにより、R光、G光、B光を分離して、出射面35(
図5を参照)から取り出すことが出来る。
【0026】
あるいは、上記した波長選択性光学面(膜)の反射/透過特性を適宜選択することで、R光、G光、B光が混合された白色光を出射面35(
図5を参照)から取り出すことも出来る。
【0027】
次に、上記光反射合成部20の内部、及び、光反射合成部20と光合成部30の全体の内部における光の合成について、添付の
図10(A)及び(B)により説明する。なお、これらの図は、光反射合成部20、及び、光反射合成部20と光合成部30の全体を、その光軸方向(
図5の一点鎖線を参照)に沿って切断した切断面である。なお、ここでは、光源セル40を光反射合成部20の上面に取り付けた場合について述べる。
【0028】
光反射合成部20は、光源セルの放熱性を考慮すると熱伝導率が高く光の反射特性に優れたAリットル等の金属が良く、その内面は例えば楕円、放物面、球面などとして光源セル40a〜40dからの放射光束を効率よく光合成部30に導く。
図10(A)に本願発明の実施例としての光反射合成部20を示すが、全体として略放物面状の外形を有しており、その光の出射方向である光軸方向(
図5の一点鎖線を参照)に沿った断面は、略放物線状となっている。また、この光軸方向に垂直断面は、その中央部より先端の部分では略楕円形状に、当該中央部から光合成部30との接合部にかけては正方形又は長方形状となっており、これら光反射合成部20と光合成部30とは、互いに連続的につながる形状となっている。また、既に述べたが、光反射合成部20の外周表面には反射面が形成されており、光源セル40から出射した光を光合成部30に反射する形状となっている。
【0029】
即ち、
図10(A)には、光源セル40の各発光点401〜405から出射した光の光反射合成部20内での伝播方向を矢印で示している。光反射合成部20の先端部を略放物面状とすることにより、各発光点401〜405から光は、当該光反射合成部20の内部で反射を繰り返すことで混合され、その結果、光合成部30には略均一化されて光束が出射される。
【0030】
図10(B)は、光反射合成部20と光合成部30の全体における光線の伝播を示した図であり、上記光反射合成部20から光合成部30へ入射した光束は、光合成部30の外周面で反射しながら出射面へ向かい光束の光密度が均一化され外部へ出射する。その際、光合成部30を構成するダイクロイックプリズム31a〜31dを通過することにより、特定の波長の光は上記波長選択性の光学面(膜)33a〜33dで反射される。即ち、波長選択性光学面(膜)33a〜33dを設けることによれば、当該光合成部30の外周面に形成した反射面でのみ反射させる場合に比較し、光合成部の内部での反射の回数が増大し、光の利用効率が向上する。一例として、光合成部30の外周面にアルミニウムの反射膜を形成し、当該反射膜でのみ内部の光を反射させた場合には、その反射ロスとして、約5%/反射1回)が発生するが、これに対し、波長選択性光学面(膜)33a〜33dを設けることによれば、反射せずに透過する光についても、その後、出射光束として利用できることから、全体としての光利用効率の低下は少ない。
【0031】
また、波長選択性光学面(膜)33a〜33dを設けることによれば、光の光反射合成部20の内部での反射回数が増加し、反射光束の強度分布をより均一にすることが出来る。換言すれば、出力光束の均一度を一定とした場合には、外周面での反射だけに比較し、当該光反射合成部20の光軸方向の長さをより短縮することが出来る。更に、光合成部30の入射面(光反射合成部20の出射面)の面積を、その出射面35の面積よりも大きくしていることから、出射光線の角度が光軸の方向に近づき、指向特性を狭域に絞ることができる。
【0032】
即ち、上述した高効率固体光源装置によれば、光の利用効率が高く、光束の拡散角度を狭めた所望の色の光を選択的に取り出すことも可能な光源装置を実現することが出来る。
【0033】
<<光変調部(液晶パネル)>>
続いて、上述した高効率固体光源装置を利用した場合の光変調部(液晶パネル)の詳細な構造について、以下に複数の実施例について説明する。
【0034】
<実施例1>
上記の
図2や
図3にも示したように、上述した高効率固体光源装置を光源部421として利用し、当該光源からの白色光を、例えば、TFT型液晶パネルからなる透過型の光変調部(液晶パネル)422に入射し、外部からの映像信号に基づいて所望の映像光に変換し、当該変換した映像光をプロジェクションレンズ423を介してフレネルレンズ425上に投写する。
