特許第6694967号(P6694967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6694967レーダーセンサのためのアンテナ装置、レーダーセンサのためのアンテナ装置を製造する方法、及び、アンテナ装置のレーダーセンサでの利用法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6694967
(24)【登録日】2020年4月22日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】レーダーセンサのためのアンテナ装置、レーダーセンサのためのアンテナ装置を製造する方法、及び、アンテナ装置のレーダーセンサでの利用法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/20 20060101AFI20200511BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20200511BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   H01Q13/20
   H01Q21/06
   G01S7/02 216
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-544347(P2018-544347)
(86)(22)【出願日】2017年1月18日
(65)【公表番号】特表2019-507986(P2019-507986A)
(43)【公表日】2019年3月22日
(86)【国際出願番号】EP2017050983
(87)【国際公開番号】WO2017153073
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2018年8月22日
(31)【優先権主張番号】102016203998.9
(32)【優先日】2016年3月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】バウアー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ヨハネス
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−107600(JP,A)
【文献】 特開平03−297207(JP,A)
【文献】 米国特許第07868828(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0029072(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/02
H01Q 13/20
H01Q 21/00− 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダーセンサ(200)のためのアンテナ装置(100)において、
直列に配線された定義された数の平坦なアンテナ部材(10)を有する、基板(1)の表面に配置された少なくとも1つの第1のアンテナアレイ(20)と、
直列に配線された定義された数の平坦なアンテナ部材(10)を有する、前記基板(1)の表面に配置された少なくとも1つの第2のアンテナアレイ(30)と、
前記両方のアンテナアレイ(20,30)とそれぞれセンターで配線された供給導線(12)とを有し、
前記供給導線(12)により供給信号が前記アンテナアレイ(20,30)へ供給可能であり、前記両方のアンテナアレイ(20,30)に配置される移相部材(11)により前記第1のアンテナアレイ(20)に前記第2のアンテナアレイ(30)と比べて180度だけ移相した供給信号が供給可能であるようになっており、
前記移相部材(11)は前記供給導線(12)の交差点に関して互いに機能的に点対称に構成されている、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1のアンテナアレイ(20)は第1のアンテナハーフアレイ(20a)と第2のアンテナハーフアレイ(20b)を有し、
前記第2のアンテナアレイ(30)は第1のアンテナハーフアレイ(30a)と第2のアンテナハーフアレイ(30b)を有し、
前記第1のアンテナアレイ(20)の前記第2のアンテナハーフアレイ(20b)に前記移相部材(11)が配置されており、
前記第2のアンテナアレイ(30)の前記第1のアンテナハーフアレイ(30a)に前記移相部材(11)が配置されており、
それぞれ接続部材(12a,12b)によって前記供給導線(12)が前記第1のアンテナアレイ(20)の前記第1および前記第2のアンテナハーフアレイ(20a,20b)の接続点と配線されるとともに、前記第2のアンテナアレイ(30)の前記第1および前記第2のアンテナハーフアレイ(30a,30b)の接続点と配線される
ことを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ装置(100)。
【請求項3】
前記アンテナアレイ(20,30)への前記供給導線(12)の前記接続部材(12a,12b)が非対称に構成される
ことを特徴とする、請求項2に記載のアンテナ装置(100)。
【請求項4】
定義された数の別のアンテナアレイ(40...70)を有しており、それぞれ2つの別のアンテナアレイ(40,50,60,70)を有するサブアレイがそれぞれ前記アンテナアレイ(20,30)のうちの少なくとも1つと配線される
ことを特徴とする、請求項1から3のうちいずれか1項に記載のアンテナ装置(100)。
【請求項5】
前記第1のアンテナアレイ(20)と配線される複数の別のアンテナアレイ(40,50)は前記第2のアンテナアレイ(30)と配線される複数の別のアンテナアレイと同一である
ことを特徴とする、請求項4に記載のアンテナ装置(100)。
【請求項6】
レーダーセンサ(200)のためのアンテナ装置(100)を製造する方法において、 次の各ステップを有し、すなわち、
第1のアンテナアレイ(20)の直列に配線された定義された数の平坦なアンテナ部材(10)が基板(1)の上に配置され、
第2のアンテナアレイ(30)の直列に配線された定義された数の平坦なアンテナ部材(10)が前記基板(1)の上に配置され、
前記両方のアンテナアレイ(20,30)とそれぞれセンターで配線された供給導線(12)が前記基板(1)の上に配置され、前記両方のアンテナアレイ(20,30)に配置される移相部材(11)により、前記第1のアンテナアレイ(20)に前記第2のアンテナアレイ(30)と比べて180度だけ移相した供給信号が供給可能であるように構成され、
前記移相部材(11)は前記供給導線(12)の交差点に関して互いに機能的に点対称に互いに配置される、
方法
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載のアンテナ装置(100)のレーダーセンサ(200)での利用法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダーセンサのためのアンテナ装置に関する。さらに本発明は、レーダーセンサのためのアンテナ装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ十数年、自動車分野でのレーダーセンサの普及は顕著に伸びてきていて、なおいっそうの伸びを見せている。第1世代のセンサは、最大約250mまでの距離の車両前方の限られた角度範囲でのみ、車両の環境を検出することを目的としていた。フロントセンサとして知られるこうしたセンサは、今日と今後のレーダーシステムにおいても、自動車の環境検出の主要な構成要素である。とはいえ近年、検知されるべき物体に関わる要求事項は明らかに増えており、自動化された車両ないし自律的な車両が広まりつつあることを考えると、環境検出に関わる要求事項はさらに増していく。
【0003】
車両のすぐ前にある物体のほか、明らかに広い角度偏差のもとで物体を検知することが重要さを増している。たとえば最新の車両や未来の車両は、たとえば歩行者、自転車、オートバイなど、横切っていく目標物を検出することができなければならない。このような機能性は、「Cornersensor」すなわち「コーナーセンサ」と呼ばれる、車両の前側のコーナーに組み込まれたセンサによって提供されるべきである。さらに、車両後部構造に配置されるセンサの数も同じく増えている。これらのセンサを援用したうえで、特に、高速で追い越していく車両や、後方に向かって発進するときに同じく横切っていく物体の検出、死角のカバーが可能となる。上述した例から明らかになるとおり、レーダーを用いてトラックの視界を全面的にカバーするというトレンドが生まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明の課題は、レーダーセンサのためのアンテナを提供することにあり、このアンテナは、特に自動車のコーナーセンサでの利用に適しているのがよい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、第1の態様によれば、次のものを有する、レーダーセンサのためのアンテナ装置によって解決される:
−直列に配線された定義された数の平坦なアンテナ部材を有する、基板の表面に配置された少なくとも1つの第1のアンテナアレイ;
−直列に配線された定義された数の平坦なアンテナ部材を有する、基板の表面に配置された少なくとも1つの第2のアンテナアレイ;
−両方のアンテナアレイとそれぞれセンターで配線された供給導線;
供給導線により供給信号をアンテナアレイへ供給可能であり、それにより第1のアンテナアレイに第2のアンテナアレイと比べて180度だけ移相した供給信号を供給可能であるようになっている。
【0006】
このようにしてアンテナ装置により、センターで供給を受けるパッチ部材の2つのアレイが具体化され、これらのパッチ部材が、互いに対称に構成された2つの最大値を具体化し、それらの主ビーム方向は定義された角度だけ相互に傾いている。このアンテナ装置によって、自動車のコーナー領域で好ましく適用可能なレーダーセンサを具体化することができる。照射特性ないし指向特性を、自動車に対して相対的なレーダーセンサの相応の配置によって規定することができるからである。このときレーダーセンサの利用は、自動車の前側のコーナーだけでなく後側のコーナーについても可能である。