【0035】
かかる構成によれば、比較的簡単な構成により、フロントガラス400の下辺部において所望の情報を映し出すヘッドアップディスプレイ装置を実現することが出来る。
【0036】
<実施例2>
次に、光変調部(液晶パネル)の他の実施例(実施例2)について、
図11を参照しながら説明する。この
図11にも示すように、この実施例2では、上記実施例1に示した構成に加え、フレネルレンズ425の出射面側のほぼ全領域を覆うように、更に、第2の画像表示用液晶パネル440を取り付け、そして、当該第2の画像表示用液晶パネル440を駆動するための第2の液晶パネル駆動回路431を設けたものである。
【0037】
なお、上記第2の画像表示用液晶パネル440は、第2の液晶パネル駆動回路431を介して外部からの映像信号(共通)に基づいて光変調を行う。かかる構成によれば、得られるコントラストは、第2の画像表示用液晶パネル440のコントラスト比と、上記第1の画像表示用液晶パネル422のコントラスト比との積となるため、特に、外光による視野に投写映像を表示するヘッドアップディスプレイ装置にとって非常に重要な、表示画像のコントラスト比を格段に向上することが可能になる。換言すれば、上記第1の画像表示用液晶パネル422や第2の画像表示用液晶パネル440として、比較的安価なパネルを採用しながらも、十分なコントラスト比を得ることが可能になる。
【0038】
また、かかる構成において、上記第1の画像表示用液晶パネル422や第2の画像表示用液晶パネル440を、図に実線で示すように外部からの映像信号(共通)に基づいて光変調を行うのではなく、破線の矢印で示すように、ここでは図示しない3次元表示装置からの互いに異なる映像信号に基づいて光変調を行うことによれば、添付の
図12(A)及び(B)に示すように、第1の画像表示用液晶パネル422による第1の画像155と第2の画像表示用液晶パネル440の第2の画像175により、情報を立体的(3次元表示)に映し出すことの可能なヘッドアップディスプレイ装置を実現することが出来る。
【0039】
<実施例3及び実施例4>
図13に示すように、上述した光反射合成部20、光合成部30、そして、光源セル40とからなる固体光源部421の出射面側に、例えば、位相板などからなる位相差発生部51と、フィールドレンズ52を設け、当該固体光源部421からの出射光を、偏光プリズム等の偏光分離素子53により第1の反射型の光変調部(例えば液晶パネル、反射型液晶パネル、DLP等)422’上に導いた後、当該光変調部で変調された反射光を投写レンズ423によりフレネルレンズ425上に投写する。なお、この例では、フレネルレンズ425の光の出射側には、やはり、上記の第2の光変調部440が設けられている。
【0040】
あるいは、
図14に示すように、上記固体光源部421から出射して位相差発生部51とフィールドレンズ52を透過した光を、例えば、アクリルやポリスチレン、ポリカーカーボネイト、PET等の樹脂からなり、その表面上に鋸歯状の突起部を多数形成してなる導光体55により透過型の光変調部(液晶パネル)422上に導く構成とすることも可能である。
【0041】
なお、以上に述べた実施例1〜4では、上記固体光源部421の光の出射面35(
図5を参照)からは、R光、G光、B光が混合された白色光が取り出されることとなり、そのため、当該光源部を構成する光源セル40a〜40dは、図示しない電源回路により、常時、駆動されることとなる。
【0042】
上述した本願発明の高効率固体光源装置によれば、白色光のほかに、R(赤)光、G(緑)光、B(青)光を時間分割して、選択的に取り出すことが出来ることから、以下に詳細に述べる変調方式、即ち、光色循環式の変調方式を採用することも出来る。
【0043】
<<光色循環式の変調方式>>
なお、この光色循環式の変調方式は、上記
図2及び3に示した構成により実現することが可能であるが、但し、
図15にも示すように、外部からの映像信号に基づいて、上記固体光源部421からの光を、R光、G光、B光に、順次、選択的に切り替えると共に、光変調部422への映像信号を、R光用映像信号、G光用映像信号、B光用映像信号に、順次、切り替える。
【0044】
例えば、
図15にも示すように、液晶パネル駆動回路430は、入力する映像信号からR光用映像信号、G光用映像信号、B光用映像信号を生成する変換回路431、432、433と、光源セル40を駆動するための光源セル駆動電源回路434を備えている。
【0045】
そして、上述した光変調部駆動回路430の構成によれば、