【0007】
第2の態様によるとこの課題は、次の各ステップを有する、レーダーセンサのためのアンテナ装置を製造する方法によって解決される:
−第1のアンテナアレイの直列に配線された定義された数の平坦なアンテナ部材が基板の上に配置され;
−第2のアンテナアレイの直列に配線された定義された数の平坦なアンテナ部材が基板の上に配置され;
−両方のアンテナアレイとそれぞれセンターで配線された供給導線が基板の上に配置され、供給導線は、第1のアンテナアレイに第2のアンテナアレイと比べて180度だけ移相した供給信号が供給可能であるように構成される。
【0008】
アンテナ装置の好ましい発展例は従属請求項の対象である。
【0009】
アンテナ装置の1つの好ましい発展例は、両方のアンテナアレイが供給導線に関して互いに機能的に点対称に構成されることを特徴とする。このようにして、アンテナ装置について技術的に容易な具体化コンセプトが提供される。
【0010】
アンテナ装置のさらに別の好ましい実施形態は、次のことを特徴とする。
−第1のアンテナアレイは第1のアンテナハーフアレイと第2のアンテナハーフアレイを有し;
−第2のアンテナアレイは第1のアンテナハーフアレイと第2のアンテナハーフアレイを有し;
−第1のアンテナアレイの第2のアンテナハーフアレイに移相部材が配置されており;
−第2のアンテナアレイの第1のアンテナハーフアレイに移相部材が配置されており;
−それぞれ接続部材によって供給導線が第1のアンテナアレイの第1および第2のアンテナハーフアレイの接続点と配線されるとともに、第2のアンテナアレイの第1および第2のアンテナハーフアレイの接続点と配線される。
【0011】
それにより、両方のアンテナアレイの供給信号の180度の移相が具体化され、移相部材が供給導線に必要ないという利点がある。結果的に、それによって省スペースでコンパクトなアンテナ装置およびこれに伴ってレーダーセンサ全体の設計形態が可能である。アンテナ装置へのセンターフィードにより、「ロバストな」ゼロ位置をアンテナ指向性図で具体化可能であるという利点がある。xz平面の放射バリエーションが小さくてすむからである。
【0012】
アンテナ装置の別の好ましい構成は、供給導線の接続部材が各アンテナアレイに対して非対称に構成されることを意図する。このようにして、両方の最大値の間でゼロ位置が構成される度合いを寸法設定できるという利点がある。それにより、照射特性に関わる要求事項を設計工学的に具体化できるという利点がある。
【0013】
アンテナ装置の別の好ましい実施形態は、定義された数の別のアンテナアレイを有しており、それぞれ2つの別のアンテナアレイを有するサブアレイがそれぞれアンテナアレイのうちの少なくとも1つと配線されることを特徴とする。このようにして、定義された放射特性を有するアレイアンテナが提供される。
【0014】
アンテナ装置の別の好ましい実施形態は、第1のアンテナアレイと配線される複数の別のアンテナアレイが、第2のアンテナアレイと配線される複数の別のアンテナアレイと同一であることを特徴とする。
【0015】
次に、本発明をその他の構成要件および利点とともに複数の図面を参照しながら詳しく説明する。その際に、記載されているすべての構成要件はそれ自体として、または任意の組み合わせとして本発明の対象物を形成し、発明の詳細な説明ないし図面でどのように表現されているかには左右されず、ならびに、特許請求の範囲もしくはその引用において、これらの構成要件がどのようにまとめられているかに左右されない。各図面は必ずしも縮尺に忠実に作成されておらず、同一ないし機能が同一の部材は同一の符号を有している。
【0016】
開示されている装置構成要件は、開示されている相応の方法構成要件からもこれに準じて明らかとなり、その逆も成り立つ。このことは特に、アンテナ装置に関わる構成要件、技術的な利点、および実施形態が、それに準ずる仕方で、アンテナ装置を製造する方法に関わる対応する実施形態、構成要件、および利点から明らかとなり、その逆も成り立つことを意味する。
【0017】
図面には次のものが示されている:
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】自動車におけるレーダーセンサの組付け位置である。
図2】パッチアンテナアレイを示す原理図である。
図3】パッチアンテナアレイへのセンターフィードを示す原理図である。
図4】本発明によるアンテナ装置の実施形態である。
図5】提案されるアンテナ装置によって具体化されるアレイアンテナである。
図6】提案されるアンテナ装置の放射特性である。
図7】提案されるアンテナ装置とアレイアンテナの放射特性である。