図16(A)〜(D)にも示すように、互いに同期して働くスイッチ回路435、436を介して、以下のように動作する。即ち、スイッチ回路436を介して、R光の光源である光源セル40Rに対して、光源セル駆動電源回路434からの駆動電流が供給される(
図16(A)参照)時には、R光用映像信号が、スイッチ回路435を介して、光変調部422へ出力される(
図16(D)参照)。同様に、G光の光源である光源セル40Gに対して、光源セル駆動電源回路434からの駆動電流が供給される(
図16(B)参照)時には、G光用映像信号が、スイッチ回路435を介して、光変調部422へ出力される(
図16(D)参照)。そして、B光の光源である光源セル40Bに対して、光源セル駆動電源回路434からの駆動電流が供給される(
図16(C)参照)時には、B光用映像信号が、スイッチ回路435を介して、光変調部422へ出力される(
図16(D)参照)。なお、上述した光源セルの発光色と各色用の映像信号の切り替えは、例えば、120〜480Hzの周期で行う。このことによれば、液晶パネルの各ピクセルからの光は、人間の目にとって、各色光が混色して得られる自然な色として認識されることとなる。
【0046】
なお、上述した構成によれば、従来の白色光を変調する変調方式に比較して、以下の様な効果が得られる。即ち、
図17(A)にも示すように、従来の白色光を変調する変調方式では、光源からの白色光を、例えば、色フィルターFを通して、R光、G光、B光に分離・変換した後、その各々を、R光用映像信号、G光用映像信号、B光用映像信号により駆動される液晶パネルの対応する各液晶セルC
R、C
G、C
Bに入射して変調を行い、その結果、変調したR光、G光、B光により、所望のカラー映像を投写している。
【0047】
これに対し、上述した本発明になる光色循環式の変調方式によれば、
図17(B)に示すように、光源である固体光源部421からの光は、R光、G光、B光と、順次、選択的に切り替えることが可能であることから、これらの色光を液晶パネルを構成する各液晶セルCに、順次、入射して変調を行えばよく、その結果、順次得られたR光用映像光、G光用映像光、B光用映像光を投写するにより、所望のカラー映像が得られることとなる。
【0048】
このように、本発明になる光色循環式の変調方式によれば、従来の白色光を変調する変調方式に比較し、まず、白色光をR光、G光、B光に分離・変換するための色フィルターFが不要となり、当該色フィルターFによる光の吸収を回避することが出来る。その結果、光源からの光の利用効率を大幅に向上することが可能となる。
【0049】
加えて、従来の白色光を変調する変調方式では、液晶パネルの水平方向に隣接する3個の液晶セルC
R、C
G、C
Bを1の画像単位として取り扱うこととなるが、本発明になる光色循環式の変調方式では、ただ一つの液晶セルCを1の画像単位として取り扱うことを可能とすることから、得られる画像の、特に、水平方向における解像度を3倍に向上することが可能となる。
【0050】
即ち、上述した本発明になる光色循環式の変調方式を採用することによれば、光の利用効率が高く、かつ、解像度の高い投写画像が得られることから、特に、外光による視野に投写映像を表示するヘッドアップディスプレイ装置にとって非常に有利である。更には、例えば、上述した実施例2のように、第2の画像表示用液晶パネルを取り付け、もって、表示画像のコントラスト比を向上することや、立体(3次元)映像を表示することも可能である。
【0051】
<<投写レンズの具体的な構成>>
続いて、光変調部からの映像光を、傾斜した方向に、台形歪を軽減して拡大して投写する、所謂、プロジェクションレンズ423の具体的な構成について、以下に詳細に説明する。
【0052】
図18(A)及び(B)は、上記プロジェクションレンズ423である投写光学系1の構成図であり、
図19は、その光線図である。映像表示素子である液晶パネル422等から出射した映像光は、必要に応じてフィルター類を通過し、同軸レンズ系2と自由曲面レンズ系3で、屈折作用を自由曲面ミラー4で反射作用を受けた後に、フレネルレンズシートからなる光方向変換部424に投写される。
【0053】
同軸レンズ系2は、正の屈折力を持つ第1レンズ群G
1と、負の屈折力を持つ第2レンズ群G
2とからなるレトロフォーカスタイプである。
【0054】
第1レンズ群G
1は、ガラス製で正の屈折力を有し縮小側に小さい曲率半径を向けたレンズL
1と、プラスチック製の非球面レンズL
2と、ガラス製で正の屈折力を有し両凸形状のレンズL
3と、ガラス製で負の屈折力を有し両凹形状のレンズL
4と、ガラス製で正の屈折力を有し両凸形状のレンズL
5と、ガラス製で正の屈折力を有し拡大側に小さい曲率半径を向けた両凸形状のレンズL
6で構成され、レンズL
3からレンズL
5は貼合せのトリプレットレンズを構成している。
【0055】
また、レンズL
1の屈折率は1.8より大きくし、レンズL
3とレンズL
5にはアッベ数が70より大きい硝材を適用し、レンズL
4にはアッベ数が25より小さい硝材を適用し、レンズL
6にはアッベ数が35より小さい硝材を適用している。
【0056】
第2レンズ群G
2は、プラスチック製で負の屈折力を有し縮小側に凸面を向けたメニスカス形状の非球面レンズL
7と、ガラス製で負の屈折力を持つ両凹形状のレンズL
8と、ガラス製で正の屈折力を有し拡大側に小さな曲率半径を向けた両凸形状のレンズL
9と、プラスチック製で負の屈折力を有し拡大側に凸面を向けたメニスカス形状の非球面レンズL
10で構成している。
【0057】
また、レンズL
8にはアッベ数が70より大きい硝材を適用し、レンズL
9にはアッベ数が35より小さい硝材を適用している。
【0058】
自由曲面レンズ系3は、プラスチック製で拡大側に凸面を向けたメニスカスレンズ形状の自由曲面レンズL
11と、プラスチック製で拡大側に凸面を向けたメニスカスレンズ形状の自由曲面レンズL
12とで構成している。
【0059】
以下の表1にレンズデータを示すが、曲率半径は曲率半径の中心位置が進行方向にある場合を正の符号で表わしている。面関距離は、各面の頂点位置から次の面の頂点位置までの光軸上の距離を表わしている。
【0061】
偏心はY軸方向の値であり、倒れはYZ平面内でX軸回りの回転であり、偏心・倒れは、該当の面で偏心と倒れの順に作用し、「普通偏心」では、偏心・倒れが作用した新しい座標系上での面関距離の位置に次の面が配置される。一方、「DAR」は、デセンタ・アンド・リターンの意味で、偏心と倒れはその面でのみ作用し、次に面に影響しない。
【0062】
硝材名のPMMAは、プラスチックのアクリルである。
【0063】
以下の表2には、以下の数1で定義した自由曲面係数を示す。
【0066】
自由曲面係数は、それぞれの光軸9(Z軸)に対して回転非対称な形状であり、円錐項の成分とXYの多項式の項の成分で定義される形状である。例えば、Xが2次(m=2)でYが3次(n=3)の場合は、j={(2+3)
2+2+3×3}/2+1=19であるC
19の係数が対応する。また、自由曲面のそれぞれの光軸の位置は、上記表1のレンズデータでの偏心・倒れの量によって定まる。
【0067】
以下の表3に、以下の数2で定義した非球面係数を示す。
【0070】
非球面係数は、それぞれの光軸(Z軸)に対して回転対称な形状であり、円錐項の成分と光軸からの高さhの4次から20次の偶数次の成分を使用している。
【0071】
以下の表4に示した奇数次多項式非球面係数は、上記表3の非球面に奇数次の成分を加えた形状である。なお、高さhは正の値なので、回転対称な形状である。
【0073】
上述した投写光学系では、合焦レンズである自由曲面レンズ3を動かすことでも、フランジバック調整ができるが、(1)本来の合焦レンズの移動範囲(調整範囲)にズレが生じてしまう。また、(2)同軸レンズ系2の部品エラーは同じ同軸レンズ系2で補正することが光学性能にとって望ましい。これらの理由により、同軸レンズ系2の正の屈折力の第1レンズ群G
1を2つの屈折力の成分に分離する。具体的には、上記
図18(A)及び(B)において、レンズL
1からレンズL
5と、レンズL
6とで分離し、レンズL
1からレンズL
5を光軸上で移動させることで、フランジバック調整を行った。
【0074】
ここで、レンズL
5とレンズL
6の間に、開口絞り7を配置しているので、レンズL
5とレンズL
6では、主光線の光線高さの符号が正負逆となる。
【0075】
従って、倍率色収差に関しては、レンズL
5とレンズL
6で作用が異なるので、レンズL
5ではアッベ数を70以上としたが、レンズL
6では逆にアッベ数を35以下とした。
【0076】
次に、レンズL
7からレンズL
10のレンズ構成について説明する。
【0077】
レンズL
7からレンズL
10は、同軸レンズ系2の中の負の屈折力のレンズ群であり、第2レンズ群G
2を構成している。従って、基本は凹レンズと凸レンズの構成である。
【0078】
レンズL
7をプラスチック製で負の屈折力を有し縮小側に凸面を向けた非球面レンズとし、レンズL
8を負の屈折力を有し縮小側に凹面を向けた両凹形状のガラスレンズとし、レンズL
9を正の屈折力で拡大側の曲率半径が小さい両凸形状のガラスレンズ、レンズL