図8】アンテナ装置を製造する本発明の方法の実施形態の原理的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、複数のレーダーセンサ200を有する自動車を平面図で示しており、自動車の4つのコーナー領域の1つにそれぞれレーダーセンサ200が配置されている。前方に向かって放射とセンシングをするフロントセンサは図示していない。レーダーセンサ200は、送信アンテナと受信アンテナの送信出力/受信出力を集束させることが意図され、定義されたセンシング到達範囲が具体化される。レーダーセンサ200はそれぞれアンテナ装置(図示せず)を有しており、アンテナ装置はそれぞれ定義された数の長方形または正方形の平坦なアンテナ部材(「パッチ部材」)を有しており、これらが基板の上に配置され、そのようにして、それ自体公知のパッチアンテナを具体化する。
【0020】
このような種類の公知のアンテナアレイが、図2に平面図で原理的に示されている。平坦なアンテナ部材10は、最善に制御されるとき、基板に対して直交する照射最大値を具体化する。公知の自動車センサは、直列に供給を受ける平坦なパッチアンテナアレイないしパッチアンテナアレイを基礎とする。直列の供給の欠点は、材料変動を通じて、特に誘電率の変動や周波数領域の変化を通じて、アンテナ指向性図が変化する可能性があることにある。このことは、アンテナ指向性図が高さ方向で「スキント」し、そのために、放射特性の最大値が所望の方向を向かなくなることにつながる不都合があり、それによって到達範囲の損失が引き起こされる。指向性図のいっそう高い安定性をもたらす、考えられる1つの対処法はセンターフィード型のアンテナ構造であり、これに関してはまたあとで詳しく説明する。
【0021】
このような基本部材を前提としたうえで、それぞれのセンサ(フロント、コーナー、リア)のための本来のアレイアンテナが導き出される。リアセンサとコーナーセンサはそれぞれ車両の角に組み付けられ、それぞれ約90°方向の対称な角度範囲を扱うためのものである。ただし、このとき出力分布は等しく配分されるのではなく、むしろ重点は、放射出力を外側のコーナーで集束させることにある。そのためにアンテナ設計において、それぞれの送信アンテナのビーム旋回が意図される。ただしこのことは、「スキントする」アンテナによってアンテナ指向性図の安定性が制限され、特に、マイナーローブ挙動と照射方向がいずれも周波数領域や材料変化を通じて変化するという欠点がある。
【0022】
図3は、2つのアンテナハーフアレイ20a,20bを有する、このような種類のアンテナアレイ20の公知のセンターフィードを示しており、第1のアンテナハーフアレイ20aのストランドは移相部材ないし位相遅延部材11を有している。移相部材11により、供給導線12を介して供給される電気的な供給信号についての経路長が具体化され、それにより、供給信号の定義された移相が両方のアンテナハーフアレイ20a,20bで生成される。その結果、このようにして第1のアンテナハーフアレイ20aでは第2のアンテナハーフアレイ20bと比べて180°の移相を生起可能であり、この移相は、放射特性をxz平面で均等に、かつ周波数変動ないし材料変化から実質的に影響を受けることなく保つことを可能にする。
【0023】
すなわち上述したセンターでのアンテナ供給は、特に誘電率などの材料特性の変化ないし周波数シフトが生じたとき、両方のアンテナハーフアレイ20a,20bがxz平面で反対方向へスキントすることにつながり、それにより、スキント効果が合計で再び補償される。つまり移相部材11により、アンテナ指向性図のいっそう高い安定性がもたらされるという利点がある。
【0024】
センターフィードにより、アンテナ装置の材料変動や供給源の周波数変動によって実質的に左右されることがない、ロバストなゼロ位置をアンテナ指向性図で生成可能である。それにより、未来のリアセンサおよびコーナーセンサの使用にとって必要である、ロバストなアンテナ指向性図を製作することが可能となる。このように、このようにセンターで供給を受けるアンテナの設計には、両方のアンテナハーフアレイ20a,20bの構造的な重なり合いを実現するために、180°の移相部材が必要である。アジマス方向で、すなわち自動車での使用に関しては車道表面に対して実質的に平行に、ゼロ位置を生起するために、2つのアンテナアレイが必要である。このとき両方のアンテナアレイの供給は、180°だけ互いにシフトしていなければならない。このことは、図4に示す構造によって好ましく実現することができる。
【0025】
図4は、レーダーセンサのための提案されるアンテナ装置100の第1の実施形態を示している。このアンテナ装置100は、アンテナハーフアレイ20a,20b,30a,30bをそれぞれ2つ有する、第1のアンテナアレイ20および第2のアンテナアレイ30を有している。両方のアンテナハーフアレイ20,30は供給導線12によってセンターフィードで供給を受け、ないしは励起され、供給導線12は、アンテナアレイ20,30への2つの短い接続部材12a,12bを有するT字型に構成されている。したがって、T字型の供給導線12の交差点に関して、この構造は機能的に点対称に構成されている。
【0026】
このことは、第1のアンテナハーフアレイ20bと第2のアンテナハーフアレイ30aにそれぞれ移相部材11が配置されることによって実現される。このような種類のコンフィギュレーションにより、yz平面に関して2つの対称な放射特性の主最大値が生成される。このことは、yz平面に関して、相互に傾いた2つの放射最大値を有する特性が形成されることを意味する。このことは、上述した自動車のレーダーセンサのいわゆるリアセンサやコーナーセンサでの利用にとって特別に好ましい。そこでは、互いに向きを変えた照射最大値が非常に有益だからである。