10をプラスチック製で負の屈折力を有し拡大側に凸面を向けたメニスカス形状の非球面レンズとした。
【0079】
即ち、以上に詳述した投写光学系を上記のプロジェクションレンズ423に適用することによれば、光変調部からの映像光を、傾斜した方向に投写しても、台形歪を軽減しながら拡大して投写することが可能となる。
【0080】
<<透明スクリーン>>
次に、フロントガラス400の下辺部において、その内側表面に沿って取り付けられ、上記の映像表示装置420から投写される光により情報を映し出すための手段である透明スクリーン410について、以下に説明する。
【0081】
なお、上記では、反射防止膜からなる透明スクリーン410について既に説明したが、以下には、その他の透明スクリーン410’について述べる。
【0082】
図20(A)は、透明スクリーン410’の一部を取り出して拡大して示した斜視図であり、この図からも明らかなように、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルムからなる基板シート500の表面に、断面が三角形状で全体が矩形状の微細な突起部510を、多数、形成したものである。なお、これら突起部510は、各々、
図20(B)の拡大断面で示すように、例えば、以下のような寸法に設定される。
縦(L)=5〜10μm: 横(W)=2〜4μm
【0083】
また、各突起部510の断面形状(角度)としては、その反射光を導く方向によっても異なるが、例えば、本例では、以下のように設定されている。
角度(θ
A)=25〜65度: 角度(θ
B)=65〜25度
【0084】
更に、上述した突起部510は、PETフィルムからなる基板シート500の表面上に、スクリーンの正面図である
図21(A)又は(B)に示すように配置されて形成される。例えば、
図21(A)には、突起部510が、水平方向及び垂直方向に、一列に所定に間隔で隔離されて並べられた例が示されている。たま、
図21(B)には、上記
図21(A)とは異なり、突起部510が、その水平方向において上下に移動しながら所定に間隔で隔離されて並べられた例が示されている。
【0085】
このように、基板シート500の表面上に多数の突起部510を分散して配置する構成とすることによれば、所定の角度から入射する映像光を、選択的に、所望の方向に反射すると共に、かかる構成においてしばしば問題となる、所謂、モアレ縞の発生を回避することが可能となる。
【0086】
このように、上述した構成になる透明スクリーン410’によれば、
図22にも示すように、外部からの光を透過すると共に、下方から入射する光(
図2を参照)を所望の角度に反射し、もって、フロントガラス400介して入る外部の視野と共に、その下部に取り付けられた透明スクリーン410’上に、運転に必要な各種の情報等を、運転者407の目409にとっても認識し易い状態で、同時に重畳して表示することが可能になる。
【0087】
最後に、
図23に、本発明の他の実施の形態になるヘッドアップディスプレイ装置を示す。即ち、上記
図1では、フロントガラスには、予め、透明スクリーン410が取り付けられ、映像表示装置420がダッシュボード403の内部に搭載されたヘッドアップディスプレイ装置について説明したが、ここでは、それに換え、例えば、電車の操縦室や訓練室などにおいて、机や台の上に設置して利用することが可能なヘッドアップディスプレイ装置を示す。即ち、図からも明らかなように、表示部である透明スクリーン410は、例えば、その左右の両端部において、略「L」字状に形成された一対のスタンド411により、所定の角度で傾斜して保持されており、当該透明スクリーン410の下方には、光源部を内蔵して上方に向かって映像光を広角で投射する映像表示装置420が配置されており、これらの映像光は、透明スクリーン410により、その位置(高さ)により、それぞれ、所定の方向に(
図1を参照。即ち、運転者407の目409に投射される方向に)、反射される。
【0088】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するためにシステム全体を説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0089】
また、上記の各構成等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよく、又は、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。