【0027】
移相部材11の機能性は、別案として、前述したものとは異なる幾何学形態によって具体化することもできる。たとえば、移相部材11が別様にアライメントされたり、円形に構成されるなどが考えられる。
【0028】
供給導線12の短いクロスバーないし接続部材12a,12bが非対称に構成され、それにより、結果として出力分配器を具体化する様子を見ることができる。それにより、等しくない規模の電気出力が両方のアンテナアレイ20,30へ供給されることを実現することができる。このようにして、上述した2つの主最大値の間で最小値をいっそう強く、またはいっそう弱く構成することが可能になるという利点があり、このとき最小値は、両方の接続部材12a,12bが対称に近く構成されるほど強く構成される。アンテナ装置100は、このようにして出力低下をセンターで生起し、定義された角度オフセットで電磁出力を照射し、それによって上述した自動車のコーナーセンサでの採用が非常に好都合となる。上述のアンテナコンセプトは、MIMOアレイアンテナ設計(英語multiple input multiple outpt)にも良く適している。
【0029】
上述したコンフィギュレーションにより、供給導線12の形態でのコンパクトで比較的損失の少ない供給網によって、従来の取組みに比べて少ない所要面積をアンテナ装置100について具体化することが可能である。このことは、180°の移相を生成するために必要な移相部材が、供給導線12の比較的短い接続部材12a,12bに配置されるのではないので、両方のアンテナアレイ20,30を互いに平行にアライメントして省スペースに構成できることによって根拠づけることができる。
【0030】
図5は、アレイアンテナのための上述したアンテナ装置100の1つの好ましい用途を示している。全部で6つのアンテナアレイ20...70を有するアレイアンテナを見ることができ、両方のアンテナアレイ20,30がセンターで供給を受け、前記の両方のアンテナアレイ20,30と、それぞれ別のアンテナアレイ40,50ないし60,70が上方と下方で配線されている。このようにして、アレイアンテナの定義された照射特性を具体化することができる。
【0031】
図6は、図4の実施形態の放射指向性図を示しており、無次元で示されている到達範囲Rの推移が、度で表されたアジマス角φに対してプロットされている。ほぼ0°のときにアンテナ装置100の最小値が現れることがわかる。2つのアンテナ最大値は約+45°と約−45°のアジマス角のときに現れ、このことは、結果として約90°だけ旋回した照射特性をもたらし、自動車の上述したコーナーセンサでの採用を好ましいものにする。中央の最小値の低下を、上に述べた接続部材12a,12bの寸法設定によって具体化することができる。図7は、破線の推移で図6の放射特性の類似する推移を示しており、実線の推移で図5のアレイアンテナの放射特性の推移を示している。ここでも、約90°のレーダーセンサのカバレージをほぼ具体化する、それぞれ2つの主最大値が約+45°と約−45°のところに形成されていることがわかる。
【0032】
図8は、アンテナ装置100を製造するための実施形態の原理的なフローチャートを示す。
【0033】
ステップ300で、第1のアンテナアレイ20の直列に配線された定義された数の平坦なアンテナ部材10の基板1上の配置が実行される。
【0034】
ステップ310で、第2のアンテナアレイ30の直列に配線された定義された数の平坦なアンテナ部材10の基板1上の配置が実行される。
【0035】
ステップ320で、両方のアンテナアレイ20,30とそれぞれセンターで配線される供給導線12の基板1への配置が実行され、アンテナアレイ20,30と供給導線12は、第1のアンテナアレイ20,30に第2のアンテナアレイ30と比べて180°だけ移相した供給信号が供給可能であるように構成される。
【0036】
要約すると、本発明によりレーダーセンサのためのアンテナ装置およびアンテナ装置を製造する方法が提案され、それによって特に自動車のコーナー領域で使用されるべきロバストなレーダーセンサを、定義された放射特性で具体化することができる。
【0037】
本発明をここでは具体的な実施形態を参照しながら説明したが、決してこれに限定されるものではない。したがって当業者は、本発明の要部から逸脱することなく、ここでは具体化していない、あるいは部分的に開示されている実施形態をも具体化するであろう。
【符号の説明】
【0038】
1 基板
10 アンテナ部材
12 供給導線
12a,12b 接続部材
20 第1のアンテナアレイ
20a 第1のアンテナハーフアレイ
20b 第2のアンテナハーフアレイ
30 第2のアンテナアレイ
30a 第1のアンテナハーフアレイ
30b 第2のアンテナハーフアレイ
40,50,60,70 別のアンテナアレイ
100 アンテナ装置
200 レーダーセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8